説明

信号伝送装置、電子機器、及び、信号伝送方法

【課題】メモリカードと電子機器との間の信号伝送を高速・大容量で実現する。
【解決手段】電子機器101とメモリカード201との無線の結合において、両者が予め定められた位置に配置されたとき、両者間間に、2つの導波路の長手方向の断面同士が相対して電波同士を結合する結合部を配置する。例えば、電子機器101側では、伝送路結合部108のアンテナ136と導波管146とを一体化し、メモリカード201側では、伝送路結合部208のアンテナ236と導波管246とを一体化し、導波管146と導波管246との間に誘電体導波管142を介在させる。2つの導波路の各端面の対向部分では、電波が同じモードで結合されるから、位置ずれがあっても“モードが不安定な状態”で結合するということが解消され電波が伝わり易くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は信号伝送装置、電子機器、及び、信号伝送方法に関する。詳細には、一方の電子機器が他方の(例えば本体側の)電子機器に装着されるときの両電子機器間の信号伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一方の電子機器が他方の電子機器に装着された状態で信号伝送を行なうことがある。例えば、中央演算処理装置(CPU)や不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)等が内蔵されたいわゆるICカードやメモリカードを代表例とするカード型の情報処理装置を本体側の電子機器に装着可能(着脱自在)にしたものがある(特開2001−195553号公報及び特開2007−299338号公報を参照)。一方(第1)の電子機器の一例であるカード型の情報処理装置を以下では「カード型装置」とも称する。本体側となる他方(第2)の電子機器を以下では単に電子機器とも称する。本体側の電子機器にカード型装置を装着することで、データの持出しや記憶容量の増大や付加機能の追加等、機能拡張を実現できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−195553号公報
【特許文献2】特開2007−299338号公報
【0004】
電子機器とカード型装置との電気的な接続をとる場合、従来は、電子機器にカード型装置をコネクタ(電気的な接続手段)を介して装着することで実現している。例えば、メモリカードと電気的なインタフェースの接続を行なうために、メモリカードには端子部が設けられるとともに電子機器にはスロット構造(装着構造の一例)が設けられ、メモリカードを電子機器のスロット構造に挿入しての端子部同士を接触させる。電気配線により信号インタフェースをとるという考え方である。一般的には、端子部やスロット構造を始めとする筐体形状や信号インタフェースには規格があり、その規格に従って両者の電気的かつ機械的なインタフェースが画定されるようになっている。
【0005】
例えば、特開2001−195553号公報(段落19、図2〜図5)には、コントローラLSI21の内部にカードインタフェース21fが設けられ、カードインタフェース21fが複数の信号ピン(端子部に相当)を介して電子機器と接続されることが示されている。特開2007−299338号公報(段落42、図1、図3、図5等)には、規格化された筐体19の決められた箇所で外部機器(電子機器に相当)と接続するための配線パターンと導電ビアを介して接続した外部接続端子24(端子部に相当)が設けられることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スロット構造の端子部を介して電気的接触(つまり電気配線)により電子機器とカード型装置との間で信号伝送を行なう場合、次のような問題がある。
【0007】
1)電気配線による信号伝送では、伝送速度・伝送容量には限界がある。例えば、電気配線で高速信号伝送を実現する手法として、LVDS(LowVoltage Differential Signaling )が知られており、その仕組みを適用することが考えられる。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
2)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とすことが考えられる。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまい、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等の弊害が起こる。
3)電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、電磁界障害の問題が起き、その対策のために、電子機器やカード型装置の構成が複雑化する弊害が起こる。高速・大容量のデータを配線で引き回す場合には、電磁界障害が顕著に問題となる。又、カード型装置において端子をむき出しにする場合には静電気破壊の問題がある。
【0008】
このように、電子機器とカード型装置の信号を電気配線で伝送するには、依然として解決しなければならない難点がある。
【0009】
ここでは、カード型装置と本体側の電子機器との間での電気配線を用いた信号伝送における問題点を説明したが、これらの問題点は、カード型装置との関係に限らない。一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間において、電気配線を用いて信号伝送を行なう場合にも同様のことが言える。
【0010】
本開示は、一方の電子機器が他方の電子機器に装着された状態で信号伝送を行なう場合において、前述の1)〜3)の問題点の少なくとも1つを解消しつつ、映像信号やコンピュータ画像等の高速性・大容量性が求められる信号を電気配線によらずに伝送することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様に係る信号伝送装置は、伝送対象信号を無線信号にして第1の導波路を介して送信する送信装置と、送信装置から送信された伝送対象信号の無線信号を第2の導波路を介して受信する受信装置とを備え、送信装置と受信装置との間では、第1の導波路と第2の導波路とが対面して無線信号を伝送する。本発明の第1の態様に係る信号伝送装置の従属項に記載された各信号伝送装置は、本発明の第1の態様に係る信号伝送装置のさらなる有利な具体例を規定する。
【0012】
第2の態様に係る電子機器は、第1の導波路を具備した第1の電子機器と、第2の導波路を具備し、第1の電子機器と装着可能な第2の電子機器とを備えて、電子機器の全体が構成される。第1の電子機器と第2の電子機器との間では、第1の導波路と第2の導波路とが対面して無線信号を伝送する。
【0013】
第3の態様に係る電子機器は、第1の導波路を具備している。そして、第2の導波路を具備した他の電子機器と装着されることで、第1の導波路と第2の導波路とが対面して無線信号を伝送する。本発明の第2及び第3の態様に係る電子機器の従属項に記載された各電子機器は、本発明の第2と第3の態様に係る電子機器のさらなる有利な具体例を規定する。
【0014】
第4の態様に係る信号伝送方法は、第1の電子機器と第2の電子機器とを装着して、両者間で無線により信号伝送を行なうに当たり、先ず、第1の電子機器に第1の導波路を設け、第2の電子機器に第2の導波路を設ける。第1の電子機器と第2の電子機器との間では、第1の導波路と第2の導波路とを対面させて無線信号を伝送する。詳しくは、電子機器同士を予め定められた位置で装着した際に、2つの導波路の長手方向の端面同士が相対して無線信号を結合する結合部が配置されるようにする。第1の電子機器と第2の電子機器との間では、伝送対象信号を電波に変換してから、電波を結合部を介して伝送する。
【0015】
要するに、導波路の端面を電波がインタフェースすることで相互に電波を伝送する伝送結合部が構成される。導波路の端面を介して電波が伝搬する構成にすれば、導波路の端面同士の対向部分では、電波が同じモード(例えばTEモード或いはTMモード)で結合されるから、位置ずれがあっても“モードが不安定な状態”で結合するということが解消され電波が伝わり易くなる。非接触部分がずれた場合でも安定した信号伝送を行なうことができる。
【発明の効果】
【0016】
装着された電子機器間で信号伝送を行なう場合に、無線(詳しくは電波)で信号伝送を行なうので、電気配線では実現困難な伝送速度・伝送容量の信号インタフェースを実現できる。その際、電気配線により接続をとる場合のように多配線を必要としないので、筐体形状や構造が複雑化することがない。端子数が多いコネクタ及び信号配線に依存することなく、一方向または双方向に、電波で、簡単かつ安価な構成で、電子機器間の信号インタフェースを構築できる。そして、この際に、導波路の端面を介して電波を結合するので、装着時の位置ずれの影響を緩和でき安定した信号伝送を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第1例の信号伝送装置を説明する図である。
【図2】図2は、第2例の信号伝送装置を説明する図である。
【図3】図3は、本実施形態の電波伝送構造に対する第1比較例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。
【図4】図4(A)〜図4(C)は、第1比較例の電子機器を説明する図である。
【図5】図5(A)〜図5(C)は、第2比較例の電子機器を説明する図である。
【図6】図6(A)〜図6(B)は、本実施形態の電波伝送構造に対する第2比較例を説明する図である。
【図7】図7(A)〜図7(B)は、本実施形態の電波伝送構造の基本構成を説明する図である。
【図8】図8(A)〜図8(C)は、実施例1の電子機器を説明する図である。
【図9】図9(A)〜図9(C)は、実施例2の電子機器を説明する図である。
【図10】図10は、実施例2の電子機器を説明する図である。
【図11】図11は、実施例3の電子機器を説明する図である。
【図12】図12は、実施例4の電子機器を説明する図である。
【図13】図13は、実施例5の電子機器を説明する図である。
【図14】図14は、電波伝送構造の第1変形例を説明する図である。
【図15】図15は、電波伝送構造の第2変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各機能要素について形態別に区別する際にはアルファベット或いは“_@”(@は数字)或いはこれらの組合せの参照子を付して記載し、特に区別しないで説明する際にはこの参照子を割愛して記載する。図面においても同様である。
【0019】
説明は以下の順序で行なう。
1.全体概要
2.通信処理系統:第1例(電力の無線伝送なし)
3.通信処理系統:第2例(電力の無線伝送あり)
4.電波伝送構造:基本
5.具体的な適用例
実施例1:カード媒体への適用、基板上に導波管を形成
実施例2:カード媒体への適用、基板内に導波管を形成
実施例3:カード媒体への適用、基板上に導波管を形成+(電力の無線伝送あり)
実施例4:カード媒体への適用+「載置」の形態
実施例5:画像機器への適用+「載置」の形態
【0020】
<全体概要>
本開示においては、第1の電子機器と第2の電子機器とが予め定められた位置に配置されるときに、両者間で伝送対象信号を無線(電波)で伝送する信号伝送装置を備える。例えば第2の電子機器の装着構造に第1の電子機器が装着された状態(換言すると両者が比較的近距離に配置された状態)での両電子機器の間では、伝送対象信号を電波にして、この電波を無線信号伝送路を介して伝送する。本開示の「無線伝送」とは、伝送対象信号を電気配線や光ではなく電波で伝送することを意味する。先ず、基本的な事項について以下に説明する。
【0021】
[信号伝送装置、電子機器、信号伝送方法]
本実施形態においては、伝送対象信号を無線信号にして第1の導波路を介して送信する送信装置と、送信装置から送信された伝送対象信号の無線信号を第2の導波路を介して受信する受信装置とを備える。送信装置と受信装置との間では、第1の導波路の端面と第2の導波路の端面とが対面して無線信号を伝送する。詳しくは、送信装置と受信装置とが予め定められた位置に配置されたとき、送信装置と受信装置との間に、第1の導波路と第2の導波路(以下纏めて「2つの導波路」と記すこともある)の長手方向の端面(以下では便宜的に「断面」と記すこともある)同士が相対して電波同士を結合する結合部が配置されるようにする。こうすることで、送信装置と受信装置との間では、伝送対象信号を電波に変換してから、電波を結合部を介して伝送することができる。伝送対象信号を無線信号として送信する送信装置(送信側の通信装置)と、送信装置から送信された無線信号を受信して伝送対象信号を再生する受信装置(受信側の通信装置)とで伝送対象信号用の信号伝送装置が構成される。
【0022】
送信装置や受信装置は電子機器に設けられる。各電子機器に送信装置と受信装置の双方を設ければ双方向通信に対応できる。電子機器同士を予め定められた位置で装着して、両者間で電波により信号伝送を行なうに当たっては、2つの導波路の長手方向の断面同士が相対して電波同士を結合する結合部が配置されるようにする。電子機器間では、伝送対象信号を電波に変換してから電波を結合部を介して伝送することができる。
【0023】
信号伝送装置は、各種の伝送対象信号の内、高速性や大容量性が求められる信号のみを電波への変換対象とし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関しては電波への変換対象としない態様としてもよいし、更にはその他の低速・小容量で十分なものも電波への変換対象に含めてもよい。後述のように、電源についても電力供給装置と電力受取装置とにより無線で伝送するとよりよい。即ち、高速性や大容量性が求められる信号の他に、その他の低速・小容量で十分なものを電波で伝送してもよく、電源(電力)も含む全ての信号を無線により伝送すれば更によい。無線での伝送の対象としない信号については、従前のようにコネクタ接続で行なう。電波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。因みに、電源(電力)も無線で行なう場合には、電力伝送と信号伝送とをそれぞれ異なる信号で行なえばよく、その限りにおいて電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせてもよいし同じにしてもよい。但し、電力伝送信号によるノイズ等の影響を防止する観点では、好ましくは、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とを異ならせる。電力伝送信号の周波数が情報の無線通信に使用する周波数帯域と重なっていなければよく、その限りにおいて種々の周波数を使用してよい。又、適用できる変調方式には制限があるが、電力伝送効率の低下が許容される場合には、信号伝送と電力伝送の各搬送波を共通にしてもよい(この場合、電力伝送信号の周波数と信号伝送用の搬送信号の周波数とは同じになる)。
【0024】
信号伝送に電波を使用すれば、電気配線や光を使用する場合の問題は起きない。即ち、信号伝送を、電気配線や光によらずに電波を利用すれば、無線通信技術を適用でき、電気配線を使用する場合の難点を解消できるし、光を利用する場合よりも簡単かつ安価な構成で信号インタフェースを構築できる。サイズ・コストの面で、光を利用する場合よりも有利である。好ましくは、本発明においては、信号伝送は、ミリ波帯(波長が1〜10ミリメートル)の搬送周波数を主に使用するのが好適である。但し、ミリ波帯に限らず、より波長の短い例えばサブミリ波帯(波長が0.1〜1ミリメートル)やより波長の長いセンチ波帯(波長が1〜10センチメートル)等、ミリ波帯近傍の搬送周波数を使用する場合にも適用可能である。例えば、サブミリ波帯〜ミリ波帯、ミリ波帯〜センチ波帯、或いはサブミリ波帯〜ミリ波帯〜センチ波帯を使用してよい。信号伝送にミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、他の電気配線に対して妨害を与えずに済み、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を信号伝送に使ったときのようなEMC対策の必要性が低くなる。ミリ波帯或いはその近傍を使用すれば、電気配線(例えばフレキシブルプリント配線)を使ったときよりもデータレートを大きくとれるので、高精細化やフレームレートの高速化による画像信号の高速化等、高速・高データレートの伝送にも簡単に対応できる。
【0025】
本実施形態においては、好ましくは、2つの導波路の内の少なくとも一方は、電波を伝送可能な特性を持つ誘電体素材が充填されているのがよい。例えば、電子機器同士が装着されたときに両者の位置合わせを行なう位置合わせ構造を設ける。そして、位置合わせ構造の部分に結合部を配置する。アンテナ同士を対向させるためのガイドにするためである。好ましくは、位置合わせ構造は、電子機器同士の装着状態を嵌合構造により規定する構造を有するとよい。そして、位置合わせ構造には、電波を伝送路中に閉じ込めつつ電波を伝送させる構造を持たせる。このためには例えば、位置合わせ構造には、電波を伝送可能な特性を持つ誘電体素材を充填するとよい。位置合わせ構造を利用して導波路を設け、その導波路は、導体等の遮蔽材で周囲が取り囲まれた構造にして電波をその内部に閉じ込める構造とする。その内部を空洞とした中空導波路にしてもよいが、更に好ましくは、その内部を誘電体素材で充填して誘電体伝送路にするとよい。導波路内に誘電体素材を詰め込むと、多重反射を抑制できるし、導波路の断面サイズ(例えば管径)を小型化できる。
【0026】
本実施形態においては、好ましくは、2つの導波路の内の一方は、他方の導波路と反対側に、高周波信号が伝送される高周波信号伝送路と電磁気的に結合されるアンテナを有する構造にする。送信側及び受信側のそれぞれにおいて、アンテナと導波路との相対的な位置関係は許容される範囲内で多少のバラツキ或いはがたつきがあってもよい。但し、好ましくは、少なくともアンテナと導波路の一方とを一体にするとよく、高周波信号伝送路とアンテナと導波路の一方とを一体にすると更によくなる。他方の導波路に関して、一方の導波路と反対側において、高周波信号が伝送される高周波信号伝送路と電磁気的に結合されるアンテナを有する構造にしてもよい。要するに、1つの導波路の両端にそれぞれ、更なる導波路を配置し、そのそれぞれの両端の導波路について、高周波信号が伝送される高周波信号伝送路と電磁気的に結合されるアンテナを有する構造にするのである。或いはこの場合に、中間に配される導波路を取り外して、アンテナと導波路とが一体になっている送信装置(一方の電子機器)とアンテナと導波路とが一体になっている受信装置(他方の電子機器)とし、このような状態の送信装置と受信装置との間において、2つの導波路の長手方向の端面同士が相対して電波同士を結合する結合部が配置されるようにしてもよい。アンテナと導波路の一方を一体にするに当たっては、更には高周波信号伝送路も一体にするに当たっては、それらを同じ回路基板に形成するのが製造上都合がよい。アンテナは、パッチアンテナの他に、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)等を使用できるが、特にパッチアンテナを使用するとよい。
【0027】
例えば、回路基板における2つの導波路の内の他方側の面上に、一方の導波路を構成する導体を接着剤その他の固定部材で固定するとよい。一方の導波路を構成する導体は、回路基板の厚さ方向に配置する。或いは、回路基板内において、その厚さ方向に、一方の導波路を形成してもよい。回路基板と電子機器の筐体との隙間に一方の導波路を配置してもよいが、この場合、他方の導波路との間には電子機器の筐体が挟まれるので、その筐体における少なくとも2つの導波路の対向部分は、誘電体素材で構成されているのがよい。
【0028】
アンテナに関しては、送信装置と受信装置とが予め定められた位置に配置されたとき、換言すると、電子機器同士を予め定められた位置で装着して、両者間で電波により信号伝送を行なうとき、送信側のアンテナと受信側のアンテナが導波路を挟んで対向するような位置に配置されるようにする。例えば、パッチアンテナを使用する場合であれば、第1の電子機器の伝送路結合部のパッチアンテナと第2の電子機器の伝送路結合部のパッチアンテナが対向し、かつ、各パッチアンテナの中心と無線信号伝送路をなす各導波路の中心が一致するように配置する。
【0029】
好ましくは、各信号結合部と高周波信号伝送路の構成を、電子機器間の装着構造に適用するのがよい。例えば、規格によっては、装着構造の形状・位置等についても規格化されている場合がある。この場合、その装着構造の部分に各信号結合部と高周波信号伝送路の構成を適用することで、既存の電子機器(例えばカード型装置)との互換性を確保(担保)する。
【0030】
[電子機器]
本発明の第2の態様や第3の態様と対応する本実施形態の電子機器においては、複数の装置(電子機器)の組合せで1つの電子機器の全体が構成される。本実施形態の信号伝送装置は、例えば、デジタル記録再生装置、地上波テレビ受像装置、携帯電話装置、ゲーム装置、コンピュータ等の電子機器において使用される。
【0031】
通信装置を構成する場合、送信側単独の送信装置の場合と、受信側単独の受信装置の場合と、送信側と受信側の双方を有する送受信装置の場合とがある。送信側と受信側の各通信装置は無線信号伝送路(例えばミリ波信号伝送路)を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成される。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送する。ただし、如何なる場合でも、送信装置と受信装置の組(対)で、信号伝送装置が構成される。
【0032】
そして、比較的近距離に配置された通信装置間(送信装置と受信装置の間)では、伝送対象の信号をミリ波信号に変換してから、ミリ波信号をミリ波信号伝送路を介して伝送する。本実施形態の「無線伝送」とは、伝送対象の信号を一般的な電気配線(単純なワイヤー配線)ではなく電波(この例ではミリ波)で伝送することを意味する。
【0033】
「比較的近距離」とは、放送や一般的な無線通信で使用される野外(屋外)での通信装置間の距離に比べて距離が短いことを意味し、伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。「閉じられた空間」とは、その空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部から空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態の空間を意味し、典型的にはその空間全体が電波に対して遮蔽効果を持つ筐体(ケース)で囲まれた状態である。一方の電子機器に他方の電子機器が装着された状態のように複数の電子機器が一体となった状態での機器間の通信が該当する。「一体」は、装着によって両電子機器が完全に接触した状態が典型例であるが、両電子機器間の伝送範囲が閉じられた空間として実質的に特定できる程度のものであればよい。例えば数センチ以内あるいは10数センチ以内等、比較的近距離で、両電子機器が多少離れた状態で定められた位置に配置されていて「実質的に」一体と見なせる場合も含む。要するに、両電子機器で構成される電波が伝搬し得る空間内部から外部への電波の漏れが少なく、逆に、外部からその空間内部への電波の到来(侵入)が少ない状態であればよい。
【0034】
以下では、複数の電子機器が一体(以下、「実質的に一体」も含む)となった状態での信号伝送を機器間信号伝送と称する。機器間信号伝送の場合、送信側の通信装置(通信部:送信部)と受信側の通信装置(通信部:受信部)がそれぞれ異なる電子機器の筐体内に収容され、両電子機器が定められた位置に配置され一体となったときに両電子機器内の通信部(送信部と受信部)間に無線信号伝送路が形成されて信号伝送装置が構築される。
【0035】
信号伝送に関しては以下のことを考慮するとよい。例えば、一方の電子機器の装着構造に他方の電子機器が装着された状態(換言すると両者が比較的近距離に配置された状態)での両電子機器の間では、伝送対象の信号を高周波信号(例えばミリ波帯)に変換してから、この高周波信号信号を無線信号伝送路介して伝送する。電子機器のそれぞれには、無線信号伝送路を挟んで、送信部と受信部が対となって組み合わされて配置される。両電子機器間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。
【0036】
無線信号伝送路を挟んで設けられる各通信装置においては、送信系統と受信系統が対となって組み合わされて配置される。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させることで双方向通信ができる。各通信装置に送信系統と受信系統を併存させる場合、一方の通信装置と他方の通信装置との間の信号伝送は片方向(一方向)のものでもよいし双方向のものでもよい。例えば、第1の通信装置が送信側となり第2の通信装置が受信側となる場合には、第1の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第2の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。第2の通信装置が送信側となり第1の通信装置が受信側となる場合には、第2の通信装置に送信機能をなす第1の通信部が配置され第1の通信装置に受信機能をなす第2の通信部が配置される。
【0037】
送信機能をなす第1の通信部は、例えば、伝送対象の信号を信号処理してミリ波帯の電気信号を生成する送信側の信号生成部(伝送対象の電気信号をミリ波帯の電気信号に変換する信号変換部)と、ミリ波帯の無線信号を伝送するミリ波信号伝送路に送信側の信号生成部で生成されたミリ波帯の電気信号を結合させる送信側の伝送路結合部を送信部に備えるものとする。好ましくは、送信側の信号生成部は、伝送対象の信号を生成する機能部と一体であるのがよい。
【0038】
伝送路結合部としては、例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。伝送路結合部と無線信号伝送路との結合箇所が送信箇所や受信箇所である。例えば、アンテナ結合部は伝送路結合部やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には例えば半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと無線信号伝送路を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、無線信号伝送路との結合部における構造をいい、例えばミリ波帯の電気信号を電磁波(電波)に変換して無線信号伝送路に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
【0039】
無線信号伝送路は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよい。又、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有するものとするのが望ましい。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路にするとよい。例えば、筐体内の全体に誘電体素材を充填することで、送信側の伝送路結合部と受信側の伝送路結合部の間には、自由空間伝送路ではなく誘電体伝送路が配される。送信側の伝送路結合部のアンテナと受信側の伝送路結合部のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路で接続することで誘電体伝送路を構成してもよい。電波(例えばミリ波信号)を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路としては、誘電体伝送路の他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
【0040】
例えば、送信側の信号生成部は変調回路を有し、変調回路が伝送対象の信号(ベースバンド信号)を変調する。送信側の信号生成部は変調回路によって変調された後の信号を周波数変換してミリ波帯の電気信号を生成する。原理的には、伝送対象の信号をダイレクトにミリ波帯の電気信号に変換してもよい。送信側の伝送路結合部は、送信側の信号生成部によって生成されたミリ波帯の電気信号を無線信号(電磁波、電波)に変換して無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路に供給する。
【0041】
変調処理は、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。
【0042】
受信機能をなす第2の通信部は例えば、無線信号伝送路としてのミリ波信号伝送路を介して伝送されてきたミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換する受信側の伝送路結合部を受信部に備えるとともに、受信側の伝送路結合部により受信され電気信号に変換されたミリ波帯の電気信号(入力信号)を信号処理して通常の電気信号(伝送対象の信号、ベースバンド信号)を生成(復元、再生)する受信側の信号生成部(ミリ波の信号を伝送対象の電気信号に変換する信号変換部)を備えるものとする。好ましくは、受信側の信号生成部は、伝送対象の信号を受け取る機能部と一体であるのがよい。例えば、受信側の信号生成部は復調回路を有し、ミリ波帯の電気信号を周波数変換して出力信号を生成し、その後、復調回路が出力信号を復調することで伝送対象の信号を生成する。原理的には、ミリ波帯の電気信号からダイレクトに伝送対象の信号に変換してもよい。
【0043】
無線による信号伝送においては、時分割多重又は周波数分割多重により信号の多重通信を行なってもよい。信号の多重通信としては、複数の信号を同一方向に伝送する態様と、双方向通信を行なう態様とがある。例えば、時分割多重で送受信を切り替えることで半二重の双方向通信を行なう。この場合、送信側と受信側のそれぞれの信号処理部は、送受信タイミングを時分割で切り替える切替部を有し、1系統の無線信号伝送路を使用して半二重による双方向の伝送を行なう。周波数分割多重で同時送受信を行なう全二重の双方向通信を行なってもよい。この場合、送信側と受信側は、送信の無線信号の周波数と受信の無線信号の周波数を異ならせ、1系統の無線信号伝送路を使用して全二重による双方向の伝送を行なう。時分割多重で複数系統の信号を切り替えて信号伝送を行なってもよい。この場合、送信側には複数の伝送対象の信号を時分割処理により1系統に纏めて伝送を行なうための多重化処理部を設け、受信側には無線信号伝送路を介して受け取った1系統の無線信号を各系統に分ける単一化処理部を設ける。周波数分割多重で複数系統の信号を同時伝送してもよい。この場合、送信側には複数の伝送対象の信号に関して無線信号の周波数をそれぞれ異ならせて1系統の無線信号伝送路で伝送を行なうための多重化処理部を設け、受信側の信号処理部には無線信号伝送路を介して受け取った1系統の無線信号を各系統に分ける単一化処理部を設ける。好ましくは、送信部あるいは受信部と対応する信号処理部は同一基板に配置され対応する筐体内に配置されているとよい。
【0044】
好ましくは、送信部と受信部との間の無線信号伝送路の伝送特性が既知であるものとする。そして、送信部の前段の送信側の信号処理部及び受信部の後段の受信側の信号処理部の少なくとも一方について、予め定められた信号処理用の設定値を信号処理部に入力する設定値処理部を備えるとよい。例えば、1つの筐体内の送信部と受信部の配置位置が変化しない場合(機器内通信の場合)や、送信部(及び送信側の信号処理部)と受信部(及び受信側の信号処理部)のそれぞれが各別の筐体内に配置される場合でも使用状態のときの送信部と受信部の配置位置が予め定められた状態となる場合(比較的近距離の機器間の無線伝送の場合)のように、送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、送受信間の伝送特性を予め知ることができる。
【0045】
送受信間の伝送条件が実質的に変化しない(つまり固定である)環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。信号処理用の設定値を予め定められた値(つまり固定値)にすることでパラメータ設定を動的に変化させずに済むので、パラメータ演算回路を削減できるし、消費電力を削減することもできる。機器内や比較的近距離の機器間の無線伝送においては通信環境が固定されるため、通信環境に依存する各種回路パラメータを予め決定することができるし、伝送条件が固定である環境下においては、信号処理部の動作を規定する設定値を固定値として扱っても、つまり、パラメータ設定を固定にしても、信号処理部を不都合なく動作させることができる。例えば、工場出荷時に最適なパラメータを求めておき、パラメータを装置内部に保持しておくことで、パラメータ演算回路の削減や消費電力の削減を行なうことができる。信号処理のパラメータ設定としては種々のものがある。例えば、信号増幅回路(振幅調整部)のゲイン設定(信号振幅設定)や位相調整量の設定や周波数特性の設定等もある。ゲイン設定は、送信電力設定や復調機能部に入力される受信レベル設定や自動利得制御(AGC:Automatic Gain Control)等に利用されるし、位相調整量の設定は、搬送信号やクロックを別送する系で送信信号の遅延量に合わせて位相を調整する場合に利用されるし、周波数特性の設定は、送信側で予め低域周波数成分や高域周波数成分の振幅を強調する場合に利用される。
【0046】
以上のように、本実施形態では、信号インタフェースをとるに当たり、伝送対象の信号に関して、無線信号により接点レスやケーブルレスで伝送する(電気配線での伝送でない)。好ましくは、少なくとも信号伝送(特に高速伝送や大容量伝送が要求される映像信号や高速のクロック信号等)に関しては、ミリ波帯等の無線信号(好ましくは光ではなく電波)により伝送する。要するに、従前は電気配線によって行なわれていた信号伝送を本実施例では無線信号(電波)により行なう。ミリ波帯等の無線信号で信号伝送を行なうことで、ギガビット毎秒〔Gbps〕オーダーの高速信号伝送を実現することができるし、無線信号の及ぶ範囲を容易に制限でき、この性質に起因する効果も得られる。
【0047】
[電気配線による信号伝送と無線伝送との対比]
電気配線を介して信号伝送を行なう信号伝送では、次のような問題がある。
i)伝送データの大容量・高速化が求められるが、電気配線の伝送速度・伝送容量には限界がある。
ii)伝送データの高速化の問題に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落とす手法がある。しかしながら、この手法では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化、コネクタ部や電気的インタフェースの物理サイズの増大等が求められ、それらの形状が複雑化し、これらの信頼性が低下し、コストが増大する等の問題が起こる。
iii)映画映像やコンピュータ画像等の情報量の膨大化に伴い、ベースバンド信号の帯域が広くなるに従って、EMC(電磁環境適合性)の問題がより顕在化してくる。例えば、電気配線を用いた場合は、配線がアンテナとなって、アンテナの同調周波数に対応した信号が干渉される。又、配線のインピーダンスの不整合等による反射や共振によるものも不要輻射の原因となる。このような問題を対策するために、電子機器の構成が複雑化する。
iv)EMCの他に、反射があると受信側でシンボル間での干渉による伝送エラーや妨害の飛び込みによる伝送エラーも問題となってくる。
【0048】
これに対して、電気配線ではなく無線(例えばミリ波帯を使用)で信号伝送を行なう場合、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がないため、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCの問題から解消される。一般に、通信装置内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCの対策が容易に実現できる。送信側の通信装置と受信側の通信装置を近接した状態での無線伝送となり、固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、次のような利点が得られる。
【0049】
1)送信側と受信側の間の伝搬チャネル(導波構造)を適正に設計することが容易である。
2)送信側と受信側を封止する伝送路結合部の誘電体構造と伝搬チャネル(ミリ波信号伝送路の導波構造)を併せて設計することで、自由空間伝送より、信頼性の高い良好な伝送が可能になる。
3)無線伝送を管理するコントローラの制御も一般の無線通信のように動的にアダプティブに頻繁に行なう必要はないため、制御によるオーバーヘッドを一般の無線通信に比べて小さくすることができる。その結果、制御回路や演算回路等で使用する設定値 (いわゆるパラメータ)を定数(いわゆる固定値)にすることができ、小型、低消費電力、高速化が可能になる。例えば、製造時や設計時に無線伝送特性を校正し、個体のばらつき等を把握すれば、そのデータを参照できるので、信号処理部の動作を規定する設定値は、プリセットや静的な制御にできる。その設定値は信号処理部の動作を概ね適正に規定するから、簡易な構成かつ低消費電力でありながら、高品位の通信が可能になる。
【0050】
又、波長の短いミリ波帯での無線通信にすることで、次のような利点が得られる。
a)ミリ波通信は通信帯域を広く取れるため、データレートを大きくとることが簡単にできる。
b)伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数から離すことができ、ミリ波とベースバンド信号の周波数の干渉が起こり難い。
c)ミリ波帯は波長が短いため、波長に応じてきまるアンテナや導波構造を小さくできる。加えて、距離減衰が大きく回折も少ないため電磁シールドが行ない易い。
d)通常の野外での無線通信では、搬送波の安定度については、干渉等を防ぐため、厳しい規制がある。そのような安定度の高い搬送波を実現するためには、高い安定度の外部周波数基準部品と逓倍回路やPLL(位相同期ループ回路)等が用いられ、回路規模が大きくなる。しかしながら、ミリ波は(特に固定位置間や既知の位置関係の信号伝送との併用時は)、容易に遮蔽でき、外部に漏れないようにできる。安定度を緩めた搬送波で伝送された信号を受信側で小さい回路で復調するのには、注入同期方式を採用するのが好適である。
【0051】
例えば、比較的近距離(例えば10数センチ以内)に配置されている電子機器間での高速信号伝送を実現する手法として、例えばLVDS(Low Voltage Differential Signaling)が知られている。しかしながら、最近のさらなる伝送データの大容量高速化に伴い、消費電力の増加、反射等による信号歪みの影響の増加、不要輻射の増加(いわゆるEMIの問題)、等が問題となる。例えば、映像信号(撮像信号を含む)やコンピュータ画像等の信号を機器内や機器間で高速(リアルタイム)に伝送する場合にLVDSでは限界に達してきている。
【0052】
データの高速伝送に対応するため、配線数を増やして、信号の並列化により一信号線当たりの伝送速度を落としてもよい。しかしながら、この対処では、入出力端子の増大に繋がってしまう。その結果、プリント基板やケーブル配線の複雑化や半導体チップサイズの拡大等が求められる。また、高速・大容量のデータを配線で引き回すことでいわゆる電磁界障害が問題となる。
【0053】
LVDSや配線数を増やす手法における問題は何れも、電気配線により信号を伝送することに起因している。そこで、電気配線により信号を伝送することに起因する問題を解決する手法として、電気配線を無線化して伝送する手法(特に電波で信号伝送を行なう手法)を採ってもよい。電気配線を無線化して伝送する手法としては例えば、筐体内の信号伝送を無線で行なうとともに、UWB(Ultra Wide Band )通信方式を適用してもよいし(第1の手法と記す)、波長の短い(1〜10ミリメートル)ミリ波帯の搬送周波数を使用してもよい(第2の手法と記す)。しかしながら、第1の手法のUWB通信方式では、搬送周波数が低く、例えば映像信号を伝送するような高速通信に向かないし、アンテナが大きくなる等、サイズ上の問題がある。さらに、伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数に近いため、無線信号とベースバンド信号との間で干渉が起こり易いという問題点もある。また、搬送周波数が低い場合は、機器内の駆動系ノイズの影響を受け易く、その対処が必要になる。これに対して、第2の手法のように、より波長の短いミリ波帯の搬送周波数を使用すると、アンテナサイズや干渉の問題を解決し得る。
【0054】
ここでは、ミリ波帯で無線通信を行なう場合で説明したが、その適用範囲はミリ波帯で通信を行なうものに限定されない。ミリ波帯を下回る周波数帯(センチ波帯)や、逆にミリ波帯を超える周波数帯(サブミリ波帯)での通信を適用しても同様のことがいえる。但し、筐体内信号伝送や機器間信号伝送においては、過度に波長が長くも短くもないミリ波帯を主に使用するのが効果的である。
【0055】
[非接触電力伝送]
好ましくは、電力(電源)も無線(好ましくはその搬送信号にミリ波帯を使用する)で伝送するとよい。さらに好ましくは、その際の電力伝送信号から受電側の通信装置用の基準信号を生成するとよい。即ち、電力受取装置が生成した電力の供給を受けて動作する一方の通信装置が信号伝送用に使用する搬送信号の基準となる基準信号を、電力受取装置が受電した電力伝送信号に基づいて生成する基準信号生成部を備え、電力供給装置と他方の通信装置とは同一の基準信号に基づいてそれぞれが担当する処理を行なうとよい。こうすることで、給電側の通信装置における変調処理(或いは復調処理)と、給電側の通信装置における復調処理(或いは変調処理)とを同期して行なうことができ、復調処理に同期検波方式を用いる場合に好適な態様となる。この場合、好ましくは、受信側の通信装置は、基準信号生成部で生成された基準信号に基づいて同期検波方式で復調処理を行なうための搬送信号を生成するタイミング信号生成部を有するとよい。
【0056】
電力供給装置(電力給電装置や送電端末とも称される)から電力受取装置(電力受電装置や受電端末とも称される)に対して無線(非接触)で電力を伝送する方法が種々提案されている。非接触で電力を伝送する方法は、「非接触給電」、「ワイヤレス給電」、「ワイヤレス電力伝送」等と称される。非接触電力伝送の原理は、電磁エネルギを利用するものであり、放射型(電波受信型、電波収穫型)と非放射型に大別される。放射型は、さらにマイクロ波型とレーザ型に区別され、非放射型はさらに電磁誘導型と共鳴型(電磁共鳴型とも称する)に区別される。他の分類方法として電磁コイルを用いるか否かで区別する方法があり、この場合、電波受信型は電磁コイルを用いない方式に該当し、電磁誘導型及び共鳴型は電磁コイルを用いる方式に該当する。これらの方法を用いれば、電気配線や端子を介したインタフェースが完全に不要となり、ケーブルレスの装置構成にできる。電源を含む全ての信号を、無線により伝送できる。
【0057】
何れの方式も、電力供給部が送電側(1次側とも称される)に設けられ、電力受取部が受電側(2次側とも称される)に設けられ、送電素子と受電素子の間で電磁気の結合により電力を無線により伝送する。電力供給部は、送電素子及び送電素子を駆動する送電素子駆動回路としての給電電源部を具備する。電力受取部は、受電素子及び受電素子で受電した電力を後段回路で使用するのに都合のよい形態(直流・交流の相違や電圧等)に整形する整流回路等の受電電源部を具備する。
【0058】
例えば、電波受信型は、電波のエネルギを利用するもので、電波を受信することで得られる交流波形を、整流回路により直流電圧に変換する。周波数帯によらず(例えばミリ波でもよい)電力を伝送できる利点がある。図示を割愛するが、電力を無線により供給する電力供給部には、ある周波数帯の電波を送電素子(例えばアンテナ)から送信する送信回路を設ける。電力供給部より無線により電力を受け取る電力受取部には、受電素子(例えばアンテナ)で受信した電波を整流する整流回路を設ける。送信電力にもよるが、受信電圧は小さく、整流回路に使用する整流ダイオードとしては順方向電圧ができるだけ小さなもの(例えばショットキーダイオード)を使用するのが好ましい。整流回路の前段に共振回路を構成して、電圧を大きくしてから整流してもよい。一般的な野外での使用における電波受信型においては送信電力の多くが電波として拡散するため電力伝送効率が低くなるが、伝送範囲を制限できる構成(例えば閉込め構造のミリ波信号伝送路)と組み合わせることで、その問題を解消できる。
【0059】
電磁誘導型は、コイルの電磁結合と誘導起電力を利用する。図示を割愛するが、送電側には、送電素子として1次コイルを設け、電力を無線により供給する電力供給部は、1次コイルを比較的高い周波数で駆動する。受電側には、1次コイルと対向する位置に受電素子として2次コイルを設けるとともに、電力供給部から無線により電力を受け取る電力受取部には、整流ダイオード、共振、及び平滑用のコンデンサ等を設ける。例えば、整流ダイオードと平滑用のコンデンサで整流回路を構成する。1次コイルを高周波数で駆動すると、1次コイルと電磁結合された2次コイルに誘導起電力が発生する。この誘導起電力に基づき、整流回路により直流電圧を作り出す。この際、共振現象を利用して受電効率を高めることもある。電磁誘導型を採用する場合には、電力供給部と電力受取部の間を近接させ、その間(具体的には1次コイルと2次コイルの間)には他の部材(特に金属)が入り込まないようにするとともに、コイルに対して電磁遮蔽を採る。前者は、金属が加熱されるのを防止するためであり(電磁誘導加熱の原理による)、後者は他の電子回路への電磁障害対策のためである。電磁誘導型は。伝送可能な電力が大きいが、前述のように送受間を近接(例えば1センチメートル以下)させる必要がある。
【0060】
共鳴型は、送電側と受電側の2つの共振器(共鳴素子)の間の共鳴現象を利用するもので、電力を供給する電力供給装置に備えられた送電素子としての送電用共振器(送電共鳴素子)と、電力供給装置から供給される電力を受ける電力受電装置に備えられた受電素子としての受電用共振器(受電用共鳴素子)との間の電場又は磁場の共鳴(共振)による結合によって電力を伝送する方式である。つまり、共鳴型は、2つの振動子(振り子、音叉)が共振する現象と同じ原理を応用するもので、電磁波でなく電場又は磁場の一方での近接場における共鳴現象を利用する。固有振動数が同じ2つの振動子の一方(電力供給部に相当)を振動させた場合に、他方(電力受取部に相当)の振動子に小さな振動が伝達されるだけで、共鳴現象により大きく揺れ始める現象を利用するのである。
【0061】
電場の共鳴を利用する方式を以下では電界共鳴型と記述し、磁場の共鳴を利用する方式を以下では磁界共鳴型と記述する。尚、今日では、効率や伝送距離、位置ずれや角度ずれ等の側面で有利な電場又は磁場の共鳴を利用した「共鳴型」が着目されており、その中でも特に、生物体によるエネルギ吸収の影響の少ない(誘電体の損失の少ない)磁場の共鳴を利用する磁界共鳴型や磁気共鳴型と称される方式が注目されている。
【0062】
電場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線により供給する電力供給部(送電側)と、電力供給部より無線により電力を受け取る電力受取部(受電側)の双方には、誘電体を配置し、両者間で電場の共鳴現象が発生するようにする。アンテナには、誘電率が数10〜100超で(一般的なものより非常に高い)、誘電損失ができるだけ小さい誘電体を使用することと、特定の振動モードをアンテナに励起させることが肝要となる。例えば、円板のアンテナを使用する場合、円板の周りの振動モードがm=2又は3のとき結合が最も強い。
【0063】
電場の共鳴型は、磁場よりも送電距離が短く、発熱が少ないが、障害物があると電磁波による損失が大きくなる。磁場の共鳴型は、人間等の誘電体の静電容量の影響を受けず、電磁波による損失が少なく、電場よりも送電距離が長い。電場の共鳴型の場合は、ミリ波帯よりも低周波を使用する場合は回路基板側で使用している信号との干渉(EMI)の影響が大きい点を考慮する必要があるし、又、ミリ波帯を使用する場合は信号に関してのミリ波信号伝送との間での干渉を考慮する必要がある。磁場の共鳴型の場合は、基本的に電磁波でのエネルギ流出は少ないし、波長もミリ波帯と異なるようにできるので、回路基板側やミリ波信号伝送との間での干渉問題から解放される。
【0064】
磁場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線により供給する電力供給部(送電側)と、電力供給部より無線により電力を受け取る電力受取部(受電側)の双方には、LC共振器を配置し、両者間で磁場の共鳴現象が発生するようにする。例えば、ループ型のアンテナの一部をコンデンサの形状にし、ループ白身のインダクタンスと合わせてLC共振器にする。Q値(共鳴の強さ)を大きくすることができ、電力が共鳴用アンテナ以外に吸収される割合が小さい。そのため、磁場を利用する方式である点で電磁誘導型と似通ってはいるが、電力供給部と電力受取部の間を電磁誘導型よりも離した状態で数kWの伝送も可能である点で全く異なる方式である。
【0065】
共鳴型の場合は、電場、磁場の何れの共鳴現象を利用するかに拘らず、電磁場の波長λとアンテナとなる部品の寸法(電場では誘電体の円板の半径、磁場ではループの半径)、送電可能な最大距離(アンテナ間距離D)がおおよそ比例する。換言すると、振動させる周波数と同じ周波数の電磁波の波長λ、アンテナ間距離D、アンテナ半径rの比をほぼ一定に保つことが肝要となる。又、近接場での共鳴現象であるため、波長λはアンテナ間距離Dよりも十分に大きくし、アンテナ半径rはアンテナ間距離Dより小さ過ぎないようにすることが肝要となる。
【0066】
本実施形態では、電力伝送を無線により実現する手法としては、電波受信型、電磁誘導型、共鳴型等の何れをも採用できるが、電磁コイルを用いる方式を採用すると好ましく、特に、共振現象又は共鳴現象を利用して電力を非接触により伝送するとよく、更には、共鳴型を採用するのが最も効果的である。例えば、電磁誘導型の電力供給効率は、1次コイルの中心軸と2次コイルの中心軸が一致している場合が最大であり、軸ズレがあると効率が低下する。換言すると、1次コイルと2コイルの位置合わせ精度が電力伝送効率に大きく影響を与える。電子機器の種類にもよるが、送電側と受電側の相対位置が変動し得る形態の場合には、電磁誘導型の採用は難点がある。電波受信型や電場による共鳴型ではEMI(干渉)を考慮する必要がある。その点、磁場による共鳴型では、これらの問題から解放される。
【0067】
以下、本実施例の伝送装置や電子機器について具体的に説明する。尚、最も好適な例として、多くの機能部が半導体集積回路(チップ、例えばCMOSのIC)に形成されている例で説明するが、このことは必須でない。
【0068】
<通信処理系統:第1例>
図1は、第1例の信号伝送装置を説明する図であり、特に、第1例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から示している。
【0069】
[機能構成]
図1に示すように、第1例の信号伝送装置1Aは、電子機器101Aとカード型の情報処理装置の一例であるメモリカード201Aが無線信号伝送路9を介して結合されミリ波帯で信号伝送を行なうように構成されている。詳しくは、電子機器101Aには第1の無線機器の一例である第1通信装置100Aが設けられ、メモリカード201Aには第2の無線機器の一例である第2通信装置200Aが設けられ、無線信号伝送路9を介して結合されミリ波帯を主とする無線信号を利用して信号伝送を行なうように構成されている。図では、第1通信装置100A側に送信系統を設け、第2通信装置200Aに受信系統を設けた場合で示している。第1通信装置100Aにはミリ波帯送信に対応した半導体チップ103が設けられ、第2通信装置200Aにはミリ波帯受信に対応した半導体チップ203が設けられている。伝送対象の信号を広帯域伝送に適したミリ波帯域に周波数変換して伝送するようにする。
【0070】
電子機器101Aは、スロット構造を具備した第2の電子機器の一例であり、メモリカード201Aは、第1の電子機器の一例である。電子機器101Aは、メモリカード201Aの読取・書込み機能を持つものであるが、機器本体に備えられるカード読取書込み装置であってもよいし、カード読取書込み装置としてデジタル記録再生装置、地上波テレビ受像機、携帯電話機、ゲーム機、コンピュータ等の電子機器本体と組み合わせて使用されるものでもよい。また、カード読取書込み装置のスロット構造とメモリカード201Aのコネクタ構造が一致しない場合に使用されるいわゆる変換アダプタであってもよい。メモリカード201Aは、主にフラッシュメモリを内蔵する着脱式の半導体記録媒体であり、電子機器101Aからのデータリードライトを行なう。形状は規格化されていない任意のものでもよいし規格化されたものでもよい。様々な規格があることは周知の通りである。無規格品・規格品に関わらず、メモリカードの容量の増大に伴い、インタフェースの高速化が求められている。
【0071】
電子機器101Aとメモリカード201Aの間のスロット構造4A(装着構造)は、電子機器101Aに対して、メモリカード201Aの着脱を行なう構造であり、無線信号伝送路9の接続手段と、電子機器101Aとメモリカード201Aの固定手段の機能を持つ。一般的には、スロット構造4Aとメモリカード201Aには、メモリカード201Aの装着状態を嵌合構造により規定する位置規定部として凹凸形状の構造を持つが、本実施形態ではこのことは必須ではない(詳しくは後述する)。
【0072】
第1例では、ミリ波帯での通信の対象となる信号を、高速性や大容量性が求められる信号のみとし、その他の低速・小容量で十分なものや電源等直流と見なせる信号に関してはミリ波信号への変換対象としない。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。ミリ波信号への変換対象としない信号(電源を含む)については、後述の比較例と同様に、電子機器101Aとメモリカード201Aの双方の端子を介した機械的な接触で電気的な接続をとる。ミリ波に変換する前の元の伝送対象の電気信号を纏めてベースバンド信号と称する。但し、高速性や大容量性が求められる信号の他に、その他の低速・小容量で十分なものをミリ波で伝送してもよい。
【0073】
ミリ波信号への変換対象とする高速性や大容量性が求められるデータとしては、例えば、映画映像やコンピュータ画像等のデータ信号が該当する。このようなデータを、搬送周波数が30〜300ギガヘルツ〔GHz〕のミリ波帯の信号に変換して高速に伝送する。本体側として機能する電子機器101Aとしては、例えば、デジタル記録再生装置、地上波テレビ受像機、携帯電話機、ゲーム機、コンピュータ、通信装置等が含まれる。
【0074】
[本体側の電子機器]
電子機器101Aの第1通信装置100Aは、基板102上に、ミリ波帯送信に対応した半導体チップ103と伝送路結合部108が搭載されている。半導体チップ103は、LSI機能部104と信号生成部107(ミリ波信号生成部)を一体化したLSI(Large Scale Integrated Circuit)である。半導体チップ103を直接に基板102上に搭載するのではなく、インターポーザ基板上に半導体チップ103を搭載し、半導体チップ103を樹脂(例えばエポキシ樹脂等)でモールドした半導体パッケージを基板102上に搭載してもよい。即ち、インターポーザ基板はチップ実装用の基板をなし、インターポーザ基板上に半導体チップ103が設けられる。インターポーザ基板には、一定範囲(2〜10程度)の比誘電率を有した例えば熱強化樹脂と銅箔を組み合わせたシート部材を使用すればよい。
【0075】
半導体チップ103は伝送路結合部108と接続される。伝送路結合部108は、電気信号を無線信号に変換して無線信号伝送路9に送信する送信部の一例であり、例えば、アンテナ結合部やアンテナ端子やマイクロストリップ線路やアンテナ等を具備するアンテナ構造が適用される。アンテナをチップに直接に形成する技術を適用することで、伝送路結合部108も半導体チップ103に組み込むこともできる。伝送路結合部108と無線信号伝送路9との結合箇所が送信箇所である。
【0076】
LSI機能部104は、アプリケーション機能部105とメモリカード制御部106を具備し、第1通信装置100Aの主要なアプリケーション制御を司るものである。例えば、アプリケーション機能部105には、相手方に送信したい画像や音声データ等を処理する回路が含まれ、更に双方向通信に対応する場合は、相手方から受信した画像や音声データを処理する回路も含まれる。メモリカード制御部106には、その外部(この例ではアプリケーション機能部105)或いは内部の各機能部からの要求に対して、例えば送信レベルの制御や、データのリードライト制御等メモリカード201Aに対する論理的制御を行なう制御回路が含まれる。
【0077】
信号生成部107(電気信号変換部)は、LSI機能部104からの信号をミリ波信号に変換し、無線信号伝送路9を介した信号送信制御を行なうための送信側信号生成部110を有する。送信側信号生成部110と伝送路結合部108で送信系統(送信部:送信側の通信部)が構成される。
【0078】
送信側信号生成部110は、入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成するために、多重化処理部113、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を有する。増幅部117は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。変調部115と周波数変換部116は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
【0079】
多重化処理部113は、LSI機能部104からの信号の内で、ミリ波帯での通信の対象となる信号が複数種(N1とする)ある場合に、時分割多重、周波数分割多重、符号分割多重等の多重化処理を行なうことで、複数種の信号を1系統の信号に纏める。例えば、高速性や大容量性が求められる複数種の信号をミリ波での伝送の対象として、1系統の信号に纏める。
【0080】
パラレルシリアル変換部114は、パラレルの信号をシリアルのデータ信号に変換して変調部115に供給する。変調部115は、伝送対象信号を変調して周波数変換部116に供給する。パラレルシリアル変換部114は、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられ、シリアルインタフェース仕様の場合は不要である。
【0081】
変調部115としては、基本的には、振幅・周波数・位相の少なくとも1つを伝送対象信号で変調するものであればよく、これらの任意の組合せの方式も採用し得る。例えば、アナログ変調方式であれば、例えば、振幅変調(AM:Amplitude Modulation)とベクトル変調がある。ベクトル変調として、周波数変調(FM:Frequency Modulation)と位相変調(PM:Phase Modulation)がある。デジタル変調方式であれば、例えば、振幅遷移変調(ASK:Amplitude shift keying)、周波数遷移変調(FSK:Frequency Shift Keying)、位相遷移変調(PSK:Phase Shift Keying)、振幅と位相を変調する振幅位相変調(APSK:Amplitude Phase Shift Keying)がある。振幅位相変調としては直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)が代表的である。
【0082】
周波数変換部116は、変調部115によって変調された後の伝送対象信号を周波数変換してミリ波の電気信号を生成して増幅部117に供給する。ミリ波の電気信号とは、概ね30〜300ギガヘルツ〔GHz〕の範囲のある周波数の電気信号をいう。「概ね」と称したのはミリ波通信による効果が得られる程度の周波数であればよく、下限は30ギガヘルツに限定されず、上限は300ギガヘルツに限定されないことに基づく。
【0083】
周波数変換部116としては様々な回路構成を採り得るが、例えば、周波数混合回路(ミキサー回路)と局部発振回路とを備えた構成を採用すればよい。局部発振回路は、変調に用いる搬送波(キャリア信号、基準搬送波)を生成する。周波数混合回路は、パラレルシリアル変換部114からの信号で局部発振回路が発生するミリ波帯の搬送波と乗算(変調)してミリ波帯の伝送信号を生成して増幅部117に供給する。
【0084】
増幅部117は、周波数変換後のミリ波の電気信号を増幅して伝送路結合部108に供給する。増幅部117には図示しないアンテナ端子を介して双方向の伝送路結合部108に接続される。
【0085】
伝送路結合部108は、送信側信号生成部110によって生成されたミリ波の信号を無線信号伝送路9に送信する。伝送路結合部108は、アンテナ結合部で構成される。アンテナ結合部は伝送路結合部108(信号結合部)の一例やその一部を構成する。アンテナ結合部とは、狭義的には半導体チップ内の電子回路と、チップ内又はチップ外に配置されるアンテナを結合する部分をいい、広義的には、半導体チップと無線信号伝送路9を信号結合する部分をいう。例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。アンテナ構造は、無線信号伝送路9との結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を電磁波(電波)に変換して無線信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。
【0086】
例えば、アンテナ結合部は、少なくともアンテナ構造を備える。また、時分割多重で送受信を行なう場合には、伝送路結合部108にアンテナ切替部(アンテナ共用器)を設ける。アンテナ構造は、無線信号伝送路9を共有するメモリカード201A側の結合部における構造をいい、ミリ波帯の電気信号を無線信号伝送路9に結合させるものであればよく、アンテナそのもののみを意味するものではない。例えば、アンテナ構造には、アンテナ端子、マイクロストリップ線路、アンテナを含み構成される。アンテナ切替部を同一のチップ内に形成する場合は、アンテナ切替部を除いたアンテナ端子とマイクロストリップ線路が伝送路結合部108を構成する。アンテナは、ミリ波の信号の波長λ(例えば600μm程度)に基づく長さを有しており、無線信号伝送路9に結合される。アンテナは、パッチアンテナの他に、プローブアンテナ(ダイポール等)、ループアンテナ、小型アパーチャ結合素子(スロットアンテナ等)が使用される。
【0087】
電子機器101A内にメモリカード201Aを収容した状態において、電子機器101A側のアンテナとメモリカード201A側のアンテナとが対向配置される場合は無指向性のものでよい。平面的にずれて配置される場合には指向性を有するものとするか、または反射部材を利用して進行方向を基板の厚さ方向から平面方向に変化させる、平面方向に進行させる誘電体伝送路を設ける等の工夫をするのがよい。送信側のアンテナはミリ波の信号に基づく電磁波を無線信号伝送路9に輻射する。受信側のアンテナはミリ波の信号に基づく電磁波を無線信号伝送路9から受信する。マイクロストリップ線路は、アンテナ端子とアンテナとの間を接続し、送信側のミリ波の信号をアンテナ端子からアンテナへ伝送し、受信側のミリ波の信号をアンテナからアンテナ端子へ伝送する。
【0088】
アンテナ切替部はアンテナを送受信で共用する場合に用いられる。例えば、ミリ波の信号を相手方である第2通信装置200A側に送信するときは、アンテナ切替部がアンテナを送信側信号生成部110に接続する。相手方である第2通信装置200A側からのミリ波の信号を受信するときは、アンテナ切替部が図示しないアンテナを受信側信号生成部に接続する。アンテナ切替部は半導体チップ103と別にして基板102上に設けるのがよいが、これに限られず、半導体チップ103内に設けてもよい。送信用と受信用のアンテナを別々に設ける場合はアンテナ切替部を省略できる。
【0089】
無線信号伝送路9は、自由空間伝送路として、例えば筐体内の空間を伝搬する構成にしてもよい。又、好ましくは、導波管、伝送線路、誘電体線路、誘電体内等の導波構造で構成し、ミリ波帯域の電磁波を伝送路に閉じ込める構成にして、効率よく伝送させる特性を有するものとするのが望ましい。例えば、一定範囲の比誘電率と一定範囲の誘電正接を持つ誘電体素材を含んで構成された誘電体伝送路9Aにするとよい。例えば、筐体内の全体に誘電体素材を充填することで、伝送路結合部108と伝送路結合部208の間には、自由空間伝送路ではなく誘電体伝送路9Aが配される。又、伝送路結合部108のアンテナと伝送路結合部208のアンテナの間を誘電体素材で構成されたある線径を持つ線状部材である誘電体線路で接続することで誘電体伝送路9Aを構成してもよい。ミリ波信号を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路9としては、誘電体伝送路9Aの他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
【0090】
「一定範囲」は、誘電体素材の比誘電率や誘電正接が、本実施形態の効果を得られる程度の範囲であればよく、その限りにおいて予め決められた値のものとすればよい。つまり、誘電体素材は、本実施形態の効果が得られる程度の特性を持つミリ波信号を伝送可能なものであればよい。誘電体素材そのものだけで決められず伝送路長やミリ波の周波数とも関係するので必ずしも明確に定められるものではないが、一例としては次のようにする。誘電体伝送路内にミリ波の信号を高速に伝送させるためには、誘電体素材の比誘電率は2〜10(好ましくは3〜6)程度とし、その誘電正接は0.00001〜0.01(好ましくは0.00001〜0.001)程度とすることが望ましい。このような条件を満たす誘電体素材としては、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、ポリイミド系、シアノアクリレート樹脂系からなるものが使用できる。誘電体素材の比誘電率とその誘電正接のこのような範囲は、特段の断りのない限り、本実施形態で同様である。なお、ミリ波信号を伝送路に閉じ込める構成の無線信号伝送路9としては、誘電体伝送路の他に、伝送路の周囲が遮蔽材で囲まれその内部が中空の中空導波路としてもよい。
【0091】
[メモリカード]
メモリカード201Aの第2通信装置200Aは、基板202上に、ミリ波帯受信に対応した半導体チップ203と伝送路結合部208が搭載されている。半導体チップ203は、LSI機能部204と信号生成部207(電気信号変換部、ベースバンド信号生成部)を一体化したLSIである。
【0092】
半導体チップ203は伝送路結合部108と同様の伝送路結合部208と接続される。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9を介して伝送された無線信号を電気信号に変換する受信部の一例であり、伝送路結合部108と同様のものが採用され、無線信号伝送路9からミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換して受信側信号生成部220に出力する。伝送路結合部208と無線信号伝送路9との結合箇所が受信箇所である。
【0093】
信号生成部207は、無線信号伝送路9を介した信号受信制御を行なうための受信側信号生成部220を有する。受信側信号生成部220と伝送路結合部208で受信系統(受信部:受信側の通信部)が構成される。信号生成部207は、無線信号伝送路9を介して受信されるメモリカード制御部106側からの論理制御データを示すミリ波信号を元の論理制御データ(ベースバンド信号)に変換しLSI機能部204に供給する。
【0094】
半導体チップ203は伝送路結合部108と同様の伝送路結合部208と接続される。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9を介して伝送された無線信号を電気信号に変換する受信部の一例であり、伝送路結合部108と同様のものが採用され、無線信号伝送路9からミリ波帯の無線信号を受信し電気信号に変換して受信側信号生成部220に出力する。伝送路結合部208と無線信号伝送路9との結合箇所が受信箇所である。
【0095】
受信側信号生成部220は、伝送路結合部208によって受信したミリ波の電気信号を信号処理して出力信号を生成するために、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227、単一化処理部228を有する。増幅部224は、入力信号の大きさを調整して出力する振幅調整部の一例である。周波数変換部225と復調部226は纏めていわゆるダイレクトコンバーション方式のものにしてもよい。
【0096】
周波数変換部225と復調部226は、様々な回路構成を採用し得るが、例えば受信したミリ波信号(の包絡線)振幅の二乗に比例した検波出力を得る自乗検波回路を用いることができる。周波数分割多重方式により多チャンネル化を実現する場合、自乗検波回路を用いる方式では、次のような難点がある。先ず、この方式による多チャンネル化には、自乗検波回路では、受信側の周波数選択のためのバンドパスフィルタを前段に配置する必要があるが、急峻なバンドパスフィルタを小型に実現するのは容易ではない。自乗検波回路は、感度的に不利であるし、周波数分割多重方式による多チャンネル化では、搬送波の周波数変動成分の影響を受けるため、送信側の搬送波の安定度についても要求仕様が厳しく、変調方式は周波数変動の影響を無視できるようなもの(例えばOOK:On-Off-Keying )等に限られる。
【0097】
発振回路については、次のような難点がある。ミリ波でデータを伝送するに当たり、送信側と受信側に、屋外の無線通信で用いられているような通常の手法を用いようとすると、搬送波に安定度が要求され、周波数安定度数がppm(parts per million )オーダー程度の安定度の高いミリ波の発振器が必要となる。安定度の高いミリ波の発振器をシリコン集積回路(CMOS:Complementary Metal-oxide Semiconductor )上に実現しようとした場合、通常のCMOSで使われるシリコン基板は絶縁性が低いため、容易にQの高いタンク回路が形成できず、実現が容易でない。例えば、CMOSチップ上のインダクタンスを形成した場合、そのQは30〜40程度になってしまう。したがって、通常、無線通信で要求されるような安定度の高い発振器を実現するには、CMOS外部に低い周波数で水晶振動子等で高いQのタンク回路を設け、逓倍器してミリ波帯域へ上げるという手法を採らざるを得ない。しかし、LVDS等の配線による信号伝送をミリ波による信号伝送に置き換える機能を実現するのに、このような外部タンクを全てのチップに設けることは好ましくない。
【0098】
このような問題に対する対処としては、周波数変換部225と復調部226は、注入同期(インジェクションロック)方式を採用するとよい。注入同期方式にする場合には、送信側からミリ波帯に変調された信号と合わせて、変調に使用した搬送信号と対応する受信側での注入同期の基準として使用される基準搬送波も送出する。基準搬送信号は、典型的には変調に使用した搬送信号そのものであるが、これに限定されず、例えば変調に使用した搬送信号と同期した別周波数の信号(例えば高調波信号)でもよい。受信器側では局部発振器を設け、送られてきた基準搬送波成分を局部発振器に注入同期させ、この出力信号を用いて送られてきた伝送対象信号を復元する。例えば、受信信号は局部発振器に入力され基準搬送波との同期が行なわれる。基準搬送波と受信信号は混合回路に入力され乗算信号が生成される。この乗算信号は低域通過フィルタで高域成分の除去が行なわれることで送信側から送られてきた入力信号の波形(ベースバンド信号)が得られる。
【0099】
注入同期を利用することにより、受信側の局部発振器はQの低いものでもよく、送信側の基準搬送波の安定度についても要求仕様を緩めることができるため、より高い搬送周波数でも、簡潔に受信機能を実現し得る。受信側の局部発振器により送信側の基準搬送波に同期した信号を再生して混合回路に供給し同期検波を行なうので、混合回路の前段にバンドパスフィルタ(周波数選択フィルタ)を設けなくてもよくなる。受信器側では、CMOS構成の半導体チップの外部にタンク回路を用いることなく、半導体チップ上にタンク回路を設けて受信側の局部発振器を構成することができる。送信側から送られてきた基準搬送信号成分を受信側の局部発振器に供給して注入同期させて得られる出力信号を用いて、送られてきたミリ波変調信号を復調し、送信された入力信号を復元することができる。
【0100】
伝送路結合部208には受信側信号生成部220が接続される。受信側の増幅部224は、伝送路結合部208に接続され、アンテナによって受信された後のミリ波の電気信号を増幅して周波数変換部225に供給する。周波数変換部225は、増幅後のミリ波の電気信号を周波数変換して周波数変換後の信号を復調部226に供給する。復調部226は、周波数変換後の信号を復調してベースバンドの信号を取得しシリアルパラレル変換部227に供給する。
【0101】
シリアルパラレル変換部227は、シリアルの受信データをパラレルの出力データに変換して単一化処理部228に供給する。シリアルパラレル変換部227は、パラレルシリアル変換部114と同様に、本実施例を適用しない場合に、パラレル伝送用の複数の信号を使用するパラレルインタフェース仕様の場合に備えられる。第1通信装置100Aと第2通信装置200Aの間の元々の信号伝送がシリアル形式の場合は、パラレルシリアル変換部114とリアルパラレル変換部227を設けなくてもよい。
【0102】
第1通信装置100Aと第2通信装置200Aの間の元々の信号伝送がパラレル形式の場合には、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、又半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
【0103】
単一化処理部228は、多重化処理部113と対応するもので、1系統に纏められている信号を複数種の信号_@(@は1〜N)に分離する。例えば、1系統の信号に纏められている複数本のデータ信号を各別に分離してLSI機能部204に供給する。
【0104】
LSI機能部204は、第2通信装置200Aの主要なアプリケーション制御を司るもので第1通信装置100AのLSI機能部104と対をなして逆の処理をする。この例では相手方から受信した種々の信号(画像データや音声データ)を処理する回路や、受信ゲインの制御やその外部或いは内部の各機能部からの要求に対して、例えばデータのリードライト制御等の論理的制御を行なう制御回路も含む。LSI機能部104と違う点は、アプリケーション機能部105をメモリ機能部205に置き換え、メモリカード制御部106をメモリ制御部206に置き換えている点である。メモリ機能部205は、例えばフラッシュメモリやハードディスクにより提供される不揮発性の記憶媒体である。メモリ制御部206は、電子機器101A側からの論理制御データに対応して、メモリ機能部205に対し、データのリードライト制御を行なう。
【0105】
LSI機能部104と信号生成部107を一体化しない構成にしてもよい。例えば図中において、第1通信装置100Aについては、LSI機能部104と信号生成部107の間に接続IF部109(IF:インタフェース)を設けて、その部分で基板102を2つに分け(図中の破線を参照)、LSI機能部104側の基板と信号生成部107、伝送路結合部108側の基板を接続IF部209で接続すればよい。第2通信装置200A側についても、LSI機能部204を信号生成部207、伝送路結合部208側と分離してもよい。即ち、第2通信装置200については、LSI機能部204と信号生成部207の間に接続IF部209を設けて、その部分で基板202を2つに分け(図中の破線を参照)、LSI機能部204側の基板と信号生成部207、伝送路結合部208側の基板を接続IF部209で接続すればよい。接続IF部109や接続IF部209としては、例えばワイヤーハーネスを使用する。但し、別体にした場合には、その間の信号伝送に関しては、電気配線により信号を伝送することに起因する問題が懸念されるので、一体的に作り込んだ方が好ましい。
【0106】
図示しないが、第1通信装置100Aや第2通信装置200Aには、予め定められた信号処理用の設定値を、第1通信装置100Aや第2通信装置200Aを構成する各機能部(特に信号処理部として機能するもの)に入力する設定値処理部を設けてもよい。設定値処理部の構成としては、例えば、設定値決定部と、設定値記憶部と、動作制御部とを具備したものとする。設定値決定部は、半導体チップ103や半導体チップ203の各機能部の動作(換言すると第1通信装置100Aや第2通信装置200Aの全体動作)を指定するための設定値(変数、パラメータ)を決定する。設定値を決定する処理は、例えば、工場での製品出荷時に行なう。設定値記憶部は、設定値決定部により決定された設定値を記憶する。動作制御部は、設定値記憶部から読み出した設定値に基づいて半導体チップ103の各機能部(この例では、変調部115、周波数変換部116、増幅部117等)や半導体チップ203の各機能部(この例では、増幅部224、周波数変換部225、復調部226等)を動作させる。
【0107】
設定値処理部は、半導体チップ103が搭載されている基板102上や半導体チップ203が搭載されている基板202上に備えてもよいし、基板102や基板202とは別の基板に搭載されていてもよい。又、設定値処理部は、半導体チップ103や半導体チップ203の外部に備えてもよいが、半導体チップ103や半導体チップ203に内蔵してもよく、この場合は、設定値処理部は制御対象となる各機能部(半導体チップ103では変調部115、周波数変換部116、増幅部117、半導体チップ203では増幅部224、周波数変換部225、復調部226)が搭載されている基板102や基板202と同一の基板に搭載されることになる。
【0108】
[双方向通信への対応]
信号生成部107と伝送路結合部108や信号生成部207と伝送路結合部208はデータの双方向性を持つ構成にすることで、双方向通信にも対応できる。例えば、信号生成部107や信号生成部207には、それぞれ受信側の信号生成部、送信側の信号生成部を設ける。伝送路結合部108や伝送路結合部208は、送信側と受信側に各別に設けてもよいが、送受信に兼用されるものとすることもできる。
【0109】
ここで示す「双方向通信」は、ミリ波の伝送チャネルである無線信号伝送路9が1系統(一芯)の一芯双方向伝送となる。この実現には、時分割多重(TDD:Time Division Duplex)を適用する半二重方式、周波数分割多重(FDD:Frequency Division Duplex)等の何れをも採用し得る。時分割多重の場合、送信と受信の分離を時分割で行なうので、電子機器101Aからメモリカード201Aへの信号伝送とメモリカード201Aから電子機器101Aへの信号伝送を同時に行なう「双方向通信の同時性(一芯同時双方向伝送)」は実現されず、一芯同時双方向伝送は、周波数分割多重や符号分割多重で実現される。周波数分割多重は、送信と受信に異なった周波数を用いるので、無線信号伝送路9の伝送帯域幅を広くする必要がある。
【0110】
尚、時分割多重や符号分割多重の場合には、多重化処理部113はパラレルシリアル変換部114の前段に設けられ、1系統の信号に纏めてパラレルシリアル変換部114に供給すればよい。時分割多重の場合、複数種の信号_@(@は1〜N)について時間を細かく区切ってパラレルシリアル変換部114に供給する切替スイッチを設ければよい。符号分割多重の場合には、複数種の信号_@を区別する符号を重畳しそれらを纏める回路を設ければよい。一方、周波数分割多重の場合には、それぞれ異なる周波数帯域F_@の範囲の周波数に変換してミリ波の信号を生成する必要がある。このため、例えば、パラレルシリアル変換部114、変調部115、周波数変換部116、増幅部117を複数種の信号_@の別に設け、各増幅部117の後段に多重化処理部113として加算処理部を設けるとよい。そして、周波数多重処理後の周波数帯域F_1+…+F_Nのミリ波の電気信号を伝送路結合部108に供給すればよい。このことから理解されるように、複数系統の信号を周波数分割多重で1系統に纏める周波数分割多重では伝送帯域幅を広くする必要がある。複数系統の信号を周波数分割多重で1系統に纏めることと、送信と受信に異なった周波数を用いる全2重方式と併用する場合は伝送帯域幅を一層広くする必要がある。
【0111】
周波数分割多重により1系統にデータが纏められている場合には、周波数多重処理後の周波数帯域F_1+…+F_Nのミリ波の電気信号を受信して周波数帯域F_@別に処理する必要がある。このため、増幅部224、周波数変換部225、復調部226、シリアルパラレル変換部227を複数種の信号_@の別に設け、各増幅部224の前段に単一化処理部228として周波数分離部を設けるとよい。そして、分離後の各周波数帯域F_@のミリ波の電気信号を対応する周波数帯域F_@の系統に供給すればよい。このように半導体チップ103を構成すると、入力信号をパラレルシリアル変換して半導体チップ203側へ伝送し、半導体チップ203側からの受信信号をシリアルパラレル変換することにより、ミリ波変換対象の信号数が削減される。
【0112】
[接続と動作]
入力信号を周波数変換して信号伝送するという手法は、放送や無線通信で一般的に用いられている。これらの用途では、どこまで通信できるか(熱雑音に対してのS/Nの問題)、反射やマルチパスにどう対応するか、妨害や他チャンネルとの干渉をどう抑えるか等の問題に対応できるような比較的複雑な送信器や受信器等が用いられている。これに対して、本実施形態で使用する信号生成部107と信号生成部207は、放送や無線通信で一般的に用いられる複雑な送信器や受信器等の使用周波数に比べて、より高い周波数帯のミリ波帯を主に使用するので、波長λが短いため、周波数の再利用がし易く、近傍に配置された多くのデバイス間での通信をするのに適したものが使用される。
【0113】
スロット構造4Aは、図1に示すように、電子機器101A側の信号生成部107及び伝送路結合部108とメモリカード201A側の信号生成部207及び伝送路結合部208と、無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)に寄与する。伝送路結合部108と伝送路結合部208の間に誘電体伝送路9Aを具備するのである。
【0114】
本実施形態では、従来の電気配線を利用した信号インタフェースとは異なり、前述のようにミリ波帯で信号伝送を行なうことで高速性と大容量に柔軟に対応できるようにしている。例えば、高速性や大容量性が求められる信号のみをミリ波帯での通信の対象とし、電子機器101A及びメモリカード201Aは、低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の電気配線によるインタフェース(端子・コネクタによる接続)を一部に備える。クロック信号や複数本のデータ信号は、ミリ波での信号伝送の対象となるので、端子を取り外すことができる。
【0115】
信号生成部107は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、メモリカード制御部106から入力された入力信号を信号処理してミリ波の信号を生成する。信号生成部107には、例えば、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等の伝送線路で伝送路結合部108に接続され、生成されたミリ波の信号が伝送路結合部108を介して無線信号伝送路9に電磁波(電波、無線信号)となって供給される。
【0116】
伝送路結合部108は、アンテナ構造を有し、伝送されたミリ波の電気信号を電磁波に変換し、電磁波を送出する機能を有する。伝送路結合部108は無線信号伝送路9と結合されており、無線信号伝送路9の一方の端部に伝送路結合部108で変換された電磁波が供給される。無線信号伝送路9の他端には第2通信装置200A側の伝送路結合部208が結合されている。無線信号伝送路9を第1通信装置100A側の伝送路結合部108と第2通信装置200A側の伝送路結合部208の間に設けることにより、無線信号伝送路9にはミリ波帯を主とする電磁波が伝搬する。
【0117】
無線信号伝送路9には第2通信装置200A側の伝送路結合部208が結合されている。伝送路結合部208は、無線信号伝送路9の他端に伝送された電磁波を受信し、ミリ波の信号に変換して信号生成部207(ベースバンド信号生成部)に供給する。信号生成部207は、予め定められた信号処理を行なう信号処理部の一例であり、この例では、変換されたミリ波の信号を信号処理して出力信号(ベースバンド信号)を生成しメモリ機能部205へ供給する。
【0118】
ここまでは第1通信装置100Aから第2通信装置200Aへの信号伝送の場合で説明したが、第1通信装置100Aと第2通信装置200Aをともに双方向通信へ対応した構成にすることで、メモリカード201Aのメモリ機能部205から読み出されたデータを電子機器101Aへ伝送できる。
【0119】
<通信処理系統:第2例>
図2は、第2例の信号伝送装置を説明する図であり、特に、第2例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から示している。
【0120】
第2例の信号伝送装置1Bでは、第1例の信号伝送装置1A(接続IF部109や接続IF部209は割愛して示す)をベースに、パワー伝送を要する電源に関しても無線で伝送する。つまり、第2通信装置200B側で使用する電力を無線により第1通信装置100Bから供給する構成を追加している。
【0121】
第1通信装置100Bは、第2通信装置200Bにて使用される電力を無線で供給する送電端末の一例である電力供給部174を備える。電力供給部174の構成については後述する。第2通信装置200Bは、第1通信装置100B側から無線で伝送されてきた電力を受け取る受電端末の一例である電力受取部278(電力受電装置)を備える。送電側の電力供給部174と受電側の電力受取部278とを纏めて電力回路と称し、電力供給部174と電力受取部278とにより第1通信装置100と第2通信装置200との間で電力を無線で伝送する電力伝送部(換言すると非接触電力伝送装置)が構成される。電力受取部278の構成については後述するが、何れの方式でも、電力受取部278は、第2通信装置200B側で使用する電源電圧を生成し、それを半導体チップ203等に供給する。機能構成的には、電力も無線で伝送する点が第1例と異なるだけであるので、その他の点については説明を割愛する。
【0122】
電力給電装置(電力供給装置、送電端末)から電力受電装置(受電端末)に対して非接触で電力を伝送する方法が種々提案されている。非接触で電力を伝送する方法は、「非接触給電」、「ワイヤレス給電」、「ワイヤレス電力伝送」等と称される。非接触電力伝送の原理は、電磁エネルギを利用するものであり、放射型(電波受信型、電波収穫型)と非放射型に大別される。放射型は、さらにマイクロ波型とレーザ型に区別され、非放射型はさらに電磁誘導型と共鳴型(電磁共鳴型とも称する)に区別される。各方式の何れかを用いれば、電気配線や端子を介したインタフェースが完全に不要となり、ケーブルレスの装置構成にできる。電源を含む全ての信号を、第1通信装置100Bから第2通信装置200Bへ無線で伝送できる。
【0123】
電波受信型は、電波のエネルギを利用するもので、電波を受信することで得られる交流波形を、整流回路により直流電圧に変換するものである。周波数帯によらず(例えばミリ波でもよい)電力を伝送できる利点がある。図示を割愛するが、電力を無線で供給する電力供給部(送信側)には、ある周波数帯の電波を送信する送信回路を設ける。電力供給部より無線で電力を受け取る電力受取部(受信側)には、受信した電波を整流する整流回路を設ける。送信電力にもよるが、受信電圧は小さく、整流回路に使用する整流ダイオードとしては順方向電圧ができるだけ小さなもの(例えばショットキーダイオード)を使用するのが好ましい。整流回路の前段に共振回路を構成して、電圧を大きくしてから整流するようにしてもよい。一般的な野外での使用における電波受信型においては送信電力の多くが電波として拡散するため電力伝送効率が低くなるが、伝送範囲を制限できる構成(例えば閉込め構造のミリ波信号伝送路)と組み合わせることで、その問題を解消できると考えられる。
【0124】
電磁誘導型は、コイルの電磁結合と誘導起電力を利用する。図示を割愛するが、電力を無線で供給する電力供給部(送電側、1次側)には、1次コイルを設け、この1次コイルを比較的高い周波数で駆動する。電力供給部より無線で電力を受け取る電力受取部(受電側、2次側)には、1次コイルと対向する位置に2次コイルを設けるとともに、整流ダイオード、共振及び平滑用のコンデンサ等を設ける。例えば、整流ダイオードと平滑用のコンデンサで整流回路を構成する。1次コイルを高周波数で駆動すると、1次コイルと電磁結合された2次コイルに誘導起電力が発生する。この誘導起電力に基づき、整流回路により直流電圧を作り出す。この際、共振効果を利用して受電効率を高めるようにする。電磁誘導型を採用する場合には、電力供給部と電力受取部の間を近接させ、その間(具体的には1次コイルと2次コイルの間)には他の部材(特に金属)が入り込まないようにするとともに、コイルに対して電磁遮蔽を採る。前者は、金属が加熱されるのを防止するためであり(電磁誘導加熱の原理による)、後者は他の電子回路への電磁障害対策のためである。電磁誘導型は。伝送可能な電力が大きいが、前述のように送受間を近接(例えば1cm以下)させる必要がある。
【0125】
共鳴型は、電力を供給する電力供給装置に備えられた共振器(共鳴素子)と、電力供給装置から供給される電力を受ける電力受電装置に備えられた共振器(共鳴素子)との間の電場又は磁場の共鳴(共振)による結合によって電力を伝送する方式である。つまり、共鳴型は、2つの振動子(振り子、音叉)が共振する現象と同じ原理を応用するもので、電磁波でなく電場又は磁場の一方での近接場における共鳴現象を利用する。固有振動数が同じ2つの振動子の一方(電力供給部に相当)を振動させた場合に、他方(電力受取部に相当)の振動子に小さな振動が伝達されるだけで、共鳴現象により大きく揺れ始める現象を利用する。電場の共鳴を利用する方式を以下では電界共鳴型と記述し、磁場の共鳴を利用する方式を以下では磁界共鳴型と記述する。尚、今日では、効率や伝送距離、位置ずれや角度ずれ等の側面で有利な電場又は磁場の共鳴を利用した「共鳴型」が着目されており、その中でも特に、生物体によるエネルギ吸収の影響の少ない(誘電体の損失の少ない)磁場の共鳴を利用する磁界共鳴型や磁気共鳴型と称される方式が注目されている。
【0126】
図示を割愛するが、電場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線で供給する電力供給部(送電側)と、電力供給部より無線で電力を受け取る電力受取部(受電側)の双方には、誘電体を配置し、両者間で電場の共鳴現象が発生するようにする。アンテナには、誘電率が数10〜100超で(一般的なものより非常に高い)、誘電損失ができるだけ小さい誘電体を使用することと、特定の振動モードをアンテナに励起させることが肝要となる。例えば円板のアンテナを使用する場合、円板の周りの振動モードがm=2または3のとき結合が最も強い。
【0127】
本実施形態では、電力伝送を無線で実現する手法としては、例えば、電波受信型、電磁誘導型、共鳴型等の何れをも採用できるが、図2は、磁場による共鳴型を採用した構成で示している。基本的には、電磁誘導型、電波受信型、共鳴型の何れも採用し得るのであるが、第2例の信号伝送装置1では、各方式の特徴を考慮して、図示のように、磁場の共鳴現象を利用する共鳴型を採用している。例えば、電磁誘導型の電力供給効率は、1次コイルの中心軸と2次コイルの中心軸が一致している場合が最大であり、軸ずれがあると効率が低下する。換言すると、1次コイルと2コイルの位置合わせ精度が電力伝送効率に大きく影響を与える。電子機器の種類にもよるが、送電側と受電側の相対位置が変動し得る形態の場合には、電磁誘導型の採用は難点がある。電波受信型や電場による共鳴型ではEMI(干渉)を考慮する必要がある。その点、磁場による共鳴型では、これらの問題から解放される。
【0128】
図2に示すように、磁場での共鳴現象を利用する方式の場合は、電力を無線で供給する電力供給部174(送電側)と、電力供給部174より無線で電力を受け取る電力受取部278(受電側)の双方に、LC共振器を配置し、両者間で磁場の共鳴現象が発生するようにする。例えば、ループ型のアンテナの一部をコンデンサの形状にし、ループ白身のインダクタンスと合わせてLC共振器にする。Q値(共鳴の強さ)を大きくすることができ、電力が共鳴用アンテナ以外に吸収される割合が小さい。そのため、磁場を利用する方式である点で電磁誘導型と似通ってはいるが、電力供給部174と電力受取部278の間を電磁誘導型よりも離した状態で数kWの伝送も可能である点で全く異なる方式である。
【0129】
<電波伝送構造:基本>
図3〜図7は、スロット構造を持つ電子機器とメモリカードとの装着部分に介在する信号伝送装置における電波の伝送構造(電波伝送構造)を説明する図である。ここで、図3〜図4は、本実施形態の電波伝送構造に対する第1比較例を説明する図である。特に、図3は、第1比較例の信号伝送装置の信号インタフェースを機能構成面から説明する図である。図4は、本実施形態の電波伝送構造に対する第1比較例が適用された第1比較例の電子機器を説明する図である。図5は、本実施形態の電波伝送構造に対する第2比較例が適用された第2比較例の電子機器を説明する図である。図6は、本実施形態の電波伝送構造に対する第2比較例を説明する図である。図7は、本実施形態の電波伝送構造の基本構成を説明する図である。
【0130】
何れも、一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間の信号伝送への適用である。例えば、中央演算処理装置(CPU)や不揮発性の記憶装置(例えばフラッシュメモリ)等が内蔵されたいわゆるICカードやメモリカードを代表例とするカード型の情報処理装置を本体側の電子機器に装着可能(着脱自在)にしたものがある。一方(第1)の電子機器の一例であるカード型の情報処理装置を以下では「カード型装置」とも称する。本体側となる他方(第2)の電子機器を以下では単に電子機器とも称する。「カード型装置と本体側の電子機器とで電子機器の全体が構成される。
【0131】
[第1比較例]
図3に示すように、第1比較例の電子機器に搭載された信号伝送装置1Xは、電子機器101Xとメモリカード201Xが電気的インタフェース9Xを介して結合され信号伝送を行なうように構成されている。電子機器101Xには電気配線を介して信号伝送可能な半導体チップ103Xが設けられ、メモリカード201Xにも電気配線を介して信号伝送可能な半導体チップ203Xが設けられている。本実施形態の信号伝送装置1の無線信号伝送路9を電気的インタフェース9Xに置き換えた構成である。
【0132】
メモリカード201Xの構造例(平面透視及び断面透視)が図4(A)に示されている。電子機器101Xの構造例(平面透視及び断面透視)が図4(B)に示されている。 電子機器101Xのスロット構造4X(特に開口部192)にメモリカード201Xが挿入されたときの構造例(断面透視)が図4(C)に示されている。
【0133】
メモリカード201Xは、電子機器101Xからのデータリードライトを行なうもので、様々な規格がある。容量の増大に伴い、インタフェースの高速化が求められているが、例えば、ある規格品においては、8端×60MHzのパラレル伝送により、480Mbpsの物理伝送レートが実現されている。メモリカード201Xを利用する場合、一般的に、電子機器101Xは、メモリカード201Xと電気的インタフェース9Xの接続を行なうために、スロット構造4Xを有する。スロット構造4Xは、メモリカード201Xに対する固定手段の機能も持つ。
【0134】
電気配線を介して信号伝送を行なうため、電子機器101Xには信号生成部107及び伝送路結合部108に代えて電気信号変換部107Xが設けられ、メモリカード201Xには信号生成部207及び伝送路結合部208に代えて電気信号変換部207Xが設けられている。電子機器101Xは、基板102の開口部192側の面に半導体チップ801を有する。半導体チップ801には、LSI機能部104及び電気信号変換部107Zと同等の機能を組み込むことで双方向通信に対応する。メモリカード201Xは、基板202の一方の面に半導体チップ802を有する。半導体チップ802には、LSI機能部204及び電気信号変換部207Zと同等の機能を組み込むことで双方向通信に対応する。
【0135】
電子機器101Xにおいて、電気信号変換部107Xは、メモリカード制御部106の論理制御データに対し電気的インタフェース9Xを介した電気信号伝送制御を行なう。一方、メモリカード201Xにおいて、電気信号変換部207Zは、電気的インタフェース9Xを介してアクセスされ、メモリカード制御部106から送信された論理制御データを得る。電子機器101Xとメモリカード201Xの間のスロット構造4Xは、電子機器101Xに対してメモリカード201Xの着脱を行なう構造であり、電気的インタフェース9Xの接続手段と、電子機器101Xとメモリカード201Xの固定手段の機能を持つ。
【0136】
図4(B)に示すように、スロット構造4Xは、筺体190の一部に弾性材199(例えばバネ機構)が設けられ、電子機器101X側の筺体190に、メモリカード201Xを開口部192から挿抜して固定可能な構成となっている。電子機器101Xとメモリカード201Xは、嵌合構造として、凹凸の形状構成を具備する。何れに凹形状構成を設け、何れに凸形状構成を設けるかは任意である。ここでは、図4(B)に示すように、電子機器101Xの筺体190に位置合わせ構造をなす凸形状構造体198X(出っ張り)を設け、図4(A)に示すように、メモリカード201Xの筐体290に位置合わせ構造をなす凹形状構造体298X(窪み)を設けている。つまり、図4(C)に示すように、筺体190において、メモリカード201Xの挿入時に、凹形状構造体298Xの位置に対応する部分に凸形状構造体198Xが設けられている。
【0137】
図4(A)に示すように、基板202の一辺には、筐体290の決められた箇所で外部機器としての電子機器101Xと接続するための接続端子280(信号ピン)が、筐体290の決められた位置に設けられている。接続端子280は、配線パターンや導電ビアを介して電気信号変換部207Zと接続されている。メモリカード201Xの接続端子280と対応するように、電子機器101Xには、接続端子280と接続される接続部180(コネクタ)が設けられる。電子機器101Xの筺体190にメモリカード201Xが挿入されたとき、接続部180のコネクタピンと接続端子280が機械的に接触されることで電気的な接続がとられるようになっている。これにより、メモリカード201Xが電子機器101Xと接続され、例えば、電力供給や入出力信号の伝達がなされる。
【0138】
ここで、電気的インタフェース9Xを採用する第1比較例の信号伝送装置1Zでは、“電気配線による信号伝送と無線伝送との対比”の項のi)〜iv)で述べた問題があるし、メモリカード201Xの端子をむき出しにする場合は静電気破壊の問題がある。
【0139】
これに対して、本実施形態の信号伝送装置1は、第1比較例の電気信号変換部107X及び気信号変換部207Zを、信号生成部107及び信号生成部207と伝送路結合部108及び伝送路結合部208に置き換えることで、電気配線ではなく電波(例えばミリ波)で信号伝送を行なう。メモリカード制御部106からメモリ制御部206に対する論理制御データは、ミリ波信号に変換され、ミリ波信号は伝送路結合部108及び伝送路結合部208間を誘電体伝送路9Aを介して電波で伝送する。無線伝送のため、配線形状やコネクタの位置を気にする必要がなく、レイアウトに対する制限があまり発生しない。ミリ波による信号伝送に置き換えた信号については配線や端子を割愛できるので、EMCやEMIの問題から解消されるし、静電気破壊の問題からも解消される。一般に、電子機器101Aやメモリカード201A内部で他にミリ波帯の周波数を使用している機能部は存在しないため、EMCやEMIの対策が容易に実現できる。スロット構造4Aにメモリカード201Aを装着した状態での無線伝送であり固定位置間や既知の位置関係の信号伝送であるため、“電気配線による信号伝送と無線伝送との対比”の項の1)〜3)で述べた利点が得られる。特に、ミリ波信号を誘電体伝送路9Aに閉じ込める構成を採れば、電波の放射や干渉を抑え、伝送効率の向上を効果的に図ることができるし、ミリ波通信とすることで、“電気配線による信号伝送と無線伝送との対比”の項のa)〜d)で述べた利点が得られる。例えば誘電体伝送路9Aとしての金属導波管(例えば、断面形状が矩形或いは円形)を伝送する電磁波はTE波或いはTM波である。このとき、ミリ波信号は誘電体伝送路9A内を特定のモード(例えばTEモード或いはTMモード)により伝送するので、減衰及び放射を抑えたミリ波信号伝送を行なうことが可能となるし、ミリ波の外部放射を抑える、EMC対策がより楽になる等の利点も得られる。
【0140】
尚、電気配線を無線化しUWB(Ultra Wide Band )により伝送するという手法が提案されている。例えば、特開2001−195553号公報には、メモリカードへ無線インタフェースを適用する点が記載されている。通信には、2.4ギガヘルツ帯や5ギガヘルツ帯を使用するIEEE802.11a/b/g等の規格が適用される。しかしながら、メモリカードに2.4ギガヘルツ帯や5ギガヘルツ帯の無線インタフェースを適用し、電気的インタフェースを介して電子機器からのデータアクセスを行なうとともに、無線インタフェースを介して異なる電子機器からのデータアクセスを行なうもので、本実施形態の信号伝送装置1とは異なる。特開2007−299338号公報には、特開2001−195553号公報の手法を発展させ、各種規格の複数の周波数帯域に対応したアンテナパターンをカードの平面上に単独または複数で設けることが記載されている。電気的インタフェースを排除し無線アクセスのみで構成する、つまり、無線インタフェースのみを持つメモリカードの構成についても言及している。しかしながら、特開2007−299338号公報には、従来の電気インタフェースを代替することについては触れられておらず、本実施形態の信号伝送装置1とは異なる。又、特開2001−195553号公報や特開2007−299338号公報のように、IEEE802.11a/b/g等のUWBを適用する規格に従ったのでは、搬送周波数が低く例えば映像信号を伝送するような高速通信に向かないし、アンテナが大きくなる等、サイズ上の問題がある。更に、伝送に使う周波数が他のベースバンド信号処理の周波数に近いため干渉し易いし、空間分割多重ができ難いという問題点がある。
【0141】
[第2比較例(構造)]
図5に示す第2比較例の電子機器は、複数の電子機器が一体となった状態での電子機器間で無線により信号伝送を行なう場合での適用例である。特に、一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間の信号伝送への適用である。以下では高速・大容量のデータをミリ波帯で無線伝送する場合で説明する。
【0142】
メモリカード201Yの構造例(平面透視及び断面透視)が図5(A)に示されている。電子機器101Yの構造例(平面透視及び断面透視)が図5(B)に示されている。 電子機器101Yのスロット構造4Y(特に開口部192)にメモリカード201Yが挿入されたときの構造例(断面透視)が図5(C)に示されている。
【0143】
第1比較例と同様に、電子機器101Yとメモリカード201Yの間のスロット構造4Yは、電子機器101Yに対して、メモリカード201Yの着脱を行なう構造であり、電子機器101Yとメモリカード201Yの固定手段の機能を持つ。スロット構造4Yは、電子機器101Yの筺体190にメモリカード201Y(その筐体290)を開口部192から挿抜して固定可能な構成となっている。
【0144】
スロット構造4Yのメモリカード201Yの端子との接触位置には受け側のコネクタ180が設けられる。無線伝送に置き換えた信号についてはコネクタ端子(コネクタピン)が不要である。電子機器101Y側(スロット構造4Y)において、ミリ波伝送に置き換えた信号についてもコネクタ端子を設けてもよい。この場合、スロット構造4Yに挿入された一般的な(第2比較例を適用していない)メモリカード201の場合には、従前のように電気配線により信号伝送を行なえる。
【0145】
図5(A)に示すようにメモリカード201Yの筐体290に円筒状の凹形状構造体298Y(窪み)を設け、図5(B)に示すように電子機器101Yの筺体190に円筒状の凸形状構造体198Y(出っ張り)を設けている。
【0146】
メモリカード201Yは、基板202の一方の面に半導体チップ802を有する。半導体チップ802には、送信チップとして機能する半導体チップ103や受信チップとして機能する半導体チップ203と同等の機能を組み込むことで双方向通信に対応する。半導体チップ802には、無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)と結合するための送受信端子232が設けられている。基板202の一方の面上には、送受信端子232と接続された基板パターンによる高周波信号伝送路234(例えばミリ波帯の高周波信号が伝送されるマイクロストリップライン)とアンテナ236(図ではパッチアンテナ)が形成されている。図示しないが、基板202のアンテナ236が配置される面と反対側の面にはバックプレーン(グランドパターン)が形成される。送受信端子232、高周波信号伝送路234、及びアンテナ236で、伝送路結合部208(図R1等参照)が構成される。
【0147】
筐体290は、基板202を保護するための覆いであり、少なくとも凹形状構造体298Yの部分は、ミリ波信号(ここではミリ波帯の電波)を伝送可能な比誘電率を有した誘電体素材を含む誘電体樹脂で構成される。凹形状構造体298Yの誘電体素材には、例えば、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等からなる部材が使用される。筺体290の少なくとも凹形状構造体298Yの部分の誘電体素材も無線信号伝送路9(例えばミリ波誘電体伝送路)を構成する。筐体290において、アンテナ236と同一面に凹形状構造体298Yが形成される。凹形状構造体298Yは、スロット構造4Yに対するメモリカード201Yの固定を行なうとともに、スロット構造4Yが具備する誘電体伝送路9Aとのミリ波伝送(ミリ波帯の電波の伝送)の結合に対する位置合せを行なう。
【0148】
基板202の一辺には、筐体290の決められた箇所で電子機器101Yと接続するための接続端子280(信号ピン)が、筐体290の決められた位置に設けられている。メモリカード201Yの端子構造に関しては、ミリ波での信号伝送の対象となり得るもの(高速・大容量のデータ)は、図中に破線で示すように、それ用の従前の端子を取り外し、これらを除く低速・小容量の信号用や電源供給用に、従前の端子構造を一部に備える。
【0149】
図5(B)に示すように、電子機器101Yは、基板102の一方(開口部192側)の面上に半導体チップ801を有する。半導体チップ801には、送信チップとして機能する半導体チップ103や受信チップとして機能する半導体チップ203と同等の機能を組み込むことで双方向通信に対応する。半導体チップ801には、無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)と結合するための送受信端子132が設けられている。基板102の一方の面上には、送受信端子132と接続された基板パターンによる高周波信号伝送路134(例えばミリ波帯の高周波信号が伝送されるマイクロストリップライン)とアンテナ136(図ではパッチアンテナ)が形成されている。図示しないが、基板102のアンテナ136が配置される面と反対側の面にはバックプレーン(グランドパターン)が形成される。送受信端子132、高周波信号伝送路134、及びアンテナ136で、伝送路結合部108が構成される。筺体190は、スロット構造4Yとして、メモリカード201Yが挿抜される開口部192が形成されている。筺体190には、メモリカード201Yが開口部192に挿入されたときに、凹形状構造体298Yの位置に対応する部分に、ミリ波閉じ込め構造(導波路構造)を持つ凸形状構造体198Yが形成され誘電体伝送路9Aとなるように構成されている。
【0150】
パッチアンテナは、法線方向の指向性が鋭くないので、アンテナ136及びアンテナ236はオーバーラップ部分の面積がある程度大きくとれていれば多少ずれて配置されても、受信感度には影響を受けない。ミリ波通信においては、ミリ波の波長が数mmと短いため、アンテナも小型で数mm角オーダーとなり、小型のメモリカード201内のような狭い場所にも簡単に設置が可能である。パッチアンテナの場合、基板中での波長をλgとした場合、一辺の長さはλg/2と表される。例えば、比誘電率が3.5の基板102,202で、60GHzのミリ波信号を使用する場合、λgは2.7mm程度になり、パッチアンテナの一辺は1.4mm程度になる。
【0151】
アンテナ136を半導体チップ801内に形成する場合或いはアンテナ236を半導体チップ802内に形成する場合、例えば逆F型等、さらに小型のアンテナが求められる。因みに、逆F型アンテナは、無指向性であり、換言すると、基板の厚さ(法線)方向だけではなく平面方向にも指向性を持つので、無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)との結合をとる伝送路結合部108や伝送路結合部208に反射板を設ける等の工夫をすることで伝送効率を向上させるとよい。
【0152】
筺体190には、メモリカード201Yが開口部192に挿入されたときに、凹形状構造体298Yの位置に対応する部分に、導波管構造の誘電体伝送路9Aを構成するように凸形状構造体198Yが形成されている。本例では、凸形状構造体198Y(誘電体伝送路9A)は、誘電体導波管142を筒型の導体144内に形成することで構成されており、伝送路結合部108のアンテナ136に対して誘電体導波管142の中心が一致するように固定的に配置される。凹凸の嵌合構造に、アンテナ136とアンテナ236との間の結合を強化する構造として誘電体導波管142を設けている。誘電体導波管142(誘電体伝送路9A)を設けることは必須ではなく、筺体190や筺体290の誘電体素材のままで無線信号伝送路9が構成されるようにしてもよい。
【0153】
誘電体導波管142の径、長さ、素材等のパラメータは、電磁波(この例ではミリ波帯の電波)を効率よく伝送可能なように決定される。素材としては、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、ポリイミド系、シアノアクリレート樹脂系からなるもの等、比誘電率が2〜10(好ましくは3〜6)程度、誘電正接が0.00001〜0.01(好ましくは0.00001〜0.001)程度の誘電体素材を用いるのがよい。ミリ波信号を誘電体伝送路9Aに閉じ込めることで、伝送効率の向上を図ることができ、ミリ波の信号伝送が不都合なく行なえる。素材を適正に選択することで、導体144を設けなくてもよい場合もある。導体144の径は、メモリカード201Yの凹形状構造体298Yの径に対応するように構成される。導体144は、誘電体導波管142内に伝送されるミリ波の外部放射を抑える遮蔽材としての効果もある。
【0154】
図5(C)に示すように、スロット構造4Yの筺体190は開口部192からのメモリカード201Yの挿入に対し、凸形状構造体198Y(誘電体伝送路9A)と凹形状構造体298Yが凹凸状に接触するようなメカ構造を有する。凹凸構造が嵌合するときに、アンテナ136とアンテナ236が対向するとともに、その間に無線信号伝送路9として誘電体伝送路9Aが配置される。
【0155】
以上の構成によって、メモリカード201Yとスロット構造4Yの固定が行なわれる。アンテナ136及びアンテナ236の間で、ミリ波信号を効率よく伝送するように、ミリ波伝送の結合に対する誘電体伝送路9Aの位置合わせが実現される。つまり、電子機器101Yにおいては、凸形状構造体198Yの部分に伝送路結合部108(特にアンテナ結合部)が配置され、メモリカード201Yにおいては、凹形状構造体298Yの部分に伝送路結合部208(特にアンテナ結合部)が配置されるようにしている。凹凸が合致したときに、伝送路結合部108及び伝送路結合部208のミリ波伝送特性が高くなるように配置する。このような構成により、スロット構造4Yに対するメモリカード201Yの装着時に、メモリカード201Yの固定とミリ波信号伝送に対する位置合せを同時に行なうことが可能となる。メモリカード201Yにおいては、誘電体伝送路9Aとアンテナ236の間に筐体290を挟むが、凹形状構造体298Yの部分の素材が誘電体素材であるのでミリ波の伝送に大きな影響を与えるものではない。この点は、誘電体導波管142を凸形状構造体198Yの部分に設けずに筺体190の誘電体素材のままとしておいた場合でも同様で、筐体190や筐体290の誘電体素材によりアンテナ136及びアンテナ236間に無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)が構成される。
【0156】
スロット構造4Yに対するメモリカード201Yの装着時に、メモリカード201Yの固定と位置合せを同時に行なう。凹凸形状の嵌合にガタがあっても、アンテナ136及びアンテナ236が遮蔽材(囲い:導体144)の外に出ないような大きさに設定すればよく、凹凸形状構成の平面形状は、図のように円形であることは必須ではなく、三角や四角等任意である。
【0157】
第2比較例の電波伝送構造によれば、メモリカード201Yがスロット構造4Yに装着されたときに、伝送路結合部108及び伝送路結合部208(特にアンテナ136及びアンテナ236)間に誘電体導波管142を具備する誘電体伝送路9Aを介在させる構成を採用している。ミリ波信号を誘電体伝送路9Aに閉じ込めることで高速信号伝送の効率向上を図ることができる。考え方としては、カード装着用のスロット構造4Yの嵌合構造(凸形状構造体198,凹形状構造体298)の部分以外の所でアンテナ136とアンテナ236を対向させるように無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)を形成することもできる。しかしながらこの場合は位置ずれによる影響がある。それに対して、カード装着用のスロット構造4Yの嵌合構造に無線信号伝送路9を設けることで位置ずれによる影響を抑制できる。
【0158】
[第2比較例(電界移行)]
図6には第2比較例の電子機器に適用される第2比較例の電波伝送構造の詳細が示されている。ここで、図6(A)は、第2比較例の電波伝送構造の簡易ブロック図であり、図6(B)は、第2比較例の電波伝送構造における電波の伝搬の仕方(電界移行)を説明する図である。
【0159】
図6(A)に示すように、第2比較例の電子機器は、スロット構造4Yの部分について簡潔に記載すると先ず、電子機器101Y側に半導体チップ801と接続される伝送路結合部108が設けられ、この伝送路結合部108と一体化して誘電体導波管142が形成された凸形状構造体198を備える。そして、メモリカード201Y側に半導体チップ802と接続される伝送路結合部208が設けられる。伝送路結合部108の誘電体導波管142と対向する部分にはアンテナ136が配置されている。伝送路結合部208の誘電体導波管142と対向する部分にはアンテナ236が配置され、この対向部分がスロット構造4における装着部(図5に示したスロット構造4Yの開口部192に対してメモリカード201Yを着脱する際の嵌合部分)となる。
【0160】
第2比較例の電波伝送構造は、メモリカード201Yを開口部192に対して着脱する構造であり、装着部分でアンテナ236と誘電体導波管142とが電磁結合する構造となるので、結合部分にモード変換を伴うため、可動ずれや筐体による隙間に対して伝送特性が大きく変動する。伝送特性の変動による通信品質の低下が許容範囲内であればいいが、許容範囲外となる場合はその対処が必要となる。
【0161】
例えば、図6(B)には、アンテナ236としてのパッチアンテナと誘電体導波管142としての円形導波管とを用いた場合の結合における電界の移行の様子が示されている。メモリカード201の高周波信号伝送路234としてのマイクロストリップラインにおいては、高周波信号が準TEMモードで伝送される。一方、円形導波管(誘電体導波管142)内では、伝送路結合部208のアンテナ236(パッチアンテナ)から発せられた電磁波(電波)がTEモードで伝送される。そのため、伝送路結合部208(のアンテナ236)と円形導波管(誘電体導波管142)との間の部分では、準TEMモードからTEモードへと電界の向きが変わり、モードが不安定な状態である。このような“モードが不安定な状態”では、メモリカード201Y側とスロット構造4Y側との可動部やメモリカード201Yの筐体290による隙間によって、アンテナ236(パッチアンテナ)と円形導波管(誘電体導波管142)の相対位置がずれると結合性が悪化し、反射や通過の特性が劣化する。例えば、ミリ波帯での無線伝送の場合、0.1ミリメートル程度のずれによっても伝送特性が変動するのでメカ精度的に厳しい。その対処としては、例えば、勘合構造により、位置合わせ精度を向上する(この例ではずれを0.1ミリメートル未満に抑える)ことが考えられるが、筐体や導波管構造に複雑な加工を伴う難点がある。
【0162】
因みに、電子機器101の高周波信号伝送路134としてのマイクロストリップラインにおいては、高周波信号が準TEMモードで伝送される。一方、円形導波管(誘電体導波管142)内では、伝送路結合部108のアンテナ136(パッチアンテナ)から発せられた電磁波(電波)がTEモードで伝送される。そのため、伝送路結合部108(のアンテナ136)と円形導波管(誘電体導波管142)との間の部分では、準TEMモードからTEモードへと電界の向きが変わり、モードが不安定な状態である。ここで、円形導波管(誘電体導波管142)と伝送路結合部108(のアンテナ136)との関係は、実質的に両者が一体化されているので、位置ずれは製造時のばらつきを起因とするもののみと考えてよい。円形導波管(誘電体導波管142)と伝送路結合部108(のアンテナ136)との対向部分は実質的に固定されるから、固定部分において“モードが不安定な状態”で結合する構造である。誘電体導波管142とアンテナ136との間の隙間に“モードが不安定な状態”が存在するが、この隙間部分は固定されているので、円形導波管(誘電体導波管142)と伝送路結合部108(のアンテナ136)との相対位置がずれることはなく、メモリカード201側とは異なり、結合性の悪化や反射や通過の特性が劣化する虞れはない。
【0163】
[第2比較例の問題対策]
そのため、複雑な嵌合構造を有することなく、可動ずれや筐体による隙間に対しても、伝送特性が大きく変動劣化しない伝送構造とすることが求められる。そのような電波伝送構造とするには、導波路(導波管)の断面を介して無線伝送を行なう手法を適用すればよい。導波管断面の中継部分(導波路接合部)においては、伝送モードが同一なので電磁波の移行が容易であり、ずれや隙間に対して伝送特性の劣化を小さくすることができる。
【0164】
例えば、導波管の一部を電子機器の回路基板側に取り込み、導波管同士が対向するように配置すればよい。導波管の一部を電子機器の回路基板側に取り込むに当たっては、例えば、回路基板上に導波管の外周をなす導体を接着、固定するとよい。或いは、回路基板そのものに導波管をなす導体をパターン形成することで、導波管と伝送路結合部(のアンテナ)とを回路基板に一体形成してもよい。
【0165】
このような伝送構造は、電子機器同士を装着した際に、導波路の断面同士が近接することで導波路接合部(導波管接合部)を形成し、これによって無線伝送が実現される。導波管の断面を介して電波を非接触で伝送する構造となり、装着構造における対向部分(電磁界結合部)では同じ伝送モードで電波を結合する手法を採ることができる。非接触の装着部に対して、伝送路結合部と導波管とを一体化することで、導波管の断面で伝送を結合できる。伝送モードが接合の前後で変わらないので、可動部に隙間やずれがあっても、電磁界の移行がし易く、電波が伝わり易くなる。このような考え方は、導波管の断面形状が円形に限らず、方形形状やその他の形状でも同様に適用でき、電波(この例ではミリ波)を通すカットオフ周波数を与える形状であればよい。
【0166】
電子機器の回路基板側に取り込まれた導波管の一部と伝送路結合部(のアンテナ)との関係は、実質的に導波管と伝送結合部とが一体化されたものとなるので、位置ずれは製造時のばらつきを起因とするもののみと考えてよい。導波管の一部と伝送路結合部(のアンテナ)との対向部分は実質的に固定されるから、固定部分において“モードが不安定な状態”で結合する構造となり、可動部分において“モードが不安定な状態”で結合するということが解消される。一方、導波管同士の対向部分では、同じモードで結合されるから、可動部分において“モードが不安定な状態”で結合するということが解消される。つまり、伝送モード(この例ではTEモード)が接合の前後で変わらないので、可動部に隙間やずれがあっても、電界の移行がし易く、電波が伝わり易くなる。このような考え方は、導波管の断面形状が円形に限らず、方形形状やその他の形状でも同様に適用でき、電波(この例ではミリ波)を通すカットオフ周波数を与える形状であればよい。
【0167】
[本実施形態(電界移行)]
図7には、そのような伝送構造を持つ本実施形態の電波伝送構造の詳細が示されている。ここで、図7(A)(図7(A1)及び図7(A2)は、本実施形態の電波伝送構造の簡易ブロック図であり、図7(B)は、本実施形態の電波伝送構造における電波の伝搬の仕方(電界移行)を説明する図である。
【0168】
図7(A1)に示す第1例の電波伝送構造は、導波管の両側について、その一部を電子機器の回路基板側に取り込み、導波管同士が対向するように配置する形態である。スロット構造4の部分について簡潔に記載すると先ず、電子機器101側に半導体チップ801と接続される伝送路結合部108が設けられ、この伝送路結合部108と一体化して導波管146(導波管146の外周をなす導体147)が形成されている。誘電体導波管142と同様に、導波管146は導体147の内部を誘電体素材で埋め込むとよい。伝送路結合部108の導波管146と対向する部分にはアンテナ136が配置されている。一方、メモリカード201側に半導体チップ802と接続される伝送路結合部208が設けられ、伝送路結合部208と一体化して導波管246(導波管246の外周をなす導体247)が形成されている。誘電体導波管142と同様に、導波管246は導体247の内部を誘電体素材で埋め込むとよい。伝送路結合部208の導波管246と対向する部分にはアンテナ236が配置されている。誘電体導波管142の電子機器101側と導波管146とが対向し、誘電体導波管142のメモリカード201側と導波管246とが対向するようにし、それぞれの対向部分(電磁界結合部150_1、電磁界結合部150_2)が電子機器間の装着部分となるようにする。つまり、第1例の場合は、装着部分を誘電体導波管142の両端に配置することのできる電波伝送構造である。
【0169】
図7(A2)に示す第2例の電波伝送構造は、導波管の片側(この例ではメモリカード201側)についてのみ、その一部を電子機器の回路基板側に取り込み、導波管同士が対向するように配置する形態である。つまり、第1例をベースに、誘電体導波管142のメモリカード201側のみに、導波管同士が対向する構造を配置している。電子機器101側については第2比較例と同様の構造にしている。誘電体導波管142のメモリカード201側は図7(A1)に示した本実施形態の電波伝送構造であり、誘電体導波管142の電子機器101側は図6(A)に示した第2比較例の電波伝送構造であり、何れも前述の通りであるので、その詳細説明は割愛する。
【0170】
図7(B)には、図7(A2)に示した第2例について、アンテナ236としてのパッチアンテナと誘電体導波管142としての円形導波管とを用いた場合の結合における電界の移行の様子が示されている。メモリカード201の基板202側に導波管246が実質的に誘電体導波管142の一部として取り込まれている。図示した例は、筐体290に導波管246の外周をなす導体247を接着、固定している。導体247の内部は誘電体導波管142と同様に、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン系、ポリイミド系、シアノアクリレート樹脂系からなるもの等、比誘電率が2〜10(好ましくは3〜6)程度、誘電正接が0.00001〜0.01(好ましくは0.00001〜0.001)程度の誘電体素材を充填するとよい。
【0171】
メモリカード201の高周波信号伝送路234としてのマイクロストリップラインにおいては、高周波信号が準TEMモードで伝送される。導波管246内では、伝送路結合部208のアンテナ236(パッチアンテナ)から発せられた電磁波(電波)がTEモードで伝送される。そのため、伝送路結合部208(のアンテナ236)と導波管246との間の部分では、準TEMモードからTEモードへと電界の向きが変わり、モードが不安定な状態である。ここで、筐体290と基板202とは予め定められた位置関係を保つように固定される。したがって、導波管246と伝送路結合部208(のアンテナ236)との関係は、実質的に両者が一体化されているので、位置ずれは製造時の取付けばらつきを起因とするもののみと考えてよい。導波管246と伝送路結合部208(のアンテナ236)との対向部分は実質的に固定されるから、固定部分において“モードが不安定な状態”で結合する構造である。導波管246とアンテナ236との間の隙間に“モードが不安定な状態”が存在するが、この隙間部分は固定されているので、導波管246と伝送路結合部208(のアンテナ236)との相対位置がずれることはなく、電子機器101側と同様に、結合性の悪化や反射や通過の特性が劣化する虞れはない。
【0172】
誘電体導波管142と導波管246とが対向する電磁界結合部150においては、各導波管の断面を介して電波を非接触で伝送する構造となり、同じ伝送モードで電波が結合される。電磁界結合部150を伝送モードが共通の電波が伝送するので、電磁界結合部150が可動部となって隙間やずれがあっても、電界の移行がし易く電波が伝わり易い。
【0173】
<具体的な適用例>
以下、具体的な適用例を示す。
【実施例1】
【0174】
図8は、本実施形態の第2例の電波伝送構造(図7(A2))が適用された実施例1の電子機器を説明する図である。メモリカード201Cの構造例(平面透視及び断面透視)が図8(A)に示されている。電子機器101Cの構造例(平面透視及び断面透視)が図8(B)に示されている。電子機器101Cのスロット構造4C(特に開口部192)にメモリカード201Cが挿入されたときの構造例(断面透視)が図8(C)に示されている。
【0175】
実施例1の電子機器(の全体)は、第2比較例と同様に、電子機器101Cとメモリカード201Cの間のスロット構造4Cは、電子機器101Cに対して、メモリカード201Cの着脱を行なう構造であり、電子機器101Cとメモリカード201Cの固定手段の機能を持つ。スロット構造4Cは、電子機器101Cの筺体190にメモリカード201C(その筐体290)を開口部192から挿抜して固定可能な構成となっている。以下、第2比較例との相違点に着目して説明する。
【0176】
実施例1の電子機器(の全体)は、導波管の一部分をメモリカード201C側に具備する形態、つまり、メモリカード201の基板202における誘電体導波管142側の面上に、導波管146を構成する導体を固定する形態である。メモリカード201C側において、伝送路結合部208のアンテナ236(パッチアンテナ)の下面に誘電体導波管142と同径のリング状の導体247(導体リング)が接着、固定されている。アンテナ236は基板202上にパターン形成されたパッチアンテナであり、筐体290と基板202との隙間に、導波管246を形成する導体247が配置されている。導波管246と伝送路結合部208(のアンテナ236)とが一体化され、導波管246と誘電体導波管142の断面同士で電波が結合される。この際、基板202と筐体290の隙間に導波管246を配置することで、筐体内に埃等が入り込むのを防止しつつ、2つの導波路の長手方向の断面同士が相対して電波同士を結合する結合部を配置できるようにしている。
【0177】
このような構造では、筐体290に嵌合構造(凹形状構造体298)が不要になる。尚、一般的なスロット構造と同様にメモリカード201Cにも、図中に破線で示すように、メモリカード201Aの装着状態を嵌合構造により規定する位置規定部として凹凸形状の構造を持たせてもよい。因みに、筐体290に嵌合構造(凹形状構造体298)を設けない場合でも、電子機器101C側は、必須ではないが、汎用のメモリカード201との互換性を考慮して、凸形状構造体198を設け、この部分に誘電体導波管142を形成する。後述の実施例2と同様に、汎用のメモリカード201との互換性を考慮せず、電子機器101C側についても、筐体190に嵌合構造(凸形状構造体198)を設けない構成にしてもよい。
【0178】
実施例1の電波伝送構造によれば、メモリカード201Cがスロット構造4Cに装着されたときに、アンテナ136とアンテナ236との間に、誘電体導波管142と導波管246とを具備する誘電体伝送路9Aを介在させる構成となる。アンテナ136と導波管146との間並びにアンテナ236と導波管246との間の位置関係は固定されるので、それらの相対位置がずれることはなく、結合性の悪化や反射や通過の特性が劣化する虞れはない。誘電体導波管142と導波管246との間の導波管断面の中継部分(導波路接合部)に、可動部である電磁界結合部150が形成されるが、この電磁界結合部150においては、伝送モードが同一なので電磁波の移行が容易であり、ずれや隙間に対して伝送特性の劣化を小さくすることができ、位置ずれによる影響を確実に排除できる。
【実施例2】
【0179】
図9〜図10は、本実施形態の第2例の電波伝送構造(図7(A2))が適用された実施例2の電子機器を説明する図である。メモリカード201Dの構造例(平面透視及び断面透視)が図9(A)に示されている。電子機器101Dの構造例(平面透視及び断面透視)が図9(B)に示されている。電子機器101Dのスロット構造4D(特に開口部192)にメモリカード201Dが挿入されたときの構造例(断面透視)が図9(C)に示されている。メモリカード201Dに適用された伝送路結合部208及び電子機器101Dに適用された伝送路結合部108の構造(断面透視)の詳細が図10に示されている。以下、実施例1との相違点に着目して説明する。
【0180】
実施例2の電子機器(の全体)は、回路基板そのものに導波管をなす導体をパターン形成することで、導波管と伝送路結合部(のアンテナ)とを回路基板に一体形成する形態である。基板内の導波管と基板上の伝送結合構造とが一体化される。メモリカード201の基板202内において、その厚さ方向に、導波管146を構成する導体を形成する形態である。図10に示すように、メモリカード201D側において、基板202として多層プリント基板を使用している。第1層L1(の第2層L2とは反対側の面)に高周波信号伝送路234(例えばマイクロストリップライン)を形成し、第2層L2のアンテナ236と対向する部分を囲むように導波管246をなす誘電体導波管142の径に合わせた導体247_1(リングパターン)を形成している。又、導体247_1の内部に、反射板249を形成することで、広帯域化を実現する。第2層L2(の第1層L1側の面)には、アンテナ236(パッチアンテナ)をパターン形成し、アンテナ236を囲むように導波管246をなす誘電体導波管142の径に合わせた導体247_2(リングパターン)を形成している。導体247_2(リングパターン)の外側は、高周波信号伝送路234(例えばマイクロストリップライン)の接地(GND)導体を形成している。アンテナ236は、第1層L1の高周波信号伝送路234の伝送路端で電磁結合する。第3層L3(の第2層L2側の面)には、第2層L2のアンテナ236と対向する部分を囲むように導波管246をなす誘電体導波管142の径に合わせた導体247_3(リングパターン)を形成し、第4層L4(の第3層L3側の面)には、第2層L2のアンテナ236と対向する部分を囲むように導波管246をなす誘電体導波管142の径に合わせた導体247_4(リングパターン)を形成している。第1層L1、第2層L2、第3層L3、第4層L4に誘電体導波管142の径に合わせた導体247(リングパターン)を形成し、貫通ビア248で第1層L1〜第4層L4を接続する。これにより導波管246を形成する。導波管246と伝送路結合部208(のアンテナ236)とが一体化され、導波管246と誘電体導波管142の断面同士で電波が結合される。伝送路結合部208側については、導波管246との結合構造を基板202上で形成する構造であり、広帯域化と量産性に優れた構造になる。
【0181】
尚、このような構造では、筐体290に嵌合構造(凹形状構造体298)が不要になる。因みに、電子機器101D側は、汎用のメモリカード201との互換性を考慮せず、筐体190に嵌合構造(凸形状構造体198)を設けていない。その代わりに、誘電体導波管142をなすように(詳しくは誘電体導波管142に代えて)、回路基板そのものに導波管146をなす導体147をパターン形成することで、導波管146と伝送路結合部134(のアンテナ136)とを回路基板に一体形成している。各層の配置態様はメモリカード201側と同様であり、参照子を100番台で示す。電子機器101D側についても、誘電体導波管142をなす導波管146との結合構造を基板102上で形成する構造であり、広帯域化と量産性に優れた構造になる。
【0182】
メモリカード201D側とスロット構造4D側とで、第4層L4同士が対向するように配置し、その間を筐体190及び筐体290を介して電波(この例ではミリ波)を伝送する。電子機器101D及びメモリカード201Dの双方について嵌合構造が不要であり、装置構成が簡単になるとともに薄型化が可能になる。このような実施例2の電波伝送構造でも、実施例1と同様の作用効果が得られる。
【0183】
[実施例1及び実施例2の変形例]
実施例1及び実施例2では、4層基板を使用しているが、回路基板内でその厚さ方向に導波路を形成できればよく、その層数は“4”に限定されない。層数、各層の厚さ、材質等の諸元は、伝送される電波の周波数において、結合ロスができるだけ少ないように適宜選定すればよい。場合によっては、多層基板とすることなく、単層基板の両面を使って導波管246や誘電体導波管142を形成してもよい。
【0184】
実施例1では、誘電体導波管142や導波管246は、外部導体をなす導体144や導体247の内部を誘電体素材で埋め込んだが、誘電体素材を埋め込まずに周囲が遮蔽材としての導体(導体144や導体247)で囲まれ内部が中空の中空導波路にしてもよい。このような構造の中空導波路は、囲いによってミリ波が中空導波路の中に閉じ込められるため、ミリ波の伝送損失が少なく効率的に伝送できる、ミリ波の外部放射を抑える、EMC対策がより楽になるなどの利点が得られる。
【0185】
実施例1及び実施例2では、1つの誘電体導波管142と導波管246の系統に、アンテナ対(アンテナ136とアンテナ236の組)を1組設けたが、アンテナ対を複数設けてもよい。又、アンテナ136は1つでアンテナ236を複数にすることで、複数のアンテナ236が1つのアンテナ136から発せられたミリ波を同時に受信する同報通信を行なってもよいし、受信側の搬送周波数を異ならせることで選択的な受信を行なってもよい。逆に、アンテナ236は1つでアンテナ136を複数にし、何れか1つのアンテナ136から選択的に送信を行なってもよい。何れの場合も、アンテナ136やアンテナ236のそれぞれに対応して半導体チップ103或いは半導体チップ203が設けられる。
【0186】
実施例1及び実施例2では、アンテナ136、誘電体導波管142、導波管246、アンテナ236の系統を1つ設けていたが、これを複数系統設けて、空間分割多重を適用してもよい。導波構造が独立であるから、ミリ波干渉を防ぐことができ、送受信に同じ周波数の搬送信号を用いてミリ波伝送を独立して行なうことができる。即ち、空間分割多重によって、同一周波数帯域を同一時間に使用することができるため、通信速度を増加できるし、信号伝送を同時に行なう双方向通信の同時性を担保できる。複数系統のミリ波信号伝送路を構成することにより、全二重の伝送が可能となり、データ送受信の効率化を図ることができる。
【0187】
又、メモリカード201においてアンテナ236を基板202の各面に対向して配置し、それに対応してスロット構造4は、開口部192の両側の内面に各別の基板102を設け、各基板上にアンテナ136を配置してもよい。この場合にも、空間分割多重が適用され、同一周波数帯域を同一時間に使用することができるため、通信速度を増加できるし、信号伝送を同時に行なう双方向通信の同時性を担保できる。複数系統の無線信号伝送路9を構成することにより、全二重の伝送が可能となり、データ送受信の効率化を図ることができる。この変形例は、レイアウト上の制約から基板の同一面に複数のアンテナを配置するスペースを確保できないときに有効な手法である。
【実施例3】
【0188】
図11は、本実施形態の第2例の電波伝送構造(図7(A2))が適用された実施例3の電子機器を説明する図である。メモリカード201Eの構造例(平面透視及び断面透視)が図11(A)に示されている。電子機器101Eの構造例(平面透視及び断面透視)が図11(B)に示されている。電子機器101Eのスロット構造4(特に開口部192)にメモリカード201Eが挿入されたときの構造例(断面透視)が図11(C)に示されている。電子機器101Eとメモリカード201Eとで電子機器の全体が構成される。
【0189】
実施例3は、図2に示した信号インタフェースを適用するものであり、パワー伝送を要する電源に関しても無線で伝送する。つまり、第2通信装置200B側で使用する電力を無線により第1通信装置100Bから供給する構成を追加している。図は、実施例1に対する変形例で示している。以下、実施例1との相違点に着目して説明する。
【0190】
各基板202の一辺には、筐体290の決められた箇所で電子機器101Eと接続するための接続端子280が決められた位置に設けられている。メモリカード201Eは、低速・小容量の信号用に、従前の端子構造を一部に備える。非接触伝送に置換した電力供給用及びミリ波での信号伝送の対象となり得るものは、図中に破線で示すように、端子を取り外している。
【0191】
非接触電力伝送に対応するべく、半導体チップ801には給電電源部を組み込み、半導体チップ802には受電電源部及び基準信号生成部を組み込む。半導体チップ801を搭載した基板102に導体パターンコイルの送電素子413を配置し、半導体チップ802を搭載した基板202に導体パターンコイルの受電素子423を配置する。
【0192】
基板202には直流電源を配置せず、基板102の送電素子413から基板202の受電素子423に非接触電力伝送を適用して電力供給を行なう。このとき、好ましくは、非接触電力伝送は単一キャリアのみとし、データ伝送は非接触電力伝送用の単一キャリアの周波数とは異なる周波数帯で行なうことで広帯域幅を確保するとともに、データ伝送への非接触電力伝送に起因するノイズ等の干渉を防止する。アンテナ136とアンテナ236との間や受電素子413と送電素子423の間には、筐体290や基板202を挟むが、それらは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
【実施例4】
【0193】
図12は、本実施形態の第2例の電波伝送構造(図7(A2))が適用された実施例4の電子機器を説明する図であり、特に、装着構造の変形例を説明するものである。電子機器101Hは、その筺体190の一部が、カードを載置する平面状の台(載置台5Hと称する)として機能するように構成されている。載置台5Hは、メモリカード201Hが装着される装着構造の一例である。その規定位置にメモリカード201Hが載置された状態が、前記の各例の「装着」の状態と同じになる。つまり、このような態様も、メモリカード201Hが電子機器101Hの装着構造に装着されたものとなる。
【0194】
載置台5Hの下部の筺体190内には半導体チップ801が収容されており、ある位置にはアンテナ136が設けられている。アンテナ136と対向する筺体190の部分には、内部の伝送路が誘電体素材で構成された誘電体伝送路9Aとし、その外部が導体144で囲まれた誘電体導波管142が設けられている。誘電体導波管142(誘電体伝送路9A)を設けることは必須ではなく、筺体190の誘電体素材のままで無線信号伝送路9が構成されてもよい。これらの点は前述の他の構造例と同様である。
【0195】
筺体190には、メモリカード201Hの載置位置を規定するべく、メモリカード201Hの置かれる位置を規定する壁面が形成されるようにする。たとえば、メモリカード201Hの1つの角201aを規定するべく、載置位置の筐体190に角101aをなす2つの辺縁101b及び辺縁101cが立ち上がって壁面をなしている。メモリカード201Hが載置台5Hに置かれるときにはその壁面(辺縁101b及び辺縁101c)に突き当てられること(壁面突当て方式と称する)を原則とする。
【0196】
図示しないが、非接触電力伝送に対応するための構成は実施例3と同様であり、半導体チップ801には給電電源部を組み込み、半導体チップ802には受電電源部及び基準信号生成部を組み込む。半導体チップ801を搭載した基板102に導体パターンコイルの送電素子を配置し、半導体チップ802を搭載した基板202に導体パターンコイルの受電素子を配置する。
【0197】
このような構成により、載置台5Hに対するメモリカード201Hの搭載(装着)時に、メモリカード201Hのミリ波信号伝送に対する位置合せ行なうことが可能となる。アンテナ136とアンテナ236との間や受電素子413と送電素子423の間には、筐体190及び筐体290や基板202を挟むが、それらは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
【0198】
実施例4においては、メモリカード201Hが載置台5Hの規定位置に装着されたときに、伝送路結合部108と伝送路結合部208(特にアンテナ136とアンテナ236)の間に誘電体伝送路9Aを介在させる構成を採用している。ミリ波信号を誘電体伝送路9Aに閉じ込めることで高速信号伝送の効率向上を図ることができる。
【0199】
嵌合構造という考え方を採っていないが、壁面突当て方式により、位置ズレによる影響を載置台5Hの角101aに突き当てられるように置かれたときに、アンテナ136とアンテナ236が対向するようにしているので、位置ズレによる影響を確実に排除できる。
【0200】
図示を割愛するが、載置台5Hの下部に複数のアンテナ136を平面状に併設し、本番の信号伝送に先立ち、メモリカード201Hのアンテナ236から検査用のミリ波信号を送出し、最も受信感度の高いアンテナ136を選択するようにしてもよい。こうすることで、装置構成は若干複雑になるが、導波管246を適用したメモリカード201Hを用いるだけの場合よりも、メモリカード201Hの載置台5Hへの載置位置(装着位置)を気にしなくてもよくなる。
【実施例5】
【0201】
図13は、本実施形態の第2例の電波伝送構造(図7(A2))が適用された実施例5の電子機器を説明する図である。第1の電子機器の一例として携帯型の画像再生装置201Kを備えるとともに、画像再生装置201Kが搭載される第2(本体側)の電子機器の一例として画像取得装置101Kを備えている。画像取得装置101Kと画像再生装置201Kとで電子機器の全体が構成される。画像取得装置101Kには、画像再生装置201Kが搭載される載置台5Kが筐体190の一部に設けられている。載置台5Kに代えてスロット構造4にしてもよい。一方の電子機器が他方の電子機器に装着されたときの両電子機器間において、無線により信号伝送を行なうという点では前述の各実施例と同じである。以下では、実施例4との相違点に着目して説明する。
【0202】
画像取得装置101Kは概ね直方体(箱形)の形状をなしており、もはやカード型とは言えない。画像取得装置101Kとしては、例えば動画データを取得するものであればよく、例えばデジタル記録再生装置や地上波テレビ受像機が該当する。画像再生装置201Kには、アプリケーション機能部として、画像取得装置101K側から伝送されてくる動画データを記憶する記憶装置や、記憶装置から動画データを読み出して表示部(例えば液晶表示装置や有機EL表示装置)にて動画を再生する機能部が設けられる。構造的には、メモリカード201Bを画像再生装置201Kに置き換え、電子機器101Eを画像取得装置101Kに置き換えたと考えればよい。
【0203】
載置台5Kの下部の筺体190内には、例えば第2例(図11)と同様に、半導体チップ801が収容されており、ある位置にはアンテナ136が設けられている。アンテナ136と対向する筺体190の部分には、無線信号伝送路9として誘電体素材により誘電体伝送路9Aが構成されるようにしてある。載置台5Kに搭載される画像再生装置201Kの筺体290内には、基板202を有し、基板202の一方の面に半導体チップ802を有するとともに半導体チップ802と接続されるアンテナ236が形成されている。アンテナ236と対向する筺体290の部分は、誘電体素材により無線信号伝送路9(誘電体伝送路9A)が構成されるようにしてある。
【0204】
図示しないが、非接触電力伝送に対応するための構成は実施例3と同様であり、半導体チップ801には給電電源部を組み込み、半導体チップ802には受電電源部及び基準信号生成部を組み込む。半導体チップ801を搭載した基板102に導体パターンコイルの送電素子を配置し、半導体チップ802を搭載した基板202に導体パターンコイルの受電素子を配置する。
【0205】
実施例5は、嵌合構造という考え方ではなく壁面突当て方式を採り、載置台5Kの角101aに画像取得装置101Kが突き当てられるように置かれたときにアンテナ136とアンテナ236が対向するようにしているので、位置ズレによる影響を確実に排除できる。このような構成により、載置台5Kに対する画像再生装置201Kの搭載(装着)時に、画像再生装置201Kの無線信号伝送に対する位置合せ行なうことが可能となる。アンテナ136とアンテナ236との間や受電素子413と送電素子423の間には、筐体190及び筐体290や基板202を挟むが、それらは誘電体素材であるので、非接触電力伝送やミリ波帯での無線伝送に与える影響は少ない。
【0206】
以上、本明細書で開示する技術について実施形態を用いて説明したが、請求項の記載内容の技術的範囲は前記実施形態に記載の範囲には限定されない。本明細書で開示する技術の要旨を逸脱しない範囲で前記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、そのような変更または改良を加えた形態も本明細書で開示する技術の技術的範囲に含まれる。前記の実施形態は、請求項に係る技術を限定するものではなく、実施形態の中で説明されている特徴の組合せの全てが、本明細書で開示する技術が対象とする課題の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施形態には種々の段階の技術が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組合せにより種々の技術を抽出できる。実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、本明細書で開示する技術が対象とする課題と対応した効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成も、本明細書で開示する技術として抽出され得る。
【0207】
例えば、マイクロストリップラインMSLから導波管に対しTEモードで結合するアンテナとしては、パッチアンテナに限らず、例えばスロットアンテナを採用することもできる。パッチアンテナ、スロットアンテナともに、導波管の断面方向に電界が立つ。図14には、スロットアンテナを使用した場合における電波伝送構造の第1変形例を説明する図(図10に対しての変形例)が示されている。図10との対比では、第2層L2が大きく異なり、高周波信号伝送路234(例えばマイクロストリップライン)の接地(GND)導体を成す導体パターン236に開口236a(スロット孔)を設けてスロットアンテナを成すようにしている。
【0208】
又、導波管内は、TEモードに限らずTMモードで電波を伝送してもよい。図15には、導波管内をTMモードで電波を伝送させる場合における電波伝送構造の第2変形例を説明する図(図10に対しての変形例)が示されている。マイクロストリップラインMSLから導波管に対しTMモードで結合する構造である。参考文献1の10ページ、図5−23を元に、プリント基板で構成している。マイクロストリップラインMSLの端部から同軸プローブを貫通孔(ビア:L1−L4)により形成し、同軸結合ビア(L1−L2)と、同軸結合メタル抜きパタン(L2)により同軸構造を形成している。又、貫通孔L3及び貫通孔L4にビアによる導波管を形成している。同軸プローブは、L3−L4において導波管の円周に沿って磁界を生成し、電磁界は導波管に対し、TMモード(TM11)で結合する。
【0209】
参考文献1:“第5章 伝送線路 応用”、[online]、[平成22年12月24日検索]、インターネット<URL:http://www.asahi-net.or.jp/~bz9s-wtb/doc/denjiha/tiw1c5tmp.pdf>
【符号の説明】
【0210】
1…信号伝送装置、101…電子機器、102…基板、103…半導体チップ、104…LSI機能部、105…アプリケーション機能部、106…メモリカード制御部、107…信号生成部、108…伝送路結合部、110…送信側信号生成部、113…多重化処理部、114…パラレルシリアル変換部、115…変調部、116…周波数変換部、117…増幅部、134…ミリ波伝送路、136…アンテナ、142…誘電体導波管、144…導体(遮蔽材)、174…電力供給部、190…筺体、192…開口部、198…凸形状構成、201…メモリカード、202…基板、203…半導体チップ、205…メモリ機能部、206…メモリ制御部、207…信号生成部、208…伝送路結合部、234…ミリ波伝送路、236…アンテナ、278…電力受取部、290…筐体、298…凹形状構成、4…スロット構造、9…ミリ波信号伝送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送対象信号を無線信号にして第1の導波路を介して送信する送信装置と、送信装置から送信された伝送対象信号の無線信号を第2の導波路を介して受信する受信装置とを備え、
送信装置と受信装置との間では、第1の導波路と第2の導波路とが対面して無線信号を伝送する信号伝送装置。
【請求項2】
第1の導波路と第2の導波路の内の少なくとも一方は、電波を伝送可能な特性を持つ誘電体素材が充填されている請求項1に記載の信号伝送装置。
【請求項3】
第1の導波路と第2の導波路の内の一方は、他方の導波路と反対側に、高周波信号が伝送される高周波信号伝送路と電磁気的に結合されるアンテナを有し、
少なくともアンテナと導波路の一方とが一体になっている請求項1又は請求項2に記載の信号伝送装置。
【請求項4】
アンテナと導波路の一方とが同じ回路基板に形成されている請求項3に記載の信号伝送装置。
【請求項5】
高周波信号伝送路とアンテナと導波路の一方とが一体になっている請求項3又は請求項4に記載の信号伝送装置。
【請求項6】
高周波信号伝送路とアンテナと導波路の一方とが同じ回路基板に形成されている請求項5に記載の信号伝送装置。
【請求項7】
回路基板における第1の導波路と第2の導波路の内の他方側の面上に、一方の導波路を構成する導体が固定されている請求項4又は請求項6に記載の信号伝送装置。
【請求項8】
回路基板内において、その厚さ方向に、一方の導波路が形成されている請求項4又は請求項6に記載の信号伝送装置。
【請求項9】
第1の導波路を具備した第1の電子機器と、
第2の導波路を具備し、第1の電子機器と装着可能な第2の電子機器と、
を備え、
第1の電子機器と第2の電子機器との間では、第1の導波路と第2の導波路とが対面して無線信号を伝送する電子機器。
【請求項10】
第1の導波路を具備しており、第2の導波路を具備した他の電子機器と装着されることで、第1の導波路と第2の導波路とが対面して無線信号を伝送する電子機器。
【請求項11】
電子機器同士が装着されたときに両者の位置合わせを行なう位置合わせ構造を備え、
位置合わせ構造の部分において、2つの導波路が対面して無線信号を伝送する請求項9又は請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
位置合わせ構造は、電子機器同士の装着状態を嵌合構造により規定する構造を有する請求項11に記載の電子機器。
【請求項13】
位置合わせ構造は、電波を伝送路中に閉じ込めつつ電波を伝送させる構造を持つ請求項11又は請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
位置合わせ構造は、電波を伝送可能な特性を持つ誘電体素材が充填されている請求項13に記載の電子機器。
【請求項15】
2つの導波路の内の一方は、他方の導波路と反対側に、高周波信号が伝送される高周波信号伝送路と電磁気的に結合されるアンテナを有し、
少なくともアンテナと導波路の一方とが同じ回路基板に形成されている請求項9から請求項14の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項16】
高周波信号伝送路とアンテナと導波路の一方とが同じ回路基板に形成されている請求項15に記載の電子機器。
【請求項17】
回路基板における2つの導波路の内の他方側の面上において、一方の導波路を構成する導体が固定されている請求項15又は請求項16に記載の電子機器。
【請求項18】
回路基板内において、その厚さ方向に、一方の導波路が形成されている請求項15又は請求項16に記載の電子機器。
【請求項19】
筐体における、2つの導波路の対向部分は、誘電体素材で構成されている請求項9から請求項18の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項20】
第1の電子機器と第2の電子機器とを装着して、両者間で無線により信号伝送を行なうに当たり、
第1の電子機器に第1の導波路を設け、
第2の電子機器に第2の導波路を設け、
第1の電子機器と第2の電子機器との間では、第1の導波路と第2の導波路とを対面させて無線信号を伝送する信号伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−146237(P2012−146237A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5632(P2011−5632)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】