説明

修飾されたナノ構造チタニア材料及び製造方法

酸化チタン(IV)(チタニア)ナノ粒子の実質的にサイズが均等な組成物を合成するための方法であって、組成物内の大部分のナノ粒子が約100nmの最大径を超えないようにマトリックスの拡張を制約する条件下で、ゾル・ゲル反応工程内でチタニア無機結晶マトリックスを合成する工程を含む方法が提供される。ゾル・ゲル反応工程は、水性条件下で、または非水性条件下の有機ポリマーマトリックス内で発生することができる。酸化チタン(IV)ナノ粒子の実質的にサイズが均等な組成物を含む水性分散液及びペーストもまた提供される。酸化チタン(IV)ナノ粒子は、UV照射に暴露された場合に改良された光活性を示し、さらに活性が可視光線範囲内に拡大されるように可視光線吸収中心を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒及び光活性材料、主として酸化チタン(IV)のナノ粒子から製造された光触媒及び光活性材料を製造するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の化学は、急速に発展してきた研究分野である。それらの特異的性質及びそれらの多機能性のおかげで、半導体は、広範囲の工業的用途、エネルギー用途及び環境用途に適用することができる。
【0003】
酸化チタン(IV)(TiO、従来チタニアとしても知られている)は、最も効率的なn型半導体の1つである。チタニアは、半導体の活性化が、典型的にはUV照射による電磁刺激に基づく用途において特に有用である。そこで、チタニアは、一連の光活性及び光触媒特性の原因と考えられている。チタニアの組成物及びナノフィルムは、気相及び水相両方における有機汚染物質の分解、ならびに細菌の破壊(溶菌)及びその他の微生物の殺滅のために使用できる。例えば、ナノ構造チタニア粉末の懸濁液は、水を浄化するためのUV光反応器に利用されてきた。同時に、ナノ構造チタニアフィルムは、太陽エネルギーを電気に変換させる際に、そして超親水性表面を開発するために使用されてきた。
【0004】
酸化チタン(IV)の望ましい光学的及び電気的特性は、粒子のサイズ及びそれらの表面特性に重度に依存している。そこで、材料工学における相当な努力は、ほんの数ナノメートルの領域内のサイズ変動しか示さない均等な粒子を含有するチタニアの組成物から懸濁液、粉末及び薄膜を調製するための方法に重点的に傾注している。チタニアの光触媒特性は、粒子の形態学的特性、サイズ及び形状に、そして結果として表面積対容積比の数値に関連している。10〜100nmの範囲内のチタニア粒径を備えるナノ構造材料は、光電極フィルム及び超親水性コーティングにおける光触媒としての強化された活性を示す。
【0005】
ナノ結晶チタニアは、Ti3+の陽極酸化加水分解、スプレー熱分解、化学蒸着(CVD)スパッタリング、ラングミュアーブロジェット及びゾル・ゲルをベースとする技術を含む多くの異なる技術によって調製できる。ゾル・ゲル法は、セラミック産業(例えば、多層アルミニウム−酸化シリコン)において最も広く用いられている。しかし、現代の環境に敏感な世界では、従来型のゾル・ゲル法の相当なデメリットは、この方法が産業公害の一因となり、そして大規模工業レベルで材料を製造する経済的誘因を減少させる有機溶媒の使用に依存していることにある。実際に、これらの反応条件への依存は、それが前駆体化合物(典型的には金属アルコキシド)の加水分解及びゾル凝縮反応の同時制御を効果的に達成するのが困難であることを意味する可能性がある。さらに、その後のコロイド状懸濁液の制御には、実際、高レベルの技術的熟練つまり専門スタッフの訓練及び雇用を必要とする。このため、必要な有機溶媒の量を減少させる、または有機溶媒の必要性を完全に取り除きさえする、環境により優しい化学合成工程の開発によって、伝統的なゾル・ゲル法の代替法を提供することが望ましい。
【0006】
チタニアナノ粒子は、UVスペクトル内の電磁放射線に暴露すると、光触媒として作用する。チタニア材料の表面による電磁放射線の吸収は、電荷担体(電子またはいわゆる孔)の形成を引き起こす。正孔の強酸化電位は、水を酸化しヒドロキシルラジカルを作製することができる。それらは、酸素もしくはその他の有機材料を直接的に酸化することができる。この光触媒作用は、チタニア材料の無機ポリマー構造内の適切な可視光線吸収中心(ドープ剤とも呼ばれる)を含めることによって可視スペクトル内に拡大することができる。しかし、それがナノ粒子形態である場合、これらのドープ剤を結晶チタニアマトリックス内へ適切に包含及び分布させるには問題点が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以前に議論したように、光活性及びより詳細には光触媒活性について最大効率を示すのは100nm未満の径を備えるチタニアナノ粒子である。従来型ゾル・ゲル合成技術は、高レベルのサイズ均等性でこのサイズ範囲内のナノ粒子を含む組成物をルーチン的には提供しない。当技術分野において良く知られている合成技術は、1〜100nm超の範囲で広範囲の多数のサイズのナノ粒子の混合物を生成する。そこで、チタニアナノ粒子の最大径を約100nm以下に制御するためのプロセスを提供する必要がある。さらに、より均等なサイズ分布の、最も好ましくは5〜20nmのサイズ範囲にあるナノ粒子組成物の製造を可能にする合成技術を提供するのが望ましい。さらに、好ましくはチタニアナノ粒子のポリマーマトリックス内に可視光吸収中心を効果的に包含することによって、可視光スペクトル内で触媒活性を示す光活性及び光触媒性のナノ粒子の均等な調製物を提供する必要がある。さらにまた、有害な有機溶媒及び試薬の過剰使用の必要性を低減させるチタニアナノ粒子及びナノ粒子フィルムならびにその他の誘導体を調製するための合成方法を提供することが望ましい。
【0008】
上記の望ましい光活性特性を示す、チタニア薄膜及びコーティングの効率的製造に相当な努力が傾注されてきた。そのような薄膜は、典型的にはチタニアナノ粒子の凝集から構成される。チタニアナノ粒子ペーストを用いるスクリーン印刷技術及びドクターブレード法は、ナノ結晶チタニア薄膜を調製するための最もよく知られているプロセスである。従来型ペースト調製プロセスの重大な欠点は、その中にペーストのナノ粒子成分が分散させられる有機溶媒(例えば、エタノールもしくはシクロヘキサン)の存在である。所望の基板上に薄膜を堆積させるために必要な高温焼結工程中には、有機溶媒の存在は、有機負荷物の燃焼に必要な大量の酸素を消費させる。これはさらに、大量の二酸化炭素排ガスの排出またはフィルム内の炭素の析出のいずれかを生じさせる。チタニアフィルム内の炭素析出は、基板上への最終薄膜の低接着を生じさせる亀裂及び構造的欠陥の原因として知られている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、有意なサイズ均等性を示す酸化チタン(IV)(チタニア)ナノ粒子、主として所望の最適UVもしくは可視光線光活性化範囲内に制御されたサイズ分布を備えるナノ粒子の組成物を製造するためのプロセスを提供することによって、当技術分野における欠陥に取り組んできた。さらに、本発明において提供した方法は、必要とされる有機溶媒の量を減少、または有機溶媒の必要性を完全に排除する。最後に、本発明は、同様に有機溶媒和の必要性をなくし、薄膜調製のためのチタニアナノ粒子ペーストを調製するための水性経路を提供する。
【0010】
本発明のこれらの使用及びその他の使用、特徴及び長所は、本明細書に提供した教示から当業者には明白なはずである。
【0011】
本発明の第1態様は、酸化チタン(IV)(チタニア)ナノ粒子の実質的にサイズが均等な組成物を合成するための方法であって、ゾル・ゲル反応工程内でチタニア無機結晶マトリックスを、前記組成物内の大部分のナノ粒子が約100nmの最大径を超えないように前記マトリックスの拡張を制約する条件下で合成する工程を含む方法を提供する。
【0012】
本発明のチタニアナノ粒子は、それらの天然型ではUV光線を用いた照射に応答して所望の光活性を示す。本発明の1の実施形態では、可視光線を用いた照射に応答して光活性を示すチタニアナノ粒子を生成するため、可視光線吸収中心前駆体分子をゾル・ゲル反応工程に加えることができる。任意で、可視光線吸収中心前駆体分子は、窒素、硫黄、及びリンから選択される1つまたは複数の適切なドープ剤を含んでいる。本発明の特定の実施形態では、可視光線吸収中心前駆体分子は尿素であるため、ドープ剤としてチタニアマトリックス内への窒素の組み込みが可能になる。
【0013】
チタニア無機結晶マトリックスは、有機金属チタン前駆体分子から合成されることが好ましい。適切には、有機金属チタン前駆体分子は、チタンアルコキシド、例えばチタンブトキシドもしくはチタンイソプロポキシドである。または、チタニア無機結晶マトリックスはハロゲン化チタン前駆体から合成することができるが、ハロゲン化物塩は、典型的には非水性合成経路において選択される。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、ゾル・ゲル反応工程は、水性条件下で発生する。好ましくは、ゾル・ゲル反応工程は、ナノ粒子の拡張を制御するように作用する錯化試薬の存在下で発生する。適切な錯化試薬には、チタン(IV)金属中心、例えば、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAナトリウム、EDTA二ナトリウム、シュウ酸もしくはオキサミド酸と錯化できる二座配位子が含まれる。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、ゾル・ゲル反応工程は、有機ポリマーマトリックスの存在下の非水性条件下で行われる。有機ポリマーは、適切にはセルロース、そのエチル化誘導体、例えばエチルセルロース(Ethocel(登録商標))、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸水素セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、硝酸セルロース、シアノエチラートセルロース、及び/または三酢酸セルロースなどから選択される。
【0016】
本発明の水性及び非水性両方の実施形態について、ゾル・ゲル反応工程は酸性条件下で行うのが好ましい。より詳細には、好ましい反応条件では、反応のpHは1〜4である。
【0017】
典型的には、本発明の方法によって生成されたチタニアナノ粒子は、実質的に球状である。
【0018】
本発明の所望のナノ粒子は、100nm未満の径を備えるチタニアの結晶状粒子である。好ましいナノ粒子は、0.1〜100nmの流体力学半径を有する。典型的には、本発明のチタニアナノ粒子は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、よりいっそう好ましくは約5〜約40nm、さらに好ましくは約7〜約20nmの径を備える球状粒子である。本発明の特定の実施形態では、本発明のナノ粒子は、約10〜約15nmの径範囲に集中する狭いサイズ分布内にある。
【0019】
本発明の第2態様は、チタニアナノ粒子の水性分散液を含む組成物であって、前記チタニアナノ粒子が実質的に均等なサイズ分布を備えることを特徴とする組成物を提供する。本発明の好ましい実施形態では、本組成物は、有機結合剤をさらに含んでいる。適切には、本有機結合剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、またはメトキシ−ポリエチレングリコールなどの誘導体である。
【0020】
本発明の第3態様は、基板をコーティングする際に使用するのに適切な水性チタニアペースト組成物であって、実質的に均等なサイズ分布を備えるチタニアナノ粒子、及び有機結合剤化合物を含む組成物を提供する。好ましくは、本有機結合剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、またはメトキシ−ポリエチレングリコールなどの誘導体である。
【0021】
本発明の方法及び組成物は、ナノ粒子の約70%、より好ましくは80%、及び特に好ましくは90%が上述したサイズ分布内に含まれるチタニアナノ粒子の実質的に均等な調製物を提供する。本発明の特定の実施形態では、少なくとも75%のチタニアナノ粒子は、約10〜約15nmの径範囲が中央値となるサイズ分布を有する。
【0022】
本発明の第4態様は、固体基板を、実質的に均等なサイズ分布のチタニアナノ粒子を含む光活性層でコーティングする方法であって、以前に記載したタイプの水性組成物を基板上に堆積させる工程、及び水相及び任意の関連する有機負荷物を排除し、コーティングの焼結を引き起こすように、前記コーティングを熱処理する工程を、含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態では、前記水性組成物は、浸漬コーティング技術、ドクターブレード技術、スプレーコーティング技術、スクリーン印刷技術、及びスピンコーティング技術からなる群から選択される技術によって前記基板上に堆積させられる。
【0023】
本発明の第5態様では、上述した方法の内の1の方法によってコーティングされ、実質的に均等なサイズ分布を備えるチタニアナノ粒子を含む熱処理されたフィルムを含むコーティングされた基板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(図面の簡単な説明)
図1は、水性環境においてゾル・ゲル技術を適用することによって調製された、修飾された(窒素含有)チタニア水性懸濁液の特徴的な流体力学半径(Rh)分布を示した図である。図示したように、流体力学半径は、最大値10nmを備える狭い分布を示す。
図2aは修飾された(窒素含有)チタニアフィルムの典型的な原子間力顕微鏡(AFM)平面図を示しており、図2bは対応するSEM画像を示している。これらのフィルムは、錯化剤としてアセチルアセトンを利用する水性溶媒中でのゾル・ゲル法に続いてドクターブレード法を適用することで調製した。これらのフィルムは、透明で、緻密で、表面欠陥がないように見える。それらは、径が15nmのナノ粒子から構成され、複雑な形態及び高度の表面積拡張を特徴とする。図2cは、窒素フィンガープリントが存在する水性環境においてゾル・ゲル法を適用することによって調製された、修飾された(窒素含有)チタニア水性懸濁液の特徴的なXPSスペクトルを示した図である。図2dは、水性環境におけるゾル・ゲル技術を適用することによって調製された、修飾された(窒素含有)チタニア水性懸濁液の特徴的なUV−可視光スペクトルを示した図である。可視光線範囲内への強度の吸収の存在は明白である。
図3は、セルロースポリマーマトリックスの存在下でのナノ構造修飾された(窒素含有)チタニアコロイド懸濁液(ゾル)の特徴的な流体力学半径(Rh)を示した図である。線a、b、c及びdは、エチルセルロースポリマーの濃度(w/v)が1.2(a)、2.0(b)、0.4(c)及び1.6(d)であるゾルコロイドを示している。強度及び流体力学半径の分布がどちらもセルロースポリマーの濃度と密接に関連することは明白である。
図4は、ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル法及びその後にドクターブレード法を適用することによって調製された、N−ドープされたチタニアフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)−(a)及び原子間力顕微鏡(AFM)−(b)の典型的な画像を示した図である。それらは径が10〜30nmのナノ粒子から構成される。
図5は、セルロースポリマーマトリックス中で修飾されたゾル・ゲル法を適用することによって調製された、N−ドープされたナノ結晶チタニアフィルムに基づく光増感セルの光電流−電圧(I−V)特性曲線を示した図である:固体電解質(PEO−TiOにおけるレドックス対I/I3−)、光線出力:(70.1mW.cm−2)。変換効率は4.5%と驚くほど高かった。
図6は、浸漬コーティング技術を適用してチタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(350nmでのUV照射下)の特徴的な実施例を示した図である。
図7は、ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル法を適用することによって調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(350nmでのUV照射下)の特徴的な実施例を示した図である。
図8は、浸漬コーティング技術を適用して対応するチタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(UV及び可視光線照射の両方)の特徴的な実施例を示した図である。
図9は、ドクターブレード技術を適用して、チタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(可視光線照射下)の特徴的な実施例を示した図である。
図10は、スクリーン印刷技術を適用して、ナノ構造チタニア水性ペーストから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(350nmでのUV照射下)の特徴的な実施例を示した図である。
図11は、浸漬コーティング技術を適用して、チタニア水性ゾルから調製された、TiOナノ結晶フィルム上への水滴についての、UV照射時間の関数としての接触角変化の特性曲線を示した図である。
図12は、ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル法を適用して調製された、TiOナノ結晶フィルム上への水滴についての、UV照射時間の関数としての接触角変化の特性曲線を示した図である。
図13は、ドクターブレード技術を適用して、チタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルム上への水滴についての、UV照射時間の関数としての接触角変化の特性曲線を示した図である。
図14は、本発明のナノ構造チタニア水性ペーストの流体力学図である。
【0025】
本発明について記載する前に、本発明の理解に役立つと思われる多数の用語の定義を提供する。
【0026】
用語「チタニア」は、本明細書では酸化チタン(IV)もしくはTiOを意味するために使用する。
【0027】
用語「ナノ材料」は、本明細書ではナノスケール範囲内にある構造、すなわちサイズが1nm〜数百ナノメートルの範囲に及ぶサイズの構造の、その中の存在によって規定される能動特性を有する材料を意味するために使用する。
【0028】
用語「ナノ粒子」は、本明細書では約1nm〜約100nmの径を有する粒子材料を意味するために使用する。
【0029】
用語「光活性」は、本明細書ではUVもしくは可視光線の存在下で(適切にドープされると)チタニアが示す光触媒及び光電子活性の特徴を含んでいる。本明細書で使用する用語「光触媒作用」は、電磁放射線への暴露及び化学反応を触媒するためのこの作用の適用の効果として、1の材料が電子正孔対を作り出す能力を意味することが意図されている。
【0030】
他に規定しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有している。
【0031】
制御されたサイズの酸化チタン(IV)ナノ粒子の水性ゾル・ゲル合成:
本方法の第1の、そして最も重要な段階は、有機金属前駆体化合物(チタンアルコキシド(IV))の反応(1)による加水分解である:
【化1】

ここで、式中、R=直鎖状もしくは分枝状のアルキル基、好ましくはサイズC−C10の低級アルキルである。式(1)の実施例では、アルコキシドはブトキシド基である:
【化2】

この反応は極めて高速かつ定量的であるという事実のために、最初は、白色の非晶質沈降物が形成される。加水分解は、有機基(R)の除去後に始まり、複数のヒドロキシル基の添加を生じさせる他の有機基に広がる。この反応は、好ましくはpH1〜4である酸性条件下で実施される。この反応は、水分子によるチタン(IV)カチオンの求核攻撃に基づいている。この反応の低pHは、高酸化状態において金属を安定化させ、形成中の結晶マトリックスの内部での欠陥の発生を阻害し、S2加水分解を触媒するため重要である。さらに、溶剤(水)が反応物質の1つであることもまた指摘しておかなければならない。加水分解動態は二次機序に従うという事実により、反応速度はさらに、本工程では一定でチタンアルコキシド濃度が過剰な水の濃度に依存する。
【0032】
本発明によって生成されるチタニアナノ粒子は、UV範囲内で光活性である。しかし、所定の場合には、粒子の光活性を可視光線スペクトル内に拡大させるのが望ましい。この場合には、本工程は、混合物への可視光線吸収前駆体を制御添加する追加の任意の工程、例えば窒素が所望のドープ剤である場合は、尿素溶液が添加される工程を含んでいる。実際に、前駆体としての尿素などの低コストで低毒性の化合物の選択は、さらに本発明の重要な長所も例示する。その他の適切な光線吸収剤には、硫黄及びリンが含まれる。数時間(〜約4時間)にわたる分散混合物の強力かつ持続的な攪拌により、コロイド溶液が生成する。加水分解反応は終了するが、凝縮反応は、方程式に従って起こり続ける:
【化3】

【化4】

式(1)の実施例において、アルコキシドはブトキシド基であり、式(3)は、下記の通りである:
【化5】

【0033】
これらの反応は、三次元無機ポリマーの形成をもたらす。ポリマーの流体力学半径は、ナノ粒子が100nmの数値を超えないように制御される。結果として、沈降速度が増加するにつれて、コロイドは不安定になり、最終的には容易に回収できる沈殿物に変換される。
【0034】
上述した反応スキームにより生成されたナノ粒子は、高均等性のサイズを有している。ナノ粒子拡張相の制御は、溶液が透明になる場合、チタンアルコキシド加水分解の最終段階中に錯化試薬(例えば、キレート剤)を包含することによって達成できる。反応におけるこの段階、いわゆる「微細化(fining)」段階では、チタンの錯化合物(IV)を作製するために、キレート置換基を加えることができる。立体化学的及び機構的理由のため、水からのアルコキシドの求核性攻撃が妨害され、これはその後の凝縮反応の速度制御を生じさせる。実質的に、錯化試薬の包含は、そして、これがチタニア粒子を取り囲む「分子シールド」形成を生じさせ、反応が制御されるという長所を有する。単純だが効果的な錯化試薬は、b−ジケトンアセチルアセトン(Hacacとも呼ばれる2,4−ペンタンジオン)ならびにその誘導体もしくは関連化合物である。その他の適切な錯化試薬には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)−C1016もしくは関連化合物(C1015Na、C1014Na)、またはシュウ酸(HOOC−COOH)及びオキサミド酸(HOOC−CONH)が含まれる。
【0035】
いずれの錯化試薬を使用するべきかという決定は、概してa)遷移金属との有効な錯化、及びb)任意の結果として生じるフィルムの熱処理工程(焼結)中の少量の有機残留物を示す二座置換基の使用に基づく。Ti(IV)金属中心を取り囲む置換基の数は、置換基の相対濃度及び金属濃度に依存する。
【0036】
これらを要約すると、上述した本発明の水性ゾル・ゲル合成工程は:
1.溶媒反応媒体としての水の選択、
2.可視光線吸収前駆体の最適な添加、及び
3.チタニアナノ粒子のサイズを正確に制御するための錯化試薬の適用、を含む実質的な利点を提供する。
【0037】
ポリマーマトリックス内のゾル・ゲル工程による制御されたサイズの酸化チタン(IV)ナノ粒子の合成
加水分解及び凝縮工程の効率的な制御は、有機ポリマーマトリックス内で有機溶媒中のチタニアアルコキシド加水分解工程及びその後のゾルへの変換の効果的制御によって達成することもできる。適切なポリマーは、セルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸水素セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、硝酸セルロース、シアノエチラートセルロース、及び三酢酸セルロースを含むセルロースファミリーの化学修飾された天然ポリマーから選択することができる。その他の適切な有機ポリマーには、グリセリン、ラクトース、マルトース及びフルクトースのポリオールが含まれる。実際には、それらの各々が、前駆体分子の加水分解及び凝縮の反応が起こりうる独特かつ独立したナノ反応器として機能する網状構造の「蜂巣状のマイクロセル(honeycomb microcell)」を提供するために、有機ポリマーマトリックスが選択される。結果として生じるナノ粒子はサイズが均等であり、有機ポリマーのマトリックスセルサイズの制約によって正確に制御される。
【0038】
合成工程は、SN2機構に従う有機ポリマー鎖上に位置するルイス(Lewis)塩基(非結合電子を運ぶヒドロキシル基)からのチタニア前駆体(アルコキシド−Ti(OR)、もしくはハロゲン塩−(TiX))の求核性攻撃に基づいている。繰り返される加水分解反応及びその後の凝縮反応は、反復性構造的鎖、例えば、−O−Ti−O−Ti−O−を備える酸化チタン(IV)の無機ポリマーの形成をもたらす。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、セルロース及びその誘導体は、有機ポリマーの選択として特に適切であると考察される。セルロースのポリマーは、その後の熱処理(例えば、焼結)中に高速度の生分解を示し、それらは環境に優しく、そして多種多様なエチル化レベルで見いだすことができる。さらに、それらの単位重量当たりのコストは低い。
【0040】
ポリマーセルロースの化学構造は、アルコキシド加水分解反応を開始することのできる、利用可能なヒドロキシルも高率で含有している。これらのヒドロキシル基は、酸の添加後のチタニア重合のための開始点として機能する(酸触媒加水分解凝縮)。これらのヒドロキシル基はルイス塩基として作用することによって加水分解反応を開始する。この目的のために入手できるヒドロキシルのパーセンテージは、セルロースポリマーのエチル化レベルと反比例している。この反応は非水性条件下で起こるため、アルコキシドの加水分解には水分子は含まれていない。そこで、求核反応物質が果たす役割は、ポリマー−OH基から始まる。そこで、セルロースポリマーヒドロキシル基からのアルコキシド求核性攻撃の一般的工程は、アルコール分解であり、その反応は以下の式の通りである:
【化6】

ここで、式中、R=直鎖状もしくは分枝状アルキル基、好ましくはサイズC−C10の低級アルキルであり、R’=有機ポリマー鎖である。
加水分解/アルコール分解工程の後には、無機チタニアポリマー鎖が拡張する反復的凝縮反応が続く。
【0041】
この反応をさらに有機ポリマーがエチル−セルロース(ECと表示する)である、以下の略図で例示する:
【化7】

【0042】
粒子の光活性を可視光線スペクトル内へ拡大させるために、本工程は、混合物へ可視光線吸収前駆体を制御添加する追加の任意の工程、例えば、窒素が所望のドープ剤である場合に、尿素溶液を添加する工程を含んでいる。
【0043】
上記の提案された反応モデルによると、有機ポリマー鎖へアルコキシドを付着させた後に、他のアルコキシドを用いた無機半導体ポリマーの凝縮が続く。同様のパターンは、「古典的」なゾル・ゲル法中において機能する。無機ポリマー鎖の伸長は、単一の、直鎖伸長としてだけではなく三次元空間において発生する。本工程は、ゾル内のそれらの相対濃度に依存して、ポリマー鎖の付着で終了させることができる。この反応における水の欠如及び非極性有機溶媒(トルエンなどの)の使用は、チタニアフィルム調製の工程にとっての特定の合成上の利点を保証する。それでもなお、従来型ゾル・ゲル工程と比較して、本発明では必要とされる有機溶媒の量は減少する。さらに、本発明のこの態様において有機溶媒を利用する方法は、多数の付加的利点、例えば(有機相内に溶解もしくは抽出される)反応副生成物の容易な除去(有機相内に溶解もしくは抽出される)、コロイドの粘度及び最終ナノ粒子サイズ分布の両方の調整の改善、及び有機負荷物を燃焼させるために必要な酸素がポリマーによって提供されるため、その後の熱処理工程中の穏やかな燃焼条件などの多数の付加的利点を提供する。
【0044】
つまり、上述した本発明のポリマーマトリックス制御ゾル・ゲル合成工程は、下記を含む実質的な利点を提供する:
1.単純かつ穏やかな反応条件、
2.副生成物除去の容易さ、
3.溶媒(すなわち、有機非極性溶媒)選択に関する柔軟性及び必要な溶媒量の減少、
4.粘度の微調整が可能、
5.ナノ粒子のサイズ及び均一性についての高レベルの制御、
6.有機負荷物の容易な除去、及び
7.ナノ粒子の光活性を可視光線範囲に応答するように改変できる選択肢があること。
【0045】
制御されたサイズのチタニアナノ粒子組成物を製造するための上記2つの工程(すなわち、水性チタニア技術及びセルロースポリマーマトリックス内でのゾル・ゲルからのチタニア分散法)は、複雑な形態、拡大された表面積を有し、さらに任意に可視光線スペクトルへの増強した応答を備えるナノ構造の酸化チタン(IV)ナノ材料、粉末、及び/またはフィルムを提供することができる。水または他の溶媒中の本発明のチタニアナノ粒子の懸濁液/分散液は、明確に確立された薄膜堆積技術を用いて基板表面上に容易に堆積させることができる、または凝縮及び適正なアニーリング後に粉末に変換させることができる。いずれの場合においても、可視光線吸収中心がチタニアマトリックス内に含まれている場合には、適切な熱処理(例えば、焼結)工程は、N-ドープされたナノ構造酸化チタン(IV)−TiO−xNxの形成を生じさせる。
【0046】
薄膜コーティング剤に使用するためのペーストとしてのチタニアナノ粒子の水性分散液
本発明は、上記に記載したいずれかの工程によって合成された、改変されたチタニアナノ粒子を含む新規なナノ構造チタニアペーストの開発にもさらに向けられる。これらのペースト中のナノ粒子は、任意に、可視光線吸収中心前駆体を含むことができる。有機溶媒に代えた水の使用は、炭素析出を回避して、低温(100℃)熱処理工程中には歪むことのない薄膜を生成する複合材料を生じさせる。そこで、所望の基板へ強力に付着した、複雑な形態及び大きな表面積を備える、高性能の不透明もしくは透明の、粗いチタニアフィルムを製造できる。
【0047】
本発明によると、この新規なペーストは、溶媒として水を、そして結合剤及びレオロジー剤としてポリエチレングリコール(PEG)を利用する。ペースト調製中には、水は、前に修飾されたゾル・ゲル水性懸濁液もしくは有機分散液から合成されていた、チタニアナノ粒子のための容易で低コストの通常の溶媒として使用される。さらに、PEGは、水中(室温)、高溶解性の低コストの有機成分を意味している。その存在は、チタニアナノ材料間の有益な分離/結合及び基板上へのペーストのより強力な接着を生じさせる。本発明のペーストは、改良されたレオロジー特性及び粘度特性を示す。PEG成分は、フィルムの熱処理中に容易に燃焼されるため、その結果として最終生成物(フィルム)中には存在せず、低い有機負荷を示す。適切な熱処理を用いた、ペースト堆積及び関連するフィルムの形成の後、空間を占める均一なチタニア粒子を残して、有機負荷物は除去される。熱処理は、伸展された三次元半導性網目構造を作製して、ナノ粒子の相互連結を保証する。この工程は、複雑な形態ならびに伸展された光活性表面積及び高度の多孔性を有する、化学的に改変された二酸化チタンフィルムを産生する。
【0048】
そこで、本発明のペースト組成物は、環境に優しく、改良された品質の製品を製造する、より容易な低コスト試薬を提供するという本発明の所望の目標を依然として満たしている。
【0049】
本発明のナノ材料によってコーティングされた基板表面は、特定の特性を得え、強化された光触媒活性を提示する。原子間力顕微鏡検査により、チタニア層のナノ構造特性が確認される。堆積は、便宜的には、研究室で改変された浸漬コーティング技術、ドクターブレード技術またはスクリーン印刷技術などの、複数の適切な方法を適用することで実施される。本発明の好ましい実施形態では、チタニアナノ粒子の径は約15nmであり、狭い分布を示す。粒子の形状は球状である。フィルムは、透明で、亀裂がなく、表面欠陥を伴わず、複雑な形態及び伸展された表面積を伴うように見える。
【0050】
ナノ粒子及びチタニアフィルム/コーティングの有用性
本発明のナノ粒子組成物には、液体中、好ましくは水性液体中、ならびにコーティング中、もしくは固体基板上のフィルム中の、ナノ粒子の分散液が含まれる。これらの生成物の用途には、太陽エネルギーの電気への直接変換、有機及び生物学的汚染物質の光触媒分解ならびに抗菌性及び超親水性表面の開発などのエネルギー及び環境プロセスが含まれる。
【0051】
導電性基板(導電ガラスなど)上でのナノ構造チタニアフィルムの堆積により、再生型太陽電池、詳細には増感剤として色素も利用する太陽電池(色素増感型太陽電池)において使用するための光電極内へのこれらフィルムの組み込みが可能となる。そのようなシステムでは、可視光線は色素によって吸収されるが、ナノ構造チタニア半導体は伝導帯へ射出される電子を励起色素状態から分離する。最後に、光電子は、導電ガラス基板で光電流として収集される。この工程によって、太陽エネルギーから電気への直接変換が行われる。
【0052】
熱処理による適切な表面基板(例えば、スライド、ガラス、パネル、タイル)上へのナノ構造チタニアの固定は、前記表面と接触する液体/水(例えば、有機色素、フェノールもしくは駆除剤)または気体(芳香族炭化水素、有害な有機ガス、窒素酸化物)中の様々な有機汚染物質を完全に分解する能力を有する光触媒性表面の製造を可能にする。これらのいわゆるスマートマテリアルは、紫外線(UV)及び可視光線の両方を用いた照射後には有効な殺生物特性も有する。さらに、適切な表面上へのチタニアナノ構造フィルムの堆積は、さらにその表面に有益な光誘導超親水特性を与えることができる。実際に、UVもしくは可視光線を用いた照射後に、ナノ構造の改変修飾されたチタニア表面は、超親水特性を得る。光誘導超親水性は、水滴と支持構造の表面との間の接触角の重大な減少によって分析されているため、この表面は自己浄化特性を示す。チタニア表面上の光触媒作用及び光誘導超親水性の両方の現象は、改変された基板の永続的特性であることに注目するべきである。
【0053】
本発明のナノ粒子の水性分散液は、光活性化廃水殺菌及び浄化などの多様な用途において重大な有益性を有している。ナノ粒子の水性分散液は、さらに長い保管寿命を示しており、建築業界において使用するための塗料、処理剤、下塗り剤、セメント、石膏及び洗浄剤への添加剤として使用できる。この方法で、本発明のナノ粒子の光活性触媒特性は、建造物の表面に適用することができ、都会の大気環境の改善に寄与する。
【0054】
本発明の水性ナノ粒子懸濁液のまた別の有用性は、例えば、調理において使用される機器、物品及び用具の光媒介性洗浄にある。本発明のこの実施形態では、ナノ粒子は可視光線吸収中心を含有しており、可視光線に曝露させることのできるチャンバー(光反応器)内の水溶液中に分散させられる。洗浄が必要な用具及びその他の物品は、しばらく溶液中に浸漬させられ、可視光線のスイッチが入れられる。水溶液中に分散したナノ粒子は可視光線エネルギーによって活性化され、浸漬させられた調理用具に対して洗浄効果を有する殺生物性ヒドロキシルラジカルを水中で生成する。さらに、油及びグリースなどの有機化合物は、光触媒作用によって直接的に分解する。本発明のこの実施形態の重要な利点は、洗浄済み用具の抜去後に水性ナノ粒子分散液が再使用可能であり、環境にとって損害を与える洗浄剤もしくは他の腐食性化学薬品の必要性を低減させることにある。
【0055】
さらに、本発明を以下の非限定的な例によって例示する。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
ゾル・ゲル法による水性媒質中での改変されたチタニアナノ構造材料の調製。チタニアナノ構造フィルムを開発するための浸漬コーティング法及びドクターブレード法による水性ペーストの堆積との組み合わせ
チタニア前駆体であるテトラブチルオルトチタネートの溶液(15%(v/v))を100mLの酸性(pH4未満)水溶液(HNOなどの無機酸またはHCOOHなどの有機酸、約1.5%(v/v))へ強力に攪拌しながら加えた。この混合溶液へ、N−ドープされたチタニアマイクロ粒子の製造が可能になるように、ある量の可視光線吸収前駆体(すなわち、尿素、30%(w/v)まで)を溶解させた。分散混合液を約4時間にわたり持続的に攪拌すると、コロイド溶液の形成が生じた。
【0057】
溶液が純化された後にのみ、錯化剤であるアセチルアセトン(4%(v/v))を含有する第2溶液を加えると、最終溶液の色は黄色−橙色に変化した。持続的に攪拌しながら、ある量の改変剤−安定剤(すなわち、PEG)を最終ゾルに加えた。この懸濁混合液は、室温で数カ月間にわたり安定性であり、溶液中のナノ粒子のサイズ分布(流体力学半径)は7〜12nmの範囲内の最大値を示した(図1)。実際に、図1から明らかなように、合成された圧倒的多数のナノ粒子は、この狭いサイズ分布内に含まれている。
【0058】
適切な溶媒を加え、そしてホモジナイズ技術を使用することによって、懸濁液はスプレーシステム内に導入することができた(オクヤ(Okuya)他著、Solar Energy Materials and Solar Cells、第70巻、第4号、2002年1月1日、第425〜435頁(11)を参照)。さらに、水性成分の減少を制御することによって、従来型スクリーン印刷技術を適用して基板上に容易に堆積させることのできるペーストが形成されるであろう。
【0059】
改変された(窒素含有)ナノ構造チタニア粉末を調製するための方法には、その後に400〜550℃の範囲内の温度で固体残留物の熱処理が行われる溶媒蒸発法が含まれる。この方法は、35〜70m/gの比表面積を備えるN−ドープされた酸化チタン(IV)ナノ構造粉末の形成を生じさせる。攪拌及びオートクレーブ内での水温処理と組み合わせて、混合水性/有機系(水−PEGの混合液)中へ前記粉末を添加すると、対応する修飾されたチタニアペーストの調製物が生じた。
【0060】
ナノ構造のN−ドープされたチタニア薄膜を調製するため、ゾルを1〜10cm/分の範囲内の安定した抜去速度にしたがって、浸漬コーティング法を適用してガラス基板上に堆積させた。結果として生じるフィルムは、過剰な水を除去するために、120℃で30分間予備加熱した。次の工程には、5℃/分の速度での120℃から400〜550℃までの漸進的熱処理が含まれ、このフィルムは、有機負荷物の完全な燃焼を実行し、チタニアナノ粒子の焼結を達成するために、60分間最終温度で維持された。
【0061】
ドクターブレード技術を適用するペースト堆積工程は、以下の工程を有する:導電ガラス基板を平坦な表面上に配置する、所望の間隙幅を決定するのに役立つようにガラス側面に沿って2本の接着テープストリップを配置する。引き続いて、ピペットが基板のフリーな部分の辺縁に適切な量のペーストを移した。ペーストは次にドクターブレードを用いて基板に沿って2回塗り付けた(1回目は上向き方向、2回目は下向き方向へ)。生じたフィルムは、浸漬コーティング法によって調製されるフィルムの場合と同様の熱処理を受けさせた。
【0062】
堆積法:ドクターブレード;浸漬コーティング;スクリーン印刷;、スピンコーティング;スプレーコーティング法;結晶構造(アナターゼ、ルチル)、ナノ結晶及びナノ粒子のサイズ、表面形態(粗さ及びフラクタル性)などのチタニアフィルムの物理化学的特性とは無関係に、調製された窒素含量は、最初の水性チタニア懸濁液の濃度に関連していることを強調しておきたい。これは、対応する材料についての原子間力顕微鏡検査(図2a)、走査型電子顕微鏡検査(図2b)、X線回折法及びラマン分光法による特性解析を適用して検証された。XPS(図2c)及びUV−可視光(図2d)スペクトルは各々、ドーパント(窒素)がチタニアマトリックス中に存在すること、及びこれが観察された重大な可視光線吸収の起源であることを確証している。
【0063】
(実施例2)
セルロースポリマーマトリックスの存在下でのゾル・ゲル法による修飾されたチタニアナノ構造材料の調製。ナノ構造チタニアフィルムを開発するためのドクターブレード技術による堆積との組み合わせ。
60℃でトルエン中に溶解したエチルセルロースから1%(w/v)溶液を調製した(溶液A)。別個の容器内で、適切な量の可視光線吸収前駆体である尿素(2.0M)及びチタニア前駆体であるチタンイソプロポキシド(0.5M)の溶液を有機溶媒としてのトルエン中で混合した(溶液B)。
【0064】
溶液A及びBを25℃に冷却し、次にそれらを攪拌しながら一緒に混合した。最終溶液は、0.1〜0.5Mの範囲内の[Ti(IV)]濃度及び0.1%(w/v)〜4.0%(w/v)の範囲内のセルロース含量を有しているはずであった。一緒に混合される2種の溶液の使用は、前駆体試薬とセルロースポリマーとの均等な相互作用の必要性によって正当化された。アルコキシドを急激に添加すると、溶液の温度に依存してゲル形成がもたらされた。混合溶液は、アルコキシドのアルコール分解及び改変された半導体コロイド懸濁液(ゾル)の形成を促進するため50℃で数時間加熱した。ゾル・ゲル調製方法中の有機ポリマーマトリックスとチタニアアルコキシドとの間の相互作用機序、さらに懸濁液の安定性は光学分光法及び粘度測定を適用して検証したが、流体力学半径の測定は、動的光散乱法を適用して実施した(図3)。
【0065】
ナノ構造チタニア粉末の形成は、溶媒蒸発(緩やかな条件で)及び30分間の400℃〜550℃での固体残留物の熱処理後に発生した。多孔性についての試験は、30〜80m/gの高い比表面積を備える材料を示していた。
【0066】
ドクターブレード技術を適用するペースト堆積工程は、実施例1の対応するセクションに記載した同一工程を有している。最終の修飾されたチタニア薄膜(結晶構造(アナターゼもしくはルチル)の物理化学的特性、ナノ結晶及びナノ粒子のサイズ(10〜30nm)、フィルム厚(100nm〜10μm)、表面形態、粗さ及びフラクタルディメンション
は、セルロースポリマーの初期濃度に直接的に関連していた。これは、対応する材料へのX線回折法、ラマン分光法、走査型電子顕微鏡検査(図4(A))、及び原子間力顕微鏡検査(図4(B))による特性解析を適用して検証された。
【0067】
コロイド懸濁液及び結果として生じる改変されたナノ構造チタニアの粉末はどちらも、スプレーシステムに容易に適応させることができた。そのようなシステムの開発は、加圧下の密閉容器中での不活性ガス担体(通常は、窒素またはアルゴン)を用いたナノ構造チタニア分散液の組み込みを含んでいる。特殊弁からの加圧ガス担体の放出は、チタニアナノ粒子を標的に運ぶ。類似のN−ドープされたナノ構造チタニアフィルムは、結合ブレード(ドクターブレード技術)、スクリーン印刷、スピンコーティング、スプレーコーティング及び浸漬コーティングを用いて上述したナノ構造チタニアの材料(コロイド懸濁液及び粉末)から調製できる。
【0068】
(実施例3)
ナノ構造のN−ドープされたチタニア水性ペーストの調製。ナノ結晶二酸化チタンフィルムを開発するためのスクリーン印刷技術による堆積及びドクターブレード法との組み合わせ
正確な濃度(すなわち、30%(w/w))の水溶液を調製するために必要な量のポリエチレングリコール(PEG)もしくはその誘導体[例、メトキシ−ポリエチレングリコール、活性化もしくは改変されたメトポリエチレングリコール、エーテル、ポリエチレングリコール]を室温で水中に溶解させた(溶液1)。
【0069】
溶液1が透明溶液になったら、等量の酸化チタン(IV)ナノ粉末(すなわち、上記の実施例にしたがって調製されたN−ドープされたチタニアナノ粒子)を強力に攪拌しながら加えた(懸濁液2)。
【0070】
懸濁液2を30分間超音波処理器に投入すると、最終混合液はチタニアペーストを構成した。PEG及び酸化チタン(IV)の濃度は、各々10%〜50%及び50%〜10%の範囲内であった。PEGもしくはその誘導体の分子量は、1,000〜20,000の間で変化させることができ、酸化チタン(IV)ナノ粒子の径は10〜100nmの範囲内にあった。より均等な結果を得るためには、ペーストを12時間にわたり200℃で水熱処理にかけた(スキーム1)。ペーストの安定性は、光学分光法及び粘度測定法によって確証した。本発明の水性チタニアナノ構造ペーストの剪断速度の流体力学図については図14を参照されたい。
【0071】
スクリーン印刷技術を適用するペースト堆積工程は、以下の工程を有していた:導電ガラスはスクリーン印刷機(EKRA Microtronic II,Bonnigheim、ドイツ)の適切な平面上に配置し、ペーストは、以下の特性:メッシュ開口部w=250μm、スレッド径d=120μm、開放スクリーン面積?=46%、織物厚さD=225μm、スクリーンの寸法=44cm×44cm、スクリーン材料=ポリエステルを有するスクリーン(Koenen GmbH,Ottobrun、ドイツ)上に塗布した。ペーストの堆積は、7.5atmに等しい力をスクリーン基板上に適用する、機械上に適切に配置された特定のプラスチック製スキージを用いて行った。スキージとスクリーンとの角度は80°、スキャナー速度は30mm/秒であった。得られたフィルムは、液体溶媒(水)を除去するために、120℃で15分間予備加熱した。
【0072】
次の工程は、約15分間の規定の加熱後に、120℃から400〜550℃の領域までの漸進的熱処理を含む。フィルムは、少なくとも30分間にわたり最終温度で維持した。実験結果の比較は、ドクターブレード法によって作製された関連するフィルムの物理化学的特性はスクリーン印刷技術と相違しなかった。これは、ペーストの品質及び多機能性を実証していた。
【0073】
(実施例4)
太陽エネルギーから電気への直接変換への修飾されたナノ構造チタニアフィルムの適用。
ナノ結晶型太陽電池は、それらが示す高い費用性能比のために、電気への太陽エネルギー変換の分野において将来性があると考えられる。以前の工程に関する限り、チタニアフィルムの役割には2つある:チタニアフィルムは色素分子アンテナ(光線の吸光度の原因となる)が化学的に付着するための基質として機能する、そして、チタニアフィルムは射出された電子の輸送が行われる材料を構成するため、電気担体を分離する。
【0074】
チタニアフィルムに基づいて開発された光増感電池は、3つの主要な部分:色素増感半導体電極、電解質及び対電極を含んでいる。光感作は、上記の実施例において詳述したように生成し、導電ガラス基板上に堆積させたナノ結晶チタニア薄膜で発生した。チタニア薄膜は、1時間120℃で予備加熱した。この後に、直ちにエタノールをベースとする色素溶液中に浸漬した。レドックス対(I/I3−)を電解質中に分散させたが、これは対電極から酸化色素分子へ電子を運ぶことによって色素分子を再生する能力を有していた。この電池は、複合固体状態ポリマーレドックス電解質:(I/I3−)ポリエチレンオキシド、及び酸化チタン(IV)(PEO−TiO)を使用した。
【0075】
対電極は、導電基板上に堆積させた白金薄層から構成された。電池の照射は、光増感電極の側面から実施され、電流収集は、2枚の導電基板上に付着させられた電気接蝕によって行われる。この方法で、特徴的な光電流−光電圧(I−V)ダイアグラムを決定し、開放回路電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)、フィルファクター(FF)及び入射光線から生成された電力(?)への総変換性能などの電池パラメーターを推定した。エチルセルロースをベースとする薄膜については、結果として生じる総変換比(入射光線対生成される電力)は、固体光感作電池についての技術分野において報告された対応する数値よりはるかに高い4.45%であった。
【0076】
これは、修飾されたチタニア(水性懸濁液及び/またはポリマーセルロースマトリックス)を含有するゾルからの本発明によるフィルム調製が:(a)妨害されない電子輸送、最適な焼結及び基板への強度の接着についてのナノ構造特性、(b)化学吸着された色素分子の高表面濃度を達成するための、拡大された表面積、及び(c)光子との拡大された相互作用に好都合な光学特性(透明なチタニアフィルム)を備える、高度に有効な半導性電極基板の形成に寄与することを示している。これまでに報告された中で最高の総変換効率の達成(固体電解質を含有する太陽電池について)は、半導性基板を調製するために本明細書で提案した技術の長所を裏付けている。上述の制御されたゾル・ゲル合成は、太陽エネルギーの直接変換の分野において類似の用途のための理想的な方法である。
【0077】
(実施例5)
汚染物質の光触媒分解への改変されたチタニアナノ構造薄膜の適用。
ガラス基板(顕微鏡のスライドガラスまたは導電ガラス)上に(先行実施例に記載したそれらの対応する材料から)堆積させた改変されたチタニアナノ構造薄膜の光触媒能力を、色素増感型太陽電池中の酸化チタン(IV)ナノ構造フィルムの成功した適用、及びメチルオレンジ(MO)アゾ色素汚染物質の分解によって推定した。
【0078】
MOの選択は、この特定のアゾ色素が汚染物質の典型的な例であり、染色及び繊維工業において広く用いられる色素の代表的な化合物であるという事実に基づいていた。環境内のアゾ色素汚染物質の存在は、色素自体のみならずそれらの安息香酸誘導体にも起因する外観及び腫瘍形成(癌の発生)に結び付いていると思われる。
【0079】
図6〜10は、本発明のナノ材料である光触媒組成物の存在下での、このアゾ色素溶液(2×10−5M)の光触媒性分解動態を提供している。分解は、反応定数の決定を許容する、ラングミュア‐ヒンシェルウッドモデルから予測されるように、擬一次動態にしたがうことを強調しておかなければならない。色素の完全分解のために必要とされる時間は、およそ1〜10時間である。光触媒活性は、液体汚染物質を再生する少なくとも10回の完全光触媒性分解サイクルにわたって安定していることを強調しておかなければならない。
【0080】
ナノ材料中に存在するN−ドープされた材料は、UV光線を用いた対応する活性に加えて、可視光線範囲内の増強した光触媒活性を提供する。さらに、浸漬コーティング技術を長さが40cm及び径が1cmのパイレックス製円筒形ガラス管の内面のコーティングに適用した。このガラス管を適切な熱処理後に、気相光触媒反応器内に導入した。そこで、先行実施例において開発された材料(水性チタニア懸濁液または有機ポリマー分散液、ゾル及び粉末)から調製されたフィルムは、複雑な形状及び寸法の基板上に堆積させることができ(平面に制限されない)、一連の特徴的な気体汚染物質、すなわち:芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン)及び酸化窒素(NOx)の光触媒分解(UV及び可視光線照射両方について)において匹敵する活性を示すことが確証された。
【0081】
同様のチタニア薄膜は、並行して、それらが対応する培養中で細菌及び真菌の集団を劇的に減少させることが立証されたために、自己滅菌能力を提供する。最後に、対応する改変されたチタニア懸濁液及び分散液の熱処理後に調製されたナノ構造チタニア粉末は相当に高い光触媒活性を提供することを指摘しておきたい。そこで、本発明のナノ構造材料(フィルム及び粉末)の環境的適用は、極めて現実的な、高性能の標的であり得ることが実際的に証明された。
【0082】
(実施例6)
自浄式超親水性表面を開発するための修飾されたチタニアナノ構造フィルムの適用
薄膜の湿潤能力を評価するために、UV光線による事前の照射後に、(ガラス基板上に堆積させられた)ナノ構造チタニア薄膜上の水滴の接触角の測定を実施した。
【0083】
チタニアナノ構造薄膜をガラス基板上に堆積させ(以前に記載した堆積技術を使用して)、ソフトなUV(350nm)または可視光線の照射後のそれらの親水性を評価した。このために、フィルム表面上の水滴の接触角を測定した。ガラス基板は通常は極めて疎水性であり、初期接触角は55°の数値を超えることを言及しておきたい。これとは反対に、改変されたナノ構造チタニア基板は、接触角が少なくとも2分の1であったので、より親水特性を表しており、これはチタニアフィルムへの環境照明の影響に帰せられる事実である。
【0084】
接触角のさらなる減少は、UVに近い光線を用いたチタニアフィルムの照射によって誘導することができる。詳しくは、上述したように改変された多数のチタニア薄膜について照射時間への接触角の依存性を提示している図11〜13を参照されたい。図示したように、改変された二酸化チタニアフィルムと水滴との接触角は、照射時間の増加に伴って減少した。実際に、水性懸濁液から結果として生じるN−ドープされた材料の場合(図13)には、25°の接触角(UV照射前)は30分間のUV照射後に約16°へ減少し、60分間の照射後にはさらに8°へ減少した。フィルムをより長時間にわたって照射した場合は、接触角は1°未満に減少することが観察された。これらの結果は、ナノ構造チタニアフィルムがUV光線を用いた照射後に超親水特性を提供するようにガラス表面が改変されたことを証明している。類似の実験は、これらのチタニアナノ構造フィルムを用いて修飾された各表面(セラミックタイル及び金属板)が光誘導された超親水特性を入手することを証明した。
【0085】
本発明の特定の実施形態を詳細に開示してきたが、これは例として、例示する目的でのみ開示したものである。上述の実施形態は、添付の特許請求の範囲に関して限定することは意図されていない。本発明者らは、特許請求の範囲によって限定された本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、本発明に様々な置換、変更、及び修正を加えられることは意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】水性環境においてゾル・ゲル技術を適用することによって調製された、修飾された(窒素含有)チタニア水性懸濁液の特徴的な流体力学半径(Rh)分布を示した図
【図2a】修飾された(窒素含有)チタニアフィルムの典型的な原子間力顕微鏡(AFM)平面図
【図2b】対応するSEM画像
【図2c】窒素フィンガープリントが存在する水性環境においてゾル・ゲル法を適用することによって調製された、修飾された(窒素含有)チタニア水性懸濁液の特徴的なXPSスペクトルを示した図
【図2d】水性環境におけるゾル・ゲル技術を適用することによって調製された、修飾された(窒素含有)チタニア水性懸濁液の特徴的なUV−可視光スペクトルを示した図
【図3】セルロースポリマーマトリックスの存在下でのナノ構造修飾された(窒素含有)チタニアコロイド懸濁液(ゾル)の特徴的な流体力学半径(Rh)を示した図
【図4a】ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル法及びその後にドクターブレード法を適用することによって調製された、N−ドープされたチタニアフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)−(a)の典型的な画像を示した図
【図4b】ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル法及びその後にドクターブレード法を適用することによって調製された、N−ドープされたチタニアフィルムの原子間力顕微鏡(AFM)−(b)の典型的な画像を示した図
【図5】セルロースポリマーマトリックス中で修飾されたゾル・ゲル法を適用することによって調製された、N−ドープされたナノ結晶チタニアフィルムに基づく光増感セルの光電流−電圧(I−V)特性曲線を示した図
【図6】浸漬コーティング技術を適用してチタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(350nmでのUV照射下)の特徴的な実施例を示した図
【図7】ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル技術を適用することによって調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(350nmでのUV照射下)の特徴的な実施例を示した図
【図8】浸漬コーティング技術を適用して対応するチタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(UV及び可視光線照射の両方)の特徴的な実施例を示した図
【図9】ドクターブレード技術を適用して、チタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(可視光線照射下)の特徴的な実施例を示した図
【図10】スクリーン印刷技術を適用して、ナノ構造チタニア水性ペーストから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルムの存在下で、染色及び繊維工業の典型的な汚染物質であるメチルオレンジアゾ色素の光触媒分解(350nmでのUV照射下)の特徴的な実施例を示した図
【図11】浸漬コーティング技術を適用して、チタニア水性ゾルから調製された、TiOナノ結晶フィルム上への水滴についての、UV照射時間の関数としての接触角変化の特性曲線を示した図
【図12】ポリマーセルロースマトリックス中でゾル・ゲル法を適用して調製された、TiOナノ結晶フィルム上への水滴についての、UV照射時間の関数としての接触角変化の特性曲線を示した図
【図13】ドクターブレード技術を適用して、チタニア水性ゾルから調製された、N−ドープされたチタニアナノ結晶フィルム上への水滴についての、UV照射時間の関数としての接触角変化の特性曲線を示した図
【図14】本発明のナノ構造チタニア水性ペーストの流体力学図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン(IV)(チタニア)ナノ粒子の実質的にサイズが均等な組成物を合成するための方法であって、ゾル・ゲル反応工程内で、チタニア無機結晶マトリックスを、前記組成物内の大多数のナノ粒子が約100nmの最大径を超えないように前記マトリックスの拡張を制約する条件下で合成する工程を含む方法。
【請求項2】
可視光線での照射に応答して光活性を示すチタニアナノ粒子を生成できるように、前記ゾル・ゲル反応工程に可視光線吸収中心前駆体分子を加える工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可視光線吸収中心前駆体分子は、窒素、硫黄、及びリンから選択される1または複数の基を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可視光線吸収中心前駆体分子は、尿素である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記チタニア無機結晶マトリックスは、有機金属チタン前駆体分子から合成される請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有機金属チタン前駆体分子は、チタンアルコキシドである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記チタンアルコキシドは、チタンブトキシド、及びチタンイソプロポキシドから選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記チタニア無機結晶マトリックスは、ハロゲン化チタンから合成される請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ゾル・ゲル反応工程は、水性条件下で行われる請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ゾル・ゲル反応工程は、錯化試薬の存在下で行われる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記錯化試薬は、チタン(IV)金属中心と錯化できる二座配位子である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記錯化試薬は、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTAナトリウム、EDTA二ナトリウム、シュウ酸、及びオキサミド酸からなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゾル・ゲル反応工程は、有機ポリマーマトリックスの存在下の非水性条件下で行われる請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記有機ポリマーは、セルロース、セルロースのエチル化誘導体、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸水素セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸トリメリト酸セルロース、硝酸セルロース、シアノエチラートセルロース、及び三酢酸セルロースからなる群から選択される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ゾル・ゲル反応工程は、酸性条件下で行われる請求項1〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応のpHは、1〜4である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記チタニアナノ粒子は、実質的に球状である請求項1〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記チタニアナノ粒子は、約0.1〜約100nmの流体力学半径を有する請求項1〜17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも70%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する請求項1〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも80%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する請求項1〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも90%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する請求項1〜18の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも75%は、約10〜約15nmの径範囲に集中するサイズ分布を有する請求項18に記載の方法。
【請求項23】
請求項1〜22の何れか一項に記載の方法によって合成された実質的にサイズが均等なチタニアナノ粒子を含む組成物。
【請求項24】
前記チタニアナノ粒子は、水分散液中にある請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記チタニアナノ粒子は、固体基板上に塗布される焼結コーティング内に含まれる請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
チタニアナノ粒子の水分散液を含む組成物であって、前記組成物中のチタニアナノ粒子は、実質的に均等なサイズ分布を備える組成物。
【請求項27】
有機結合剤を含む請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記有機結合剤は、ポリエチレングリコール(PEG)及び/またはメトキシ−ポリエチレングリコールまたはそれらの誘導体から選択される請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも70%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する請求項26〜28の何れか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも80%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する、請求項26〜28の何れか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも90%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する、請求項26〜28の何れか一項に記載の組成物。
【請求項32】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも75%は、約10〜約15nmの径範囲に集中するサイズ分布を有する請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
基板をコーティングする際に使用するために適切な水性チタニアペースト組成物であって、実質的に均等なサイズ分布を備えるチタニアナノ粒子と、及び有機結合剤化合物とを含む組成物。
【請求項34】
前記有機結合剤は、ポリエチレングリコール(PEG)及び/またはメトキシ−ポリエチレングリコールまたはそれらの誘導体から選択される請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも70%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する、請求項33〜34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも80%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する請求項33〜34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも90%は、1〜100nm、より好ましくは1〜70nm、特に好ましくは約5〜約40nm、及び最も好ましくは約7〜約20nmの径を有する請求項33〜34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記チタニアナノ粒子の少なくとも75%は、約10〜約15nmの径範囲に集中するサイズ分布を有する請求項33〜34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項39】
実質的に均等なサイズ分布のチタニアナノ粒子を含む光活性層で固体基板をコーティングする方法であって、前記基板上に請求項26〜38の何れか一項に記載の水性組成物を堆積させる工程と、水相及び任意の結び付いた有機負荷物を排除し、前記コーティングの焼結を引き起こすように、前記コーティングを熱処理する工程とを含む方法。
【請求項40】
前記水性組成物は、浸漬コーティング、ドクターブレード法、スプレーコーティング、スクリーン印刷、及びスピンコーティングからなる群から選択される技術によって前記基板上に堆積させられる請求項39に記載の方法。
【請求項41】
実質的に均等なサイズ分布を備えるチタニアナノ粒子を含む熱処理された薄膜を含むコーティングされた基板であって、前記基板は請求項39又は40に記載の方法によってコーティングされた基板。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−519889(P2009−519889A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546692(P2008−546692)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004163
【国際公開番号】WO2007/085911
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508185306)ナショナル・センター・フォア・サイエンティフィック・リサーチ・デモクリトス (1)
【Fターム(参考)】