信号用電気接続端子装置及び当該装置の製造方法
【課題】所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備える信号用電気接続端子装置及び当該装置の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持した信号用電気接続端子装置であって、電気接続端子が、20%IACS以上の導電率と700MPa以上の引張強度とを有する銅合金部材であって、塑性加工により所定の形状に加工される芯材と、芯材の全面を覆い、電気接続端子を構成する導電金属部品の板厚の10%以上を占めるニッケル又はニッケル合金からなるニッケル系補強層と、ニッケル系補強層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金を被覆した金被覆層と、を備える。
【解決手段】複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持した信号用電気接続端子装置であって、電気接続端子が、20%IACS以上の導電率と700MPa以上の引張強度とを有する銅合金部材であって、塑性加工により所定の形状に加工される芯材と、芯材の全面を覆い、電気接続端子を構成する導電金属部品の板厚の10%以上を占めるニッケル又はニッケル合金からなるニッケル系補強層と、ニッケル系補強層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金を被覆した金被覆層と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を伝達する際に用いる信号用電気接続端子装置(コネクタ)及び当該装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の信号用電気接続端子装置(コネクタ)として、例えば、接触部として使用される一端部と、端子部として使用される他端部とを備えて、バネ性を持った複数の電気接続端子を絶縁性樹脂のハウジングに並設したものが、特許文献1に開示されている。
【0003】
電気接続端子を備える信号用電気接続端子装置では、電気接続端子が所定の導電性や良好な曲げ加工性や高い寸法精度を備えていることに加えて、高い接触圧が確保されていることが重要である。従来から、電気接続端子用として、黄銅やリン青銅をはじめとする多くの銅合金及びその加工方法が研究・開発されている。
【0004】
電気接続端子の曲げ加工性や寸法精度を高めるには、延性を高める必要があるものの、耐力(弾性限)を犠牲にする必要がある。また、接触圧を高めるには耐力(弾性限)を高める必要があるものの、延性を犠牲にする必要がある。それと同時に、ヤング率を高めることも有効であるが、銅合金の構成成分の影響が大きく、ヤング率の上昇には限界がある。このため、従来の電気接続端子では、高い曲げ加工性及び高い接触圧を確保するため、延性、耐力(弾性限)の双方をある程度犠牲にして、延性とヤング率、耐力(弾性限)のバランスが取れたところで成形することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−111872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気接続端子では、複雑な加工工程を経て素材の組織を制御することにより、延性と耐力(弾性限)とのバランス性を確保することが行われてきたために、素材が高価になっている。また、耐力(弾性限)を高めるために、十分な延性を有することを犠牲にすると、形状面での制約が大きくなってしまう。さらに、成形工程において鍛造が行われる場合は、ヤング率を低下させる原因にもなっている。
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、新しい発想に基づいて、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備える信号用電気接続端子装置及び当該装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の信号用電気接続端子装置が提供される。
【0009】
すなわち、本発明に係る信号用電気接続端子装置は、
複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持した信号用電気接続端子装置であって、
前記電気接続端子が、
20%IACS以上の導電率と700MPa以上の引張強度とを有する銅合金部材であって、塑性加工により所定の形状に加工される芯材と、
前記芯材の全面を覆い、前記電気接続端子を構成する導電金属部品の板厚の10%以上を占めるニッケル又はニッケル合金からなるニッケル系補強層と、
前記ニッケル系補強層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金を被覆した金被覆層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の全面に対して、前記芯材の厚みの2%以上である銅メッキ層を形成することによって構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の一面及び/又はその対向面に対して、前記芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成することによって構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、コルソン系銅合金によって構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、Cu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金によって構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記ニッケル系補強層は、純ニッケルメッキからなることが好ましい。
【0015】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記ニッケル系補強層は、ニッケル−タングステン合金メッキからなることが好ましい。
【0016】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記ニッケル系補強層は、ニッケル−リン合金メッキからなることが好ましい。
【0017】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、
電気接続端子の板厚の75%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の2%以上の厚みで銅メッキ層を形成する工程と、
前記銅メッキ層の全面を覆うように、該銅メッキ層の形成された曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の少なくとも1面に芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成した芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するコルソン系銅合金あるいはCu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金からなる帯状の銅合金芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、前記所定の導電率及び引張強度が、20%IACS以上の導電率及び700MPa以上の引張強度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
従来の信号用電気接続端子では、バネ用リン青銅やチタン銅が芯材として用いられているが、これらの素材を用いた芯材では、約120GPaのヤング率、約1000MPaの耐力、約13%IACSの導電率が限界である。これに対して、本発明では、芯材の全面に形成されるニッケル系補強層のヤング率が約200GPaであって芯材のヤング率よりも高いために、ニッケル系補強層の厚さ比率を大きくすることで、全体のヤング率がアップし、ヤング率に起因する接触力の向上を図ることができる。また、ニッケル系補強層の厚さ比率を大きくすることに反比例して芯材の厚さ比率が小さくなるために、最小曲げ半径を小さくすることができ、より小型化された電気接続端子を作製することが可能になる。ところで、電気接続端子の断面に占める芯材の比率が下がるために電気接続端子の導電性が低下するものの、芯材が20%IACS以上の導電率を有することにより、電気接続端子としての所定の導電性を備えることができる。したがって、本発明の信号用電気接続端子装置は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えることができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備える電気接続端子装置を容易に作製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の製造方法におけるプレス機で打ち抜き加工を施す前の帯材を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図2】図1に示した帯体に対して打ち抜き加工を施した打ち抜き体を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図3】図2に示した打ち抜き体に対して折り曲げ加工を施す前の状態を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図4】図3に示した打ち抜き体に対して折り曲げ加工を施した曲げ加工体を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図5】図4に示した曲げ加工体の半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分に対して金被覆層を形成した電気接続端子を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図6】図5に示した複数個の電気接続端子をベースで一体化した電気接続端子装置を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図7】図6に示した信号用電気接続端子装置を連続帯部から切り離した単体の信号用電気接続端子装置を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図8】本発明に係る信号用電気接続端子装置の一例であるコネクタのソケットにヘッダを装着する様子を説明する側面図であり、(A)は電気的接続前の状態を示し、(B)は電気的接続状態を示す。
【図9】本発明に係る信号用電気接続端子装置の他の例であるコネクタのソケットにヘッダを装着する様子を説明する側面図であり、(A)は電気的接続前の状態を示し、(B)は電気的接続状態を示す。
【図10】本発明の実施例1に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図11】本発明の実施例2に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図12】本発明の実施例3に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図13】本発明の実施例4に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図14】本発明の実施例5に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図15】本発明の実施例6に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図16】本発明の実施例7に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図17】本発明の実施例8に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図18】本発明の実施例9に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図19】本発明の実施例10に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図20】本発明の実施例11に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図21】比較例1に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図22】比較例2に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図23】比較例3に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図24】比較例4に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図25】比較例5に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図26】比較例6に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態に係る信号用電気接続端子装置10の構成及びその製造方法について、図1乃至図8を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
まず、図8を参照しながら、信号用電気接続端子装置10の構成を説明する。図8に示すように、本発明に係る信号用電気接続端子装置10は、複数個の雌側電気接続端子1を有するソケット10aと、複数個の雄側電気接続端子1を有するヘッダ10bと、を組み合わせて嵌合されるコネクタである。すなわち、信号用電気接続端子装置10(コネクタ)は、ソケット10aの実装される回路基板やプリント配線板と、ヘッダ10bの実装される回路基板やプリント配線板と、を相互に電気的に接続するために使用される。
【0026】
ソケット10a及びヘッダ10bは、導電性を有する電気接続端子1と、該電気接続端子1を保持して電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2と、をそれぞれ備えている。ソケット10a及びヘッダ10bの電気接続端子1における電気接続部16の他端側には、半田実装部15をそれぞれ形成している。各半田実装部15は、半田を介して、対応する各回路基板に実装している。電気接続部16及び半田実装部15は、それぞれ、金メッキからなる金被覆層6によって覆われている。ヘッダ10bの電気接続部16をソケット10aの電気接続部16に挿入・嵌合することにより、ヘッダ10bの電気接続端子1とソケット10aの電気接続端子1との間で、電気的接続を形成することができる。
【0027】
ソケット10a及びヘッダ10bの電気接続端子1のそれぞれは、所定の導電性及び引張強度を持った銅合金部材を含み、塑性加工によって所定形状に加工した芯材5の上に、ニッケル系補強層5cを形成したものである(図10乃至図20に図示)。ソケット10a及びヘッダ10bの基本的構成が共通するので、ソケット10aに関して以下に詳述する。
【0028】
本発明に係る信号用電気接続端子装置10の製造方法について、図1乃至図8を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
まず、銅合金素材の圧延及び熱処理を行って、図1に示すような、所定の導電性及び引張強度を持った帯材7を準備する。ここで、所定の導電性及び引張強度というのは、20%IACS(International Annealed Copper Standard)以上の導電率及び700MPa以上の引張強度のことである。所定の特性を持った銅合金部材というのは、後述するように、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の各表面を銅メッキ層で被覆したもの、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の少なくとも1面に銅クラッド層を形成したもの、コルソン系銅合金によって構成されたもの、及び、Cu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金によって構成されたものである。
【0030】
図1に示した帯材7の一端に対して、プレス機を用いた打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工によって得られた略櫛歯状の打ち抜き体12は、図2に示すように、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する。
【0031】
図3の(A)に示すように、打ち抜き体12における各細帯部9に対して複数の折り曲げ線(帯材7の長手方向に延びる一点鎖線で図示)9aを仮想的に設けて、折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して折り曲げ加工を行う。
【0032】
所定形状に折り曲げ加工された折り曲げ体13は、図4に示すように、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する。各芯材5は、半田実装部15となる比較的平坦な部分3と、電気接続部16となる大きく湾曲した部分4と、を備える。なお、半田実装部15及び電気接続部16は、図6乃至図8に図示されている。各芯材5に対して表面処理を行った後、所定の厚みを持ったニッケル系補強層5cによって各芯材5の全面を被覆する。ここで、所定の厚みというのは、ニッケル系補強層5cの厚みが電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の10%以上であることを意味している。
【0033】
各芯材5において、少なくとも半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4に対して、金メッキによる金被覆層6を形成して電気接続端子1を作製する。作製された電気接続端子1では、図5に示すように、金被覆層6を形成した半田実装部となる部分3が半田実装部15となり、金被覆層6を形成し電気接続部となる部分4が電気接続部16となる。必要とする部分への金被覆層6の形成は、例えば、所定形状に加工された芯材5を電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加して芯材5の全面に金被覆層6を形成した後、芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、当該部分から金被覆層6を除去することで実現することができる。なお、図5の(B)において、金被覆層6が不要であって金被覆層6を除去した部分を6aとして示している。
【0034】
図6において半田実装部15の右側に位置する各電気接続端子1の略U字状に折り曲げられた空間に対して、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2を配設することにより、金被覆層6を形成された複数の電気接続端子1を一体的に保持することができる。複数の電気接続端子1は、例えば、電気絶縁性の合成樹脂をインサート成形したベース2で保持されている。ベース2で一体的に保持された電気接続端子1では、各電気接続端子1が連続帯部8の右側端縁に繋がっているとともに、連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設した形態となっている。各電気接続端子1において、電気接続部16は、ベース2で保持された弾性支持部9dを基点にして弾性変形する。
【0035】
図6に示した各電気接続端子1の左側端部を連続帯部8から切り離すと、図7に示すようなソケット10a(信号用電気接続端子装置10)の単体を取り出すことができる。
【0036】
図1乃至図7に示した電気接続端子1及び信号用電気接続端子装置10は、ソケット10aに関するものであるが、ヘッダ10bについても上記と同様の手順で製造することができる。そして、ソケット10a及びヘッダ10bは、図8に示すように、お互いの電気接続部16が嵌合するように構成されており、当該嵌合状態により、ソケット10aとヘッダ10bとの間での電気的接続を得ることができる。図8において、下向きがソケット10aにヘッダ10bを挿入する方向であり、上向きがソケット10aからヘッダ10bを抜く方向である。
【0037】
本発明においては、700MPa以上の引張強度を有する銅合金部材である帯材7を打ち抜き加工した後に折り曲げ加工するので、高い延性状態で芯材5を加工することができる。したがって、当該芯材5は、クラックを発生させることなく容易に曲げ半径の小さな曲げ加工が可能となるので、形状加工に関して高い自由度を有する。また、芯材5が、20%IACS以上の導電率を有することにより、電気接続端子1としての所定の導電性を提供することができる。そして、芯材5を所定形状に折り曲げ加工した後、高いヤング率を持ったニッケル系補強層5cで被覆するので、電気接続端子1の全体としてのヤング率がアップして、高い接触力を得ることができる。また、ニッケル系補強層5cで覆われた電気接続部16等の所定部分を金被覆層6で被覆しているので、耐食性も良好である。したがって、本実施形態においては、高い接触圧を有し且つ導電性に優れた信号用電気接続端子装置10を簡単に製造することができ、しかも、高い延性状態で加工できるので、高い接触圧を確保しながら電気接続端子1のコンパクト化が図れ、信号用電気接続端子装置10の小型化が可能となる。
【0038】
図1乃至図8を参照しながら説明した信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、当該装置の基本的な構成や本発明の特徴部分の理解を容易にするためには好適であるが、図9に示す他の実施形態に係るソケット10a及びヘッダ10bの方が一般的に使用されている。したがって、前述した実施形態と共通する部分については、同一符号で示して説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0039】
図9に示す他の実施形態では、ソケット10a及びヘッダ10bが、一列だけ(図8では左列側のみの単列構成)の接触部分(電気接続部16)を有するのではなく左右2列の接触部分(電気接続部16)を有する点が、図8に示す実施形態と異なっている。
【0040】
図9に示したソケット10a及びヘッダ10bは、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で一体的に保持された、左側の電気接続部16と右側の電気接続部16とをそれぞれ備えている。すなわち、複数の電気接続端子1の電気接続部16が、左右2列に配設されている。したがって、図9に示した左右2列構成のものは、図8に示した単列構成のものよりも、多くの端子数(電気接続部16)を確保することができる。
【0041】
次に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0043】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した銅合金コア体5aを有する曲げ加工体13を形成する。
【0044】
複数段に折り曲げ加工された銅合金コア体5aの表面を活性化処理したあと電解銅メッキ液(硫酸銅浴)に浸漬しながら電圧を印加する銅メッキを行って、銅合金コア体5aの全面(図10の断面図における、上面と下面と左側面と右側面の4つの面)を銅メッキ層(メッキ厚みが2μm)5bで被覆する。すなわち、電解銅メッキされた銅メッキ層5bの厚みは、芯材5の厚みの約3.1%となっている。ここで、図10に示すように、チタン銅の帯鋼が銅合金コア体5aに対応し、帯鋼を銅メッキ層5bで被覆したものが芯材5に対応する。その結果、23%IACSの導電率と790MPaの引張強度とを有する芯材(銅合金部材であって、厚みが64μm)5が作製される。
【0045】
芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが8μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図10に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0046】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0047】
実施例1の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が15%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では20%IACS以上の導電率の確保が不可能であったチタン銅を銅合金コア体5aとして用いることができ、チタン銅からなる銅合金コア体5aと銅メッキ層5bとの組み合わせからなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【0048】
(実施例2)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが54μm、幅が12mm)の1面(図11では上面)に対して、銅箔のクラッド(圧着)圧延による銅クラッド層(厚みが6μm)5bを接合したものを帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。すなわち、銅箔が1面にクラッドされた銅クラッド層5bの厚みは、芯材5の厚みの10%となっている。ここで、図11に示すように、チタン銅の帯鋼が銅合金コア体5aに対応し、帯鋼に銅クラッド層5bを接合した帯材7が芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0049】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。芯材(銅合金部材であって、厚みが60μm)5は、22%IACSの導電率と810MPaの引張強度とを有する。
【0050】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−タングステンメッキ液(クエン酸系)に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−タングステン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約12.5%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−タングステン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図11に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0051】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0052】
実施例2の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が12%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では20%IACS以上の導電率の確保が不可能であったチタン銅を銅合金コア体5aとして用いることができ、チタン銅からなる銅合金コア体5aと銅箔のクラッドされた銅クラッド層5b(片面)との組み合わせからなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【0053】
(実施例3)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが54μm、幅が12mm)の対向する両面(図12では上面及び下面)に対して、銅箔のクラッド圧延による銅クラッド層(厚みが3μm)5bをそれぞれ接合したものを帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。すなわち、銅箔が両面にクラッドされた銅クラッド層5bの総厚みは、芯材5の厚みの10%となっている。ここで、図12に示すように、チタン銅の帯鋼が銅合金コア体5aに対応し、帯鋼に銅クラッド層5bを接合した帯材7が芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0054】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。芯材(銅合金部材であって、厚みが60μm)5は、22%IACSの導電率と810MPaの引張強度とを有する。
【0055】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケルメッキ液(ワット浴)に浸漬しながら電圧を印加するニッケルメッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約12.5%となっている。ニッケル系補強層5cとして純ニッケルを用いることにより、ニッケル系補強層5cでの組成変動を無くすことができ、ニッケル系補強層5cのヤング率を容易に均質化することができるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図12に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0056】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0057】
実施例3の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が12%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では20%IACS以上の導電率の確保が不可能であったチタン銅を銅合金コア体5aとして用いることができ、チタン銅からなる銅合金コア体5aと銅箔のクラッドされた銅クラッド層5b(両面)との組み合わせからなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【0058】
(実施例4)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−4原子%Zr積層銅合金の帯鋼(厚みが64μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図13に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0059】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、40%IACSの導電率と800MPaの引張強度とを有する。
【0060】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが8μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図13に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0061】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0062】
実施例4の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が25%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Zr系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Zr系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0063】
(実施例5)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−5原子%Zr積層銅合金の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図14に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0064】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、35%IACSの導電率と820MPaの引張強度とを有する。
【0065】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−タングステンメッキ液(クエン酸系)に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−タングステン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約12.5%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−タングステン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図14に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0066】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0067】
実施例5の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が19%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Zr系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Zr系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0068】
(実施例6)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−3原子%Zr積層銅合金の帯鋼(厚みが62μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図15に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0069】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、40%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0070】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが9μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約11.3%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図15に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0071】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0072】
実施例6の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が24%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Zr系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Zr系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0073】
(実施例7)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−10原子%Ag積層銅合金の帯鋼(厚みが64μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図16に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0074】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、60%IACSの導電率と950MPaの引張強度とを有する。
【0075】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが8μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図16に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0076】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0077】
実施例7の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が38%IACSであり、引張強度が1100MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Ag系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Ag系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0078】
(実施例8)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−3.8重量%Ni−0.9重量%Si−0.5重量%Zn−0.3重量%Cr−0.2重量%Sn−0.1重量%Mg)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図17に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0079】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、38%IACSの導電率と780MPaの引張強度とを有する。
【0080】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図17に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0081】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0082】
実施例8の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が21%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0083】
(実施例9)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−3.2重量%Ni−0.7重量%Si−1.0重量%Zn−0.5重量%Sn)の帯鋼(厚みが62μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図18に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0084】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、38%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0085】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが9μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約11.3%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図18に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0086】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0087】
実施例9の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が22%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0088】
(実施例10)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−2.3重量%Ni−0.55重量%Si−0.5重量%Zn−0.15重量%Sn−0.1重量%Mg)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図19に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0089】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、40%IACSの導電率と700MPaの引張強度とを有する。
【0090】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図19に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0091】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0092】
実施例10の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が22%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0093】
(実施例11)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−2.3重量%Ni−0.65重量%Si−0.5重量%Zn−0.15重量%Sn)の帯鋼(厚みが62μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図20に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0094】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、38%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0095】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが9μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約11.3%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図20に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0096】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0097】
実施例11の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が22%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0098】
(比較例1)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが80μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図21に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0099】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と900MPaの引張強度とを有する。
【0100】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケルメッキ液(スルファミン酸ニッケル浴)に浸漬しながら電圧を印加するニッケルメッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが2μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101の厚みの約2.4%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図21に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0101】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0102】
比較例1の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が12%IACSであり、引張強度が940MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0103】
(比較例2)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図22に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0104】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と900MPaの引張強度とを有する。
【0105】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが10μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図22に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0106】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0107】
比較例2の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が8%IACSであり、引張強度が1100MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0108】
(比較例3)
バネ用リン青銅(C5210)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図23に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0109】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と700MPaの引張強度とを有する。
【0110】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが10μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図23に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0111】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0112】
比較例3の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が8%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0113】
(比較例4)
タフピッチ銅の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図24に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0114】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、98%IACSの導電率と280MPaの引張強度とを有する。
【0115】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが10μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図24に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0116】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0117】
比較例4の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が55%IACSであり、引張強度が750MPaであり、電気接続端子101が十分な強度を備えることができないために塑性変形を起こし、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての十分な接触力を得ることができなかった。
【0118】
(比較例5)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが70μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図25に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0119】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と900MPaの引張強度とを有する。
【0120】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが5μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101の厚みの約6.3%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図25に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0121】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0122】
比較例5の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が10%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0123】
(比較例6)
コルソン系銅合金(Cu−2.3重量%Ni−0.65重量%Si−0.5重量%Zn−0.15重量%Sn)の帯鋼(厚みが72μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図26に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0124】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、38%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0125】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが4μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101の厚みの約5%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図26に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0126】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0127】
比較例6の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が30%IACSであり、引張強度が850MPaであり、電気接続端子101が十分な強度を備えることができないために塑性変形を起こし、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての十分な接触力を得ることができなかった。
【0128】
上記の実施例1乃至11及び比較例1乃至6について、電気接続端子及び信号用電気接続端子装置に関する測定結果を表1にまとめて示す。
【0129】
【表1】
【符号の説明】
【0130】
1:電気接続端子
2:ベース
3:半田実装部となる部分
4:電気接続部となる部分
5:芯材
5a:銅合金コア体
5b:銅メッキ層又は銅クラッド層
5c:ニッケル系補強層
6:金被覆層
6a:下地露出部
7:帯材
8:連続帯部
9:細帯部
9a:折り曲げ線
9d:弾性支持部
10:信号用電気接続端子装置(コネクタ)
10a:ソケット
10b:ヘッダ
12:打ち抜き体
13:曲げ加工体
15:半田実装部
16:電気接続部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を伝達する際に用いる信号用電気接続端子装置(コネクタ)及び当該装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の信号用電気接続端子装置(コネクタ)として、例えば、接触部として使用される一端部と、端子部として使用される他端部とを備えて、バネ性を持った複数の電気接続端子を絶縁性樹脂のハウジングに並設したものが、特許文献1に開示されている。
【0003】
電気接続端子を備える信号用電気接続端子装置では、電気接続端子が所定の導電性や良好な曲げ加工性や高い寸法精度を備えていることに加えて、高い接触圧が確保されていることが重要である。従来から、電気接続端子用として、黄銅やリン青銅をはじめとする多くの銅合金及びその加工方法が研究・開発されている。
【0004】
電気接続端子の曲げ加工性や寸法精度を高めるには、延性を高める必要があるものの、耐力(弾性限)を犠牲にする必要がある。また、接触圧を高めるには耐力(弾性限)を高める必要があるものの、延性を犠牲にする必要がある。それと同時に、ヤング率を高めることも有効であるが、銅合金の構成成分の影響が大きく、ヤング率の上昇には限界がある。このため、従来の電気接続端子では、高い曲げ加工性及び高い接触圧を確保するため、延性、耐力(弾性限)の双方をある程度犠牲にして、延性とヤング率、耐力(弾性限)のバランスが取れたところで成形することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−111872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気接続端子では、複雑な加工工程を経て素材の組織を制御することにより、延性と耐力(弾性限)とのバランス性を確保することが行われてきたために、素材が高価になっている。また、耐力(弾性限)を高めるために、十分な延性を有することを犠牲にすると、形状面での制約が大きくなってしまう。さらに、成形工程において鍛造が行われる場合は、ヤング率を低下させる原因にもなっている。
【0007】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、新しい発想に基づいて、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備える信号用電気接続端子装置及び当該装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明によれば、以下の信号用電気接続端子装置が提供される。
【0009】
すなわち、本発明に係る信号用電気接続端子装置は、
複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持した信号用電気接続端子装置であって、
前記電気接続端子が、
20%IACS以上の導電率と700MPa以上の引張強度とを有する銅合金部材であって、塑性加工により所定の形状に加工される芯材と、
前記芯材の全面を覆い、前記電気接続端子を構成する導電金属部品の板厚の10%以上を占めるニッケル又はニッケル合金からなるニッケル系補強層と、
前記ニッケル系補強層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金を被覆した金被覆層と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の全面に対して、前記芯材の厚みの2%以上である銅メッキ層を形成することによって構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の一面及び/又はその対向面に対して、前記芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成することによって構成されていることが好ましい。
【0012】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、コルソン系銅合金によって構成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記芯材は、Cu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金によって構成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記ニッケル系補強層は、純ニッケルメッキからなることが好ましい。
【0015】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記ニッケル系補強層は、ニッケル−タングステン合金メッキからなることが好ましい。
【0016】
本発明の信号用電気接続端子装置では、前記ニッケル系補強層は、ニッケル−リン合金メッキからなることが好ましい。
【0017】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、
電気接続端子の板厚の75%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の2%以上の厚みで銅メッキ層を形成する工程と、
前記銅メッキ層の全面を覆うように、該銅メッキ層の形成された曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の少なくとも1面に芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成した芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するコルソン系銅合金あるいはCu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金からなる帯状の銅合金芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、前記所定の導電率及び引張強度が、20%IACS以上の導電率及び700MPa以上の引張強度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
従来の信号用電気接続端子では、バネ用リン青銅やチタン銅が芯材として用いられているが、これらの素材を用いた芯材では、約120GPaのヤング率、約1000MPaの耐力、約13%IACSの導電率が限界である。これに対して、本発明では、芯材の全面に形成されるニッケル系補強層のヤング率が約200GPaであって芯材のヤング率よりも高いために、ニッケル系補強層の厚さ比率を大きくすることで、全体のヤング率がアップし、ヤング率に起因する接触力の向上を図ることができる。また、ニッケル系補強層の厚さ比率を大きくすることに反比例して芯材の厚さ比率が小さくなるために、最小曲げ半径を小さくすることができ、より小型化された電気接続端子を作製することが可能になる。ところで、電気接続端子の断面に占める芯材の比率が下がるために電気接続端子の導電性が低下するものの、芯材が20%IACS以上の導電率を有することにより、電気接続端子としての所定の導電性を備えることができる。したがって、本発明の信号用電気接続端子装置は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えることができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の信号用電気接続端子装置の製造方法では、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備える電気接続端子装置を容易に作製することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の製造方法におけるプレス機で打ち抜き加工を施す前の帯材を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図2】図1に示した帯体に対して打ち抜き加工を施した打ち抜き体を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図3】図2に示した打ち抜き体に対して折り曲げ加工を施す前の状態を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図4】図3に示した打ち抜き体に対して折り曲げ加工を施した曲げ加工体を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図5】図4に示した曲げ加工体の半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分に対して金被覆層を形成した電気接続端子を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図6】図5に示した複数個の電気接続端子をベースで一体化した電気接続端子装置を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図7】図6に示した信号用電気接続端子装置を連続帯部から切り離した単体の信号用電気接続端子装置を示し、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図8】本発明に係る信号用電気接続端子装置の一例であるコネクタのソケットにヘッダを装着する様子を説明する側面図であり、(A)は電気的接続前の状態を示し、(B)は電気的接続状態を示す。
【図9】本発明に係る信号用電気接続端子装置の他の例であるコネクタのソケットにヘッダを装着する様子を説明する側面図であり、(A)は電気的接続前の状態を示し、(B)は電気的接続状態を示す。
【図10】本発明の実施例1に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図11】本発明の実施例2に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図12】本発明の実施例3に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図13】本発明の実施例4に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図14】本発明の実施例5に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図15】本発明の実施例6に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図16】本発明の実施例7に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図17】本発明の実施例8に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図18】本発明の実施例9に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図19】本発明の実施例10に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図20】本発明の実施例11に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図21】比較例1に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図22】比較例2に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図23】比較例3に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図24】比較例4に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図25】比較例5に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【図26】比較例6に係る電気接続端子の長手方向直交面での模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の一実施形態に係る信号用電気接続端子装置10の構成及びその製造方法について、図1乃至図8を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
まず、図8を参照しながら、信号用電気接続端子装置10の構成を説明する。図8に示すように、本発明に係る信号用電気接続端子装置10は、複数個の雌側電気接続端子1を有するソケット10aと、複数個の雄側電気接続端子1を有するヘッダ10bと、を組み合わせて嵌合されるコネクタである。すなわち、信号用電気接続端子装置10(コネクタ)は、ソケット10aの実装される回路基板やプリント配線板と、ヘッダ10bの実装される回路基板やプリント配線板と、を相互に電気的に接続するために使用される。
【0026】
ソケット10a及びヘッダ10bは、導電性を有する電気接続端子1と、該電気接続端子1を保持して電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2と、をそれぞれ備えている。ソケット10a及びヘッダ10bの電気接続端子1における電気接続部16の他端側には、半田実装部15をそれぞれ形成している。各半田実装部15は、半田を介して、対応する各回路基板に実装している。電気接続部16及び半田実装部15は、それぞれ、金メッキからなる金被覆層6によって覆われている。ヘッダ10bの電気接続部16をソケット10aの電気接続部16に挿入・嵌合することにより、ヘッダ10bの電気接続端子1とソケット10aの電気接続端子1との間で、電気的接続を形成することができる。
【0027】
ソケット10a及びヘッダ10bの電気接続端子1のそれぞれは、所定の導電性及び引張強度を持った銅合金部材を含み、塑性加工によって所定形状に加工した芯材5の上に、ニッケル系補強層5cを形成したものである(図10乃至図20に図示)。ソケット10a及びヘッダ10bの基本的構成が共通するので、ソケット10aに関して以下に詳述する。
【0028】
本発明に係る信号用電気接続端子装置10の製造方法について、図1乃至図8を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
まず、銅合金素材の圧延及び熱処理を行って、図1に示すような、所定の導電性及び引張強度を持った帯材7を準備する。ここで、所定の導電性及び引張強度というのは、20%IACS(International Annealed Copper Standard)以上の導電率及び700MPa以上の引張強度のことである。所定の特性を持った銅合金部材というのは、後述するように、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の各表面を銅メッキ層で被覆したもの、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の少なくとも1面に銅クラッド層を形成したもの、コルソン系銅合金によって構成されたもの、及び、Cu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金によって構成されたものである。
【0030】
図1に示した帯材7の一端に対して、プレス機を用いた打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工によって得られた略櫛歯状の打ち抜き体12は、図2に示すように、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する。
【0031】
図3の(A)に示すように、打ち抜き体12における各細帯部9に対して複数の折り曲げ線(帯材7の長手方向に延びる一点鎖線で図示)9aを仮想的に設けて、折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して折り曲げ加工を行う。
【0032】
所定形状に折り曲げ加工された折り曲げ体13は、図4に示すように、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する。各芯材5は、半田実装部15となる比較的平坦な部分3と、電気接続部16となる大きく湾曲した部分4と、を備える。なお、半田実装部15及び電気接続部16は、図6乃至図8に図示されている。各芯材5に対して表面処理を行った後、所定の厚みを持ったニッケル系補強層5cによって各芯材5の全面を被覆する。ここで、所定の厚みというのは、ニッケル系補強層5cの厚みが電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の10%以上であることを意味している。
【0033】
各芯材5において、少なくとも半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4に対して、金メッキによる金被覆層6を形成して電気接続端子1を作製する。作製された電気接続端子1では、図5に示すように、金被覆層6を形成した半田実装部となる部分3が半田実装部15となり、金被覆層6を形成し電気接続部となる部分4が電気接続部16となる。必要とする部分への金被覆層6の形成は、例えば、所定形状に加工された芯材5を電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加して芯材5の全面に金被覆層6を形成した後、芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、当該部分から金被覆層6を除去することで実現することができる。なお、図5の(B)において、金被覆層6が不要であって金被覆層6を除去した部分を6aとして示している。
【0034】
図6において半田実装部15の右側に位置する各電気接続端子1の略U字状に折り曲げられた空間に対して、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2を配設することにより、金被覆層6を形成された複数の電気接続端子1を一体的に保持することができる。複数の電気接続端子1は、例えば、電気絶縁性の合成樹脂をインサート成形したベース2で保持されている。ベース2で一体的に保持された電気接続端子1では、各電気接続端子1が連続帯部8の右側端縁に繋がっているとともに、連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設した形態となっている。各電気接続端子1において、電気接続部16は、ベース2で保持された弾性支持部9dを基点にして弾性変形する。
【0035】
図6に示した各電気接続端子1の左側端部を連続帯部8から切り離すと、図7に示すようなソケット10a(信号用電気接続端子装置10)の単体を取り出すことができる。
【0036】
図1乃至図7に示した電気接続端子1及び信号用電気接続端子装置10は、ソケット10aに関するものであるが、ヘッダ10bについても上記と同様の手順で製造することができる。そして、ソケット10a及びヘッダ10bは、図8に示すように、お互いの電気接続部16が嵌合するように構成されており、当該嵌合状態により、ソケット10aとヘッダ10bとの間での電気的接続を得ることができる。図8において、下向きがソケット10aにヘッダ10bを挿入する方向であり、上向きがソケット10aからヘッダ10bを抜く方向である。
【0037】
本発明においては、700MPa以上の引張強度を有する銅合金部材である帯材7を打ち抜き加工した後に折り曲げ加工するので、高い延性状態で芯材5を加工することができる。したがって、当該芯材5は、クラックを発生させることなく容易に曲げ半径の小さな曲げ加工が可能となるので、形状加工に関して高い自由度を有する。また、芯材5が、20%IACS以上の導電率を有することにより、電気接続端子1としての所定の導電性を提供することができる。そして、芯材5を所定形状に折り曲げ加工した後、高いヤング率を持ったニッケル系補強層5cで被覆するので、電気接続端子1の全体としてのヤング率がアップして、高い接触力を得ることができる。また、ニッケル系補強層5cで覆われた電気接続部16等の所定部分を金被覆層6で被覆しているので、耐食性も良好である。したがって、本実施形態においては、高い接触圧を有し且つ導電性に優れた信号用電気接続端子装置10を簡単に製造することができ、しかも、高い延性状態で加工できるので、高い接触圧を確保しながら電気接続端子1のコンパクト化が図れ、信号用電気接続端子装置10の小型化が可能となる。
【0038】
図1乃至図8を参照しながら説明した信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、当該装置の基本的な構成や本発明の特徴部分の理解を容易にするためには好適であるが、図9に示す他の実施形態に係るソケット10a及びヘッダ10bの方が一般的に使用されている。したがって、前述した実施形態と共通する部分については、同一符号で示して説明を省略し、前述した実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0039】
図9に示す他の実施形態では、ソケット10a及びヘッダ10bが、一列だけ(図8では左列側のみの単列構成)の接触部分(電気接続部16)を有するのではなく左右2列の接触部分(電気接続部16)を有する点が、図8に示す実施形態と異なっている。
【0040】
図9に示したソケット10a及びヘッダ10bは、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で一体的に保持された、左側の電気接続部16と右側の電気接続部16とをそれぞれ備えている。すなわち、複数の電気接続端子1の電気接続部16が、左右2列に配設されている。したがって、図9に示した左右2列構成のものは、図8に示した単列構成のものよりも、多くの端子数(電気接続部16)を確保することができる。
【0041】
次に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0043】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した銅合金コア体5aを有する曲げ加工体13を形成する。
【0044】
複数段に折り曲げ加工された銅合金コア体5aの表面を活性化処理したあと電解銅メッキ液(硫酸銅浴)に浸漬しながら電圧を印加する銅メッキを行って、銅合金コア体5aの全面(図10の断面図における、上面と下面と左側面と右側面の4つの面)を銅メッキ層(メッキ厚みが2μm)5bで被覆する。すなわち、電解銅メッキされた銅メッキ層5bの厚みは、芯材5の厚みの約3.1%となっている。ここで、図10に示すように、チタン銅の帯鋼が銅合金コア体5aに対応し、帯鋼を銅メッキ層5bで被覆したものが芯材5に対応する。その結果、23%IACSの導電率と790MPaの引張強度とを有する芯材(銅合金部材であって、厚みが64μm)5が作製される。
【0045】
芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが8μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図10に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0046】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0047】
実施例1の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が15%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では20%IACS以上の導電率の確保が不可能であったチタン銅を銅合金コア体5aとして用いることができ、チタン銅からなる銅合金コア体5aと銅メッキ層5bとの組み合わせからなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【0048】
(実施例2)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが54μm、幅が12mm)の1面(図11では上面)に対して、銅箔のクラッド(圧着)圧延による銅クラッド層(厚みが6μm)5bを接合したものを帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。すなわち、銅箔が1面にクラッドされた銅クラッド層5bの厚みは、芯材5の厚みの10%となっている。ここで、図11に示すように、チタン銅の帯鋼が銅合金コア体5aに対応し、帯鋼に銅クラッド層5bを接合した帯材7が芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0049】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。芯材(銅合金部材であって、厚みが60μm)5は、22%IACSの導電率と810MPaの引張強度とを有する。
【0050】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−タングステンメッキ液(クエン酸系)に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−タングステン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約12.5%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−タングステン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図11に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0051】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0052】
実施例2の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が12%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では20%IACS以上の導電率の確保が不可能であったチタン銅を銅合金コア体5aとして用いることができ、チタン銅からなる銅合金コア体5aと銅箔のクラッドされた銅クラッド層5b(片面)との組み合わせからなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【0053】
(実施例3)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが54μm、幅が12mm)の対向する両面(図12では上面及び下面)に対して、銅箔のクラッド圧延による銅クラッド層(厚みが3μm)5bをそれぞれ接合したものを帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。すなわち、銅箔が両面にクラッドされた銅クラッド層5bの総厚みは、芯材5の厚みの10%となっている。ここで、図12に示すように、チタン銅の帯鋼が銅合金コア体5aに対応し、帯鋼に銅クラッド層5bを接合した帯材7が芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0054】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。芯材(銅合金部材であって、厚みが60μm)5は、22%IACSの導電率と810MPaの引張強度とを有する。
【0055】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケルメッキ液(ワット浴)に浸漬しながら電圧を印加するニッケルメッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約12.5%となっている。ニッケル系補強層5cとして純ニッケルを用いることにより、ニッケル系補強層5cでの組成変動を無くすことができ、ニッケル系補強層5cのヤング率を容易に均質化することができるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図12に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0056】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0057】
実施例3の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が12%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では20%IACS以上の導電率の確保が不可能であったチタン銅を銅合金コア体5aとして用いることができ、チタン銅からなる銅合金コア体5aと銅箔のクラッドされた銅クラッド層5b(両面)との組み合わせからなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にするという効果を奏する。
【0058】
(実施例4)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−4原子%Zr積層銅合金の帯鋼(厚みが64μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図13に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0059】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、40%IACSの導電率と800MPaの引張強度とを有する。
【0060】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが8μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図13に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0061】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0062】
実施例4の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が25%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Zr系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Zr系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0063】
(実施例5)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−5原子%Zr積層銅合金の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図14に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0064】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、35%IACSの導電率と820MPaの引張強度とを有する。
【0065】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−タングステンメッキ液(クエン酸系)に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−タングステン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約12.5%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−タングステン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図14に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0066】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0067】
実施例5の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が19%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Zr系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Zr系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0068】
(実施例6)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−3原子%Zr積層銅合金の帯鋼(厚みが62μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図15に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0069】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、40%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0070】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが9μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約11.3%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図15に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0071】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0072】
実施例6の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が24%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Zr系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Zr系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0073】
(実施例7)
急冷鍛造後に強圧延することによって作製されたCu−10原子%Ag積層銅合金の帯鋼(厚みが64μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図16に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0074】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、60%IACSの導電率と950MPaの引張強度とを有する。
【0075】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが8μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図16に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0076】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0077】
実施例7の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が38%IACSであり、引張強度が1100MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったCu−Ag系積層銅合金を芯材5として用いることができ、Cu−Ag系積層銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0078】
(実施例8)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−3.8重量%Ni−0.9重量%Si−0.5重量%Zn−0.3重量%Cr−0.2重量%Sn−0.1重量%Mg)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図17に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0079】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、38%IACSの導電率と780MPaの引張強度とを有する。
【0080】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図17に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0081】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0082】
実施例8の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が21%IACSであり、引張強度が1050MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0083】
(実施例9)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−3.2重量%Ni−0.7重量%Si−1.0重量%Zn−0.5重量%Sn)の帯鋼(厚みが62μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図18に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0084】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、38%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0085】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが9μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約11.3%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図18に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0086】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0087】
実施例9の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が22%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0088】
(実施例10)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−2.3重量%Ni−0.55重量%Si−0.5重量%Zn−0.15重量%Sn−0.1重量%Mg)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図19に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0089】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、40%IACSの導電率と700MPaの引張強度とを有する。
【0090】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが10μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図19に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0091】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0092】
実施例10の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が22%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0093】
(実施例11)
時効処理されたコルソン系銅合金(Cu−2.3重量%Ni−0.65重量%Si−0.5重量%Zn−0.15重量%Sn)の帯鋼(厚みが62μm、幅が12mm)を帯材7とし、プレス機を用いて、帯材7の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材7は、図20に示した芯材5に対応する。打ち抜き加工により、帯材7の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部8と、当該連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部9と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体12を形成する。
【0094】
打ち抜き体12における各細帯部9に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線9aを基準にしながらプレス機で各細帯部9に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部8の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部8の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材5を有する曲げ加工体13を形成する。銅合金部材である芯材5は、38%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0095】
複数段に折り曲げ加工された芯材5の表面を活性化処理したあと、芯材5を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材5の全面をニッケル系補強層(メッキ厚みが9μm)5cで被覆する。すなわち、ニッケル系補強層5cの厚みは、電気接続端子1を構成する導電金属部品の板厚の約11.3%となっている。ニッケル系補強層5cとしてニッケル−リン合金を用いることにより、ニッケル系補強層5cを容易に高強度化することができ、芯材5の弾性範囲でニッケル系補強層5cが塑性変形することが防止できる。それとともに、リフロー時に過加熱されたときに、純ニッケルメッキの場合のような応力緩和による強度低下や、ニッケル−タングステン合金メッキの場合のような脆化が発生する恐れを低下させるという効果を奏する。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系補強層5cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)6を形成する。そして、金被覆層6の形成された芯材5のうち金被覆層6を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層6が除去されて下地のニッケル系補強層5cが露出した下地露出部6aを形成することができる。金被覆層6の形成により、半田実装部となる部分3及び電気接続部となる部分4が、それぞれ、半田実装部15及び電気接続部16となる。その結果、図20に示すような断面構造をした電気接続端子1が得られる。
【0096】
各電気接続端子1の一端が連続帯部8につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベース2で各電気接続端子1を一体化することで、複数の電気接続端子1がベース2に一体的に保持された信号用電気接続端子装置10を形成する。各電気接続端子1の一端を連続帯部8から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置10を単体のソケット10a又はヘッダ10bとして取り出すことができる。
【0097】
実施例11の信号用電気接続端子装置(コネクタ)10の特性を測定すると、導電率が22%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)10は、所定の導電性と良好な曲げ加工性と高い接触圧とをバランス良く備えていた。したがって、単独では1000MPa以上の引張強度の確保が不可能であったコルソン系銅合金を芯材5として用いることができ、コルソン系銅合金からなる芯材5にニッケル系補強層5cを形成する構成により、所定の導電性の確保、低コスト化を可能にし、銅の被覆層の形成が不要となるために電気接続端子の簡略化に寄与するという効果を奏する。
【0098】
(比較例1)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが80μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図21に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0099】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と900MPaの引張強度とを有する。
【0100】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケルメッキ液(スルファミン酸ニッケル浴)に浸漬しながら電圧を印加するニッケルメッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが2μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101の厚みの約2.4%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図21に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0101】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0102】
比較例1の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が12%IACSであり、引張強度が940MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0103】
(比較例2)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図22に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0104】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と900MPaの引張強度とを有する。
【0105】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが10μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図22に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0106】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0107】
比較例2の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が8%IACSであり、引張強度が1100MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0108】
(比較例3)
バネ用リン青銅(C5210)の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図23に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0109】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と700MPaの引張強度とを有する。
【0110】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが10μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図23に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0111】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0112】
比較例3の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が8%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0113】
(比較例4)
タフピッチ銅の帯鋼(厚みが60μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図24に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0114】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、98%IACSの導電率と280MPaの引張強度とを有する。
【0115】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが10μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101を構成する導電金属部品の板厚の約10%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図24に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0116】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0117】
比較例4の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が55%IACSであり、引張強度が750MPaであり、電気接続端子101が十分な強度を備えることができないために塑性変形を起こし、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての十分な接触力を得ることができなかった。
【0118】
(比較例5)
時効処理されたチタン銅(C1990)の帯鋼(厚みが70μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図25に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0119】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、13%IACSの導電率と900MPaの引張強度とを有する。
【0120】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが5μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101の厚みの約6.3%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図25に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0121】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0122】
比較例5の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が10%IACSであり、引張強度が1000MPaであり、導電部となる芯材105の導電性が低いために、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての所定の導電性が確保されていなかった。
【0123】
(比較例6)
コルソン系銅合金(Cu−2.3重量%Ni−0.65重量%Si−0.5重量%Zn−0.15重量%Sn)の帯鋼(厚みが72μm、幅が12mm)を帯材とし、プレス機を用いて、帯材の打ち抜き加工を行う。ここで、帯材は、図26に示した芯材105に対応する。打ち抜き加工により、帯材の幅方向の左側にあって長手方向に延びる連続帯部と、当該連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに当該連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の細帯部と、を有する略櫛歯状の打ち抜き体を形成する。
【0124】
打ち抜き体における各細帯部に対して仮想的に設けられた複数の折り曲げ線を基準にしながらプレス機で各細帯部に対して複数段の折り曲げ加工を行い、連続帯部の右側端縁から幅方向の右側に向けて延在するとともに連続帯部の長手方向に一定間隔で並設された複数の屈曲した芯材105を有する曲げ加工体を形成する。芯材105は、38%IACSの導電率と750MPaの引張強度とを有する。
【0125】
複数段に折り曲げ加工された芯材105の表面を活性化処理したあと、芯材105を電解ニッケル−リンメッキ液に浸漬しながら電圧を印加するニッケル−リン合金メッキを行って、芯材105の全面をニッケル系被覆層(メッキ厚みが4μm)105cで被覆する。すなわち、ニッケル系被覆層105cの厚みは、電気接続端子101の厚みの約5%となっている。さらに、電解金メッキ液に浸漬しながら電圧を印加する金メッキを行って、ニッケル系被覆層105cの全面上に金被覆層(メッキ厚みが0.1μm)106を形成する。そして、金被覆層106の形成された芯材105のうち金被覆層106を不要とする部分に対してレーザ光を照射することにより、金被覆層106が除去されて下地のニッケル系被覆層105cが露出した下地露出部を形成することができる。金被覆層106が形成されることにより、半田実装部となる部分及び電気接続部となる部分が、それぞれ、半田実装部及び電気接続部となる。その結果、図26に示すような断面構造をした電気接続端子101が得られる。
【0126】
各電気接続端子101の一端が連続帯部につながった状態で、電気絶縁性の合成樹脂からなるベースで各電気接続端子101を一体化することで、複数の電気接続端子101がベースに一体的に保持された信号用電気接続端子装置を形成する。各電気接続端子101の一端を連続帯部から切り離すことにより、信号用電気接続端子装置を単体のソケット又はヘッダとして取り出すことができる。
【0127】
比較例6の信号用電気接続端子装置(コネクタ)の特性を測定すると、導電率が30%IACSであり、引張強度が850MPaであり、電気接続端子101が十分な強度を備えることができないために塑性変形を起こし、当該信号用電気接続端子装置(コネクタ)としての十分な接触力を得ることができなかった。
【0128】
上記の実施例1乃至11及び比較例1乃至6について、電気接続端子及び信号用電気接続端子装置に関する測定結果を表1にまとめて示す。
【0129】
【表1】
【符号の説明】
【0130】
1:電気接続端子
2:ベース
3:半田実装部となる部分
4:電気接続部となる部分
5:芯材
5a:銅合金コア体
5b:銅メッキ層又は銅クラッド層
5c:ニッケル系補強層
6:金被覆層
6a:下地露出部
7:帯材
8:連続帯部
9:細帯部
9a:折り曲げ線
9d:弾性支持部
10:信号用電気接続端子装置(コネクタ)
10a:ソケット
10b:ヘッダ
12:打ち抜き体
13:曲げ加工体
15:半田実装部
16:電気接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持した信号用電気接続端子装置であって、
前記電気接続端子が、
20%IACS以上の導電率と700MPa以上の引張強度とを有する銅合金部材であって、塑性加工により所定の形状に加工される芯材と、
前記芯材の全面を覆い、前記電気接続端子を構成する導電金属部品の板厚の10%以上を占めるニッケル又はニッケル合金からなるニッケル系補強層と、
前記ニッケル系補強層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金を被覆した金被覆層と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置。
【請求項2】
前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の全面に対して、前記芯材の厚みの2%以上である銅メッキ層を形成することによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項3】
前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の一面及び/又はその対向面に対して、前記芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成することによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項4】
前記芯材は、コルソン系銅合金によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項5】
前記芯材は、Cu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項6】
前記ニッケル系補強層は、純ニッケルメッキからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項7】
前記ニッケル系補強層は、ニッケル−タングステン合金メッキからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項8】
前記ニッケル系補強層は、ニッケル−リン合金メッキからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項9】
電気接続端子の板厚の75%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の2%以上の厚みで銅メッキ層を形成する工程と、
前記銅メッキ層の全面を覆うように、該銅メッキ層の形成された曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項10】
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の少なくとも1面に芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成した芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項11】
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するコルソン系銅合金あるいはCu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金からなる帯状の銅合金芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項12】
前記所定の導電率及び引張強度が、20%IACS以上の導電率及び700MPa以上の引張強度であることを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項1】
複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持した信号用電気接続端子装置であって、
前記電気接続端子が、
20%IACS以上の導電率と700MPa以上の引張強度とを有する銅合金部材であって、塑性加工により所定の形状に加工される芯材と、
前記芯材の全面を覆い、前記電気接続端子を構成する導電金属部品の板厚の10%以上を占めるニッケル又はニッケル合金からなるニッケル系補強層と、
前記ニッケル系補強層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金を被覆した金被覆層と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置。
【請求項2】
前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の全面に対して、前記芯材の厚みの2%以上である銅メッキ層を形成することによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項3】
前記芯材は、チタン銅又はバネ用リン青銅からなる銅合金コア体の一面及び/又はその対向面に対して、前記芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成することによって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項4】
前記芯材は、コルソン系銅合金によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項5】
前記芯材は、Cu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項6】
前記ニッケル系補強層は、純ニッケルメッキからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項7】
前記ニッケル系補強層は、ニッケル−タングステン合金メッキからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項8】
前記ニッケル系補強層は、ニッケル−リン合金メッキからなることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置。
【請求項9】
電気接続端子の板厚の75%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の2%以上の厚みで銅メッキ層を形成する工程と、
前記銅メッキ層の全面を覆うように、該銅メッキ層の形成された曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項10】
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するチタン銅又はバネ用リン青銅からなる帯状の銅合金コア体の少なくとも1面に芯材の厚みの9%以上である銅クラッド層を形成した芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項11】
電気接続端子の板厚の80%以下まで圧延して、所定の導電率及び引張強度を有するコルソン系銅合金あるいはCu−Zr系又はCu−Ag系の積層銅合金からなる帯状の銅合金芯材の一端部に対して、プレス機を用いて、所定形状に抜き加工を行うことにより櫛形状の打ち抜き体を形成する工程と、
前記打ち抜き体の複数の所定箇所に対して、プレス機を用いて折り曲げ加工を行うことにより、複数箇所の折り曲げ部を有する曲げ加工体を形成する工程と、
前記曲げ加工体の全面を覆うように、該曲げ加工体の板厚の10%以上の厚みでニッケル又はニッケル合金のメッキ層を形成する工程と、
前記ニッケル又はニッケル合金のメッキ層の上に形成される少なくとも半田実装部及び電気的接続部に対して金メッキ層を形成して複数の電気接続端子を作製する工程と、
前記複数の電気接続端子を絶縁性合成樹脂により一体的に保持する工程と、
前記複数の電気接続端子がつながった他端側の連続帯部から前記複数の電気接続端子を切り離す工程と、を備えることを特徴とする、信号用電気接続端子装置の製造方法。
【請求項12】
前記所定の導電率及び引張強度が、20%IACS以上の導電率及び700MPa以上の引張強度であることを特徴とする、請求項9乃至11のいずれか1つに記載の信号用電気接続端子装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2013−20883(P2013−20883A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154980(P2011−154980)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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