説明

信号圧縮方法、信号復元方法、それら装置、プログラム並びにそれらプログラムを記録した記録媒体

【課題】一人の送信者から複数の受信者への信号伝送の際、各受信者へ異なるマルチメディア信号を同時に送信し、トラフィックを低減する圧縮及び復元方法を提供する。
【解決手段】本発明の信号圧縮方法は、設定された一定の長さの系列長を有する任意の2つの信号系列(以下、系列)対に対し、系列対に対応する圧縮系列を設定し、系列対及び圧縮系列の関係を示す圧縮系列表を生成する圧縮系列表作成過程と、第1及び第2信号系列各々を系列長の系列に分割し、第1及び第2分割系列の対の分割系列対の集合を抽出する系列分割過程と、分割系列対の経験確率分布を求める分割系列対経験分布導出過程と、分割系列対毎に対応する経験確率分布及び圧縮系列表を参照し、分割系列対に対応する圧縮部分系列を定める圧縮部分系列決定過程と、圧縮部分系列の集合から、圧縮部分系列を統合し、第1系列及び第2系列に対応する圧縮系列を生成する圧縮系列生成過程とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽、静止画像、動画像及びテキストファイルなどのコンテンツを送受信する際の圧縮及び復元を行う信号圧縮方法、信号復元方法、それら装置、プログラム並びにそれらプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音楽・映像を取得あるいは生成するデバイスの普及、また大容量ネットワークの普及などにより、音楽・静止画像・動画像・テキストなどを含む多様なコンテンツのマルチメディア信号がネットワーク上を流通し、それらコンテンツを各個人のレベルにて蓄積する機会が増大している。
しかし、パーソナルコンピュータにおける記憶媒体の大容量化・低価格化、及びネットワークにおける伝送の大容量化に対し、それを上回る速度にて、取り扱う情報量が増大してきている。
【0003】
このため、記憶媒体の容量不足やネットワークトラフィックの過度の増大を避けるための手段の一つとして、信号を再度復元可能な形にて圧縮する技術が必須となってきている。
特に、携帯端末や衛星を介した信号伝送において、通信容量の制限及びネットワーク構成の複雑性などの理由から、上記マルチメディア信号を圧縮して伝送する技術が求められている。
【0004】
上述した携帯端末や衛星を介した信号伝送は、複数の信号提供者(=送信者)と複数の信号被提供者(=受信者)との存在を仮定している。
さらに、圧縮及び復元を行う実用上の観点から、伝送されるマルチメディア信号がどのような確率構造に基づいて発生するかの知識がなくても、それら知識を持っている場合と同等の効率にて圧縮が行えて伝送できることが望ましい。
【0005】
このような信号伝送における信号圧縮技術として、例えば、非特許文献1に記載された圧縮方法が知られている。
【非特許文献1】T. Uyematsu, "An algebraic construction of codes for Slepian-Wolf source networks,"IEEE Transactions on Information Theory, Vol. 47, No. 7, pp. 3082-3088, November 2001.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載の方法においては、複数の送信者と1人の受信者とを想定した信号伝送に対する信号圧縮技術のみについてが記載されている。
そのため、非特許文献1に記載の方法は、一人の送信者が複数の受信者に対して信号伝送を行うことができない。
一方、非特許文献1とは逆に、一人の送信者が複数の受信者に対して、それぞれ異なる情報を同時に行う信号伝送に対応する信号圧縮技術が確立されることが望まれている。特に、衛星を用いた放送型通信はその典型例である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、一人の送信者と複数の受信者とにおける信号伝送において、各受信者に対してそれぞれ異なるマルチメディア信号を同時に送信する場合、ネットワークにおけるトラフィックを低減し、各受信者が受信する信号を効率的に圧縮復元が可能な信号圧縮方法及び信号復元方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の信号圧縮方法は、伝送の対象となる2つの信号系列である第1信号系列及び第2信号系列について、これら信号系列を、2つの信号系列のうちいずれかの信号系列を所有する複数の受信者へ伝送する信号伝送に用いる、上記信号系列を圧縮する信号圧縮方法であり、圧縮信号系列表作成部が、設定された一定の長さの系列長を有する任意の2つの信号系列からなる信号系列対に対し、該信号系列対の経験確率分布を用いて、信号系列対に対応する圧縮信号系列を設定し、信号系列対と圧縮信号系列との対応関係を示す圧縮信号系列表を生成し、該圧縮信号系列表を記憶部に記憶する圧縮信号系列表作成過程と、信号系列分割部が、入力される第1信号系列及び第2信号系列各々を、前記系列長の信号系列に分割し、第1分割信号系列及び第2分割信号系列の対である分割信号系列対の集合を抽出する信号系列分割過程と、分割信号系列対経験分布導出部が、前記分割信号系列対の各々の経験確率分布を求める分割信号系列対経験分布導出過程と、圧縮信号部分系列決定部が、前記分割信号系列対の各々に対応する前記経験確率分布及び前記圧縮信号系列表を参照し、該分割信号系列対に対応する圧縮信号系列である圧縮信号部分系列を定める圧縮信号部分系列決定過程と、圧縮信号系列生成部が、前記圧縮信号部分系列の集合から、それら圧縮信号部分系列を統合することにより、第1信号系列及び第2信号系列に対応する圧縮信号系列を生成する圧縮信号系列生成過程とから構成されることを特徴とする。
【0009】
本発明の信号圧縮方法は、前記圧縮信号系列表作成過程は、信号系列対分類部が前記系列長を有する任意の信号系列の信号系列対に対し、該信号系列対の経験確率分布にて分類する信号系列対分類過程と、経験分布別圧縮信号系列表作成が前記信号系列対分類過程で得られた分類各々に対し、それぞれの分類に含まれる信号系列対各々に対応する圧縮信号系列を定め、信号系列対と圧縮信号系列との対応関係を示す圧縮信号系列表である経験分布別圧縮信号系列表を作成して記憶部に記憶する経験分布別圧縮信号系列表作成過程とから構成されることを特徴とする。
【0010】
本発明の信号圧縮方法は、前記圧縮信号部分系列決定過程は、圧縮信号部分系列先頭決定部が、前記分割信号系列対の各々に対し、それぞれの分割信号系列対の経験確率分布に対応する番号もしくはその番号に対応する系列を、圧縮信号部分系列の先頭部分として設定する圧縮信号部分系列先頭部決定過程と、圧縮信号部分系列後続部決定部が、前記分割信号系列対の各々について、それぞれの分割信号系列対の経験確率分布に対応する経験分布別圧縮信号系列表を参照し、分割信号系列対に対応する圧縮信号系列を導出し、該圧縮信号系列を圧縮信号部分系列の後続部分として設定する圧縮信号部分系列後続部決定過程とから構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明の信号圧縮方法は、信号系列対分類選択部が前記信号系列対分類過程にて得られた分類の集合から、該分類に所属する信号系列対に対応する圧縮信号系列の長さが、あらかじめ設定された閾値である圧縮系列長閾値を下回る分類のみを選択する信号系列対分類選択過程をさらに有し、前記経験分布別圧縮信号系列表作成過程が、前記信号系列対分類選択過程にて選択された前記分類に対して圧縮信号系列表を作成し、前記圧縮信号部分系列後続部決定過程において、圧縮信号部分系列後続部が、圧縮信号系列表が作成されていない分類に対し、任意の系列を圧縮信号部分系列の後続部分として決定することを特徴とする。
【0012】
本発明の信号復元方法は、複数の受信者へ信号系列を伝送する際、予め受信者が有する信号系列と、伝送の対象となる他の信号系列との2つの信号系列からなる圧縮された圧縮信号系列を復元する信号復元方法であり、圧縮信号系列分割部が、前記圧縮信号系列を分割し、復元圧縮信号部分系列を生成する圧縮信号系列分割過程と、圧縮信号系列表同定部が、前記圧縮信号系列分割過程にて得られた復元圧縮信号部分系列の各々に対し、それぞれの圧縮信号部分系列に対応する圧縮信号系列表を、圧縮信号部分系列に対応して圧縮信号系列表が記憶されている記憶部から同定する圧縮信号系列表同定過程と、分割信号系列復元部が、前記復元圧縮信号部分系列各々と、前記予め受信者が有する信号系列を予め設定された系列長にて分割して生成した第2分割信号系列とにより、その復元圧縮信号部分系列に対応して前記圧縮信号系列表同定過程にて得られた圧縮信号系列表である復元圧縮信号系列表から、前記第2分割信号系列の対である分割信号系列を読み出し、復元第1分割信号系列とする分割信号系列復元過程と、復元信号系列生成部が、前記分割信号系列復元にてえられた前記復元第1分割信号系列の集合から、それら復元第1分割信号系列を統合することにより、予め受信者が有する信号系列と対をなす伝送の対象となる他の信号系列を復元する復元信号系列生成過程とから構成されることを特徴とする。
【0013】
本発明の信号復元方法は、前記圧縮信号系列表同定過程において、前記圧縮信号系列表同定部が前記圧縮信号系列分割過程にて得られた復元圧縮信号部分系列各々について、それぞれの圧縮信号部分系列の先頭部分から、その圧縮信号部分系列を生成した経験分布別圧縮信号系列表を同定し、前記先頭部分がそれぞれの分割信号系列対の経験確率分布に対応する番号もしくはその番号に対応する系列であることを特徴とする。
【0014】
本発明の信号圧縮装置は、伝送の対象となる2つの信号系列である第1信号系列及び第2信号系列について、これら信号系列を、2つの信号系列のうちいずれかの信号系列を所有する複数の受信者へ伝送する信号伝送に用いる、上記信号系列を圧縮する信号圧縮装置であり、設定された一定の長さの系列長を有する任意の2つの信号系列からなる信号系列対に対し、該信号系列対の経験確率分布を用いて、信号系列対に対応する圧縮信号系列を設定し、信号系列対と圧縮信号系列との対応関係を示す圧縮信号系列表を生成し、該圧縮信号系列表を記憶部に記憶する圧縮信号系列表作成部と、入力される第1信号系列及び第2信号系列各々を、前記系列長の信号系列に分割し、第1分割信号系列及び第2分割信号系列の対である分割信号系列対の集合を抽出する信号系列分割部と、前記分割信号系列対の各々の経験確率分布を求める分割信号系列対経験分布導出部と、前記分割信号系列対の各々に対応する前記経験確率分布及び前記圧縮信号系列表を参照し、該分割信号系列対に対応する圧縮信号系列である圧縮信号部分系列を定める圧縮信号部分系列決定部と、前記圧縮信号部分系列の集合から、それら圧縮信号部分系列を統合することにより、第1信号系列及び第2信号系列に対応する圧縮信号系列を生成する圧縮信号系列生成部とから構成されることを特徴とする。
【0015】
本発明の信号復元装置は、複数の受信者へ信号系列を伝送する際、予め受信者が有する信号系列と、伝送の対象となる他の信号系列との2つの信号系列からなる圧縮された圧縮信号系列を復元する信号復元装置であり、前記圧縮信号系列を分割し、復元圧縮信号部分系列を生成する圧縮信号系列分割部と、前記圧縮信号系列分割部にて得られた復元圧縮信号部分系列の各々に対し、それぞれの圧縮信号部分系列に対応する圧縮信号系列表を、圧縮信号部分系列に対応して圧縮信号系列表が記憶されている記憶部から同定する圧縮信号系列表同定部と、前記復元圧縮信号部分系列各々と、前記予め受信者が有する信号系列を予め設定された系列長にて分割して生成した第2分割信号系列とにより、その復元圧縮信号部分系列に対応して前記圧縮信号系列表同定部にて得られた圧縮信号系列表である復元圧縮信号系列表から、前記第2分割信号系列の対である分割信号系列を読み出し、復元第1分割信号系列とする分割信号系列復元部と、前記分割信号系列復元にてえられた前記復元第1分割信号系列の集合から、それら復元第1分割信号系列を統合することにより、予め受信者が有する信号系列と対をなす伝送の対象となる他の信号系列を復元する復元信号系列生成部とから構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明のプログラムは、コンピュータに上記いずれかに記載の信号圧縮方法を実行させるためのコンピュータが実行可能なプログラムである。
【0017】
本発明のプログラムは、コンピュータに上記いずれかに記載の信号復元方法を実行させるためのコンピュータが実行可能なプログラムである。
【0018】
本発明のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、上記いずれかに記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1人の送信者と複数の受信者を想定した場合、マルチメディア信号を各受信者の端末に送信する際、2つの信号系列を1つの圧縮信号系列として送信するため、ネットワークにおけるトラフィックを低減することができる。
また、本発明によれば、2つの信号系列対と圧縮系列信号との対応を示す圧縮信号系列表を、圧縮側と復元側とがそれぞれの記憶部に共通に記憶しているため、圧縮信号系列と信号系列対の一方の信号系列とにより、上記圧縮信号系列表から他方の信号系列を抽出することにより、効率的に圧縮及び復元が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明で言及する信号伝送においては、図1に示すように、1人の送信者と複数の受信者を想定する際、送信者が所有する2つの信号のうちいずれか1つの信号を各受信者が所有している場合、各受信者が所有していない信号を受信できるように、送信者が信号を圧縮し、全ての受信者に対して同一の圧縮信号を送信者から伝送する。図1は本発明の実施形態による伝送システムの構成を示す概念図である。
本発明の信号伝送においては、通常、送信者が所有する信号を受信者が正しく受信できない確率が無視できる程度に小さくすることが要求される。
【0021】
このとき、信号の圧縮率をエントロピーを用いて表現したときの理論的限界値、及び圧縮率がその理論的限界値に漸近する信号圧縮方法の存在が、以下の非特許文献2及び3に示されている。
(非特許文献2)A・ D. Wyner, J. K. Wolf, and F・ M. J. Willems“Communicating via a processing broadcast satellite,”IEEE Transactions on Information Theory, Vol・ 48, N0. 6, pp. 1243-1249, June 2002.
(非特許文献3) A. Kimura and T. Uyematsu, "Multiterminal source coding with complementary delivery,”Proc. International Symposium on Information Theory and its Applications(ISITA), pp. 189-194,October 2006.
【0022】
上述したように、本発明においては、伝送すべき信号が従う確率構造についての知識がなくても、圧縮率が上記非特許文献2及び3に示される理論的限界値に漸近する信号圧縮方法を示すものである。
そのため、本発明においては、後に詳述するが、以下のa及びbの2点により、上記の理論的限界値に漸近する信号圧縮を行い信号伝送方法を実現している。
a.与えられた2つの信号系列のみから得られる経験的な確率分布(以下、同時経験分布)を用いることにより、信号系列がどのような確率構造に基づいて生成されたかについての知識がなくても、圧縮率が理論的限界値に漸近する信号圧縮を可能にする。
b.与えられた2つの信号系列を圧縮する際に、その同時経験分布に基づき、信号系列対と圧縮系列信号との対応関係を示す表を作成することにより、受信者が所有している情報を基に、受信者が所有していない情報を復元する操作を容易に行う。
【0023】
<第1の実施形態>
本実施形態における信号系列の伝送を行う伝送システムとしては、図1の概念図に示すように、信号系列を圧縮する信号系列圧縮部1が信号系列を送信する送信側装置に設けられ、圧縮された信号系列(圧縮信号系列)を復元する系列復元部2(あるいは3)が受信側端末に設けられている。
【0024】
ここで、送信側装置100は伝送の対象となる2つの信号系列である第1信号系列X及び第2信号系列Yを入力し、これら信号系列から圧縮信号系列Zを生成し、この圧縮信号系列Zを2つの信号系列X及びYのいずれかの信号系列を所有する(端末の記憶部に記憶されている)複数の受信側端末201、202、…へ伝送する。
一方、受信側端末201、202、…各々は、自身が所有している信号系列を用いて、上記圧縮信号系列から、自身の所有していない信号系列を、それぞれの系列復元部により復元し、その復元した信号系列である復元信号系列X〜nあるいはY〜nを出力する。
【0025】
以下の説明において、簡単化のため、全ての信号系列を文字系列であるとし、信号系列を単に系列と呼ぶ。第1信号系列、第2信号系列及び復元信号系列についても、同様に、それぞれを第1系列、第2系列、復元系列と呼ぶ。
また、第1系列と第2系列とは、特に断らない限りにおいて、同一の長さnを持つと仮定する。
また、第1系列xの各文字列x(i=1,2,…,n)は有限文字集合である。
【0026】
上記信号系列圧縮部1は、第1系列x及び第2系列yを入力し、これら系列を複合して圧縮した圧縮系列を抽出し、その抽出された圧縮系列を出力する。
圧縮系列の抽出方法は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、例えば以下に示す構成により行う。
信号系列圧縮部1は、図2に示すように、圧縮系列表作成部11と、系列分割部12と、系列経験分布導出部13と、圧縮部分系列決定部14と、圧縮系列生成部15とを有している。図2は信号系列圧縮部1の構成例を示すブロック図である。
【0027】
上記圧縮系列表作成部11は、以下に示す図3のフローチャートの流れに従い、ある一定の長さを持つ任意の系列の対について、その系列対の同時経験分布を用い、その系列対に対応する圧縮系列を定め、系列対と圧縮系列との対応関係を示す表である圧縮系列表を作成し、その圧縮系列表を出力する。上記図3は、圧縮系列表作成部11における圧縮系列表の生成処理の動作例を示すフローチャートである。
圧縮系列表作成部11による圧縮系列表の作成方法は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、例えば以下に示す構成によって作成する。
圧縮系列表作成部11は、例えば、系列対分類部111と、経験分布別圧縮系列表作成部112とによって構成される作成方法について、図3のフローの処理に従って述べる。
【0028】
系列対分類部111は、ある一定の長さを持つ任意の系列対を同時経験分布、すなわち、同一の経験確率分布を有する系列対の集合により分類し、その分類の集合を経験分布共有系列対集合として出力する。本実施形態において、系列対分類部111は、系列対を以下のようにして分類する。
系列対分類部111は、分類に用いる系列の長さである系列長mを設定する。ここで設定される系列長mは、ユーザが入力しても良いし、あるいは系列対分類部111が第1系列及び第2系列の文字数にて決定してもよい。この系列長mは、第1系列及び第2系列の系列長nと同一である必要はないが、m≦nを満たす必要がある。
【0029】
次に、系列対分類部111は、系列長mである系列の系列対(x〜m,y〜m)が入力されると、この任意の系列対について、その経験的な確率分布である同時経験分布Qx〜m,y〜m∈Pm(V×W)を、以下の(1)式から求める。
【0030】
【数1】

【0031】
上記(1)式において、N(a,b/x〜m,y〜m)は系列対(x〜m,y〜m)の中で文字対(a,b)が生起する回数である。また、Pm(V×W)は、直積文字集合X×Yからなる系列長mの系列についての同時経験分布全体の集合である。ここで、系列対分類部111は、同時経験分布全体の集合、すなわち系列対(x〜m,y〜m)における文字の同時経験分布の組み合わせの全てを含む集合を生成し、内部の記憶部に記憶する(ステップS1、ステップS2)。例えば、系列長m=4の2元系列の対(x〜m,y〜m)=(0010,0001)について、同時経験分布は、以下の(2)式のように算出される。
【0032】
【数2】

【0033】
そして、系列対分類部111は、内部に記憶した同時経験分布各々について、その同時経験分布Qを有する系列長mの系列対の集合Tを求める。Tは以下の(3)式によって表現される。この同一のQを有する系列長mの系列対の分類した集合を、経験分布共有系列対集合として、順次、経験分布別圧縮系列表作成部112に対して出力する(ステップS3)。
【0034】
【数3】

【0035】
たとえば、上述した系列長m=4の場合における(2)式に示す同時経験分布Qに対して、その経験分布共有系列対集合は、以下の(4)式に示すように文字対(x,y)からなる系列の組の集合であり、この例では(0,0)の組が2回、(1,0)及び(0,1)の組がそれぞれ1回出現する。
【0036】
【数4】

【0037】
そして、経験分布別圧縮系列表作成部112は、以下のステップS4以降の処理において、上記系列対分類部111から出力される経験分布共有系列対集合が入力されると、各経験分布共有系列対集合に含まれる系列対各々に対して圧縮系列を対応させ、それぞれの分類について系列対と圧縮系列との対応関係を示す圧縮系列表である経験分布別圧縮系列表を作成し、この分類毎の経験分布別圧縮系列表を圧縮系列表集合として出力する。ここで、経験分布別圧縮系列表作成部112は、図示しない記憶部に、生成した上記経験分布別圧縮系列表の圧縮系列表集合を記憶させる。
【0038】
ここで、経験分布別圧縮系列表作成部112は、分類毎の経験分布別圧縮系列表を、以下のようにして作成する。この作成の過程を、経験分布別圧縮系列行の概念図である図4を用いて説明する。
経験分布別圧縮系列表作成部112は、同時経験分布Q各々から、その同時経験分布Qに対応する経験分布共有系列対集合Tを構成する系列x〜m及びy〜mの集合、すなわち以下の(5)式に示す系列集合TQ;X、及び(6)式に示す系列集合TQ;Yをそれぞれ抽出する。
【0039】
【数5】

【0040】
【数6】

【0041】
上述の(2)式にて示した同時経験分布の例において、上記系列集合TQ;X、及び系列集合TQ;Yを各々は、ぞれぞれ以下の(7)、(8)式に示す集合となる。
【0042】
【数7】

【0043】
【数8】

【0044】
次に、経験分布別圧縮系列表作成部112は、図4(a)に示すように、抽出した系列対における系列x〜mの集合である系列集合TQ;Xを行の要素とし、系列y〜mの集合である系列集合TQ;Yを列の要素として表を生成し、内部の記憶部に記憶する(ステップS4)。
【0045】
また、経験分布別圧縮系列表作成部112は、図4(b)に示すように、該当の同時経験分布を有する系列対に対してに対応する枠(列及び行の交点の座標にある枠)を、それぞれの経験分布共有系列対集合に含まれる同時経験分布と一致するものを抽出し、抽出した枠に対してマークを付与、例えば丸印を書き込む。
すなわち、経験分布別圧縮系列表作成部112は、実際にTの要素となっている系列対(x〜m,y〜m)を抽出する。図4(b)は、系列対に対するこのような印(「○」マーク)の与え方の1例である。
例えば、経験分布別圧縮系列表作成部112は、(1)式にて示した同時経験分布の例において、x1の行を例に取ると、同一の同時経験分布の組み合わせを有する(0001,0010)、(0001,0100)、(0001,1000)に対して印を付加する。
ここで、以下の(9)式が成り立つことから、図4(a)の表の枠に対して全て印が与えられるとは限らない。
【0046】
【数9】

【0047】
そして、経験分布別圧縮系列表作成部112は、(1)式にて示した同時経験分布に対応する経験分布共有系列対集合に対しての処理が終了した後、順次、他の同時経験分布の組み合わせである経験分布共有系列対集合に対応する図4(b)の経験分布別圧縮系列表をそれぞれ生成し、一時的に内部の記憶部に記憶する。
上述したように、経験分布別圧縮系列表作成部112は、系列対分類部111から入力される経験分布共有結合対集合各々に対応する経験分布別圧縮系列表を生成し、内部の記憶部に記憶する(ステップS5)。
【0048】
次に、経験分布別圧縮系列表作成部112は、図4(c)に示すように、上述したように、内部の記憶部に記憶されている経験分布別圧縮系列表を順次読み出し、各経験分布別圧縮系列表毎に印が与えられた枠(抽出された系列対)に対し、圧縮系列対それぞれに対応する識別番号を割り当てる(ステップS6及びS7)。
このとき、経験分布別圧縮系列表作成部112は、後に説明する方法にて、各行及び各列の中において全て相異なる識別番号が割り当てられるようにする。図4(c)は、このような識別番号の割り当て方の1例である。具体的な識別番号の割り当て方法については後述する。
【0049】
経験分布別圧縮系列表作成部112は、上記のようにして作成された|TQ;X|行、|TQ;Y|列の表を、同時経験分布Qについての経験分布別圧縮系列表として出力し、上記記憶部に記憶させる。ここで、個々で用いている|TQ;X |及び|TQ;Y|各々は、それぞれ集合Tに含まれる系列x〜mまたは系列y〜mの数を示すものである。上記経験分布別圧縮系列表は、後に説明する識別番号の割り当て方法により以下の性質を有するよう形成されている。
1.全ての行について、印が与えられている枠(系列対)の数は同一、例えば図4においては3つずつであり、その枠の数は同時経験分布のみに依存している(m(Q)と表す)。
2.全ての列について、印が与えられている枠の数は同一であり、例えば図4においては3つずつであり、その枠の数は同時経験分布のみに依存している(m(Q)と表す)。
3.上記のように各系列対に対する識別番号の割り当てを可能とするには、max(m(Q),m(Q))種類の相異なる識別番号が必要となる。
【0050】
上記第3の性質は、経験分布別圧縮系列表が2部グラフ(グラフの頂点を2つの集合に分類でき、同一分類内の頂点の間に辺が存在しないグラフ)と等価であり、その2部グラフの一方の頂点集合について要素数が|TQ;X |かつ各頂点に連結される辺数がm(Q)、もう一方の頂点集合について要素数が|TQ;Y|かつ各頂点に連結される辺数がm(Q)となることによるものである。
【0051】
上述したことから、経験分布別圧縮系列表作成部112による各経験分布別圧縮系列表への識別番号の割り当ては、上記2部グラフに対する辺彩色と等価である。この辺彩色とは、隣り合った辺同士を異なる色で塗ることをいう。
上述したように、経験分布別圧縮系列表作成部112は、同時経験分布の分類である経験分布共有系列対集合毎に 経験分布別圧縮系列表を生成する。
【0052】
上記2部グラフに対する辺彩色の方法としては、どのような方法を用いても良いが、例えば、以下に示す非特許文献4もしくは非特許文献5に記載の方法を用いることができる。
・A. Schrijver: “Bipartite edge coloring in O(Δm) time,” SIAM Journal on Computing,Vol.28, pp.841-846, :1998.(非特許文献4)
・R. Cole, K. Ost, S. Schirra: “Edge coloring bipartite multigraphs in O(ElogD)time,”Combinatorica. Vol.21, pp.5-12, 2001.(非特許文献5)
【0053】
例えば、本実施形態にてはいずれの辺彩色の方法を用いても良いが、上記非特許文献4における方法について以下に説明する。
ここで、図3(c)における枠に対する識別番号の付与処理と等価な2部グラフを図5に示す。
この図において、頂点は各系列対を形成する系列x〜m及びy〜mに対応しており、2部グラフにおける行(系列x〜mに対応)におけるグラフと列(系列y〜mに対応)におけるグラフとにおいて、系列x〜m及びy〜mのそれぞれ系列対を形成している各頂点(すなわち、2部グラフそれぞれの系列)を結ぶ辺(図5における実線A1〜A4、破線B1〜B4、破線C1〜C4)が、この系列対の識別番号(A1〜A4:識別番号「1」,B1〜B4:識別番号「2」,C1〜C4:識別番号「3」)に対応している。
【0054】
1.2部グラフGの各頂点の次数(当該頂点に連結する辺の数)を揃える。このように、2部グラフの各頂点の次数が全て同一であるときに、この2部グラフを正則2部グラフと呼ぶ。ここで、頂点の次数は、以下のようにして揃える。
A.グラフGのコピーGを生成する。
B.グラフGの次数の最大値をkとした場合、グラフGの各頂点と、コピーされたグラフGとにおける対応する頂点との間、当該頂点の次数がkとなるように適切な本数の辺を作成する。
【0055】
2.上記の手順で生成された正則2部グラフG’について、以下の方法により、各辺に対する辺彩色を行う。
A.グラフG'の次数が偶数であるとき
a.グラフG’のオイラー回路を検出する。
ここで、オイラー回路とは、重複する辺を持たないようにある頂点から、他の頂点を辿りある頂点に戻る経路のうち、グラフの全ての辺を含む経路を指している。このオイラー回路検出問題は、いわゆる「一筆書き」問題としてよく知られている。
【0056】
上記オイラー回路を作成するアルゴリズムとしては、例えば、以下に示すFleuryのアルゴリズムがよく知られている。
すなわち、
i.出発する頂点を任意に選ぶ。
ii.他に選択肢がない場合を除き、取り除くことでグラフが不連結になるような辺を避け、それ以外の辺を辿る。(他に選択肢がない場合には、不連結になっても良い。)
iii.辿った辺をグラフから除去し、この辺の除去により、辺が1つも連結していない頂点が生じる場合、その頂点もグラフから除去する。(手順2.A.a.iにおいてグラフが不連結になっても、この手順により不連結状態は解消されることになる。)
iv.グラフが空になるまで、上記2.A.a.iから2.A.a.iiiの手順を繰り返す。
【0057】
b.グラフG’の各頂点について、上記の手順で発見したオイラー回路を辿ったときに、当該頂点に到達する辺のみを取り出し、部分グラフG1を生成する。
また、当該頂点から出発する辺のみを取り出し、別途、部分グラフG2を生成する。オイラー回路の性質から、部分グラフG1及びG2は、いずれも正則2部グラフであり、その次数はGの半分である。
c.部分グラフG1及びG2について、再帰的に上記2の方法により辺彩色を行う。
【0058】
B.グラフG'の次数が奇数であるとき(図5の例に該当(k=3))
a.グラフG’の完全マッチングMを求める。このマッチングとは、グラフの辺の部分集合のうち、属する辺の両端の頂点が全て異なるものを指し、かつ完全マッチングとは、グラフの全ての頂点を辺の両端として含むマッチングを指すこととする。
以下に、この完全マッチングを求める方法を示す。
i.辺eに対応する重み係数ω(e)を定義し、この重み係数の初期状態として、グラフの全ての辺について、ω(e)=1とする。
また、グラフの辺のある部分集合Fについて、その部分集合Fに対応する重み係数ω(F)を、ω(F)=Σe∈Fω(e)によって定義する。
さらに、グラフの辺の部分集合Fについて、Uを以下の(10)に示すように定義する。
【0059】
【数10】

【0060】
ii.重みが0ではない辺のみから構成される閉路を、グラフから任意に検出し、この閉路を2つのマッチングMとNとに分割する。ただし、ω(M)≧ω(N)とする。
対象とするグラフは2部グラフであることから、検出される上記閉路は全て偶数本の辺から構成される。
したがって、当該の2つのマッチングは、閉路を辿りながら交互に辺を選択していくことで得られる。
iii.グラフの全ての辺について、以下の(11)式により重みを更新する。
【0061】
【数11】

【0062】
iv.グラフの全ての辺の重みが、グラフの次数もしくは0になるまで、2.B.a.i〜2.B.a.iiiの手順を繰り返す。
b.上記の手順で得られた完全マッチングMの各辺に同一の色を与え、グラフG’から取り除く。マッチングを取り除いたグラフについて、再帰的に上記2の方法で辺彩色を行う。
すなわち、図5に示すように、辺A1〜A4,B1〜B4,C1〜C4各々の両端の頂点が全て異なるものを指し(例えば、row(0001)は同様の頂点column(0001)と共有する辺を有さず、頂点column(0010)、(0100)、(1000)と辺を共有している)、かつ完全マッチングとは、グラフの全ての頂点を辺の両端として含むマッチングを指している。
【0063】
上述のようにして、経験分布別圧縮系列表の各枠(各系列対)に割り当てられた識別番号を、c=c(Q)桁の|Z|進表現することにより、各枠に対応する系列対(x〜m,y〜m)に割り当てられる圧縮系列z〜c2が得られる。ここで、Zは圧縮系列を構成する文字の集合であり、c(Q)は以下の(12)式により経験分布別圧縮系列表作成部112が求め、|Z|は上記文字の集合Zの文字数である。
上述したステップS1からステップS8の処理により、圧縮系列表作成部11は、経験分布共有系列対集合毎に生成した上記経験分布別圧縮系列表の集合を圧縮系列表として出力し、内部の記憶部に記憶する。
【0064】
【数12】

【0065】
次に、系列分割部12は、受信側端末に対する伝送対象の第1系列及び第2系列を入力し、それら系列各々を、前記圧縮系列表作成部11で定められた系列長の系列に分割することにより、それぞれ第1分割系列及び第2分割系列を抽出し、それら分割系列の対である分割系列対について、その集合を出力する。
本実施形態において、系列分割部12は、第1系列x及び第2系列yを、系列対分類部111により定めた系列長mを用いて、以下の(13)式、(14)式及び(15)式を用いて分割する。
【0066】
【数13】

【0067】
【数14】

【0068】
【数15】

【0069】
ここで、x は系列xの第i成分から第j成分までを切り出した部分系列、すなわちx=xi+1…xである。また、floor(t)は実数t以下の最大の整数を求める関数である。上記の分割方法は、すなわち、系列の先頭から順に系列長mの部分系列を切り出し、系列長mの部分系列が切り出せなくなったところで系列の分割処理を終了し、残りの部分系列(系列長がm未満)をそのまま出力する方法である。
上述したように、系列分割部12は、以下に示す(16)式及び(17)式に示すように、分割系列対を抽出し、これら分割系列対の集合を出力する。
【0070】
【数16】

【0071】
【数17】

【0072】
系列経験分布導出部13は、系列分割部12から上記分割系列対の集合を入力し、それら分割系列対の各々から同時経験分布を導出し、その同時経験分布の集合を出力する。
ここで、系列経験分布導出部13は、各分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))についての同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)を、上記系列対分類部111で説明した方法と同様にして求める。
また、系列経験分布導出部13は、l+1番目、すなわち系列長mに満たない余りの分割系列対(x〜m(l+1),y〜m(l+1))については、同時経験分布を抽出しない。
【0073】
圧縮部分系列決定部14は、上記経験分布別圧縮系列表の集合、上記分割系列対の集合及び同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)の集合を記憶部から入力し、それら分割系列対の各々について、対応する同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)及び経験分布別圧縮系列表を用いて、その分割系列対に対応する圧縮系列である圧縮部分系列を定め、その圧縮部分系列の集合を出力する。
ここで、圧縮部分系列の決定方法は特に限定されるものではないが、本実施例において、圧縮部分系列決定部14は、例えば圧縮部分系列先頭部決定部141 と、圧縮部分系列後続部決定部142とによって構成されている。以下、この圧縮部分系列決定部14による圧縮部分系列の生成方法について述べる。
【0074】
圧縮部分系列先頭部決定部141は、上記分割系列対の集合及び同時経験分布Qx〜m(j),〜ym(j)の集合を入力し、それら分割系列対の各々について、その分割信号系列の同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)に対応する識別番号もしくはその識別番号に対応する系列を、圧縮部分系列の先頭部分とし、その圧縮部分系列の先頭部分の集合を出力する。
本実施形態において、圧縮部分系列先頭部決定部141は、圧縮部分系列の先頭部分を、以下のようにして決定する。
ここで、同時経験分布全体の集合Pm(V×W)の各要素に対して異なる識別番号があらかじめ与えられているとする。このとき、集合Pm(V×W)の要素数が以下の(18)式により、(m+1)|V×W|より等しいか小さいため、この識別番号を高々(m+1)|V×W|種類の識別番号を用意すれば良い。
【0075】
【数18】

【0076】
そこで、圧縮部分系列先頭部決定部141は、分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))(j=1,2,…,l)に対して、その同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)に対応する識別番号を割り当てる。
そして、圧縮部分系列先頭部決定部141は、各分割系列対に割り当てられた識別番号を、c1=|V×W|log|Z|(m+1)桁の|Z|進表現(以下の(19)式)に変換し、この|Z|進表現を、分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))に対応する圧縮部分系列の先頭部分として決定する。
【0077】
【数19】

【0078】
圧縮部分系列後続部決定部142は、上記経験分布別圧縮系列表の集合、分割系列対の集合、及び同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)の集合を入力する。このとき、圧縮部分系列後続部決定部142は、経験分布別圧縮系列表の集合を上記記憶部から読み出す。
そして、圧縮部分系列後続部決定部142は、入力された分割系列対の各々について、その分割系列対の同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)に対応する経験分布別圧縮系列表から、その分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))に対応する圧縮系列を導出し、これを圧縮部分系列の後続部として決定し、その圧縮部分系列の後続部の集合を出力する。
【0079】
本実施形態において、圧縮部分系列後続部決定部142は、圧縮部分系列の後続部を、以下のように決定する。
この決定の際、圧縮部分系列後続部決定部142は、分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))(j=1,2,…,l)に対して、その同時経験分布Qx〜m(j),y〜m(j)に対応する経験分布別圧縮系列表を選択する。
次に、圧縮部分系列後続部決定部142は、選択された上記経験分布別圧縮系列表の中から、分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))に対応する枠(図4(c))を検出し、その枠に割り当てられた(20)式に示す圧縮系列を導出(抽出)する。
【0080】
【数20】

【0081】
ここで、c2(j)は、j番目の分割系列対に対応する圧縮系列の長さである。上記経験分布別圧縮系列表作成部112は、c2(j)を、j番目の分割系列対の同時経験分布Qj=Qx〜m(j),y〜m(j)によって決定、すなわち、以下の(21)式にて求める。
【0082】
【数21】

【0083】
そして、経験分布別圧縮系列表作成部112は、この圧縮系列Z〜c2(j)(j;2)を、分割系列対(x〜m(j),y〜m(j))に対応する圧縮部分系列の後続部とする。
上述したように、圧縮部分系列決定部14は、抽出された圧縮部分系列の先頭部z〜c1(j;1)と後続部z〜c2(j;2)とを連結した(22)式に示す系列z〜c(j)を圧縮部分系列とし、これら系列対を分割した分割系列各々に対応する圧縮部分系列の集合を出力する。
ここで、*は系列の連接を表す演算子であり、c(j)=c1+c2(j)はj番目の分割系列対に対応する圧縮部分系列の長さである。
【0084】
【数22】

【0085】
圧縮系列生成部15は、上記圧縮部分系列決定部14から出力される圧縮部分系列の集合を入力し、その集合における圧縮部分系列を統合することにより、第1系列及び第2系列に対応する圧縮系列を生成し、この生成した圧縮系列を出力する。
本実施形態において、第1系列x及び第2系列yに対応する圧縮系列zc*(x,y)は、以下の(23)及び(24)式に示すように決定される。
【0086】
【数23】

【0087】
【数24】

【0088】
上記(23)及び(24)式において、cは第1系列x及び第2系列yに対応する圧縮系列の長さを示している。
この圧縮系列の構成は、最終的に、圧縮系列生成部15において、各圧縮部分系列を連結した後に、最後に上記系列分割部12で系列長m未満の系列長を有する余った部分系列を圧縮せずにそのまま連結したものである。
上述したように、系列圧縮部1は、入力される第1系列x及び第2系列yから、上記圧縮系列zc*(x,y)を生成して出力する。
【0089】
次に、系列圧縮部1が圧縮した圧縮系列を復元する復元部2及び復元部3の説明を行う。この説明において、復元部2及び復元部3における復元処理は、復元の際に用いる系列(第1系列あるいは第2系列)が異なるのみで、同様な復元処理が行われるため、代表として、第2系列ynを有する復元部2を用いて説明する。
復元部2は、系列圧縮部1から出力された圧縮系列zc*(x,y)と、予め端末201の記憶部に記憶されている第2系列とを入力し、これら圧縮系列zc*(x,y)と第2系列yとから第1系列xを復元し、復元された第1系列である復元第1系列を出力する。
【0090】
上記復元部2は、系列の復元方法、すなわち復元処理を行う構成として特に限定されるものではないが、本実施形態において、例えば図6に示すように、圧縮系列分割部21と、圧縮系列表同定部22と、分割系列復元部23と、復元系列生成部24とから構成されている。
圧縮系列分割部21は、上記圧縮系列zc*(x,y)を入力し、圧縮系列を分割することで圧縮部分系列を復元し、復元した圧縮部分系列である復元圧縮部分系列についてその集合を出力する。
【0091】
すなわち、本実施形態において、圧縮系列分割部21は、圧縮部分系列を、以下の処理にして復元する。
説明上において、圧縮系列分割部21が、入力された圧縮系列zc*(x,y)から、すでに以下の(25)式に示すように、j−1番目までの復元圧縮部分系列を復元しているものとする。この(25)式において、c(j)は、j番目の復元圧縮部分系列の系列長である。
【0092】
【数25】

【0093】
ここで、圧縮系列分割部21は、圧縮系列zc*(x,y)におけるσ番目の文字を先頭としてc1個の文字を切り出し、このc1個の文字をj番目の復元圧縮部分系列の先頭部z^c1(j;1)する。ここで、σは以下の(26)式により求められる。また、c1はすでに圧縮処理にて述べたように、第1系列及び第2系列のデータに依存せずに、定数(=|V×W|log|Z|(m+1))である。
【0094】
【数26】

【0095】
上記圧縮系列分割部21は、すでに述べた圧縮部分系列先頭部決定部141と同様の処理により、上述した処理において、圧縮系列zc*(x,y)から切り出した復元圧縮部分系列の先頭部z^c1(j)から、j番目の分割系列対の同時経験分布Qを復元できる。 さらに、圧縮系列分割部21は、上記圧縮部分系列後続部決定部142と同様の処理により、復元された同時経験分布である復元同時経験分布Qから、j番目の圧縮部分系列の後続部の系列長c2(j)を算出(同定)することができる。
【0096】
上述したように、圧縮系列分割部21は、圧縮系列zc*(x,y)のσj+c1番目の文字を先頭とするc2(j)個の文字を切り出すことで、j番目の復元圧縮部分系列の後続部z^c2^(j)(j;2)を生成する。
そして、圧縮系列分割部21は、先頭部z^c1(j)と後続部z^c2^(j)(j;2)とを連結することにより、j番目の復元圧縮部分系列z^c^(j)(j)を生成する。ここで、c(j)=c1+c2(j)である。
上記の操作を、圧縮系列分割部21がj=1,…,lのl回繰り返して実行することにより、l番目までの復元圧縮部分系列z^c^(j)(j)(j=1,…,l)が復元される。
そして、圧縮系列分割部21は、圧縮系列から切り出されなかった残りのc−σ個の文字を、l+1番目の復元圧縮部分系列z^c^(l+1)(l+1)として出力する。ここで、c(l+1)=c−σである。
【0097】
上記圧縮系列表同定部22は、圧縮系列分割部21が出力する上記復元圧縮部分系列の集合を入力し、その復元圧縮部分系列の各々について、その圧縮部分系列を生成した圧縮系列表を、予め記憶部に記憶されている圧縮系列表集合から同定(抽出)し、その同定された圧縮系列表である復元圧縮系列表の集合を出力する。
ここで、圧縮系列表同定部22は、上記圧縮系列表として、すでに系列圧縮部1の経験分布別圧縮系列表作成部112にて生成されたものと同一の経験分布別圧縮系列表の圧縮系列表集合を予め内部の記憶部に記憶している。たとえば、送信側端末100がこの圧縮系列表を作成し、この圧縮系列表が所定の周期にて送信側端末100から受信側端末201,202,…に対して周期的に送信され、系列圧縮部1と各系列復元部との間にて同期が取られている。
この圧縮系列表同定部22は、本実施形態において、復元圧縮系列表を、以下のようにして同定する。
圧縮系列表同定部22は、j番目の復元圧縮部分系列z^c^(j)(j)の先頭c1個の文字、すなわち先頭部z^c1(j)を切り出す。
【0098】
そして、圧縮系列表同定部22は、この先頭部z^c1(j)からj番目の分割系列対の復元同時経験分布必を同定するとともに、この同時経験分布に対応する経験分布別圧縮系列表も同定する。この同定される経験分布別圧縮系列表を、j番目の分割系列対の復元に用いる復元圧縮系列表とする。
圧縮系列表同定部22は、上述した操作を、j=1,…,lについて繰り返すことにより、j個の表からなる集合を得る。ただし、圧縮系列表同定部22は、l+1番目の分割系列対については、圧縮が行われていないため上述した処理を行わない。
【0099】
上記分割系列復元部23は、上記復元部分系列の集合、復元圧縮系列表の集合、及び第2系列を入力し、復元圧縮部分系列の各々、及び各復元圧縮系列に対応して第2系列から得られる第2分割系列の集合を用い、その復元圧縮部分系列に対応して得られた復元圧縮系列表から第1分割系列を復元して、この復元された分割系列である復元第1分割系列の集合を出力する。
分割系列復元部23は、本実施形態において、復元第1分割系列を、以下のようにして求めている。
【0100】
このとき、分割系列復元部23は、系列分割部12と同様の処理により、第2系列yを第2分割系列の集合y〜m(j)(j=1,2,…,l)に分割する。
分割する。
次に、分割系列復元部23は、j番目の復元圧縮部分系列z^c^(j)(j)の後続c2(j)個の文字を抽出してz^c2^(j)(j)として切り出す。
そして、分割系列復元部23は、j番目の復元圧縮系列表を参照して、j番目の復元圧縮系列表における第2分割系列y〜m(ja)に対応する列を検出する。
【0101】
次に、分割系列復元部23は、その検出した列から、復元圧縮部分系列の後続部z^c2^(j)(j)が存在する枠を検出する。
そして、分割系列復元部23は、検出された上記枠の存在する行を検出し、この枠に対応する行の第1分割系列を、j番目の復元第1分割系列x^m(j)とする。
分割系列復元部23は、上述した処理をj=1,…,lについて、すなわちl回繰り返し実行することにより、l番目までの復元第1分割系列x^m(j)(j=1,…,l)が復元される。
また、分割系列復元部23は、l+1番目の復元圧縮部分系列z^c^(l+1)(l+1)に対し、その前半部分z^(l+1)/2(l+1)を切り出し、それをl+1番目の復元第1分割系列x^l+1とする(後半部分はz^(l+2)/2(l+1)は第2分割系列y^l+1に対応)。
【0102】
本第1の実施形態においては、どのような第1系列及び第2系列が入力として与えられても、必ず同一の系列を復元することができる。すなわち、第1系列と第1復元系列とは、また第2系列と第2復元系列とは同一である。このとき、c(l+1)=c−σlが2mod(n,m)と一致する。
後述する第2の実施形態においては、詳細は後述するが、必ずしも同一の系列を復元できるとは限らないが、c−σlと2mod(n,m)とが一致するように構成される。詳細は第2の実施例にて記述する。
【0103】
復元第1系列生成部24は、上記復元第1分割系列の集合を入力し、それら復元第1分割系列を統合することにより、第1系列を復元し、復元した系列である復元第1系列を出力する。
そして、復元第1系列生成部24は、(27)式に示すように上記復元第1分割系列を連結することにより、復元第1系列x^nを復元する。このようにして、第1系列復元部2は、送信側端末100から、自身に対して送信された送信信号として上記復元第1系列x^nを出力する。
【0104】
【数27】

【0105】
次に、第2系列復元部3は、第1の系列復元部2と同様な構成及び処理により、圧縮系列の復元を行うため詳細な説明を省略するが、予め記憶部に第1系列が記憶された受信側端末202に設けられているため、この第1系列と入力される圧縮系列zc*(x,y)とから、第1系列復元部2と同様な構成及び処理により、以下の(28)式に示す第2系列を求める。
【0106】
【数28】

【0107】
このとき、第2系列復元部3における分割系列復元部23は、l+1番目の復元圧縮部分系列z^c^(l+1)(l+1)に対し、以下の(29)式に示す前半部分を切り出し、それをl+1番目の復元第1分割系列y^l+1とする。
【0108】
【数29】

【0109】
<第2の実施形態>
本実施形態における信号系列の伝送を行う伝送システムとしては、第1の実施形態と同様に図1の概念図に示すように、信号系列を圧縮する信号系列圧縮部1が信号系列を送信する送信側装置に設けられ、圧縮された信号系列(圧縮信号系列)を復元する系列復元部2(あるいは3)が受信側端末に設けられている。以下、第1の実施形態と同様の処理を行う処理部については説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0110】
系列対分類選択部113は、すでに述べた系列対分類部111から出力される分類の集合を入力する。
そして、系列対分類選択部113は、入力された分類の集合の中から、分類に所属する系列に対応する圧縮系列の長さが、あらかじめ定められた閾値である圧縮系列長閾値を下回る(未満の)分類のみを選択し、この選択された分類の集合を出力する。
また、第1の実施形態における圧縮部分系列決定部14に示した処理と同様に、ある同時経験分布Qについて、その同時経験分布Qに対応する分類(すなわち、その同時経験分布を有する系列対の集合)Tに含まれる分割系列対から得られる圧縮部分系列の長さが、c1+c2(Q)であることがわかる。
【0111】
ここで、圧縮系列長閾値rを導入し、経験分布別圧縮系列表作成部112は、以下に示す(30)式を満たす同時経験分布Q、及びその同時経験分布Qに対応するTを選択し、選択された分類の集合を出力する。
【0112】
【数30】

【0113】
経験分布別圧縮系列表作成部112は、上記系列対分類選択部113から出力された分類の集合を入力し、入力した各分類に含まれる系列対各々に対応する圧縮系列を定め、系列対と圧縮系列との対応関係を示す圧縮系列表である経験分布別圧縮系列表を作成し、この経験分弁別圧縮系列表の集合を出力する。
ここで、経験分布別圧縮系列表作成部112の処理において、上記系列対分類選択部113にて選択された分類については、すでに述べた第1の実施形態における処理と同様である。しかしながら、本第2の実施形態においては、系列対分類選択部113により選択されなかった分類については、経験分布別圧縮系列表を作成しない。このような処理により、上記系列対分類選択部112で選択されなかった分類については、特定の圧縮系列が割り当てられないこととなる。
【0114】
圧縮部分系列後続部決定部142は、すでに第1の実施形態にて述べた圧縮系列表作成部11から出力された経験分布別圧縮系列表の集合、系列分割部12から出力された分割系列対の集合、及び系列経験分布導出部13から出力された同時経験分布の集合を入力する。
そして、圧縮部分系列後続部決定部142は、入力された分割系列対の各々について、その分割系列対の同時経験分布に対応する経験分布別圧縮系列表から、その分割系列対に対応する圧縮系列を導出(抽出)し、これを圧縮部分系列の後続部として決定し、その圧縮部分系列の後続部の集合を出力する。
【0115】
このとき、圧縮部分系列後続部決定部142は、上記経験分布別圧縮系列表作成部113で経験分布別圧縮系列表が作成されている同時分布を有する分割系列対に対し、第1の実施形態と同様の処理を行う。
一方、圧縮部分系列後続部決定部142は、経験分布別圧縮系列表が作成されていない同時分布を有する分割系列対に対し、系列長c2(j)のランダムな系列を割り当て、これを圧縮部分系列の後続部とする。
【0116】
またさらに別の実施形態として、圧縮部分系列後続部決定部142は、圧縮系列長を全て一定にすることも可能である。
このとき、元々の圧縮系列長が圧縮系列長閾値に満たないとき、圧縮系列に適切な数の文字を埋めることにより、系列長をrとして揃えることができる。経験分布別圧縮系列表が作成されていない同時分布を有する分割系列対に対しては、系列長rのランダムな系列を割り当てる。
この第2及び別の実施形態においては、前記系列対分類選択部112で選択されなかった分類に含まれる分割系列対については、上記第1系列復元部2及び第2系列復元部3において、必ずしも第1系列及び第2系列を復元できるとは限らないことに注意する。
【0117】
なお、図1における信号系列圧縮部1,系列復元部2,系列復元部3それぞれの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、それぞれのシステムにおいて圧縮または復元を行うプロセスとして実行することにより各機能の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0118】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態による信号圧縮装置及び信号復元装置を用いた信号伝送システムの概念図である。
【図2】本発明の第1及び第2の実施形態による信号圧縮装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2における圧縮系列表作成部11の圧縮系列表作成処理の動作を説明する圧縮系列表の概念図である。
【図4】図2における圧縮系列表作成部11の圧縮系列表生成における動作を示すフローチャートである。
【図5】経験分布別圧縮系列表作成部113による各経験分布別圧縮系列表への識別番号の割り当て処理を説明するための2部グラフの概念図である。
【図6】本発明の第1及び第2の実施形態による信号復元装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0120】
1…信号系列圧縮部
2,3…系列復元部
11…圧縮系列表作成部
12…系列分割部
13…系列経験分布導出部
14…圧縮部分系列決定部
15…圧縮系列生成部
21…圧縮系列分割部
22…圧縮系列表同定部
23…分割系列復元部
24…復元系列生成部
100…送信側端末
111…系列対分類部
112…経験分布別圧縮系列表作成部
113…系列対分類選択部
141…圧縮部分系列先頭部決定部
142…圧縮部分系列後続部決定部
201,202…受信側端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送の対象となる2つの信号系列である第1信号系列及び第2信号系列について、これら信号系列を、2つの信号系列のうちいずれかの信号系列を所有する複数の受信者へ伝送する信号伝送に用いる、上記信号系列を圧縮する信号圧縮方法であり、
圧縮信号系列表作成部が、設定された一定の長さの系列長を有する任意の2つの信号系列からなる信号系列対に対し、該信号系列対の経験確率分布を用いて、信号系列対に対応する圧縮信号系列を設定し、信号系列対と圧縮信号系列との対応関係を示す圧縮信号系列表を生成し、該圧縮信号系列表を記憶部に記憶する圧縮信号系列表作成過程と、
信号系列分割部が、入力される第1信号系列及び第2信号系列各々を、前記系列長の信号系列に分割し、第1分割信号系列及び第2分割信号系列の対である分割信号系列対の集合を抽出する信号系列分割過程と、
分割信号系列対経験分布導出部が、前記分割信号系列対の各々の経験確率分布を求める分割信号系列対経験分布導出過程と、
圧縮信号部分系列決定部が、前記分割信号系列対の各々に対応する前記経験確率分布及び前記圧縮信号系列表を参照し、該分割信号系列対に対応する圧縮信号系列である圧縮信号部分系列を定める圧縮信号部分系列決定過程と、
圧縮信号系列生成部が、前記圧縮信号部分系列の集合から、それら圧縮信号部分系列を統合することにより、第1信号系列及び第2信号系列に対応する圧縮信号系列を生成する圧縮信号系列生成過程と
から構成されることを特徴とする信号圧縮方法。
【請求項2】
前記圧縮信号系列表作成過程は、
信号系列対分類部が前記系列長を有する任意の信号系列の信号系列対に対し、該信号系列対の経験確率分布にて分類する信号系列対分類過程と、
経験分布別圧縮信号系列表作成が前記信号系列対分類過程で得られた分類各々に対し、それぞれの分類に含まれる信号系列対各々に対応する圧縮信号系列を定め、信号系列対と圧縮信号系列との対応関係を示す圧縮信号系列表である経験分布別圧縮信号系列表を作成して記憶部に記憶する経験分布別圧縮信号系列表作成過程と
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の信号圧縮方法。
【請求項3】
前記圧縮信号部分系列決定過程は、
圧縮信号部分系列先頭決定部が、前記分割信号系列対の各々に対し、それぞれの分割信号系列対の経験確率分布に対応する番号もしくはその番号に対応する系列を、圧縮信号部分系列の先頭部分として設定する圧縮信号部分系列先頭部決定過程と、
圧縮信号部分系列後続部決定部が、前記分割信号系列対の各々について、それぞれの分割信号系列対の経験確率分布に対応する経験分布別圧縮信号系列表を参照し、分割信号系列対に対応する圧縮信号系列を導出し、該圧縮信号系列を圧縮信号部分系列の後続部分として設定する圧縮信号部分系列後続部決定過程と
から構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の信号圧縮方法。
【請求項4】
信号系列対分類選択部が前記信号系列対分類過程にて得られた分類の集合から、該分類に所属する信号系列対に対応する圧縮信号系列の長さが、あらかじめ設定された閾値である圧縮系列長閾値を下回る分類のみを選択する信号系列対分類選択過程をさらに有し、
前記経験分布別圧縮信号系列表作成過程が、前記信号系列対分類選択過程にて選択された前記分類に対して圧縮信号系列表を作成し、
前記圧縮信号部分系列後続部決定過程において、圧縮信号部分系列後続部が、圧縮信号系列表が作成されていない分類に対し、任意の系列を圧縮信号部分系列の後続部分として決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の信号圧縮方法。
【請求項5】
複数の受信者へ信号系列を伝送する際、予め受信者が有する信号系列と、伝送の対象となる他の信号系列との2つの信号系列からなる圧縮された圧縮信号系列を復元する信号復元方法であり、
圧縮信号系列分割部が、前記圧縮信号系列を分割し、復元圧縮信号部分系列を生成する圧縮信号系列分割過程と、
圧縮信号系列表同定部が、前記圧縮信号系列分割過程にて得られた復元圧縮信号部分系列の各々に対し、それぞれの圧縮信号部分系列に対応する圧縮信号系列表を、圧縮信号部分系列に対応して圧縮信号系列表が記憶されている記憶部から同定する圧縮信号系列表同定過程と、
分割信号系列復元部が、前記復元圧縮信号部分系列各々と、前記予め受信者が有する信号系列を予め設定された系列長にて分割して生成した第2分割信号系列とにより、その復元圧縮信号部分系列に対応して前記圧縮信号系列表同定過程にて得られた圧縮信号系列表である復元圧縮信号系列表から、前記第2分割信号系列の対である分割信号系列を読み出し、復元第1分割信号系列とする分割信号系列復元過程と、
復元信号系列生成部が、前記分割信号系列復元にてえられた前記復元第1分割信号系列の集合から、それら復元第1分割信号系列を統合することにより、予め受信者が有する信号系列と対をなす伝送の対象となる他の信号系列を復元する復元信号系列生成過程と
から構成されることを特徴とする信号復元方法。
【請求項6】
前記圧縮信号系列表同定過程において、前記圧縮信号系列表同定部が前記圧縮信号系列分割過程にて得られた復元圧縮信号部分系列各々について、それぞれの圧縮信号部分系列の先頭部分から、その圧縮信号部分系列を生成した経験分布別圧縮信号系列表を同定し
前記先頭部分がそれぞれの分割信号系列対の経験確率分布に対応する番号もしくはその番号に対応する系列であることを特徴とする請求項5に記載の信号復元方法。
【請求項7】
伝送の対象となる2つの信号系列である第1信号系列及び第2信号系列について、これら信号系列を、2つの信号系列のうちいずれかの信号系列を所有する複数の受信者へ伝送する信号伝送に用いる、上記信号系列を圧縮する信号圧縮装置であり、
設定された一定の長さの系列長を有する任意の2つの信号系列からなる信号系列対に対し、該信号系列対の経験確率分布を用いて、信号系列対に対応する圧縮信号系列を設定し、信号系列対と圧縮信号系列との対応関係を示す圧縮信号系列表を生成し、該圧縮信号系列表を記憶部に記憶する圧縮信号系列表作成部と、
入力される第1信号系列及び第2信号系列各々を、前記系列長の信号系列に分割し、第1分割信号系列及び第2分割信号系列の対である分割信号系列対の集合を抽出する信号系列分割部と、
前記分割信号系列対の各々の経験確率分布を求める分割信号系列対経験分布導出部と、
前記分割信号系列対の各々に対応する前記経験確率分布及び前記圧縮信号系列表を参照し、該分割信号系列対に対応する圧縮信号系列である圧縮信号部分系列を定める圧縮信号部分系列決定部と、
前記圧縮信号部分系列の集合から、それら圧縮信号部分系列を統合することにより、第1信号系列及び第2信号系列に対応する圧縮信号系列を生成する圧縮信号系列生成部と
から構成されることを特徴とする信号圧縮装置。
【請求項8】
複数の受信者へ信号系列を伝送する際、予め受信者が有する信号系列と、伝送の対象となる他の信号系列との2つの信号系列からなる圧縮された圧縮信号系列を復元する信号復元装置であり、
前記圧縮信号系列を分割し、復元圧縮信号部分系列を生成する圧縮信号系列分割部と、
前記圧縮信号系列分割部にて得られた復元圧縮信号部分系列の各々に対し、それぞれの圧縮信号部分系列に対応する圧縮信号系列表を、圧縮信号部分系列に対応して圧縮信号系列表が記憶されている記憶部から同定する圧縮信号系列表同定部と、
前記復元圧縮信号部分系列各々と、前記予め受信者が有する信号系列を予め設定された系列長にて分割して生成した第2分割信号系列とにより、その復元圧縮信号部分系列に対応して前記圧縮信号系列表同定部にて得られた圧縮信号系列表である復元圧縮信号系列表から、前記第2分割信号系列の対である分割信号系列を読み出し、復元第1分割信号系列とする分割信号系列復元部と、
前記分割信号系列復元にてえられた前記復元第1分割信号系列の集合から、それら復元第1分割信号系列を統合することにより、予め受信者が有する信号系列と対をなす伝送の対象となる他の信号系列を復元する復元信号系列生成部と
から構成されることを特徴とする信号復元装置。
【請求項9】
コンピュータに請求項1〜請求項4のいずれかに記載の信号圧縮方法を実行させるためのコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項10】
コンピュータに請求項5または請求項6に記載の信号復元方法を実行させるためのコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−244648(P2008−244648A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79838(P2007−79838)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年11月28日 第29回情報理論とその応用シンポジウム実行委員会発行の「第29回情報理論とその応用シンポジウム予稿集」に発表
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】