説明

信号処理装置

【課題】記録密度の高い領域の信号再生処理、記録密度の低い領域の信号再生処理のいずれにも柔軟に対応することができる装置を提供する。
【解決手段】光ディスクから読み出されたデータを波形等価する波形等化回路と、前記波形等化回路の出力が供給され、それぞれクラスが異なる複数のPRLM処理部と、前記複数のPRLM処理部の出力のうちいずれか1つを選択してデコーダに供給するスイッチと、前記光ディスクの記録密度の異なる高密度領域と低密度領域とで、前記スイッチを制御し、前記複数のPRLM処理部の出力のうちいずれか1つを選択状態を切り替える制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録密度の高い光ディスクから読み出した信号を、的確に処理するのに適した信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクとして、赤色レーザを用いて記録再生が行われる光ディスクのほかに、青紫色レーザを用いて記録再生が行われる光ディスクが開発されている。青紫色レーザダイオードを用いて記録再生が行われる光ディスクの場合、青紫色レーザの波長が赤色レーザの波長より短いことから記録密度を高くすることができる。
【0003】
この青紫色レーザを用いて光ディスクに情報記録再生を行う記録再生装置では、読み出された信号に対して、PRML(パーシャルレスポンスアンドマキシマムライクリーフッド)識別方式を用いた再生処理を行い、読み取り精度を向上している。PRMLに関する説明資料としては、特開2003−16733号公報がある。
【特許文献1】特開2003−16733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、再生装置を考慮した場合、光ディスクとして種々のタイプが出現するようになり、記録密度の高い領域と、記録密度の低い領域を有するものもある。また再生装置では、記録密度の高い光ディスクと、記録密度の低い光ディスクのいずれも再生したいという要望がある。しかし、一定のクラスのPRML(パーシャルレスポンスアンドマキシマムライクリーフッド)識別方式を用いた信号再生処理であると、記録密度の低い領域の再生時、あるいは、記録密度の低い光ディスクの再生時の最性能が十分に得られないという問題がある。
【0005】
そこでこの発明は、記録密度の高い領域の信号再生処理、記録密度の低い領域の信号再生処理のいずれにも柔軟に対応することができる信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明では、高い記録密度の光ディスクから、青紫色レーザを用いて信号を読み取る再生回路において、記録密度の高い領域用のPRML処理機能と、記録密度の低い領域用のPRML処理機能と、これらの処理機能を切り替える手段とを備える。具体的には、光ディスクから読み出されたデータを波形等価する波形等化回路と、前記波形等化回路の出力が供給され、それぞれクラスが異なる複数のPRLM処理部と、前記複数のPRLM処理部の出力のうちいずれか1つを選択してデコーダに供給するスイッチと、前記光ディスクの記録密度の異なる高密度領域と低密度領域とで、前記スイッチを制御し、前記複数のPRLM処理部の出力のうちいずれか1つの選択状態に切り替える制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記の手段により、記録密度の高い領域、記録密度の低い領域のいずれの信号も的確に再生することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1には、本発明の一実施の形態に係る信号処理装置を利用した光ディスク再生装置の構成図を示している。図1において、符号11は光ディスク(記録媒体)、符号30はアナログおよびデジタル回路から構成される波形等化器、符号40,41はビタビ復号器(最尤復号器)、符号50はデコーダ(復調器)、符号51は切り替えスイッチである。波形等化器30は、アナログフィルタ31と、ADC(アナログ・ディジタル変換器)32と、適応型フィルタ33、適応学習回路34から構成されている。符号40のビタビ復号器は、クラス(3443)のパーシャルレスポンスに対応する最尤復号器である。符号41は、クラス(11)のパーシャルレスポンスに対応する最尤復号器である。この二つのビタビ復号器40,41は切り替えスイッチ51によって片方が選択される。
【0009】
適応学習回路34は、適応型フィルタ33の入力信号,出力信号、ビタビ復号器の出力から、適応型フィルタ33の特性が最適となるように制御を行う。適応学習回路34には、適応型フィルタ33及び切り替えスイッチ51の出力も帰還されている。
【0010】
図1において、青紫色レーザにより、光ディスク11から読み出された再生信号は、アナログフィルタ31にて高域雑音を除去する。雑音除去された波形に対してアナログデジタルコンバータ(ADC)32にて、アナログ信号をディジタル信号へ変換する。変換されたディジタル信号は、適応学習回路34と適応型フィルタ33に入力される。適応型フィルタ33は、適応学習回路34の出力に基づき特性制御され、入力を波形等化処理する。なお青紫色レーザは、周知の光学ヘッドに組み込まれたレーザダイオードから対物レンズを介して照射される。
【0011】
ビタビ復号器40またはビタビ復号器41にてバイナリデータが検出される。このバイナリデータは、切り替えスイッチ51によりいずれか一方が選択され、デコーダ50に入力される。このデコーダ50において復調処理が行われてユーザデータとして出力される。
【0012】
一方、近年、光ディスクとして、通常のデータが記録される線記録密度の高い部分と、システムリードインと呼ばれる線記録密度の低い部分が同一媒体上に存在する。
【0013】
図2には、この光ディスク11を示している。中心部のクランプ孔の外側にバーストカッティングエリア(BCA)があり、その外側にシステムリードンエリア12、さらにこの外側にコネクションエリア、さらにこの外側にデータリードインエリア15がある。さらにこのリードインエリア15の外側にデータエリア16があり、この外にリードアウトエリア17が設定されている。
【0014】
図3には、各エリアにおける、データビット長、チャンネルビットエリア、最小マーク長、トラックピットなどの規定を示している。この表から分るように、光ディスク11では、システムリードンエリア13と、データリードインエリア15とのデータビット長、チャンネルビット長が大きく異なることなる。このために、システムリードインと呼ばれる線記録密度の低い部分のデータ再生をする場合には、記録密度が低すぎるために、クラス(1221)、クラス(3443)、クラス(12221)等のパーシャルレスポンスではうまく再生を行うことができないという問題がある。
【0015】
そこで、この発明は、記録密度が低い領域(システムリードイン領域)では、例えばクラス(11)のパーシャルレスポンスで再生を行うのである。
【0016】
図4は、システムリードイン領域の再生信号スペクトルと代表的なクラスのパーシャルレスポンス応答の特性を示す図である。図4から明らかなように、周波数特性の整合性について見ると、システムリードイン領域ではクラス(11)が適していることが分かる。
【0017】
よって、通常の密度のデータを再生する場合は、図1に示す切り替えスイッチ51によってビタビ復号器40側を選択し、クラス(3443)になるように波形等化を行う。そしてシステムリードインのような密度の低い領域13のデータを再生する場合は、切り替えスイッチ51によってビタビ復号器41側を選択し、クラス(11)になるように波形等化を行う。
【0018】
このように、再生する記録密度に合わせて異なるクラスのパーシャルレスポンス波形に等化し、選択したクラスに適合するビタビ復号を行うことで異なる記録密度で記録されたデータを再生することができる。図1において、55は、システム制御部であり、操作部56が接続されており、またメモリ57も接続されている。操作部56は、リモートコントローラからの操作信号を受信することもできる。
【0019】
制御部55は、デコーダ50から復号信号あるいは、デコード出力を用いて、再生信号の評価を行うこともできる。この評価値により、現在用いているビタビ復号器が適正なものか否かを判断することもできる。不適正であれば、スイッチ51を制御し、他方のビタビ復号器の出力を採用するようになっている。また、スイッチ51を制御し、ビタビ復号器40と41の復号出力をそれぞれ評価し、適正出力であるほうの復号器を選択するようにしてもよい。また復号した出力品質の良否を判定する場合、デコーダ50における、エラー率から判断してもよい。例えば、ビタビ復号器40と41の復号出力をそれぞれ、エラー訂正処理する。そしてエラー率の少ない出力に対応した復号器が適正なものとして判断するのである。
【0020】
またスイッチ51の制御方法としては各種の方法が可能である。例えば、光ディスク11の場合、システムリードインエリア13のデータを再生する場合、その物理アドレスが決まっているので、制御部55は、システムリードインエリア13のデータ読み取り時を物理アドレスから判断し、スイッチ51を制御し、ビタビ復号器41の選択状態に切り替える。
【0021】
また、ディスクにより記録密度が異なり、この記録密度に応じて復号器のクラスを切り替える必要がある場合がある。このような場合は、例えばBCAの情報を読み取ったときに、ディスク種別を判別し、この種類に応じて適切なビタビ復号器を選択するようにしてもよい。
【0022】
この発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
図5は、本発明の実施形態に係る信号処理装置を利用した光ディスク再生装置の他の構成図を示している。理解容易のため、図1の構成図と同一の要素には同一の符号を付けている。図1と図5の違いは、図5の構成においてビタビ復号器42が追加されている点である。これに合わせて、切り替えスイッチ51は、ビタビ復号器40、ビタビ復号器41、ビタビ復号器42の3種から一つを選択する。
【0024】
前述の光ディスク11の場合、通常のデータ領域においても、媒体の種類によって異なる密度で記録が行われる。すなわち、再生専用媒体においては、その再生信号スペクトルがクラス(3443)のパーシャルレスポンスとの整合性が良く、書換え型媒体においては、その再生信号スペクトルがクラス(12221)のパーシャルレスポンスとの整合性が良い。よって、再生専用媒体のデータ領域を再生する場合には、クラス(3443)のパーシャルレスポンスを用いてデータ再生を行い、書換え型媒体のデータ領域を再生する場合には、クラス(12221)のパーシャルレスポンスを用いてデータ再生を行い、再生専用媒体、書換え型媒体いずれにおいてもシステムリードイン領域の再生を行う場合には、クラス(11)のパーシャルレスポンスを用いてデータ再生を行う。
【0025】
以上説明してきたとおり、本発明によれば、記録媒体の記録密度に応じて、その再生信号の周波数特性に整合するようにパーシャルレスポンスのクラスを切替える信号処理装置の構成を採用したので、複数の記録密度の媒体のデータを再生することができる。
【0026】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態による信号処理装置の構成を示す図。
【図2】本発明係る光ディスクの例を示す説明図。
【図3】図2に示した光ディスクの各エリアの記録密度の説明図。
【図4】光ディスクの再生信号スペクトルとパーシャルレスポンス特性の関係を示す図。
【図5】この発明の他の実施の形態を示す構成説明図。
【符号の説明】
【0028】
11…光ディスク、30…波形等価回路、40、41,42…ビタビ復号器、50…でコーダ、51…スイッチ、55…制御部、56…操作部、57…メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクから読み出されたデータを波形等価する波形等化回路と、
前記波形等化回路の出力が供給され、それぞれクラスが異なる複数のPRLM処理部と、
前記複数のPRLM処理部の出力のうちいずれか1つを選択してデコーダに供給するスイッチと、
前記光ディスクの記録密度の異なる高密度領域と低密度領域とで、前記スイッチを制御し、前記複数のPRLM処理部の出力のうちいずれか1つの選択状態に切り替える制御手段と、
を具備したことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記複数のPRLM処理部は、クラス(3443)のPRML処理機能と、クラス(11)のPRML処理機能の双方を含むことを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記複数のPRLM処理部は、クラス(12221)のPRML処理機能と、クラス(11)のPRML処理機能の双方を含むことを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記複数のPRLM処理部は、クラス(12221)のPRML処理機能と、クラス(3443)のPRML処理機能と、クラス(11)のPRML処理機能のすべてを含むことを特徴とする請求項1記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記光ディスクは、システムリードンエリアが前記クラス(11)のPRML処理に適応した記録密度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記光ディスクの再生中エリアを判断し、エリアに応じて前記スイッチを制御し、前記PRML処理機能を選択切り替えすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−48737(P2006−48737A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223725(P2004−223725)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】