説明

信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置

【課題】基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動を抑え、安定した動作を行うことができるようにする。
【解決手段】第1の基板10と第2の基板20とのそれぞれにおいて、共振時に電界エネルギーが集中する各共振器11,21,31,41の開放端側をシールド電極81,82によって覆うような共振器構造にする。シールド電極81,82の大きさを最適化することで、第1の基板10と第2の基板20との間では主として磁界成分による電磁結合がなされる状態にし、空気層等における電界分布を大幅に少なくする。これにより、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第1の共振部および第2の共振部における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに共振器が形成された複数の基板を用いて信号伝送を行う信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、それぞれに共振器が形成された複数の基板を用いて信号伝送を行う信号伝送装置が知られている。例えば特許文献1には、異なる基板それぞれに共振器を構成し、それら共振器同士を電磁結合させて2段のフィルタを構成して信号伝送させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−67012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような異なる基板それぞれに形成された共振器同士を電磁結合させる構造の場合、各基板間には電界および磁界が発生する。このとき、従来の構造では、基板間に存在する空気層の厚みの変動で共振器間の結合係数や共振周波数が大きく変わるため、フィルタとしての中心周波数や帯域幅が大幅に変動する問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動を抑え、安定した動作を行うことができるようにした信号伝送装置、フィルタ、ならびに基板間通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による信号伝送装置は、間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、第1の基板における第1の領域に形成され、開放端を有する第1の共振器と、第1の共振器と第2の基板との間で、少なくとも第1の共振器の開放端を覆うように第1の共振器を部分的に覆う第1のシールド電極と、第2の基板における第1の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、第1の共振器に電磁結合する第2の共振器と、第2の共振器と第1の基板との間で、少なくとも第2の共振器の開放端を覆うように第2の共振器を部分的に覆う第2のシールド電極と、第1の共振器と第2の共振器とが電磁結合することによって形成された第1の共振部と、第1の共振部に対して第2の方向に並列的に配置され、第1の共振部に電磁結合されて第1の共振部との間で信号伝送を行う第2の共振部とを備えたものである。
【0007】
本発明によるフィルタは、上記した本発明による信号伝送装置と同様の構成でフィルタとして動作させるようにしたものである。
【0008】
本発明による信号伝送装置およびフィルタにおいて、第1の基板における第2の領域に形成され、開放端を有する第3の共振器と、第3の共振器と第2の基板との間で、少なくとも第3の共振器の開放端を覆うように第3の共振器を部分的に覆う第3のシールド電極と、第2の基板における第2の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、第3の共振器に電磁結合する第4の共振器と、第4の共振器と第1の基板との間で、少なくとも第4の共振器の開放端を覆うように第4の共振器を部分的に覆う第4のシールド電極とをさらに備えていても良い。そして、第2の共振部が、第3の共振器と第4の共振器とが電磁結合することによって形成されたものであっても良い。
【0009】
本発明による基板間通信装置は、上記した本発明による信号伝送装置の構成において、第1の基板に形成されると共に、第1の共振器に物理的に直接接続、または第1の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、第2の基板に形成されると共に、第4の共振器に物理的に直接接続、または第2の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極とをさらに備え、第1の基板と第2の基板との間で信号伝送を行うようにしたものである。
【0010】
本発明の信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置では、第1の共振器において共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第1のシールド電極によって覆われることで、第1の共振器から第2の基板側へと発生する電界分布が第1のシールド電極を境界にして大幅に少なくなる。第2の共振器についても同様に、共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第2のシールド電極によって覆われることで、第2の共振器から第1の基板側へと発生する電界分布が第2のシールド電極を境界にして大幅に少なくなる。これにより、シールド電極の大きさを最適化することで、第1の共振部を構成する第1の共振器と第2の共振器とを主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態にすることが可能となる。第1の共振部において、第1の基板と第2の基板との間の空気層等における電界分布が大幅に少なくなるので、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第1の共振部における共振周波数の変動が抑えられる。同様に、第3の共振器において共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第3のシールド電極によって覆われることで、第3の共振器から第2の基板側へと発生する電界分布が第3のシールド電極を境界にして大幅に少なくなる。第4の共振器についても同様に、共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第4のシールド電極によって覆われることで、第4の共振器から第1の基板側へと発生する電界分布が第4のシールド電極を境界にして大幅に少なくなる。これにより、シールド電極の大きさを最適化することで、第2の共振部を構成する第3の共振器と第4の共振器とを主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態にすることが可能となる。第2の共振部において、第1の基板と第2の基板との間の空気層等における電界分布が大幅に少なくなるので、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第2の共振部における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【0011】
本発明による信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、第1および第2の共振器はそれぞれ、一端が開放端、他端が短絡端とされ、かつ、開放端側が短絡端側に比べて広い線路幅を有する線路型共振器であっても良い。または、第1および第2の共振器はそれぞれ、両端が開放端とされ、かつ、開放端側が中央部に比べて広い線路幅を有する線路型共振器であっても良い。そして、第1のシールド電極は、少なくとも第1の共振器における広い線路幅を有する部分を覆うように設けられ、第2のシールド電極は、少なくとも第2の共振器における広い線路幅を有する部分を覆うように設けられていても良い。
【0012】
また、第1の共振器の開放端に導通されると共に、第1の共振器の開放端と第1のシールド電極との間に設けられた第1のコンデンサ電極と、第2の共振器の開放端に導通されると共に、第2の共振器の開放端と第2のシールド電極との間に設けられた第2のコンデンサ電極とをさらに備えていても良い。
【0013】
また、第1の共振器と第2の基板との間に設けられ、第1の共振器と第2の共振器とを電磁結合させるための第1の結合用窓と、第2の共振器と第1の基板との間に設けられ、第1の共振器と第2の共振器とを電磁結合させるための第2の結合用窓とをさらに備えていても良い。
【0014】
さらに、本発明による信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、第1の共振部は、第1の共振器と第2の共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を構成し、かつ、第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では第1の共振器と第2の共振器とがそれぞれ、所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされていても良い。同様に、第2の共振部は、第3の共振器と第4の共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する他の1つの結合共振器を構成し、かつ、第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では第3の共振器と第4の共振器とがそれぞれ、所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされていても良い。
この構成の場合、第1の基板と第2の基板とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と第1の基板と第2の基板とが互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板と第2の基板とを互いに電磁結合している状態では所定の共振周波数で信号伝送するが、第1の基板と第2の基板とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では所定の共振周波数で信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板と第2の基板とを十分に離した状態では、各基板に形成された各共振器からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明による信号伝送装置またはフィルタにおいて、第1の基板に形成されると共に、第1の共振器に物理的に直接接続、または第1の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、第2の基板に形成されると共に、第4の共振器に物理的に直接接続、または第2の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極とをさらに備え、第1の基板と第2の基板との間で信号伝送を行うようにしても良い。
【0016】
また、本発明による信号伝送装置またはフィルタにおいて、第2の基板に形成されると共に、第2の共振器に物理的に直接接続、または第1の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、第2の基板に形成されると共に、第4の共振器に物理的に直接接続、または第2の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極とをさらに備え、第2の基板内で信号伝送を行うようにしても良い。
【0017】
なお、本発明の信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置において、「信号伝送」とは、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のような信号伝送に限らず、電力の送電/受電のような電力伝送も含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の信号伝送装置、フィルタ、または基板間通信装置によれば、第1の基板と第2の基板とに形成された各共振器について、共振時に電界エネルギーが集中する開放端側をシールド電極によって覆うような共振器構造にしたので、シールド電極の大きさを最適化することで、第1の基板と第2の基板との間では主として磁界成分による電磁結合がなされる状態にし、空気層等における電界分布を大幅に少なくすることができる。これにより、第1の基板と第2の基板との間で空気層等の基板間距離に変動があったとしても、第1の共振部および第2の共振部における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離の変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る信号伝送装置(フィルタ、基板間通信装置)の一構成例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した信号伝送装置を上面側から見た平面図である。
【図3】図1に示した信号伝送装置におけるAA線部分の断面構造を、基板各部の電界ベクトルEおよび電流ベクトルiと共に示す断面図である。
【図4】図1に示した信号伝送装置におけるBB線部分の断面構造を、基板各部の共振周波数と共に示す断面図である。
【図5】1/4波長共振器における電界強度分布および磁界強度分布を示す説明図である。
【図6】比較例の共振器構造を有する基板を示す断面図である。
【図7】図6に示した基板を2つ対向配置した構造を示す断面図である。
【図8】(A)は1つの共振器による共振周波数を示す説明図であり、(B)は2つの共振器による共振周波数を示す説明図である。
【図9】比較例の共振器構造の具体的な設計例を示す断面図である。
【図10】図9に示した共振器構造における共振周波数特性を示す特性図である。
【図11】図1に示した信号伝送装置における第1の共振部の具体的な設計例を示す断面図である。
【図12】図11に示した第1の共振部の具体的な設計値を示す断面図である。
【図13】図11に示した第1の共振部の具体的な設計値を示す平面図である。
【図14】図11に示した第1の共振部における共振周波数特性を示す特性図である。
【図15】図11に示した第1の共振部における第1の基板と第2の基板との間の電界強度分布を示す説明図である。
【図16】図1に示した信号伝送装置の共振器構造を応用したフィルタの一構成例を示す斜視図である。
【図17】(A)は図16に示したフィルタにおける第1の基板の表面側の構造を示し、(B)は第1の基板の裏面側の構造を示す平面図である。
【図18】(A)は図16に示したフィルタにおける第2の基板の表面側の構造を示し、(B)は第2の基板の裏面側の構造を示す平面図である。
【図19】図16に示したフィルタにおける共振器部分の具体的な設計値を示す平面図である。
【図20】図16に示したフィルタのフィルタ特性を示す特性図である。
【図21】本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す断面図である。
【図22】本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す断面図である。
【図23】1/2波長共振器における電界強度分布および磁界強度分布を示す説明図である。
【図24】本発明の第4の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す平面図である。
【図25】本発明の第4の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す断面図である。
【図26】本発明の第5の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す断面図である。
【図27】本発明の第6の実施の形態に係る信号伝送装置の第1の構成例を示す断面図である。
【図28】本発明の第6の実施の形態に係る信号伝送装置の第2の構成例を示す断面図である。
【図29】本発明の第7の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す平面図である。
【図30】本発明の第8の実施の形態に係る信号伝送装置の一構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
<第1の実施の形態>
[信号伝送装置の構成例]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る信号伝送装置(基板間通信装置またはフィルタ)の全体構成例を示している。図2は、図1に示した信号伝送装置を上面側から見た平面構造を示している。図3は、図1に示した信号伝送装置におけるAA線部分の断面構造を示している。図4は、図1に示した信号伝送装置におけるBB線部分の断面構造を示している。
【0022】
本実施の形態に係る信号伝送装置は、第1の方向(図のZ方向)に互いに対向配置された第1の基板10および第2の基板20を備えている。第1の基板10および第2の基板20は誘電体基板であり、基板材料とは異なる材料による層(誘電率の異なる層、例えば空気層)を挟んで、間隔(基板間距離Da)を空けて互いに対向配置されている。
【0023】
第1の基板10の表面側には、第1の領域に第1の1/4波長共振器11が形成され、第2の領域に第3の1/4波長共振器31が形成されている。第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31は、図1および図2に示したように、第2の方向(図のY方向)に並列的に形成されている。第2の基板20の裏面側には、第1の1/4波長共振器11が形成された第1の領域に対応する領域に第2の1/4波長共振器21が形成され、第3の1/4波長共振器31が形成された第2の領域に対応する領域に第4の1/4波長共振器41が形成されている。第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41は、第2の方向(図のY方向)に並列的に形成されている。各1/4波長共振器11,21,31,41は、導体による電極パターンよりなり、一端が開放端、他端が短絡端とされている。なお、図1において、第1の基板10および第2の基板20に形成された各電極パターン(第1の1/4波長共振器11等)の厚みは省略している。
【0024】
各1/4波長共振器11,21,31,41は、図2に示したように、開放端側が短絡端側に比べて広い線路幅を有する線路型共振器であり、それぞれ、開放端側に幅広の導体部分11A,21A,31A,41Aを有している。これにより、各1/4波長共振器11,21,31,41は、ステップインピーダンス共振器(SIR)を構成している。
【0025】
第1の1/4波長共振器11と第2の1/4波長共振器21は、互いの開放端同士および互いの短絡端同士が互いに対向するように配置されている。同様に、第3の1/4波長共振器31と第4の1/4波長共振器41は、互いの開放端同士および互いの短絡端同士が互いに対向するように配置されている。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第1の1/4波長共振器11と第2の基板20における第2の1/4波長共振器21とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第1の共振部1が形成されている。また、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1の基板10における第3の1/4波長共振器31と第2の基板20における第4の1/4波長共振器41とが第1の方向に互いに対向して電磁結合することで、第2の共振部2が形成されている。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを第1の方向に互いに対向配置した状態において、第1および第2の共振部1,2が第2の方向に並列的に配置されている。
【0026】
第1および第2の共振部1,2は、図4に示したように、それぞれが所定の共振周波数(後述の混成共振モードによる第1の共振周波数f1または第2の共振周波数f2)で共振して互いに電磁結合するようになっている。第1および第2の共振部1,2の間では、例えば所定の第1の共振周波数(後述の混成共振モードによる第1の共振周波数f1)を通過帯域とする信号伝送が行われるようになっている。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう離間した状態では、第1および第2の共振部1,2を形成していた各1/4波長共振器11,21,31,41は、所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数f0で共振するものとされている。
【0027】
この信号伝送装置では、例えば、第1の基板10側に第1の共振部1用の第1の信号引き出し電極を形成し、第2の基板20側に第2の共振部2用の第2の信号引き出し電極を形成することで、第1の基板10と第2の基板20との間で信号伝送を行うことができるようになっている。例えば第1の信号引き出し電極を第1の基板10の表面側に形成して第1の1/4波長共振器11に物理的に直接接続し、第1の1/4波長共振器11と直接的に導通させる。これにより、第1の信号引き出し電極と第1の共振部1との間で信号伝送が可能となる。また、第2の信号引き出し電極を第2の基板20の裏面側に形成して第4の1/4波長共振器41に物理的に直接接続し、第4の1/4波長共振器41に直接的に導通させる。これにより、第2の信号引き出し電極と第2の共振部2との間で信号伝送が可能となる。第1の共振部1と第2の共振部2は電磁結合されているので、第1の信号引き出し電極と第2の信号引き出し電極との間での信号伝送が可能となる。これにより、第1の基板10と第2の基板20との2つの基板間での信号伝送が可能となる。
【0028】
第1の基板10の裏面側には第1のシールド電極81が形成されている。第2の基板20の表面側には第2のシールド電極82が形成されている。第1および第2のシールド電極81,82は、全体がグランド電位とされている。第1のシールド電極81は、第1の1/4波長共振器11を部分的に覆うためのものである。第1のシールド電極81はまた、第3の1/4波長共振器31を部分的に覆うための第3のシールド電極としての機能も有している。第1のシールド電極81は、第1の1/4波長共振器11および第3の1/4波長共振器31と第2の基板20との間で、第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31とにおける、少なくともそれぞれの開放端を覆うように設けられている。第1のシールド電極81は、特に、第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31とにおける開放端側の幅広の導体部分11A,31Aを全体的に覆うように設けられていることが好ましい。
【0029】
第2のシールド電極82は、第2の1/4波長共振器21を部分的に覆うためのものである。第2のシールド電極82はまた、第4の1/4波長共振器41を部分的に覆うための第4のシールド電極としての機能も有している。第2のシールド電極82は、第2の1/4波長共振器21および第4の1/4波長共振器41と第1の基板10との間で、第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41とにおける、少なくともそれぞれの開放端を覆うように設けられている。第2のシールド電極82は、特に、第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41とにおける開放端側の幅広の導体部分21A,41Aを全体的に覆うように設けられていることが好ましい。
【0030】
第1の基板10における、第1の1/4波長共振器11と第2の基板20との間には、第1の共振部1を構成する第1の1/4波長共振器11と第2の1/4波長共振器21とを電磁結合させるための第1の結合用窓81Aが設けられている。第1の結合用窓81Aはまた、第3の1/4波長共振器31と第2の基板20との間で、第2の共振部2を構成する第3の1/4波長共振器31と第4の1/4波長共振器41とを電磁結合させるための結合用窓として機能している。第1の結合用窓81Aは、第1の基板10において第1のシールド電極81が設けられていない領域に形成されている。第1の結合用窓81Aは、第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31とにおける、少なくともそれぞれの短絡端に対応する領域に形成されている。
【0031】
第2の基板20における、第2の1/4波長共振器21と第1の基板10との間には、第1の共振部1を構成する第1の1/4波長共振器11と第2の1/4波長共振器21とを電磁結合させるための第2の結合用窓82Aが設けられている。第2の結合用窓82Aはまた、第4の1/4波長共振器41と第1の基板10との間で、第2の共振部2を構成する第3の1/4波長共振器31と第4の1/4波長共振器41とを電磁結合させるための結合用窓として機能している。第2の結合用窓82Aは、第2の基板20において第2のシールド電極82が設けられていない領域に形成されている。第2の結合用窓82Aは、第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41とにおける、少なくともそれぞれの短絡端に対応する領域に形成されている。
【0032】
[動作および作用]
この信号伝送装置では、第1の共振部1は、第1の基板10における第1の1/4波長共振器11と第2の基板20における第2の1/4波長共振器21とが後述する混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する1つの結合共振器を構成する。かつ、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第1の基板10における第1の1/4波長共振器11と第2の基板20における第2の1/4波長共振器21とのそれぞれの単独での共振周波数が、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)とは異なる他の共振周波数f0となる。
【0033】
同様に、第2の共振部2は、第1の基板10における第3の1/4波長共振器31と第2の基板20における第4の1/4波長共振器41とが後述する混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で共振する1つの結合共振器を構成する。かつ、第1の基板10および第2の基板20が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、第1の基板10における第3の1/4波長共振器31と第2の基板20における第4の1/4波長共振器41とのそれぞれの単独の共振周波数が、所定の第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)とは異なる他の共振周波数f0となる。
【0034】
従って、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態では第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で信号伝送する。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では単独の他の共振周波数f0で共振するために、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを十分に離した状態では、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)と同帯域の信号が入力されたとしても反射されるので、各共振器11,12,21,22からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0035】
(混成共振モードによる信号伝送の原理)
ここで、上述の混成共振モードによる信号伝送の原理について説明する。説明を簡単にするために、比較例の共振器構造として、図6に示したように第1の基板110の内部に1つの共振器111が形成されているものを考える。この比較例の共振器構造では、図8(A)に示したように、1つの共振周波数f0で共振するような共振モードとなる。これに対して、図7に示したように、図6に示した比較例の共振器構造と同様の構造を有する第2の基板120を、基板間距離Daを空けて第1の基板110に対向配置して電磁結合した場合について考える。第2の基板120の内部には1つの共振器121が形成されている。第2の基板120における共振器121についても、第1の基板110における共振器111と構造的には同じなので、第1の基板110に電磁結合していない単独の状態では、図8(A)に示したように、1つの共振周波数f0で共振するような単独の共振モードとなる。しかしながら、図7に示した2つの共振器111,121を電磁結合した状態では、電波の飛び移り効果により、単独での共振周波数f0で共振するのではなく、単独での共振周波数f0よりも低い第1の共振周波数f1となる第1の共振モードと、単独での共振周波数f0よりも高い第2の共振周波数f2となる第2の共振モードとの混成共振モードを形成して共振する。
【0036】
図7に示した混成共振モードで電磁結合する2つの共振器111,121を全体として1つの結合共振器101とみなすと、同様の共振器構造を並列配置することで、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を通過帯域とするフィルタを構成することができる。この第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)近傍の周波数の信号を入力することで信号伝送が可能となる。図1〜図4に示した本実施の形態に係る信号伝送装置は、そのような構成とされている。
【0037】
以上の原理を踏まえ、本実施の形態に係る信号伝送装置における共振モードについて、より詳細に説明する。図1の信号伝送装置のように、第1の共振部1と第2の共振部2とが並列配置される場合においても、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と、第1の基板10と第2の基板20とが空気層等を介して互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。このため、例えば第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合している状態では第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)を含む通過帯域の周波数で信号伝送する。一方、第1の基板10と第2の基板20とが互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態では、信号伝送する周波数とは異なる単独の他の共振周波数f0を含む通過帯域の周波数で共振するために、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)で信号伝送しない状態となる。これにより、第1の基板10と第2の基板20とを十分に離した状態では、第1の共振周波数f1(または第2の共振周波数f2)と同帯域の信号が入力されたとしても反射されるので、各共振器11,12,21,22からの信号(電磁波)の漏洩を防ぐことができる。
【0038】
ところで、線路幅が一様な一般的な1/4波長共振器における共振時の電界強度分布(E)および磁界強度分布(H)は、図5に示したように、互いに位相が180°異なる正弦波状に分布する。このため、電界エネルギーは開放端側で大きくなり、磁界エネルギーは逆に、短絡端側で大きくなる。特に、1/4波長共振器の中央部から開放端の間にはほとんどの電界エネルギーが集中し、逆に、中央部から短絡端の間にはほとんどの磁界エネルギーが集中する。本実施の形態における各1/4波長共振器11,21,31,41のように、開放端側に広い線路幅を有するステップインピーダンス共振器の場合には、特に、幅広の導体部分11A,21A,31A,41Aに電界エネルギーが集中する。
【0039】
ここで、図3には、上述の第1の共振モード(共振周波数f1)における電荷分布と電界ベクトルEおよび電流ベクトルiを示している。第1の共振モードでは、図3に示したように、各1/4波長共振器11,21,31,41において、開放端側に+電荷が集中し、短絡端側から開放端側に向けて電流が流れる。このとき、第1の基板10側においては、第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31とのそれぞれの開放端側に対向するように第1のシールド電極81が設けられているので、第1のシールド電極81には−電荷が分布する。このため、第1の基板10側においては、第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31とのそれぞれの開放端側から、第1のシールド電極81に向けて電界が発生する。上述したように1/4波長共振器において電界エネルギーは開放端側に集中するので、大部分の電界は第1の1/4波長共振器11および第3の1/4波長共振器31のそれぞれの開放端側と第1のシールド電極81との間に発生することになる。同様に、第2の基板20側においては、第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41とのそれぞれの開放端側に対向するように第2のシールド電極82が設けられているので、第2のシールド電極82には−電荷が分布する。このため、第2の基板20側においては、第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41とのそれぞれの開放端側から、第2のシールド電極82に向けて電界が発生する。上述したように1/4波長共振器において電界エネルギーは開放端側に集中するので、大部分の電界は第2の1/4波長共振器21および第4の1/4波長共振器41のそれぞれの開放端側と第2のシールド電極82との間に発生することになる。
【0040】
以上の原理により、この信号伝送装置では、第1の1/4波長共振器11において共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第1のシールド電極81によって覆われていることで、第1の1/4波長共振器11から第2の基板20側へと発生する電界分布が第1のシールド電極81を境界にして大幅に少なくなる(第1の1/4波長共振器11から第2の基板20側へと発生する電界の電界強度が第1のシールド電極81を境界にして大幅に小さくなる)。第2の1/4波長共振器21についても同様に、共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第2のシールド電極82によって覆われていることで、第2の1/4波長共振器21から第1の基板10側へと発生する電界分布が第2のシールド電極82を境界にして大幅に少なくなる(第2の1/4波長共振器21から第1の基板10側へと発生する電界の電界強度が第2のシールド電極82を境界にして大幅に小さくなる)。これにより、シールド電極の大きさを最適化することで、第1の共振部1を構成する第1の1/4波長共振器11と第2の第1の1/4波長共振器21とを主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態にすることが可能となる。第1の共振部1において、第1の基板10と第2の基板20との間の空気層等における電界分布が大幅に少なくなるので、第1の基板10と第2の基板20との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第1の共振部1における共振周波数の変動が抑えられる。すなわち、空気層等の厚みの変化によって、第1の基板10と第2の基板20との間、更には第1の基板10の第1の1/4波長共振器11と第2の基板20の第2の1/4波長共振器との間の実効誘電率の変動が抑えられる。
【0041】
同様に、第3の1/4波長共振器31において共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第1のシールド電極81によって覆われていることで、第3の1/4波長共振器31から第2の基板20側へと発生する電界分布が第1のシールド電極81を境界にして大幅に少なくなる(第3の1/4波長共振器31から第2の基板20側へと発生する電界の電界強度が第1のシールド電極81を境界にして大幅に小さくなる)。第4の1/4波長共振器41についても同様に、共振時に電界エネルギーが集中する開放端側が第2のシールド電極82によって覆われていることで、第4の1/4波長共振器41から第1の基板10側へと発生する電界分布が第2のシールド電極82を境界にして大幅に少なくなる(第4の1/4波長共振器41から第1の基板10側へと発生する電界の電界強度が第2のシールド電極82を境界にして大幅に小さくなる)。これにより、シールド電極の大きさを最適化することで、第2の共振部2を構成する第3の1/4波長共振器31と第4の1/4波長共振器41とを主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態にすることが可能となる。第2の共振部2において、第1の基板10と第2の基板20との間の空気層等における電界分布が大幅に少なくなるので、第1の基板10と第2の基板20との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第2の共振部2における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離Daの変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。すなわち、空気層等の厚みの変化によって、第1の基板10と第2の基板20との間、更には第1の基板10の第3の1/4波長共振器31と第2の基板20の第2の1/4波長共振器との間の実効誘電率の変動が抑えられる。
【0042】
[具体的な設計例およびその特性]
次に、本実施の形態に係る信号伝送装置の具体的な設計例およびその特性を、比較例の共振器構造の特性と比較して説明する。図9は、比較例の共振器構造201の具体的な設計例を示している。図10は、図9に示した共振器構造201における共振周波数特性を示している。この比較例の共振器構造201では、第1の基板10の裏面側に第1の1/4波長共振器11が形成され、第2の基板20の表面側に第2の1/4波長共振器21が形成されている。また、第1の基板10の表面側、および第2の基板20の裏面側にはグランド層としてのグランド電極91,92が配置されている。第1の1/4波長共振器11と第2の1/4波長共振器21は、空気層を介して互いの開放端と短絡端とが対向するような配置とされ、インターディジタル結合されている。
【0043】
図9の比較例の共振器構造201において、第1の基板10および第2の基板20の平面サイズはそれぞれ2mm角で、基板厚は100μm、比誘電率は3.85となっている。第1の1/4波長共振器11および第2の1/4波長共振器21はそれぞれ、一様な線路幅の電極パターンよりなり、平面サイズは、X方向の長さが1.5mm、Y方向の長さ(幅)が0.2mmとなっている。このような構成で、基板間の空気層の厚み(基板間距離Da)を10μm〜100μmまで変化させた場合の共振周波数を計算した結果が、図10である。この比較例の共振器構造201では、図10から分かるように、空気層の厚みの変化に対して共振周波数が最大で約70%変動している。これは、空気層の厚みの変化によって、第1の基板10および第2の基板20の間で実効比誘電率が変化するためである。
【0044】
図11〜図13は、本実施の形態に係る信号伝送装置における第1の共振部1の具体的な設計例を示している。図14は、図11〜図13に示した設計例における共振周波数特性を示している。この設計例では、第1の基板10および第2の基板20の平面サイズと基板厚は、図9に示した比較例の共振器構造201と同様の設計値にしている。第1の基板10および第2の基板20の比誘電率は3.5となっている。第1のシールド電極81および第2のシールド電極82のそれぞれの平面サイズは、図13に示したように、X方向の長さが1.1mm、Y方向の長さ(幅)が2mmとなっている。第1の1/4波長共振器11および第2の1/4波長共振器21のそれぞれの平面サイズは、短絡端側のX方向の長さが1mm、Y方向の長さ(幅)が0.15mmとなっている。開放端側は、X方向の長さが0.5mm、Y方向の長さ(幅)が0.4mmとなっている。このような構成で、基板間の空気層の厚み(基板間距離Da)を、比較例と同様に10μm〜100μmまで変化させた場合の共振周波数を計算した結果が、図14である。本実施の形態の共振器構造では、図14から分かるように、共振周波数の変化は少なく、空気層の厚みの変化に対して共振周波数は最大でも約4%程度しか変動していない。なお、図14の特性グラフにおいて、基板間距離Daの変化に対して共振周波数の値が上下に変化し、グラフが折れ線状になっているが、これは計算上の誤差であり、実際には基板間距離Daが大きくなるに従って共振周波数が次第に上昇するなだらかな曲線状のグラフになる。
【0045】
図15は、図11〜図13に示した設計例での第1の基板10と第2の基板20との間の電界強度分布を示している。図15から分かるように第1の基板10と第2の基板20との間では電界はほとんど発生していない。これは、上述したように、第1の基板10と第2の基板20との間で、第1の1/4波長共振器11および第2の1/4波長共振器21の開放端側が、第1のシールド電極81および第2のシールド電極82によって覆われているためである。短絡端側は、第1のシールド電極81および第2のシールド電極82によって覆われていないことから、第1の基板10と第2の基板20との間では、電界成分がほとんどなく磁界成分が主成分となる。なお、図15は前述の混成共振モードにおける第1の共振モードでの電界分布を示している。
【0046】
図16〜図19は、本実施の形態に係る信号伝送装置の共振器構造を応用したフィルタの設計例を示している。特に図17(A)は図16に示したフィルタにおける第1の基板10の表面側の構造を示し、図17(B)は第1の基板10の裏面側の構造を示している。図18(A)は図16に示したフィルタにおける第2の基板20の表面側の構造を示し、図18(B)は第2の基板20の裏面側の構造を示している。図19は、図16に示したフィルタにおける共振器部分の具体的な設計値を示している。
【0047】
このフィルタの共振器部分の基本的な構造は、図1〜図4に示した信号伝送装置と同様である。すなわち、第1の基板10の表面側には、第1の1/4波長共振器11と第3の1/4波長共振器31とが並列的に形成されている。第2の基板20の裏面側には、第2の1/4波長共振器21と第4の1/4波長共振器41とが並列的に形成されている。各1/4波長共振器11,21,31,41は、開放端側に幅広の導体部分11A,21A,31A,41Aを有したステップインピーダンス共振器(SIR)を構成している。また、第1の基板10の裏面側には第1のシールド電極81が形成され、第2の基板20の表面側には第2のシールド電極82が形成されている。第1の基板10の裏面側において、第1の1/4波長共振器11および第3の1/4波長共振器31の短絡端側に対応する位置には、第1の結合用窓81Aがされている。第2の基板20の表面側において、第2の1/4波長共振器21および第4の1/4波長共振器41の短絡端側に対応する位置には、第2の結合用窓82Aがされている。
【0048】
第1の基板10の表面側には、コプレーナ線路型の第1の導体線路71が形成されている。第1の導体線路71は、図17(A)に示したように、幅広の導体部分11Aよりも短絡端側において、第1の1/4波長共振器11に物理的に直接接続され、第1の1/4波長共振器11と直接的に導通されて、第1の共振部1A用の第1の信号引き出し電極を構成している。第1の導体線路71、第1の1/4波長共振器11および第3の1/4波長共振器31の周囲には、第1の基板10の表面および裏面を貫通し、表面と裏面とを導通するスルーホール73が設けられている。
【0049】
第2の基板20の裏面側には、コプレーナ線路型の第2の導体線路72が形成されている。第2の導体線路72は、図18(B)に示したように、幅広の導体部分41Aよりも短絡端側において、第4の1/4波長共振器41の物理的に直接接続され、第4の1/4波長共振器41と直接的に導通されて、第2の共振部2A用の第2の信号引き出し電極を構成している。第2の導体線路72、第2の1/4波長共振器21および第4の1/4波長共振器41の周囲には、第2の基板20の表面および裏面を貫通し、表面と裏面とを導通するスルーホール74が設けられている。
【0050】
このフィルタでは、例えば第1の基板10の表面側に形成された第1の導体線路71(第1の信号引き出し電極)から信号が入力され、第1の共振部1Aおよび第2の共振部2Aを経て、第2の基板20の裏面側に形成された第2の導体線路72(第2の信号引き出し電極)から信号が出力される。このような構成において、基板間の空気層の厚み(基板間距離Da)を50μm、100μm、150μmと変化させた場合の周波数特性を計算した結果が、図20である。図20では、フィルタとしての通過特性と反射特性を示す。図20から分かるようにフィルタとしての通過特性は、基板間距離Daの変化にほとんど影響を受けていないことが分かる。
【0051】
[効果]
本実施の形態に係る信号伝送装置によれば、第1の基板10と第2の基板20とに形成された各共振器について、共振時に電界エネルギーが集中する開放端側を第1のシールド電極81および第2のシールド電極82によって覆うような共振器構造にしたので、シールド電極の大きさを最適化することで、第1の基板10と第2の基板20との間では主として磁界成分による電磁結合がなされる状態にし、空気層等における電界分布を大幅に少なくすることができる。これにより、第1の基板10と第2の基板20との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、第1の共振部1および第2の共振部2における共振周波数の変動が抑えられる。結果として、基板間距離Daの変動による通過周波数および通過帯域の変動が抑えられる。
【0052】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
上記第1の実施の形態では、第1の基板10および第2の基板20の2つの基板による共振器構造の例を示したが、3つ以上の基板を対向配置させた多層構造であっても良い。図21は、n枚(n=3以上の整数)の基板を基板間距離Daを空けて互いに対向配置させた構成例を示している。このような多層構造の場合、最も上層の第1番目の基板10−1については、片側(裏面)のみに第1番目のシールド電極81−1を形成すれば良い。また、最も下層の第n番目の基板10−nについても、片側(表面)のみに第n番目のシールド電極81−nを形成すれば良い。中間の第2番目の基板10−2から第n−1番目の基板10−n−1については、両側(表面および裏面)に第2番目のシールド電極81−2から第n−1番目のシールド電極81−n−1を形成する。これにより、第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間では、第1番目の1/4波長共振器11−1の開放端側が第1番目のシールド電極81−1によって覆われ、第2番目の1/4波長共振器11−2の開放端側が第2番目のシールド電極81−2によって覆われる。これにより、第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間では、結合用窓81A−1,81A−2を介して第1番目の1/4波長共振器11−1と第2番目の1/4波長共振器11−2とが、主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態になる。これにより、第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、共振周波数の変動が抑えられる。以下、第2番目の基板10−2から第n番目の基板10−nまで、同様にして各基板間で、主として磁界成分による電磁結合(磁界結合)する状態になることで、各基板間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても共振周波数の変動が抑えられる。
【0054】
また、このような多層構造の場合においても、第1番目の1/4波長共振器11−1から第n番目の1/4波長共振器11−nまでが、全体として1つの結合共振器を構成し、複数の共振モードを有する混成共振モードで共振する。そして、複数の共振モードの内で最も低い共振周波数f1を有する共振モードでは、各基板間で各1/4波長共振器に流れる電流の向きが図3に示した場合と同様に同方向となる。また、各基板が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と、各基板が空気層等を介して互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。
【0055】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1または第2の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
上記第1の実施の形態では、第1の1/4波長共振器11と第2の1/4波長共振器21(または第3の1/4波長共振器31と第4の1/4波長共振器41)とを、互いの開放端同士および互いの短絡端同士が互いに対向するような配置にしたが、第1の1/4波長共振器11と第2の1/4波長共振器21とをインターディジタル結合したような配置であっても構わない。なお、インターディジタル結合とは、一端が短絡端とされ他端が開放端とされた2つの共振器を、一方の共振器の開放端と他方の共振器の短絡端とが対向すると共に、一方の共振器の短絡端と他方の共振器の開放端とが対向するように配置して電磁結合させる結合方法である。
【0057】
図22は、そのようなインターディジタル型の共振器構造の一例を示している。第1番目の基板10−1には第1番目の1/4波長共振器11−1が形成され、第2番目の基板10−2に対向する側において、開放端側が第1番目のシールド電極81−1によって覆われている。第2番目の基板10−2には第2番目の1/4波長共振器11−2が形成され、第1番目の基板10−1に対向する側において、開放端側が第2番目のシールド電極81−2によって覆われている。第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間では、結合用窓81A−1,81A−2を介して第1番目の1/4波長共振器11−1と第2番目の1/4波長共振器11−2とがインターディジタル結合する。このインターディジタル結合が、主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態になる。このインターディジタル型の共振器構造の場合においても、第1番目の1/4波長共振器11−1と第2番目の1/4波長共振器11−2とが、全体として1つの結合共振器を構成し、複数の共振モードを有する混成共振モードで共振する。そして、複数の共振モードの内で最も低い共振周波数f1を有する共振モードでは、各基板間で各1/4波長共振器に流れる電流の向きが同方向となる。また、各基板が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と、各基板が空気層等を介して互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。
【0058】
また、このようなインターディジタル型の共振器構造を、図21の構成例と同様にして多層構造にしても構わない。
【0059】
<第4の実施の形態>
次に、本発明の第4の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第3の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0060】
上記第1の実施の形態では、1/4波長共振器を用いた共振器構造の例を示したが、本発明は、1/2波長共振器を用いた共振器構造であっても良い。例えば、線路幅が一様な一般的な両端開放型の1/2波長共振器における共振時の電界強度分布(E)および磁界強度分布(H)は、図23に示したようになる。両端開放型の1/2波長共振器では、電界エネルギーは開放端側で大きくなり短絡端に相当する中心部で小さくなる。逆に、磁界エネルギーは、短絡端に相当する中心部で大きくなり、開放端側で小さくなる。従って、1/2波長共振器を対向させた共振器構造にする場合には、図24に示したように、両端の開放端側をシールド電極80A,80Bで覆うことで電界成分を小さくすることができる。図24では、開放端側が中央部に比べて広い線路幅を有するステップインピーダンス型の1/2波長共振器60の例を示しており、両端に幅広の導体部分60A,60Bが形成されている。このようなステップインピーダンス型の1/2波長共振器60を用いる場合には、1/4波長共振器の場合と同様に、特に、幅広の導体部分60A,60Bに電界エネルギーが集中する。このため、両端の幅広の導体部分60A,60Bがシールド電極80A,80Bによって覆われるようにし、中央部に結合用窓80Cを形成するようにすればよい。
【0061】
図25は、両端開放型の1/2波長共振器を2つ用いた場合の共振器構造の例を示している。この構成例では、第1番目の基板10−1には第1番目の1/2波長共振器60−1が形成され、第2番目の基板10−2に対向する側において、両端(開放端側)が第1番目のシールド電極80A−1,80B−1によって覆われている。第2番目の基板10−2には第2番目の1/2波長共振器60−2が形成され、第1番目の基板10−1に対向する側において、両端(開放端側)が第2番目のシールド電極80A−2,80B−2によって覆われている。第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間では、中央の結合用窓81C−1,81C−2を介して第1番目の1/2波長共振器60−1と第2番目の1/2波長共振器60−2とが、主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する。この共振器構造の場合においても、第1番目の1/2波長共振器60−1と第2番目の1/2波長共振器60−2とが、全体として1つの結合共振器を構成し、複数の共振モードを有する混成共振モードで共振する。そして、複数の共振モードの内で最も低い共振周波数f1を有する共振モードでは、各基板間で各1/2波長共振器に流れる電流の向きが、同一の対向位置では同方向となる。また、各基板が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と、各基板が空気層等を介して互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。
【0062】
<第5の実施の形態>
次に、本発明の第5の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第4の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0063】
上記第4の実施の形態では、2つの基板に両端開放型の1/2波長共振器を設けた共振器構造の例を示したが、1/4波長共振器を用いた場合(図21)と同様に、3つ以上の基板を対向配置させた多層構造であっても良い。図26は、n枚(n=3以上の整数)の基板を基板間距離Daを空けて互いに対向配置させた構成例を示している。このような多層構造の場合、最も上層の第1番目の基板10−1については、片側(裏面)のみに第1番目のシールド電極80A−1,80B−1を形成すれば良い。また、最も下層の第n番目の基板10−nについても、片側(表面)のみに第n番目のシールド電極80A−n,80B−nを形成すれば良い。中間の第2番目の基板10−2から第n−1番目の基板10−n−1については、両側(表面および裏面)に第2番目のシールド電極80A−2,80B−2から第n−1番目のシールド電極80A−n−1,80B−n−1を形成する。これにより、第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間では、第1番目の1/2波長共振器60−1の両端(開放端側)が第1番目のシールド電極80A−1,80B−1によって覆われ、第2番目の1/2波長共振器60−2の両端(開放端側)が第2番目のシールド電極80A−2,80B−2によって覆われる。これにより、第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間では、中央の結合用窓81C−1,81C−2を介して第1番目の1/2波長共振器60−1と第2番目の1/2波長共振器60−2とが、主として磁界成分によって電磁結合(磁界結合)する状態になる。これにより、第1番目の基板10−1と第2番目の基板10−2との間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても、共振周波数の変動が抑えられる。以下、第2番目の基板10−2から第n番目の基板10−nまで、同様にして各基板間で、主として磁界成分による電磁結合(磁界結合)する状態になることで、各基板間で空気層等の基板間距離Daに変動があったとしても共振周波数の変動が抑えられる。
【0064】
また、このような多層構造の場合においても、第1番目の1/2波長共振器60−1から第n番目の1/2波長共振器60−nまでが、全体として1つの結合共振器を構成し、複数の共振モードを有する混成共振モードで共振する。そして、複数の共振モードの内で最も低い共振周波数f1を有する共振モードでは、各基板間で各1/2波長共振器に流れる電流の向きが、同一の対向位置では同方向となる。また、各基板が互いに電磁結合しないよう十分に離間した状態での周波数特性と、各基板が空気層等を介して互いに電磁結合している状態での周波数特性とが異なる状態となる。
【0065】
<第6の実施の形態>
次に、本発明の第6の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第5の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0066】
上記各実施の形態では、各基板に形成された共振器とシールド電極との間には基板の誘電体層のみが存在する構成にしたが、特に開放端側には、共振器とシールド電極との間にコンデンサ電極が設けられていても良い。これにより、開放端側に電界エネルギーをより集中させることができ、その電界エネルギーが集中した部分をシールド電極で覆うことにより、基板間の電界成分をより少なくすることができる。また、共振器としての小型化が可能になる。
【0067】
図27は、例えば図21に示した1/4波長共振器を用いた多層構造の第1番目の基板10−1において、第1番目の1/4波長共振器11−1と第1番目のシールド電極81−1との間にコンデンサ電極91を設けた例を示している。コンデンサ電極91は、コンタクトホール92を介して第1番目の1/4波長共振器11−1の開放端側に導通されている。他の第2番目の基板10−2から第n番目の基板10−nについても同様に、コンデンサ電極を設けても良い。
【0068】
図28は、例えば図26に示した1/2波長共振器を用いた多層構造の第1番目の基板10−1において、第1番目の1/2波長共振器60−1の両端と第1番目のシールド電極80A−1,80B−1との間にコンデンサ電極91A,91Bを設けた例を示している。コンデンサ電極91A,91Bは、コンタクトホール92A,92Bを介して第1番目の1/2波長共振器60−1の両端(開放端側)に導通されている。他の第2番目の基板10−2から第n番目の基板10−nについても同様に、コンデンサ電極を設けても良い。
【0069】
<第7の実施の形態>
次に、本発明の第7の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第6の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0070】
上記第1の実施の形態では、図2に示したように、短絡端側の線路幅が狭く、開放端側の線路幅が広い、2段階の線路幅を有するステップインピーダンス型の1/4波長共振器の構成例を挙げたが、1/4波長共振器の形状は図2に示したようなものには限らない。例えば図29に示した1/4波長共振器50のように、短絡端側から開放端側に行くに従い、曲線状に線路幅が広くなるようなものであって構わない。このような場合においても、なるべく開放端から線路の中央部までを含む領域を、シールド電極51によって覆うことが好ましい。1/2波長共振器を用いる場合にも、その形状は図24に示したようなものには限らず、種々の形状であっても良い。
【0071】
<第8の実施の形態>
次に、本発明の第8の実施の形態に係る信号伝送装置について説明する。なお、上記第1ないし第7の実施の形態に係る信号伝送装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0072】
図30は、本発明の第8の実施の形態に係る信号伝送装置の一断面の構造を示している。上記第1の実施の形態では、信号入出力用の第1の信号引き出し電極を、例えば第1の基板10に形成された第1の1/4波長共振器11に物理的に直接接続して導通するものとして説明したが、図30に示したように、第1の1/4波長共振器11に対して間隔を空けて配置された第1の信号引き出し電極53を設けるようにしても良い。この場合、第1の信号引き出し電極53を、第1の共振部1の共振周波数f1と同様の共振周波数f1で共振する共振器で構成する。これにより、第1の信号引き出し電極53と第1の共振部1とが、共振周波数f1で電磁結合される。
【0073】
同様に、上記第1の実施の形態では、信号入出力用の第2の信号引き出し電極を、例えば第2の基板20に形成された第4の1/4波長共振器41に物理的に直接接続して導通するものとして説明したが、図30に示したように、第4の1/4波長共振器41に対して間隔を空けて配置された第2の信号引き出し電極54を設けるようにしても良い。この場合、第2の信号引き出し電極54を、第2の共振部2の共振周波数f1と同様の共振周波数f1で共振する共振器で構成する。これにより、第2の信号引き出し電極54と第2の共振部2とが、共振周波数f1で電磁結合される。
【0074】
<その他の実施の形態>
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、第1の共振部1と第2の共振部2との双方を、実質的に同一の共振機器構造で構成したが、例えば第2の共振部2の方を別の共振機器構造で構成しても良く、各基板間に形成された共振器の少なくとも開放端側を各基板間でシールド電極で覆うように構成されていれば良い。また、上記第1の実施の形態では、第1の共振部1と第2の共振部2との2つの共振部が並列配置されていたが、3つ以上の共振部が並列配置されていても良い。さらに、上記各実施の形態では、誘電体基板にλ/4波長共振器またはλ/2波長共振器を形成した例を挙げたが、これに限らず、3λ/4波長共振器やλ波長共振器等でも良く、開放端を有し、共振器単独の共振周波数がf0である線路型共振器であれば良い。
【0075】
また、上記第1の実施の形態では、第1の基板10と第2の基板20の比誘電率を等しくしていたが、第1の基板10と第2の基板20のそれぞれの比誘電率が異なっていても良く、第1の基板10と第2の基板20の少なくとも一方の比誘電率とは異なる比誘電率を有する層を挟んでいれば良い。他の実施の形態についても同様である。また、本発明の信号伝送装置としては、アナログ信号やデジタル信号等の送信/受信のための信号伝送装置のみならず、電力の送電/受電のための信号伝送装置をも含む。本発明の信号伝送装置の技術は、非接触給電や、近接無線伝送技術に応用可能である。
【0076】
さらに、上記第1の実施の形態では、例えば第1の信号引き出し電極を第1の基板10側に形成し、第2の信号引き出し電極を第2の基板20側に形成して別々の基板間での信号伝送を行う例を挙げたが、各引き出し電極を同一の基板上に形成して基板内での信号伝送を行うようにしても良い。例えば、第1の信号引き出し電極を第2の基板20側の裏面側に形成すると共に第2の1/4波長共振器21に接続し、第2の信号引き出し電極を第2の基板20の裏面側に形成すると共に第4の1/4波長共振器41に接続することで、第2の基板20内での信号伝送を行うようにしても良い。この場合、信号の伝送方向は第2の基板20内であるが、第1の基板10側の共振器も利用して(上下方向の体積を利用して)信号を伝送するので、例えばフィルタとして特定の周波数を選択して信号を伝送する場合において、第2の基板20上の電極パターンのみを用いて伝送する場合に比べて、平面方向の面積を抑えることができる。すなわち、平面方向の面積を抑えつつ、フィルタとして基板内での信号伝送を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1A…第1の共振部、2,2A…第2の共振部、10…第1の基板、10−1…第1の基板、10−2…第2の基板、10−n…第nの基板、11…第1の1/4波長共振器、11−1…第1番目の1/4波長共振器、11−2…第2番目の1/4波長共振器、11−n…第n番目の1/4波長共振器、11A,21A,31A,41A…幅広の導体部分、20…第2の基板、21…第2の1/4波長共振器、31…第3の1/4波長共振器、41…第4の1/4波長共振器、50…1/4波長共振器、51…シールド電極、53…第1の信号引き出し電極、54…第2の信号引き出し電極、60…1/2波長共振器、60A,60B…幅広の導体部分、71…第1の導体線路(第1の信号引き出し電極)、72…第2の導体線路(第2の信号引き出し電極)、73,74…スルーホール、80A,80B…シールド電極、80C…結合用窓、80C−1…第1の結合用窓、80C−2…第2の結合用窓、80C−n…第nの結合用窓、81…第1のシールド電極、81−1…第1番目のシールド電極、81−2…第2番目のシールド電極、81−n…第n番目のシールド電極、82…第2のシールド電極、81A…第1の結合用窓、82A…第2の結合用窓、81A−1,81A−2,81A−n…結合用窓、91,91A,91B…コンデンサ電極、92,92A,92B…コンタクトホール、101…結合共振器、110…第1の基板、111,121…共振器、120…第2の基板、201…比較例の共振器構造、Da…基板間距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における第1の領域に形成され、開放端を有する第1の共振器と、
前記第1の共振器と前記第2の基板との間で、少なくとも前記第1の共振器の開放端を覆うように前記第1の共振器を部分的に覆う第1のシールド電極と、
前記第2の基板における前記第1の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、前記第1の共振器に電磁結合する第2の共振器と、
前記第2の共振器と前記第1の基板との間で、少なくとも前記第2の共振器の開放端を覆うように前記第2の共振器を部分的に覆う第2のシールド電極と、
前記第1の共振器と前記第2の共振器とが電磁結合することによって形成された第1の共振部と、
前記第1の共振部に対して第2の方向に並列的に配置され、前記第1の共振部に電磁結合されて前記第1の共振部との間で信号伝送を行う第2の共振部と
を備えた信号伝送装置。
【請求項2】
前記第1および第2の共振器はそれぞれ、一端が開放端、他端が短絡端とされ、かつ、開放端側が短絡端側に比べて広い線路幅を有する線路型共振器であり、
前記第1のシールド電極は、少なくとも前記第1の共振器における広い線路幅を有する部分を覆うように設けられ、
前記第2のシールド電極は、少なくとも前記第2の共振器における広い線路幅を有する部分を覆うように設けられている
請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
前記第1および第2の共振器はそれぞれ、両端が開放端とされ、かつ、開放端側が中央部に比べて広い線路幅を有する線路型共振器であり、
前記第1のシールド電極は、少なくとも前記第1の共振器における広い線路幅を有する部分を覆うように設けられ、
前記第2のシールド電極は、少なくとも前記第2の共振器における広い線路幅を有する部分を覆うように設けられている
請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
前記第1の共振器の開放端に導通されると共に、前記第1の共振器の開放端と前記第1のシールド電極との間に設けられた第1のコンデンサ電極と、
前記第2の共振器の開放端に導通されると共に、前記第2の共振器の開放端と前記第2のシールド電極との間に設けられた第2のコンデンサ電極とをさらに備えた
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
前記第1の共振器と前記第2の基板との間に設けられ、前記第1の共振器と前記第2の共振器とを電磁結合させるための第1の結合用窓と、
前記第2の共振器と前記第1の基板との間に設けられ、前記第1の共振器と前記第2の共振器とを電磁結合させるための第2の結合用窓とをさらに備えた
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
前記第1の基板における第2の領域に形成され、開放端を有する第3の共振器と、
前記第3の共振器と前記第2の基板との間で、少なくとも前記第3の共振器の開放端を覆うように前記第3の共振器を部分的に覆う第3のシールド電極と、
前記第2の基板における前記第2の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、前記第3の共振器に電磁結合する第4の共振器と、
前記第4の共振器と前記第1の基板との間で、少なくとも前記第4の共振器の開放端を覆うように前記第4の共振器を部分的に覆う第4のシールド電極とをさらに備え、
前記第2の共振部は、前記第3の共振器と前記第4の共振器とが電磁結合することによって形成されている
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
前記第1の基板に形成されると共に、前記第1の共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、
前記第2の基板に形成されると共に、前記第4の共振器に物理的に直接接続、または前記第2の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極と
をさらに備え、
前記第1の基板と前記第2の基板との間で信号伝送を行う
請求項6に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
前記第2の基板に形成されると共に、前記第2の共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、
前記第2の基板に形成されると共に、前記第4の共振器に物理的に直接接続、または前記第2の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極と
をさらに備え、
前記第2の基板内で信号伝送を行う
請求項6に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
前記第1の共振部は、前記第1の共振器と前記第2の共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として所定の共振周波数で共振する1つの結合共振器を構成し、かつ、前記第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では前記第1の共振器と前記第2の共振器とがそれぞれ、前記所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされ、
前記第2の共振部は、前記第3の共振器と前記第4の共振器とが混成共振モードで電磁結合することにより全体として前記所定の共振周波数で共振する他の1つの結合共振器を構成し、かつ、前記第1および第2の基板が互いに電磁結合しないよう離間した状態では前記第3の共振器と前記第4の共振器とがそれぞれ、前記所定の共振周波数とは異なる他の共振周波数で共振するものとされている
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の信号伝送装置。
【請求項10】
間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における第1の領域に形成され、開放端を有する第1の共振器と、
前記第1の共振器と前記第2の基板との間で、少なくとも前記第1の共振器の開放端を覆うように前記第1の共振器を部分的に覆う第1のシールド電極と、
前記第2の基板における前記第1の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、前記第1の共振器に電磁結合する第2の共振器と、
前記第2の共振器と前記第1の基板との間で、少なくとも前記第2の共振器の開放端を覆うように前記第2の共振器を部分的に覆う第2のシールド電極と、
前記第1の共振器と前記第2の共振器とが電磁結合することによって形成された第1の共振部と、
前記第1の共振部に対して第2の方向に並列的に配置され、前記第1の共振部に電磁結合されて前記第1の共振部との間で信号伝送を行う第2の共振部と
を備えたフィルタ。
【請求項11】
間隔を空けて第1の方向に互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における第1の領域に形成され、開放端を有する第1の共振器と、
前記第1の共振器と前記第2の基板との間で、少なくとも前記第1の共振器の開放端を覆うように前記第1の共振器を部分的に覆う第1のシールド電極と、
前記第2の基板における前記第1の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、前記第1の共振器に電磁結合する第2の共振器と、
前記第2の共振器と前記第1の基板との間で、少なくとも前記第2の共振器の開放端を覆うように前記第2の共振器を部分的に覆う第2のシールド電極と、
前記第1の基板における第2の領域に形成され、開放端を有する第3の共振器と、
前記第3の共振器と前記第2の基板との間で、少なくとも前記第3の共振器の開放端を覆うように前記第3の共振器を部分的に覆う第3のシールド電極と、
前記第2の基板における前記第2の領域に対応する領域に形成されると共に、開放端を有し、前記第3の共振器に電磁結合する第4の共振器と、
前記第4の共振器と前記第1の基板との間で、少なくとも前記第4の共振器の開放端を覆うように前記第4の共振器を部分的に覆う第4のシールド電極と
前記第1の共振器と前記第2の共振器とが電磁結合することによって形成された第1の共振部と、
前記第3の共振器と前記第4の共振器とが電磁結合することによって形成されると共に、前記第1の共振部に対して第2の方向に並列的に配置され、前記第1の共振部に電磁結合されて前記第1の共振部との間で信号伝送を行う第2の共振部と、
前記第1の基板に形成されると共に、前記第1の共振器に物理的に直接接続、または前記第1の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第1の信号引き出し電極と、
前記第2の基板に形成されると共に、前記第4の共振器に物理的に直接接続、または前記第2の共振部に対して間隔を空けて電磁結合された第2の信号引き出し電極と
備え、
前記第1の基板と前記第2の基板との間で信号伝送を行う
基板間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−70080(P2012−70080A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211148(P2010−211148)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】