説明

信号処理装置

【課題】センサ電極の静電容量の変化を検出する静電容量検出装置を組込んシステムに、外乱を遮断しつつ、センサ電極に長く触れた場合を検出させる。
【解決手段】人が触れるとセンサ電極11の静電容量が変化する。センサ電極11に接続された静電容量検出部12は、センサ電極11の静電容量に相当する出力信号12を出力する。ハイパスフィルタ21は、出力信号S12における周囲温度等の外乱要因を遮断する。第1検出部22は、人がセンサ電極11に触れたタイミングを検出し、第2検出部23はセンサ電極11から人が離れたことを検出する。計測部24は、第1検出部22及び第2検出部23で検出したタイミングの時間差を計測し、出力部25が時間差の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の接触を検知するセンサ装置には、例えば自動車等の車両用ドアに組込まれた静電容量検出装置がある。静電容量検出装置は、人の接近や人の接触により、センサ電極の静電容量が変化し、その静電容量の変化を検出する。
従来の静電容量検出装置の一例が、下記特許文献1に示されている。
特許文献文献1に示された静電容量検出装置は、スイッチング素子をオンオフして基準容量に対する充放電を行い、基準容量の電圧をセンサ電極の静電容量に対応する値に設定し、その電圧から人の接近や接触を判定している。
【0003】
ところが、センサ電極の静電容量は周辺温度や湿度に影響されやすく、人の接触や接近の検出の精度が劣化することがある。この精度の劣化を防ぐために、通常の静電容量検出装置には、下記特許文献2に示されたようなハイパスフィルタが組込まれる。
【特許文献1】特開2005−106665号公報
【特許文献2】米国特許第5764145号明細書
【0004】
周辺温度や湿度の変化によってセンサ電極の静電容量が変化する速度は、人がセンサ電極に接近或いは積極することによってセンサ電極の静電容量が変化する速度に対して十分遅いので、ハイパスフィルタを組込むことで、周辺温度や湿度の影響を無視できる程度に抑制できる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電容量検出装置を自動車の車両用ドアに組込む場合、センサ電極は車外側ドアハンドルに装着され、静電容量検出装置は人が触れたことを検出し、静電容量検出装置の出力信号が、ドアロックの施錠或いは解錠のトリガとして利用される。即ち、静電容量検出装置が、車外側からの入力装置の一種となっている。
自動車等では、ドアロックの解錠や施錠ばかりでなく、他の情報も車外から入力できるようにすると、より利便性が向上することが予測される。しかし、車外に多数の入力装置を装備すると、自動車等の美観を損ねる。そのため、ドアロックの施錠或いは解錠を目的とした静電容量検出装置から、ドアロックの施錠或いは解錠とは係わらない情報を入力することが期待される。他の情報を入力するためには、人が車外側ドアハンドルに接触する時間に応じて異なる情報を入力できるようにすることが望ましい。つまり、人が車外側ドアハンドルに短い時間触れた場合(以下,短触という)と、長時間触れた場合(以下、長触という)との両方を検出できるようにすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、周辺温度や湿度の影響を抑制するために前述のハイパスフィルタが組込まれた静電容量検出装置は、短触は検出できても、ハイパスフィルタの影響で長触は検出できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、周辺温度や湿度等の時間的変化の遅い外乱要因を除去できると共に、時間的長さの異なる入力情報を識別することができる信号処理装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の観点に係る信号処理装置は、
変化時間が所定の時間τdよりも遅い信号を遮断するハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタの出力した信号のレベルが第1の閾値を超えたことを検出する第1検出手段と、
前記ハイパスフィルタの出力した信号のレベルが第2に閾値以下になったことを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段が検出したタイミングと前記第2検出手段が検出したタイミングの時間差を計測する計測手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成を採用したことにより、周辺温度や湿度等の時間的変化の遅い外乱要因がハイパスフィルタにより遮断される。第1検出手段により、例えば情報の入力の開始が検出され、第2検出手段により、情報の時点が検出される。計測手段により、情報の入力時間が計測される。
【0010】
尚、前記計測手段が計測した時間差と第3の閾値と比較し、比較結果を出力する比較手段を備えてもよい。
【0011】
この場合、前記比較手段での比較結果に基づき、前記ハイパスフィルタの出力した信号のレベルが前記第1の閾値を超えてから、該第1の閾値と前記第2の閾値との間で所定時間継続する場合、出力信号のレベルを変化させる出力手段を備えてもよい。
【0012】
また、前記ハイパスフィルタは、静電容量の変化を信号で示す静電容量検出装置の出力側に接続されてもよい。
【0013】
また、前記静電容量検出装置は、人の接触或いは近接によって前記静電容量が変化するセンサ電極を備えた人検出装置であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えば周辺温度や湿度等の時間的変化の遅い外乱要因を除去できると共に、時間的長さの異なる入力情報を識別することができる信号処理装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る信号処理装置が組込まれたシステムの構成図である。
このシステムは、例えば自動車に搭載されるシステムであり、静電容量検出装置10と信号処理装置20とで構成されている。
【0016】
静電容量検出装置10は、自動車の車外側ドアハンドルに装着されたセンサ電極11と、センサ電極11の静電容量を検出する静電容量検出部12とを備えている。静電容量検出部12は、例えば基準容量とスイッチング素子とを備え(図示略)、充電した基準容量をスイッチング素子でセンサ電極11に接続して基準容量の電圧をセンサ電極11の静電容量に対応させる。
【0017】
信号処理装置20は、静電容量検出装置10の出力端子に接続されたハイパスフィルタ21を備えている。ハイパスフィルタ(HPF)21の出力端子には、第1検出部22と第2検出部23とが接続されている。ハイパスフィルタ21は、盧波した結果をアナログ信号にして出力しても良いし、デジタル信号にして出力してもよい。
【0018】
第1検出部22及び第2検出部23は、ハイパスフィルタ21の出力信号S21がアナログ信号の場合には、それぞれ図2(a),(b)のように、コンパレータ22a,23aで構成することができる。第1検出部22をコンパレータ22aで構成した場合(図2(a))、コンパレータ22aの一方の入力端子(+)にハイパスフィルタ21の出力信号S21が入力され、コンパレータ22aの他方の入力端子(−)には、第1の閾値N1が入力される。
【0019】
第2検出部23をコンパレータ23aで構成した場合(図2(b))、コンパレータ23aの一方の入力端子(−)にハイパスフィルタ21の出力信号S21が入力され、コンパレータ23aの他方の入力端子(+)には、第2の閾値N2が入力される。
【0020】
ハイパスフィルタ21の出力信号S21がデジタル信号の場合には、第1検出部22及び第2検出部23は、マグニチュードコンパレータでそれぞれ構成することができる。この場合、各マグニチュードコンパレータには、デジタルデータの第1及び第2の閾値N1,N2が与えられる。
【0021】
第1検出部22の出力端子と第2検出部23の出力端子とが、計測部24の入力ポートに接続されている。計測部24は、第1検出部22の出力信号S22の変化したタイミングと第2検出部23の出力信号S23が変化したタイミングとの差を求める手段であり、タイマーやデジタルカウンタ等で構成することができる。
【0022】
計測部24の出力端子に、出力部25が接続されている。出力部25は、計測部24の出力信号S24に対する判定を行う手段であり、マイクロプロセッサ等で構成することができる。
【0023】
次に、図1のシステムの動作を説明する。
ターゲットとしての人が、自動車の車両用ドアの外部ドアハンドルに触れると、外部ドアハンドルに装着されたセンサ電極11の静電容量が変化する。静電容量検出部12は、センサ電極11の静電容量を検出して静電容量の変化を示す出力信号S12を出力する。
【0024】
ハイパスフィルタ21は、出力信号S12対して時間変化がτdよりも遅い成分を遮断し、出力信号S12における周囲温度や湿度の影響を盧波した出力信号S21を出力する。
【0025】
出力信号S21は、第1検出部22及び第2検出部23に入力される。
第1検出部22は、出力信号S21と第1の閾値N1とを比較し、出力信号S21が閾値N1よりも大きくなったときに、第1の検出部22の出力信号S22のレベルを低レベルの“L”から高レベルの“H”に遷移させる。これにより、人が外部ドアハンドルに触れたことが検出される。
【0026】
第2検出部23は、出力信号S21と第2の閾値N2とを比較し、出力信号S21が閾値N2よりも小さくなったときに、第2の検出部23の出力信号S23のレベルを低レベルの“L”から高レベルの“H”に遷移させる。これにより、外部ドアハンドルに触れていた人が、触れるのをやめたことが検出される。
【0027】
計測部24は、第1検出部22の出力信号S22が“H”に遷移したタイミングと第2検出部23の出力信号S23が“H”に遷移したタイミングとの時間差を計測する。
出力部25は、計測部24の出力信号S24で示される時間差を所定の閾値と比較し、ターゲートとなる人が外部ドアハンドルに触れていた時間の長短を判定する。即ち、短触か長触かが、出力部25で判定される。
【0028】
以上のように、本実施形態では、ハイパスフィルタ21を用いることで、周囲の温度や湿度の影響を抑制することができるばかりでなく、ハイパスフィルタ21を用いても、長触と短触の両方を識別することができる。
【0029】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。その変形例を以下に説明する。
(1)上記実施の形態では、出力部25が、長触と短触を識別したが、別の識別をしてもよい。例えば、長触と短触の間に、人が触れている時間が短触よりも長く、長触よりも短い中触を識別できるようにしてもよい。また、短触が繰り返し行われた場合や、長触が繰り返し行われた場合や、これらを組み合わせた場合等を判定してもよい。
【0030】
(2)図3は、図1の変形例を示す図であり、図1中の要素と共通する要素には共通の符号を付している。
ハイパスフィルタ21を1つに限定する必要はない。図3に示した例では、静電容量検出部12の出力端子に、2つのハイパスフィルタ26,27が並列に接続されている。ハイパスフィルタ26,27は、それぞれ遮断周波数が異なり、異なる種類の外乱を遮断する機能を持つ。ハイパスフィルタ26の出力側に、第1検出部22が接続され、ハイパスフィルタ27の出力側に、第2検出部23が接続されている。図3のシステムでは、図1のシステムと同様に、長触と短触とを識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る信号処理装置を組込んだシステムの構成図である。
【図2】第1検出部及び第2検出部の構成例を示す図である。
【図3】図1の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
10 静電容量検出装置
11 センサ電極
12 静電容量検出部
20 信号処理装置
21,26,27 ハイパスフィルタ
22 第1検出部(第1検出手段)
23 第2検出部(第2検出手段)
24 計測部(計測手段)
25 出力部(比較手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化時間が所定の時間τdよりも遅い信号を遮断するハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタの出力した信号のレベルが第1の閾値を超えたことを検出する第1検出手段と、
前記ハイパスフィルタの出力した信号のレベルが第2に閾値以下になったことを検出する第2検出手段と、
前記第1検出手段が検出したタイミングと前記第2検出手段が検出したタイミングの時間差を計測する計測手段と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記計測手段が計測した時間差と第3の閾値と比較し、比較結果を出力する比較手段を備えることを特徴する請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記比較手段での比較結果に基づき、前記ハイパスフィルタの出力した信号のレベルが前記第1の閾値を超えてから、該第1の閾値と前記第2の閾値との間で所定時間継続する場合、出力信号のレベルを変化させる出力手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記ハイパスフィルタは、静電容量の変化を信号で示す静電容量検出装置の出力側に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記静電容量検出装置は、人の接触或いは近接によって前記静電容量が変化するセンサ電極を備えた人検出装置であることを特徴する請求項4に記載の信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−139520(P2007−139520A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331991(P2005−331991)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】