説明

信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置

【課題】本発明は信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置に関し、簡単な構成で、かつ車両停止中などにおいても、安定した電源供給モードを実現する。
【解決手段】電源制御部15からの3つの論理入力IN1,IN2,IN3を多数決演算する演算部41と、演算部41に並列接続され、3つの論理入力が所定の入力条件であるか否かを判定する判定部42と、通電回路26の通電・非通電状態がフィードバックされて、設定部43を介して、そのフィードバック信号が入力される切換え部44とを備え、切換え部44は判定部42の判定信号Gに基づいて演算部41からの演算信号Dと前記フィードバック信号Jとの何れを選択するかを決定して通電回路26の通電・非通電状態を切換えるようにして信号切換え回路40を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両などの押圧操作でエンジンの始動・停止を行う制御システムなどに用いられる信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両のエンジン始動は、イグニッションキーと呼ばれる車両室内に設けられた回転スイッチを操作することによって始動する。このイグニッションキーは、通常ロータリスイッチによって構成され、対応するメカニカルキーが装着されて回動可能となっている。
【0003】
そして、この回動動作によってキースイッチの可動接点と固定接点との接触状態が切換わり、回転位置に応じて「OFF」、ラジオ機器など車両の走行に直接影響しないアクセサリ系の各種電気部品へ通電する「ACC」、車両の走行のために必要な電子機器へ通電する「IG」、エンジンを始動するためのスタータモータへ通電する「ST」と、車両内に付属する各種電子機器への電源供給先(以後、電源供給モードと記載する)を切換えている。
【0004】
ところで近年、車両室内に押し釦式の操作スイッチを設け、このスイッチへの押圧操作でエンジンを始動・停止させるワンプッシュ式エンジン制御装置が普及しつつある。このような従来のエンジン制御装置について、図4を用いて説明する。
【0005】
図4は従来のエンジン制御装置のブロック図であり、同図において、エンジン制御装置61は電源制御部62を備え、電源制御部62には操作スイッチ63から操作信号が入力される。
【0006】
また、電源制御部62には、各電源供給先への通電をON/OFF制御するACCリレー64、IGリレー65及びSTリレー66を個別に作動させるドライバ部67〜69と、エンジン制御部72とが接続されている。
【0007】
そして、電源制御部62は、これらドライバ部67〜69に対して個別に制御信号を出力することにより、対応するリレー64〜66の作動を制御する。また、電源制御部62は、各ドライバ部67〜69及びエンジン制御部72に対して制御信号を出力することにより、エンジンの始動を制御するようになっている。
【0008】
以上の構成において、例えば電源制御部62は、操作スイッチ63からの操作信号が短時間だけ入力された場合には電源供給モードの切換制御を行い、該操作信号が所定時間以上連続的に入力された場合にはエンジンの始動・停止制御を行うようになっている。
【0009】
このため、操作スイッチ63として押し釦スイッチを用いれば、同じ押圧操作によって電源供給モードの切換操作とエンジンの始動・停止操作とを行うことが可能となり操作性が向上する。
【0010】
このエンジン制御装置61は、電源制御部62による1つの各制御信号でリレー64〜66の通電・非通電状態が切換えられているため、例えば、電磁波ノイズの影響などを受け、車両の走行中に電源制御部62が意図しない作動などを生じ、走行関係に必要なIGリレー65を作動状態から非作動状態にしたり、逆に車両の停止中にIGリレー65を非作動状態から作動状態にしてしまうおそれがある。
【0011】
上記問題点に鑑み、車両の走行・非走行状態を検知する車速センサを備え、この車速センサの検知信号を電源制御部62に入力し、例えば車両の走行中などに電源制御部62が安定して動作するように、IGリレー65が作動状態から非作動状態になることを防止、制御するエンジン制御装置61が提案されている。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−48591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のエンジン制御装置61においては、電源制御部62による1つの制御信号に加え車速センサの検知信号でリレー64〜66の通電・非通電状態が切換えられているため構成が複雑になるだけでなく、電磁波ノイズなどによる車両走行中におけるリレーの非作動は防ぐことができても、車両停車中におけるリレーの作動については、開示されていない別の手段、例えばマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記載する)のプログラムが正常に作動していることを監視するためのウォッチドッグタイマ装置などの監視手段を設ける必要があるという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、車速センサなどによる車速検知手段や監視手段を用いることなく、車両停止中においては電源供給モードが安定し、かつ、簡単な構成の信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明の信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、少なくとも3つの論理入力を多数決演算する演算部と、この演算部に並列接続され、前記3つの論理入力が所定の入力条件であるか否かを判定する判定部と、所定の論理を設定する設定部と、この設定部からの設定信号と、前記演算部の結果とを切換えて出力する切換え部とを備え、前記切換え部は、前記判定部の判定信号に基づいて、前記演算部からの演算信号と前記設定部からの設定信号との何れを選択するかを決定して前記通電回路の通電・非通電状態を切換えるようにして信号切換え回路を構成したものである。
【0017】
係る構成により、少なくとも3つの論理入力を多数決演算してその結果を出力することによって、3つの論理入力の1つの誤りが生じても多数決計算されて正しい出力が得られるとともに、所定の条件を満たす多数決入力条件の場合のみ、多数決演算結果を選択できるので、現在の動作状態が変わることのない簡単な構成の信号切換え回路を得ることができるという作用を有する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、設定部の設定信号は通電回路の通電・非通電状態がフィードバックされたものであり、前記切換え部は、前記判定部の判定信号に基づいて、前記演算部からの演算信号と前記フィードバック信号との何れを選択するかを決定して前記通電回路の通電・非通電状態を切換えるようにして信号切換え回路を構成したものである。
【0019】
係る構成により、少なくとも3つの論理入力を多数決演算してその結果を出力することによって、3つの論理入力の1つの誤りが生じても多数決計算されて正しい出力が得られるとともに、所定の条件を満たす多数決入力条件の場合は、多数決演算結果を選択でき、所定の条件を満たさない多数決入力条件の場合は、今の作動状態を保持できるので、現在の動作状態が変わることのない簡単な構成の信号切換え回路を得ることができるという作用を有する。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、演算部は、3つの論理入力の1つを論理反転させるものであり、演算部へ入力される信号が全て同一論理である場合は、この結果を用いないので、例えば演算部へ入力を与える信号源が単一のマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記載する)で、マイコンがリセット状態になったときなど、3つの論理入力が同一論理になるような結果が生じても現在の動作状態が変わることのない信号切換え回路を得ることができるという作用を有する。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載の発明において、信号切換え回路に3つの論理信号を印加する制御手段と、信号切換え回路からの出力により作動される通電回路とを備えてエンジン制御装置を構成したものであり、制御手段が例えばリセット状態に陥るなどしても、リセット状態の前の通電・非通電状態を継続できるという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、車速検知手段などを必要としない信号切換え回路を用いることにより、簡単な構成のエンジン制御装置を得ることができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、電子式ステアリングロック機構を備えた車両に搭載されるワンプッシュ式エンジン制御装置の例について、図1〜図3を用いて説明する。
【0024】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるエンジン制御装置のブロック図であり、同図において、エンジン制御装置1は、携帯機11と、車両2に配設された車両制御手段としての車両制御装置12とを備えている。
【0025】
この携帯機11は、所有者によって所持され、車両制御装置12と相互通信可能となっている。詳しくは、携帯機11は、車両制御装置12から出力されたリクエスト信号を受信すると、所定のIDコードを含むIDコード信号を自動的に送信する。このIDコード信号は、例えば300MHzの所定周波数の電波として送信される。
【0026】
そして、車両制御装置12は、送受信部13、照合制御部14、電源制御部15、ロック制御部16、エンジン制御部17を備えている。各制御部14〜17は、具体的には図示しないCPU、ROM、RAMからなるマイコンによって構成されている。
【0027】
また、送受信部13は照合制御部14に接続され、照合制御部14は電源制御部15、ロック制御部16及びエンジン制御部17に接続されている。電源制御部15には、ロック制御部16、エンジン制御部17及びモーメンタリ式の押し釦スイッチによって構成された操作スイッチ18が接続されている。また、照合制御部14、ロック制御部16及びエンジン制御部17は、図示しない通信ラインによって接続されている。
【0028】
前記送受信部13は、照合制御部14から間欠的に出力されたリクエスト信号を、例えば125kHzの所定周波数の電波に変調し、その電波を車両室内に出力する。また、送受信部13は、携帯機11から送信されたIDコード信号を受信すると、そのIDコード信号をパルス信号に復調して照合制御部14に対して出力する。
【0029】
また、照合制御部14は、送受信部13からIDコード信号が入力されると、IDコード信号に含まれるIDコードと、予め自らに設定されたIDコードとの照合を行う。その結果、それらIDコード同士が一致したときには、照合制御部14はロック制御部16に対してロック解除要求信号を出力する。そして、照合制御部14は、ロック制御部16からロック解除完了信号が入力されると、電源制御部15及びエンジン制御部17に対して始動許可信号を出力する。
【0030】
これに対し、照合制御部14は、各IDコード同士が一致しないときには、電源制御部15及びエンジン制御部17に対して始動禁止信号を出力する。また、照合制御部14は、エンジンが作動中であることを示すエンジン作動信号が電源制御部15から入力されると、送受信部13に対するリクエスト信号の出力を停止する。
【0031】
また、エンジン制御部17は、照合制御部14から始動許可信号が入力されるとともに、電源制御部15から始動信号が入力されると、燃料噴射制御や点火制御などを行う。そして、エンジン制御部17は、イグニッションパルスやオルタネータ出力などに基づいてエンジンの作動状態を検出し、エンジンが作動していると判断したときに電源制御部15に対してエンジン作動中の信号を出力する。
【0032】
また、電源制御部15には、アクセサリ(ACC)リレー21、イグニッション(IG)リレー22及びスタータ(ST)リレー23におけるコイル部L1〜L3の一端が、それぞれ通電回路25〜27を介して接続されている。また、各リレー21〜23のコイル部L1〜L3の他端は接地されている。
【0033】
一方、各リレー21〜23の接点CP1〜CP3の一端は、バッテリの陽極(+B)に接続されている。これに対し、接点CP1の他端はアクセサリ系の各種電気部品の電源端子に接続され、接点CP2の他端はエンジン制御部17およびエンジン作動中に必要な車両内電子機器の電源端子に接続されている。また、CP3の他端は図示しないスタータモータに接続されている。
【0034】
そして、STリレー23が作動すると、スタータモータが作動する。したがって、各リレー21〜23は、車両における各種電気部品への給電可否を切換える切換手段として機能する。
【0035】
各通電回路25〜27は、FETなどのスイッチング素子から構成され、電源制御部15から作動信号が入力されるとON状態となって、対応するリレー21〜23のコイル部L1〜L3への給電を行う。つまり、各通電回路25〜27は、電源制御部15からの作動信号に基づいて各リレー21〜23を作動させる。
【0036】
電源制御部15は、照合制御部14から始動許可信号が入力されると、エンジン始動許可状態となる。そして、このエンジン始動許可状態において操作スイッチ18が押圧操作されて押圧操作信号が入力されると、電源制御部15はエンジンの制御を行う。具体的には、電源制御部15は、IGリレー22及びSTリレー23と対応する通電回路26,27に対して作動信号を出力する。
【0037】
このため、該リレー22,23が作動して接点CP2,CP3がON状態となり、エンジン制御部17及びスタータモータへの給電が行われる。また、操作スイッチ18から押圧操作信号が入力されたことに伴い、電源制御部15はエンジン制御部17に対して始動信号を出力する。
【0038】
そして、電源制御部15は、エンジン制御部17からエンジン作動中の信号が入力されるとエンジンの始動が完了したと判断して、STリレー23と対応する通電回路27に対する作動信号の出力を停止する。また、電源制御部15は、ACCリレー21と対応する通電回路25に対して作動信号を出力する。このため、エンジンの始動完了後には、スタータモータの作動が停止される。
【0039】
これに対し、電源制御部15は、照合制御部14から始動許可信号が入力されていないときにはエンジン始動禁止状態となる。そして、この状態において前記押圧操作信号が入力されても、電源制御部15は各通電回路26,27に対する作動信号の出力、及びエンジン制御部17に対する始動信号の出力は行わない。つまり、電源制御部15は、エンジン始動禁止状態においては操作スイッチ18の押圧操作に基づく処理を行わないようになっている。
【0040】
また、エンジンの作動中において車両2が非走行状態であることなどの停止許可条件を満たした状態で該押圧操作信号が入力された場合、電源制御部15はエンジンの停止制御を行う。具体的には、電源制御部15は、各通電回路25〜27に対する作動信号の出力を停止し、対応する各リレー21〜23を非作動状態に切換え、各種電気部品への給電を停止させる。よって、エンジン制御部17への給電も停止するためエンジンが停止する。
【0041】
ところで、通電回路25〜27のうち、車両2の走行維持に必要なIGリレー22に接続された通電回路26には、作動・非作動状態を継続する継続手段としての信号切換え回路40が接続されている。以下、信号切換え回路40について説明する。
【0042】
図2は本発明の一実施の形態による信号切換え回路のブロック図、図3は信号切換え回路の動作説明図であり、同図において、電源制御部15は、操作スイッチ18の押圧操作で押圧操作信号(本実施形態ではHレベルの信号)が入力されると、信号切換え回路40に対し、予め3つの論理入力を印加するようにプログラムされている。
【0043】
そして、信号切換え回路40は、3つの論理入力の内1つを反転部45で反転させこれら3入力を多数決演算する演算部41と、演算部41に並列接続され、3つの論理入力が予め設定された所定の入力条件であるか否かを判定する判定部42と、主にスイッチング素子により形成された通電回路26の通電・非通電状態がフィードバックされて、設定部43の設定信号となり、この設定信号が入力される切換え部44とから構成されている。
【0044】
ここで、3つの論理入力が所定の入力条件とは、通電回路26の作動状態を継続する入力条件ONと通電回路26の非作動状態を継続する入力条件OFFとがある。
【0045】
以上の構成において、電源制御部15から3つの論理入力が印加される信号切換え回路40は、切換え部44が判定部42の3つの論理入力の判定結果である判定信号Gに基づいて、演算部41からの演算信号Dと通電回路26からのフィードバック信号Jとの何れを選択するかを決定して、その出力Qにより通電回路26の通電・非通電状態を切換えるように動作する。以下、その動作について説明する。
【0046】
まず、3つの論理入力をIN1,IN2,IN3とする。そして、電源制御部15が正常に作動している、通電回路26の作動状態における入力条件ONの場合の信号切換え回路40の動作について説明する。
【0047】
電源制御部15が正常に作動している入力条件ONは、IN1が「H」、IN2が「L」、IN3が「H」の各レベルで形成されている。以下、理解を容易にするために、「H」を1、「L」を0と記載する。そして、この状態を入力条件「1,0,1」と呼ぶ。括弧の中は、IN1,IN2,IN3の順である。
【0048】
この入力条件「1,0,1」の場合、図3に示すように演算部41は、信号AがIN1とIN2反転の論理積で1、信号BがIN2反転とIN3の論理積で1、および信号CがIN1とIN3の論理積でやはり1となる。したがって、演算部41は、演算信号Dが各A,B,Cの論理和であるから1となる。
【0049】
また、判定部42は、信号Eが3つの論理積で0、信号Fが3つの論理和の反転で0となる。したがって、判定信号Gは各E,Fの論理和が反転されて1となる。
【0050】
したがって、入力条件「1,0,1」の場合、判定信号Gは1となって切換え部44は演算部41の演算信号Dを選択する。つまり、切換え部44の出力Qは1となる。この結果、通電回路26のFETが導通しIGリレー22のコイルに電流が流れIG接点はONする。このとき、切換え部44には、設定部43からのフィードバック信号J、信号レベルとしては1が入力されているが、切換え部44は、設定部43からの設定信号Jを選択することはなく無効とされる。
【0051】
また、電源制御部15が正常な作動状態において、何らかの要因で不正常な作動状態になった場合の信号切換え回路40の動作について説明する。通電回路26のFETが作動状態において、例えばIN1が端子オープンするなどして、入力条件が「1,0,1」から「0,0,1」に変化した場合について述べる。
【0052】
この入力条件「0,0,1」の場合、信号切換え回路40は前述と同様に動作して、演算部41は、信号Aが0、信号Bが1および信号Cが0となる。したがって、演算部41は演算信号Dが1となる。また、判定部42は、信号Eが3つの論理積で0、信号Fが3つの論理和の反転で0となる。したがって、判定部42は判定信号Gが1となる。
【0053】
このように、入力条件「0,0,1」においても判定信号Gは1となって、入力条件が「1,0,1」である場合と同様に、切換え部44は演算部41の演算信号Dを選択するので、切換え部44の出力Qは1となる。この結果、FETが導通を継続しIG接点はONを継続する。このとき、切換え部44には、設定部43からのフィードバック信号J、信号レベルとしては1が入力されているが、切換え部44は、設定部43からの設定信号Jを選択することはなく無効とされる。
【0054】
以上の説明で明らかなように、通電回路26が作動状態のIN1のレベルが正常な1から、IN1の端子オープンなどにより0となっても、信号切換え回路40の動作によりIGリレー22はそれまでの作動状態であるONを継続できる。このことは同様に、IN3が入力条件「1,0,0」になっても、IGリレー22は作動状態であるONを継続できる。
【0055】
次に、電源制御部15が正常な作動状態からリセットするなどして、入力条件が「1,0,1」から「1,1,1」になった場合について述べる。
【0056】
この入力条件「1,1,1」の場合、判定部42の判定信号Gは、信号Eが1、信号Fが0であり、その結果0となる。この判定信号Gが0の場合切換え部44は、直前のFETの作動状態であるフィードバック信号J、すなわち設定部43の設定信号Jの1を選択するので、切換え部44の出力Qは1となる。この結果、FETが導通を継続しIG接点はそれまでのONを継続する。
【0057】
次に、電源制御部15が正常に作動している、通電回路26の非作動状態における入力条件OFFの場合の信号切換え回路40の動作について説明する。電源制御部15が正常に作動している入力条件OFFは、IN1が「L」、IN2が「H」、IN3が「L」、つまり入力条件「0,1,0」で形成されている。
【0058】
図3から明らかなように、入力条件「0,1,0」は、これまで述べてきた入力条件ONの「1,0,1」と対の関係にあることから、信号切換え回路40はIGリレー22がOFFの非作動状態を継続するように動作する。したがって、入力条件が「0,1,0」から「0,1,1」や「1,1,0」、および「0,0,0」に変化してもIGリレー22のOFFを継続する。
【0059】
このように本実施の形態によれば、信号切換え回路40は、3つの論理入力IN1,IN2,IN3の入力条件「1,0,1」と「0,1,0」でIGリレー22のONとOFFを切換えるように設定することによって、それ以外の入力条件、つまり電源制御部15がリセットなどにより、入力条件が変化しても、通電回路26のON(作動)状態またはOFF(非作動)状態を継続することができるものであり、車両の走行中/非走行中に関わりなく、電源供給モードを変化させることが無い信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置を得ることができる。
【0060】
また、演算部41は、3つの論理入力の1つを論理反転部45で論理反転させることによって、例えば3つの論理入力が単一のマイコンから供給される場合、マイコンが故障などにより、その入力の1つが異常値となっても多数決結果でリカバリーしようとするとともに、例えばマイコンがリセット状態に陥った場合などは、すべての論理が同一(「0,0,0」または「1,1,1」)となる可能性が高いので、このときは多数決結果そのものを非選択として、現在状態を保持できる。このことは、マイコンを監視する外部のウォッチドッグタイマ装置などを不要にできることを意味する。
【0061】
また、本発明の信号切換え回路40及びこれを用いたエンジン制御装置は、車速検知手段を必要としない信号切換え回路で構成できるので、簡単な構成で、しかも安定した電源供給モードの切換えが実現できる。
【0062】
なお、本実施の形態においては、エンジン制御装置の例で説明したが、これに限ることはなく、設定部43の設定信号Jを常時L(接地)、または常時H(5V)と設定することで、安全側を選択する動作、つまり信号切換え回路40の出力をOFF側にしたりON側にすることが確実に実現できるので、様々な電子制御装置などで応用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明による信号切換え回路及びこれを用いたエンジン制御装置は、電源供給モードが安定し、かつ、簡単な構成にできるという効果を有し、例えば車両などの押圧操作でエンジンの始動・停止を行う制御システムなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態によるエンジン制御装置のブロック図
【図2】同信号切換え回路のブロック図
【図3】同信号切換え回路の動作説明図
【図4】従来のエンジン制御装置のブロック図
【符号の説明】
【0065】
12 車両制御装置
15 電源制御部
22 IGリレー
26 通電回路(非通電回路)
40 信号切換え回路
41 演算部
42 判定部
43 設定部
44 切換え部
45 反転部(演算部)
IN1,IN2,IN3 論理入力
D 演算信号
G 判定信号
J フィードバック信号
Q 出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電回路の通電・非通電状態を切換え可能な信号切換え回路であって、
該信号切換え回路は、少なくとも3つの論理入力を多数決演算する演算部と、
この演算部に並列接続され、前記3つの論理入力が所定の入力条件であるか否かを判定する判定部と、所定の論理を設定する設定部と、この設定部による設定信号と、前記演算部による演算信号とを切換えて出力する切換え部と、を備え、
前記切換え部は、前記判定部の判定信号に基づいて、前記演算信号と前記設定信号との何れを選択するかを決定して前記通電回路の通電・非通電状態を切換える信号切換え回路。
【請求項2】
前記設定部の設定信号は前記通電回路の通電・非通電状態がフィードバックされたものであり、
前記切換え部は、前記判定部の判定信号に基づいて、前記演算信号と前記フィードバック信号との何れを選択するかを決定して前記通電回路の通電・非通電状態を切換える請求項1記載の信号切換え回路。
【請求項3】
前記演算部は、前記3つの論理入力の1つを論理反転させる請求項1記載の信号切換え回路。
【請求項4】
請求項2記載の信号切換え回路と、この信号切換え回路に前記3つの論理信号を印加する制御手段と、前記信号切換え回路からの出力により作動される前記通電回路とを備えて構成されたエンジン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−15409(P2009−15409A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173676(P2007−173676)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】