説明

信号デコード装置及び信号デコード方法

【課題】 アナログ回路を必要とせず、構成の簡単なバイフェーズ信号デコード装置及び信号デコード方法を提供する。
【解決手段】 バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して原信号を再生する信号デコード装置において、バイフェーズ信号の極性が変化する毎にその変化時点と変化方向を検出する極性変化検出手段と、所定のクロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測して該計測値が所定の閾値を超えたときデータ検出窓パルスを生成する検出窓パルス生成手段と、データ検出窓パルスによりサンプリングされたバイフェーズ信号の極性変化時点と極性変化方向に応じて原信号を再生するデータデコード手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して、原信号を再生する信号デコード装置及び信号デコード方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
DVI(Digital Visual Interface)等の規格による光ファイバー・ケーブルを用いて画像データ信号を高速シリアル伝送する伝送システムでは、画像データ信号に付随する制御データなどを低速度で伝送する副伝送系統が含まれている。このような副伝送系統におけるデータ信号の伝送符号として、いわゆるバイフェーズ信号が用いられることが多い。
【0003】
バイフェーズ信号とは、伝送される原データの論理値である「0」又は「1」を、伝送符号に用いられるシンボルの極性変化によって表す符号方式である。例えば、シンボルの極性変化が立ち上がり、即ち、ロウ(Low;L)→ハイ(High;H)であるときは原データの「1」を表し、シンボルの極性の変化が立ち下がり、即ち、H→Lであるときは原データの「0」を表すものである。バイフェーズ信号では、原データの論理値が伝送符号シンボルの極性変化に置換されるので、「1111…」や「0000…」等の同一データが連続した場合であっても、バイフェーズ符号化処理が施された信号には、信号再生時の障害となる直流成分が含まれることはない。
【0004】
従来、バイフェーズ信号を復号する信号デコード装置、若しくは信号デコード方法として、例えば、特許文献1や特許文献2に示されるような技術が公知となっている。
【0005】
ここで、従来のバイフェーズ信号デコード装置の構成例を図1に示す。従来技術によるバイフェーズ信号デコード装置は、主に、エッジ検出回路、クロック再生回路、及びデータラッチ回路から構成されている。同装置の動作を簡単に説明すれば、先ず、エッジ検出回路はバイフェーズ信号のシンボルエッジを検出してその情報をクロック再生回路に通知する。クロック再生回路では、かかる情報を基にPLLを利用してバイフェーズ信号に同期したクロック信号を生成してこれをデータラッチ回路に供給する。データラッチ回路は、このクロック信号を用いてバイフェーズ信号を所定のタイミングでラッチして、バイフェーズ信号からデコードデータを得る。
【0006】
従来技術によるバイフェーズ信号デコード装置では、PLL等を利用した同期クロック再生回路などのアナログ回路を必要とするため、信号デコード装置の構成が複雑となり装置コストの上昇を招くという問題があった。また、アナログ回路やアナログ処理関連の部品を使用するため、温度や湿度等の装置環境変化、或いは電源変動や使用部品の経年変化等の影響を受け易いという問題もあった。
【特許文献1】特開平9−289504号公報
【特許文献2】特開平9−312572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題には、アナログ回路を必要とせず構成の簡単なバイフェーズ信号デコード装置、及びデコード方法を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して原信号を再生する信号デコード装置であって、バイフェーズ信号の極性が変化する毎にその変化時点と変化方向を検出する極性変化検出手段と、所定のクロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測して該計測値が所定の閾値を超えたときデータ検出窓パルスを生成する検出窓パルス生成手段と、前記データ検出窓パルスによりサンプリングされたバイフェーズ信号の極性変化時点と極性変化方向に応じて原信号を再生するデータデコード手段とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して原信号を再生する信号デコード方法であって、バイフェーズ信号の極性が変化する毎にその変化時点と変化方向を検出するステップと、所定のクロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測して該計測値が所定の閾値を超えた場合に所定のタイミングを有するデータ検出窓パルスを生成するステップと、前記データ検出窓パルスによりサンプリングされたバイフェーズ信号の極性変化時点と極性変化方向に応じた原信号を再生するステップとを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
【実施例】
【0011】
図2に本発明の実施例であるバイフェーズ信号デコード装置10を示す。
【0012】
同図においてデータラッチ回路11は、本装置に入力されたバイフェーズ信号を所定のシステム・クロックでラッチ(サンプリング)する回路である。エッジ検出回路12は、データラッチ回路11によってサンプリングされたバイフェーズ信号のエッジ部、即ち、バイフェーズ信号の極性変化点を検出する回路である。因みに、同回路からは、かかる極性変化点に同期したエッジパルスの時系列が出力される。
【0013】
カウンタ1回路13は、上記のシステム・クロックをカウントしてエッジパルス時系列のパルス間隔を計測する回路である。検出開始判定回路14は、カウンタ1回路13における計測結果に基づいて、バイフェーズ信号のデコードを開始する際の基準となる有効エッジを検出する回路である。
【0014】
カウンタ2回路16は、検出開始判定回路14において検知された有効エッジを基準としてシステム・クロックをカウントし、バイフェーズ信号の次の有効エッジの位置を示すタイミングをエッジ検出窓生成回路17に通知する回路である。エッジ検出窓生成回路17は、カウンタ2回路16からの通知に基づいて、バイフェーズ信号の次の有効エッジの来るタイミングに所定の時間幅を有する検出窓を設定する回路である。
【0015】
データデコード回路15は、エッジ検出窓生成回路17が設定した検出窓によってバイフェーズ信号の有効エッジをサンプリングし、バイフェーズ符号化処理の施された原信号のデータをデコードする回路である。なお、データデコード回路15はデコードされたデータに同期したイネーブル信号も生成出力する。
【0016】
次に、バイフェーズ信号デコード装置10の動作を、図3に示すタイムチャートを参照しつつ説明する。なお、同タイムチャートに示されているa〜gの各時系列信号は、図2のブロック図に示されるa〜gの各部分の信号に相当するものである。
【0017】
先ず、データラッチ回路11は、本装置に入力されたバイフェーズ信号を所定のシステム・クロックでラッチ(サンプリング)する。このシステム・クロックは、バイフェーズ信号に同期している必要はなく、装置10の内部で汎用的に用いられている各種のクロック信号を使用することが可能である。但し、かかるシステム・クロックは、バイフェーズ信号のシンボル周波数よりも十分に高い周波数であることが望ましい。なお、データラッチ回路11は、通常のラッチデータ(図3a)の他に1システム・クロック分だけ遅延させたバイフェーズ信号のラッチデータ(図3b)を生成して、この2つのデータをエッジ検出回路12に供給する。
【0018】
エッジ検出回路12は、データラッチ回路11から供給された2つのラッチデータからバイフェーズ信号のシンボルの極性変化点であるエッジ部を検出して、図3cに示すようなエッジ検出パルス列を生成する。なお、かかるエッジ検出処理は、例えば、2つのラッチデータの排他的論理和を採ること等によって容易に生成することができる。
【0019】
一方、カウンタ1回路13は、上記のシステム・クロックをカウントするカウンタであり、そのカウント値はエッジ検出回路12から出力されるエッジ検出パルス(図3c)によってリセットされる。
【0020】
ところで、バイフェーズ信号の場合、図3からも明らかなように、原データ論理値の推移パターンが「0→0」または「1→1」の場合に較べて、「0→1」または「1→0」の場合の方がシンボルエッジの間隔が長くなる特徴を有している。原データが同一論理で推移するデータパターンのときは、同一の極性変化を繰り返すので極性変化を一旦リセットする必要があり、その際に図3cのα部に示すようなダミーエッジが生じるためである。つまり、シンボルエッジの間隔が短い場合、その直後に到来するエッジはダミーエッジを含むため必ずしもシンボルの極性変化を表すものではないが、シンボルエッジの間隔が長い場合、その直後に到来するエッジは必ずシンボルの極性変化を表す有効エッジとなる。
【0021】
検出開始判定回路14は、カウンタ1回路13のカウント値(図3d)をチェックしてそのカウント値が所定の閾値を超えた場合に、その直後に到来するエッジは必ずシンボルの極性変化を表す有効エッジであると判定する。検出開始判定回路14は、かかる有効エッジを判別するための検出開始タイミングを、例えば、検出開始フラグ(図3e)等の状態信号をセットしてデータデコード回路15等に通知する。
【0022】
なお、図3の事例ではカウンタ1回路13のカウント値(図3d)が「5」を超えた場合に、検出開始判定回路14は検出開始フラグ(図3e)をセットしているが、本発明の実施がかかる数値例に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0023】
エッジ検出窓生成回路17は、検出開始フラグのセットに同期して、バイフェーズ信号の有効エッジをサンプリングするための所定の時間幅を有するエッジ検出窓パルス(図3f)を生成する。
【0024】
一方、カウンタ2回路16は、最初のエッジ検出窓パルスの終了後にシステム・クロックをカウントし(図3g)、バイフェーズ信号における次の有効エッジの位置、即ち、1シンボル分離れた位置を示すタイミングを生成してこれをエッジ検出窓生成回路17に供給する。エッジ検出窓生成回路17は、かかるタイミングに同期してエッジ検出窓パルスのパルス列を継続して出力する。
【0025】
なお、システム・クロックとバイフェーズ信号は非同期であるので、クロック周波数誤差の累積によるエラー発生を防止すべく、カウンタ2回路16は有効エッジの検出毎にリセットされるような構成としても良い。
【0026】
データデコード回路15は、エッジ検出窓生成回路17から供給されるエッジ検出窓パルスによって、エッジ検出回路12から供給される信号エッジ検出パルスのうちの有効エッジのみをサンプリングする。
【0027】
なお、信号エッジ検出パルスと共に、各パルスがバイフェーズ信号の立ち上がりを表すものか、或いはその立ち下がりを表すものかを示す情報がエッジ検出回路12からデータデコード回路15に通知される。データデコード回路15は、かかる情報に基づいて有効エッジの極性変化の方向を検知し、立ち上がりエッジを原信号のデータの「1」として、立ち下がりエッジを原信号のデータの「0」としてデコードデータを生成する。
【0028】
また、データデコード回路15は、エッジ検出窓パルスに同期したイネーブル信号も生成して、同信号をデコードデータと共に後段の各種処理回路(図示せず)に出力する。
【0029】
以上に説明したように、本実施例は、バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して原信号を再生する信号デコード装置であって、バイフェーズ信号の極性が変化する毎にその変化時点と変化方向を検出する極性変化検出手段に相当するデータラッチ回路11及びエッジ検出回路12と、所定のクロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測して該計測値が所定の閾値を超えたときデータ検出窓パルスを生成する検出窓パルス生成手段に相当するカウンタ1回路13、検出開始判定回路14、カウンタ2回路16、及びエッジ検出窓生成回路17と、前記データ検出窓パルスによりサンプリングされたバイフェーズ信号の極性変化時点と極性変化方向に応じて原信号を再生するデータデコード手段に相当するデータデコード回路15とを含んでいる。
【0030】
そして、本実施例に基づく信号デコード装置は、以上の構成を採ることによってバイフェーズ符号化処理が施された信号をデジタル回路のみでデコード可能であり、従来のPLLを使用した同期クロック再生回路等のアナログ回路が不要となる。また、デジタル回路で使用されるクロック信号は非同期で良いので、システム内で既に使用されている他のクロック信号の使用が可能であり、本装置専用のクロック発生回路が不要となる。
【0031】
なお、以上の実施例では、H/L期間のデューティー比が50%のバイフェーズ信号を用いて説明を行ったが、本発明の実施は、かかる事例に限定されるものではなく、伝送路や信号送受信装置の影響でデューティー比が変動した場合でも、例えば、エッジ検出窓の時間幅等を調整して容易に対応することができる。
【0032】
また、本発明の実施は、光ファイバー・ケーブルを用いた伝送システムに限定されるものではなく、例えば、他の有線伝送システムや無線伝送システムにおけるシリアルデータ伝送においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、従来技術によるバイフェーズ信号デコード装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の実施によるバイフェーズ信号デコード装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2のバイフェーズ信号デコード装置における動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0034】
10 バイフェーズ信号デコード装置
11 データラッチ回路
12 エッジ検出回路
13 カウンタ1回路
14 検出開始判定回路
15 データデコード回路
16 カウンタ2回路
17 エッジ検出窓生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して原信号を再生する信号デコード装置であって、
バイフェーズ信号の極性が変化する毎にその変化時点と変化方向を検出する極性変化検出手段と、
所定のクロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測して該計測値が所定の閾値を超えたときデータ検出窓パルスを生成する検出窓パルス生成手段と、
前記データ検出窓パルスによりサンプリングされたバイフェーズ信号の極性変化時点と極性変化方向に応じて原信号を再生するデータデコード手段と、を含むことを特徴とする信号デコード装置。
【請求項2】
前記検出窓パルス生成手段は、
前記クロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測する第1のカウンタ手段と、
前記第1のカウンタ手段の計測値が所定の閾値を超えたとき前記データ検出窓パルスによる前記バイフェーズ信号のサンプリング動作の開始を指令するサンプリング開始指令を発する動作開始判定手段と、
前記サンプリング指令に応じて前記クロック信号のカウントを開始して所定数だけカウントしたとき前記データ検出窓パルスを生成する第2のカウンタ手段と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の信号デコード装置。
【請求項3】
前記データデコード手段は、前記データ検出窓パルスに同期したイネーブル信号を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号デコード装置。
【請求項4】
前記クロック信号は、前記バイフェーズ信号と非同期であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の信号デコード装置。
【請求項5】
バイフェーズ符号化処理が施された信号を復号して原信号を再生する信号デコード方法であって、
バイフェーズ信号の極性が変化する毎にその変化時点と変化方向を検出するステップと、
所定のクロック信号をカウントして相隣る2つの変化時点の時間間隔を計測して該計測値が所定の閾値を超えた場合に所定のタイミングを有するデータ検出窓パルスを生成するステップと、
前記データ検出窓パルスによりサンプリングされたバイフェーズ信号の極性変化時点と極性変化方向に応じた原信号を再生するステップと、を含むことを特徴とする信号デコード方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−157221(P2006−157221A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341914(P2004−341914)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】