説明

修飾したヒト因子VII/VIIaと、それを含む医薬組成物

高い安定性を有する修飾された因子VII/VIIaと、この修飾された因子VII/VIIaをコードする核酸と、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤用の活性剤として用いられるヒト因子VII(FVII)/活性化因子VII(FVIIa)の製造方法に関するものである。
本発明は特に、高い安定性を有する修飾された因子VII/VIIaと、この修飾された因子VII/VIIaをコードする核酸と、その製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この因子VII(FVII)はビタミンK依存性の糖タンパク質で、このビタミンK依存性糖タンパク質は、その活性型(FVIIa)の形で、因子Xおよび因子IXをカルシウムおよび組織因子の存在下で活性化して凝固(clotting)過程に関与する。FVIIは分子量が約50kDaの406アミノ酸残基を有する一本鎖ペプチドの形で分泌される。FVIIは4つの異なる構造ドメインすなわちN末端γ−カルボン酸ドメイン(Gla)、2つの上皮細胞増殖因子様ドメイン(EGF様)およびセリンプロテアーゼドメインを有する。FVIIのFVIIaへの活性化はArg152-Ile153結合(アルギニン152-イソロイシン153)の切断で特徴付けられる。従って、FVIIaは分子量が約20kDaの152アミノ酸の軽鎖と、分子量が約30kDaの254アミノ酸の重鎖とからなり、両者は単一のジスルフィド架橋(システイン135-システイン262)によって結合されている。
【0003】
FVII/VIIaは、血友病患者および第VIII因子欠乏(血友病A)または第IX因子欠乏(血友病B)の患者の治療と、その他の凝固因子欠乏症、例えば遺伝性FVII欠乏症の患者の治療で用いられる。さらに、FVII/VIIaは脳血管発作の治療にも推奨されている。
【0004】
FVIIa濃縮物を得る最も古い方法は分画−誘導血漿タンパクからFVIIaを精製する方法であった。
【0005】
特許文献1(欧州特許第0,346,241号公報)にはこの目的を達成するためにFVIIとFVIIaとその他のタンパク質、例えば因子IX、XおよびIIとを含む血漿タンパクの分画副産物、例えばPPSBプレ溶離液(P=プロトロンビンまたはFII、P=プロコンベルチンまたはFVII、S=スチュアート因子またはFX、B=抗血友病B因子またはFIX)を抽出し、溶離して得られるFVIIaリッチな画分の製造方法が記載されている。
【0006】
特許文献2(欧州特許第0,547,932号公報)にもビタミンK依存性因子とFVIIIを実質的に含まない高純度のFVIIa濃縮物の製造方法が記載されている。
【0007】
これらの血漿からFVII/VIIaを得る方法の主たる欠点は少量の産物しか得られず、また、系統的に切断形で得られる産物は感度が悪く、活性が低く、望ましくない副作用を引き起こす可能性が高い点にある。さらに、献血者から採取可能な血漿の量も限られる。
【0008】
そのため、80年代には既にヒト因子VIIをコードするDNAが単離され (非特許文献1(Hagen and al. (1986); Proc. Natl. Acad. Sci. USA; Apr 83(8):2412-6)、対応するタンパク質がBHK哺乳類細胞(生まれたてのハムスターの腎臓)中に発現されている(特許文献3の欧州特許第0 200 421号公報)。本出願人が出願した特許文献4(フランス国特許出願第06,04872号公報)にもトランスジェニック動物中のFVIIaの製造が記載されている。
【0009】
これらの製造方法を用いることでウイルスや他の病原体による汚染の危険性のない安全なタンパクを得ることができる。これらの方法では一次配列がヒトの一次配列と同じであるタンパク質を得ることができる。
【0010】
組み換えヒトFVIIaの市販製剤は商品名ノボセブン(NovoSeven、登録商標(ノボノルディスク、商品品NovoNordisk)で入手可能であるが、所望の治療効果または予防効果を達成し、維持するにはかなりの量を用い、頻繁に静脈投与する必要がある。このような治療法が可能な患者の数は限られ、非常に高価になる。
【0011】
さらに、FVII/VIIaはタンパク分解切断に対して敏感なタンパクで、凝固活性を含まない複数の分解産物が形成される非定型な切断(antypical cleavages)ということがわかっている。この非定型切断はFVII/VIIaの製造法の各段階および貯蔵時に生じる。この分解産物は血漿由来のFVII/VIIaお遺伝子組み換え法を用いて製造したFVII/VIIaの両方で観察されている。この非定型切断はFVIIをFVIIaに活性化する前、例えばFVIIの製造中および精製中、活性化段階中または活性化産物(FVIIa)の精製中および/または貯蔵中に起こる。
【0012】
特許文献5(欧州特許第0,370,036号公報)は修飾されたFVII/VIIaに関するものであり、FVII/VIIaの非定型切断に関与するリジン、アルギニン、イソロイシンおよび/またはチロシン残基を減して、FVII/VIIa非定型切断を減らし、より安定なFVII/VIIaを得るものである。しかし、この特許はより安定なFVII/VIIaを得る上での問題の一部しか解決しておらず、非定型切断に関与するアミノ酸の修飾に起因するFVII/VIIaコンホメーションの変化という問題も対処していない。この特許にはアミノ酸配列の修飾の影響を全く(あるいはほとんど)受けないコンホメーションで非定型切断部位レベルで修飾されたFVII/VIIaを得る方法は記載も提案もない。
【0013】
非定型切断部位レベルで修飾されたヒトFVII/VIIaに関する文献は他にも存在するが、特性が改善された新規なヒトFVII/VIIaに対する極めて大きなニーズが依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第0,346,241号公報
【特許文献2】欧州特許第0,547,932号公報
【特許文献3】欧州特許第0,200,421号公報
【特許文献4】フランス国特許第06,04872号公報
【特許文献5】欧州特許第0,370,036号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Hagen and al. (1986); Proc. Natl. Acad. Sci. USA; Apr 83(8):2412-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、リジン38、アルギニン290およびアルギニン315の中から選択される少なくとも2つのアミノ酸残基を(i)異なるアミノ酸残基で置換するか(ii)欠失させて修飾した安定性の高い因子FVII/VIIaを提供する。
本発明はさらに、上記の修飾された因子FVII/FVIIaをコードする核酸、この核酸が挿入された組み換えベクター、この核酸で形質転換された宿主細胞または上記組み換えベクターおよび修飾された因子FVII/VIIaを発現する遺伝子組み換え生物を提供する。
本発明はさらに、上記定義の修飾された因子FVII/FVIIaの調製方法を提供する。
本発明はさらに、上記の修飾された因子FVII/FVIIaの、修飾された因子FVII/VIIaを含む薬剤および医薬組成物の製造での使用を提供する。
本発明は、(i)貯蔵期間中および(ii)患者に投与後のインビボの両方で高い安定性を有する新規な修飾された因子FVII/VIIaを提供する。
【0017】
本発明者は、驚くべきことに、天然の未変性ヒトFVII/FVIIaのアミノ酸配列中のアミノ酸残基リジン38(Lys38、K38)、アルギニン290(Arg290、R290)およびアルギニン315(Arg315、R315)のある突然変異では未変性ヒトFVII/FVIIaと比べて修飾したヒトFVII/VIIaのコンホメーションを全くあるいはほとんど変化させないということを発見した。
【0018】
本発明者はさらに、本発明の修飾FVII/VIIaは、三次元コンホメーションが天然の未変性ヒトFVII/FVIIaの三次元コンホメーションに類似し、さらには同一でもあり、天然の未変性ヒトFVII/VIIaと比較して特性が改善され、例えば非定型切断率が減少し、産生収率が良くなり、クリアランスが減少し、安定性が高くなり、しかも、天然の未変性ヒトFVII/VIIaのコンホメーションに近いコンホメーションを維持するということを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0019】
最も広い観点から、本発明は下記(1)〜(3)のようにリジン38、アルギニン290およびアルギニン315の中から選択される置換または欠失された少なくとも2つのアミノ酸を有する、天然のヒト因子VII/VIIaのペプチド配列と比較して修飾されていることを特徴とするヒト因子VII/VIIaを提供する:
(1)リジン38はグルタミン、アラニン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの中から選択されるアミノ酸で置換され、
(2)アルギニン290はグルタミン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの中から選択されるアミノ酸で置換され、および/または、
(3)アルギニン315はグルタミン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの中から選択されるアミノ酸で置換される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】FVII非定型切断で生じるアミノ酸配列を示す天然条件下でのMALDI-TOF質量スペクトル。
【図2】FVII非定型切断で生じるアミノ酸配列を示す還元条件下のMALDI-TOF質量スペクトル。
【図3】Sybyl 7.2ソフトウェア(Tripos)を用いてリジン38を含む天然未変性ヒトFVII(白)と、38位置にグルタミンを含む修飾したヒトFVII(黒)との構造を重ねて示した分子モデリング図。
【図4】Sybyl 7.2ソフトウェア(Tripos)を用いてアルギニン290を含む天然未変性ヒトFVII(白)と、290位置にグルタミンを含む修飾したヒトFVII(黒)との構造を重ねて示した分子モデリング図。
【図5】Sybyl 7.2ソフトウェア(Tripos)を用いてアルギニン315を含む天然未変性ヒトFVII(白)と、315位置にグルタミンを含む修飾したヒトFVII(黒)との構造を重ねて示した分子モデリング図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「非定型切断」(非定型な切断、antypical cleavages)とは、FVIIまたはFVIIa分子で生じる活性化部位の切断(Arg152-Ile153 結合の切断)を除く任意のペプチド結合切断を意味する。これらの非定型切断は特にアミノ酸のリジン38(リジン38−ロイシン39結合)、アルギニン290(アルギニン290−グリシン291結合)およびアルギニン315(アルギニン315−リジン316結合)に関する切断で、FVII/VIIaの薬学的速度論での特性変化をもたらす構造的修飾を引き起こすものである。
【0022】
「産生収率」とは、発酵槽(またはバイオリアクター)の容量当たり、または、トランスジェニック動物のミルクの容量当たり、または、任意のバイオマス(動物、植物、バクテリアまたは昆虫の細胞)の重量当たりの構造的にコンフォーマブルな活性FVII/VIIaの生産量を意味する。従って、突然変異したFVII/VIIaの産生コストは、一次配列が天然未変性ヒトFVII/VIIa配列と同じであるFVII/VIIaの産生コストよりはるかに低い。
【0023】
「クリアランス」とは、単位時間当たりの完全に精製された理論的容量の画分すなわちFVII/VIIaを全く含まない画分を意味する。FVII/FVIIaクリアランスは血漿精製係数を示す。これは器官が単位時間当たり所定量の動脈血漿からFVII/FVIIaを完全に除去する能力に対応する。FVII/FVIIaクリアランスは所定の単位時間当たりFVII/FVIIaが完全に除去された動脈血漿の見掛けの量(仮想量)である。
【0024】
「安定性」とは、FVII/VIIaがその化学的、物理的、構造的、コンホメーション的および/または生物薬剤学特性を全保存期間中保持する能力を意味する。
【0025】
「コンホメーション」とは、タンパク質の三次構造すなわちポリペプチド鎖の空間内の折りたたみを意味し、3次元構造または3D構造とよばれることが多い。タンパク質の初期のコンホメーションはその生物学的活性と密接に関連する。これはその構造が変化したときに、タンパク質がその生物学的活性を失い、変性することを示している。従って、本発明で「コンホメーションの変化」とは、タンパク質の生物学的活性の損失に至るタンパク質の3次元構造に対する修飾を意味する。
【0026】
本発明のFVII/VIIaの生物学的活性は、例えば特許文献6に記載のように、FVII/VIIaが、FVII欠乏の血漿およびトロンボプラスチンによって血液凝固を引き起こす能力を測定して定量化できる。
【特許文献6】米国特許第5,997,864号明細書 この特許文献6に記載のアッセイでは、生物学的活性は対照サンプルと比較した凝固時間の減少で表され、生物学的活性は1単位/mlのFVII/VIIa活性を含むヒト血清標準と比較して「FVII/VIIa単位」に変換される。
【0027】
本発明のFVII/VIIaは、天然未変性ヒトFVII/VIIaと同様な翻訳後修飾特性を有するが、その化学的、物理的、構造的、コンホメーションおよび/または生物薬剤学特性を改善するように、血漿由来の未変性ヒトFVII/VIIaとは異なる翻訳後修飾を有することもできる。
【0028】
本発明の好ましい実施例では、FVII/VIIaはグルタミンによって置換されたリジン38、グルタミンによって置換されたアルギニン290およびグルタミンによって置換されたアルギニン315の中から選択される少なくとも2つの置換基を含む。
【0029】
本発明の第1の特定実施例では、FVII/VIIaはリジン38およびアルギニン290上の突然変異を含む。
本発明の第2の特定実施例では、FVII/VIIaはリジン38およびアルギニン315上の突然変異を含む。
本発明の第3の特定実施例では、FVII/VIIaはアルギニン290およびアルギニン315上の突然変異を含む。
本発明の第4の特定実施例では、FVII/VIIaはリジン38、アルギニン290およびアルギニン315上の突然変異を含む。
本発明の特定実施例では、リジン38はグルタミンによって置換され、アルギニン290はグルタミンによって置換され、アルギニン315はグルタミンによって置換される。
【0030】
本発明のFVII/VIIaは組換えDNA技術(遺伝子組換え)を実行して製造できる。一般に、天然未変性ヒトFVII/VIIaをコードする核酸(DNAまたはRNA)の核酸配列は所望のタンパク、特に本発明の修飾FVII/FVIIaをコードするように修飾される。次いで、こうして修飾した核酸を発現ベクターに挿入し、この発現ベクターを宿主細胞を形質転換または形質移入するために用いる。未変性ヒトFVII/VIIaをコードする核酸はSEQ ID No.1の核酸で示される。
【0031】
従って、本発明の別の対象は、本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸および相補配列の核酸を提供することにある。
本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸は当業者の一般知識に属する任意の周知の従来技術を用いて製造または合成することができる。一例としては、本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸は天然未変性ヒトFVII/VIIaをコードする核酸から遺伝子組換えによって得ることができる。本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸は天然未変性ヒトFVII/VIIaをコードする核酸から部位特異的突然変異生成によって得るのが好ましい。部位特異的突然変異生成技術は当業者に周知であり、この技術によって所望の修飾ヒトFVII/VIIaをコードするDNAを得ることができる。例えば1978年にマイケル スミスが示した部位特異的突然変異生成技術(非特許文献2)と同一またはこの技術から導かれる部位特異的突然変異生成技術を実行することができる。
【非特許文献2】スミス達;「DNA配列中の特定位置での突然変異生成」;J Biol Chem(1978)、9月25日;253(18):6551-60
【0032】
本発明のFVII/VIIaは、本発明の目的のために選択されたアミノ酸によって置換されるか、欠失している、SEQ ID No.2の天然未変性ヒトFVIIのリジン38、アルギニン290およびアルギニン315の中から選択された少なくとも2つのアミノ酸残基を有するポリペプチドであるのが有利である。
【0033】
本発明の特定実施例では、修飾したFVII/VIIaは天然未変性ヒトFVII/VIIaの変異体から得ることができるが、この変異体は天然未変性ヒトFVII/VIIaほど免疫原性でないことが条件である。従って、この変異体のペプチド配列は天然未変性ヒトFVIIのペプチド配列に対して少なくとも70%、有利には少なくとも80%または90%、さらに有利には少なくとも99%のアミノ酸同一性を示し、且つ、SEQ ID No.2の天然未変性ヒトFVIIのアミノ酸番号付けに従って、本発明の目的のために選択されたアミノ酸によって置換されまたは欠失したリジン38、アルギニン290およびアルギニン315の中から選択された少なくとも2つのアミノ酸残基を有している。この変異体は天然未変性ヒトFVII/VIIaと同様または実質的によりよい生物学的活性を有する。
【0034】
本発明の目的では、「ヌクレオチド配列」はポリヌクレオチドまたは核酸のいずれかの意味に用いる。「ヌクレオチド配列」は遺伝物質を含み、配列に関する情報に限定されない。
本発明で「核酸」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」または「ヌクレオチド配列」とは、一本鎖または二本鎖のいずれかの形の、2つ以上のヌクレオチドのRNA、DNA、cDNA配列あるいはRNA/DNAハイブリッド配列を意味する。「ヌクレオチド」とは天然ヌクレオチド[アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)およびウラシル(U)]を意味する。
【0035】
本発明の目的では、第1のヌクレオチドの各塩基が、逆方向の第2のポリヌクレオチドの相補塩基と対になる場合、第1のポリヌクレオチドは第2のポリヌクレオチドに「相補的」であると見なされる。相補的な「塩基」はAとT(またはAとU)およびCとGである。
【0036】
本発明では、第2の参照核酸に対して少なくとも90%の同一性を有する第1の核酸とは、第2の参照核酸に対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,97.5%,98%,98.3%,98.6%,99%,99.6%のヌクレオチド同一性を有するものである。本発明では、第2の参照ポリペプチドに対して少なくとも90%の同一性を有する第1のポリペプチドとは、第2の参照ポリペプチドに対して少なくとも90%、好ましくは少なくとも91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,97.5%,98%,98.3%,98.6%,99%,99.6%のアミノ酸同一性を有するものである。
【0037】
本明細書に定義の2つの核酸配列の間または2つのアミノ酸配列の間の「同一性(identity)のパーセンテージ」は比較ウインドに最適に整列させた2つの配列の比較で求める。
この比較ウインド内のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の断片は2つの配列が最適に整列するために参照配列(付加または欠失を含まない)と比べて付加または欠失(例えばギャップ)を含むことができる。
同一性パーセンテージは下記で計算される:同一の核酸塩基または同一のアミノ酸が両方の比較配列で観察される位置の数を求め、次いで、2つの核酸塩基または2つのアミノ酸の間に同一性がある位置の数を比較ウインド内の位置の合計数で割り、最後に、結果に100を掛けて両方の配列の間のヌクレオチドまたはアミノ酸の同一性のパーセンテージを出す。
比較用配列の最適整列は周知なアルゴリズムを用いたコンピュータプログラムで行うことができる。
【0038】
CLUSTAL W ソフトウェア(バージョン 1.82)で下記パラメータを用いて上記の配列同一性のパーセントを求めるのが最も好ましい:
(1) CPU MODE = ClustalW mp; (2) ALIGNMENT = "full"; (3) OUTPUT FORMAT = "aln w/numbers"; (4) OUTPUT ORDER = "aligned"; (5) COLOR ALIGNMENT = "no"; (6) KTUP (word size) = "default; (7) WINDOW LENGTH = "default"; (8) SCORE TYPE = "percent"; (9) TOPDIAG = "default"; (10) PAIRGAP = "default"; (11) PHYLOGENETIC TREE/TREE TYPE = "none"; (12) MATRIX = "default"; (13) GAP OPEN = "default"; (14) END GAPS = "default"; (15) GAP EXTENSION = "default"; (16) GAP DISTANCES = "default"; (17) TREE TYPE = "cladogram" and (18) TREE GRAP DISTANCES = "hide"
【0039】
本発明の別の対象は、本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸が挿入される発現ベクターにある。
本発明で用いる発現ベクターは、本発明のFVII/VIIaをコードする核酸の転写を進めることができるプロモータを含むことができる。哺乳類の細胞培養に一般的に用いられるプロモーターは、従来技術で周知なウイルスのプロモーターおよび細胞プロモーターを含む。発現ベクターは、プロモータの下流で且つ本発明のFVII/VIIaをコードするDNA配列の挿入部位の上流にスプライシング部位をさらに含むことができる。発現ベクターは本発明のFVII/VIIaをコードするDNA配列の挿入部位の下流にポリアデニル化配列をさらに含むことができる。発現ベクターは、FVII/VIIa、本発明のFVII/VIIaをコードするDNA配列および/または本発明のFVII/VIIaをコードするDNA配列の発現、選択および/または挿入に有用な任意の型のDNA配列を含む発現ベクターをさらに含むことができる。
【0040】
本発明の別の対象は、形質転換によって本発明の修飾したヒトFVII/VIIaを産生する細胞にある。形質転換細胞は宿主細胞のゲノム中の本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸の転移により得られ、好ましくはこうして形質転換された細胞によってそのDNA配列が発現される。適切な細胞形質転換方法は当業者に周知である。これらの方法は、リポソームの使用、ポリエチレングリコール(PEG)の使用、DEAEデキストランの使用、リン酸カルシウムの使用、ウィルス(大部分がレトロウイルス)の使用、DNAガンの使用、細胞融合、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含むが、これらに限定されるものではない。従って、本発明の別の対象は、上記定義の修飾したヒトFVII/VIIaをコードし且つ修飾したヒト因子VII/VIIaを発現する核酸で形質転換された細胞にある。この形質転換細胞は哺乳類形質転換細胞、特にマウス、ウシ、ヤギ、ブタ、非ヒト霊長類の形質転換細胞またはヒト形質転換細胞であるのが好ましい。
【0041】
本発明の修飾ヒトFVII/VIIaは、本発明に従って形質転換された細胞から入手し、培養することができる。例として、下記の細胞を挙げることができる:BHK生まれたてのハムスターの腎臓)、特にBHK tk-ts13(CRL 10314, 非特許文献3)、CHO(ATCC CCL 61)、COS-1(ATCC CRL 1650)(HEK293)(ATCC CRL 1573; 非特許文献4), Rat Hep I (ラット肝臓癌; ATCC CRL 1600), Rat Hep II (ラット肝臓癌; ATCC CRL 1548), TCMK (ATCC CCL 139), ヒト肺 (ATCC HB 8065), NCTC 1469 (ATCC CCL 9.1)およびDUKX細胞(CHO 細胞株) (非特許文献5),細胞YB2/0,細胞3T3, 細胞Namalwa,または無血清培地に適合されたBHK細胞(特許文献7)。
【非特許文献3】Waechter and Baserga, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:1106-1110, 1982
【非特許文献4】Graham達。J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977
【非特許文献5】Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980
【特許文献7】米国特許第6,903,069号明細書
【0042】
本発明の別の対象は、本発明の修飾したヒト因子VII/VIIaを産生するための遺伝子組み換え生物にある。欧州連合による定義では、「遺伝子組み換え生物」とは遺伝物質が、増殖および/または組み換えによって自然に起こり得ない方法で修飾された生物(ヒト以外)を意味する。本発明では、遺伝子組み換え生物は本発明のFVII/VIIaをコードするDNA配列が組込まれ、修飾したヒトFVIIのDNA配列を発現し、本発明の修飾したヒトFVII/VIIaを産生する。遺伝子組み換え生物は微生物、動物または植物である。従って、本発明のさらに別の対象は、本明細書で定義した修飾したヒト因子VII/VIIaをコードする核酸をそのゲノム中に含み且つこの修飾したヒト因子VII/VIIaを発現する遺伝子組み換え生物にある。
【0043】
微生物は顕微鏡的微生物で、細菌、酵母またはウイルスのいずれかにすることができる。細菌は例えば下記にすることができる:Bacillus subtilis (非特許文献6; 特許文献8、特許文献9、特許文献10); Escherichia coli (非特許文献7); 非特許文献8; 非特許文献9; 特許文献11、特許文献12、特許文献13); Streptococcus cremoris (非特許文献10); Streptococcus lividans(非特許文献10); Streptomyces lividans (特許文献14)。イーストも可能、例えばCandida (特許文献11; 特許文献12); Hansenula (非特許文献13); (非特許文献14); Kluyveromyces (非特許文献15; 非特許文献16; 非特許文献17); Pichia (非特許文献18; 非特許文献19; 特許文献15、特許文献16); Saccharomyces (非特許文献20); 非特許文献21); Schizosaccharomyces (非特許文献22); Yarrowia (非特許文献23;非特許文献24)。
【特許文献8】欧州特許第0,036,259号公報
【特許文献9】欧州特許第0,063,953号公報
【特許文献10】国際特許第WO 84/04541号公報
【特許文献11】欧州特許第0,036,776号公報
【特許文献12】欧州特許第0,136,829号公報
【特許文献13】欧州特許第0,136,907号公報
【特許文献14】米国特許第4,745,056号明細書
【特許文献15】米国特許第4,837,148号明細書
【特許文献16】米国特許第4,929,555号明細書
【非特許文献6】Palva and al. (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:558
【非特許文献7】Shimatake and al. (1981) Nature 292:128
【非特許文献8】Amann and al. (1985) Gene 40:183
【非特許文献9】Studier and al. (1986) J. Mol. Biol. 189:113
【非特許文献10】Powell and al. (1988) Appl. Environ. Microbiol. 54:655
【非特許文献11】Kurtz and al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6:142
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【非特許文献14】Roggenkamp and al. (1986) Mol. Gen. Genet. 202:302
【非特許文献15】Das and al. (1984) J. Bacteriol. 158:1165
【非特許文献16】De Louvencourt and al. (1983) J. Bacterial. 154:1165
【非特許文献17】Van den Berg and al. (1990) Bio/Technology 8:135
【非特許文献18】Cregg and al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3376
【非特許文献19】Kunze and al. (1985) J. Basic Microbiol 25:141
【非特許文献20】Hinnen and al. (1978) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75;1929
【非特許文献21】Ito and al. (1983) J. Bacteriol. 153:163
【非特許文献22】Beach and Nurse (1981) Nature 300:706
【非特許文献23】Davidow and al. (1985) Curr. Genet. 10:39
【非特許文献24】Gaillardin and al. (1985) Curr. Genet. 10:49
【0044】
用いるウィルスは、例えばトリ白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、マウス白血病ウイルス、ミンク細胞巣誘発ウィルス、マウス肉腫ウイルス、細網内皮症ウィルスおよびラウス肉腫ウイルスのようなレトロウイルスにすることができる。
【0045】
本発明で定義されるような動物は、葉緑体を全く持たない、真核生物タイプの、非ヒト多細胞生物である。好ましい実施例では、本発明で用いる遺伝子組み換え生物は哺乳類、好ましくは雌のウサギである。本発明の修飾したヒトFVII/VIIaは哺乳類、好ましくは雌のウサギの乳腺中で産生することができ、これは上記雌ウサギのミルク中でFVII/VIIaの発現を可能にする特異的プロモータの制御下で行われるのが有利である。
【0046】
トランスジェニック動物のミルク中の遺伝子組み換えまたはトランスジェニックFVII/VIIaの産生方法は下記の段階を含むことができる:本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする遺伝子を含むDNA分子(この遺伝子はミルク中で自然に分泌されるタンパク質のプロモータ、例えばカゼイン遺伝子プロモータ、ベータカゼイン遺伝子プロモータ、ラクトアルブミン遺伝子プロモータ、ベータラクトグロブリン遺伝子プロモータまたはWAP遺伝子プロモータの制御下にある)を非ヒト哺乳類の胎仔に組み込む。次いで、胎仔を同じ種の雌の哺乳類に挿入する。胎仔由来の哺乳類が十分に発達すると、哺乳類ミルク分泌が誘発される。ミルクを採取する。採取したミルクは上記組み換えまたはトランスジェニックFVII/VIIaを含む。
ヒト以外の雌の哺乳類のミルク中のタンパク質調製方法の一例は特許文献17に挙げられている。
【特許文献17】欧州特許第0 527 063号公報
【0047】
この特許の内容は本発明のタンパク質の産生で考慮することができる。WAP遺伝子プロモータ(乳漿酸性タンパク質)を含むプラスミドは、WAP遺伝子プロモータを含む配列の導入により得られ、このプラスミドはWAP遺伝子プロモータの制御下に置かれた外来遺伝子を受け取ることができるように調製される。上記プロモータを含むプラスミド、および、本発明のタンパク質をコードする遺伝子は、雄性前核に雌ウサギの胎仔をミクロ注入することによってトランスジェニック雌ウサギを産生するのに用いられる。その後、胎仔をホルモンによって調製された雌の卵管へ移動させる。導入遺伝子の存在は、こうして得られたトランスジェニック幼ウサギから抽出されたDNAからサザンブロットによって明らかにされる。動物ミルク濃度を特異的放射免疫アッセイを用いて評価する。
【0048】
その他の文献には、ヒト以外の雌の哺乳類のミルク中でタンパク質を調製する方法が記載されている。一例としては特許文献18(トランスジェニックマウス)および特許文献19(フォンウィルブランド因子のトランスジェニック哺乳類中の産生)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【特許文献18】米国特許第7,045,676号明細書
【特許文献19】欧州特許第1 739 170号明細書
【0049】
これらの調製方法は、本発明の修飾FVII/VIIaからのDNAを用いる本発明に適用される。
特定実施例では、遺伝子組み換え生物は昆虫、例えば蚊、蝿などである。
本発明で「組み換えまたはトランスジェニックFVII/VIIa」とは、形質転換細胞または遺伝子組み換え生物すなわち微生物、動物または植物から得られる任意のFVII/VIIaを意味する。すなわち、本発明のFVII/VIIaは血漿由来のFVII/VIIaではなく、ヒトまたは動物の血漿から精製された産物ではない。
【0050】
従って、本発明のFVII/VIIaは、本発明の修飾したFVIIをコードし且つトランスジェニック細胞、微生物、動物または植物によって産生されたDNA分子の転写、次いで、翻訳によって得られる。従って、本発明の組み換えまたはトランスジェニックFVII/VIIaは当業者に周知の従来法を用いて得ることができ、それによって生物系でのタンパク質の発現が可能になる。
【0051】
本発明の別の対象は、下記の段階を含む本発明の修飾したヒトFVII/VIIaの調製方法にある:
(a)本発明に定義の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸で細胞を形質転換し、
(b)(a)段階で得られる細胞を培養してこの細胞が上記因子VII/VIIaを発現するようにし、
(c)(b)段階で培養した形質転換細胞で発現した修飾したヒト因子VII/VIIaを精製する。
【0052】
形質転換細胞は、FVII/VIIaの発現を可能にする適切な培地で培養する。用いる培地は培養細胞に応じて当業者が意図的に選択する。細胞培養に適した培地にはIMDM(Iscove修飾ダルベッコ培地)、DMEM(ダルベッコ修飾イーグル培地)、RPMI 1640またはその均等物がある。これらの培地は主成分である無機塩類、アミノ酸、ビタミンおよびその他の成分、例えばそのエネルギー供給用グルコースおよびその緩衝効果用HEPES、塩基性補体、例えば特にアミノ酸、鉱物、微量元素、各培養細胞タイプごとの成長および代謝活性に特異的な分子補体などを含む。
【0053】
本発明の別の対象は、下記段階を含むトランスジェニック哺乳類のミルク中での本発明の修飾したヒトFVII/VIIaを調製する方法にある:
(a)本発明の修飾したヒト因子VII/VIIaをコードする核酸を乳腺中で発現するトランスジェニック哺乳類を提供し、
(b)因子VII/VIIaを含むトランスジェニック動物のミルクを採取し、
(c)採取したミルクから修飾したヒト因子VII/VIIaを精製する。
【0054】
トランスジェニック哺乳類はマウス、雌ラット、雌ウサギまたはヤギにするのが有利である。トランスジェニック哺乳類は雌ウサギであるのが好ましい。
【0055】
トランスジェニック哺乳類を提供するためには従来法を用いることができる。従来法では例えば本発明の修飾したヒトFVII/VIIaをコードするDNA配列を哺乳類胎仔にミクロ注入し、このミクロ注入された胎仔を同種の雌の哺乳類の卵管内腔に導入し、ミクロ注入された胎仔に由来する幼哺乳類が生まれるのを待ち、トランスジェニック動物がそのミルク中に修飾したヒトFVII/VIIaを実際に発現することを確認する。
【0056】
本発明のFVII/VIIaは、当業者に周知の下記精製方法で精製できる(しかし、これらに限定されるものではない):クロマトグラフィー(イオン交換、アフィニティー、疎水性またはサイズ排除クロマトグラフィー)、電気泳動ベースの方法、例えば調製用等電点電気泳動(IEF)、溶解度差(硫安塩析)または抽出(タンパク質精製、非特許文献25)。
【非特許文献25】タンパク質精製J.-C. Janson and Lars Ryden,、エディター、VCH出版、ニューヨーク(1989)
【0057】
本発明のFVII/VIIaは、抗FVII抗体カラムまたは抗FVIIアプタマーカラム上でアフィニティークロマトグラフィーによって精製するのが好ましい。従来の化学的精製法、例えばHPLC(高速液体クロマトグラフィー)を用いて追加精製を行なうことができる。その他の精製方法、例えばクエン酸バリウム沈殿も当業者に周知であり、本発明のFVII/VIIaの精製に用いることができる。
【0058】
本発明で「抗体」とは、免疫グロブリンまたはその免疫学的に活性がある画分、例えば抗原結合性領域を意味する。従って、抗体は、少なくとも1つ、好ましくは2つの重鎖と、少なくとも1つ、好ましくは2つの軽鎖を含むタンパク質を意味する。
本発明で「アプタマー」とは、それがタンパク質に特異的に結合することを可能にする三次構造を有する核酸分子(DNAまたはRNA)を意味する(非特許文献26; 非特許文献27)。
【非特許文献26】Osborne, and al. (1997) Curr. Opin. Chem Biol. 1: 5-9
【非特許文献27】Patel, D. J. (1997) Curr Opin Chem Biol 1:32-46
【0059】
本発明のさらに別の対象は、本発明の修飾したヒト因子FVII/VIIaを含む組成物にある。
本発明のさらに別の対象は、本発明の修飾したヒト因子FVII/VIIaと、賦形剤および/または医薬上許容可能なキャリアとを含む医薬組成物にある。
本発明の医薬組成物は、非経口投与、局所(topical or local)投与で予防および/または治療用途に用いることができる。従って、本発明の修飾したヒトFVII/VIIaは選択された投与経路に合った形態、例えば液体形態または冷凍乾燥形態で調製される。本発明の修飾したヒトFVII/VIIaを含む医薬組成物は、賦形剤および/または医薬上許容可能なキャリア、好ましくは水性のものを含むことができる。多くの医薬上許容可能な賦形剤および/またはキャリア、例えば水、緩衝用水、食塩水、グリシン溶液およびこれらの誘導体、並びに、生理学的条件の再現に必要な薬剤、例えば緩衝液およびpH調整剤、界面活性剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムを用いることができるが、このリストに限定されるものではない。さらに、医薬組成物は当業者に周知の滅菌法によって滅菌できる。一般に、本発明の医薬組成物を調製するには、当業者は、ヨーロッパ薬局方の最新版、例えば非特許文献28、非特許文献29を参照するのが有利である。
【非特許文献28】ヨーロッパ薬局方の第5版(2005年1月公開)
【非特許文献29】ヨーロッパ薬局方の第6版(2007年6月公開)
【0060】
本発明の修飾したヒトFVII/VIIaおよびそれを含む医薬組成物は医薬を製造する上で特に有用である。本発明の修飾したヒトFVII/VIIaおよびそれを含む医薬組成物は患者の凝固障害の治療薬の調製に有用である。本発明の医薬組成物で治療する凝固障害には多発性の出血外傷、例えば血友病AおよびBまたは抗凝固剤の過剰投与による出血があるが、これらに限定されるものではない。
本発明の修飾したヒトFVII/VIIaは単独でまたは一つまたは複数のその他の医薬上活性がある分子と組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0061】
実施例1
ヒトFVIIの三次元モデル
タンパク質データバンク(PDB)で利用可能なすべての結晶化構造の徹底的研究に基づいてヒトFVII三次元モデルを考えた。27 FVII構造は、発現システム、重鎖および軽鎖完全性、組織因子発生、分解能、O糖鎖形成およびN-糖鎖形成発生、γ−カルボキシル化発生およびプロテインデータバンク(PDB)の公開日のような種々のパラメータに従って分析した。この研究に基づいて構造の補正、構築および最小化でタンパク構造を作成した。用いたソフトウェアスイートはSybyl v7.2(Tripos社)である。Sybylは全エネルギー最小化に依存するモデリングソフトウェアであり、従って、最も安定した構造、従って、最も有望なものを定義する。組織因子発生のシミュレーションによるタンパク質骨格の固定を含む大域的最小化段階を下記の条件下で実施した:
中止パラメータ:エネルギー勾配<0.5 kCal/mol、または反復到達最大数=10000、
最小化方法:パウエル
力場:Amber7FF99
糖タンパク質チャージの計算方法:Amber7FF99、
イオンおよび活性部位抑制剤チャージの計算方法:Gasteiger-Huckel、
非結合画分:8Å。
【0062】
実施例2
トランスジェニック雌ウサギのミルクで得られたFVIIの抽出と精製
(a)FVII抽出
500mlの容量の非脱脂粉生乳を9倍の容量のリン酸ナトリウム緩衝液0.25M、pH 8.2に希釈した。室温で30分撹拌した後、FVIIを豊富に含む水相を、15°Cで1時間10,000gで遠心分離した(Sorvall Evoluiton RC遠心分離機6700回転/分、ロータSLC-6000)。約835mlの6つのポットを必要とした。
遠心分離後、3つの相すなわち表面の脂質相(クリーム)、清澄なFVIIを豊富に含む非脂質水相(主相)および白色固体ペレット相(不溶なカゼインおよびカルシウム化合物沈殿物)を形成した。
FVIIを豊富に含む非脂質水相を蠕動ポンプでクリーム相へ収集した。クリーム相は別に収集した。固体相(沈殿物)は除去した。
非脂質水相(ごく少量の脂質を含む)を、フィルタシーケンス(Pall SLK7002U010ZP _孔径が1 オmのガラス繊維前置フィルター−その後にPall SLK7002NXP _孔径が0.45 オm のNylon 66)によって濾過した。濾過終了時に、脂質相をこの濾過シーケンスに通した。この濾過シーケンスによってミルクの脂質小球が完全に保持され、濾液は清澄であった。
【0063】
次いで、濾過した非脂質水相をクロマトグラフィー相と相溶になるように限外濾過膜(Millipore Biomax 50 kDa _ 0.1 m2)に通して透析した。分子量が約50 kDaのFVIIは薄膜を通らなかった。一方、ミルクの塩類、砂糖およびペプチドは通った。第1段階ではこの溶液(約5 000ml)を500mlに濃縮した後、容量を一定レベルに維持する限外濾過透析によって電解質を除去してクロマトグラフィー用の生体物質が調製できた。透析緩衝液はリン酸ナトリウム緩衝液0.025M、pH 8.2にした。
【0064】
FVIIを含むこの非脂質水相はFVII−tg−を豊富に含む乳清と見なすことができる。この製剤を−30℃で貯蔵した後、プロセスを続けた。
この段階の終了時のFVIIを含む非脂質水相は完全に清澄であり、次のクロマトグラフィー段階に合ったものであった。
約93,000のIU FVII−tgをこの段階で抽出した。この製剤のFVII純度は約0.2%であった。
【0065】
(b)FVII精製
1.ヒドロキシアパタイトゲルでのクロマトグラフィー
Amicon 90カラム(直径9cm、断面積64cm2)を、BioRadのセラミックハイドロキシアパタイトI型ゲル(CHT-I)で充填した。ゲルをリン酸ナトリウム0.025Mと、塩化ナトリウム0.04Mとの混合物からなる緩衝液A、pH 8.0で平衡化した。−30℃で貯蔵した製剤全体を37℃の水浴中で氷の塊が完全に溶けるまで解凍した後に上記ゲル上に注入した(線速度100cm/時すなわち105ml/分)。保持されていない画分をリン酸ナトリウム0.025Mと塩化ナトリウム0.04Mとからなる緩衝液pH 8.2によってベースライン(RBL)に戻るまで除去した。
FVIIを含む画分の溶離は、リン酸ナトリウム0.25Mと塩化ナトリウム0.4Mとからなる緩衝液B、pH 8.0で行なった。溶離画分をベースラインに戻るまで回収した。
このクロマトグラフィーによって、ミルクのタンパク質の95%以上を除去でき、90%以上のFVIIを回収できた。比活性度(SA)に25を掛けた。この段階で純度が4%の約85,000のIU FVIIが入手できた。
【0066】
2.接線濾過(100 kDa)および濃縮/透析(50 kDa)
前段階の溶離液全体を、100kDa限外濾過膜(Pall OMEGA SC 100K− 0.1 m2)で接線モードで濾過した。FVIIを100kDa薄膜で濾過したが、100 kDa以上の分子量を有するタンパク質は濾過できなかった。
次いで、濾過画分を約500mlに濃縮した後、実施例1で既に述べた50kDA 限外濾過装置で透析した。透析緩衝液は塩化ナトリウム0.15Mにした。
プロセスのこの段階では、産物を−30℃で貯蔵した後に、イオン交換クロマトグラフィーを実行した。
この段階によって分子量が100 kDa以上のタンパク質、特にプロ酵素中のチャージを減らすことができた。100kDa薄膜上の処理によって、高分子量タンパク質を含めて、タンパク質の保持率は約50%になり、95%のFVIIすなわち82 000 IU FVIIを濾過した。
この処理によって、下流段階中のタンパク質分解加水分解の危険を減らすことができた。
【0067】
3.Q−セファロース(登録商標)FFゲルでのクロマトグラフィー
FVIIを活性化FVII(FVIIa)に活性化し、最後に濃縮し、FVII組成物に配合できるようにするために、Q-セファロース(登録商標)高速(QSFF)イオン交換ゲルで3つのクロマトグラフィーを連続して行なって活性剤を精製した。
【0068】
3.1 Q−セファロース(登録商標)FF第1段階「高カルシウム」溶離
直径が2.6cmのカラム(断面積が5.3cm2)を100mlのQ-セファロースFFゲル(GEヘルスケア)で充填し、ゲルを0.05Mトリス緩衝液、pH 7.5で平衡化した。
−30℃で貯蔵しておいた画分全体を氷の塊が完全に溶けるまで37℃の水浴で解凍した。画分をバランス緩衝液で1/2濃度[v/v]に希釈した後、ゲル上に注入し(流量13ml/分、線速度150cm/時)、次いで、緩衝液を流してベースライン(RBL)に戻るまで非保持画分を除去した。
FVII含有率が低い第1タンパク質画分はトリス0.05Mおよび塩化ナトリウム0.15Mの緩衝液、pH 7.5で、9ml/分(すなわち、100cm/時)で溶離し、除去した。
FVII含有率が高い第2タンパク質画分はトリス0.05M、塩化ナトリウム0.15Mおよび塩化カルシウム0.05Mの緩衝液、pH 7.5で、9ml/分(すなわち、100cm/時)で溶離した。
この第2画分を実施例1で既に述べた50kDA限外濾過装置で透析した。透析緩衝液は塩化ナトリウム0.15Mにした。この画分を+4℃で一晩貯蔵した後、第2の陰イオン交換クロマトグラフィー用カラムにかけた。この段階で73%のFVII(すなわち60000 IU FVII)を回収でき、随伴タンパクの80%を除去できた。さらに、この段階でFVIIをFVIIaに活性化することができた。
【0069】
3.2 Q−セファロース(登録商標)FF第2段階「低カルシウム」溶離
直径が2.5cmのカラム(断面積が4.9cm2)を30mlのQ-セファロース(登録商標)FFゲル(GEヘルスケア)で充填し、このゲルを0.05Mトリス緩衝液、pH 7.5で平衡化した。+4℃で貯蔵しておいた前段階の溶離画分(第2画分)を希釈してゲル上に注入した(流量9ml/分、線流速100cm/時)。
純度が極めて高いFVIIを含む画分を、トリス0.05M、塩化ナトリウム0.05Mおよび塩化カルシウム0.005Mの緩衝液、pH 7.5中で、4.5ml/分(すなわち、50cm/時)で溶離した。約23000 IU FVIIすなわち12 mgのFVIIが精製された。
この段階によって95%以上の随伴タンパク(雌ウサギのミルクタンパク質)が除去できた。この溶離液は純度が90%以上で、未変性ヒトFVIIに近い構造的且つ機能的特性を有していた。この溶離液を3回目のイオン交換クロマトグラフィーカラムへ通して濃縮し、配合操作した。
【0070】
3.3 Q−セファロース(登録商標)FF第3段階「ナトリウム」溶離
直径が2.5cmのカラム(断面積が4.9cm2)を10mlのQ-セファロース(登録商標)FFゲル(GEヘルスケア)で充填し、このゲルを0.05Mトリス緩衝液、pH 7.5で平衡化した。
前段階で精製された溶離画分を注射用蒸留水(WFI)で5倍に希釈した後、ゲル上に注入した(流量4.5 ml/分、線流速50cm/時)。次いで、FVIIをトリス0.02M、塩化ナトリウム0.28M緩衝液、pH7.0を用いて3ml/分(すなわち、36cm/時)の流量で溶離した。
FVII組成物を濃縮物として95%以上の純度で調製された。この産物は静脈注射に適している。この方法の累積収率が22%で、用いたミルク1リットル当たり少なくとも20mgのFVIIが精製できた。このFVIIに対して下記実施例のような種々の構造分析を実施できる。
【0071】
実施例3
MALDI-TOFMSによるFVIIの非定型切断の同定
質量分析MALDI-TOF MS(マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析法)は分子の分子量を高精度に測定できる方法である。
テストしたタンパク質は使用レーザーの波長での吸収マトリックス中に混合した。主なマトリックスはペプチド分析用のαシアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸(HCCA)、タンパク質分析用のシナピン酸(SA)およびオリゴ糖分析用の2,5-ジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む。
この方法ではマトリックス/分析物共結晶にレーザーを照射してマトリックス分子と被分析分子にの相互脱着を引き起こさせる。ガス電離後に被分析分子は飛行時間検出器へ到達する。重量と飛行時間は互いに密接に関連するので、飛行時間を測定することによって被分析物の重量を求めることができる。各タンパクまたは各ペプチドの同定は質量分析でその重量を測定し、FVIIシーケンスで得られる理論重量との比較で行なうことができる。TOFおよびTOF/TOFモードの両方で運転するBruker Autoflex II装置を用いた。
【0072】
FVII MALDI-TOFスペクトルは14.7 kDaの形を示した([図1]、ポリペプチドIV)。これは二分岐のモノシアル化タイプ(A1)とその他の多糖類(A1F、A2、…)のオリゴ糖によって大部分が糖鎖化されたAsn322を含む重鎖(HC)のC-末端ペプチド[Gly291-Pro406]に対応する。スペクトル中には34.6 kDaにアルギニン290で終わるFVIIのN末端の相補形態の存在も観察された(図1、ポリペプチドIV)。別の非定型切断が44.8 kDaに観察された([図1]、ポリペプチドII)。これはリジン38の後に切断された軽鎖(LC)すなわちGlaドメイン欠失FVII形態に対応し、その組織因子に対する親和性が減少している。
【0073】
還元条件下([図2])ではFVIIa重鎖および軽鎖の存在がそれぞれ29.9および19.3 kDaで記録された(ポリペプチド、I)。糖鎖化されたAsn322を含むペプチド[Lys316 -Pro406]に対応する別の11.9kDaの形も観察された。天然未変性の状態ではこのペプチドはジスルフィド架橋(Cys310-Cys329)を介してタンパクのN-末端部分に結合している。
テストした全てのFVIIサンプルはこれらの切頂形(truncated form)を一つまたは複数有していた。全ての同定された形はセリンプロテアーゼ型切断によるものであった。従って、これらの切断は自己触媒を起源とするものである。
【0074】
実施例4
Edmanシークエンシングを用いた非定型切断の定量化
FVII N-末端シークエンシングをミクロシーケンサ(Procise 491 HT; アプライドバイオシステム)で行なった。これはカップリング、切断と変換、その後の逆相カラムで形成したアミノ酸の分離の3つの段階を含むEdman化学分解原理を基にしたものである。生成したN-末端アミノ酸を標準アミノ酸を用いて検査し、同定して問題のタンパクの理論シーケンスと比較する。データ収集および標準アミノ酸クロマトグラム(SequencePro アプライドバイオシステム)との比較分析後に、記録を評価した。求めたFVIIシーケンスをアミノ酸理論シーケンスと比較した。
【0075】
下記の2つの主シーケンスを系統的に同定した:
(1)N末端LCシーケンス:ANAFLEELRPGSLERECKEEQCSF (SEQID No.3)
(2)N末端HCシーケンス: IVGGKVCPKGECPWQVLLLVNGAQLCG (SEQ ID No.4)
【0076】
産物に依存する下記の他の3つのシーケンスを同定した:
(1)LC配列: LFWISYSDGDQ (SEQ ID No.5) (リジン38の後の非定型切断).
(2)HC配列: GATALELMVLNVPRLMTQ (SEQ ID No.6) (アルギニン290の後の非定型切断).
(3)HC配列: KVGDSPNITEYMFCAGYSDGS (SEQ ID No.7) (アルギニン315の後の非定型切断)
【0077】
太字およびイタリック体のアミノ酸はシーケンスギャップすなわち翻訳後修飾、例えばγ−カルボキシル化、N−またはO−糖鎖化が起こったためにEdmanシークエンシングで同定されなかったアミノ酸を表わす。FVII起源に依存する種々の非定型切断の量を評価するために定量評価を行った。結果は[表1]に示してある。
【0078】
【表1】

【0079】
FVII軽鎖は産物の起源に応じてアミノ酸K38とL39との間の非定型切断率(%)が4.5〜26%変化する。FVII重鎖はR315とK316との間に非定型切断率が変化(産物の起源に応じて9〜52%で変化)し、R290とG291との間で切断される (産物の起源に応じて4〜13%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(3)のように、リジン38、アルギニン290およびアルギニン315の中から選択される置換または欠失された少なくとも2つのアミノ酸を有する、天然のヒト因子VII/VIIaのペプチド配列と比較して修飾されていることを特徴とするヒト因子VII/VIIa:
(1)リジン38はグルタミン、アラニン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの中から選択されるアミノ酸で置換され、
(2)アルギニン290はグルタミン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの中から選択されるアミノ酸で置換され、および/または、
(3)アルギニン315はグルタミン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンの中から選択されるアミノ酸で置換される。
【請求項2】
リジン38がグルタミン、ヒスチジンまたはグルタミン酸の中から選択されるアミノ酸で置換されている請求項1に記載の修飾したヒト因子VII/VIIa。
【請求項3】
アスパラギン290がグルタミン、ヒスチジン、アスパラギンまたはグルタミン酸の中から選択されるアミノ酸によって置換されている請求項1または2に記載の修飾したヒト因子VII/VIIa。
【請求項4】
アスパラギン315がグルタミン、ヒスチジン、アスパラギンまたはグルタミン酸の中から選択されるアミノ酸で置換されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIa。
【請求項5】
リジン38がグルタミンによって置換されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIa。
【請求項6】
アルギニン290がグルタミンによって置換されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIa。
【請求項7】
アルギニン315がグルタミンによって置換されている請求項1〜6のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIa。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIaをコードする核酸。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸が挿入された発現ベクター。
【請求項10】
修飾したヒト因子VII/VIIaを発現する請求項8に記載の核酸で形質転換された細胞。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIaをコードする核酸をゲノム中に含み、この修飾したヒト因子VII/VIIaを発現する遺伝子組み換え生物。
【請求項12】
微生物、動物または植物である請求項11に記載の遺伝子組み換え生物。
【請求項13】
哺乳類である請求項11または12に記載の遺伝子組み換え生物。
【請求項14】
上記哺乳類が雌ウサギである請求項13に記載の遺伝子組み換え生物。
【請求項15】
昆虫である請求項11または12に記載の遺伝子組み換え生物。
【請求項16】
下記(a)〜(c)の段階を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の因子VII/VIIaの調製方法:
(a)請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒトFVII/VIIaをコードする核酸で細胞を形質転換し、
(b)(a)段階で得られた細胞を培養し、この細胞に上記因子VII/VIIaを発現させ、
(c)(b)段階で培養した形質転換細胞で発現する修飾したヒト因子VII/VIIaを精製する。
【請求項17】
下記(a)〜(c)の段階を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIaをトランスジェニック哺乳類のミルク中で製造する方法:
(a)請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIaをコードする核酸を乳腺中で発現するトランスジェニック哺乳類を提供し、
(b)因子VII/VIIaを含むトランスジェニック動物のミルクを採取し、
(c)採取したミルクから修飾したヒト因子VII/VIIaを精製する。
【請求項18】
トランスジェニック動物がマウス、雌ラット、ヤギおよび雌ウサギの中から選択される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
トランスジェニック動物が雌ウサギである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIaを含む因子VII/VIIaの組成物。
【請求項21】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の修飾したヒト因子VII/VIIaと、賦形剤および/または医薬上許容されるキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の因子VII/VIIaの医薬製造での使用。
【請求項23】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の因子VII/VIIaの、凝固障害(clotting disordrs)治療薬の製造での使用。
【請求項24】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の因子VII/VIIaの、多発性出血外傷(multiple hemorrhagic) 治療薬の製造での使用。
【請求項25】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の因子VII/VIIaの、血友病(haemophilia) 治療薬の製造での使用。
【請求項26】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の因子VII/VIIaの、抗凝固剤の過剰投与による出血の治療薬の製造での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−529848(P2010−529848A)
【公表日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511707(P2010−511707)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051055
【国際公開番号】WO2008/155509
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509342935)エルエフベー ビオテクノロジーズ (9)
【Fターム(参考)】