説明

修飾されたオリゴリン酸基を含有する免疫賦活オリゴリボヌクレオチドアナログ

5'−三リン酸基および種々の5'−三リン酸基アナログを特徴とする免疫賦活オリゴリボヌクレオチド(ORN)が提供される。また、本発明の免疫賦活ORNの生理学上許容される塩、および該ORNを含む医薬組成物が提供される。本発明のORNはアジュバントとして有用で、抗原特異性免疫応答を亢進させるために抗原と組み合わせることができる。また、本発明のORNは、Th1型免疫応答を亢進させるのに特に有用である。また、本発明の化合物および医薬組成物の使用方法が提供され、該方法は、対象者の免疫応答を強化するための使用方法、癌、感染症、アレルギー疾患、喘息などの多くの疾患を治療するための使用方法、および抗原に対するワクチンを対象者に接種するための使用方法である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
近年、合成オリゴヌクレオチドを含めて多くの核酸分子が、免疫賦活分子として報告されている。このような免疫賦活核酸分子としては、Toll様受容体9(TLR9)を介してシグナル伝達するCpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、Toll様受容体3(TLR3)を介してシグナル伝達する二本鎖RNA(dsRNA)、Toll様受容体7および8(TLR7およびTLR8)を介してシグナル伝達する一本鎖RNAおよびオリゴリボヌクレオチド(ORN)が挙げられる。
【0002】
T3、T7およびSp6RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写で得られる短鎖の一本鎖RNA(ssRNA)によって、極めて強力にインターフェロンが誘導されることも報告されている。Kim DH et al.(2004) Nat Biotechnol 22:321−5。さらにこの報告では、in vitro転写で得られたORNの5'−三リン酸基が、インターフェロン(IFN)誘導に必要であることも開示されている。これらの知見は、米国特許出願公開2006/0178334 A1にも開示されている。
【0003】
また、RNA−5'−三リン酸がレチノイン酸誘導タンパク質I(RIG−I)のリガンドであることと、この5'−三リン酸基が、ウイルスRNA検知のための分子署名として機能して、強力なIFN誘導を導くことがそれぞれ報告されている。Hornung V et al.(2006) Science 314:994−7。
【0004】
5'−三リン酸基は、エネルギー的に活性化状態にある化合物で、自己加水分解しやすい性質を持つ。in vivo条件下では、三リン酸基が、仔ウシ腸由来ホスファターゼ(CIP)といった5'−ホスファターゼなどにより代謝的に切断され、キャップ構造がRNAに付加される。したがって、すべてではないにせよ大部分の細胞質RNAは、露出した5'−三リン酸基を欠いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、代謝・化学安定性および生物活性が向上した免疫賦活オリゴリボヌクレオチド(ORN)および免疫賦活オリゴリボヌクレオチドアナログ、このような免疫賦活分子を含む組成物、ならびにそれらの調製方法および使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの態様において、本発明の免疫賦活分子は、少なくとも1つの5'末端オリゴリン酸基アナログ、例えば5'−三リン酸基アナログを有することを1つの特徴とする。本態様の免疫賦活分子は、一実施形態において、上記以外には修飾されていないRNAを含んでもよい。この実施形態において、ORNは、修飾された5'末端オリゴリン酸基と、これ以外には修飾されていないRNAとを有する。この実施形態のORNは、修飾されていないRNAを有するにもかかわらず、T3、T7およびSp6RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写では得ることができない。これは、上記の酵素が、5'末端オリゴリン酸基アナログを組み込むことができないためである。さらに本態様によれば、本発明の免疫賦活分子は、一実施形態において、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド間結合、糖残基、核酸塩基、またはこれらの任意の組み合わせを有することをさらなる特徴とするRNAを含んでもよい。この実施形態において、ORNは、修飾された5'末端オリゴリン酸基と、これ以外にも修飾されたRNAとを有する。この実施形態のORNは、T3、T7およびSp6RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写では得ることができない。これは、上記の酵素が、5'末端オリゴリン酸基アナログも上記した少なくとも1つのRNA修飾部位も組み込むことができないからである。
【0007】
いくつかの態様において、本発明の免疫賦活分子は、少なくとも1つの5'末端三リン酸基を有することを1つの特徴とする。さらに本態様の免疫賦活分子は、一実施形態において、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチド間結合、糖残基、核酸塩基、またはこれらの任意の組み合わせを有することをさらなる特徴とするRNAを含む。この実施形態において、ORNは、5'末端三リン酸基と、これ以外にも修飾されたRNAとを有する。本実施形態のORNは、T3、T7およびSp6RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写では得ることができない。これは、上記の酵素が、上記した少なくとも1つのRNA修飾部位を組み込むことができないからである。
【0008】
一実施形態において、本発明のORNは、脂質製剤などの薬物送達システムを用いて投与することが可能である。
【0009】
一態様では、本発明は、下記式:
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、XおよびX(複数存在する場合は、各X)はそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、nは、0〜3の整数を示す(ただし、nが0を示すのは、Xがイミダゾールである場合に限る)。ただし、5'−三リン酸基アナログは、5'−三リン酸基ではない。)で表される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0012】
一実施形態において、nは、1〜3の整数である。一実施形態において、nは1である。一実施形態において、nは2である。一実施形態において、nは3である。
【0013】
一実施形態において、YはそれぞれOである。
【0014】
一実施形態において、Xは、OHおよびO−フェニルから選択される。一実施形態において、XはOHである。
【0015】
一実施形態において、5'−三リン酸基アナログは下記式:
【0016】
【化2】

からなる群より選ばれる。
【0017】
一実施形態において、5'−三リン酸基アナログは下記式で表される。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Zは、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OR'およびR'から選択される(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)。ただし、5'−三リン酸基アナログは、5'−三リン酸基ではない。)
【0020】
一実施形態において、5'末端のヌクレオチドはGである。
【0021】
一実施形態において、5'末端のGは、GU、GCおよびGTから選択されるジヌクレオチドの一部である。
【0022】
一実施形態において、5'末端のヌクレオチドはGではない。例えば、5'末端のヌクレオチドはA、C、UおよびTから選択される。
【0023】
一態様では、本発明は、下記式:
【0024】
【化4】

【0025】
(式中、XはO、S、NHおよびCHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、O、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、XはOH、OR、NHおよびRから選択され(式中、Rは、C−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NHR'、BHおよびCHから選択される(式中、R'は、C−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)。)で表される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0026】
一実施形態において、YはそれぞれOである。
【0027】
一実施形態において、Xは、OHおよびO−フェニルから選択される。一実施形態において、XはOHである。
【0028】
一態様では、本発明は、下記式:
【0029】
【化5】

【0030】
(式中、XはOおよびNHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、XはOH、OR、NHおよびRから選択される(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)。)から選択される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0031】
一実施形態において、Xは、OHおよびO−フェニルから選択される。一実施形態において、XはOHである。
【0032】
一態様では、本発明は、下記式:
【0033】
【化6】

【0034】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、XはOH、OR、RおよびNHから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)、R1はHおよびC−Cアルキル基から選択され、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NHR'、BHおよびCHから選択される(式中、R'はC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)。)から選択される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0035】
一実施形態において、YはそれぞれOである。
【0036】
一実施形態において、XはOHおよびO−フェニルから選択される。一実施形態において、XはOHである。
【0037】
一態様では、本発明は、下記式:
【0038】
【化7】

【0039】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、Xおよび各Xはそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、BはHまたはグアニン、アデニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンから選択される核酸塩基である。)で表される5'末端を含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩を提供する。
【0040】
一実施形態において、YはそれぞれOである。
【0041】
一実施形態において、Xは、OHおよびO−フェニルから選択される。一実施形態において、XはOHである。
【0042】
以下、本発明の各態様において述べる。
【0043】
一実施形態において、ORNは、RURGY、GUAGU、GUUGB、GUGUG、GUGUU、G/C−U−A/C−G−G−C−A−C、UUGUGG、UGGUUG、GUGUGU、GGGUUU、CUGU、UUGU、CUUUおよびUUUUからなる群より選ばれる少なくとも1つの免疫賦活モチーフを含む(式中、Rはプリンを示し、Yは、ピリミジンを示し、Bは、G、C、TまたはUを示し、G/Cは、GまたはCを示し、A/Cは、AまたはCを示す)。
【0044】
一実施形態において、ORNは、NCUCANおよびUCAからなる群より選ばれる少なくとも1つの免疫賦活モチーフを含む(式中、NはC、AまたはGを示す)。
【0045】
一実施形態において、ORNはさらに、少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合を含む。一実施形態において、修飾されたヌクレオシド間結合はホスホロチオエートおよびホスホロジチオエートからなる群より選択される。一実施形態において、修飾されたヌクレオシド間結合はホスホロチオエートである。
【0046】
一実施形態において、ORNはさらに、少なくとも1つの修飾された糖残基を含む。一実施形態において、修飾された糖残基は、α−アラビノフラノース、α−D−リボース、β−D−キシロ−フラノース、α−L−リボース、2'−[O−(C−C)アルキル−O−(C−C)アルキル]−リボース、2'−アミノ−2'−デオキシリボース、2'−フルオロアラビノフラノース、2'−フルオロ−2'−デオキシリボース、2'−O−(C−C)アルキル−リボース、2'−O−(C−C)アルケニル−リボース、2'−O−メチルリボース、2'−O,4’−C−アルキレン架橋リボース(例えば、2'−O,4’−C−メチレン架橋リボース(LNA)および2'−O,4’−C−エチレン架橋リボース(ENA))およびβ−L−リボースからなる群より選ばれる。
【0047】
一実施形態において、ORNはさらに、少なくとも1つの修飾された核酸塩基を含む。一実施形態において、修飾された核酸塩基は、2,6−ジアミノプリン;2−アミノ−6−クロロプリン;2−アミノプリン;2−チオウラシル;4−チオウラシル;5−(C−C)−アルキルシトシン;5−(C−C)−アルキルウラシル;5−(C−C)−アルケニルシトシン;5−(C−C)−アルケニルウラシル;5−(C−C)−アルキニルシトシン;5−(C−C)−アルキニルウラシル;5−(ヒドロキシメチル)ウラシル;5−アミノウラシル;5−ブロモシトシン;5−ブロモウラシル;5−クロロシトシン;5−クロロウラシル;5−フルオロシトシン;5−フルオロウラシル;5−ヨードウラシル;5−ヒドロキシシトシン;5−メチルシトシン;5−メチルウラシル;N4−エチルシトシン;6−チオグアニン;7−デアザ−7−(C−C)−アルキニルグアニン;7−デアザ−7−置換グアニン;7−デアザ−7−置換プリン;7−デアザ−8−置換グアニン;7−デアザ−8−置換プリン;7−デアザグアニン;8−アザグアニン;8−アザプリン;8−ヒドロキシグアニン;8−ヒドロキシアデニン;ジヒドロウラシル;水素(脱塩基ヌクレオチド);ヒポキサンチン;N−ジメチルグアニン;シュードウラシル;および置換7−デアザプリンからなる群より選択される。
【0048】
一実施形態において、ORNはさらに、少なくとも1つの脱塩基ヌクレオチドを含む。
【0049】
一実施形態において、ORNは少なくとも1つのデオキシリボヌクレオチドを含む。
【0050】
一実施形態において、ORNは一本鎖である。
【0051】
一実施形態において、ORNは二本鎖である。
【0052】
一実施形態において、ORNは二本鎖で、相補鎖は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド以外の基を介して共有結合により互いに結合している。このような二本鎖ORNは、ヘアピン構造(またはステムループ構造ともいう)を含み、このような二本鎖ORNとして、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が例として挙げられる。短鎖ヘアピンRNA(shRNA)は、プロセシングを受けると、ループが除去され、二本鎖のRNAが残る。
【0053】
一実施形態において、ORNの3'末端は、別のオリゴヌクレオチドの3'末端とリンカーを介して結合している。
【0054】
一実施形態において、さらにORNは、ORNに結合した親油基を含む。一実施形態において、親油基は、コレステリル基、パルミチル基、ヘキサデシルグルセリル基、オクタデシルグルセリル基、ジヘキサデシルグルセリル基、ジオクタデシルグルセリル基および脂肪酸アシル基からなる群より選ばれる。一実施形態において、親油基は、ORNの3'末端に結合している。
【0055】
一実施形態において、ORNは、polyGドメインを含む。本明細書において、polyGドメインとは、Gヌクレオチドが少なくとも3つ連続した配列、より好ましくはGヌクレオチドが少なくとも4つ連続した配列を表し、また一実施形態においては、UUまたはTTジヌクレオチドを介して、Gヌクレオチドが少なくとも3つ連続した第1群と、Gヌクレオチドが少なくとも3つ連続した第2群とが結合している配列(すなわちGGGUUGGGまたはGGGTTGGG)を示す。一実施形態において、polyG配列によって、グアニン四重鎖(G−tetrad)が形成されうる。一実施形態において、polyGドメインは、Gを含有する、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、LNA−ヌクレオチド、ENA−ヌクレオチド、2'−O−アルキル−ヌクレオチド(例えば2'−O−メチル−ヌクレオチド)、2'−[O−(C−C)アルキル−O−(C−C)アルキル]−リボース、2'−アミノ−2'−デオキシリボース、2'−フルオロ−2'−デオキシリボヌクレオチドまたはこれらの任意の組み合わせにより構成される。一実施形態において、polyGドメインは、ORN中の5'末端以外の部分に存在する。一実施形態において、polyGドメインは、ORNの3'末端に存在する。
【0056】
一実施形態において、ORNは、溶液中で高次構造を形成することができる。一実施形態において、この高次構造は、グアニン四重鎖形成により容易になる。一実施形態において、この高次構造は、ワトソンクリックの塩基対形成により容易になる。
【0057】
一実施形態において、ORNはさらに、ORNの3'末端に結合したリン酸基またはリン酸基アナログを含む。
【0058】
一実施形態において、ORNはさらに、ORNの3'末端に2'−O−メチルヌクレオシドを含む。
【0059】
一実施形態において、ORNはさらに、ORNの3'末端に3'−O−メチルヌクレオシドを含む。
【0060】
一実施形態において、ORNはさらに、3'末端にpolyA配列を含む。一実施形態において、ORNの3'末端のpolyA配列は、3'−5'結合によってORNに結合している。一実施形態において、ORNの3'末端のpolyA配列は、2'−5'結合によってORNに結合している。polyA配列とは、Aヌクレオチドが少なくとも3〜100連続した配列である。例えば、一実施形態におけるpolyA配列は、AAAAAAAAAAAA(配列番号1)である。3'−5'結合によってORNの3'末端に結合しているpolyA配列の場合、一実施形態におけるpolyA配列は、Aヌクレオチドが10〜50連続した配列である。2'−5'結合によってORNの3'末端に結合しているpolyA配列の場合、一実施形態におけるpolyA配列は、Aヌクレオチドが3〜10連続した配列である。
【0061】
一実施形態において、ORNの長さは、2〜100ヌクレオチドである。
【0062】
一実施形態において、ORNの長さは、4〜40ヌクレオチドである。
【0063】
一実施形態において、ORNの長さは、6〜30ヌクレオチドである。
【0064】
一実施形態において、ORNは、UUGUUGUUGUUGUUGUUGUU(配列番号429)で表される配列を有する。
【0065】
一態様では、本発明は、本発明の単離オリゴリボヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、前記医薬組成物はさらに抗原を含む。
【0066】
一実施形態において、ORNは、細胞質もしくはリポソーム、または細胞質とリポソームの両方に送達するように製剤化される。一実施形態において、ORNは、核酸送達システムの一部として投与される。一実施形態において、核酸送達システムは、カチオン性脂質を含む。一実施形態において、核酸送達システムは、細胞の細胞質にORNを送達する。一実施形態において、核酸送達システムは、ORNを細胞のエンドソームに送達し、そこでORNは、TLR7、TLR8などの特定のTLRに接触できる。
【0067】
一態様では、本発明は、対象者の免疫応答を強化する方法を提供する。本発明の本態様における方法は、対象者の免疫応答を増強させるために、免疫応答の強化を必要とする対象者に、本発明のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与する工程を含む。
【0068】
一実施形態において、免疫応答には、インターフェロンα(IFN−α)、インターロイキン12(IL−12)およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれるサイトカインの産生が含まれる。
【0069】
一実施形態において、免疫応答は、Th1型免疫応答である。
【0070】
一実施形態において、対象者は、化学療法および/または治療上の放射線被曝によって免疫が抑制された状態にある。
【0071】
一実施形態において、対象者は、偶発的な放射線被曝によって免疫が抑制された状態にある。
【0072】
一態様において、本発明は、癌を発症した対象者を治療する方法である。本発明の本態様における方法は、癌を治療するために、対象者に本発明のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与する工程を含む。
【0073】
一態様では、本発明は、喘息以外のアレルギー疾患を有する対象者を治療する方法を提供する。本発明の本態様における方法は、アレルギー疾患を治療するために、対象者に本発明のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与する工程を含む。
【0074】
一態様では、本発明は、喘息を患う対象者を治療する方法を提供する。本発明の本態様における方法は、喘息を治療するために、対象者に本発明のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与する工程を含む。一実施形態において、喘息は、アレルギー性喘息である。
【0075】
一態様では、本発明は、感染症を患う対象者を治療する方法を提供する。本発明の本態様における方法は、感染症を治療するために、対象者に請求項A1〜F24のいずれか1項に記載のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与する工程を含む。一実施形態において、感染症はウイルス性感染症である。一実施形態において、感染症は、細菌性感染症である。
【0076】
一態様では、本発明は、抗原に対するワクチンを対象者に接種する方法を提供する。本発明の本態様における方法は、対象者に本発明のオリゴリボヌクレオチドの有効量と抗原とを投与する工程を含む。一実施形態において、抗原は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質、DNAワクチン、RNAワクチンおよびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0077】
一態様では、本発明は、本発明のORNの調製方法を提供する。本態様における一方法は、ORNを化学合成する工程を含む。
【0078】
一態様では、本発明は、本発明のORNの調製方法を提供する。本態様における一方法は、ORNを固体担体上で合成する工程を含む。
【0079】
一態様では、本発明は、本発明のORNの調製方法を提供する。本態様における一方法は、活性化剤で5’−一リン酸基を有するORNを活性化し、次いで、活性化ORNをピロリン酸塩またはピロリン酸塩アナログと反応させて三リン酸体または三リン酸アナログ体を生成する工程を含む。
【0080】
一態様では、本発明は、本発明のORNの調製方法を提供する。本態様における一方法は、固体担体上でORNを合成する工程;ORNの5’末端のヌクレオチドを適当な溶媒中、塩基の存在下、2−クロロ−4H−1,3,2−ベンゾジオキサ−ホスホリン−4−オンと反応させる工程;ORNをピロリン酸塩またはピロリン酸塩アナログと反応させる工程;ORNを酸化剤で酸化する工程;およびORNを脱保護して、三リン酸体または三リン酸アナログ体を生成する工程を含む。
【0081】
一実施形態において、塩基はジイソプロピルエチルアミンである。
【0082】
一実施形態において、溶媒はジクロロメタンである。
【0083】
一実施形態において、ピロリン酸塩またはピロリン酸塩アナログは、テトラ−n−ブチルアンモニウム塩である。
【0084】
一実施形態において、ピロリン酸塩またはピロリン酸塩アナログは、トリ−n−ブチルアンモニウム塩である。
【0085】
一実施形態において、酸化剤はヨウ素である。
【0086】
一実施形態において、酸化剤は過酸化物である。
【0087】
一実施形態において、酸化剤は硫化剤である。
【0088】
一実施形態において、酸化剤はボランである。
【0089】
一態様では、本発明は、医薬組成物を調製する方法を提供する。本態様における方法は、少なくとも1つの本発明のORNを、生理学的に許容される賦形剤または担体と混合する工程を含む。一実施形態において、担体はカチオン性脂質を含む。
【0090】
一態様では、本発明は、ターゲットRNAの相補的な配列を含む単離ORNを提供する。
【0091】
一実施形態において、ターゲットRNAはウイルスRNAである。
【0092】
一実施形態において、ターゲットRNAは腫瘍の原因遺伝子由来である。
【0093】
一態様では、本発明は、二本鎖RNAを構成する単離ORNであって、その二本鎖RNAの少なくとも1つの鎖がターゲットRNAに相補的である単離ORNを提供する。
【0094】
一実施形態において、ターゲットRNAはウイルスRNAである。
【0095】
一実施形態において、ターゲットRNAは腫瘍の原因遺伝子由来である。
【0096】
一実施形態において、二本鎖RNAのいずれの鎖も5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを有する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】オリゴリボヌクレオチド−5'−一リン酸の生成後の誘導体化により、オリゴリボヌクレオチド−5'−三リン酸を生成する反応を示す。
【図2】オリゴリボヌクレオチド−5'−三リン酸の固相合成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
5'末端に三リン酸基または修飾された三リン酸基を有するORNの化学合成は、これまで文献に記載されていない。5'−三リン酸基を有するORNは、T3、T7およびSp6 RNAポリメラーゼを用いてin vitro転写により調製できる。例えば、ORN−5'−三リン酸の調製は、T7 RNAポリメラーゼを用いてT7プロモーターを含む合成DNAを鋳型として行われてきた。Milligan et al. (1987) Nucleic Acids Res 15:8783−8。また、酵素を用いた調製は、少量でしか行われない。上記のRNAポリメラーゼは、修飾されていないヌクレオシド三リン酸基およびヌクレオシド−[α−S]−三リン酸基を受け取り、後者では、エナンチオマー的に純粋なホスホロチオエート修飾を施されたORN−5'−[α−S]−三リン酸が得られる。
【0099】
このようなポリメラーゼプロモーターおよびポリメラーゼにはさらなる制限がある。5'−ヌクレオチド(+1)はGである必要があり、また、5'末端から2番目のヌクレオチド(+2)は、GまたはAである必要がある。したがって、5'末端にピリミジンを有するORNは、in vitro転写によって調製することはできない(Promega Notes 94, August 2006)。さらに、酵素法は、治療用途で必要とされる大量のORN−5'−三リン酸を調製するのには不適であると考えられる。対照的に、修飾された三リン酸基を有するORNの化学合成は、あらゆる配列を提供できると同時に、治療用途に好適な規模で行なうことができる。
【0100】
原理的には、ORN−5'−三リン酸およびその誘導体の化学合成には2つの基本的な方法がある。まず一つには、標準的なオリゴヌクレオチド合成法により、ORNをORN−5'−一リン酸として合成した後必要であればこれを精製し、次いで対応するORN−5'−三リン酸に変換することができる。ORN−5'−一リン酸は、臭化シアン/イミダゾール、N−シアノイミダゾールまたはカルボジイミド(CDI)などの縮合剤により活性化され、次いでピロリン酸塩または修飾されたピロリン酸塩と反応することによって、対応するORN−5'−三リン酸誘導体になる。図1を参照のこと。
【0101】
あるいは、ORN−5'−三リン酸は固相担体上で合成することもできる。この反応経路の基礎となる方法は、元来、モノマーであるヌクレオシド−5'−三リン酸の合成用に報告されたものである。Ludwig and Eckstein (1989) J Org Chem 54:631−5。この合成経路は、その後、5'−三リン酸を有する短鎖DNAの合成に応用された。Lebedev AV et al. Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids (2001) 20(4−7):1403−9。
【0102】
この基礎的な方法は、本出願人によりさらに発展して、5'−三リン酸基を有するRNAだけでなく、修飾された5'−三リン酸基を有するRNAの合成法として応用されている。図2を参照のこと。ORNは、標準的なホスホラミダイトRNA合成法を用いて、高分子担体上で合成できる。最後のヌクレオチドを結合させた後、このヌクレオチドのジメトキシトリチル(DMT)基を除去し、これにより脱保護された5'−水酸基を、ジクロロメタン中で2−クロロ−4H−1,3,2−ベンゾジオキサ−ホスホリン−4−オンとジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)と反応させることにより三価サリチル亜リン酸基中間体が得られる。DIPEAのジクロロメタン溶液を使用することによって、Lebedevらの報告に記載されていたジオキサン/ピリジン(4:1)混合物を使用する場合より収量が高くなった。次いで、この反応中間体を、ピロリン酸塩(XはOである)または修飾されたピロリン酸塩(XはOではなく、例えばCH、CCl、NHまたはCFである)と反応させることによって、環状の5'−亜リン酸基に変換する。ピロリン酸塩としてテトラブチルアンモニウム塩を使用すると、トリブチルアンモニウム塩を使用する場合より、三リン酸基が高い収量で得られるようである。次いで、この環状の亜リン酸基を、ヨウ素/水、フェニルアセチルジスルフィド(PADS)またはボラン−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)錯体で酸化し、アンモニア/エタノールで処理することにより、それぞれ対応する三リン酸基(ZはOである)、α−チオ三リン酸基(ZはSである)またはα−ボラン三リン酸基(ZはBHである)が得られる。このアンモニア処理により、固相担体からORNが切断され、後のフッ化物処理により除去される2’−O−tert−ブチル−ジメチルシリル基以外の保護基がすべて除去される。
【0103】
ピロリン酸塩や酸化剤の種類によって、種々の修飾を施された多種類のORN−5'−三リン酸基アナログを調製できる。三リン酸基アナログの一部と、その調製の際に使用したピロリン酸塩および酸化剤を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
本発明は、5'末端のヌクレオチドに5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログが結合してなるオリゴリボヌクレオチド(ORN)を多数提供する。本明細書において、「オリゴリボヌクレオチド」とは、一般に2〜100のリボヌクレオチドおよび/またはリボヌクレオチドアナログからなる重合体を意味する。また、少なくとも1つのリボヌクレオチドアナログを含むオリゴリボヌクレオチドを、オリゴリボヌクレオチドアナログと呼ぶ。したがって、本発明は、5'−三リン酸基や5'−三リン酸基アナログは別として、従来のオリゴリボヌクレオチドや、オリゴリボヌクレオチドアナログであるオリゴリボヌクレオチドにも関する。
【0106】
別段の定めがある場合を除き、本明細書では「リボヌクレオチド」および「ヌクレオチド」は区別なく、リン酸基およびヘテロ環式核酸塩基(グアニン、アデニン、シトシンまたはウラシルなど)に結合したD−リボース糖で構成される分子を表す。塩基−糖ユニットはヌクレオシドと呼ばれ、塩基−糖−リン酸ユニットはヌクレオチドと呼ばれる。
【0107】
一実施形態において、オリゴリボヌクレオチドは直鎖の重合体である。一実施形態において、オリゴリボヌクレオチドは、少なくとも1つの5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを含む分岐鎖状の重合体である。
【0108】
一実施形態において、ORNは、5'末端のヌクレオチドに結合した5'−三リン酸基を有する。本明細書において、5'−三リン酸基は通常の意味であり、下記式で表される構造式を有する。
【0109】
【化8】

【0110】
式中のどのO基も水酸基(OH)と同義であることは当業者にとっては当然のことである。本実施形態におけるORNは、修飾されたヌクレオチドを少なくとも1つ含むオリゴリボヌクレオチドアナログであり、例えばT3、T7またはSp6RNAポリメラーゼを用いてin vitro転写を行うといった酵素法では調製できない。本明細書内に詳細に記載してある通り、修飾されたヌクレオチドに含まれる糖、リン酸基および/またはヘテロ環式核酸塩基は、天然のヌクレオチドG、A、CおよびUのそれらと比べて変更が加えられている。
【0111】
一実施形態において、ORNは、5'末端のヌクレオチドに結合した5'−三リン酸基アナログを有する。本明細書において、5'−三リン酸基アナログは本明細書に開示された構造を有し、5'−三リン酸基は除外される。本実施形態におけるORNは、少なくとも1つの修飾されたヌクレオチドを含んでもよいが、必ずしも必要ではない。したがって、本発明は、一実施形態において、5'−三リン酸基アナログの存在を除いては従来と同じであるオリゴリボヌクレオチドも提供する。別の実施形態において、本発明は、5'−三リン酸基アナログによってさらに修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログも提供する。一般に、T3、T7またはSp6 RNAポリメラーゼを用いてin vitro転写を行うといった酵素法では、5'−三リン酸基アナログを有する本発明のORNを調製できないことに留意されたい。
【0112】
5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログは、ORNの5'末端のヌクレオチドに結合している。本明細書において、「5'−三リン酸基」は通常の意味であり、ORNの5'末端のヌクレオチドの5’位の炭素と共有結合した三リン酸基(上に示す)を意味する。本明細書において、「5'−三リン酸基アナログ」は同様の意味を有し、ORNの5'末端のヌクレオチドの5’位の炭素と共有結合した三リン酸基アナログ(本明細書に開示)を意味する。ORNの5'末端のヌクレオチドとは、5'末端から3'末端へ向かう順序で示す時、ORNの一番目のヌクレオチドを意味する。また、+1に位置するヌクレオチドとも表される。
【0113】
一実施形態において、5'−三リン酸基アナログは、下記式で表される。
【0114】
【化9】

【0115】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、XおよびX(複数存在する場合は、各X)はそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、nは、0〜3の整数を示す。(ただし、nが0を示すのは、Xがイミダゾールである場合に限る。)
【0116】
ZおよびXに関して、式中のどのOH、SH、BHおよびOPOHもそれぞれO、S、BHおよびOPOと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。
【0117】
−C12アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの直鎖状の基(n−アルキル基)、または分岐鎖状の基(例えばイソプロピル、イソブチル、イソアミル、イソボルニル、イソメンチル、ターシャリ−ブチルなどのイソアルキル基)が挙げられ、C以上に関しては、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基も挙げられる。
【0118】
−C10アリル基としては、フェニル、ピリジル、ナチフル、キノリニルおよびイソキノリニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0119】
−C12アルケニル基としては、エチレニル、プロピレニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、シス−2−ブテニル、トランス−2−ブテニル、イソブテニル、シス−2−ペンテニル、トランス−2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、ヘキサジエニル(hexadienolyl)、ゲラニルおよびフィチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
−C12アルキニル基としては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ブチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、3,3−ジメチル−1−ブチニル、4−オクチニルおよび5−デシニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
−C22アルキルアリル基としては、ベンジル、フェニル、フェニル−2−エチルおよびフェニル−3−プロピルが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、R'はトコフェリル(C29アルキルアリル基)である。
【0122】
一実施形態において、ORNは、下記式で表される5'−三リン酸基もしくは5'−三リン酸基アナログが結合した5'末端ヌクレオシドまたは5'末端ヌクレオシドアナログを含む。
【0123】
【化10】

【0124】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、Xおよび各Xはそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、BはHまたはアデニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンから選択される核酸塩基である。)
【0125】
ZおよびXに関して、式中のどのOH、SH、BHおよびOPOHもそれぞれO、S、BHおよびOPOと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。C−C12アルキル基、C−C10アリル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基およびC−C22アルキルアリル基は、上記の通りである。
【0126】
一実施形態において、5'−三リン酸基アナログは、下記式で表される。
【0127】
【化11】

【0128】
(式中、XはO、S、NHおよびCHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、O、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、XはH、OH、OR、NHおよびRから選択され(式中、Rは、C−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、OH、SH、NHR'、BHおよびCHから選択される(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)。)
【0129】
ZおよびXに関して、式中のどのOH、SHおよびBHもそれぞれO、SおよびBHと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。C−C12アルキル基、C−C10アリル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基およびC−C22アルキルアリル基は、上記の通りである。
【0130】
一実施形態において、5'−三リン酸基アナログは、下記式:
【0131】
【化12】

【0132】
(式中、XはOおよびNHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、XはOH、OR、NHおよびRから選択される(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基より選択される)。)より選択される5'−三リン酸基アナログを表す。
【0133】
に関して、式中のどのOHもOと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。また、式中のどのCOOHもCOOと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。C−C12アルキル基およびC−C10アリル基は上記の通りである。
【0134】
一実施形態において、5'−三リン酸基アナログは、下記式:
【0135】
【化13】

【0136】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、ORNの5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、XはOH、OR、RおよびNHから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)、R1はHおよびC−Cアルキル基から選択され、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NHR'、BHおよびCHから選択される(式中、R'はC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)。)より選択される5'−三リン酸基アナログを表す。
【0137】
ZおよびXに関して、式中のどのOH、SHおよびBHもそれぞれO、SおよびBHと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。また、式中のどのCOOHもCOOと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。C−C12アルキル基およびC−C10アリル基は上記の通りである。
【0138】
一実施形態において、ORNは、下記式で表される5'末端を含む。
【0139】
【化14】

【0140】
(式中、XはO、SおよびNHから選択され、Xおよび各Xはそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、BはHまたはグアニン、アデニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンから選択される核酸塩基である。)
【0141】
ZおよびXに関して、式中のどのOH、SH、BHおよびOPOHもそれぞれO、S、BHおよびOPOと同義であることは、当業者にとっては当然のことである。C−C12アルキル基、C−C10アリル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基およびC−C22アルキルアリル基は、上記の通りである。
【0142】
本発明はまた、本発明の任意のORNの薬学的に許容される塩にも関する。本明細書において、「薬学的に許容される塩」とは、医薬分野で理解される通常の意味を有し、具体的には下記の酸より調製される塩であれば、制限なく含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸。一般に、薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩としても調製することができる。また、本発明のORNと特に関連のある薬学的に許容される塩には、具体的には下記の塩基より調製される塩が制限なく含まれる:アンモニア、ピリジン、ピペリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)−メタン、フェニルエチルベンジルアミン、スペルミン、スペルミジン、リジンおよびアルギニン。
【0143】
本発明のORNは、免疫賦活作用があり、免疫応答を強化することが望ましい場合は常に有用である。一実施形態において、本発明のORNは、特定のRNA配列モチーフとして表される免疫賦活モチーフを少なくとも1つ含む。このような免疫賦活RNA配列モチーフは、下記の配列のうち少なくとも1つを含む:RURGY(式中、Rはプリンを示し、Yはピリミジンを示す。);GUAGU;GUUGB(式中、BはG、C、TまたはUを示す。);GUGUG;GUGUU;G/C−U−A/C−G−G−C−A−C(式中、G/CはGまたはCを示し、A/CはAまたはCを示す。);UUGUGG;UGGUUG;GUGUGU;GGGUUU;CUGU;UUGU;CUUU;およびUUUU。RURGYとして、具体的にはGUAGUの他にも、GUGGC、GUGGU、AUGGC、AUGGU、GUAGC、AUAGCおよびAUAGUが挙げられるが、これらに限定されない。GUUGBとしては、具体的にGUUGG、GUUGC、GUUGUおよびGUUGTが挙げられる。G/C−U−A/C−G−G−C−A−Cとしては、具体的にGUAGGCAC、GUCGGCAC、CUAGGCACおよびCUCGGCACが挙げられる。免疫賦活RNA配列モチーフには、UCAおよびNCUCAN(式中、Nはそれぞれ独立して、C、AまたはGを示すが、Uではない。)も含まれる。NCUCANとしては、具体的にCCUCAC、CCUCAA、CCUCAG、ACUCAC、ACUCAA、ACUCAG、GCUCAC、GCUCAAおよびGCUCAGが挙げられる。
【0144】
本発明のORNの配列としては、下記の配列が挙げられるが、これらに限定されない。











【0145】
(式中、A、C、G、TおよびUはそれぞれ通常の意味であり、リボヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドを示す「d」が接頭詞として付されている場合を除く)を示し、Acrはアクリジンを示す;BはC、G、TまたはU(Aではない)を示す;BIOTはビオチンを示す;CHOLはコレステロールを示す;Eは7−デアザ−rGを示す;FAMはフルオレセインを示す;HEXはヘキサデシルグリセロールを示す;mAは2'−O−メチルアデノシンを示す;mCは2'−O−メチルシチジンを示す;mGは2'−O−メチルグアノシンを示す;mUは2'−O−メチルウリジンを示す;NはA、C、G、U、TまたはI(イノシン)を示す;TEGはトリエチレングリコールを示す;ヌクレオチド間の「−」はホスホジエステル結合を示す;ヌクレオチド間の「」はホスホロチオエート結合を示す。)
【0146】
さらに、本発明のORNの配列としては、下記の配列も挙げられるが、これらに限定されない。

(式中、A、C、G、TおよびUはそれぞれ通常の意味であり、リボヌクレオチドを示す。)
【0147】
一実施形態において、本発明は上述したORNの配列例のうち、1つ以上を除外してもよい。
【0148】
一実施形態において、本発明のORNは少なくとも1つの修飾されたヌクレオシド間結合を含む。一実施形態において、前記少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、免疫賦活RNA配列モチーフ内にも該モチーフと近接する部位にも存在しない。一実施形態において、修飾されたヌクレオシド間結合は、安定したヌクレオシド間結合である。安定したヌクレオシド間結合は、ホスホジエステルヌクレオシド間結合と比べて、生理的条件下におけるヌクレアーゼ分解に対して比較的抵抗性がある。
【0149】
一実施形態において、修飾されたヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート結合である。
【0150】
一実施形態において、修飾されたヌクレオシド間結合は、ホスホロジチオエート結合である。
【0151】
さらに他の実施形態において、修飾されたヌクレオシド間結合としては、メチルホスホネート、他のアルキルホスホネート、アリルホスホネート、メチルホスホロチオエート、他のアルキルホスホロチオエート、アリルホスホロチオエート、p−エトキシ、他のp−アルキルオキシおよびモルホリノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0152】
修飾されたヌクレオシド間結合と、修飾されていないヌクレオシド間結合(すなわちホスホジエステル)が任意に組み合わされたORNも、本発明に関わる。
【0153】
ホスホロチオエートなどの修飾された骨格はホスホラミダイト法またはH−ホスホネート法のいずれかを用いた自動合成法により合成することができる。アリルホスホネートおよびアルキルホスホネートは、例えば、米国特許4,469,863号に記載の通りにして合成することができる。また、アルキルホスホトリエステル(米国特許5,023,243号およびヨーロッパ特許092,574号に記載されるように、電荷を持つ酸素基がアルキル化されている)は、市販の試薬を用いて、固相合成に基づく自動合成法により調製できる。骨格に他の修飾および置換を導入する方法はUhlmann E et al. (1990) Chem Rev 90:544やGoodchild J (1990) Bioconjugate Chem 1:165に記載されている。
【0154】
また、本発明のORNは、通常とは異なるヌクレオチド間結合、具体的には5'−5'、3'−3'、2'−2'、2'−3'および2'−5'などのヌクレオチド間結合を有するORNも包含する。一実施形態において、このような通常とは異なる結合は、免疫賦活RNAモチーフには存在しないが、それ以外の部位であれば重合体内に1つ以上存在してもよい。遊離末端を有する重合体が、3'−3'ヌクレオチド間結合を1つ有する場合、遊離の5'末端を2つ有することになる。逆に、遊離末端を有する重合体が、5'−5'ヌクレオチド間結合を1つ有する場合、遊離の3'末端を2つ有することになる。
【0155】
本発明のORNは、分岐ユニットを介して結合している2つ以上のORNを含んでもよい。この時、ヌクレオチド間結合としては、3'−5'、5'−5'、3'−3'、2'−2'、2'−3'または2'−5'結合がありうる。これにより、命名法上の2'〜5'が選ばれる。しかし、天然でない糖基、例えば環を拡張した糖アナログ(例えばヘキサノース、シクロヘキセン、ピラノースなど)や、二環式または三環式の糖アナログが用いられる場合、名称はモノマーにおける命名法に従った呼び方に変わる。通常とは異なるヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル結合であってもよいが、ホスホロチオエートまたは本明細書に記載されている任意の修飾された結合であってもよい。以下の構造は、本発明の分岐RNAオリゴマーおよび分岐を有する修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログの一般的な構造を示し、分岐ユニットヌクレオチドにより分岐を形成している。ここで、Nu、NuおよびNuは、3'−5'、5'−5'、3'−3'、2'−2'、2'−3'または2'−5'結合を介して結合することができる。またRNAオリゴマーの分岐に、ヌクレオチド以外のリンカーおよび脱塩基スペーサーを使用してもよい。一実施形態において、Nu、NuおよびNuはそれぞれ同一または異なる免疫賦活RNAモチーフを示す。別の実施形態において、Nu、NuおよびNuは少なくとも1つの免疫賦活RNAモチーフと少なくとも1つの免疫賦活CpG DNAモチーフとを含む。
【0156】
本発明のORNは、ダブラー(doubler)またはトレブラー(trebler)のユニット(Glen Research, Sterling, VA)を含んでもよく、具体的には3'−3'結合を有する修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログが例として挙げられる。一実施形態におけるダブラーのユニットは、1,3−ビス−[5−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ペンチルアミド]プロピル−2−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトをベースにすることができる。一実施形態におけるトレブラーのユニットは、トリス−2,2,2−[3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルオキシメチル]エチル−[(2−シアノエチル)−(N,N−ジイソプロピル)]−ホスホラミダイトの組み込みをベースにすることができる。複数のダブラー、トレブラーまたは他のマルチプライヤー(multiplier)のユニットによって、修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログを分岐することにより、本発明のさらなる実施形態であるデンドリマーが形成される。分岐を有する修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログは、TLR3、TLR7、TLR8などの免疫賦活RNAの受容体とクロスリンクすることにより、分岐していないアナログと比べて際立った免疫作用を発揮することができる。さらに、分岐状アナログ、または分岐状ではないが多重に結合したアナログを合成することにより、RNAの分解を防いで安定化することが可能であり、また免疫作用が弱いか、部分的な効力しか持たないRNA配列に対し、治療上有用なレベルの免疫作用を発揮させることが可能となる。また修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログは、ペプチドを修飾する試薬またはオリゴヌクレオチドを修飾する試薬(Glen Research)より得られたリンカーユニットを含んでいてもよい。さらに、修飾されたオリゴリボヌクレオチドアナログは、ペプチド(アミド)結合により重合体に結合した、1以上の天然または非天然のアミノ酸残基を含んでいてもよい。
【0157】
3'−5'、5'−5'、3'−3'、2'−2'、2'−3'および2'−5'ヌクレオチド間結合は、直接的でも間接的であってもよい。この場合、直接的な結合とは、本明細書に開示されるようなリン酸基または修飾されたリン酸基による結合を意味し、介在するリンカー部分を持たない。介在するリンカー部分としては、例えば、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、脱塩基ヌクレオチド、ダブラーユニットまたはトレブラーユニットなどの有機基が挙げられる。一実施形態において、介在するリンカーは、リン酸基または修飾されたリン酸基をさらに含んでもよい。一実施形態において、介在するリンカーは、リン酸基や修飾されたリン酸基をさらには含まない。
【0158】
一実施形態において、本発明のORNは、少なくとも1つの修飾された糖残基を含んでもよい。一実施形態において、修飾された糖残基は、α−アラビノフラノース、α−D−リボース、β−D−キシロ−フラノース、α−L−リボース、2'−[O−(C−C)アルキル−O−(C−C)アルキル]−リボース、2'−アミノ−2'−デオキシリボース、2'−フルオロアラビノフラノース、2'−フルオロ−2'−デオキシリボース、2'−O−(C−C)アルキル−リボース、2'−O−(C−C)アルケニル−リボース、2'−O,4’−C−メチレン架橋リボース(locked nucleic acid、LNA)、2'−O,4’−C−エチレン架橋リボース(ENA)およびβ−L−リボースより選ばれる。LNAおよびENAに関してはそれぞれ、例えば、米国特許6,268,790号および6,770,748号、ならびにKoizumi Mら、(2003) Nucleic Acids Res 31:3267−73を参照のこと。
【0159】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのβ−リボースユニットを、炭素環式糖アナログおよび/または鎖式糖アナログ(例えばVandendriessche et al. (1993) Tetrahedron 49:7223に記載のもの)および/または二環式糖アナログ(例えばTarkov M et al. (1993) Helv Chim Acta 76:481に記載のもの)と置換してもよい。
【0160】
少なくとも1つのリボースユニットを、1,5−アンヒドロヘキシトール(Bouvere B et al. (1997) Nucleosides Nucleotides 16:973−6)またはD−アルトリトール(Allart B et al. (1999) Chemistry−A European Journal 5:2424−31)と置換したORNもまた本発明の実施形態である。別の実施形態において、ORNは少なくとも1つのD−D−リボピラノシルユニット(「ピラノシル−RNA」)を含む。Pitsch S et al. (2003) Helv Chim Acta 86:4270−363。また、これ以外にも、環が拡張された環状糖アナログまたは縮合環糖アナログでリボースを置換してもよい。
【0161】
別の実施形態において、リボースユニットの少なくとも1つの水酸基(好ましくは2’位の水酸基)に保護基を付してプロドラッグとする。このプロドラッグは体内で切断され、保護基が除去されたリボースを有するORNが遊離する。リボースの公知のプロドラッグとしては、例えば、対応するバリンエステル(Kong L et al. (2003) Antivir Chem Chemother 14:263−70)、ギ酸エステル(Repta A et al. (1975) J Pharm Sci 64:392−6)またはイソプロピルエーテル(Winkelmann E et al. (1988) Arzneimittelforschung 38:1545−8)が挙げられる。
【0162】
本発明のORNは、少なくとも1つの修飾された核酸塩基を含んでもよい。一実施形態において、修飾された核酸塩基は、2,6−ジアミノプリン、2−アミノ−6−クロロプリン、2−アミノプリン、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−(C−C)−アルキルシトシン、5−(C−C)−アルキルウラシル、5−(C−C)−アルケニルシトシン、5−(C−C)−アルケニルウラシル、5−(C−C)−アルキニルシトシン、5−(C−C)−アルキニルウラシル、5−(ヒドロキシメチル)ウラシル、5−アミノウラシル、5−ブロモシトシン、5−ブロモウラシル、5−クロロシトシン、5−クロロウラシル、5−フルオロシトシン、5−フルオロウラシル、5−ヨードウラシル、5−ヒドロキシシトシン、5−メチルシトシン、5−メチルウラシル、N4−エチルシトシン、6−チオグアニン、7−デアザ−7−(C−C)−アルキニルグアニン、7−デアザ−7−置換グアニン、7−デアザ−7−置換プリン、7−デアザ−8−置換グアニン、7−デアザ−8−置換プリン、7−デアザグアニン、8−アザグアニン、8−アザプリン、8−ヒドロキシグアニン、8−ヒドロキシアデニン、ジヒドロウラシル、水素(脱塩基ヌクレオチド)、ヒポキサンチン、N−ジメチルグアニン、シュードウラシルおよび置換7−デアザプリンからなる群より選択される。一実施形態において、修飾された核酸塩基は、免疫賦活RNA配列モチーフには含まれない。
【0163】
一実施形態において、ORNは少なくとも1つの脱塩基ヌクレオチドを含む。本明細書において、「脱塩基ヌクレオチド」とは、上述したヘテロ環式核酸塩基が水素原子で置換されたヌクレオチドを表す。
【0164】
いくつかの実施形態において、ORNは、親油基と共有結合している。実施形態によっては親油基がORNの他の部位に結合することもあるが、一般には3'末端に結合する。一実施形態において、ORNは3'末端を有し、この3'末端に親油基が共有結合している。一般に、親油基としては、コレステリル基、修飾されたコレステリル基、コレステロール誘導体、還元コレステロール、置換コレステロール、コレスタン、C16アルキル鎖、C18アルキル鎖、胆汁酸、コール酸、タウロコール酸、デオキシコレート、リトコール酸オレイル、コレン酸オレオイル、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロイドなどのイソプレノイド、ビタミンE(トコフェロール)などのビタミン類、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トリグリセリドなどの脂肪酸エステル、ピレン類、ポルフィリン類、テキサフィリン、アダマンタン、アクリジン類、ビオチン、クマリン、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、ジゴキシゲニン、ジメトキシトリチル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、シアニン色素(例えばCy3またはCy5)、ヘキスト33258色素、ソラレンまたはイブプロフェンが挙げられる。いくつかの実施形態において、親油基はコレステリル基、パルミチル基および脂肪酸アシル基より選ばれる。一実施形態において、親油基はコレステリル基である。本発明のORNが上記の親油基を1つ以上含むことにより、細胞による取り込みが促進されるだけではなく、ヌクレアーゼによる分解に対する、より以上の安定性が付与されると考えられる。本発明の一つのORNに2つ以上の親油基がある場合、各親油基はそれぞれ独立して選択してよい。
【0165】
一実施形態において、親油基は、ORNのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの2’位に結合しているか、ORNのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログのヘテロ環式核酸塩基に結合している。あるいは、親油基は、ORNのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの2’位にも、ORNのヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログのヘテロ環式核酸塩基にも結合している。親油基は、直接的、間接的に関わらず適切な結合によってORNと共有結合できる。一実施形態において、上記の結合は直接的で、エステルまたはアミドである。一実施形態において、上記の結合は間接的で、スペーサー部分、例えば1以上の脱塩基ヌクレオチド残基、トリエチレングリコール(スペーサー9)やヘキサエチレングリコール(スペーサー18)などのオリゴエチレングリコール、ブタンジオールなどのアルカンジオールを含む。
【0166】
一実施形態において、本発明のORNを、カチオン性脂質と組み合わせることは有利である。カチオン性脂質は、細胞内へのORNの送達、すなわちエンドソーム(TLR7やTLR8、TLR9も分布する)または細胞質(RIG−Iが分布する)へのORNの送達を補助すると考えられている。一実施形態において、カチオン性脂質はDOTAPメトサルフェート([N−(2,3−ジオレオイルオキシ)−1−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルサルフェート)である。一実施形態において、カチオン性脂質はDOTAPクロライド(N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド)である。DOTAPは、ORNをエンドソームに対して優先的に送達すると考えられるが、ORNの一部は細胞質にも送達される。その他の送達剤、例えばリポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチンなどは、DOTAPより効果的にORNを細胞質に送達すると考えられている。本発明のORNがTLR7/8を刺激するための適切なモチーフを有するとすれば、細胞質とエンドソームにそれぞれ送達されるORNの割合に応じて、TLR7/8とRIG−Iのいずれか一方を優先的に活性化することができる。
【0167】
本明細書において、「TLR7/8」は、TLR7単独、TLR8単独、またはTLR7とTLR8の両方を表すものとする。
【0168】
いくつかの態様において、本発明はさらに、活性成分として、少なくとも1つの本発明のORNまたはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0169】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。本発明の医薬組成物は、有効量の活性成分と、必要であれば他の治療薬とを薬学的に許容される担体に含む。「薬学的に許容される担体」とは、ヒトなどの脊椎動物への投与に適した、1以上の適合する固形または液状の充填剤、希釈剤またはカプセル化剤を意味する。「担体」とは、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、天然もしくは合成の有機または無機の成分を意味する。医薬組成物の構成成分は、所望の医薬的な効力を実質的に妨げるような相互作用が生じない方法で、それぞれ混合することができる。
【0170】
さらに本発明は、本発明の医薬組成物の製造方法に関する。該方法は、薬学的に許容される担体に、本発明の医薬組成物の活性成分を一定量加える工程を含む。本発明の医薬組成物の製造方法はさらに、本明細書に記載されているような特定の投与経路に適した医薬組成物を成型または処方する1以上の工程を含んでもよい。
【0171】
一実施形態において、本発明の医薬組成物はさらに抗原を含む。本明細書で用いられる「抗原」とは、自身に対する特異的な適応免疫応答を誘発できる分子を表す。TLRアゴニストやアジュバントも抗原に対する適応免疫応答を誘発することができるが、本明細書で用いられる抗原はこれらではない。
【0172】
抗原としては、細胞、細胞抽出物、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖類、多糖複合体、多糖類などの分子のペプチド類似体および非ペプチド類似体、低分子、脂質、糖脂質、炭水化物、ウイルスおよびウイルス抽出物、寄生虫などの多細胞生物およびアレルゲンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
「抗原」には、アレルゲン、癌抗原、微生物抗原、および自己免疫においては自己抗原(すなわち不適当な自己抗原)が包含される。
【0174】
アレルゲンについては後に説明する。
【0175】
本明細書で用いられる「癌抗原」は、腫瘍または癌細胞の表面に結合し、主要組織適合複合体(MHC)分子を介して抗原提示細胞(APC)の表面に提示されることにより、免疫応答を誘発することができるペプチドまたはタンパク質などの化合物である。癌抗原の中には、必ずしも発現しているわけではないが、正常細胞でコードされているものもある。このような癌抗原は、正常細胞で通常活動していない(すなわち、発現していない)もの、分化のある段階でのみ発現するもの、および胚性抗原や胎児性抗原などのように一時的に発現するものとして特徴づけられる。他にも、癌抗原としては、癌遺伝子(例えば活性化されたras癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば突然変異体p53)などの細胞内の突然変異遺伝子によりコードされるものや、内部欠失または染色体転座より生じる融合タンパク質が挙げられる。さらに、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスが持つウイルス遺伝子によりコードされる癌抗原もある。
【0176】
癌抗原は、癌細胞より調製することができる。例えばCohen et al. (1994) Cancer Research, 54:1055に記載の通りに癌細胞の粗抽出液を調製する方法、抗原を部分精製する方法、遺伝子組換え技術を用いる方法、または公知の抗原を新規合成する方法が挙げられる。癌抗原としては、遺伝子組換えで発現させた抗原、腫瘍もしくは癌の免疫原性部分、または腫瘍もしくは癌の全体が挙げられるが、これらに限定されない。このような抗原は、遺伝子組換えを用いて、または当技術分野で公知の他の方法により単離または調製できる。
【0177】
癌抗原としては、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼ−IV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、シクロフィリンb、結腸直腸腫瘍関連抗原(CRC)−−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)およびその免疫原性エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、aml1、前立腺特異性抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞レセプター/CD3−zeta鎖、腫瘍抗原のMAGEファミリー(例えばMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGEファミリー(例えばGAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、α−フェトプロテイン、E−カドヘリン、α−カテニン、β−カテニン、γ−カテニン、p120ctn、gp100Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、コネクシン37、Igイディオタイプ、p15、gp75、ガングリオシドGM2およびGD2、ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp−1、P1A、EBV核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲン・ホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−1、SSX−4、SSX−5、SCP−1、CT−7およびc−erbB−2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
特定の癌抗原に関連する癌としては、例えば、急性リンパ芽球性白血病(etv6;aml1;シクロフィリンb);B細胞リンパ腫(Igイディオタイプ);神経膠腫(E−カドヘリン;α−カテニン;β−カテニン;γ−カテニン;p120ctn);膀胱癌(p21ras);胆管癌(p21ras);乳癌(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2);子宮頸癌(p53;p21ras);結腸癌(p21ras;HER2/neu;c−erbB−2;MUCファミリー);結腸直腸癌(C017−1A/GA733;APC);絨毛膜癌腫(CEA);上皮細胞癌(シクロフィリンb);胃癌(HER2/neu;c−erbB−2;ga733糖タンパク質);肝細胞癌(α−フェトプロテイン);ホジキンリンパ腫(lmp−1;EBNA−1);肺癌(CEA;MAGE−3;NY−ESO−1);リンパ球性白血病(シクロフィリンb);黒色腫(Melan−A/MART−1;cdc27;MAGE−3;p21ras;gp100Pmel117;p15タンパク質;gp75;癌胎児性抗原;ガングリオシドGM2およびGD2);骨髄腫(MUCファミリー;p21ras);非小細胞肺癌(HER2/neu;c−erbB−2);上咽頭癌(lmp−1;EBNA−1);卵巣癌(MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2);前立腺癌(前立腺特異性抗原(PSA)およびその免疫原性エピトープPSA−1、PSA−2およびPSA−3;PSMA;HER2/neu;c−erbB−2);膵臓癌(p21ras;MUCファミリー;HER2/neu;c−erbB−2;ga733糖タンパク質);腎細胞癌(HER2/neu;c−erbB−2);子宮頸部および食道の扁平上皮癌(ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物);精巣癌(NY−ESO−1);およびT細胞白血病(HTLV−1エピトープ)が挙げられる。
【0179】
本明細書において「微生物抗原」とは、微生物由来の抗原で、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原および真菌抗原が含まれるが、これらに限定されない。このような抗原には、微生物本体のみならず、天然の分離物やそのフラグメントまたは誘導体も含まれる。また、天然の微生物抗原と同一または類似しており、その微生物に特異的な免疫応答を誘導する合成化合物も同様に含まれる。ある化合物が天然の微生物抗原に対する免疫応答(液性および/または細胞性)を誘導する場合、その化合物は、天然の微生物抗原に類似していると言える。このような抗原は、当技術分野において慣例的に用いられているものであり、当業者には周知である。
【0180】
細菌抗原の例は、当技術分野において周知であり、特定の菌(例えばジフテリア、ヒト型結核菌)に対するワクチン剤に含まれる免疫原性成分が挙げられる。ウイルス抗原の例は、当技術分野において周知であり、特定のウイルス(例えばB型肝炎ウイルス、麻疹(measlesまたはrubella)ウイルス、風疹(German measlesまたはrubella)ウイルス、おたふくかぜウイルス、ポリオウイルス)に対するワクチン剤に含まれる免疫原性成分が挙げられる。
【0181】
本発明のいくつかの態様は、対象者の免疫応答を調節するための、本発明のORNの使用方法に関し、同様に本発明の医薬組成物の使用方法にも関する。別のいくつかの態様において、本発明は、対象者の免疫応答を強化する方法を提供する。本明細書で用いられる「対象者の免疫応答を強化する」とは、一実施形態において対象者の免疫応答を誘導することを意味する。本明細書で用いられる「対象者の免疫応答を強化する」とは、一実施形態において対象者の免疫応答を増強することを意味する。したがって、本発明の方法による免疫応答の強化により、通常起こる(例えば本発明の方法と関係なく起こる)免疫応答より、強力な免疫応答がもたらされる。
【0182】
本明細書において、「免疫応答」は、免疫細胞または免疫細胞群を活性化して、これらの細胞を増殖させたり、エフェクター免疫機能を発揮させたり、あるいは免疫応答に関与する1つ以上の遺伝子産物を生成させるといった、自然免疫応答または適応免疫応答のあらゆる態様を表す。本明細書で用いられる「免疫細胞」は、自然免疫応答または適応免疫応答に関与しうるあらゆる骨髄由来の細胞を表す。免疫系の細胞としては、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ、顆粒細胞、Bリンパ球、形質細胞、Tリンパ球およびこれらの前駆細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、免疫細胞はTLR7を発現する免疫細胞である。一実施形態において、免疫細胞はTLR8を発現する免疫細胞である。一実施形態において、免疫細胞はRIG−Iを発現する免疫細胞である。RIG−Iは、多くの細胞の細胞質で発現していると考えられ、その発現は、例えば二本鎖RNA、IFN−γ、IL−1βなどにより誘導される。このため、5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを有するORNによってRIG−Iが活性化される細胞は、上述の免疫細胞に限定されない。さらに、5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを有するORNは、TLR7/8とRIG−Iをいずれも活性化できる、TLR7/8のためのヌクレオチドモチーフをさらに含むことが可能である。免疫賦活RNAモチーフによるTLR7/8の活性化が引き金となって、RIG−Iの発現が増大し、続いてRIG−Iが、ORN−5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログにより活性化され、これによりサイトカインが強力に誘導されることが考えられる。免疫応答に関与する遺伝子産物には、分泌物(例えば抗体、サイトカインおよびケモカイン)と同様に、免疫機能に特有の細胞内分子や細胞表面分子(例えば特定の分化抗原群(CD)、転写因子および遺伝子転写物)が含まれる。「免疫応答」は、単一細胞にも細胞群にも適用できる。
【0183】
抗体は、当技術分野において周知で、通常、種々のクラス(アイソタイプ)すなわちIgG、IgA、IgM、IgEおよびIgD、ならびにそれらのサブクラス(例えばIgG1、IgG2など)のいずれかに属する抗体を含む。
【0184】
サイトカインは当技術分野において周知で、通常、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)、腫瘍増殖因子β(TGF−β)およびケモカインを含む。インターフェロンは当技術分野において周知で、通常、IFN−α、IFN−β、IFN−γを含むが、これらに限定されない。インターロイキンは当技術分野において周知で、通常、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−12、IL−13、IL−15およびIL−18を含むが、これらに限定されない。ケモカインは当技術分野において周知で、いくつか例を挙げるならば、通常RANTES、MIP−1α、MIP−1βおよびIP−10を含むが、これらに限定されない。
【0185】
サイトカインの産生量は、当技術分野で周知の様々な方法、例えば生体応答アッセイ、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、細胞内の蛍光励起細胞分離(FACS)分析、逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)などのいずれを用いても評価することができる。
【0186】
一実施形態において、免疫応答は、CD25、CD80、CD86、CD154などの免疫細胞の活性化を示す細胞表面マーカーのアップレギュレーションを伴う。このようなマーカーの細胞表面における発現量を測定する方法は、当技術分野において周知で、FACS分析が含まれる。
【0187】
本発明の化合物または医薬組成物は、その有効量が対象者に投与される。本明細書において、「投与」とは、任意の適当な投与経路により、単独、または少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて投与することを意味する。一実施形態において、投与は全身投与であり、例えば経腸または非経口投与が挙げられる。経腸投与としては、経口投与が挙げられるが、これに限定されない。非経口投与は、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、鼻腔内(i.n.)、皮下(s.c.)、吸入、粘膜および局所投与を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、投与は局所投与である。局所投与は、治療部位への直接注射、例えば、病巣内注射を含むが、これに限定されない。
【0188】
本明細書で用いられる「対象者」は、哺乳動物を意味する。一実施形態において、対象者はヒトである。一実施形態において、対象者は、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、サルまたはヒト以外の霊長動物である。
【0189】
本明細書において、「有効量」とは、所望の生物学的作用を達成するのに十分な量である。したがって、一実施形態において、有効量は、対象者の免疫応答を強化するのに十分な量である。どの用途に関しても、特定の用途における有効量は、様々な要因によって変化しうるものである。以下、さらに詳細に説明する。
【0190】
一実施形態において、免疫応答は、IFN−αの産生を伴う。IFN−αは、初めて同定されて市販されたインターフェロンである。IFN−αは、構造的に類似したタンパク質約20種からなるファミリーを包含し、各タンパク質は別々の遺伝子によりコードされている。一般に、IFN−αは、単核の食細胞、および最近になって形質細胞様樹状細胞(pDC)として同定された、いわゆるインターフェロン産生細胞(IPC)から、その大部分が分泌されている。IFN−αの分泌量の測定は、例えば、サブタイプに特異的なELISA、またはサブタイプ非特異性ではあるがIFN−αに特異的なELISAによって実施できる。IFN−αの主要な作用は、ウイルス複製の抑制、細胞増殖の抑制、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞溶解能の活性化、および主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIのアップレギュレーションを含む。IFN−αは、特定の悪性腫瘍(例えば毛様細胞性白血病、皮膚T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、非ホジキンリンパ腫、AIDS関連型カポジ肉腫、黒色腫、多発性骨髄腫、腎細胞癌、膀胱癌、結腸癌、子宮頸部異形成など)やウイルス疾患(例えば慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、性器疣贅(パピローマウイルス)など)を含む様々な疾病の治療に有用であることが報告されている。IFN−αの種々の組換え体は、ROFERON(登録商標)−A(IFN−α2a;ロシュ)およびINTRON(登録商標) A(IFN−α2b;シェーリング)などの名称で、市販品として入手可能である。
【0191】
一実施形態において、免疫応答は、IL−12の産生を伴う。IL−12は、細胞内の微生物に対して起こる初期の自然免疫応答の主要なメディエータであると同時に、細胞性免疫、すなわちこのような微生物に対する適応免疫応答における重要な誘発因子でもある。IL−12は主として、ナチュラルキラー細胞とヘルパーT細胞双方からのインターフェロンγ(IFN−γ)および腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の誘導に関与する。またIL−12は、抗原活性化を受けて増殖するナチュラルキラー細胞とヘルパーT細胞の増殖速度を上昇させる。さらに、IL−12の存在下で、NK細胞とCD8細胞溶解性T細胞の細胞溶解能が増大する。IL−12は、IFN−γの分泌や細胞性免疫応答の進行に向けて、ナイーブCD4T細胞のTヘルパ−1(Th1)表現型への分化を促すという特別な機能を有する。Hsieh CS et al. (1993) Science 260:547−9。
【0192】
一実施形態において、本発明の方法によって強化される免疫応答は、Th1型免疫応答である。本明細書において、「Th1型免疫応答」とは、Th1の特徴が支配的な免疫応答を意味する。この免疫応答の特徴は、IFN−γ、IL−12、IL−18、IgG1(ヒト)またはIgG2a(マウス)および細胞性免疫のうち少なくとも1つが存在することである。一実施形態におけるTh1型免疫応答は、Th1免疫応答である。逆に、Th2型免疫応答の特徴は、IL−4、IL−5、IL−13、IgEおよび体液性免疫のうち少なくとも1つが存在することである。Th1およびTh2の免疫応答は、対抗制御していることが当技術分野において認識されており、Th1免疫応答がTh2免疫応答をダウンレギュレートし、Th2免疫応答がTh1免疫応答をダウンレギュレートする。このように、Th1型免疫応答の亢進またはTh2様免疫応答の抑制が望ましい場合は常に、本発明の医薬組成物および方法は特に有用である。
【0193】
一実施形態において、治療される対象者は免疫抑制状態にある。免疫抑制とは、適当な免疫刺激に対して効果的な免疫応答を起こす能力が不都合なほど弱いかまたは欠落している状態を言う。先天性および後天性免疫不全症を含む免疫抑制には、種々の要因や条件が関与している。先天性免疫不全症は、重症複合免疫不全症(SCID)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)欠損症、X連鎖無γグロブリン血症、Ig重鎖欠損症、ディ・ジョージ症候群、選択的Igアイソタイプ欠損症、X連鎖高IgM症候群、分類不能型免疫不全症、X連鎖リンパ増殖症候群、裸リンパ球症候群、抗原プロセシング関連トランスポーター(TAP)欠損症、ヴィスコット−オールドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、慢性肉芽腫症、白血球粘着不全症−1、白血球粘着不全症−2、およびチェディアック−東症候群などの種々の形態を含むが、これらに限定されない。後天性免疫不全症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、タンパク質カロリー栄養失調、熱傷、癌、骨髄移植、拒絶反応を抑制する免疫抑制剤、その他の医薬品、化学療法および放射線照射に関係するものを含む。
【0194】
一実施形態において、治療される対象者は、化学療法および/または治療上の放射線被曝が原因の免疫抑制状態にある。化学療法とは、癌を治療するために化学療法剤を投与することを意味する。多くの化学療法剤は、骨髄細胞に毒性作用をもたらすことにより免疫抑制を誘導することが当技術分野において知られている。化学療法剤としては、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、非含糖クロロエチルニトロソ尿素、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン、メグラミンGLA、バルルビシン、カルムスタインおよびポリフェルポサン、MMI270、BAY12−9566、RASファメシル転移酵素阻害剤、ファメシル転移酵素阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメトレキソール(Lometexol)、グラモレック、CI−994、TNP−470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトロキサントロン、メタレット/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH−4556、CS−682、9−AC、AG3340、AG3433、インセル/VX−710、VX−853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マーミスタット、BB2516/マーミスタット、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナールDP2202、FK317、ピシバニール/OK−432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロマイド、エバセット/リポソーム型ドキソルビシン、ユータキサン/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU−077/シスプラチン、HMR1275/フラボピリドール、CP−358(774)/EGFR、CP−609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS−182751/経口プラチナ、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミゾール/レバミゾール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプト/レバミゾール、カンプトサル/イリノテカン、トミュデックス(Tumodex)/ラルチトレキセド(Ralitrexed)、ロイスタチン/クラドリビン、パキセクス/パクリタキセル、ドキシル/リポソーム型ドキソルビシン、カエリックス/リポソーム型ドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルマルビシン/エピルビシン、デポサイト、ZD1839、LU79553/ビス−ナフタルイミド、LU103793/ドラスタチン(Dolastain)、カエリックス/リポソーム型ドキソルビシン、ジェムザール/ゲムシタビン、ZD0473/アノルメド、YM116、ヨウ素種、CDK4阻害剤、CDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド、イフェ/メスナ/イホスファミド(Ifosamide)、ヴァモン/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プランチノール/シスプラチン、ベプシド/エトポシド、ZD9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサンアナログ、ニトロソ尿素、メルファランやシクロフォスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル(Chlorombucil)、塩酸シタラビン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、酢酸ロイプロリド(LHRH放出因子アナログ)、ロムスチン(CCNU)、塩酸メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(オペプリム:o.p’−DDD)、塩酸ミトキサントロン、オクトレオチド、プリカマイシン、塩酸プロカルバジン、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサール−ビス−グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)および硫酸ビンデシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0195】
治療上の放射線被曝は、癌などの疾患を治療するために、全身または体の特定の部位に向けられるまたは送達される所定量の電離放射線を適用することを意味する。このような放射線被曝には、例えば、X線、γ線(例えばコバルト60を線源とする)、粒子線(例えば電子ビーム放射線)などの外部放射線照射;内部放射線治療(近接照射療法(例えばヨウ素種));および全身の放射線治療(例えばヨウ素131およびストロンチウム89)が含まれる。
【0196】
一実施形態において、治療される対象者は、偶発的な放射線被曝が原因の免疫抑制状態にある。本明細書において、偶発的な放射線被曝は、治療上の放射線被曝以外のあらゆる放射線被曝である。一実施形態において、偶発的な放射線被曝は、例えば核兵器の爆発などによりコントロールできない電離放射線が発生した結果である。
【0197】
本発明のORNは、アジュバント活性を有する。従って、いくつかの態様において、本発明は、抗原に対するワクチンを対象者に接種する方法に関する。一態様において、抗原に対するワクチンを対象者に接種する方法は、対象者に本発明のORNの有効量と抗原とを投与する工程を含む。一態様において、抗原に対するワクチンを対象者に接種する方法は、対象者に本発明のORNの薬学的に許容される塩の有効量と抗原とを投与する工程を含む。抗原は上述した通りで、いくつかの実施形態においては、細菌抗原、ウイルス抗原および癌抗原が挙げられる。投与は、抗原および本発明の化合物に関して任意の適切な経路(複数可)で実施される。一実施形態において、抗原および本発明の化合物を同時に投与するが、例えば、一つの調製物として投与してもよく、または別々の調製物として実質的に同時に投与してもよい。別々の調製物を実質的に同時に投与する場合、個々の調製物を同一または異なる投与経路により同一または異なる部位に投与することができる。一実施形態において、抗原および本発明の化合物を実質的に同時には投与しない。例えば、一実施形態において、抗原を投与する前に、本発明の化合物を投与する。一実施形態において、本発明の化合物を投与する前に、抗原を投与する。抗原の投与時期と本発明の化合物の投与時期は、分、時間もしくは日単位で、または最大1週間間隔をあけることができる。個々の構成成分(すなわち抗原および本発明の化合物)は、同一または異なる投与経路により同一または異なる部位に投与できる。
【0198】
ワクチン接種の投与経路としては、筋肉内、皮下および粘膜が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明の化合物は静脈内に投与される。
【0199】
本発明のこの態様によれば、一実施形態において、対象者への抗原の投与量は、抗原単独で防御免疫を誘導する際の有効量より少ない。しかし、この量の投与であっても、本発明の化合物の投与と組み合わせることによって、防御免疫の誘導すなわち抗原に対するワクチンの対象者への接種に有効である。
【0200】
いくつかの態様において、本発明は癌を発症した対象者を治療する方法に関する。一態様において、癌を発症した対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNを有効量投与する工程を含む。一態様において、癌を発症した対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNの薬学的に許容される塩を有効量投与する工程を含む。
【0201】
本明細書において、「治療する」または「治療」とは、疾患もしくは症状を有する対象者において、その疾患もしくは症状を予防、改善または解消することを意味する。一実施形態において、「治療する」または「治療」とは、疾患もしくは症状を有する対象者において、その疾患もしくは症状を改善または解消することを意味する。
【0202】
癌の場合、いくつかの非限定的実施形態において、治療とは、腫瘍(転移を含む)のサイズを縮小すること、癌の増殖速度もしくは広がる速度を遅くするか広がる範囲を狭くすること、癌の寛解をもたらすこと、または癌の治癒をもたらすことを意味する場合がある。
【0203】
「癌を発症した対象者」とは、癌の少なくとも1つの客観的症状を呈する対象者である。
【0204】
本明細書で用いられる「癌」とは、細胞が無制限に増殖し、生体内の臓器やシステムの通常の機能を妨げるものを表す。癌がもとの位置より移動して重要な臓器に転移すると、癌細胞に侵された臓器の機能不全により、最終的には対象者が死亡することもある。白血病などの造血器癌は、対象者の正常な造血コンパートメントを徹底的に破壊する能力を持ち、その結果(貧血、血小板減少症および好中球減少症といった形で)造血障害をもたらし、最終的に死に至らしめる。
【0205】
癌としては、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳などの中枢神経系(CNS)に発生する癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛膜癌腫;結腸および直腸癌;結合組織に発生する癌;消化器系癌;子宮体癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌;上皮内腫瘍;腎臓癌;喉頭癌;毛様細胞性白血病を含む白血病;肝臓癌;肺癌(例えば小細胞肺癌や非小細胞肺癌);ホジキンリンパ腫や非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫;黒色腫;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(例えば唇、舌、口および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;腎臓癌;呼吸器系癌;肉腫;皮膚癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮癌;泌尿器系の癌などの癌腫および肉腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
転移は、原発腫瘍の癌細胞が身体の他の部位に広がり、原発腫瘍とは異なる部位に癌細胞が生じることを言う。原発腫瘍塊の診断時に、対象者は転移の有無についてチェックされる場合がある。転移はほとんどの場合、特有の症状の診察に加えて、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、コンピューター断層撮影(CT)スキャン、血液検査および血小板数測定、肝機能検査、胸部X線撮影ならびに骨スキャンをそれぞれ単独で行なうか、または併用することによって検出される。
【0207】
一実施形態において、癌は黒色腫(原発性または転移性)である。一実施形態において、癌は乳癌である。一実施形態において、癌は肺癌である。一実施形態において、癌は前立腺癌である。一実施形態において、癌は結腸癌である。一実施形態において、癌は毛様細胞性白血病である。
【0208】
一実施形態において、癌を発症した対象者を治療する方法は、対象者に癌抗原を投与することをさらに含む。一実施形態において、癌抗原および本発明の化合物を同時に投与するが、例えば、一つの調製物として投与してもよく、または別々の調製物として実質的に同時に投与してもよい。別々の調製物を実質的に同時に投与する場合、個々の調製物を同一または異なる投与経路により同一または異なる部位に投与することができる。一実施形態において、癌抗原および本発明の化合物を実質的に同時には投与しない。例えば、一実施形態において、癌抗原を投与する前に、本発明の化合物を投与する。一実施形態において、本発明の化合物を投与する前に、癌抗原を投与する。癌抗原の投与時期と本発明の化合物の投与時期は、分、時間もしくは日単位で、または最大1週間間隔をあけることができる。個々の構成成分(すなわち癌抗原、本発明の化合物)を、同一または異なる投与経路により同一または異なる部位に投与できる。
【0209】
いくつかの態様において、本発明は、感染症を患う対象者を治療する方法に関する。一態様において、感染症を患う対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNを有効量投与する工程を含む。一態様において、感染症を患う対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNの薬学的に許容される塩を有効量投与する工程を含む。
【0210】
感染症の場合、いくつかの非限定的実施形態において、治療とは、感染症の少なくとも1つの症状を緩和すること、感染症の期間を短縮すること、感染症の広がる速度を遅くするか広がる範囲を狭くすること、または感染症を治癒させることを意味する。
【0211】
本明細書において、「感染症」とは、感染性の微生物または感染病原体が宿主の表面、局所または全身に侵入することにより発生する感染性の疾患を意味する。「感染症を患う対象者」とは、感染症の少なくとも1つの客観的症状を呈する対象者である。感染性の微生物および感染病原体は、ウイルス、細菌類、寄生虫および真菌類を含む。ウイルス感染は、ウイルスが原因の感染症を意味する。細菌感染は、細菌類が原因の感染症を意味する。
【0212】
ヒトで確認されているウイルスとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:レトロウイルス科(例えばヒト免疫不全ウイルス、例えばHIV−1(すなわちHDTV−III、LAVEまたはHTLV−III/LAVとも称される)、またはHIV−III、および他の単離株、例えばHIV−LP);ピコルナウイルス科(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス科(例えば胃腸炎の原因菌);トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えばデング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロナウイルス科(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、おたふくかぜウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブニヤウイルス科(例えばハンターンウイルス、ブニヤウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ビルナウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(1型および2型単純疱疹ウイルス(HSV)、水痘帯状ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(例えばアフリカ豚コレラウイルス);および未分類ウイルス(例えばデルタ肝炎の原因ウイルス(不完全なウイルスで、B型肝炎ウイルスに付随すると考えられている)、非A型肝炎や非B型肝炎の原因ウイルスなど(クラス1=経口感染;クラス2=非経口感染(すなわちC型肝炎);ノーウォークウイルスおよびその関連ウイルス、およびアストロウイルス)。
【0213】
グラム陽性細菌類としては、パスツレラ属、ブドウ球菌属およびストレプトコッカス属が挙げられるがこれらに限定されない。グラム陰性細菌類としては、大腸菌属、シュードモナス属およびサルモネラ属が挙げられるがこれらに限定されない。感染性の細菌類としては、具体的に、ヘリコバクターピロリ菌、ボレリア・ブルグドルフェリ菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、マイコバクテリア属(例えばM. tuberculosis, M. avium, M. intracellulare, M. kansasii, M. gordonae)、黄色ブドウ球菌、淋菌、髄膜炎菌、リステリア菌、化膿連鎖球菌(A群溶連菌)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(B群溶連菌)、連鎖球菌(緑色連鎖球菌)、大便連鎖球菌、ストレプトコッカス・ボビス、連鎖球菌(嫌気性属)、肺炎連鎖球菌、病原性のカンピロバクター菌属、腸球菌属、インフルエンザ菌、炭疽菌、ジフテリア菌、コリネバクテリア属、ブタ丹毒菌、ウェルシュ菌、破傷風菌、エンテロバクター・アエロゲネス、肺炎桿菌、パスツレラ・マルトシダ、バクテロイデス属、バクテロイデス・フラギリス、フソバクテリウム・ヌクレアタム、モニリホルム連鎖桿菌、梅毒トレポネーマ、フランベジアトレポネーマ、レプトスピラ菌、リケッチアおよびアクチノマイセス・イスラエリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
菌類としては、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、コクシジオイデス・イミチス、ブラストミセス・デルマティティディス、クラミジア・トラコマーティス、カンジダ・アルビカンス、ニューモシスチス・カリニ、アスペルギルスが挙げられる。
【0215】
他の感染性の生物(すなわち原生生物)としては、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、三日熱マラリア原虫などのマラリア原虫、およびトキソプラスマが挙げられる。血液媒介性の寄生虫および/または組織寄生虫としては、マラリア原虫、バベシア・ミクロチ、バベシア・ディバージエンス、熱帯リーシュマニア、リーシュマニア属、ブラジルリーシュマニア、ドノヴァンリーシュマニア、ガンビアトリパノソーマやローデシアトリパノソーマ(アフリカ睡眠病)、クルーズトリパノソーマ(シャガス病)およびトキソプラスマが挙げられる。
【0216】
他の医学的に関連する微生物および感染病原体に関しては、例えば、C.G.A Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983などの文献に広範囲に記載されている。その内容はすべて参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0217】
いくつかの態様において、本発明は、アレルギー疾患を有する対象者を治療する方法に関する。一態様において、アレルギー疾患を有する対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNを有効量投与する工程を含む。一態様において、アレルギー疾患を有する対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNの薬学的に許容される塩を有効量投与する工程を含む。
【0218】
アレルギー疾患の場合、いくつかの非限定的実施形態において、治療とは、アレルギー疾患の少なくとも1つの症状の発現を防ぐこと、アレルギー疾患の少なくとも1つの症状を緩和すること、またはアレルギー疾患の期間を短縮することを意味する。また、アレルギー疾患の場合、非限定的な一実施形態において、治療とは、アレルギー疾患の少なくとも1つの症状の発現頻度を減らすことを意味する。
【0219】
本明細書において、「アレルギー疾患」とは、物質(アレルゲン)に対する後天性の過敏症を表す。アレルギー疾患を有する対象者は、アレルゲンに曝露されたか、アレルゲンと接触した結果、アレルギー反応の少なくとも1つの客観的症状を呈する対象者である。このようにアレルギー性疾患は、多くの場合状況によって左右されるものだが、アレルギー疾患を有する対象者は、常にアレルゲンに応答する準備ができている。ただし、アレルギー疾患を有する対象者は、本発明の方法によって治療されている時に、アレルギー反応の少なくとも1つの客観的症状を必ずしも呈している必要はない。
【0220】
アレルギー疾患としては、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻風邪、花粉症、アレルギー性喘息、蕁麻疹(じんましん)、食物アレルギーおよびその他のアトピー性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0221】
一実施形態において、アレルギー疾患はアレルギー性喘息である。本明細書において、「喘息」は通常の意味であり、炎症、気道の狭窄や吸入された物質に対する気道の反応性亢進に特徴づけられる呼吸器系の障害を意味する。本明細書において、「アレルギー性喘息」とは、アレルゲンに敏感な対象者がアレルゲンと接触することによって起こる喘息を意味する。アレルギー性喘息は、原因となるアレルゲンの正体がわからなくても、診断することができる。アレルギー性喘息は、喘息におけるごく一般的な形態であるが、本発明の化合物および医薬組成物は、アレルギー性喘息以外に、他の形態の喘息(例えば上気道感染症に関連する喘息、運動誘発性喘息、冷気(温度)誘発性喘息など)の治療にも有用であると考えられる。
【0222】
一実施形態において、アレルギー疾患はアレルギー性喘息を含まない。この実施形態は、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻風邪、花粉症、蕁麻疹(じんましん)、食物アレルギーおよびこれらの組み合わせなど、喘息以外のアレルギー疾患を含むが、これらに限定されない。
【0223】
一実施形態において、アレルギー疾患を有する対象者を治療する方法は、対象者にアレルゲンを投与することをさらに含む。
【0224】
本明細書で用いられる「アレルゲン」とは、IgEの産生を特徴とする免疫応答を誘発しうる分子である。またアレルゲンは、アレルゲンに敏感な対象者においてアレルギー反応または喘息性反応を引き起こしうる物質である。このように、本発明において、アレルゲンとは、IgE抗体を介するアレルギー反応を引き起こしうる特定の種類の抗原を意味する。
【0225】
アレルゲンのリストに含まれる物質は非常に多く、花粉、昆虫毒、動物鱗屑、真菌胞子および医薬品(例えばペニシリン)などが挙げられる。動物および植物由来の天然アレルゲンとしては、以下の属に特異的なタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。イヌ属(Canis familiaris);ヒョウヒダニ属(例えばコナヒョウヒダニ);ネコ属(Felis domesticus);ブタクサ属(ブタクサ);ドクムギ属(例えばホソムギおよびネズミムギ);スギ属(スギ);アルタナリア属(ナシ黒斑病菌);ハンノキ属;ハンノキ属(セイヨウヤマハンノキ);カバノキ属(シダレカンバ);コナラ属(ホワイトオーク);オリーブ属(オリーブ);ヨモギ属(ハタヨモギ);オオバコ属(例えばヘラオオバコ);ヒカゲミズ属(例えばParietaria officinalisおよびカベイラクサ);チャバネゴキブリ属(例えばチャバネゴキブリ);ミツバチ属(例えばApis multiflorum);イトスギ属(例えばホソイトスギ、アリゾナイトスギおよびモントレーイトスギ);ビャクシン属(例えばJuniperus sabinoides、Juniperus virginiana、Juniperus communisおよびJuniperus ashei);クロベ属(例えばコノテガシワ);ヒノキ属(例えばヒノキ);ワモンゴキブリ属(例えばワモンゴキブリ);カモジグサ属(例えばシバムギ);ライムギ属(例えばライムギ);コムギ属(例えばコムギ);カモガヤ属(例えばオーチャードグラス);ウシノケグサ属(例えばヒロハウシノケグサ);イチゴツナギ属(例えばナガハグサおよびコイチゴツナギ);カラスムギ属(例えばマカラスムギ);シラゲガヤ属(例えばシラゲガヤ);ハルガヤ属(例えばケナシハルガヤ);オオカニツリ属(例えばオオカニツリ);ヌカボ属(例えばコヌカグサ);アワガエリ属(例えばオオアワガエリ);クサヨシ属(例えばクサヨシ);スズメノヒエ属(例えばアメリカスズメノヒエ);モロコシ属(例えばセイバンモロコシ);およびスズメノチャヒキ属(例えばコスズメノチャヒキ)。
【0226】
一実施形態において、アレルゲンおよび本発明の化合物を同時に投与するが、例えば、一つの調製物として投与してもよく、または別々の調製物として実質的に同時に投与してもよい。別々の調製物を実質的に同時に投与する場合、個々の調製物を同一または異なる投与経路により同一または異なる部位に投与することができる。一実施形態において、アレルゲンおよび本発明の化合物を実質的に同時には投与しない。例えば、一実施形態において、アレルゲンを投与する前に、本発明の化合物を投与する。一実施形態において、本発明の化合物を投与する前に、アレルゲンを投与する。アレルゲンの投与時期と本発明の化合物の投与時期は、分、時間もしくは日単位で、または最大1週間間隔をあけることができる。個々の構成成分(すなわちアレルゲン、本発明の化合物)を、同一または異なる投与経路により同一または異なる部位に投与できる。
【0227】
いくつかの態様において、本発明は、喘息を患う対象者を治療する方法に関する。一態様において、喘息を患う対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNを有効量投与する工程を含む。一態様において、喘息を患う対象者を治療する方法は、対象者に本発明のORNの薬学的に許容される塩を有効量投与する工程を含む。
【0228】
喘息の場合、いくつかの非限定的実施形態において、治療とは、喘息の少なくとも1つの症状の発現を防ぐこと、喘息の少なくとも1つの症状を緩和すること、喘息発作の持続時間を短縮することを意味する。また、喘息の場合、非限定的な一実施形態において、治療とは、喘息の少なくとも1つの症状の発現頻度を減らすことを意味する。
【0229】
一実施形態において、喘息はアレルギー性喘息である。
【0230】
本発明のORNは、免疫応答を賦活すると同時に、特定の標的遺伝子の発現を阻害するためにも用いることができる。ORN配列は対応する標的配列に基づいて選択される。標的配列は、シークエンシングによって、または遺伝子などの核酸配列データベースから得られる。したがって、2つの作用機序を有するORNを生成することができる。例えば、疾患の原因遺伝子の発現を抑えるとともに、RIG−IまたはTLR7/8の活性化により免疫賦活をもたらすアンチセンスRNA阻害剤などを生成できる。アンチセンス配列とは標的配列に相補的な配列である。したがって、例えば、ウイルスRNAに対するORN配列を選択することができる。例として、C型肝炎ウイルス(HCV)RNA、例えばHCVの配列内リボソーム進入部位(IRES)に相補的なアンチセンス配列が挙げられる。
ウイルスRNA 5' GAGCACGAAUCCUAAACCUCAAAGA 3'(配列番号506)
アンチセンス 5' UCUUUGAGGUUUAGGAUUCGUGCUC 3'(配列番号507)
【0231】
このアンチセンス鎖が5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを有する場合、RIG−Iおよび/またはTLR7/8の活性化により強力な免疫賦活を誘導しながら、HCVの複製を抑制することが期待される。
【0232】
低分子干渉RNA(siRNA)は遺伝子発現の抑制に用いられる。Dorsett Y et al. (2004) Nat Rev Drug Discov 3:318−29。本発明のORNは、二本鎖の少なくとも1つの鎖が5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを含む二本鎖siRNAとしても用いることができる。二本鎖siRNAは、平滑末端型でも突出末端型でもよい。例えば、C型肝炎の平滑末端型siRNAとしては、「ウイルスRNA」として上記した配列を有するセンス鎖と、「アンチセンス」として上記した配列を有するアンチセンス鎖とを有するものが挙げられる。
【0233】
また、上記センス鎖とアンチセンス鎖は、短鎖のヘアピン型のRNA(shRNA)と同様にヌクレオチドによって結合していてもよく、または脱塩基残基、C18またはポリエチレングリコール残基などのヌクレオチド以外のリンカーによって結合していてもよい。
【0234】
種々のウイルスに対する適切な配列を選択することにより、本発明のORNは、アンチセンス法またはRNAi法において、種々のウイルスが原因で起こる疾患の治療に用いることができる。ウイルスとしては、HCV、B型肝炎ウイルス(HBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、1型単純疱疹ウイルス(HSV−1)、2型単純疱疹ウイルス(HSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ポリオウイルス、インフルエンザウイルスおよびレオウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
また、癌関連または腫瘍関連のターゲットに対する適切な配列を選択することにより、本発明のORNは、アンチセンス法またはRNAi法において、癌の治療に用いることができる。したがって、癌の進行または増殖に関与するターゲット、例えば癌タンパク質(例えばc−myc、N−myc、c−myb、c−fos、c−fos/jun、PCNA、p120、EJ−ras、c−Ha−ras、N−ras、rrg、bcl−2、bcl−x、bcl−w、cdc−2、c−raf−1、c−mos、c−src、c−ablおよびc−ets);細胞の受容体(例えばEGF受容体、Her−2、c−erbA、VEGF受容体(KDR−1)、レチノイド受容体);プロテインキナーゼ(例えばc−fmsキナーゼ、Tie−2キナーゼ、c−raf−1キナーゼ、PKC−α、プロテインキナーゼA(R1α));成長因子(例えばbFGF、VEGF、EGF、HB−EGF、PDGF、TGF−β);サイトカイン(例えばIL−10);細胞周期タンパク質(例えばサイクリンE);腫瘍タンパク質(例えばMAT−8);および癌抑制遺伝子の阻害因子(例えばMDM−2)に対するオリゴヌクレオチド配列を用いることができる。また、eg5およびPLK1などの紡錘体を形成する成分に対するアンチセンス配列またはsiRNA配列を使用してもよく、転移を抑制するためにCXCR4などのターゲットに対するアンチセンス配列またはsiRNA配列を使用してもよい。また、survivin、stat3、hdm2などのアポトーシスを抑制する因子、またはMDR1(P−糖タンパク質)などの多剤耐性遺伝子の発現を抑制する因子に対するアンチセンスまたはsiRNAの配列を使用してもよい。
【0236】
ORNはまた、ミクロRNA(miRNA)の類似体でもよい。miRNAとは、遺伝子発現を調節する約21〜23のヌクレオチドからなる一本鎖RNA分子である。miRNAsは、DNAから転写はされるが、タンパク質に翻訳されない遺伝子によってコードされている(非コードRNA)。その代わり、pri−miRNAとして知られている転写一次産物がプロセシングを受けて、pre−miRNAと呼ばれる短鎖のステムループ構造を形成し、最終的に機能的なmiRNAになる。成熟したmiRNA分子は、1以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子と部分的な相補性を有し、また、その主な機能は遺伝子発現をダウンレギュレートすることである。ヒトゲノムで発見された多くのmiRNA配列が、癌の進行に関与していると考えられる。miRNAの中には、癌の中で著しくダウンレギュレートされているものもある。例えば、let−7 miRNAは、特定の腫瘍で発現を抑えられている腫瘍抑制因子である。天然のlet−7を5'−三リン酸基または5'−三リン酸基アナログを有するlet−7配列に類似したORNと置き換えることによって、腫瘍増殖を抑えるだけでなく免疫応答も賦活できる。さらに、腫瘍増殖をもたらす過剰発現したmiRNA(例えばTGF−β2受容体、RB1およびPLAG1)を、上述したアンチセンスやsiRNAの手法を用いて、ダウンレギュレートすることが可能である。近年、癌遺伝子ターゲットを示すヒト固形腫瘍のmiRNA発現特性(signature)が報告されている。Volinia S et al. (2006) Proc Natl Acad Sci USA 103:2257−61。
【0237】
本発明のORNは他の治療薬と組み合わせることができる。本発明のORNと他の治療薬とを、同時に投与しても連続して投与してもよい。他の治療薬を同時に投与する場合、これらは同一の製剤としても異なる製剤としてもよいが、いずれにしても同時期に投与する。他の治療薬と本発明のORNを時間的に分けて投与する場合、それぞれ順次投与する。これらの化合物を投与する時間間隔は、数分またはそれ以上でもよい。前記他の治療薬としては、抗微生物薬、抗癌剤、抗アレルギー剤および抗喘息薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0238】
本発明のORNを、抗微生物薬とともに対象者に投与してもよい。本明細書で用いられる「抗微生物薬」とは、感染性の微生物または感染病原体を死滅させるか阻害できる天然または合成の化合物を意味する。本発明において有用な抗微生物薬の種類は、対象者が感染したもしくは感染する恐れのある微生物または感染病原体の種類による。抗微生物薬としては、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬および抗寄生薬が挙げられるが、これらに限定されない。「抗感染薬」、「抗菌薬」、「抗ウイルス薬」、「抗真菌薬」、「抗寄生薬」および「寄生虫駆除剤」などの用語の意味は、当業者にとっては既知であり、標準的な医学の教科書に記載されている。
【0239】
抗菌薬は、細菌類を死滅させるか阻害するもので、抗生物質や、それと類似した機能を有する他の合成または天然の化合物が含まれる。抗生物質は、微生物などの細胞から二次代謝産物として生成される低分子である。一般に、抗生物質は、宿主細胞には存在しない、対象微生物に特異的な機能または構造のうち1以上を妨げるものである。抗ウイルス薬は、天然物から単離したものでも、合成したものでもよく、ウイルスを死滅させるか阻害するのに有用である。抗真菌薬は、表在性真菌感染症や、日和見性および原発性の全身性真菌感染症の治療に用いられる。抗寄生薬は、寄生虫を死滅させるか阻害する。
【0240】
抗菌薬は、細菌類を死滅させるか、その増殖または機能を阻害する。抗菌薬の中で大きなグループを構成しているのは、抗生物質である。広範囲の細菌類を死滅させるか阻害するのに有効な抗生物質は、広範囲抗生物質と呼ばれる。また、主としてグラム陽性またはグラム陰性の細菌類に対して有効な抗生物質もある。このような抗生物質は、狭域抗生物質と呼ばれる。一つの生物または疾患に対してのみ有効で、それ以外の細菌類には効果のない抗生物質もあり、これらは限定域抗生物質と呼ばれる。抗菌薬は、主要な作用機序に基づいて分類されることもある。一般に、抗菌薬としては、細胞壁合成阻害剤、細胞膜阻害剤、タンパク合成阻害剤、核酸合成阻害剤または核酸機能阻害剤、および競合的阻害剤が挙げられる。
【0241】
抗生物質としては、天然ペニシリン、半合成ペニシリン、クラブラン酸、セファロスポリン、バシトラシン、アンピシリン、カルベニシリン、オキサシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン、メチシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セファマンドール、セファクロル、セファゾリン、セフロキシム(cefuroxine)、セホキシチン、セフォタキシム、セフスロジン、セフェタメット、セフィキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム(ceftazidine)、モキサラクタム、カルバペネム系、イミペネム系、モノバクタム系、ユーズトレオナム(euztreonam)、バンコマイシン、ポリミキシン、アンホテリシンB、ナイスタチン、イミダゾール系、クロトリマゾール、ミコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、リファンピン、エタンブトール、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール、マクロライド系、アミノグリコシド類、ストレプトマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、クロルテトラサイクリン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、オレアンドマイシン、アジスロマイシン、クロラムフェニコール、キノロン類、コトリモキサゾール、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、ナリジキシン酸、テマフロキサシン、スルホンアミド類、ガントリシンおよびトリメトプリム、アセダプソン;アセトスルホンナトリウム;アラメシン;アレキシジン;アムジノシリン;アムジノシリン・ピボキシル;アミシクリン;アミフロキサシン;メシル酸アミフロキサシン;アミカシン;硫酸アミカシン;アミノサルチル酸;アミノサルチル酸ナトリウム;アモキシシリン;アンホマイシン;アンピシリン;アンピシリンナトリウム;アパルシリンナトリウム;アプラマイシン;アスパルトシン;硫酸アストロマイシン;アビラマイシン;アボパルシン;アジスロマイシン;アズロシリン;アズロシリンナトリウム;塩酸バカンピシリン;バシトラシン;バシトラシンメチレンジサリチル酸塩;亜鉛バシトラシン;バンベルマイシン;ベンゾイルパスカルシウム;ベリスロマイシン;ベタマイシン硫酸塩;ビアペネム;ビニラマイシン;塩酸ビフェナミン;ビスピリチオン・マグスルフェックス;ブチカシン;ブチロシン硫酸塩;硫酸カプレオマイシン;カルバドックス;カルベニシリン二ナトリウム;カルベニシリンインダニルナトリウム;カルベニシリンフェニルナトリウム;カルベニシリンカリウム;カルモナムナトリウム;セファクロル;セファドロキシル;セファマンドール;セファマンドール・ナファート;セファマンドールナトリウム;セファパロール;セファトリジン;セファザフルナトリウム;セファゾリン;セファゾリンナトリウム;セフブペラゾン;セフジニル;セフェピム;セフェピム塩酸塩;セフェテコール;セフィキシム;塩酸セフメノキシム;セフメタゾール;セフメタゾールナトリウム;セフォニシドモノナトリウム;セフォニシドナトリウム;セフォペラゾンナトリウム;セフォラニド;セフォタキシムナトリウム;セフォテタン;セフォテタン二ナトリウム;塩酸セフォチアム;セホキシチン;セフォキシチンナトリウム;セフピミゾール;セフピミゾールナトリウム;セフピラミド;セフピラミドナトリウム;硫酸セフピロム;セフポドキシムプロキセチル;セフプロジル;セフロキサジン;セフスロジンナトリウム;セフタジジム;セフチブテン;セフチゾキシムナトリウム;セフトリアキソンナトリウム;セフロキシム;セフロキシムアキセチル;セフロキシムピボキセチル;セフロキシムナトリウム;セファセトリルナトリウム;セファレキシン;セファレキシン塩酸塩;セファログリシン;セファロリジン;セファロチンナトリウム;セファピリンナトリウム;セフラジン;塩酸セトサイクリン;セトフェニコール;クロラムフェニコール;パルミチン酸クロラムフェニコール;パントテン酸クロラムフェニコール複合体;コハク酸クロラムフェニコールナトリウム;ホスファニル酸クロルヘキシジン;クロロキシレノール;重硫酸クロルテトラサイクリン;塩酸クロルテトラサイクリン;シノキサシン;シプロフロキサシン;塩酸シプロフロキサシン;シロレマイシン;クラリスロマイシン;クリナフロキサシン塩酸塩;クリンダマイシン;塩酸クリンダマイシン;塩酸パルミチン酸クリンダマイシン;リン酸クリンダマイシン;クロファジミン;クロキサシリンベンザチン;クロキサシリンナトリウム;クロキシキン;コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム;硫酸コリスチン;クーママイシン;クーママイシンナトリウム;シクラシリン;シクロセリン;ダルホプリスチン;ダプソーン;ダプトマイシン;デメクロサイクリン;デメクロサイクリン塩酸塩;デメサイクリン;デノフンギン;ジアベリジン;ジクロキサシリン;ジクロキサシリンナトリウム;硫酸ジヒドロストレプトマイシン;ジピリチオン;ジリスロマイシン;ドキシサイクリン;ドキシサイクリンカルシウム;ドキシサイクリンフォスファテックス;ドキシサイクリンハイクラート;ドロキサシンナトリウム;エノキサシン;エピシリン;塩酸エピテトラサイクリン;エリスロマイシン;エリスロマイシンアシストレート;エリスロマイシンエストレート;エチルコハク酸エリスロマイシン;エリスロマイシングルセプタート;ラクトビオン酸エリスロマイシン;プロピオン酸エリスロマイシン;ステアリン酸エリスロマイシン;塩酸エタンブトール;エチオナミド;フレロキサシン;フロキサシリン;フルダラニン;フルメキン;ホスホマイシン;ホスホマイシントロメタミン;フモキシリン;塩化フラゾリウム;酒石酸フラゾリウム;フシジン酸ナトリウム;フシジン酸;硫酸ゲンタマイシン;グロキシモナム;グラミシジン;ハロプロジン;ヘタシリン;ヘタシリンカリウム;ヘキセジン(Hexedine);イバフロキサシン;イミペネム;イソコナゾール;イセパミシン;イソニアジド;ジョサマイシン;硫酸カナマイシン;キタサマイシン;レボフラルタドン;レボプロピルシリンカリウム;レキシスロマイシン;リンコマイシン;塩酸リンコマイシン;ロメフロキサシン;塩酸ロメフロキサシン;メシル酸ロメフロキサシン;ロラカルベフ;マフェニド;メクロサイクリン;スルホサリチル酸メクロサイクリン;リン酸メガロマイシンカリウム;メキドクス;メロペネム;メタサイクリン;塩酸メタサイクリン;メテナミン;馬尿酸メテナミン;マンデル酸メテナミン;メチシリンナトリウム;メチオプリム;塩酸メトロニダゾール;リン酸メトロニダゾール;メズロシリン;メズロシリンナトリウム;ミノサイクリン;塩酸ミノサイクリン;塩酸ミリンカマイシン;モネンシン;モネンシンナトリウム;ナフシリンナトリウム;ナリジキサートナトリウム;ナリジクス酸;ナタマイシン;ネブラマイシン;パルミチン酸ネオマイシン;硫酸ネオマイシン;ウンデシレン酸ネオマイシン;硫酸ネチルマイシン;ニュートラマイシン;ニフラデン;ニフラルデゾン;ニフラテル;ニフラトロン;ニフルダジル;ニフリミド;ニフルピリノール;ニフルキナゾール;ニフルチアゾール;ニトロサイクリン;ニトロフラントイン;ニトロミド;ノルフロキサシン;ノボビオシンナトリウム;オフロキサシン;オルメトプリム;オキサシリンナトリウム;オキシモナム;オキシモナムナトリウム;オキソリン酸;オキシテトラサイクリン;オキシテトラサイクリンカルシウム;塩酸オキシテトラサイクリン;パルジマイシン;パラクロロフェノール;パウロマイシン;ペフロキサシン;メシル酸ペフロキサシン;ペナメシリン;ベンザチンペニシリンG;ペニシリンGカリウム;ペニシリンGプロカイン;ペニシリンGナトリウム;ペニシリンV;ベンザチンペニシリンV;ヒドラバミンペニシリンV;ペニシリンVカリウム;ペンチジドンナトリウム;アミノサリチル酸フェニル;ピペラシリンナトリウム;ピルベニシリンナトリウム;ピリジシリンナトリウム;塩酸ピルリマイシン;ピバンピシリン塩酸塩;ピバンピシリンパモエート;ピバンピシリンプロベネート;硫酸ポリミキシンB;ポルフィロマイシン;プロピカシン;ピラジンアミド;亜鉛ピリチオン;酢酸キンデカミン;キヌプリスチン;ラセフェニコール;ラモプラニン;ラニマイシン;レロマイシン;レプロマイシン;リファブチン;リファメタン;リファメキシル;リファミド;リファンピン;リファペンチン;リファキシミン;ロリテトラサイクリン;硝酸ロリテトラサイクリン;ロサラマイシン;酪酸ロサラマイシン;プロピオン酸ロサラマイシン;リン酸ロサラマイシンナトリウム;ステアリン酸ロサラマイシン;ロソキサシン;ロキサルソン;ロキシスロマイシン;サンサイクリン;サンフェトリネムナトリウム;サルモキシシリン;サルピシリン;スコパフンギン;シソマイシン;硫酸シソマイシン;スパルフロキサシン;塩酸スペクチノマイシン;スピラマイシン;塩酸スタリマイシン;ステフィマイシン;硫酸ストレプトマイシン;ストレプトニコジド;スルファベンズ;スルファベンザミド;スルファセタミド;スルファセタミドナトリウム;スルファシチン;スルファジアジン;スルファジアジンナトリウム;スルファドキシン;スルファレン;スルファメラジン;スルファメータ;スルファメタジン;スルファメチゾール;スルファメトキサゾール;スルファモノメトキシン;スルファモキソール;スルファニル酸亜鉛;スルファニトラン;スルファサラジン;スルファソミゾール;スルファチアゾール;スルファザメト;スルフイソキサゾール;アセチルスルフイソキサゾール;スルフイソキサゾールジオラミン;スルフォミキシン;スロペネム;スルタミシリン;サンシリンナトリウム;塩酸タランピシリン;テイコプラニン;テマフロキサシン塩酸塩;テモシリン;テトラサイクリン;塩酸テトラサイクリン;リン酸テトラサイクリン複合体;テトロキソプリム;チアンフェニコール;チフェンシリンカリウム;チカルシリンクレシルナトリウム;チカルシリン二ナトリウム;チカルシリンモノナトリウム;チクラトン;塩化チオドニウム;トブラマイシン;硫酸トブラマイシン;トスフロキサシン;トリメトプリム;硫酸トリメトプリム;トリスルファピリミジン;トロレアンドマイシン;トロスペクトマイシン硫酸塩;チロトリシン;バンコマイシン;塩酸バンコマイシン;バージニアマイシン;およびゾルバマイシンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0242】
抗ウイルス薬は、細胞がウイルスに感染するのを防ぐか、細胞内でウイルスが複製されるのを防ぐ化合物である。様々な抗ウイルス薬があるが、その数は抗菌薬より少ない。これは、ウイルス複製の過程は、宿主細胞内でのDNA複製の過程と極めて密接な関係があるため、非特異性の抗ウイルス薬は、多くの場合宿主に対して毒性を示すことが理由である。ウイルス感染の過程には抗ウイルス薬により阻止または阻害できる段階がいくつかある。このような段階としては、宿主細胞に対するウイルスの付着段階(免疫グロブリンまたは結合ペプチド)、ウイルスの脱外被段階(例えばアマンタジン)、ウイルスmRNAの合成または翻訳段階(例えばインターフェロン)、ウイルスRNAまたはDNAの複製段階(例えばヌクレオチドアナログ)、新生ウイルスタンパク質の成熟段階(例えばプロテアーゼ阻害剤)、ならびにウイルスの出芽および分泌段階が挙げられる。
【0243】
ヌクレオチドアナログとは、ヌクレオチドに類似しているが、不完全または通常とは異なるデオキシリボース基やリボース基を有する合成化合物のことである。細胞内に入ったヌクレオチドアナログは、リン酸化されて三リン酸基を有する形態になり、ウイルスDNAまたはRNAへ組み込まれる正常なヌクレオチドと競合することになる。三リン酸基を有するヌクレオチドアナログが、伸長しつつある核酸鎖へ組み込まれると、ウイルスのポリメラーゼと不可逆的に結合して連鎖停止を引き起こす。ヌクレオチドアナログとしては、アシクロビル(単純疱疹ウイルスおよび水痘帯状ヘルペスウイルスの処置に用いられる)、ガンシクロビル(サイトメガロウイルスの処置に有用)、イドクスウリジン、リバビリン(呼吸器多核体ウイルスの処置に有用)、ジデオキシイノシン、ジデオキシシチジン、ジドブジン(アジドチミジン)、イミキモドおよびレシキモド(resimiquimod)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0244】
本発明に有用な抗ウイルス薬は、免疫グロブリン、アマンタジン、インターフェロン、ヌクレオチドアナログおよびプロテアーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。具体的には、抗ウイルス薬として、エースマンナン;アシクロビル;アシクロビルナトリウム;アデホビル;アロブジン;アルビルセプトスドトックス;塩酸アマンタジン;アラノチン;アリルドン;メシル酸アテビルジン;アブリジン;シドホビル;シパンフィリン;シタラビン塩酸塩;メシル酸デラビルジン;デスシクロビル;ジダノシン;ジソキサリル;エドクスジン;エンビラデン;エンビロキシム;ファムシクロビル;塩酸ファモチン;フィアシタビン;フィアロウリジン;ホサリラート;ホスカルネットナトリウム;ホスホネットナトリウム;ガンシクロビル;ガンシクロビルナトリウム;イドクスウリジン;ケトキサル;ラミブジン;ロブカビル;塩酸メモチン;メチサゾン;ネビラピン;ペンシクロビル;ピロダビル;リバビリン;塩酸リマンタジン;メシル酸サキナビル;ソマンタジン塩酸塩;ソリブジン;スタトロン;スタブジン;チロロン塩酸塩;トリフルリジン;塩酸バラシクロビル;ビダラビン;ビダラビンリン酸;ビダラビンリン酸ナトリウム;ビロキシム;ザルシタビン;ジドブジン;ジンビロキシムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0245】
抗真菌薬は、感染性の真菌類の処置および予防に有用である。抗真菌薬は、作用機序によって分類されることもある。一部の抗真菌薬は、グルコースシンターゼの阻害により細胞壁阻害剤として機能し、例としては、バシウンギン(basiungin)/ECBが挙げられるが、これに限定されない。膜を不安定化し、完全性を失わせることにより機能する抗真菌薬もある。このような抗真菌薬としては、クロトリマゾール、セルタコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、ボリコナゾールなどのイミダゾール類、FK463、アムホテリシンB、BAY38−9502、MK991、プラジマイシン、UK292、ブテナフィンおよびテルビナフィンが挙げられるが、これらに限定されない。また、キチンの分解(例えばキチナーゼによる)または免疫抑制(501クリーム(501 cream))により機能する抗真菌薬もある。
【0246】
抗寄生薬は、寄生虫駆除剤とも呼ばれ、ヒトへの投与において有用な抗寄生薬としては、アルベンダゾール、アムホテリシンB、ベンズニダゾール、ビチオノール、塩酸クロロキン、リン酸クロロキン、クリンダマイシン、デヒドロエメチン、ジエチルカルバマジン、ジロキサニドフロエート、エフロールニチン、フラゾリダオン、グルココルチコイド、ハロファントリン、ヨードキノール、イベルメクチン、メベンダゾール、メフロキン、アンチモン酸メグルミン、メラルソプロール、メトリホナート、メトロニダゾール、ニクロサミド、ニフルチモックス、オキサムニキン、パロモマイシン、ペンタミジンイセチオネート、ピペラジン、プラジカンテル、リン酸プリマキン、プログアニル、パモ酸ピランテル、ピリメタミン(pyrimethanmine)−スルホンアミド、ピリメタミン(pyrimethanmine)−スルファドキシン、塩酸キナクリン、硫酸キニーネ、グルコン酸キニジン、スピラマイシン、スチボグルコネートナトリウム(グルコン酸アンチモンナトリウム)、スラミン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、チアベンダゾール、チニダゾール、トリメトプリム(trimethroprim)−スルファメトキサゾールおよびトリパルサミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらをそれぞれ単独または組み合わせて用いることができる。
【0247】
また、本発明の化合物を、抗癌剤とともに投与するか、または他の抗癌治療と並行して投与してもよい。抗癌治療は、抗癌剤(または癌治療薬とも言う)の投与だけでなく、放射線治療および外科手術も含む。本明細書において、「抗癌剤」または「癌治療薬」は、癌を治療する目的で対象者に投与される薬剤を意味する。他の態様において、癌治療薬は、癌を発症するリスクを軽減する目的で癌を発症するリスクのある対象者に投与される。癌治療のための種々の薬剤が、本明細書に記載されている。本明細書の目的に合わせて、抗癌剤(癌治療薬とも言う)は、化学療法剤、免疫療法剤、癌ワクチン、ホルモン療法および生物学的応答修飾物質に分類される。
【0248】
化学療法剤としては、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、非含糖クロロエチルニトロソ尿素、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン、メグラミンGLA、バルルビシン、カルムスタインおよびポリフェルポサン、MMI270、BAY12−9566、RASファメシル転移酵素阻害剤、ファメシル転移酵素阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメトレキソール(Lometexol)、グラモレック、CI−994、TNP−470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトロキサントロン、メタレット/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH−4556、CS−682、9−AC、AG3340、AG3433、インセル/VX−710、VX−853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マーミスタット、BB2516/マーミスタット、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナールDP2202、FK317、ピシバニール/OK−432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロマイド、エバセット/リポソーム型ドキソルビシン、ユータキサン/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU−077/シスプラチン、HMR1275/フラボピリドール、CP−358(774)/EGFR、CP−609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS−182751/経口プラチナ、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミゾール/レバミゾール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプト/レバミゾール、カンプトサル/イリノテカン、トミュデックス(Tumodex)/ラルチトレキセド(Ralitrexed)、ロイスタチン/クラドリビン、パキセクス/パクリタキセル、ドキシル/リポソーム型ドキソルビシン、カエリックス/リポソーム型ドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルマルビシン/エピルビシン、デポサイト、ZD1839、LU79553/ビス−ナフタルイミド、LU103793/ドラスタチン(Dolastain)、カエリックス/リポソーム型ドキソルビシン、ジェムザール/ゲムシタビン、ZD0473/アノルメド、YM116、ヨウ素種、CDK4阻害剤、CDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド、イフェ/メスナ/イホスファミド(Ifosamide)、ヴァモン/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プランチノール/シスプラチン、ベプシド/エトポシド、ZD9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサンアナログ、ニトロソ尿素、メルファランやシクロフォスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル(Chlorombucil)、塩酸シタラビン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エトポシド(VP16−213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5−FU)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、酢酸ロイプロリド(LHRH放出因子アナログ)、ロムスチン(CCNU)、塩酸メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(オペプリム:o.p’−DDD)、塩酸ミトキサントロン、オクトレオチド、プリカマイシン、塩酸プロカルバジン、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m−AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン−2、ミトグアゾン(メチル−GAG;メチルグリオキサール−ビス−グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル−CCNU)、テニポシド(VM−26)および硫酸ビンデシンからなる群より選ばれるが、これらに限定されない。
【0249】
免疫療法剤は、リブタキシン、リツキサン、ハーセプチン、クアドラメット、パノレクス、IDEC−Y2B8、BEC2、C225、オンコリム、SMART M195、ATRAGEN、オバレクス、ベキサール、LDP−03、ior t6、MDX−210、MDX−11、MDX−22、OV103、3622W94、抗VEGF、ゼナパクス、MDX−220、MDX−447、MELIMMUNE−2、MELIMMUNE−1、CEACIDE、プレターゲット、NovoMAb−G2、TNT、グリオマブ−H、GNI−250、EMD−72000、LymphoCide、CMA676、モノファーム−C、4B5、ior egf.r3、ior c5、BABS、抗FLK−2、MDX−260、ANA Ab、SMART 1D10 Ab、SMART ABL364 AbおよびImmuRAIT−CEAからなる群より選ばれるが、これらに限定されない。
【0250】
癌ワクチンは、EGF、抗イディオタイプ癌ワクチン、Gp75抗原、GMK黒色腫ワクチン、MGVガングリオシド複合体ワクチン、Her2/neu、オバレクス、M−Vax、O−Vax、L−Vax、STn−KHLセラトープ、BLP25(MUC−1)、リポソーム型イディオタイプワクチン、メラシン、ペプチド抗原ワクチン、毒素/抗原ワクチン、MVA由来のワクチン、PACIS、BCGワクチン、TA−HPV、TA−CIN、DISCウイルスおよびImmuCyst/TheraCysからなる群より選ばれるが、これらに限定されない。
【0251】
本明細書で示した教示と組み合わせて、種々の活性化合物から選択し、力価、相対的生物学的利用能、患者の体重、有害な副作用の程度および好適な投与方法などの因子を考慮することにより、重大な毒性を生じることなく、特定の対象者の処置に有効な予防または治療上の処方計画を立てることができる。どの用途に関しても、特定の用途における有効量は、治療対象の疾患もしくは症状、投与するORN、対象者のサイズ、または疾患もしくは症状の程度などの因子に応じて変化し得る。当業者であれば、過度に実験を行わなくても、経験的に個々のORNおよび/または他の治療薬の有効量を決定できる。通常、用量は最大限であること、すなわち何らかの医学的判断により安全とされる範囲で最大の量を用いることが好ましい。全身の化合物濃度が適切なレベルになるよう、1日に複数回の投与を行うことも考慮される。全身の適切な薬物濃度は、例えば患者の血漿中のピーク濃度または経時的な濃度を測定することにより決定できる。本明細書において、「用量」および「投与量」は区別なく用いられる。
【0252】
通常、活性化合物の1日当たり経口用量は、約0.01〜1000mg/kgである。0.5〜50mg/kgの経口用量を、1日に1回または複数回に分けて投与することによって、所望の結果を得ることが期待される。局所または全身において所望の薬物濃度を達成するために、投与方法に応じて、投与量を適宜調整してもよい。例えば、静脈内に投与する場合、1日当たりの投与量は、上記の用量より1桁から数桁低くなることが予測される。このような用量で対象者の反応が不十分な場合、患者の許容範囲内でさらに用量を上げる(あるいは有効なより高い用量を、別のより局所的な経路で投与する)こともできる。全身の化合物濃度が適切なレベルになるよう、1日に複数回の投与を行うことも考慮される。
【0253】
本明細書に記載のいかなる化合物に関しても、治療上の有効量は、まずは動物モデルを用いて決定することができる。治療上の有効量はまた、ヒトにおける試験が既に行われたORN、および類似した薬理活性を示すことが知られている化合物(例えば関連した他の活性薬剤)に関するヒトのデータを用いて決定することができる。非経口投与においては、より高い用量が必要となる場合がある。投与する化合物の相対的生物学的利用能や効能に基づいて、投与量を調節することできる。最大効力を達成するために、上記の方法および当技術分野において周知の他の方法に基づいて用量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0254】
本発明の製剤は、薬学的に許容される溶液の形で投与される。薬学的に許容される溶液は、慣例的には、薬学的に許容される濃度で塩、緩衝剤、防腐剤、適合する担体、補助剤および任意で治療効果のある他の成分を含む。
【0255】
本発明のORNを治療に使用する場合、所望の表面にORNを送達できれば、どのような方法で対象者に有効量のORNを投与してもよい。本発明の医薬組成物は、当業者に公知の方法で投与してもよい。投与経路は、経口、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、眼、膣内、直腸などの経路を含むが、これらに限定されない。
【0256】
経口投与用としては、前記化合物(すなわち本発明のORNおよび他の治療薬)は、活性化合物と当技術分野において周知の薬学的に許容される担体とを組み合わせることにより容易に製剤化できる。このような担体を使用することによって、治療される対象者が経口摂取できるよう、本発明の化合物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などの製剤に処方できる。経口製剤は固形の賦形剤として得ることができ、この場合、得られた混合物を所望により粉砕し、所望により適切な補助剤を加えた後、この顆粒混合物を処理し、錠剤または糖衣剤コアを得る。適切な賦形剤は、充填剤であり、具体的には乳糖、ショ糖、マンニトール、ソルビトールなどの糖類、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース調製物、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。必要であれば、崩壊剤を加えてもよく、例として架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などが挙げられる。あるいは、必要であれば、前記経口製剤は、生理食塩水や体内の酸性状態を中和するためのEDTAなどの緩衝液中に存在する剤形であってもよい。あるいは担体を用いずに投与してもよい。
【0257】
さらに、上述した本発明の構成成分(複数可)の経口投薬形態について具体的に検討する。構成成分(複数可)の誘導体が経口で効果的に送達されるように、構成成分(複数可)を化学的に修飾してもよい。通常、化学修飾としては、構成成分の分子自体に少なくとも1つの基を付与することが考えられる。前記少なくとも1つの基とは(a)タンパク質分解の抑制;および(b)胃または腸から血液中への取り込みを可能にする基である。また、構成成分(複数可)の全体的な安定性の向上や体内循環時間の延長も望まれる。このような基としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリプロリンが挙げられる。Abuchowski and Davis, 1981, “Soluble Polymer−Enzyme Adducts” In:Enzymes as Drugs, Hocenberg and Roberts, eds., Wiley−Interscience, New York, NY, pp. 367−383;Newmark, et al., 1982, J. Appl. Biochem. 4:185−189。使用可能なポリマーとして、ポリ−1,3−ジオキソランおよびポリ−1,3,6−チオキソカン(tioxocane)が挙げられる。医薬用途に好適であるのは、上述の通り、ポリエチレングリコールである。
【0258】
本発明の構成成分(あるいはその誘導体)が放出される部位は、胃、小腸(十二指腸、空腸または回腸)、大腸のいずれであってもよい。当業者は、胃で溶解せず成分が十二指腸など腸内で放出されるような剤形を利用できる。ORN(あるいはその誘導体)を保護したり、またはこの生物学的に活性のあるORNが胃より先の腸などで放出されるようにして、胃環境による有害な影響を避けることが好ましい。
【0259】
胃酸に対する十分な抵抗性を確保するためには、少なくともpH5.0の液体に耐えるコーティングが必須である。腸溶剤皮として使用される一般的な不活性成分としては、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリビニルアセテートフタラート(PVAP)、Eudragit L30D、Aquateric、セルロースアセテートフタラート(CAP)、Eudragit L、Eudragit Sおよびセラックが挙げられるが、これらに限定されない。
【0260】
コーティング(1種、または複数の混合物)は、胃酸からの保護を意図していない錠剤に使用してもよい。例としては、糖衣、または錠剤を呑み込みやすくするコーティングが挙げられる。乾燥した治療薬(すなわち粉末)を送達するために、ゼラチンなどの硬い被膜で構成されるカプセル剤を用いてもよく、液状の治療薬の場合には、ゼラチン製の軟性被膜を用いてもよい。カシェ剤の被膜物質としては、オブラート(thick starch)などの食用紙が挙げられる。丸剤、ロゼンジ、成型錠剤または錠剤散薬に関しては、湿式塊状化(moist massing)技術を利用できる。
【0261】
治療薬を、粒径約1mmの顆粒またはペレットの形態の多微粒子系製剤中に含んでもよい。カプセル剤として投与する場合、中味の製剤は、散剤、軽度圧縮プラグまたは錠剤でもよい。治療薬を圧縮して調製してもよい。
【0262】
着色剤および香料は種類を問わず含んでもよい。例えば、ORN(あるいはその誘導体)を製剤化(リポソーム剤またはミクロスフェアカプセル剤など)した後、着色剤および香料を含む冷蔵飲料などの食品に含まれるようにしてもよい。
【0263】
不活性成分を用いて、治療薬を希釈して容積を増大させてもよい。希釈剤としては、炭水化物、特にマンニトール、α−乳糖、無水乳糖、セルロース、ショ糖、修飾されたデキストランおよびデンプンが挙げられる。ある種の無機塩類もまた充填剤として使用することができ、例えば、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムが挙げられる。市販品として入手可能な希釈剤を一部挙げると、Fast−Flo、Emdex、STA−Rx1500、EmcompressおよびAvicellである。
【0264】
固形剤とする治療薬に崩壊剤を加えてもよい。崩壊剤として用いられる材料としては、デンプンが挙げられ、例としてデンプンをベースとした市販の崩壊剤、エクスプロタブ(Explotab)が挙げられるが、これに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、アンバーライト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ウルトラアミロペクチン(ultramylopectin)、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレンジピール、酸性カルボキシメチルセルロース、天然の海綿動物およびベントナイトはすべて使用できる。崩壊剤のまた別の形態としては、不溶性のカチオン性交換樹脂がある。粉末状のゴムを、崩壊剤および結合剤として使用してもよく、例としては、寒天、カラヤゴム、トラガカントゴムなどが挙げられる。また、アルギン酸およびそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0265】
結合剤を同時に用いて治療薬を硬い錠剤にしてもよく、例としては、アカシア、トラガカントゴム、デンプン、ゼラチンなどの天然物由来の材料が挙げられる。他には、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)が挙げられる。アルコール溶液中、ポリビニルピロリドン(PVP)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)をともに用いて治療薬を顆粒状の製剤にしてもよい。
【0266】
製剤過程における粘着を防ぐために、治療薬の製剤時に抗摩擦剤を加えてもよい。治療薬とダイ壁との間の層に滑沢剤を用いてもよく、滑沢剤としては、例えばステアリン酸およびそのマグネシウム塩やカルシウム塩、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、流動パラフィン、植物油ならびに蝋が挙げられるが、これらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、種々の分子量のポリエチレングリコール、カーボワックス4000および6000などの可溶性滑沢剤も用いられる。
【0267】
製剤化における薬物の流動性を向上させ、圧縮時の再構成を助けるために、流動化剤(Glidants)を加えてもよい。流動化剤としては、デンプン、タルク、焼成シリカおよびアルミニウムケイ酸塩水和物が挙げられる。
【0268】
治療薬の水性溶媒への溶解を助けるために、界面活性剤を湿潤剤として加えてもよい。界面活性剤には、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホン酸ジオクチルナトリウムなどの陰イオン界面活性剤が含まれる。陽イオン性界面活性剤も用いることができ、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。製剤化に用いることができる非イオン性界面活性剤としては、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、50および60、グリセロールモノステアレート、ポリソルベート40、60、65および80、ショ糖脂肪酸エステル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、ORNまたはその誘導体の製剤中に単独で存在してもよく、または様々な混合比の混合物として存在してもよい。
【0269】
経口用の医薬製剤には、ゼラチンと、グリセロール、ソルビトールなどの可塑剤とで作られる軟性の密封カプセルだけでなく、ゼラチンで作られる押し込み式カプセル剤(push−fit capsules)も含まれる。押し込み式カプセル剤は、活性成分とともに、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクやステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および任意で安定化剤を含有してもよい。軟カプセル剤の場合、活性化合物を、脂肪油、流動パラフィン、液状のポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁してよい。さらに、安定化剤を加えてもよい。経口投与用に製剤化されたミクロスフェアも用いられる。このようなミクロスフェアは、当技術分野において十分に確立されている。経口製剤はすべて、経口投与に適した投与量で調製される必要がある。
【0270】
舌下投与用としては、本発明の組成物は、常法に従って製剤化される錠剤またはロゼンジの形態をとってもよい。
【0271】
吸入による投与用としては、適切な噴射剤(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素などの適切なガス)を使用することにより、高圧パックやネブライザーといったエアロゾルスプレー剤の形態で、本発明で使用される化合物を送達するのが好都合である。高圧エアロゾルの場合には、一定量を送達するためのバルブを設けることにより、用量単位を決定することができる。吸入器または注入器で使用される(例えばゼラチン製の)カプセルおよびカートリッジは、本発明の化合物と、乳糖、デンプンなどの適切な粉末基剤とを含む粉末混合物を含有するよう処方してもよい。
【0272】
また、ORN(あるいはその誘導体)を肺へ送達することも本明細書で考慮される。吸入によって哺乳動物の肺に送達されたORN(あるいはその誘導体)は、肺上皮性内層を透過して血流に乗る。他にも、吸入される分子に関する報告があり、例えば、Adjei et al., 1990, Pharmaceutical Research, 7:565−569;Adjei et al., 1990, International Journal of Pharmaceutics, 63:135−144 (酢酸ロイプロリド);Braquet et al., 1989, Journal of Cardiovascular Pharmacology, 13(suppl. 5):143−146(エンドセリン−1);Hubbard et al., 1989, Annals of Internal Medicine 3:206−212(α1−アンチトリプシン);Smith et al., 1989, J. Clin. Invest. 84:1145−1146(α−1−プロテアーゼ);Oswein et al., 1990, “Aerosolization of Proteins”, Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II, Keystone, Colorado, March, (組換えヒト成長ホルモン);Debs et al., 1988, J. Immunol. 140:3482−3488 (インターフェロン−γおよび腫瘍壊死因子α);およびPlatzら、米国特許5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)が挙げられる。1995年9月19日にWongらに発行された米国特許5,451,569号に、全身作用を目的とした薬物の肺への送達方法およびその組成物が記載されている。
【0273】
本発明の実施に用いるために、治療薬を肺へ送達するために設計された多種多様な機械装置が考慮される。例えば、ネブライザー、計量式吸入器、粉末吸入器(これらはすべて当業者には公知である)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0274】
本発明の実施に適した市販の装置としては、具体的には、Mallinckrodt社(St. Louis, Missouri)製Ultraventネブライザー;Marquest Medical Products社(Englewood, Colorado)製Acorn IIネブライザー;Glaxo社(Research Triangle Park, North Carolina)製Ventolin計量式吸入器;およびFisons社(Bedford, Massachusetts)製Spinhaler粉末吸入器が挙げられる。
【0275】
このような装置はすべて、ORN(あるいはその誘導体)の注出に適した製剤を用いることを必要とする。一般に、各製剤は、使用する装置の種類に特有であり、治療に有用な通常の希釈剤、補助剤および/または担体以外に、適切な噴射剤を用いて調製される。また、リポソーム、マイクロカプセルまたはミクロスフェア、包接複合体などの担体の使用も考慮される。化学的に修飾されたORNは、化学修飾の種類または使用する装置の種類によってそれぞれ異なる製剤に調製されてもよい。
【0276】
ネブライザー(ジェット式でも超音波式でもよい)での使用に適した製剤は、一般に、水に溶解した状態のORN(あるいはその誘導体)を含み、この生物学的に活性のあるORNの濃度は水溶液1mL当たり約0.1〜25mgである。また、このような製剤は、緩衝剤および単糖(例えばORNの安定化および浸透圧調整用として)を含んでもよい。またネブライザー用製剤は、界面活性剤を含んでもよい。これは、エアロゾル形成時に溶液が微粒子化することによって引き起こされるORNの表面誘起凝集を抑制または防止することが目的である。
【0277】
計量式吸入器で使用される製剤は、一般に、界面活性剤によって噴射剤に懸濁されたORN(あるいはその誘導体)を含む微粉を含む。噴射剤としては、このような目的で通常用いられるものであればどのような噴射剤でもよく、例として、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンや炭化水素(例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、1,1,1,2−テトラフルオロエタンなど)またはこれらの組み合わせが挙げられる。適切な界面活性剤としては、ソルビタントリオレアートおよび大豆レシチンが挙げられる。また界面活性剤として、オレイン酸も有用な場合がある。
【0278】
粉末吸入器から注出される製剤は、ORN(またはその誘導体)を含む乾燥微粉を含有し、この微粉が装置から容易に飛散するよう、例えば製剤に対して50〜90重量%の、乳糖、ソルビトール、ショ糖、マンニトールなどの増量剤をさらに含んでもよい。ORN(またはその誘導体)は、平均粒度が10μm(またはミクロン)未満、最も好ましくは0.5〜5μmの粒子となるよう調製するのがよく、末梢肺野への最も効果的な送達には、この形態が最も有利である。
【0279】
本発明の医薬組成物を鼻腔へ送達することも考慮される。鼻腔への送達では、治療薬を鼻腔に投与した後、本発明の医薬組成物が直接血流へと入り、治療薬を肺に沈着させる必要がない。鼻腔への送達に使用される製剤は、デキストランまたはシクロデキストランを含む。
【0280】
鼻腔へ投与するための装置として、定量式噴霧器を備えた小型の硬質ボトルが有用である。一実施形態において、既定の容積のチェンバーに本発明の医薬組成物の溶液が吸引されることにより、一定量が送達される。チェンバーは、チェンバー内の液体が圧縮されたとき、この液体を霧状にしてエアロゾルを形成するのに適した寸法の開口部を有する。チェンバーが圧縮されると、本発明の医薬組成物が投与される。特定の実施形態において、チェンバーはピストン構造を有する。このような装置は市販品として入手可能である。
【0281】
また、圧縮により液体を霧状にしてエアロゾルを形成するのに適した寸法の開口部または穴を有するプラスチック製スクイーズボトルも用いられる。この開口部は通常ボトルの上部にあり、通常上部は先細りになって、部分的に鼻腔にフィットするようになっており、これによってエアロゾル製剤の効率的な投薬が可能になる。一定用量の薬物を投与するために、鼻吸入器は、一定量のエアロゾル製剤を放出するのが好ましい。
【0282】
本発明の化合物を全身に送達することが望ましい場合は、例えばボーラス注射、持続点滴などの注射による非経口投与用の製剤にしてもよい。注射用の製剤は、例えば、防腐剤が添加されたアンプルや複数回投与用容器などの単位投与剤形であってよい。本発明の組成物は、油性または水性媒体を用いた懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとってもよく、また懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤化剤を含んでもよい。
【0283】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性の活性化合物が溶解した水溶液を含む。さらに、適切な油性の注射懸濁液として活性化合物の懸濁液を調製してもよい。適切な親油性溶媒または媒体としては、ごま油などの脂肪油、オレイン酸エチル、トリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが挙げられる。水性の注射用懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの、懸濁液の粘性を上昇させる物質を含んでいてもよい。必要であれば、このような懸濁液は、適切な安定化剤を含んでもよく、また高濃度溶液の調製を考慮して活性化合物の溶解度を上げる薬剤を含んでもよい。
【0284】
また、活性化合物が粉末で、使用直前に適切な媒体(例えば滅菌済の発熱性物質非含有蒸留水)を用いて調製される形態であってもよい。
【0285】
本発明の化合物を、例えば坐剤または停留浣腸剤(カカオ脂、他のグリセリドなどの慣用の坐剤基剤を含有)などの直腸または膣に投与される組成物として製剤化してもよい。
【0286】
これまで記載した製剤以外に、本発明の化合物はデポ製剤としてもよい。このような長時間にわたって作用する製剤は、適切なポリマーもしくは疎水性物質(例えば許容される油を用いた油中型エマルジョンとして)、または適切なイオン交換樹脂とともに製剤化してもよく、あるいはやや難溶の誘導体、例えばやや難溶の塩として製剤化してもよい。
【0287】
また本発明の医薬組成物は、固形もしくはゲル状の適切な担体、または固形もしくはゲル状の適切な賦形剤を含んでもよい。このような担体または賦形剤としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、および例えばポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0288】
適切な液状または固形の製剤形態としては、水または生理食塩水に溶解した吸入用の液剤、マイクロカプセル剤、コキレート(cochleate)を使用した製剤、金微粒子上にコーティングした製剤、リポソーム剤、噴霧剤、エアゾール剤、皮膚埋め込み式ペレット剤、鋭利な物体上で乾燥させた、皮膚へのスクラッチ用製剤などが挙げられる。また本発明の医薬組成物としては、顆粒剤、散剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル剤、坐剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、クリーム剤、点眼剤または活性化合物を持続放出する製剤が挙げられ、これらを調製する際に、賦形剤以外に、添加物および/または補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、香料、甘味料、溶解剤などが、上述した通り慣例的に用いられる。本発明の医薬組成物は、様々な薬物送達システムでの使用に適している。薬物送達方法の簡潔な総説に関しては、Langer, Science 249:1527−1533, 1990を参照されたい。この文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0289】
本発明のORNを、必要であれば他の治療薬とともに、それ自体で(純物質として)投与してもよく、または薬学的に許容される塩の形態で投与してもよい。医薬として使用する場合、この塩は薬学的に許容されるものでなければならないが、薬学的に許容される塩を調製するために、薬学的に許容されない塩を便宜上使用してもよい。薬学的に許容される塩としては、以下に限定されないが、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属から調製される塩が挙げられ、さらに、本発明のORNと特に関連のある薬学的に許容される塩としては、下記の塩基から調製される塩が挙げられる:アンモニア、ピリジン、ピペリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)−メタン、フェニルエチルベンジルアミン、スペルミン、スペルミジン、リジンおよびアルギニン。
【0290】
適切な緩衝剤としては、酢酸およびその塩(1〜2%w/v);クエン酸およびその塩(1〜3%w/v);ホウ酸およびその塩(0.5〜2.5%w/v);ならびにおよびリン酸およびその塩(0.8〜2%w/v)が挙げられる。適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン類(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)が挙げられる。
【0291】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体中に有効量のORNと、任意で治療薬とを含む。薬学的に許容される担体とは、ヒトなどの脊椎動物への投与に適した、1以上の適合する固形または液状の充填剤、希釈剤またはカプセル基剤を意味する。担体とは、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、天然もしくは合成の有機または無機の成分を意味する。また、本発明の医薬組成物の構成成分は、所望の医薬的な効力を実質的に妨げるような相互作用が生じない方法で互いに混合でき、かつ本発明の化合物とも混合できる。
【0292】
治療薬(具体的にはORNが挙げられるが、これに限定されない)は、粒子として調製してもよい。本明細書において、粒子とは、本明細書に記載の通り、ORNの一部もしくは全部、または他の治療薬から構成されるナノ粒子またはマイクロ粒子(場合によりこれより大きな粒子)を意味する。粒子は、コーティングされたコアの中に治療薬を含んでもよく、コーティングとしては、腸溶剤皮が挙げられるが、これに限定されない。治療薬は、粒子内で分散していてもよい。治療薬は、粒子内に吸着していてもよい。粒子は、どのような薬物放出動態を示すものでもよく、放出動態としては、ゼロ次放出型、1次放出型、2次放出型、遅延放出型、徐放型、即時放出型およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。粒子は、治療薬以外に、薬学や医学分野で慣例的に用いられる物質を含んでもよく、例えば、侵食性物質、非侵食性物質、生分解性物質、非生分解性物質またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。粒子は、溶液または半固形の状態でORNを含むマイクロカプセルであってもよい。粒子は、実質的にはあらゆる形態をとることができる。
【0293】
非生分解性高分子および生分解性高分子はいずれも、治療薬を送達するための粒子の製造に用いることができる。このような高分子は、天然でも合成したものでもよく、所望の放出時間によって選択される。特に興味深い生体接着性の高分子としては、H.S. Sawhney, C.P. Pathak and J.A. Hubell in Macromolecules, (1993) 26:581−587に記載される生体侵食性のヒドロゲルが挙げられる。この文献の教示は本明細書に組み込まれるものとする。生体接着性の高分子としては、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0294】
治療薬は、制御放出システムに含まれていてもよい。「制御放出型」は、製剤からの薬物放出の様式およびプロファイルが制御されている、あらゆる薬物含有製剤を意味する。これは、即時放出型でない製剤と同様に即時放出型製剤も表す。即時放出型でない製剤には、徐放型および遅延放出型の製剤が含まれるが、これらに限定されない。「徐放型」(持続放出型ともいう)は通常の意味で用いられ、長時間にわたって徐々に薬物を放出する製剤を表す。好ましくは長時間にわたって薬物の血中濃度を実質的に一定に保つ製剤を表すが、この条件は必須ではない。「遅延放出型」は通常の意味で用いられ、製剤の投与と薬物の放出との間に時間差が生じる製剤を表す。「遅延放出型」は、長時間にわたって徐々に薬物を放出するものであってもなくてもよく、したがって「徐放型」であってもなくてもよい。
【0295】
長期徐放性インプラントの使用は、特に慢性症状の治療に適する場合がある。本明細書で用いられる「長期」の放出とは、インプラントが、治療上効果のある量の活性成分を、少なくとも7日間、好ましくは30〜60日間送達できるように設計および構成されていることを意味する。長期徐放性インプラントは、当業者に周知であり、上記の放出システムのいくつかを含む。
【0296】
以下の実施例によりさらに本発明を説明するが、これらは本発明をさらに限定するものと解釈されるべきでない。本出願を通じて引用されるすべての参考資料(参考文献、権利化済みの特許、公開特許出願および同時係争中の特許出願を含む)の内容はすべて、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【実施例】
【0297】
<実施例1> 固相合成
標準的なβ−シアノエチルホスホラミダイト法に従い、AKTA Oligopilot 10 DNA/RNAシンセサイザー(GEヘルスケア)を用いて10μmolの合成スケールでオリゴヌクレオチドを合成した。プライマー支持体PS200は、GEヘルスケア(ローディング量:40μmol/g)より購入した。オリゴ−2’−デオキシリボヌクレオチドの合成には、5'−DMTで保護されたβ−シアノエチルホスホラミダイト(Sigma−Aldrich)を用い、オリゴリボヌクレオチドの合成には、5'−DMT−2’−TBDMSビルディングブロック(Sigma−Aldrich)を用いた。オリゴヌクレオチド鎖を所望の長さまで伸長させた後、このオリゴヌクレオチド全体の5’末端にあるDMT(4,4’−ジメトキシトリチル)基を、3%DCA(ジクロロ酢酸)のトルエン溶液で処理して除去した。次いで、カラムをアセトニトリルで洗浄した後、5分間アルゴンガスで乾燥した。
【0298】
<実施例2> 5'−三リン酸体
保護基を有するオリゴヌクレオチドが結合しているプライマー支持体(25mg、1μmol)の一部を、小容量の合成カラム(0.25mL、GEヘルスケア)に充填した。このカラムをジクロロメタン(10mL)で洗浄し、次いで、新たに調製した2−クロロ−4H−1,3,2−ベンゾジオキサ−ホスホリン−4−オン(1M)およびジイソプロピルエチルアミン(1.5M)のジクロロメタン溶液を30分間にわたって段階的にカラム上に押し出した。カラムをジクロロメタン(10mL)およびアセトニトリル(10mL)で洗浄した後、続いて0.5Mトリ−n−ブチルアンモニウムピロリン酸塩または0.5Mテトラ−n−ブチルアンモニウムピロリン酸塩を含むアセトニトリル−ピリジン(1:1)溶液(4mL)と20分間反応させた。次いで、カラムをアセトニトリル(20mL)で洗浄した後、酸化剤を含む溶液(10mL、Biosolve)を10分間にわたってカラム上に押し出した。最後に、カラムをアセトニトリル(20mL)およびジクロロメタン(20mL)で洗浄した。
【0299】
<実施例3> 脱保護および精製
3.1 オリゴ−2’−デオキシリボヌクレオチド−5'−三リン酸:
5'−三リン酸修飾ホスホジエステルODNである24218(表2)を、濃縮アンモニア水で処理する(40℃、4時間)ことにより脱保護して担体より切断した。下記の勾配システムのSOURCE 15Q陰イオン交換カラム(CV:6mL、GEヘルスケア)を用いて精製を行った:バッファーA:10mM水酸化ナトリウム、pH12;バッファーB:2.5M塩化ナトリウム、10mM水酸化ナトリウム、pH12。クロマトグラフィーシステムは、Frac950自動分取装置を搭載したAKTA精製装置Purifier10(GEヘルスケア)を使用した。生成物を含む画分を、Biogel P4カラムを用いて脱塩し、次いで凍結乾燥した。
【0300】
3.2 オリゴリボヌクレオチド−5'−三リン酸:
5'−三リン酸アナログ修飾ホスホジエステルORNであるCPG−24299および24300(表2)を、アンモニア水/エタノール(3:1)で処理する(40℃、4時間)ことにより、脱保護して担体より切断した。次いで、DMSO(75μL)、NMP(75μL)、トリエチルアミン(75μL)およびトリエチルアミン−トリヒドロフルオリド(100μL、Sigma−Aldrich)からなる混合物で65℃、2時間処理して2’−TBDMS基を除去した。ブタノールで沈殿させた後、オリゴリボヌクレオチド−5'−三リン酸を、下記の勾配システムのSOURCE 15Q陰イオン交換カラム(CV:6mL、GEヘルスケア)を用いて精製を行った:バッファーA:25mM酢酸ナトリウム、pH7.5;バッファーB:2.0M塩化ナトリウム、25mM酢酸ナトリウム、pH7.5。生成物を含む画分を、Biogel P4カラムを用いて脱塩し、次いで凍結乾燥した。
【0301】
【表2】

【0302】
<実施例4> 解析
得られたオリゴヌクレオチドを、Bruker Esquire 3000+イオントラップ質量分析装置(ネガティブモード)に連結したAgilent 1100 HPLCシステムを用いて分析した。該HPLCシステムは下記のモジュールを有する:ミクロ真空式脱気システム(G1379A)、バイナリポンプ(G1312A)、ウェルプレートサンプラー(G1367A)、カラムオーブン(G1316A)および多波長検出器(G1365B)。カラム:Waters社製 X−Bridge C18 2.5μm 2.1×50mm;カラム温度:60℃;UV検出波長:260nm;流速:0.2mL/min;溶媒A:385mMヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)+14.4mMトリエチルアミン(TEA);溶媒B:メタノール;注入量:10μL;勾配:0min:5%B、15min:17.5%B、50min:24%B、65min:45%B。結果は表2に含まれる。
【0303】
<実施例5> ORNに対するTLR7およびTLR8の反応性
HEK293細胞に、ヒトまたはマウスのTLR7、ヒトTLR8および6xNF−κBルシフェラーゼリポーターコンストラクト(Jurk M et al. (2002) Nat. Immunol. 3:499に記載)を発現するベクターをエレクトロポレーション法により一時的にトランスフェクトした。この細胞に種々の濃度のORNを添加した後、加湿した恒温器で37℃、16時間インキュベートした。その後、細胞を溶解し、BriteLiteを用いてルシフェラーゼ量をルミノメーター(BriteLite、ルミノメーターはともにパーキンエルマー製)で測定した。
【0304】
このアッセイによって、本発明のORNのヒトTLR7に対するEC50値は<100μMであることが分かった。したがって本発明のORNは、ヒトTLR7の強力なアゴニストであることが決定づけられた。
【0305】
このアッセイによって、本発明のORNのヒトTLR8に対するEC50値が<100μMであることも分かった。したがって本発明のORNは、ヒトTLR8の強力なアゴニストであることが決定づけられた。
【0306】
<実施例6> ORNに対するPBMCの反応性
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、RIG−I、TLR7およびTLR8を天然で発現する免疫細胞を含む。ヒトPBMCを全血より単離する。必要であれば、pDCおよび単球を、BDCA−4 pDCまたはCD14単球単離キット(Miltenyi Biotec)を用いて単離し、mDCを、CD19+B細胞を除いた後にBDCA−1(CD1c)mDC単離キット(Miltenyi Biotec)を用いて単離する。細胞をCD11c、CD14、HLA−DRおよびCD123に対するモノクローナル抗体(mAb)(抗CD11c抗体はDiaclone社製、それ以外はすべてBD Biosciences社製)で染色して純度を確認すると、一般に>80%である。mDC画分の純度は、CD14、CD19およびストレプトアビジンに対するモノクローナル抗体を用いた染色により確認される。この細胞に種々の濃度の本発明のORNを添加した後、加湿した恒温器で37℃、16時間インキュベートした。培養上清を回収し、IFN−α、IL−12などの種々の特定のサイトカインに適したELISAによる分析に用いた。
【0307】
その結果、ヒトPBMCは、本発明のORNに対して反応性を示すことが分かった。
【0308】
<実施例7> 癌を治療するためのORNの使用
B16(H−2)腫瘍細胞株は、マウスB16黒色腫由来のOVAをトランスフェクトして作製されたクローンである。Mayordomo JI et al. (1995) Nat. Med. 1:1297−1302。B16腫瘍細胞を、in vitro条件下、ジェネティシン(2mg/mL)とハイグロマイシンB(60μg/mL)とを含むコンディショニング培地で培養する。
【0309】
マウス大腸癌細胞株CT26(H−2)は米国培養菌保存施設(Rockville、Maryland, USA)から購入し、in vitro条件下、コンディショニング培地で維持する。
【0310】
6〜10週齢の雄性C57BL/6(H−2)およびBALB/c(H−2)マウスは、Jackson Laboratory(Bar Harbor, Maine, USA)から入手した。
【0311】
5×10個のB16腫瘍細胞、または2×10個のCT26腫瘍細胞を、0.1mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁し、マウスの横腹に皮下接種する。様々な量(0〜100μg)の本発明のORNを、30μLのPBSに懸濁し、接種後11日目および14日目のB16腫瘍に注入する。腫瘍感作後11日目をスタートに、ORNを4日ごとに最大5回まで腫瘍に注入する。マウスにおける腫瘍の有無とサイズを週に2回診断する。腫瘍サイズは、直交する2つの直径の積で表す。腫瘍の最大径が20mmに達した時点、または潰瘍形成および/または出血が見られた時点でマウスを屠殺する。
【0312】
その結果、癌を治療するために本発明のORNを使用できることが分かった。
【0313】
本明細書のこれまでの記述より、当業者は十分に本発明を実施できると考えられる。明細書に示した実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。なぜなら、実施例は、本発明の一態様の一つの例示を目的としたものに過ぎず、他の機能的に同等の実施形態も本発明の範囲に含まれるからである。本明細書の記載および説明に加え、本発明の種々の変更もまた、これまでの記述から当業者にとっては明らかであり、添付の請求項の範囲に包含される。本発明の利点および目的は、本発明の各実施形態に必ずしも包含されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】

(式中、XはO、SおよびNHから選択され、オリゴリボヌクレオチド(ORN)の5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、XおよびX(複数存在する場合は、各X)はそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、nは、0〜3の整数を示す(ただし、nが0を示すのは、Xがイミダゾールである場合に限る)。ただし、5'−三リン酸基アナログは、5'−三リン酸基ではない。)で表される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
下記式:
【化2】

(式中、XはO、S、NHおよびCHから選択され、オリゴリボヌクレオチド(ORN)の5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、O、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、XはH、OH、OR、NHおよびRから選択され(式中、Rは、C−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、OH、SH、NHR'、BHおよびCHから選択される(式中、R'は、C−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)。)で表される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
下記式:
【化3】

(式中、XはOおよびNHから選択され、オリゴリボヌクレオチド(ORN)の5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、XはOH、OR、NHおよびRから選択される(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)。)から選択される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
下記式:
【化4】

(式中、XはO、SおよびNHから選択され、オリゴリボヌクレオチド(ORN)の5'末端側のヌクレオチドの5’位の炭素に結合し、Xは、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、XはOH、OR、RおよびNHから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)、R1はHおよびC−Cアルキル基から選択され、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NHR'、BHおよびCHから選択される(式中、R'はC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択される)。)から選択される5'−三リン酸基アナログを含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
下記式:
【化5】

(式中、XはO、SおよびNHから選択され、Xおよび各Xはそれぞれ独立して、O、S、NH、CH、CCl、CHFおよびCFから選択され、Xは、OH、OR、SH、NHR、R、イミダゾールおよびNu−O−P(Z)(Y)Xから選択され(式中、RはC−C12アルキル基およびC−C10アリル基から選択され、Nuはヌクレオシドを示す)、Yはそれぞれ独立して、O、SおよびNHから選択され、Zはそれぞれ独立して、H、OH、SH、NH、NHR'、BH、CFH、OPOH、OR'およびR'から選択され(式中、R'はC−C12アルキル基、C−C12アルケニル基、C−C12アルキニル基、C−C10アリル基およびC−C22アルキルアリル基から選択される)、BはHまたはグアニン、アデニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンから選択される核酸塩基である。)で表される5'末端を含む単離オリゴリボヌクレオチド(ORN)およびその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の単離オリゴリボヌクレオチドと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項7】
抗原をさらに含む請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
免疫応答の増強を目的として、免疫応答の強化を必要とする対象者に対して、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与することを含む、対象者の免疫応答を強化する方法。
【請求項9】
癌、アレルギー疾患、喘息または感染症からなる群より選択される疾患の治療を目的として、対象者に対して、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴリボヌクレオチドを有効量投与することを含む、前記疾患を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−502979(P2011−502979A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531606(P2010−531606)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002940
【国際公開番号】WO2009/060281
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(510123079)
【Fターム(参考)】