説明

修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質

本発明は、広範な交差反応性中和応答を生じるエピトープを発現する修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質、それらの使用方法、およびこれらのエピトープに結合する抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、全体が本明細書に参照によって援用される、米国仮特許出願第60/604,802号明細書(2005年8月27日出願)の利益を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、HIV−1エンベロープタンパク質、ならびにエイズの予防および治療のためのワクチンとしてのそれらの使用方法に関する。
【0003】
連邦支援の確認
本発明は、連邦の助成NIH 1RO1 AI37433によって資金を供給された研究から一部生じた。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)による感染を予防するためのワクチンを開発する取組みは、抗体の効果に対するウイルスの耐性によって、複雑になっている。特に、多様な系統のHIV−1の感染性を中和する抗体を誘導するワクチンを開発する取組みには、限られた成功しかなかった。中和抗体は、感染を完全に予防し得る唯一の免疫学的機構なので、ワクチンの成功に重要なようである。中和抗体は、殆どまたは全ての証明されたウイルスワクチンの効果の主な機構である(ガラッソー(Galasso)(1997年)レーブン・プレスのアンチバイラル・エージェンツ・アンド・ディジージーズ・オブ・マン(Antiviral Agents and Diseases of Man、Raven Press)、791−833頁)。HIV−1での天然の感染であっても、強い中和抗体応答と関連しない。殆どの患者において、種々のHIV系統を中和する抗体が生じる前に、長年にわたって感染は進行する(クイナン(Quinnan)ら(1999年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)15、561−70頁)。かかる長期間の後であっても、個体がHIV−1の殆どの系統を中和する抗体を生じるのは稀である。
【0005】
中和抗体の標的であるHIV−1の成分は、エンベロープタンパク質スパイクである。スパイクを含む必須の単位は、120kd表面タンパク質(gp120)および41kd膜貫通タンパク質(gp41)で構成されるダイマーである。スパイクは、かかるヘテロダイマーの三量体と考えられている。gp41分子は複合体をウイルス膜にアンカーし、gp120分子は、ウイルスと標的細胞上の受容体との相互作用を媒介するようにgp41分子と結合する。中和抗体を誘導し、それらと相互作用するエピトープは、gp120およびgp41分子中にある。HIV−1での標的細胞の感染は多段階過程であり、ウイルスgp120分子が標的細胞上の主なウイルス受容体であるCD4に結合したときに開始する。CD4への結合は、ウイルス補助受容体である、通常CCR5またはCXCR4のいずれかであるケモカイン受容体分子に結合できるように、エンベロープタンパク質スパイクのコンフォメーション変化を誘導する。補助受容体へのエンベロープタンパク質の結合は、結果として、ウイルスの膜および標的細胞が集まって融合を経るようになるさらなるコンフォメーション変化を生じると考えられている。一旦膜融合が起こると、ウイルスコアは標的細胞に侵入して、感染過程におけるそれに続く段階を開始し得る。エンベロープタンパク質中の中和エピトープは高度にコンフォメーション依存性であり、それらの多くは、CD4または補助受容体相互作用に続いて起こるコンフォメーション遷移の間に形成され得るのみである。HIV−1を中和する抗体を誘導するよう意図されるワクチンは、免疫系への広範な交差反応性中和抗体を誘導するエピトープの提示を結果として生じ得るように調製される形態のエンベロープタンパク質を用いて設計される。
【0006】
HIV−1エンベロープタンパク質ベースのワクチンの調製に対する非常に様々なアプローチが、広範な交差反応性中和抗体の誘導に関して試みられているが、限られた成功しかなかった。使用されたアプローチは、種々の組み換えDNA技術を用いて調製されたエンベロープタンパク質、エンベロープタンパク質複合体の特定の構造を表す合成ペプチド、エンベロープタンパク質をin vivoで発現する、生きたウイルスベクター、エンベロープタンパク質およびCD4の共有結合した複合体、ならびに他の物質の投与を含んでいた。以前の研究は、特有のHIV−1エンベロープタンパク質を免疫原として利用し、エンベロープタンパク質のワクチンとしての提示の2つの方法を利用し、その両方とも、ウイルスの表面でとるコンフォメーションによく似た形態でHIV−1エンベロープタンパク質を提示するよう設計された(トン(Dong)ら(2003年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)77、3119−3130頁)。
【0007】
これらの研究で用いられた特有のエンベロープタンパク質は、R2と呼ばれる(クイナン(Quinnan)ら(1999年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)15、561−570頁、クイナン(Quinnan)ら、(1998年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)14、939−949頁、トルコーラ(Trkola)ら(1995年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)69、6609−6617頁、チャン(Zhang)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol)76、644−655頁)。このエンベロープタンパク質をコードする遺伝子は、HIV−1の多くの異なる初代分離株を中和する抗体を有するHIV−1感染ドナー由来の細胞から回収された。初代分離株は中和するのが困難であることがよく知られており、感染したヒト由来の血清は、一般に、少数または限られた一部のHIV−1の系統しか中和しない。ドナー由来のエンベロープタンパク質遺伝子はクローン化され、それがコードするエンベロープタンパク質は、徹底的に特徴付けられている。エンベロープタンパク質がシュードタイピングとして公知の方法を用いてHIV−1の表面で発現される場合、ウイルスは特有の特徴を示す。これは、一次受容体であるCD4なしで、HIV−1補助受容体であるCCR5を発現する細胞を感染させることが可能である。HIV−1の他の全ての天然に生じる系統は、感染にCD4を必要とする。ウイルスの他の特徴から、エンベロープタンパク質は、殆どのエンベロープタンパク質がCD4への結合の後までとらないコンフォメーションであることが示唆される。R2エンベロープタンパク質は、まずCD4に結合しなければHIV−1の殆どの系統を中和しないモノクローナル抗体(Mab)による中和に感受性がある。これらのMabは、CD4誘導(CD4i)エピトープに対して配向があるといわれている。これらのエピトープは補助受容体結合に必要なので、これらはHIV−1の系統の間で高度に保存されている。R2エンベロープタンパク質の可変領域3(V3)における稀な変異は、そのCD4非依存的感染性ならびにCD4iMabに対するその感受性に必要である。この変異は、HIV−1の他の系統に対する、同様だが変化しやすい効果を有し、その効果がある程度R2エンベロープタンパク質中の他の配列に依存することを示す。変異は、V3ループ構造の先端付近のプロリン置換を伴う。このプロリンは、疑いなくV3ループのコンフォメーションに対する重大な効果を有し、明らかにEnv全体のコンフォメーションに対する重大な効果を有する。広範な交差反応性中和を誘導するのに用いられる交差反応性CD4iエピトープの発現を明らかに引き起こされるのは、このEnvである。
【0008】
R2エンベロープタンパク質でのマウスおよびサルの免疫に、2つの方法が用いられた(トン(Dong)ら(2003年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)77、3119−3130頁)。一方の方法は、in vivo発現のためのウイルス発現ベクターの使用を含み、他方はgp41分子の一部を失うよう遺伝子工学により作られた形態のエンベロープタンパク質の投与を含んでいた(ブローダー(Broder)ら(1994年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)91、11699−11703頁、アール(Earl)ら(1994年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)68、3015−3026頁)。このタンパク質はgp140と呼ばれ、インタクトなタンパク質スパイクに類似しているが、タンパク質を発現するよう遺伝子工学によって作られた細胞によって可溶性三量体分子として生成される。gp140タンパク質は、そのコンフォメーションをタンパク質アジュバント中で保持する。2つの免疫方法が、別々に、および連続して用いられている。
【0009】
R2Envでのマウスおよびサルの免疫は、互いに類似した、R2エンベロープタンパク質のドナー由来の血清の交差反応性に類似した交差反応パターンを有する中和抗体を誘導した。R2のドナー由来の血清は、試験された全てのHIV−1サブタイプの系統を中和するが、DおよびEサブタイプよりもA、B、CおよびFサブタイプの系統をずっとよく中和する。免疫したマウスおよびサル由来の血清は、A、B、CおよびFサブタイプのHIV−1系統を中和するが、DまたはEサブタイプのものを中和しない。このパターンの交差反応性は、R2エンベロープタンパク質で発現されるCD4i中和エピトープの交差反応性を反映すると推測される。サルにおいて誘導される応答が組み換えサル−ヒト免疫不全ウイルス(SHIV)の試験された3つの系統の1つを中和したことは注目すべきである。中和されなかった2つの系統は、gp41における交差反応性エピトープに対して配向のあるMabである2F5による中和に感受性がある。この発見が含意するのは、R2エンベロープタンパク質は、2F5エピトープを認識する抗体の効果的な誘発因子ではないかもしれないということである。2F5はヒトMabなので、交差反応性中和抗体を有する他のドナー由来のエンベロープタンパク質は、2F5エピトープを認識する抗体のR2よりもよい誘発因子であろうエピトープを発現し得る。
【0010】
2F5Mabは、発見されている3つの最も高度に交差反応性のある中和ヒトMabの1つなので、特に重要である(トルコーラ(Trkola)ら(1995年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)69、6609−6617頁)。その重要性は、2F5および他の2つの高度に交差反応性のあるMabの組み合わせがSHIVでの感染からサルを保護し得ることを示した研究において詳細に記録されている(マスコラ(Mascola)ら(1999年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)73、4009−4018頁、マスコラ(Mascola)ら(2000年)ネイチャー・メディシン(Nat.Med.)6、207−210頁)。2F5によって認識されるコアエピトープは、エピトープマッピング研究によって、ウイルス膜付近のgp41外部ドメインの領域に位置決定されている。コアエピトープのアミノ酸配列は、配列ELDKWAS(配列番号1)である。しかしながら、免疫原としてこの配列またはこの配列とさらなるフランキング配列のいずれかを含む合成ペプチドを用いた中和抗体の誘導の成功した報告はない。したがって、HIV−1エンベロープタンパク質が2F5エピトープに対して配向のある中和抗体を誘導する能力は、さらなる、未だ同定されていない配列に依存するか、または分子のこの領域のコンフォメーションに依存するようである。gp41のこの領域は、標的細胞へのウイルスの付着ならびにウイルスおよび細胞膜の融合の過程の間にコンフォメーション変化を経ると考えられている。HIV−1の殆どの系統の実際の2F5中和エピトープが、融合に関連したコンフォメーション変化が起こるまで実際に形成されないことが合理的に可能である。標的細胞相互作用なしでエピトープを中和活性形態で発現したHIV−1エンベロープタンパク質は、2F5様抗体の誘導のためのワクチン接種投与計画における使用の、特によい候補であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これまでに、出願人らは、BCN抗体を有する個体からの特有のHIV−1エンベロープタンパク質遺伝子の単離を示した(例えば、国際公開第00/07631号パンフレット参照)。この遺伝子によってコードされるエンベロープタンパク質はR2と呼ばれ、そのアミノ酸配列、およびCD4なしで標的細胞に感染する能力がユニークである。R2エンベロープタンパク質は、通常CD4存在下でのみ中和感受性のあるエピトープに対するMabによる中和に対して感受性を有する点で変わっている。これらのMabによる中和に対するR2エンベロープタンパク質のCD4非依存性および感受性は、両方とも、タンパク質のV3における変わった配列に依存している。R2エンベロープタンパク質は、免疫されたマウスおよびサルに用いられており、各種においてBCN抗体を誘導した。R2に標的とされるものとは異なる中和エピトープに対する抗体を誘導するエンベロープタンパク質は、HIV−1感染の予防における普遍的効果に近づいた免疫原の重要な構成要素であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
本発明は、ヒトを含む哺乳動物への投与の後に広範な交差反応性抗体応答を誘導する少なくとも1つのエピトープを含む、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を包含し、該エンベロープタンパク質は、配列番号3の657位または配列番号2の659に対応する残基でアミノ酸置換を含む。ある実施形態において、657位の置換は、アラニンに代わってスレオニンであるが、別の実施形態において、659位の置換は、リシンに代わってスレオニンである。本発明の他の実施形態において、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片は、配列番号2、3、4、5、6、7、43、45、47または49のアミノ酸配列を含むか、または配列番号2、3、4、5、6、7、43、45、47または49のアミノ酸配列からなる。
【0013】
別の実施形態において、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片は、アミノ酸配列番号55を含む少なくとも1つの中和抗体エピトープを含む。いくつかの実施形態において、エピトープのアミノ酸配列は配列番号20または25を含む。
【0014】
本発明はまた、前述の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片のいずれかをコードする核酸を包含する。いくつかの実施形態において、核酸分子は、配列番号42、44、46、48、50、51、52、53または54のヌクレオチド配列を含むか、配列番号42、44、46、48、50、51、52、53または54のヌクレオチド配列からなる。さらなる実施形態において、核酸分子は1つ以上の発現調節因子に操作可能に連結される。本発明はまた、前述の核酸のいずれかを含む核酸ベクターを包含する。本発明はさらに、トランスフェクションまたは形質転換されてこれらの核酸分子またはベクターを含む宿主細胞を包含する。宿主細胞は、真核または原核宿主細胞であり得る。本発明はこの宿主細胞を、前記核酸分子によってコードされるポリペプチドが発現される条件下で宿主細胞を培養する工程を含む、ポリペプチドの生成方法を含む。
【0015】
本発明は、上述のような、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質もしくはその断片、またはこれらのポリペプチドをコードする核酸、および薬学的に許容され得る担体を含有する、組成物を含む。ある実施形態において、組成物は、ヒトにおけるワクチンとして適している。
【0016】
本発明は、前述の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を含む融合タンパク質を含む。本発明はまた、1つ以上の前述の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を、抗体の産生を誘導するのに十分な量投与する工程を含む、哺乳動物において抗体を生じる方法を含む。本発明はさらに、前述の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片のいずれかをコードする少なくとも1つの核酸を、抗体の産生を誘導するレベルのHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を発現するのに十分な量投与する工程を含む、哺乳動物において抗体を生じる方法を含む。本発明は、これらの方法のいずれかによって生成された抗体を含む。ある実施形態において、抗体はモノクローナルであるが、他の実施形態において、抗体は広範な交差反応性HIV−1エンベロープ中和抗体である。ある実施形態において、抗体は、HIV感染を阻害し、かつ/または感染した個体に存在するHIVの量を減少させるのに効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
詳細な説明
HIV−1感染した一群のドナーから、誰が広範な交差反応性中和抗体を有するかを同定した。ドナー由来の血清を、関連の遠いHIV−1の初代分離株の中和に関してスクリーニングして、広範に交差中和する(BCN)と考えられるものを同定した。これらのエンベロープタンパク質およびそれらをコードする遺伝子は、本発明の主題である。
【0018】
HIV−1エンベロープタンパク質
本発明は、広範な交差反応性中和抗体に結合するエピトープを発現する、単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質を包含する。通常、かかるエピトープは、エンベロープタンパク質の結合およびそれに続くエピトープを露出させるためのコンフォメーション変化によって現れるために、細胞表面受容体(例えば、CD4、CCR5、CXCR4等)へのエンベロープタンパク質の融合の間に一時的に発現されるのみである。したがって、エンベロープタンパク質が細胞表面受容体に結合しない場合、かかるエピトープは、一般にエンベロープタンパク質の表面に提示されず、そのため広範な交差反応性抗エンベロープタンパク質抗体の結合(または相互作用)に利用できない。本発明の単離されたHIV−1エンベロープタンパク質は、その表面に、細胞表面受容体への結合なしにこれらのエピトープを発現する。これらのエピトープの発現は、BCN応答の誘導の原因である。
【0019】
したがって、本発明は、広範な交差反応性中和抗体の産生および結合を誘導できるエピトープを含む、HIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を含む。ある実施形態において、エピトープは、HIV−1エンベロープタンパク質が細胞表面受容体に結合しているか否かにかかわらず提示されるHIV−1エンベロープタンパク質の三次元構造の構成要素を包含する。ある実施形態において、これらのエピトープは、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質由来の直鎖状アミノ酸配列である。これらのエピトープは、殆どのHIVエンベロープタンパク質において細胞表面受容体への結合の間に一時的に発現されるだけのエピトープ中のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を含む。それにも関わらず、細胞表面受容体に結合したエンベロープタンパク質なしに三次元構造がタンパク質表面に提示される。これらのエピトープを含むHIV−1エンベロープタンパク質は、ヒトにおける広範な交差反応性中和抗体応答に関連する。発現されたエピトープを含むポリペプチドの例としては、配列番号2(1400/4)、3(2400/4)または55が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
結果として広範な交差反応性中和抗血清を誘導するエピトープを有するエンベロープタンパク質を生じる、一次アミノ酸配列に修飾を含むHIV−1エンベロープタンパク質もまた、本発明に包含される。かかる置換は、in vivoおよびin vitroの両方における、広範な交差反応性中和抗体応答の誘導を与える。かかる変化としては、配列番号2のアミノ酸残基659(1400/4)および配列番号3の残基657(2400/4)に対応する位置でのアミノ酸置換が挙げられるが、これらに限定されない。これらおよび他の位置のアミノ酸残基は、免疫原性を促進するように、単独で、または他の部位と組み合わせて、体系的に修飾され得る。R2エンベロープタンパク質(配列番号41)は、高度に多様化した系統のHIV−1に対して活性のある中和抗体を誘導する例外的な能力を有し、この免疫原性は、残基313および314のプロリン−メチオニン配列の存在に対応する。アミノ酸残基313および314の、これらの位置のコンセンサス配列であるヒスチジン−イソロイシンでの置換は、通常発現にHIV−1エンベロープとその一次受容体であるCD4との相互作用を必要とするエピトープの構成的発現をなくす。かかる修飾にもかかわらず、HIV−1エンベロープタンパク質のコンフォメーションは、ビリオンの構成要素として存在する場合に感染性を維持するのに十分にインタクトなままである。かかる活性のあるエピトープのあるエンベロープタンパク質を有するHIV−1系統に感染した個体(すなわちヒト)は、複数のサブタイプのHIV−1のウイルス感染性を減少またはブロックする免疫応答を発現し得る。
【0021】
本発明のエンベロープタンパク質は、1つ以上のエピトープ部位が修飾された、全長エンベロープタンパク質、および1つ以上の修飾エピトープ部位を含むその断片を含む。ある実施形態においては1つ以上のアミノ酸残基が欠失するが、別の実施形態においては、これらの部位の1つ以上が、エピトープのコンフォメーションを変化させる別のアミノ酸と置換される。置換され得るアミノ酸の例としては、任意の天然に生じるアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。置換され得る好ましい天然に生じるアミノ酸としては、スレオニン、リシンおよびプロリンが挙げられるが、これらに限定されない。修飾されたアミノ酸はまた、任意のエピトープ部位で置換され得る。
【0022】
HIV−1エンベロープタンパク質の既知のエピトープ部位の相対的位置は、複数のHIV−1エンベロープタンパク質配列のアミノ酸配列アラインメントによって決定され得る。他の系統のエンベロープタンパク質のアミノ酸およびヌクレオチド配列情報は、本明細書に参照によって援用されるクイケン(Kuiken)ら(2002年)ロス・アラモス国立研究所LA−UR03−3564のHIVシークエンス・コンペンディウム(HIV Sequence Compendium、Los Alamos National Laboratory、LA−UR03−3564)において参照される。例示的なエピトープ部位としては、2F5および4E10モノクローナル抗体の結合エピトープが挙げられる(ムスター(Muster)ら(1994年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)68、4031−4034頁、ムスター(Muster)ら(1993年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)67、6642−6647頁。2F5エピトープアミノ酸配列(ELDKWAS(配列番号1))は、配列番号4の残基654〜660および配列番号6の残基657〜663に対応するが、4E10エピトープ(NWFDIT(配列番号8))は配列番号4の残基663〜668および配列番号6の残基666〜671に対応する。同じアミノ酸残基番号を有し得ない、他のHIV−1分離株由来のエンベロープタンパク質における、2F5および4E10モノクローナル抗体エピトープを同様に含む対応する残基は、本明細書中で述べるアミノ酸配列アラインメントによって容易に決定され得る。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、残基662に対応するアミノ酸に修飾を含む1つ以上の修飾エピトープ部位を含む、配列番号2、3、4、5、6、7、43、45、47、または49に示されるアミノ酸配列を含むHIV−1エンベロープタンパク質ならびにその断片を包含する。さらに別の実施形態において、本発明は、配列番号22、3、4、5、6、7、43、45、47または49に示されるアミノ酸配列からなるHIV−1エンベロープタンパク質を包含する。
【0024】
核酸分子
本発明はさらに、1つ以上の修飾エピトープを好ましくは単離された形態で含む、単離もしくは修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片をコードする、核酸分子を提供する。本明細書中で使用される場合、「核酸」は、上で定義したタンパク質またはペプチドをコードするRNAまたはDNAと定義されるか、かかるペプチドをコードする核酸配列に相補的であるか、単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質をコードする核酸分子にオープンリーディングフレームにわたって適切なストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするか、または単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質と少なくとも約75%の配列同一性、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%またはさらには95%以上の同一性を共有するポリペプチドをコードする。
【0025】
本発明の核酸分子はさらに、具体的にはオープンリーディングフレームにわたって、単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質をコードする核酸分子の核酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%または95%以上の同一性を共有する、核酸分子を含む。ゲノムDNA、cDNA、mRNAおよびアンチセンス分子、ならびに天然起源由来または合成のいずれでも、代替的バックボーンに基づくかまたは代替的塩基を含む核酸が、特に企図される。しかしながら、かかる核酸は、適切なストリンジェンシー条件下でコード、ハイブリダイズするか、または本発明のタンパク質をコードする核酸に相補的であるものを含む、いずれの従来技術の核酸に対しても新規であり自明でないとしてさらに定義される。
【0026】
ヌクレオチドまたはアミノ酸配列レベルでの相同性または同一性は、配列相同性検索のために調整された、blastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxのプログラムによって使用されるアルゴリズムを用いたBLAST(ベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(Basic Local Alignment Search Tool))解析によって測定され得る(アルチュール(Altschul)ら(1997年)ニュークレイック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.)25、3389−3402頁およびカーリン(Karlin)ら(1990年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)87、2264−2268頁、共に参照によって完全に援用される)。BLASTプログラムによって用いられるアプローチは、まず、ギャップありまたはなしで、クエリー配列とデータベース配列との間の類似したセグメントを考慮し、次いで同定された全ての対の統計上の有意性を評価し、最後に、予め選択された有意性の閾値を満たす対のみを要約する。配列データベースの相同性検索における基本的問題の説明については、参照によって完全に援用される、アルチュール(Altschul)ら(1994年)ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)6、119−129頁を参照のこと。ヒストグラム、作図、アラインメント、期待値(すなわち、データベース配列に対する対を報告するための統計上の有意性閾値)、カットオフ、マトリックスおよびフィルター(低複雑度)に関する検索パラメータは、デフォルト設定である。blastp、blastx、tblastnおよびtblastxによって用いられるデフォルトスコア行列は、85を超える長さ(ヌクレオチド塩基またはアミノ酸)のクエリー配列に関して推奨されるBLOSUM62マトリックス(参照によって完全に援用される、ヘニコフ(Henikoff)ら(1992年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)89、10915−10919頁)。
【0027】
blastnに関して、スコア行列は、M(すなわち1対のマッチした残基のリワードスコア)対N(すなわち、ミスマッチ残基のペナルティスコア)の比によって設定され、ここでMおよびNのデフォルト値はそれぞれ+5および−4である。4つのblastnパラメータを、以下のように調節した。Q=10(ギャップ開始ペナルティ)、R=10(ギャップ伸長ペナルティ)、wink=1(クエリーの第wink目の位置で文字列ヒットを生じる)、およびgapw=16(ギャップのあるアラインメントが生じるウィンドウ幅を設定する)。同等なBlastpパラメータ設定は、Q=9、R=2、wink=1、およびgapw=32であった。GCGパッケージ・バージョン10.0で利用可能な配列間のベストフィット(Bestfit)比較はDNAパラメータGAP=50(ギャップ開始ペナルティ)およびLEN=3(ギャップ伸長ペナルティ)を使用し、タンパク質比較における同等の設定はGAP=8およびLEN=2である。
【0028】
「ストリンジェントな条件」は、(1)洗浄に低イオン強度および高温、例えば0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDSを50℃〜68℃で使用するもの、または(2)ハイブリダイゼーションの間にホルムアミド等の変性剤、例えば0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムを含む50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH6.5)を含む50%(体積/体積)ホルムアミドを42℃で使用するものである。別の例は、42℃で0.2×SSCおよび0.1%SDS中または68℃で0.1×SSCおよび0.5%SDS中の洗浄を伴う、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、ソニケートしたサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDSおよび10%硫酸デキストラン中42℃でのハイブリダイゼーションである。当業者は、ストリンジェンシー条件を容易に適切に決定および変化させて明確で検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得ることができる。好ましい分子は、配列番号2、3、4、5、6および7を含むタンパク質をコードして機能的なタンパク質をコードする核酸配列の相補体と上述の条件下でハイブリダイズするものである。さらにより好ましい、ハイブリダイズする分子は、単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質をコードする核酸のオープンリーディングフレームの相補鎖に上述の条件下でハイブリダイズするものである。例としては、配列番号42、44、46、48、50、51、52、53または54に示されるヌクレオチド配列を含む核酸が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用される場合、他のポリペプチドをコードする混入した核酸分子から核酸分子が実質的に分離された場合に、核酸分子は「単離された」といわれる。
【0029】
本発明はさらに、エンベロープタンパク質に所望の修飾(すなわち、選択されたエピトープ中の1つ以上のアミノ酸の修飾)を含む、コード核酸分子の断片を提供する。本明細書中で使用される場合、コード核酸分子の断片は、タンパク質コード配列全体のうちのごく一部をいう。断片の大きさは、目的とする使用によって決定されよう。例えば、断片がタンパク質の活性部分(すなわち、本明細書に記載されるような、選択されたモノクローナル抗体エピトープまたはかかるエピトープの修飾)をコードするように選択される場合、断片はタンパク質の機能領域(すなわちエピトープ)をコードするのに十分大きい必要があろう。例えば、予測される抗原性領域に対応するペプチドをコードする断片が調製され得る。断片が核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられる場合、断片の長さは、プロービング/プライミングの間に比較的少数の擬陽性を得るように選択される。
【0030】
本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列を合成するのに用いられる本発明のコード核酸分子の断片(すなわち合成オリゴヌクレオチド)は、化学的技術、例えばマテウッチィ(Matteucci)ら(1981年)ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)103、3185−3191頁のホスホトリエステル法によって、または自動化合成法を用いて、容易に合成され得る。また、遺伝子の種々のモジュラーセグメントを定義する一群のオリゴヌクレオチドの合成等の周知の方法、それに続く完全な修飾遺伝子を構築するオリゴヌクレオチドのライゲーションによって、より大きいDNAセグメントを容易に調製し得る。
【0031】
本発明のコード核酸分子はさらに、診断およびプローブ目的で、検出可能な標識を含むように修飾され得る。種々のかかる標識は当該技術分野で公知であり、本明細書に記載されるコード分子とともに容易に使用され得る。適した標識としては、ビオチン、放射性同位元素標識ヌクレオチド等が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、任意のかかる標識を容易に使用して、本発明の核酸分子の、標識された変異体を得ることができる。翻訳の間にタンパク質配列に組み込まれるアミノ酸の欠失、付加または変化による一次構造自体に対する修飾は、タンパク質の活性を破壊することなくなされ得る。かかる置換または他の変化は、結果として、本発明の企図される範囲内に包含される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質を生じる。
【0032】
組み換え核酸
本発明はさらに、コード配列を含む組み換えDNA分子(rDNA)を提供する。本明細書中で使用される場合、rDNA分子は、in situで分子操作に供されたDNA分子である。rDNA分子を生じる方法は当該技術分野で周知であり、例えばコールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレスのサンブルック(Sambrook)ら(2001年)モレキュラー・クローニング−ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照のこと。好ましいrDNA分子において、コードDNA配列は、発現制御配列および/またはベクター配列に、操作可能に連結される。
【0033】
本発明のタンパク質ファミリーコード配列の1つが操作可能に連結されるベクターおよび/または発現調節配列の選択は、当該技術分野で周知のように、直接、所望の機能特性、例えばタンパク質発現、および形質転換される宿主細胞に依存する。本発明によって企図されるベクターは、少なくともrDNA分子に含まれる構造遺伝子の、複製または宿主染色体への挿入、および好ましくは発現も、指示することができる。
【0034】
操作可能に連結されたタンパク質コード配列の発現を調節するために用いられる発現調節因子は当該技術分野で公知であり、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナルおよび他の調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、誘導性プロモーターは、宿主細胞の培地中の栄養分に反応性がある等、容易に制御される。
【0035】
ある実施形態において、コード核酸分子を含むベクターは、原核レプリコン、すなわちそれで形質転換された組み換えDNA分子の自律増殖および維持を細菌宿主細胞等の原核宿主細胞において染色体外で指示する能力を有するDNA配列を、含むであろう。かかるレプリコンは当該技術分野で周知である。また、原核レプリコンを含むベクターはまた、発現によって薬剤耐性等の検出可能なマーカーを与える遺伝子を含み得る。典型的な細菌の薬剤耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する耐性を与えるものである。
【0036】
原核レプリコンを含むベクターはさらに、大腸菌(E.coli)等の細菌宿主細胞のコード遺伝子配列の発現(転写および翻訳)を指示することができる原核またはバクテリオファージプロモーターを含み得る。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写が起こるようになるDNA配列によって形成される発現調節因子である。細菌宿主に適合性のあるプロモーター配列は、典型的には、本発明のDNAセグメントの挿入に簡便な制限酵素認識部位を含むプラスミドベクター中に提供される。pUC8、pUC9、pBR322およびpBR329(バイオラッド(BioRad))、pPLおよびpKK223(ファルマシア(Pharmacia))が、かかるベクタープラスミドを代表する。
【0037】
真核細胞に適合性のある発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞に適合性のあるものもまた、コード配列を含むrDNA分子の形成に用いられ得る。ウイルスベクターを含む真核細胞発現ベクターは、当該技術分野で周知であり、いくつかの商業的供給源から入手可能である。典型的には、かかるベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に簡便な制限酵素認識部位を含んで提供される。pSVLおよびpKSV−10(ファルマシア(Pharmacia))、pBPV−1/pML2d(インターナショナル・バイオテクノロジース・インク(International Biotechnologies Inc.))、pTDT1(ATCC)、本明細書に記載されるベクターpCDM8等の真核発現ベクターが、かかるベクターを代表する。
【0038】
本発明のrDNA分子の構築に用いられる真核細胞発現ベクターはさらに、真核細胞において効果的な選択可能なマーカー、好ましくは薬剤耐性選択マーカーを含み得る。好ましい薬剤耐性マーカーは、発現が結果としてネオマイシン耐性を生じる遺伝子、すなわちネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子である(サザン(Southern)ら(1982年)ジャーナル・オブ・モレキュラー・アプライド・ジェネティクス(J.Mol.Anal.Genet.)1、327−341頁)。あるいは、選択可能なマーカーは別のプラスミド上に存在し得、2つのベクターは宿主細胞のコトランスフェクションによって導入され、選択可能なマーカーに適切な薬剤中で培養することによって選択される。本発明はさらに、本発明のタンパク質をコードする核酸分子で形質転換された宿主細胞を提供する。宿主細胞は、原核または真核のいずれかであり得る。
【0039】
本発明のタンパク質の発現に有用な真核細胞は、細胞系が細胞培養方法に適合性があり、発現ベクターの増殖および遺伝子産物の発現に適合性のある限りは、限定されない。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫および哺乳動物細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト細胞系由来のもの等の脊椎動物細胞が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい真核宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手可能なNIHスイスマウス胚細胞(NIH−3T3)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)等の真核組織培養細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。任意の原核宿主を用いて、本発明のタンパク質をコードするrDNA分子を発現し得る。好ましい原核宿主は大腸菌(E.coli)である。
【0040】
本発明のrDNA分子での適切な細胞宿主の形質転換は、典型的には用いられるベクターおよび使用される宿主系のタイプに依存する、周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関して、エレクトロポレーションおよび塩処理法が典型的に使用され、例えば、コーエン(Cohen)ら(1972年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)69、2110頁、およびコールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレスのサンブルック(Sambrook)ら(2001年)モレキュラー・クローニング−ラボラトリーマニュアル(Molecular Cloning−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press)を参照のこと。rDNAを含むベクターでの脊椎動物細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーション、カチオン性脂質法または塩処理法が典型的に使用され、例えば、グレーアム(Graham)ら(1973年)バイロロジー(Virol.)52、456頁、ウィグラー(Wigler)ら(1979年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)76、1373−1376頁を参照のこと。
【0041】
形質転換が成功した細胞、すなわち本発明のrDNA分子を含む細胞は、選択可能なマーカーに関する選択を含む、周知の技術によって同定され得る。例えば、本発明のrDNAの導入によって生じた細胞をクローニングして、シングルコロニーを生じ得る。これらのコロニー由来の細胞を採取し、溶解し、サザン(Southern)(1975年)ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(J.Mol.Biol.)98、503−504頁またはベレント(Berent)ら(1985年)バイオテクノロジース(Biotech.)3、208−209頁によって記載されるもの等の方法、または免疫学的方法を介してアッセイされる細胞から生成されるタンパク質を用いて、そのDNA内容物をrDNAの存在に関して検査し得る。
【0042】
組み換えタンパク質の生成
本発明の単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質をコードする組み換え核酸分子を作製する方法を、当業者は知っているであろう。さらに、当業者は、1つ以上のエピトープ部位に1つ以上の修飾を含む単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質をコードする組み換え核酸分子に関して本明細書に記載されるように、これらの組み換え核酸分子を用いて、それによってコードされるタンパク質を得る方法を知っているであろう。ある実施形態において、組み換えエンベロープタンパク質またはその断片は、配列番号2の残基659に対応する位置でアミノ酸残基の置換(例えば、アラニンに代わってスレオニン)を含む。
【0043】
本発明によれば、単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質の発現のための非常に多くのベクター系が使用され得る。例えば、ある型のベクターは、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMoMLV)、セムリキ森林熱ウイルスまたはSV40ウイルス等の動物ウイルスに由来するDNA要素を利用する。さらに、DNAを染色体に安定して組み込んだ細胞は、形質転換宿主細胞の選択を可能にする1つ以上のマーカーを導入することによって選択され得る。マーカーは、例えば、栄養要求株の宿主へのプロトトロピー(prototropy)、除菌剤耐性、(例えば抗生物質)または銅等の重金属に対する耐性などを提供し得る。選択可能なマーカー遺伝子は、発現されるDNA配列に直接連結されるか、または同時形質転換によって同じ細胞に導入されるかのいずれかであり得る。さらなる要素もまた、mRNAの最適な合成に必要とされ得る。これらの要素としては、スプライスシグナル、ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終止シグナルを挙げることができる。かかる要素を組み込むcDNA発現ベクターとしては、オカヤマ(Okayama)(1983年)モレキュラー・セル・バイオロジー(Mol.Cell.Biol.)3、280−289頁によって記載されているものが挙げられる。
【0044】
本発明で用いられるベクターは、培養された真核細胞中で高レベルのHIV−1エンベロープタンパク質を発現するよう、ならびにこれらのタンパク質を培地中に効率的に分泌するよう設計される。ある実施形態において、培地へのHIV−1エンベロープタンパク質の標的化は、HIV−1エンベロープタンパク質の成熟したN末端に組織プラスミノゲン活性化因子(tPA)プレプロシグナル配列をインフレームで融合することによって達成される。
【0045】
HIV−1エンベロープタンパク質は、(a)HIV−1エンベロープタンパク質をコードする発現ベクターで哺乳動物細胞をトランスフェクションする工程、(b)得られた、トランスフェト哺乳動物細胞を、HIV−1エンベロープタンパク質が産生される条件下で培養する工程、(c)細胞培地または細胞自体からHIV−1エンベロープタンパク質を回収する工程によって生成され得る。
【0046】
一旦、発現ベクター、またはコンストラクトを含むDNA配列が発現のために調製されると、発現ベクターは、適切な哺乳動物細胞宿主にトランスフェクションまたは導入され得る。例えばプロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーションまたは他の従来の技術等、種々の技術を使用してこれを達成し得る。プロトプラスト融合の場合、細胞は培地中で培養され、適切な活性に関してスクリーニングされる。
【0047】
得られた、トランスフェクションされた細胞の培養、およびそのように生成されたHIV−1エンベロープタンパク質の回収の、方法および条件は、当業者に周知であり、使用される特定の発現ベクターおよび哺乳動物宿主細胞に依存して変更または最適化され得る。
【0048】
権利請求の対象となる本発明によれば、本発明のHIV−1エンベロープタンパク質の発現に好ましい宿主細胞は、哺乳動物細胞系である。哺乳動物細胞系としては、例えば、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7)、ヒト胎児由来腎臓系293(HEK293)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞DHFR(CHO)、チャイニーズハムスター卵巣細胞DHFR(DXB11)、サル腎細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎細胞(MDCK)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳癌(MMT060562)、マウス細胞系(C127)および骨髄腫細胞系が挙げられる。
【0049】
非哺乳動物ベクター/細胞系の組み合わせを利用する他の真核発現系を用いて、エンベロープタンパク質を生成し得る。これらのものとしては、バキュロウイルスベクター/昆虫細胞発現系および酵母シャトルベクター/酵母細胞発現系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
培地からのHIV−1エンベロープタンパク質の精製の方法および条件が本発明において提供されるが、これらの手順は、当業者に周知のように、変更および最適化され得ることが理解されるべきである。
【0051】
本発明のHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片はまた、任意の公知の合成技術によって調製され得る。従来、このタンパク質は、本明細書に参照によって援用されるメリフィールド(Merrifield)(1965年)によって最初に記載された固相合成技術を用いて調製され得る。他のペプチド合成技術は、例えば、ボダンスキー(Bodanszky)ら(1976年)、ワイリーのペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis、Wiley)に見ることができる。
【0052】
HIV−1エンベロープ融合タンパク質
HIV−1エンベロープ融合タンパク質およびかかるタンパク質を生じる方法は、これまでに記載されている(米国特許第5,885,580号明細書)。今や、外来性遺伝子を発現する細胞を調製することは比較的簡単な技術である。かかる細胞は宿主として機能し、本発明の融合タンパク質に関しては、酵母、真菌、昆虫細胞、植物細胞または動物細胞が挙げられる。これらの宿主細胞の多くのための発現ベクターは、単離および特徴づけされており、従来の組み換えDNA技術を介した、目的の外来性DNAインサートを有するベクターの構築の出発物質として用いられている。DNAインサートの発現に用いられる宿主細胞に天然に由来しない場合、任意のDNAが外来性である。外来性DNAインサートは、染色体外プラスミド上で、または宿主細胞への全体もしくは部分的な組み込み後に発現され得るか、または1つより多い分子形態の組み合わせとして宿主細胞中に実際に存在し得る。所望の外来性DNAの発現のための宿主細胞および発現ベクターの選択は、主として、宿主細胞の入手可能性およびその選好性の程度、宿主細胞が発現ベクターの複製を支持するか否か、ならびに当業者に容易に理解される他の要因に依存する。
【0053】
目的の外来性DNAインサートは、このコード能力もしくは任意のかかるクローン配列またはそれらの組み合わせを有する任意の合成配列を含む融合タンパク質をコードする任意のDNA配列を含む。例えば、完全な組み換えDNA配列によってコードおよび発現される融合タンパク質が本発明に包含されるが、他の技術によって得られた融合タンパク質ペプチドを除外しない。
【0054】
融合タンパク質の生成のための真核発現系の構築に有用なベクターは、そこにプロモーターおよび/またはオペレーター等の適切な転写活性化DNA配列とともに操作可能に連結された、融合タンパク質のDNA配列を含む。他の典型的な特徴としては、適切なリボソーム結合部位、終止コドン、エンハンサー、ターミネーターまたはレプリコン要素を挙げることができる。これらのさらなる特徴は、制限エンドヌクレアーゼ消化およびライゲーション等の従来のスプライシング技術によって、適切な部位でベクターに挿入され得る。
【0055】
酵母発現系は、組み換え真核発現系の好ましい種類であるが、一般に、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)を、組み換えタンパク質を発現するための最適な種として使用する。サッカロミセス(Saccharomyces)属の他の種は、組み換え酵母発現系に適しており、カルルスベルジェンシス(carlsbergensis)、ウバルム(uvarum)、ロウキシイ(rouxii)、モンタヌス(montanus)、クルイベリ(kluyveri)、エロンジスポルス(elongisporus)、ノルベンシス(norbensis)、オビフォルミス(oviformis)およびジアスタティクス(diastaticus)が挙げられるが、これらに限定されない。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)および同様の酵母は、酵母において活性のある発現系の構築に有用な周知のプロモーターを有し、GAP、GAL10、ADH2、PHO5、およびα接合因子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
融合タンパク質の発現のための組み換え酵母発現系の構築に有用な酵母ベクターとしては、シャトルベクター、コスミドプラスミド、キメラプラスミド、および2ミクロン環状プラスミドに由来する配列を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。これらのベクターへの、融合タンパク質をコードする適切なDNA配列の挿入は、原則的に、結果として、修飾されたベクターが形質転換または他の手段によって適切な宿主細胞に挿入される、融合タンパク質のための有用な組み換え酵母発現系を生じる。組み換え哺乳動物発現系は、本発明のワクチン/免疫原のための融合タンパク質の生成の別の手段である。一般に、宿主哺乳動物細胞は、細胞培養物中で効率的にクローンニングされた任意の細胞であり得る。しかしながら、哺乳動物発現の選択肢は器官培養物およびトランスジェニック動物を含むように拡張され得ることは、当業者に明らかである。組み換え哺乳動物発現系の構築の目的に有用な宿主哺乳動物細胞としては、ベロ細胞、NIH3T3、GH3、COS、ネズミC127またはマウスL細胞が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物発現ベクターは、ウイルスベクター、SV40、BPVもしくは他のウイルスレプリコンを有し得るプラスミドベクター、または動物細胞のレプリコンのないベクターに基づき得る。哺乳動物発現ベクターに関する詳細な説明は、グラバー(Glover)(1985年)、IRLプレスのDNAクローニング:プラクティカル・アプローチ(DNA Cloning:A Practical Approach、IRL Press)の論文に見ることができる。
【0057】
融合タンパク質は、同じ有機的に合成されたペプチドと共有しない、アデニル化、カルボキシル化、N−およびO−グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化またはミリスチル化等のさらなる好ましい構造変化を有し得る。これらの追加の特徴は、場合により、組み換え発現系の適切な選択によって、選択され得るか、または好まれ得る。一方、融合タンパク質は、有機合成の原則および慣習によって伸長された配列を有し得る。
【0058】
ワクチン組成物
ワクチンまたは免疫原性組成物中で用いられる場合、本発明の単離もしくは修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片は、「サブユニット」ワクチンまたは免疫原として用いられ得る。かかるワクチンまたは免疫原は、安全性および生産のコストに関して、伝統的なワクチンと比較して大きな利益を提供する。しかしながら、サブユニットワクチンは、しばしば、全ウイルスワクチンよりも免疫原性が低く、その完全な能力に達するために、相当な免疫賦活能力を有するアジュバントが必要とされ得ることがあり得る。
【0059】
現在、米国においてヒトへの使用に認可されたアジュバントとしては、アルミニウム塩(ミョウバン)が挙げられる。これらのアジュバントは、B型肝炎、ジフテリア、ポリオ、狂犬病およびインフルエンザを含むいくつかのワクチンに有用であった。他の有用なアジュバントとしては、フロイント完全アジュバント(CFA)、フロイント不完全アジュバント(IFA)、ムラミルジペプジド(MDP)、MDPの合成類似体、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−[1,2−ジパルミトイル−s−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミド(MTP−PE)、ならびに分解性油および乳化剤を含有する組成物が挙げられ、ここで油および乳化剤は、実質的に全てが直径1ミクロン未満である油滴を有するO/Wエマルションの形態で存在する。
【0060】
本発明のワクチンまたは免疫原性組成物の製剤化は、効果的な量のタンパク質またはペプチド抗原を利用するであろう。すなわち、それに続くHIVへの曝露からの保護を被験体に与えるように、アジュバントと組み合わせて被験体に特異的および十分な免疫学的応答を生じさせる量の抗原が含まれるであろう。免疫原性組成物として用いられる場合、製剤は、アジュバントと組み合わせて、診断または治療目的で用いられ得る特異的抗体を被験体に産生させる量の抗原を含むであろう。
【0061】
本発明のワクチン組成物は、HIV−1感染の予防または治療に有用であり得る。HIV−1に苦しみ得る全ての動物はこの方法で治療され得るが、本発明は特に、勿論、ヒトにおける本発明のワクチンの予防的および治療的使用に関するものである。しばしば、所望の予防または治療効果を引き起こすために、1回より多い投与が必要とされ得る。正確なプロトコール(用量および頻度)は、標準的臨床手順によって確立され得る。
【0062】
ワクチン組成物は、ワクチンを動物に誘導する任意の従来の方法で、通常注射によって、投与される。経口投与のために、ワクチン組成物は、他のタンパク質性物質の経口投与に用いられるものと同様な形態で投与され得る。上述のように、予防または療法のいずれかにおける使用のための正確な量および製剤化は、抗体の固有の純度および活性の環境、任意のさらなる成分または担体、投与の方法等に依存して変化し得る。
【0063】
非限定的な例示として、投与されるワクチン投薬は、典型的には、抗原に関して、最小約0.1mg/用量、より典型的には最小約1mg/用量およびしばしば最小約10mg/用量であろう。最大用量は、典型的にはそれほど重要でない。しかしながら、通常、投薬は500mg/用量以下、しばしば250mg/用量以下であろう。これらの投薬は、任意の適切な薬学的ビヒクルまたは担体中に、その投薬を媒介するのに十分な体積で懸濁され得る。一般に、担体、アジュバント等を含む最終体積は、典型的には少なくとも0.1ml、より典型的には少なくとも約0.2mlであろう。上限は、投与される量の実際的なことによって決定され、一般に約0.5ml以下〜約1.0mlである。
【0064】
代替的形式において、ワクチンまたは免疫原性組成物は、宿主動物中でHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を発現するワクチンベクターとして調製され得る。任意の入手可能なワクチンベクターが用いられ得、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(米国特許第5,643,576号明細書参照)、ポリオウイルス(米国特許第5,639,649号明細書参照)、ポックスウイルス(米国特許第5,770,211号明細書参照)およびワクシニアウイルス(米国特許第4,603,112号明細書および第5,762,938号明細書参照)が挙げられる。あるいは、タンパク質またはその断片をコードする裸の核酸を直接投与して抗原の発現をもたらし得る(米国特許第5,739,118号明細書参照)。
【0065】
HIV−1エンベロープタンパク質またはその断片は、種々の組み合わせで免疫原として用いられ得る。例えば、14/00/4等のgp41の1つ以上のエピトープに対する抗体を誘導すると期待されるエンベロープタンパク質を、R2等のgp120のエピトープに対する抗体を誘導すると期待されるエンベロープ糖タンパク質と組み合わせて用い得る。さらなるエンベロープ糖タンパク質を、免疫養生法、特にさらなるエピトープに対する抗体を誘導するか、または異なるサブタイプのHIV−1によって発現される同じエピトープの変異体形態を示すエンベロープにおいて、組み合わせ得る。HIV−1のある系統由来のgp120およびHIV−1の他の系統由来のgp41等、これらのエンベロープ糖タンパク質の異なるセグメントを用い得る。
【0066】
抗体および使用の方法
本発明はさらに、本発明の単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質上の発現されたエピトープに対する、ヒト細胞への複数のサブタイプのHIV−1の結合のブロックならびにin vitroおよび/またはin vivoの両方でHIV−1によるヒト細胞の感染の予防のできるヒトモノクローナル抗体を提供する。ある実施形態において、エピトープ中のアミノ酸の1つ以上の置換または欠失によって修飾された公知のエピトープに対するこれらの抗体。公知の抗体エピトープの例としては、2F5および4E10モノクローナル抗体エピトープが挙げられるが、これらに限定されない。2F5エピトープにおけるアミノ酸置換としては、配列番号2の残基659に対応する位置でのアラニンに代わってスレオニンが挙げられるが、これに限定されない。
【0067】
本発明のモノクローナル抗体は、検出可能なマーカーで標識され得る。本発明の実施に有用な検出可能なマーカーは当業者に周知であり、放射性同位体、色素、またはペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ等の酵素であり得るが、これらに限定されない。また、本発明のモノクローナル抗体は、細胞毒性薬剤と結合され得る。
【0068】
本発明はまた、本発明のエンベロープタンパク質に結合するヒトモノクローナル抗体に対して配向のある抗イディオタイプ抗体に関する。この抗イディオタイプ抗体はまた、検出可能なマーカーによって標識され得る。適した検出可能なマーカーは当業者に周知であり、放射性同位体、色素、またはペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼ等の酵素であり得るが、これらに限定されない。
【0069】
抗イディオタイプ抗体は、動物が本発明のHIV−1エンベロープタンパク質に結合するモノクローナル抗体を注射された場合に生成される。次いで、動物は、注射された抗体のイディオタイプ抗原決定基に対して配向のある抗体を産生する(ヴァッセルマン(Wasserman)ら(1982年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)79、4810−4814頁)。
【0070】
あるいは、抗イディオタイプ抗体は、動物のリンパ系細胞を効果的な抗体産生量の抗原(すなわち、本発明のエンベロープタンパク質に結合するモノクローナル抗体)と接触させる工程、得られたリンパ系細胞を収集する工程、収集したリンパ系細胞を骨髄腫細胞と融合させて、それぞれがモノクローナル抗体を産生する一連のハイブリドーマ細胞を生成する工程、一連のハイブリドーマ細胞をスクリーニングして、結合できるモノクローナル抗体を分泌するものを同定する工程、そのように同定された得られたハイブリドーマ細胞を培養する工程、およびこの細胞によって産生された抗イディオタイプ抗体を別々に回収する工程によって生成される(クリーヴランド(Cleveland)ら(1983年)ネイチャー(Nature)305、56−57頁)。上述の2つの方法のいずれかにおける抗イディオタイプ抗体の生成に用いられ得る動物としては、ヒト、霊長類、マウス、ラットまたはウサギが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
本発明の別の態様は、ヒト−マウス骨髄腫類似体とヒト抗体産生細胞とのこの融合によって生成されるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを提供する。好ましい実施形態において、抗体産生細胞は、ヒト末梢血単核球(PBM)、アメリカヤマゴボウマイトジェン(PWM)もしくはフィトヘマグルチニン刺激正常PBM(PHAS)等のマイトジェン刺激PBM、またはエプスタイン−バーウイルス(EBV)形質転換B細胞である。上述のヒト−マウス骨髄腫類似体は、ヒトPBM、マイトジェン刺激PBMおよびEBV形質転換B細胞と融合した場合、25,000個の融合細胞中1個より大きい、抗体分泌ハイブリドーマの増殖の平均融合効率を有する。本発明の特に有用な抗体産生ハイブリドーマは、本発明のHIV−1エンベロープタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマである。
【0072】
本発明はまた、ヒト−マウス類似体を抗体産生細胞、特に本明細書中で上記に列挙された抗体産生細胞と融合させる工程を含む、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを生成する方法、ならびに前記ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体に関する。
【0073】
本発明はさらに、ヒト細胞へのHIV−1の結合をブロックするのに効果的な量の、本発明のエンベロープタンパク質中の修飾されたエピトープに対するヒトモノクローナル抗体と、HIV−1を接触させる工程、およびHIV−1によるヒト細胞の感染を予防する工程を含む、(in vitroおよびin vivoの両方で)ヒト細胞へのHIV−1の結合をブロックする方法、およびHIV−1によるヒト細胞の感染を予防する方法に関する。ある実施形態において、修飾されたエピトープは、2F5モノクローナル抗体エピトープであるが、別の実施形態においては、本明細書中で前述した4E10モノクローナル抗体エピトープである。
【0074】
診断試薬
本発明のHIV−1エンベロープタンパク質をイムノアッセイにおける診断試薬として用いて、抗HIV−1抗体、具体的には抗エンベロープタンパク質抗体を検出し得る。多くのHIV−1イムノアッセイ形式が利用可能である。したがって、以下の説明はあくまで例示的なものであって、包括的なものではない。しかしながら、一般に、米国特許第4,753,873号明細書およびEP0161150号明細書およびEP0216191号明細書を参照のこと。
【0075】
イムノアッセイプロトコールは、例えば、組成、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づき得る。プロトコールはまた、例えば、異種で固相支持体を用いるか、または同種で溶液中の免疫反応を伴い得る。殆どのアッセイは、標識された抗体またはポリペプチドの使用を伴った。標識は、例えば、蛍光、化学発光、放射活性、または色素分子であり得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた公知であり、かかるアッセイの例は、ビオチンおよびアビジンを利用するもの、ならびにELISAアッセイ等の、酵素標識および媒介イムノアッセイである。
【0076】
典型的には、抗HIV−1抗体のイムノアッセイは、生物試料等の試験試料を選択および調製する工程、ならびに、次いで抗原抗体複合体の形成が可能になる条件下で本発明のHIV−1エンベロープタンパク質とともにそれをインキュベートする工程を伴うであろう。かかる条件は当該技術分野で周知である。異種の形式において、タンパク質またはペプチドは、固相支持体に結合されて、インキュベーションの後のポリペプチドからの試料の分離を容易にする。用いられ得る固相支持体の例は、膜またはマイクロタイターウェルの形態のニトロセルロース、シートまたはマイクロタイターウェルのポリ塩化ビニル、ビーズまたはマイクロタイタープレートのポリスチレンラテックス、フッ化ポリビニイジン(polyvinyidine fluoride)、ジアゾ化ペーパー、ナイロン膜、活性化ビーズ、およびプロテインAビーズである。最も好ましくは、ダイナテック、イミュロン(Dynatech、Immulon)(登録商標)マイクロタイタープレートまたは0.25インチポリスチレンビーズが、異種の形式で用いられる。固相支持体は、典型的には、試験試料から分離された後、洗浄される。
【0077】
一方、同種の形式において、試験試料は、当該技術分野で公知のように、形成される任意の抗原抗体複合体が沈殿する条件下で、溶液中でエンベロープタンパク質とともにインキュベートされる。沈殿した複合体は、次いで試験試料から、例えば遠心分離によって、分離される。抗HIV−1抗体を含む、形成された複合体は、次いで、任意の数の技術によって検出される。形式に依存して、複合体は、標識された抗異種免疫グロブリンで検出され得るか、または、競合形式が用いられる場合、結合した、標識された競合する抗体の量を測定することによって検出され得る。これらおよび他の形式は、当該技術分野で周知である。
【0078】
本発明のかかるアッセイにおいて有用な診断プローブとしては、HIV−1エンベロープタンパク質に対する抗体が挙げられる。抗体は、当該技術分野で周知の標準的技術を用いて生成された、モノクローナルまたはポリクローナルのいずれかであり得る(ハーローおよびレーン(Harlow&Lane)(1988年)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレスのアンチボディース:ラボラトリーマニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press)参照)。これらを用いて、タンパク質への特異的結合、およびそれに続くELISA、ウエスタンブロット等による抗体−タンパク質複合体の検出によって、HIV−1エンベロープタンパク質を検出し得る。これらの抗体を誘発するのに用いられる、単離または修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質は、上述の変異体のいずれかであり得る。抗体はまた、HIV−1エンベロープタンパク質のペプチド配列から、当該技術分野の標準的技術を用いて生成される(ハーローおよびレーン(Harlow&Lane)、上掲)。免疫学的に重要な部分を含む、モノクローナルまたはポリクローナル抗血清の断片もまた、調製され得る。
【実施例】
【0079】
以下の実行の例は、本発明の好ましい実施形態を特に示し、決して開示の残りを限定するものと解釈されるべきではない。他の一般的な形態は、当業者に明らかであろう。本明細書中で参照された、米国または外国特許を含む全ての参考文献は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【0080】
実施例1:材料および方法
HIV−1 BCNドナー
血清が潜在的な広範な交差中和抗体(BCN)応答を有することが示されているHIV−1グループM感染ドナー(ベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー(J.Med.Virol.)62、14−24頁)は、ベルギー、アントワープ(Antwerp、Belgium)の熱帯医学研究所(Institute of Tropical Medicine)(ITM)のエイズ・リファレンスセンター(AIDS Reference Center)の臨床コホートの一部である。6人の抗レトロウイルス(ARV)ナイーブHIV−1 BCNドナーから末梢血単核球(PBMC)を収集し、保存した。ウイルスエンベロープサブタイプ、地理的起源および試料収集の年月日を、表1に示す。比較のために、以前にクローン化および特徴付けしたR2エンベロープ(クイナン(Quinnan)ら(1999年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)15、561−570頁、チャン(Zhang)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)76、644−655頁)を、本研究に含めた。
【0081】
HIV−1非BCNドナー
4人のHIV−1非BCNドナー(NYU1423、CA1、LY109および93BR029)の共培養したPBMCからのDNA抽出物を、復員軍人メディカル・センター(Veterans Administration Medical Center)から得た。ドナーVI1399およびVI1273由来の保管されたPBMCを、ITMから得た。ドナーMACS#4、GXC−44 GXE−14およびZ2Z6のクローニングは、これまでに記載されている(クイナン(Quinnan)ら(1998年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)14、939−949頁、チャン(Zhang)ら(1999年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)73、5225−5230頁)。初代サブタイプA分離株93RW20.5(ガオ(Gao)ら(1998年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)72、5680−5698頁)を、NIH ARRRPから得た。本研究で用いた新しいドナー試料のウイルスエンベロープサブタイプおよび地理的起源を、表1に示す。
【0082】
PCR増幅およびクローニング
製造業者(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems))に推奨されるように高忠実度rTthDNAポリメラーゼおよびサイクリングパラメータを用いたネスティドPCRによって、エンベロープ遺伝子を増幅した。鋳型として、PCRのための鋳型DNAが共培養されたPBMCから抽出されたVI1249、VI1843、VI1793、CA1、93Br029、NYU1423、LY109を除く、全てのドナーの非培養PBMCから抽出されたDNA。PCRにおいてpSV11193RW20.5を鋳型として用いて、pSV7d中でこの分離株をサブクローニングした。初回のPCRに用いるプライマーは、Rev開始コドンを含んで設計し、コンセンサスサブタイプB配列に基づいた。2回目のPCRのいくつかの場合において、HIV−1サブタイプにかかわらず、新しいプライマーを再設計して、gp160の増幅に用いた。2回目のPCRに用いる全てのプライマーを、pSV7d発現ベクターにおける適切な部位へのクローニングのための制限酵素部位を用いて設計した。ネスティドPCRに用いたプライマーは以下の通りである。
【0083】
1回目のプライマー
フォワード:5’atggagccagtagatcctagactagagccctggaagcatccaggaagtcagcc−3’(配列番号9)
リバース:5’gtcattggtcttaaaggtacctgaggtctgtctggaaaaccc−3’(配列番号10)
2回目のプライマー
フォワード:5’aaaaggcttaggcatctcctatggcaggaagaagcgg−3’(配列番号11)
リバース:5’ctcgagatactgctcccaccccatctgctgctggc−3’(配列番号12)
フォワード:5’ataagagaaagagcagaagacagtggcaatgagag−3’(配列番号13)
リバース:5’gtcattggtcttaaaggtacctgaggtctgactgg−3’(配列番号14)
PCR産物を、0.7%アガロースゲル上で可視化し、キアジェン(Qiagen)ゲル抽出キットで精製した。精製したエンベロープおよびpSV7d発現ベクター(カイロン・コーポレーション(Chiron Corporation))を、適切な制限酵素で消化した。消化産物を精製し、T4 DNAリガーゼ(ニューイングランド・バイオラボ(New England Biolabs))とライゲートした。ライゲーション産物でのDH5αコンピテント大腸菌(E.coli)細胞の形質転換を、製造業者の推奨(インビトロジェン(Invitrogen))に従って行った。次いで、「社内の」クイックミニプレッププロトコールを用いて、およびゲル電気泳動によって、エンベロープ遺伝子の挿入に関してクローンをスクリーニングした。スクリーニングしたクローンは、各初代分離株について72〜350の範囲であった。簡潔に述べると、クローンを、アンピシリン(ギブコ(Gibco))を補充した2ml寒天ブロス中で一晩増殖させた。一晩の培養の後、細菌細胞を溶解し、ゲル電気泳動によって、DNAの大きさに基づいてプラスミドを分析した。
【0084】
ヒト骨肉種(HOS)細胞
CD4、およびHIV−1の補助受容体CCR5またはCXCR4を構成的に発現するヒト骨肉種(HOS)細胞系を、NIHエイズ・リサーチ・アンド・リファレンス・リエージェント・プログラム(AIDS Research and Reference Reagant Program)(ARRRP)から得た(チャン(Zhang)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)76、644−55頁)。CD4非依存的感染に関して試験するために、CD4なしでいずれかの補助受容体を発現しているHOS細胞を用いた。HOS細胞を、プラスミド安定性の維持のために10%ウシ胎仔血清、L−グルタミンおよびペニシリン−ストレプトマイシン(ギブコ(Gibco))、タイロシン(Tylosin)(シグマ(Sigma))、およびプロマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)(ギブコ(Gibco))中で維持した。
【0085】
293T細胞
ヒト胎児由来腎臓細胞系(293T)を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から得た。細胞を、10%ウシ胎仔血清、L−グルタミンおよびペニシリン−ストレプトマイシン(ギブコ(Gibco))を補充したダルベッコ最小必須培地(ギブコ(Gibco))中で維持した。
【0086】
機能的エンベロープクローンのスクリーニングおよび選択
次いで、製造業者の指示(プロメガ(Promega))に従って、正確なサイズのクローンを、リン酸カルシウム/HEPESバッファー技術を用いた、pNL4−3.luc.E−R−(ARRRP)およびpSV7d−envプラスミドでの70%〜80%コンフルエント293T細胞(ATTC)の24ウェルプレートコトランスフェクションにおいて、機能に関してスクリーニングした。各実験には、陽性および陰性対照プラスミドが含まれた。トランスフェクションの18時間後、培地を除去し、0.1mM酪酸ナトリウム(シグマ(Sigma))を補充した培地と交換した。細胞を、さらに24時間増殖させた。上清を採取し、16,000rpmで5分間、4℃で遠心分離し、0.45μm無菌ポアフィルター(ミリポア(Millipore))を通してろ過した。
【0087】
感染性アッセイ
これまでに記載されているように、三連のウェルで感染性アッセイを行った(クイナン(Quinnan)ら(1998年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)14、939−949頁)。簡潔に述べると、ろ過した偽ウイルス上清の2倍段階希釈物50μlを、37℃で1〜2×10HOS CD4CCR5またはCXCR4細胞とともに、150μl体積でインキュベートした。偽型ウイルスによる細胞の感染後3日目に、蛍光測定に基づいて感染価を測定した。感染性の終点を決定するために、ルシフェラーゼ活性が陰性対照のものより少なくとも10倍大きかった場合に、個々のウェルを陽性と考えた。次いで、機能的クローンの実際の力価を、25cmフラスコを用いて、pNL4−3.luc.E−R−(ARRRP)およびpSV7d−envプラスミドのコトランスフェクションとそれに続く上述の感染性アッセイによって測定した。
【0088】
機能的エンベロープクローンの配列決定およびBLAST検索
感染性のあるクローンの確認後、これまでに記載されていないクローンに関して、gp160配列決定を行った。配列決定は、まず、ロス・アラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)HIV配列データベース(http://www.hiv.lanl.gov)において、コンセンサスサブタイプB配列に基づいて設計された合計14個のフォワードおよびリバースプライマーを用いて、両方の鎖で行った。しかしながら、サブタイプBコンセンサスプライマーで成功しなかった配列領域に対して、必要に応じて、新しいプライマーを設計した。配列決定反応の後、パフォーマ(Perfoma)DTRゲルろ過カートリッジ(エッジ・バイオシステムズ(Edge BioSystems))を用いて生成物を精製し、過剰なdNTPおよび塩を除去した。アプライド・システムズ・モデル3100ジェネティック・アナライザー(Applied Systems Model 3100 Genetic Analyzer)でジデオキシサイクル配列決定技術を用いて、ヌクレオチド配列決定を行った。DNAスター(DNA Star)中のエディットシーク(Editseq)およびシークマン(Seqman)プログラムを用いて配列アラインメントを行った(ヒギンズ(Higgins)ら(1988年)ジーン(Gene)73、237−244頁)。特有の配列の確認は、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)ウェブサイト(http://www.ncbi.nhm.nih.gov)およびロス・アラモス国立研究所(Los Alamos National Laboratory)HIVデータベース(http://www.hiv.lanl.gov)を通じてアクセスした。
【0089】
抗体
11の広範な交差反応性モノクローナル抗体および2ドメインの可溶性CD4の一団を本研究で用い(表2)、種々の供給源から得たが、ARRRPを通じて入手可能である。6人のBCNドナーおよび8人の非BCNドナー由来のポリクローナル血清をITMからドライアイス中で輸送した。ARRRPからHNS2血清を得た。補体を不活性化するために、血清を56℃で30分間インキュベートし、次いで使用まで−20℃で保存した。
【0090】
中和アッセイ
本研究で用いたエンベロープは、HIV−1エンベロープサブタイプA、B、C、D、F、CRF01_AE、CRF02_AG、CRF11_cpx、およびB/F組み換え体を代表した。これまでに記載されているように、中和アッセイを行った(チャン(Zhang)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)76、644−655頁)。簡潔に述べると、三連のウェルで、ヒトMabまたはポリクローナル血清の2倍段階希釈物と25μlの偽ウイルス上清との1時間4℃でのプレインキュベーション、それに次ぐ96ウェル組織培養プレート中での150μl体積の1〜2×10HOS CD4CCR5またはCXCR4細胞の感染によって、中和アッセイを行った。プレートを、37℃、5%二酸化炭素中で3日間インキュベートし、次いでリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、15μlの1×ルシフェラーゼアッセイシステム(Luciferase Assay System)細胞溶解バッファー(プロメガ(Promega))で30分間溶解した。マイクロルーマット・プラス(MicroLumat Plus)ルミノメーターを用いて、ルシフェラーゼ活性を読み取った。蛍光測定に基づいて感染性または中和価を測定し、終点は、試験試料からの平均結果が非中和対照平均値の50%未満である、血清またはヒトMabの最終希釈度と考えた。結果として90%中和を生じる血清またはヒトMab濃度は、50%中和を生じるものよりも常に2〜8(通常4)倍大きかった。MAbに対する各エンベロープクローンの中和アッセイを、少なくとも2回の独立した実験において行った。しかしながら、血清試料が限られていたために、殆どのエンベロープクローンに関して、血清を用いた実験は1回だけ行い、データが決定的でない場合は、2回行った。
【0091】
実施例2:A659Tの変異誘発
gp41中の659位でのスレオニンの効果を研究するために、本発明者らは、2F5および4E10に感受性(LY109)または耐性(NYU1423)のある2つの非BCNエンベロープを選択した。これらのエンベロープにおいて、本発明者らは、製造業者の推奨に従って、ストラテジーン(Strategene)部位特異的変異誘発キットを用いて残基659に対応する位置の保存されたアラニンをスレオニンに変異させた。変異誘発反応を、Dpn1消化、およびDH5αコンピテント細胞を用いた形質転換に供した。所望の変異を有するクローンをスクリーニングおよび確認するために、A662T変異を担持する領域の配列決定に関して、各エンベロープから5つのクローンを選択した。huMab IgG1 b12、2F5、4E10およびsCD4を用いた感染性および中和実験において、所望のA659Tを有するクローンを、野生型クローンと比較した。
【0092】
実施例3:機能的HIV−1 env遺伝子を有する偽型ウイルスの中和
血清による、BCNおよび非BCNドナー由来のエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスの中和を、図1に示す。BCNドナー由来の血清による中和を上のパネルに示し、非BCNドナー由来の血清による中和を下のパネルに示す。血清HNS2は、R2エンベロープタンパク質のドナー由来の標準血清である。BCN血清は、BCNおよび非BCNウイルスの両方に対して、非BCN血清よりも頻繁に中和していた。BCNおよび非BCNドナー由来のエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスの中和の頻度は、有意に異ならなかった。これらの結果は、BCN血清の交差反応性をまさに確認したが、2つの異なるタイプのドナー由来のエンベロープタンパク質を発現するウイルスの間の差を示さなかった。
【0093】
各ドナーについて、ルシフェラーゼ活性で測定すると、スクリーニングされたおよそ10%のEnvクローンは、CD4およびCCR5またはCXCR4のいずれかを発現するヒト骨肉種(HOS)細胞の感染を媒介した。機能的だったもののうち、大部分は、同様のレベルの感染性を有し(データ示さず)、最も高いみかけの感染性を有するクローンを、さらなる特徴付けのために選択した。本研究で生じたEnvは、CCR5およびCXCR4に対して二重の向性を示したZ2Z6およびVI1249を除いて、向CCR5性であった(クイナン(Quinnan)ら(1999年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retroviruses)15、561−70頁)。Env Z2Z6を有する希釈していない偽型ウイルスに感染したCCR5およびCXCR4HOS細胞中で検出されたルシフェラーゼ単位は、それぞれ113,379および693,122であった。VI1249を有する希釈していない偽型ウイルスに感染したCCR5およびCXCR4HOS細胞中で検出されたルシフェラーゼ単位は、それぞれ85,000および238,477LUであった。R2 Envとは異なり、新しいBCN Envのうち、CD4非依存的感染を媒介したものはなかった(データ示さず)。
【0094】
ベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)およびドナーズ(Donners)ら(2002年)による研究においてこれまでに同定されたBCNおよび非BCN血清(ベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー(J.Med.Virol.)62、14−24頁)、ドナーズ(Donners)ら(2002年)エイズ(AIDS)16、501−503頁)を、7人のBCNおよび11人の非BCNドナー由来のEnvを有する偽型ウイルスの中和に関して試験した。BCN血清は、血清がPBMC収集と同じ時期に対応していたEnv 24/00/4およびVI423の場合を除いて、BCNエンベロープクローンの発生に用いた試料の6ヵ月後に収集した試料であった。本研究で用いた特定の非BCN Envドナーに対応する血清は、入手できなかった。しかしながら、本研究で用いた非BCN血清は、初代分離株CA4(サブタイプF)、CA13(サブタイプH)およびVI686(グループO)に対する低〜無中和能力に基づいて分類した一団の血清試料から選択した(ドナーズ(Donners)ら(2002年)エイズ(Aids)16、501−503頁)。非BCN血清ドナーに感染しているウイルスのEnvサブタイプは入手できなかった。図2、パネルAに示すように、HNS2血清および他のBCN血清のぞれぞれは、BCNおよび非BCN Env偽型ウイルスのそれぞれを、1:8〜1:2048の範囲の力価で中和した(ITM研究からのBCN血清の全体の幾何平均力価(GMT)=1:109)。BCN血清のうち、最も低いGMTを有するものはVI1249/8であった。このドナー由来の、より早期の血清は、これまでにベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)によって、本研究で用いた他のBCNドナー由来の血清よりも低いレベルの交差反応性中和活性を有すると分類されている(ベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー(J.Med.Virol.)62、14−24頁)。さらに、このドナーは、サブタイプCRF01_AE系統に感染しており、かかる血清による非CRF01_AE系統の交差反応性中和は低いと予想される(マスコラ(Mascola)ら(1999年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)73、4009−4018頁)。比較すると、図2、パネルBに示すように、7つの非BCN血清のうち6つが、1つ以上のEnv偽型ウイルスを中和できず、これらの血清のGMTは1:45であり、これはBCN血清のGMTより有意に低かった(スチューデントt検定によりp=0.01)。BCNおよび非BCN血清の力価の差は、相同な偽型ウイルスに対する力価が比較に含まれない場合、有意なままであった(p=0.02)。BCNおよび非BCN血清は、2つの非BCN Env、特にCA1および93Br029を、1024y以上の力価で中和した。Env CA1の、14の多様なHIV−1血清による中和に対する低い特異性は、これまでに観察されている(ナイアムブ(Nyambi)ら(1996年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)72、10270−102704頁)。図3に示すように、Env 14/00/4を有する偽型ウイルスは、BCNによって、非BCN血清よりも有意に大きく中和された(スチューデントt検定によりp=0.03、多重比較に関する補正あり)。他のEnv偽型のうち、BCNによって非BCN血清よりも有意に大きく中和されたものはなかった。これらの結果から、14/00/4 Envが、非BCN血清よりもBCNにおいてより一般的である特異性のある中和抗体に対して感受性があり得ることが示唆される。ドナー14/00/4の血清は、ベイルネート(Beirnaert)らによって記載されたBCN血清で最も能力の高いものであった(彼らの研究において血清VI1805として報告されている)(ベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー(J.Med.Virol.)62、14−24頁)。
【0095】
実施例4:BCNおよび非BCNドナー由来のエンベロープクローン
本研究で用いたHIV−1エンベロープタンパク質の供給源を表1に示す。これまでに記載したR2エンベロープタンパク質を、他のBCNドナー由来のエンベロープタンパク質との比較のために含んだ。エンベロープタンパク質は、6人の他のドナーからクローニングし、それぞれドナー14および24由来である2つのサンプリングデータを含んだ。それぞれの場合において、対になった試料を、約6ヵ月隔てて収集した。これらのドナーは欧州およびアフリカ出身で、主なサブタイプA、B、E、FおよびGのものであるエンベロープタンパク質を含んでいた。非BCNエンベロープタンパク質はサブタイプB、A、C、D、E、F(93BR029)、G(LY109)、および複合体(CA1)のものであり、米国、南米、欧州、アフリカおよび中国出身のドナーから得た。R2を除く、用いたエンベロープタンパク質の全ては、アッセイに用いたレポーター細胞の感染に関してCD4依存性であった。ルシフェラーゼ単位に関する、表に示す感染性は、CD4およびCCR5の両方を発現するHOS細胞に対する感染性を反映する。CCR5のみ、またはCD4および他の潜在的な補助受容体を発現する細胞は、バックグラウンドと同様のルシフェラーゼシグナルを生じた(すなわち、およそ100〜200ルシフェラーゼ単位)。
【0096】
実施例5:モノクローナル抗体および可溶性CD4(sCD4)による、BCNおよび非BCNドナー由来のエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスの中和の比較
Mabによる、種々のエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスの中和を、表2および図4に示す。モノクローナル抗体およびsCD4による中和に対するR2系統の感受性は、これまでに報告された結果と同様であった。具体的には、R2ウイルスは、sCD4およびCD4結合部位に対するMab、ならびにCD4iエピトープおよびV3領域エピトープに対するMabによって中和された。これはまた、gp41Mab 2F5および4E10によっても中和された。対照的に、他のBCNドナー由来のエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスは、CD4結合部位、CD4iエピトープまたはV3領域エピトープに対するMabによって中和されたとしても、不十分にしか中和されなかった。したがって、他のBCNエンベロープタンパク質のうち、R2のCD4非依存的なCD4i Mab感受性表現型を有するようなものはなかった。非BCNドナー由来のエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスは、種々のリガンドに対して、様々に感受性があった。
【0097】
Mab 2F5および4E10に対するBCN envの中和感受性の分布は、二分していた。BCNエンベロープタンパク質を有する偽型ウイルスは、ドナーVI843由来のエンベロープタンパク質およびドナー24からのより後期の試料(2400/8)由来のエンベロープタンパク質を除いて、これらのMabによる中和に対して高度に感受性があった。ドナーVI843およびドナー24からの後期の試料由来のエンベロープタンパク質は、他のBCNエンベロープタンパク質よりもかなり耐性が高かった。非BCNドナー由来のエンベロープタンパク質の大部分は、中和に感受性のあるBCNエンベロープタンパク質の群よりも、2F5および4E10 Mabによる中和に対してより耐性が高かった。2F5は、6つのBCN Envを0.2〜3μg/mlの範囲のID50力価で中和した(図4)。並行してアッセイしたR2 Envもまた、2F5中和に対して感受性があり、これまでの報告と矛盾がなかった(チャン(Zhang)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)76、644−655頁)。BCN EnvであるVI843を有する偽型ウイルスは、50μg/mlでMab 2F5による中和に耐性があった。それに対し、2F5は、非BCN Envを有する偽型ウイルスを、0.39〜25μg/mlの範囲のID50で中和した。Mab 2F5中和に対する、非BCN Envを有する偽型ウイルスの感受性は、初代HIV−1分離株のこれまでの研究で観察されたものと同様であった(コンリー(Conley)ら(1994年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)91、3348−3352頁、ムスター(Muster)ら(1994年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)68、4031−4034頁、トルコーラ(Trkola)ら(1995年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)69、6609−6617頁)。BCN Envを有する偽型ウイルスの殆どもまた、Mab 4E10による中和に対して、0.2以下〜6.25μg/ml未満の範囲のID50で感受性があった。Env VI843は、2F5に対して耐性があったが、Mab 4E10による中和に対して、ID50=12.5μg/mlで中間の耐性を示した。非BCN Envを有する偽型ウイルスの、4E10による中和に対する感受性は、1.56〜25μg/mlの範囲であった。包括的に感受性のある非BCN Envの1つである93BR029は、非BCN Envのうち、gp41Mabによる中和に対して最も感受性の高いものであったが、他方のCA1は、gp41Mabに対して中間の耐性を示した。
【0098】
Mab 2F5による中和に対して高度に感受性ある2つのBCN Envである14/00/4および24/00/4は、それぞれ、ベイルネート(Beirnaert)ら(ベイルネート(Beirnaert)ら(2000年)ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー(J.Med.Virol.)62、14−24頁)によって定義された最も能力の高いBCN抗体を有する2人のドナーの無培養PBMC試料に由来する。これらの2つのEnvは、gp120エピトープを標的とする全てのMabに対して耐性があり、24/00/4はsCD4に対して耐性があった。同様に、Envクローン14/00/4および24/00/4を生じた試料の6ヵ月後に得られた無培養PBMC試料は、さらなるEnvクローンの供給源であった。図5Aおよび6Aは、これらのドナー由来の早期および後期のEnvを有する偽型ウイルスの2F5および4E10感受性を示す。14/00/8−33および14/00/8−83と呼ばれる、ドナー14/00由来の2つの後期のクローンのうち、14/00/8−33はMab 2F5および4E10による中和に対して感受性があったが、14/00/8−83は両方のモノクローナル抗体に対して比較的耐性があった(2F5 ID50=0.01対>12.5μg/ml、4E10 ID50=0.2対7.8μg/ml、図5A)。ドナー24/00由来の後期試料から得られた3つのEnvクローンのうち、24/00/8−46および24/00/8−275と呼ばれる2つのクローンは、Env24/00/4と同様にMab 2F5による中和に対して感受性があったが、24/00/8−258と呼ばれる後期クローンは、比較的耐性があった(図6A)。このドナー由来の早期および後期のEnvクローンは、Mab 4E10に対して同様の感受性を示した。
【0099】
これらの結果に基づいて、本発明者らは、あるBCNドナー由来のエンベロープタンパク質がこれらの抗gp41 Mabによる中和に対して感受性があり得、かつ非BCNドナー由来のエンベロープタンパク質よりも効率的にこれらのエピトープに対する交差反応性中和抗体を誘導もし得るという可能性を考慮した。ドナー24由来の後期のエンベロープタンパク質(2400/8)は、ドナーが2F5/4E10領域に対する配向のある中和応答を発生した可能性を支持するさらなる証拠であろうエスケープ変異体を表し得る。
【0100】
実施例6:BCNエンベロープタンパク質のアミノ酸配列
エンベロープタンパク質1400/4および2400/4のアミノ酸配列は、ヌクレオチド配列解析の結果から推論されるように、配列表に配列番号2および3として示される。2つのタンパク質の配列は、一般に、他のHIV−1エンベロープタンパク質と同様であり、予測される可変ループ構造、ならびにgp120およびgp41における重要な目印に対応する配列を有する。R2エンベロープタンパク質クローンのCD4非依存性の広範な中和感受性表現型は、具体的にはV3ループの先端にすぐ隣接するプロリン−メチオニンモチーフを含む、その特有のV3領域配列に依存する。これらの残基の配置は、クローン14/004の356〜357位およびクローン2400/4の300〜301位に対応する。これらのクローンのそれぞれの配列は、これらの位置の2つの最も一般的な配列、HIまたはRIに対応する。また、BCNドナー由来の他のエンベロープタンパク質クローンのうち、これらの位置にPM配列を有するものはなかった(データ示さず)。
【0101】
2F5および4E10エピトープでのBCNエンベロープタンパク質の配列を、表3に示す。2F5 Mabによって認識される配列は、元々、クローン1400/4の659〜665位(配列番号2)およびクローン2400/4の654〜660位(配列番号3)に対応する、7アミノ酸配列ELDKWAS(配列番号1)にマッピングされた(ムスター(Muster)ら(1994年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)68、4031−4034頁、ムスター(Muster)ら(1993年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)67、6642−6647頁)。それに続くさらなる研究によって、Mabの結合が主要なエピトープを包含する13アミノ酸配列に対応する、2つのクローンの709〜722位および649〜662位に対応する配列によって影響されることが示された。Mab 4E10によって認識される配列は、2つのクローンのそれぞれ668〜673位および663〜668位にアミノ酸NWFDIS(配列番号8)含む、2F5エピトープからわずかに遠位の6アミノ酸配列にマッピングされた。これらの位置のBCNおよび非BCNクローンのぞれぞれの配列を、表3に示す。標準的な2F5エピトープ配列の第1の位置の変異(例えばT/A)は、中和に対する耐性と関連がなかった。エピトープの第4の位置での変異(すなわちクローン2400/8のK/T)、3〜6の位置(すなわちクローンVI843のDKWA(配列番号15)、GKWD(配列番号16))、および第7の位置(すなわちクローンNYU1423のS/G)は、2F5中和に対する耐性と潜在的に関連があった。4E10エピトープで観察された変異のうち、そのMabによる中和に対する耐性と一貫して関連のあるものはなかった。
【0102】
2F5コアエピトープの4位での2400/8クローンのK/T変異の重要性を、さらに調べた。gp41コードヌクレオチドに対応する配列を、PCRを用いて、2400/4および2400/8サンプリング年月日に得たリンパ球から抽出したゲノムDNAからクローニングした。各試料年月日由来の10または11個のクローンを、表4に示すように、2F5領域で配列決定した。2400/4試料年月日由来の11個のクローンのうち8つは、この位置にリシンを有し、3つはスレオニンを有した。比較として、2400/8試料年月日由来の10個のクローンのうち7つは、この位置にスレオニンを有し、他の3つのクローンのぞれぞれは2F5コアエピトープにさらなる変異を有した。これらの結果から、存在する擬似種の間で、より後期の年月日ではK/T変異が一般的であることが示され、このエピトープで中和エスケープ変異が起こる可能性が支持される。エスケープ変異の発生は、ドナー24がエピトープに対する配向のある中和抗体を有することを示すであろう。
【0103】
2F5エピトープでの1400/4クローンの配列を、HIVデータベースの他の配列と比較した。1400/4クローンの1位でのE/T置換は、データベースの600を超える配列のうち1つの他の配列にのみ見られた。この変異の重要性を、NYU1423およびLY109クローンへのE/T置換の導入によって、さらに評価した。表5に示すように、効果の大きさは2つのクローンの間で実質的に異なったが、この置換によって、2F5および4E10 Mabによる中和に対するクローンの感受性が増大した。14人のドナー由来の後期のエンベロープタンパク質クローンであるクローン1400/8を調製し、2F5アミノ酸配列の変化に関して評価した。表6に示すように、これらの試料年月日のそれぞれにおける2F5エピトープの主なアミノ配列は、TLDKWAS(配列番号17)であった。
【0104】
実施例7:A662T置換の寄与
Env 14/00/4および14/00/8−33の662T配列は、非常に変わっている。本発明者らは、HIVおよびジェンバンク(GenBank)データベースで、この置換を有する、ある他の配列を見出した(HIV−1 ARMA037、受託番号AY037277)(カー(Carr)ら(2001年)エイズ(Aids)15、F41−F47頁)。この変わった変異がMab 2F5中和に対する感受性を付与するか否かを調べるために、本発明者らは、部位特異的変異誘発を用いてT662A変異をクローン14/00/4に導入し、Mab 2F5中和に対してそれぞれ感受性および耐性のある非BCNクローン、NYU1026およびNYU1423に復帰突然変異(A662T)を導入した。Env 14/00/4へのアラニン置換によって、Env 14/00/4はMab 2F5(ID50=0.45対6.25μg/ml)および4E10(ID50=0.9対9.34μg/ml)による中和に対する高度な感受性から比較的耐性に変化した。Env NYU1026の同じ位置でのスレオニンの導入は、Mab 2F5(ID50=3.13対0.31μg/ml)および4E10(ID50=10.41対0.78μg/ml)による中和に対して逆の効果があった。Env 14/00/4およびNYU1026におけるこれらの置換の効果の大きさは、14/00/8−83と比較したEnvクローン14/00/4および14/00/8−33のMab 2F5および4E10による中和に対する感受性の相対的な差と同様であった。Env NYU1423の同じ位置でのスレオニンの導入によって、Mab 2F5(ID50=17.7対10.4μg/ml)による中和に対する感受性の、小さいが一貫した増大が引き起こされ、Mab 4E10による中和に対する感受性の有意な変化はなかった。結果から、残基662でのスレオニンの存在が、評価した特定のEnvに依存する程度で、これらのMabの両方による中和に対する感受性の増大に関連があることが示された。
【0105】
実施例8:Thr662はBCNに相当に寄与する
gp41のMPERに対する抗体の誘導とのThr662の可能な関係をさらに試験するために、本発明者らは、Env 14/00/4および14/00/4 T662A変異体を有する偽型ウイルスの、BCN(14/00/8、24/00/8、HNS2)および非BCN(VI1077、VI1295、VI1400)血清による中和に対する感受性を比較した。T662A変異は、結果として、血清14/00/8および24/00/8による中和に対する、それぞれ211および27倍の耐性を生じた。比較すると、変異は、HNS2血清および非BCN血清VI1295、VI1400およびVI1077による中和に対する効果がより小さく、この変異体の相対的耐性は1〜10倍の範囲であった。したがって、非BCN血清ではなくBCN血清14/00/8および24/00/8による中和に対する14/00/4 T662A変異体の感受性の減少は、BCN血清がgp41の膜近位領域(MPER)に対する配向のある比較的高い中和活性を有する可能性を支持する。
【0106】
実施例9:K665T置換の寄与
これまでの研究から、K665N変異が結果としてHIV−1初代分離株の2F5中和に対する不十分な結合および耐性を生じることが報告されている(コンリー(Conley)ら(1994年)プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ(Proc.Natl.Acad.Sci.)91、3348−3352頁、ステイグラー(Steigler)ら(2001年)エイズ(AIDS)17、1757−1765頁)。ドナー24/00由来の3つの後期のエンベロープクローンのうち、1つ(24/00/8−258)はMab 2F5による中和に対する耐性があり、2F5エピトープ配列内に単一突然変異K665Tを示した。2F5による中和に対するこの変異の関連性を確認するために、本発明者らは、K665T点突然変異をEnv 24/00/4に導入した。この変異によって2F5に対する耐性が引き起こされたが、4E10感受性には効果がなかった。
【0107】
実施例10:BCNの2F5および4E10エピトープの擬似種変化
Mab 2F5による中和に対して比較的耐性のある後期のEnv 14/00/8−83および24/00/8−258が、これらのドナーにおける中和耐性エスケープ変異体の出現を示すか否かを決定するために、本発明者らは、これらのドナーのそれぞれにおける2F5および4E10エピトープでの擬似種変化を調べた。この目的のために、PBMCゲノムDNAをPCRの鋳型として用いて、本発明者らは、これらの2人のドナー由来の早期および後期のPBMC試料からのgp41の膜近位領域のアミノ酸配列をクローニングおよび解析した。早期の10個のうち9つおよび後期の全てのgp41クローンにおける中和感受性662T配列の存在は、ドナー14/00において優性な中和耐性変異体が出現しなかったことの指標である。しかしながら、ドナー24/00において、早期の11個のうち8つ、および後期の10個のうち3つだけのgp41クローンが、665K配列を有することがわかった。これらの結果から、クローン24/00/8−258に代表される中和耐性変異体が、このドナーにおける優性な集団として出現し、中和エスケープ変異の出現と矛盾がないことが示される。
【0108】
実施例11:in vivoでのBCN応答の発生
霊長類を含む哺乳動物におけるHIV−1 Envタンパク質免疫の効果を研究するために、所望のHIV Envタンパク質を生成するDNA発現ベクターまたは精製されたHIV Envタンパク質を含有する組成物のいずれかによって抗原の投与を達成し得る。
【0109】
DNA発現ワクチンのために、DNA発現養生法およびブースター免疫は、所望のHIV Envタンパク質を発現する修飾されたワクシニアアンカラ(Ankara)(MVA)またはVEE−RPのいずれかを含む。同様の養生法が潜在的なCD8T細胞応答を誘導することが、他の者によって示されている(ホートン(Horton)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)76、7187−7202頁、マコンキー(McConkey)ら(2003年)ネイチャー・メディシン(Nat.Med.)9、729−735頁)。
【0110】
in vivo発現ベクターのために、これまでに記載されているように、pREPX−R2gp160ΔCT、pCVおよびpGPmをRNAのin vitro転写の鋳型として用いて、VEE−RP−HIV−lenvR2ベクターを調製する(トン(Dong)ら(2003年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)77、3119−3130頁)。研究の0、1、2、10、12および14週目に、VEE−RP−HIV−lenvR2を106.5フォーカス形成単位(FFU)の用量で投与する。pRepXにおけるSIVmac251Envタンパク質(またはその変異体)のクローニングおよびそれに次ぐVEE−RP−HIV−lenvR2に関する処理によって、VEE−RP−SIVEnvを調製する。投薬は、106.0または107.0FFUを含み、半分は静脈内に、半分は皮下に投与される。MVAは、これまでに記載されているように調製される(ホートン(Horton)ら(2002年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)76、7187−7202頁)。0.5ml中5×10PFUの用量を外側大腿に皮内投与する。コドン最適化SIV Env遺伝子をVR1012ベクターに挿入することによって、DNAプラスミドワクチンVR−SIVEnvを構築する(ハーチッカ(Hartikka)ら(1996年)ヒューマン・ジーン・セラピー(Hum.Gen.Ther.)7、1205−1217頁)。TOP10細胞(インビトロジェン(Invitrogen))中で、エンドトキシンフリーDNA精製キット(キアジェン(Qiagen))を用いることによって、プラスミドを増幅する。
【0111】
gp140R2またはその誘導体の生成。推定されるgp41膜貫通領域のすぐ前のアミノ酸692位のリシン残基の後に2つの翻訳終止コドンの挿入、ならびに517および520のアルギニンからセリンの置換を挿入してプロテアーゼ切断シグナルを崩壊させることによって、gp140R2コード配列を調製する(チェルペリス(Cherpelis)ら(2001年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)75、1547−1550頁、クイナン(Quinnan)ら(1999年)エイズ・リサーチ・アンド・ヒューマン・レトロバイラシーズ(AIDS Res.Hum.Retrovir.)14、939−949頁)。遺伝子をワクシニアベクターpMCO2にサブクローニングし、強力な合成ワクシニアウイルス早期〜後期プロモーターに連結する(キャロル(Carroll)ら(1995年)バイオテクニックス(Biotechniques)19、352−354頁)。標準的な方法を用いることによって、gp140R2をコードする組み換えワクシニアウイルス(vAC4)を生成する(ブローダー(Broder)ら(1994年)モレキュラー・バイオテクノロジー(Mol.Biotechnol.)13、223−245頁)。BS−C−1細胞を感染させることによって組み換えgp140R2糖タンパク質を生成し、レンチルレクチンセファロース4B親和性およびサイズ排除クロマトグラフィーを用いることによって培養物上清からオリゴマーgp140R2を精製する(アール(Earl)ら(1990年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)68、3015−3026頁、アール(Earl)ら(2001年)ジャーナル・オブ・バイロロジー(J.Virol.)75、645−653頁)。gp140R2を、結合活性および大きさに関して分析する。
【0112】
初回免疫のために、QS−21アジュバント(アンチジェニックス(Antigenics))中でgp140R2を調製する。各動物に、300μgのgp140R2および150μgのQS−21を、合計1mlの体積を2回に分けた用量で後脚に筋肉内投与する。最終免疫のために、400μgのオリゴマーgp140R2を1mlのRiBiアジュバント(コリザ(Corixa))と組み合わせ、次いで分割した用量で後脚に筋肉内投与する。対照サルに、同一の体積の、gp140R2のないアジュバントを投与する。上述の例でgp140R2をクローニング、精製および投与するが、その任意の所望の誘導体を含む任意のEnvタンパク質に関して、同じ手順に従い得る。
【0113】
要約すると、BCN抗体を有するドナー由来のエンベロープタンパク質をコードする遺伝子をクローニングした。これらの遺伝子の全ては、これまでに記載されている他のHIV−1遺伝子と比較して独特であった。これらの遺伝子のうち、これまでに記載されているR2エンベロープタンパク質を独特にしている特性を共有するものはなかった。BCNドナー由来のエンベロープタンパク質は、gp120エピトープに対するMabによる中和に比較的耐性があるという共通の特性を有したが、殆どのものは2つのgp41エピトープに対する配向のあるMab、2F5および4E10による中和に対して感受性があった。
【0114】
これらの結果から、Envの複雑な構造的相互作用に対する、この領域における中和エピトープの依存性の証拠が提供される。HIV−1 Envがこれらのエピトープを標的とする抗体を誘導する能力は、これらのエピトープのコンフォメーション、およびおそらくウイルス−細胞相互作用プロセスの間にコンフォメーション変化が起こる様式に依存する。これらのエピトープに対する配向のあるBCN抗体を有するドナー由来のEnvは、天然の状態で存在するか、または受容体/補助受容体相互作用の際に、免疫原性形態でB細胞に対してこれらのMPERエピトープを提示するコンフォメーションを容易にとる。特定のEnvがこれらのエピトープを提示する能力は、gp41のこの領域の特異的配列、ならびにEnv複合体のこの領域と他のドメインとの間の相互作用の両方に依存するようである。BCNドナー由来のEnvがMPERエピトープに対する中和抗体を誘導したという、本発明者らの研究からの最も直接な証拠は、14/00/4および14/00/4(T662A)偽型ウイルスの血清中和の比較の研究から生じた。中和への耐性に対する2F5エピトープ変異の効果は、BCNドナー14/00および24/00由来の血清に関して、他のドナー由来よりも実質的に大きかった。この結果の、最も可能性の高い解釈は、これらの2つの血清が比較的高いレベルのMPER特異的中和抗体を含んでいたということである。逆の解釈および仮説もまた可能である。gp120モノクローナル抗体ではなくMPERに対するモノクローナル抗体による中和に対するBCNドナー由来のEnvの感受性の維持は、MPERにおけるエスケープ変異体の免疫学的選択の欠如を反映しているかもしれないが、gp120エスケープ変異の発生を反映しているかもしれない。その場合は、血清は、主にgp120エピトープに対する中和抗体の形をとるべきである。さらに、BCN血清による中和に対するT662A変異の劇的な効果は、この場合gp120に対する配向のある抗体による中和に対する変異の効果を反映し得る。
【0115】
上述の実施例を参照しながら本発明を詳細に説明してきたが、本発明の趣旨を逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることが理解される。本願で参照した、全ての引用した特許、特許出願および刊行物は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】広範な交差反応性(BCN)抗体ありまたはなしのドナー由来の血清による、偽型HIV−1株の中和。
【図2】BCNドナー(パネルA)および非BCNドナー(パネルB)由来の血清による、BCN(■)および非BCN(□)ドナーのEnvを有する偽型ウイルスの中和。アッセイはトリプリケートで行った。結果は、単一の実験由来、またはいくつかの場合における2つの実験の平均である。中和価は、結果として50%以上のルシフェラーゼ活性の阻害を生じる、最高血清希釈度として定義した。偽型ウイルスVI843、VI1249、VI1793、93BR20.9およびNYU1026は、ドナーVI0747由来の血清による中和に関して試験しなかった。水平な破線は、試験した偽型ウイルスの一団に対する、各血清の幾何平均力価を表す。BCN血清のGMT=1:109および非BCN血清のGMT=1:45、p=0.01。
【図3】BCN血清および非BCN血清による、14/00/4 Envを有する偽型ウイルスの中和の比較。水平な破線は、それぞれBCNおよび非BCN血清によって14/00/4 Envの中和に関して得られた幾何平均力価(GMT)を示す。BCNおよび非BCN血清による14/00/4 Envの中和に関して得られた力価の幾何平均値および標準偏差を、両側スチューデントt検定によって比較した(補正係数が多重比較に適用され、p=0.03)。
【図4】MabおよびsCD4による、BCNおよび非BCN Envを有する偽型ウイルスの中和。結果を、BCNおよび非BCN Envを有する偽型ウイルスに関して以下のように示す。R2(△)、14/00/4(□)、24/00/4(○)、VI423(▲)、VI843(◆)、VI1249(■)、およびVI1793(◇)、全ての非BCN Envを(●)として示す。中和アッセイを三連で行い、示される結果は2回の独立した実験の幾何平均値である。Mabを、段階的2倍希釈物中の中和に関して試験した。50%抑制量(ID50)を、結果としてウイルス感染性の50%以上の阻害を生じる最低濃度と定義した。
【図5】gp41 Mabおよびポリクローナル血清による中和に対する感受性に対するThr662の効果。A:早期の14/00/4(●)、ならびに後期の14/00/8−33(△)および14/00/8−83(□)を有する偽型ウイルスの変化しやすい感受性、Mab 2F5および4E10による中和に対するドナー14/00由来のEnvクローン。相対的感染性は、培地と比較した、Mab存在下で得られたルシフェラーゼ単位の比である。B:T662およびA662の、Mab 2F5および4E10による中和に対する感受性に対する効果の比較。14/00/4、NYU1026およびNYU1423 Envを有する偽型ウイルスを、2F5および4E10 Mabによる中和に関して比較した。部位特異的変異誘発を用いて、14/00/4(A662)、NYU1026(T662)、およびNYU1423(T662)変異Envを構築した。野生型Envを有する偽型ウイルスを■として示し、変異Envを有する偽型ウイルスを□として示す。C:BCNおよび非BCNポリクローナル血清による、14/00/4(T662)(■)および14/00/4(A662)(□)Envを有する偽型ウイルスの中和の比較段階的2倍希釈物中の中和に関して血清を試験した。50%抑制量(ID50)を、結果としてウイルス感染性の50%以上の阻害を生じる最低血清希釈度と定義した。各血清のID50を、線形回帰によって決定した。各棒の上方の数字は、各ポリクローナル血清による、14/00/4(T662)および14/00/4(A662)を有する偽型ウイルスのID50の差である。
【図6】Mab 2F5および4E10による中和に対するドナー2400のEnvクローンにおけるK665T変異の効果。A:ドナー24/00由来の早期の24/00/4(●)、ならびに後期の24/00/8−46(△)、24/00/8−275(◇)および24/00/8−258(□)Envクローンの、Mab 2F5および4E10による中和に対する変化しやすい感受性。これらのEnvを有する偽型ウイルスを、2つのMabによる中和に関して試験した。示される各結果は1つの実験に由来し、2回の反復実験由来のものと本質的に同じである。全ての実験は三連で行った。B:Env 24/00/8におけるK665T変異は、Mab 2F5による中和に対する耐性を決定する。24/00/4(K665)(■)および24/00/4(T665)(□)Envを有する偽型ウイルスを、Mab 2F5および4E10による中和に関して試験した。アッセイは三連で行い、示される結果は2つの独立した実験の平均である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における投与の後に広範な交差反応性抗体応答を誘導する少なくとも1つのエピトープを含む、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片であって、該エンベロープタンパク質が、配列番号3の657位または配列番号2の659位に対応する残基に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項2】
657位の置換がアラニンに代わってスレオニンである、請求項1に記載のHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項3】
659位の置換がリシンに代わってスレオニンである、請求項1に記載のHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項4】
アミノ酸配列番号55を含む少なくとも1つの中和抗体エピトープを含む、修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項5】
前記アミノ酸配列が配列番号25を含む、請求項4に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項6】
前記アミノ酸配列が配列番号20を含む、請求項4に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項7】
前記タンパク質が配列番号2、3、4、5、6、7、43、45、47または49のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項8】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片。
【請求項9】
前記エンベロープタンパク質が配列番号2、3、4、5、6、7、43、45、47または49からなる、請求項6に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片をコードする核酸分子。
【請求項11】
前記核酸分子が配列番号42、44、46、48、50、51、52、53または54を含む、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記核酸分子が配列番号42、44、46、48、50、51、52、53または54からなる、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記核酸分子が1つ以上の発現調節因子に操作可能に連結された、請求項10に記載の単離された核酸分子。
【請求項14】
請求項10に記載の単離された核酸分子を含むベクター。
【請求項15】
請求項10に記載の核酸分子を含むように形質転換された宿主細胞。
【請求項16】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項17】
前記宿主が原核宿主細胞および真核宿主細胞からなる群より選択される、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
請求項10に記載の核酸分子で形質転換された宿主細胞を、前記核酸分子によってコードされるポリペプチドが発現する条件下で培養する工程を含む、ポリペプチドの産生方法。
【請求項19】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片と薬学的に許容され得る担体とを含む組成物。
【請求項20】
前記組成物がヒトにおけるワクチンとして適している、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を含む融合タンパク質。
【請求項22】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の1つ以上の修飾されたHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を、抗体の産生を誘導するのに十分な量投与する工程を含む、哺乳動物における抗体産生方法。
【請求項23】
請求項10に記載の1つ以上の核酸分子を、抗体の産生を誘導するレベルのHIV−1エンベロープタンパク質またはその断片を発現するのに十分な量投与する工程を含む、哺乳動物における抗体産生方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載の方法によって産生された、単離された抗体。
【請求項25】
前記抗体がモノクローナルである、請求項24に記載の単離された抗体。
【請求項26】
前記抗体が広範な交差反応性HIV−1エンベロープ中和抗体である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体がHIV感染を阻害する、請求項22または23に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、感染した個体に存在するHIVの量を減少させる効果を有する、請求項22または23に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−511331(P2008−511331A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530200(P2007−530200)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/030563
【国際公開番号】WO2006/026508
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(503366243)ザ ヘンリー エム ジャクソン ファウンデーション (3)
【氏名又は名称原語表記】The Henry M.Jackson Foundaion
【出願人】(507062048)インスティテュート オブ トロピカル メディスン (1)
【Fターム(参考)】