説明

信号送信装置、レーダ装置、信号送信方法およびレーダ探知方法

【課題】パルスレーダ動作とCWレーダ動作とを切替えることが可能な信号送信装置、レーダ装置、信号送信方法およびレーダ探知方法を提供する。
【解決手段】信号送信装置10は、パルスモードまたはCWモードのモード指定信号を出力する動作モード指定手段20と、パルスモードの場合は周期Tで、CWモードの場合は周期aで、タイミング信号を出力するタイミング信号出力手段30と、パルスモードの場合は全ての信号生成手段へ、CWモードの場合は一つずつ順次信号生成手段へタイミング信号を入力させるタイミング制御手段40と、パルスモードの場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードの場合は期間aについてCW信号を、タイミング信号が入力する毎に出力するn個の信号生成手段51、…、5nと、信号生成手段から出力された信号を外部空間へ送信する信号送信手段60と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号送信装置、レーダ装置、信号送信方法およびレーダ探知方法に関し、特に、パルス信号と連続波(CW:continuous wave)信号とを切り替えて送信する信号送信装置、レーダ装置、信号送信方法およびレーダ探知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ装置は、一般的に空間に電波を照射して、目標からの反射信号を受信することにより、目標の存在を探知し、その位置、運動状況などを観測するものである。レーダ装置においては、電波は空中線から空間に照射され、目標に当たって反射した後、再び空中線で受信されて受信器等へレーダ受信信号として出力される。レーダ受信信号は受信器で周波数変換された後、A/D変換され、ディジタル受信信号は各種の信号処理やデータ処理が行われる。
【0003】
レーダ装置の方式にはさまざまな分類方法があるが、そのひとつとして、パルスレーダ装置と連続波(CW)レーダ装置という分類がある。パルスレーダ装置は、送信信号がパルス信号であり、送信と受信を交互に行い、パルス信号を送信している間は受信を行わず、逆に受信している間はパルス信号の送信を行わない。一方、CWレーダ装置は、CW信号を送信するレーダ装置であり、送信中も受信を行う。
【0004】
パルスレーダ装置とCWレーダ装置にはそれぞれ長所と短所があり、用途に応じて使い分けが行われる。例えば、CWレーダ装置は送信信号の受信器への漏れ込みのため、受信感度に制約があり、遠距離の観測には向いていない。一方、パルスレーダ装置はこの問題がないため、遠距離の観測にはパルスレーダ装置が一般的に使用される。
【0005】
また、パルスレーダ装置は距離分解能が高いというメリットがあるが、送信中に受信しないため、近距離の目標を探知できないという問題がある。一方、CWレーダ装置は距離分解能が低いものの、近距離の目標を探知することが可能であり、ドップラ周波数を観測する精度が高いというメリットがある。
【0006】
監視用レーダ等においては、遠距離の目標と近距離の目標を同時に探知したい場合や、目標の速度、すなわち、ドップラ周波数を高精度に観測したい場合等、状況に応じてレーダ装置に要求される機能性能が変化する場合がある。この場合、パルスレーダ装置とCWレーダ装置の両方の機能を有するレーダ装置が有効である。
【0007】
パルスレーダ装置とCWレーダ装置の両方の機能を有するレーダ装置が特許文献1に開示されている。特許文献1のレーダ装置のブロック図を図10に示す。図10において、特許文献1のレーダ装置には、空中線素子981〜98mを有する空中線980Aと、空中線素子98(m+1)〜98nを有する空中線980Bと、が配置されている。
【0008】
特許文献1のレーダ装置において、切替制御器910がパルスレーダモードを指定するモード選択信号を出力した場合、送受切替器920は、送信機930からの送信信号を送信ブロック形成部940を用いて空中線980Aと空中線980Bとの両方へ出力させる。また、空中線980Aと空中線980Bの両方からの受信信号を受信ブロック形成部950において受信し、受信した信号を電力合成器960において電力合成した後、受信器970へ出力させる。
【0009】
一方、切替制御器910がCWレーダモードを指定するモード選択信号を出力した場合、送受切替器920は、空中線980Aおよび空中線980Bを、それぞれ送信専用または受信専用となるように制御する。例えば、空中線980Aが送信専用に用い、空中線980Bを受信専用に用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−249944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1の技術は、送信デューティが制約された送信器を使用しているレーダ装置には適用できない。送信デューティとは、レーダの動作時間(送信時間と受信時間の合計)に対する送信時間の比率である。CWレーダ動作の場合は送信デューティが1であるが、パルスレーダ動作を前提としている送信器の場合、送信デューティが1よりも小さい値に制約されていることが多い。送信デューティが1よりも小さい値に制約された送信器を使用している場合、CW信号を送信することができない。
【0012】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、送信デューティ等に制約がありCW信号を送信することができない送信器が使用されている場合でも、パルスレーダ動作とCWレーダ動作とを切替えることが可能な信号送信装置、レーダ装置、信号送信方法およびレーダ探知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明に係る信号送信装置は、パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を出力する動作モード指定手段と、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期Tで、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期aで、タイミング信号を出力するタイミング信号出力手段と、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は全ての信号生成手段へ、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は一つずつ順次信号生成手段へ、出力されたタイミング信号を入力させるタイミング制御手段と、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は期間aについてCW信号を、タイミング信号が入力する毎に生成して出力するn個の信号生成手段と、信号生成手段から出力された信号を外部空間へ送信する信号送信手段と、を備える。
【0014】
上記目的を達成するために本発明に係るレーダ装置は、上述の信号送信装置と、信号送信装置から送信された信号が反射されて戻って来た信号を受信信号として受信する信号受信手段、および、モード指定信号およびタイミング信号に基づいて受信した受信信号から目標データを生成して出力する目標データ生成手段を備えた信号受信装置と、を備える。
【0015】
上記目的を達成するために本発明に係る信号送信方法は、n個の信号生成手段を備えた信号送信装置を用いた信号送信方法であって、パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を出力し、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期Tで、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期aで、タイミング信号を出力し、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は全ての信号生成手段へ、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は一つずつ順次信号生成手段へ、出力されたタイミング信号を入力し、n個の信号生成手段に、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は期間aについてCW信号を、タイミング信号が入力する毎に生成させて出力させ、信号生成手段から出力された信号を外部空間へ送信する。
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係るレーダ探知方法は、n個の信号生成手段を備えたレーダ装置を用いたレーダ探知方法であって、パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を出力し、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期Tで、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期aで、タイミング信号を出力し、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は全ての信号生成手段へ、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は一つずつ順次信号生成手段へ、出力されたタイミング信号を入力し、n個の信号生成手段に、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は期間aについてCW信号を、タイミング信号が入力する毎に生成させて出力させ、信号生成手段から出力された信号を外部空間へ照射し、照射された信号が反射されて戻って来た信号を受信信号として受信し、モード指定信号およびタイミング信号に基づいて、受信した受信信号から目標データを生成して出力する。
【発明の効果】
【0017】
上記構成とすることにより、本発明に係る信号送信装置、レーダ装置、信号送信方法およびレーダ探知方法は、送信デューティ等に制約がありCW信号を送信することができない信号生成手段が使用されている場合でも、パルスレーダ動作とCWレーダ動作とを切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る送信装置10のブロック構成図の一例である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るタイミング制御手段40から信号生成手段51、52、…、5nへ出力される、(a)パルスモード時、(b)CWモード時、のタイミング信号の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る信号生成手段51、52、53、54および信号送信手段60から、(a)パルスモード時、(b)CWモード時、に出力される信号の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る信号送信手段60および第1の実施の形態の変形例に係る信号送信手段61、62、…、6nから、(a)パルスモード時、(b)CWモード時、に出力される信号の一例を示す図である。
【0019】
【図5】本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置100のブロック構成図の一例である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置100の、電波照射までの動作フロー図の一例である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るレーダ装置100の、電波受信から目標データ出力までの動作フロー図の一例である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例に係るレーダ装置100Bのブロック構成図の一例である。
【図9】本発明の第2の実施形態の別の変形例に係るレーダ装置100Cのブロック構成図の一例である。
【図10】特許文献1に係るレーダ装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る送信装置について説明する。図1に、本実施形態に係る送信装置10のブロック構成図の一例を示す。図1において、送信装置10は、動作モード指定手段20、タイミング信号出力手段30、タイミング制御手段40、n個の信号生成手段51、52、…、5nおよび信号送信手段60を備える。
【0021】
動作モード指定手段20は、パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を生成し、タイミング信号出力手段30、タイミング制御手段40および信号生成手段51、52、…、5nへ出力する。
【0022】
タイミング信号出力手段30は、動作モード指定手段20からパルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合、周期Tのタイミング信号をタイミング制御手段40へ出力し、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合、周期aのタイミング信号をタイミング制御手段40へ出力する。
【0023】
タイミング制御手段40は、タイミング信号出力手段30から出力されたタイミング信号を動作モード指定手段20から入力したモード指定信号に応じて信号生成手段51、52、…、5nへ入力させる。
【0024】
本実施形態に係るタイミング制御手段40が信号生成手段51、52、…、5nへタイミング信号を入力するタイミングについて、図2を用いて説明する。図2(a)はパルスモードの場合に各信号生成手段へ入力されるタイミング信号の一例、図2(b)はCWモードの場合に各信号生成手段へ入力されるタイミング信号の一例である。
【0025】
図2(a)において、パルスモードの場合、タイミング制御手段40は、タイミング信号出力手段30から出力された周期Tのタイミング信号を全ての信号生成手段へ入力させる。一方、図2(b)において、CWモードの場合、タイミング制御手段40は、タイミング信号出力手段30から出力された周期aのタイミング信号を、一つずつ順次信号生成手段51、52、…、5nへ入力させる。ここで、タイミング制御手段40は、パルスモードの場合、タイミング信号が入力する毎にパルス幅tのパルス信号を生成して信号送信手段60へ出力する。一方、CWモードの場合、タイミング信号が入力する毎に期間aについてCW信号を生成して信号送信手段60へ出力する。なお、本実施形態において、パルス幅tおよび信号生成手段の数nは、t/Tおよび1/nが信号生成手段51、52、…、5nのデューティ制約値より小さくなるように設定される。
【0026】
信号送信手段60は、信号生成手段51、52、…、5nから出力された信号を合成して外部空間へ送信する。なお、本実施形態において信号送信手段60は、CWモードの場合、信号生成手段51、52、…、5nから出力された各CW信号の位相が不連続にならないように位相を整合させた後、合成して外部空間へ送信する。
【0027】
送信装置10の動作について、具体例を挙げて説明する。以下、送信装置10が、デューティ制約値が30%の4つの信号生成手段を備える場合について図3を用いて説明する。図3は、(a)パルスモード、(b)CWモード、の時に信号生成手段51、52、53、54から出力される信号の一例、および、信号送信手段60から外部空間へ送信される送信信号の一例である。
【0028】
図3(a)に示すように、パルスモードの場合、信号生成手段51、52、53、54は周期Tごとにパルス幅tのパルス信号を信号送信手段60へ出力し、信号送信手段60は、周期Tごとに4つのパルス信号の合成信号(パルス信号)を外部空間へ送信する。該合成信号の電力は、各信号生成手段51、52、53、54から出力されたパルス信号の電力の4倍となっている。動作時間tの後、動作時間の4倍の休止時間が設定されていることから、送信デューティ(t/T)は20%となり、信号生成手段の送信デューティの制約値30%を満足する。
【0029】
一方、図3(b)に示すように、CWモードの場合、信号生成手段51、52、53、54は時間aずつずれて、期間aのCW信号を出力する。信号生成手段51からのCW信号の出力が終了するのと同時に信号生成手段52からのCW信号の出力が開始されることから、信号送信手段60からは、連続波(CW)信号が外部空間へ送信される。生成されたCW信号の各時刻での送信電力は、単一の信号生成手段相当となり、パルスモード時に比べて小さくなる。一方、動作時間aの後、(n−1)・aの休止時間が設定されていることから、送信デューティ(1/n)は25%となり、信号生成手段の送信デューティの制約値30%を満足する。
【0030】
以上のように、本実施形態に係る送信装置10は、複数の信号生成手段51、52、…、5nを配置して、パルスモードの場合は周期Tのタイミング信号を全ての信号生成手段51、52、…、5nへ入力させ、CWモードの場合は周期aのタイミング信号を、一つずつ順次信号生成手段51、52、…、5nへ入力させる。そして、信号生成手段51、52、…、5nがタイミング信号が入力するごとに出力した信号を合成して外部空間へ送信する。
【0031】
これにより、本実施形態に係る送信装置10は、送信デューティ等に制約がありCW信号を生成することができない信号生成手段が使用されている場合でも、パルスモードとCWモードとを切替え、パルス信号またはCW信号を外部空間へ送信することができる。
【0032】
(第1の実施形態の変形例)
第1の実施形態の変形例について説明する。本実施形態に係る送信装置10Bは、第1の実施形態で説明した図1の信号送信手段60の代わりに、信号生成手段51、52、…、5nの後段に、n個の信号送信手段61、62、…、6nを配置した。該送信装置10Bにおいて、信号送信手段61、62、…、6nは、対応する信号生成手段51、52、…、5nから出力された信号を、それぞれ外部空間へ照射する。
【0033】
図4に、(a)パルスモード、(b)CWモード、の時に信号送信手段60(第1の実施形態)および信号送信手段61、62、…、6n(本実施形態)から送信される送信信号の一例を示す。
【0034】
図4において、パルスモードでは、各信号送信手段の使用頻度は等しいものの、本実施形態に係る信号送信手段61、62、…、6nから照射される各信号の送信電力は、第1の実施形態に係る信号送信手段60から照射される信号の送信電力よりも小さい。一方、CWモードでは、各信号送信手段の単位時間当たりの送信電力は等しいものの、本実施形態に係る信号送信手段61、62、…、6nの使用頻度は、第1の実施形態に係る信号送信手段60の使用頻度より低い。
【0035】
本実施形態に係るレーダ装置100Bは、各信号送信手段は送信電力または使用頻度が低く、効率が悪いというデメリットを有する。一方、本実施形態に係る信号送信手段は、送信電力が小さく、信号生成手段51、52、…、5nからの送信信号を合成する処理を行う必要もないため、構成が単純で比較的安価な信号生成手段を適用できるというメリットを有する。
【0036】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態に係るレーダ装置100のブロック構成図の一例を図5に示す。図5において、本実施形態に係るレーダ装置100は、モード制御信号発生器110、タイミング信号発生器120、送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140を備える。
【0037】
モード制御信号発生器110は、外部からパルスレーダ動作またはCWレーダ動作のいずれか一方の動作モードを選択するモード選択信号を取得することにより、取得したモード選択信号に応じたモード制御信号を生成し、タイミング信号発生器120、送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力する。
【0038】
タイミング信号発生器120は、モード制御信号発生器110からパルスレーダ動作のモード制御信号が入力した場合、周期Tのタイミング信号を送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力する。一方、モード制御信号発生器110からCWレーダ動作のモード制御信号が入力した場合、タイミング信号発生器120は、周期aのタイミング信号を送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力する。
【0039】
送信空中線130−1〜130−Lは、送信モジュール131−1〜131−N、位相補正器132−1〜132−N、選択合成器133、分配器134および空中線素子135−1〜135−Mを備え、パルスレーダ動作の場合はパルス信号を生成して外部空間へ照射し、CWレーダ動作の場合はCW信号を生成して外部空間へ照射する。
【0040】
送信空中線130−1は、パルスレーダ動作の場合、タイミング信号発生器120から入力した周期Tのタイミング信号を、全ての送信モジュール131−1〜131−Nへ入力する。一方、CWレーダ動作の場合、タイミング信号発生器120から入力した周期aのタイミング信号を、一つずつ順次、送信モジュール131−1〜131−Nへ入力する。
【0041】
送信モジュール131−1〜131−Nは、パルスレーダ動作の場合、タイミング信号が入力する毎に、パルス幅tのパルス信号を生成して出力する。なお、「デューティ制約値≧t/T」である。一方、CWレーダ動作の場合、タイミング信号が入力する毎に、期間aについてCW信号を生成して出力する。なお、本実施形態において、送信モジュールのデューティ制約値と送信モジュールの数Nとは「デューティ制約値≧1/N」の関係がある。
【0042】
位相補正器132−1〜132−Nはそれぞれ、送信モジュール131−1〜131−Nの後段に配置され、送信モジュール131−1〜131−Nから出力されたCW信号の位相を補正する。
【0043】
選択合成器133は、位相補正器132−1〜132−Nから出力された信号を合成して分配器134へ出力し、分配器134は該合成信号を等分配して空中線素子135−1〜135−Mへ出力する。空中線素子135−1〜135−Mは、分配器134から出力された分配信号を電波として外部空間へ照射する。
【0044】
ここで、図5では、送信空中線130−1のみ詳細なブロック構成図を記載したが、他の送信空中線130−2〜130−Lも同様に構成される。また、送信空中線130−1〜130−Lは、それぞれが同一の動作モード、タイミングで動作する。
【0045】
図5において、信号処理器140は、受信空中線141、受信器142、切替器143、パルスレーダ処理器144、CWレーダ処理器145および選択器146を備え、電波を受信し、受信した電波を解析することによりって目標データを出力する。
【0046】
受信空中線141は、送信空中線130−1〜130−Lが外部空間に照射して目標等から反射して戻ってきた電波を受信して受信器142へ出力する。
【0047】
受信器142は、受信空中線141が受信した電波を、モード制御信号発生器110から入力したモード制御信号およびタイミング信号発生器120から入力したタイミング信号を用いて周波数変換等の受信処理を行い、受信信号として切替器143へ出力する。
【0048】
切替器143は、受信器142から出力された受信信号を、動作モードに応じてパルスレーダ処理器144またはCWレーダ処理器145へ切り替えて出力する。
【0049】
パルスレーダ処理器144は、入力した受信信号に対してパルスレーダ動作に対応した信号処理やデータ処理を行い、選択器146へ出力する。CWレーダ処理器145は、入力した受信信号に対してCWレーダ動作に対応した信号処理やデータ処理を行い、選択器146へ出力する。選択器146は、動作モードに応じて処理結果を選択して目標データとして出力する。
【0050】
次に、本実施形態に係るレーダ装置100の動作について説明する。本実施形態に係るレーダ装置100が電波を照射するまでの動作フロー図の一例を図6に、電波を受信して目標データを出力するまでの動作フロー図の一例を図7に示す。
【0051】
図6において、本実施形態に係るレーダ装置100は、外部からパルスレーダ動作またはCWレーダ動作のいずれか一方の動作モードを選択するモード選択信号を取得することにより、以下の動作を行う(S101)。
【0052】
モード制御信号発生器110は、パルスレーダ動作のモード選択信号を取得した場合(S102のパルスレーダ動作)、パルスレーダ動作のモード制御信号を生成して、タイミング信号発生器120、送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力し(S103)、タイミング信号発生器120は、周期Tのタイミング信号を送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力する(S104)。
【0053】
送信空中線130−1〜130−Lへ入力した周期Tのタイミング信号は、全ての送信モジュール131−1〜131−Nへ入力され(S105)、送信モジュール131−1〜131−Nは、タイミング信号が入力される毎にパルス幅tのパルス信号を生成して選択合成器133へ出力する(S106)。
【0054】
一方、モード制御信号発生器110は、CWレーダ動作のモード制御信号を取得した場合(S102のCWレーダ動作)、CWレーダ動作のモード制御信号を生成して、タイミング信号発生器120、送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力し(S107)、タイミング信号発生器120は、周期aのタイミング信号を送信空中線130−1〜130−Lおよび信号処理器140へ出力する(S108)。
【0055】
送信空中線130−1〜130−Lへ入力した周期aのタイミング信号は、一つずつ順次、送信モジュール131−1〜131−Nへ入力され(S109)、送信モジュール131−1〜131−Nはそれぞれ、タイミング信号が入力される毎に期間aについてCW信号を生成して出力する(S110)。出力されたCW信号はそれぞれ、位相補正器132−1〜132−Nにおいて位相が補正された後、選択合成器133へ出力される(S111)。
【0056】
選択合成器133は、送信モジュール131−1〜131−Nから出力された信号を合成して分配器134へ出力し(S112)、分配器134は入力した合成信号を等分配して空中線素子135−1〜135−Mへ出力する(S113)。空中線素子135−1〜135−Mは、分配器134から入力した分配信号を、電波として外部空間へ照射する(S114)。
【0057】
一方、図7において、本実施形態に係るレーダ装置100の受信空中線141は、外部空間から入射した電波を受信して受信器142へ出力する(S201)。受信器142は、受信空中線141から出力された電波を、モード制御信号およびタイミング信号に基づいて受信処理し、受信処理した信号を切替器143へ出力する(S202)。
【0058】
そして、パルスレーダ動作の場合(S203のパルスレーダ動作)、切替器143は受信器142から出力された処理信号をパルスレーダ処理器144へ出力し、パルスレーダ処理器144は、入力した受信信号に対してパルスレーダ動作に対応した信号処理やデータ処理を行い、選択器146へ出力する(S204)。
【0059】
一方、CWレーダ動作の場合(S203のCWレーダ動作)、切替器143は受信器142から出力された処理信号をCWレーダ処理器145へ出力し、CWレーダ処理器145は、入力した受信信号に対してCWレーダ動作に対応した信号処理やデータ処理を行い、選択器146へ出力する(S205)。
【0060】
選択器146は、パルスレーダ処理器144およびCWレーダ処理器145から入力した信号を動作モードに応じて選択し、目標データとして出力する(S206)。
【0061】
以上のように、本実施形態に係るレーダ装置100は、複数の送信モジュールからの出力を合成して照射する構成とした。該レーダ装置100は、動作モードに応じて各送信モジュールの送信タイミングを制御し、CWレーダ動作時も個々の送信モジュールが所定の送信デューティ以下で動作する。従って、送信デューティ等に制約がありCW信号を送信できない送信モジュールを使用した場合でも、パルスレーダ動作とCWレーダ動作とを切替えて動作することができる。
【0062】
また、送信モジュールから出力された信号は、選択合成器133を用いて合成され、その後、分配器134を用いて空中線素子の数に合わせて等分配されることから、空中線素子の数をレーダ装置の使用目的に応じて最適に設定することができる。
【0063】
(第2の実施形態の変形例)
第2の実施形態の変形例について説明する。本実施形態に係るレーダ装置100Bのブロック構成図の一例を図8に示す。本実施形態では、外部からモード選択信号を入力する代わりに、レーダ装置100Bが自動的にパルスレーダ動作とCWレーダ動作とを切り替える。
【0064】
図8に示した本実施形態に係るレーダ装置100Bは、図5に示した第2の実施形態に係るレーダ装置100において、信号処理器140を信号処理器140Bへ変更したものである。具体的には、選択器146をデータ結合器147に置き換えると共に、ビーム制御器148を追加した。
【0065】
本実施形態に係るレーダ装置100Bは、通常はパルスレーダ動作を行っている。ビーム制御器148は、パルスレーダ処理器144からの出力を監視しており、パルスレーダ処理器144からの出力に目標データが含まれていた場合、パルスレーダ動作からCWレーダ動作へ切替えるためのモード選択信号を生成してモード制御信号発生器110へ出力する。
【0066】
データ結合器147は、CWレーダ動作で得られる目標のドップラ周波数を、パルスレーダ動作で得たデータと結合して目標データとして出力する。
【0067】
本実施形態に係るレーダ装置100Bは、パルスレーダ動作とCWレーダ動作とを自動的に切り替え、相互の有効なデータを取得することができる。該レーダ装置100Bは、パルスレーダ動作の距離分解能および遠距離探知能力と、CWレーダ動作のドップラ周波数計測精度および近距離探知能力を両立させることができる。
【0068】
第2の実施形態の別の変形例について説明する。本実施形態に係るレーダ装置100Cのブロック構成図の一例を図9に示す。本実施形態では、送信モジュール、位相補正器および空中線素子を同数配置し、それぞれ1対1に対応させる。図9に示した本実施形態に係るレーダ装置100Cは、図5に示した第2の実施形態に係るレーダ装置100において、送信空中線130を送信空中線130Cへ変更したものである。具体的には、選択合成器133および分配器134を削除し、送信モジュールおよび位相補正器と同数の送信空中線135C−1〜135C−Nを、位相補正器132−1〜132−Nの後段に配置した。
【0069】
該レーダ装置100Cにおいて、パルスレーダ動作において、各空中線素子135−1〜135−Nからはそれぞれ単一送信モジュール相当の電力の信号が出力され、合成された電波の送信電力は、単一送信モジュールのN倍となる。一方、CWレーダ動作において、送信モジュール131−1〜131−Nが順番に切り替えられてCW信号を出力するが、空中線素子135−1〜135−Nが送信モジュールと1対1に対応しているため、送信する空中線素子135−1〜135−Nも順番に切り替えられ、結果的に、CW信号がレーダ装置100Cから照射される。
【0070】
本実施形態に係るレーダ装置100Cは、CWレーダ動作において、各空中線素子から照射される電波の数が少なくなり、空中線利得が低いというデメリットを有する。一方、選択合成器や分配器が不要であり、送信空中線の構造を簡易にできるというメリットを有する。
【符号の説明】
【0071】
10、10B 送信装置
20 動作モード指定手段
30 タイミング信号出力手段
40 タイミング制御手段
51、52、…、5n 信号生成手段
60、61、62、…、6n 信号送信手段
100、100B、100C レーダ装置
110 モード制御信号発生器
120 タイミング信号発生器
130、130C 送信空中線
131 送信モジュール
132 位相補正器
133 選択合成器
134 分配器
135、135C 空中線素子
140、140B 信号処理器
141 受信空中線
142 受信器
143 切替器
144 パルスレーダ処理器
145 CWレーダ処理器
146 選択器
147 データ結合器
148 ビーム制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を出力する動作モード指定手段と、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期Tで、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期aで、タイミング信号を出力するタイミング信号出力手段と、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は全ての信号生成手段へ、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は一つずつ順次前記信号生成手段へ、前記出力されたタイミング信号を入力させるタイミング制御手段と、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は期間aについてCW信号を、前記タイミング信号が入力する毎に生成して出力するn個の信号生成手段と、
前記信号生成手段から出力された信号を外部空間へ送信する信号送信手段と、
を備える信号送信装置。
【請求項2】
1/nおよびt/Tは、前記信号生成手段のデューティ制約値よりも小さい、請求項1記載の信号送信装置。
【請求項3】
前記信号送信手段の前段に配置され、前記n個の信号生成手段から出力されたCW信号の位相を整合させて出力する位相整合手段をさらに備える、請求項1または2記載の信号送信装置。
【請求項4】
前記信号送信手段の前段に配置され、前記信号生成手段から出力された信号を合成して出力する合成手段をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の信号送信装置。
【請求項5】
前記信号送信手段を2以上備え、
前記合成手段から出力された信号を前記2以上の信号送信手段へ分配する分配手段をさらに備える、請求項4記載の信号送信装置。
【請求項6】
前記信号送信手段をn個備え、
前記信号送信手段は対応する前記信号生成手段から出力された信号を外部空間へ出力する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の信号送信装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の信号送信装置と、
前記信号送信装置から送信された信号が反射されて戻って来た信号を受信信号として受信する信号受信手段、および、前記モード指定信号およびタイミング信号に基づいて前記受信した受信信号から目標データを生成して出力する目標データ生成手段を備えた信号受信装置と、
を備えるレーダ装置。
【請求項8】
前記信号送信装置は前記信号受信装置から前記目標データを取得し、
前記動作モード指定手段は、前記取得した目標データに基づいて前記モード指定信号を生成して出力する、請求項7記載のレーダ装置。
【請求項9】
n個の信号生成手段を備えた信号送信装置を用いた信号送信方法であって、
パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を出力し、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期Tで、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期aで、タイミング信号を出力し、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は全ての前記信号生成手段へ、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は一つずつ順次前記信号生成手段へ、前記出力されたタイミング信号を入力し、
前記n個の信号生成手段に、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は期間aについてCW信号を、前記タイミング信号が入力する毎に生成させて出力させ、
前記信号生成手段から出力された信号を外部空間へ送信する、
信号送信方法。
【請求項10】
n個の信号生成手段を備えたレーダ装置を用いたレーダ探知方法であって、
パルスモードまたはCWモードのいずれか一方を指定するモード指定信号を出力し、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期Tで、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は周期aで、タイミング信号を出力し、
パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合は全ての前記信号生成手段へ、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は一つずつ順次前記信号生成手段へ、前記出力されたタイミング信号を入力し、
前記n個の信号生成手段に、パルスモードを指定するモード指定信号が入力した場合はパルス幅tのパルス信号を、CWモードを指定するモード指定信号が入力した場合は期間aについてCW信号を、前記タイミング信号が入力する毎に生成させて出力させ、
前記信号生成手段から出力された信号を外部空間へ照射し、
前記照射された信号が反射されて戻って来た信号を受信信号として受信し、
前記モード指定信号およびタイミング信号に基づいて、前記受信した受信信号から目標データを生成して出力する、
レーダ探知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−251825(P2012−251825A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123558(P2011−123558)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】