説明

倉庫に保管した物品のピッキングシステム

【課題】 音声認識ピッキングシステムとディジタルピッキングシステムの利点を生かした、全体として低コストで効率の良いシステムを提供する。
【解決手段】ディジタルピッキング用棚40と一般の棚60とが設けられており、ディジタルピッキング制御手段31と、音声認識ピッキング制御手段32と、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42と一般の棚60に保管された物品42の、一定期間におけるピッキング数量を比較するピッキング数量比較手段33と、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42よりもピッキング数量が多い物品42が検出されたとき、一定期間経過後に、双方の物品を入れ替えるための、ロケーション更新指示を出力するロケーション更新手段34を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流通業務等のために物品を倉庫に保管し搬出をするための、倉庫に保管した物品のピッキングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多量の物品を倉庫に保管して、迅速適確に必要な物品を取り出すことができるような倉庫管理システムは、流通業務の効率化に大きく寄与している。
コンピュータで管理されるこのシステムは、物品を保管する多数の棚に付した識別情報と、その棚に保管した物品の識別番号とを関係付けてデータベースに記憶させる。物品を取り出すときには、データベースを検索して、物品の有り高と保管された棚の位置を示す情報を記憶装置から読み出し、該当する物品をピックアップする。
【0003】
この物品のピックアップ作業を完全に自動化した倉庫もあるが、係員がカートやフォークリフトを使用して該当する棚から物品をピックアップする方式も少なくない。このとき、コンピュータでピックアップ作業を支援する情報を生成して係員に伝達する。伝達方法には、係員の携帯する端末装置に画像や音声で情報を送信するもの(特許文献1)や、各棚に設けたディスプレイにピックアップ作業に必要な情報を表示するものなどがある(特許文献2)(特許文献3)。前者を音声認識ピッキングシステム、後者をディジタルピッキングシステムと呼んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−26423号公報
【特許文献2】特開平10−167430号公報
【特許文献3】特開2008−1481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既知の従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記のディジタルピッキングシステムでは、各棚に取付けたディスプレイをネットワークに接続して制御するため、音声認識ピッキングシステムに比べて倉庫全体の設備費が高コストになるという問題がある。一方、音声認識ピッキングシステムでは、通話応答システムを係員の数だけ揃えればよく、比較的低コストでシステムを構築できる。しかしながら、使いやすさや制御の効率の点で、ディジタルピッキングシスに劣る。
上記の課題を解決するために、本発明は、音声認識ピッキングシステムとディジタルピッキングシステムの利点を生かした、全体として低コストで効率の良い、倉庫に保管した物品のピッキングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下の構成はそれぞれ上記の課題を解決するための手段である。
〈構成1〉
物品を保管するための棚であって、ピッキングのための情報を表示する表示装置とピッキングの結果を返信するための通信装置を備えたディジタルピッキング用棚と、前記表示装置を備えていない一般の棚とが設けられており、前記ディジタルピッキング用棚の表示装置に対して、その棚に保管された物品をピッキングするための指示を含む情報を表示し、当該物品のピッキングが完了した旨の応答を前記通信装置から受信して、前記ピッキングの結果を記憶装置に記憶するという処理を繰り返すディジタルピッキング制御手段と、係員が装着した端末装置に対して、指定された前記一般の棚から、指定された物品をピッキングするための指示を含む、コンピュータが生成した合成音声を送信し、前記係員の音声を含む情報を受信して、指定された物品のピッキングが完了した旨の応答を認識し、前記ピッキングの結果を記憶装置に記憶するという処理を繰り返す音声認識ピッキング制御手段と、前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品と前記一般の棚に保管された物品の、一定期間におけるピッキング数量を比較するピッキング数量比較手段と、前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品よりもピッキング数量が多い物品が検出されたとき、前記一定期間経過後に、前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品と、この物品よりもピッキング数量が多い物品とを入れ替えてピッキング数量が多い物品を前記ディジタルピッキング用棚に保管するための、ロケーション更新指示を出力するロケーション更新手段を備えたことを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【0007】
〈構成2〉
構成1に記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、ピッキングの対象となる物品と各物品を保管する棚との関係を示すロケーションデータを記憶した記憶装置が設けられ、前記ディジタルピッキング制御手段は、前記ロケーションデータを参照して、ディジタルピッキング用棚に保管された物品について、ピッキング制御を実行し、前記音声認識ピッキング制御手段は、前記ロケーションデータを参照して、一般の棚に保管された物品について、ピッキング制御を実行し、前記ロケーション更新手段は、前記一定期間経過後に、前記ロケーション更新指示を出力するとともに、前記物品の入れ替え後の内容に、前記ロケーションデータを書き換えることを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【0008】
〈構成3〉
構成1または2に記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、ロケーション更新手段は、前記一定期間経過後に、前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品と、この物品よりもピッキング数量が多い物品とを入れ替えて、ピッキング数量が多い物品を前記ディジタルピッキング用棚に保管する処理を、自動搬送機に実行させるための、ロケーション更新制御データを生成することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【0009】
〈構成4〉
構成1乃至3のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、前記ピッキング数量比較手段は、一定期間毎に各物品のピッキング総数を計算し、得られたピッキング総数を相互に比較して、ピッキング総数が多い物品から順番に、ディジタルピッキング用棚に対する割り付けをし、全てのディジタルピッキング用棚に対する物品の割り付けが終了したら、残りの物品を一般の棚に割り付けて、新たなロケーションデータを生成し、前記ロケーション更新手段は、これまでディジタルピッキング用棚に割り付けられていた物品と、新たにディジタルピッキング用棚に割り付けられた物品とを検出して、ローテーション更新制御データ25を生成することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【0010】
〈構成5〉
構成1乃至4のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムを使用する方法であって、ディジタルピッキング用棚に取り付ける表示装置がユニット化されており、そのユニットには、ディスプレイと通信装置とスキャナとを一体に組み込み、ユニットはどの棚にも着脱できるようにされ、物品の入れ替えをせず、ユニットを入れ替えることにより、ディジタルピッキング用棚に保管された物品と、この物品よりもピッキング数量が多い物品とを入れ替えてピッキング数量が多い物品を前記ディジタルピッキング用棚に保管することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステムの管理方法。
【0011】
〈構成6〉
構成2乃至4のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、係員に操作されて移動する台車には、複数の外観上区別されたケースであって、収納した物品の行き先が指定されたものが搭載され、ピッキングの対象となる棚が前記ディジタルピッキング用棚の場合には、前記ディジタルピッキング制御手段が、ピッキング指示を伝達するための文字情報を含むピッキング指示情報を生成し、前記一般用の棚の場合には、前記音声認識ピッキング制御手段が、ピッキング指示を伝達するための音声情報を含むピッキング指示合成音声を生成して、前記ピッキングの対象となる棚に保管された物品を、前記各ケースに何個ずつピッキングするかを示すように、前記ピッキング指示が送信され、前記前記ディジタルピッキング制御手段または前記音声認識ピッキング制御手段は、ピッキングされた物品の識別情報を読み取ったスキャナの出力信号を受信して、ピッキングの結果を前記ピッキング指示と照合することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【0012】
〈構成7〉
構成1乃至4のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、係員に操作されて移動する台車には、少なくとも一種類の物品が必要な数量だけ搭載され、いずれかの棚には、複数の外観上区別されたケースであって、収納した物品の行き先が指定されたものが保管されており、前記棚が前記ディジタルピッキング用棚の場合には、前記ディジタルピッキング制御手段が、仕分け作業の指示を伝達するための文字情報を含む指示情報を生成し、前記一般用の棚の場合には、前記音声認識ピッキング制御手段が、仕分け作業の指示を伝達するための音声情報を含む指示合成音声を生成して、前記棚に保管された各ケースに、前記台車に搭載された物品を何個ずつ収納するかを示すように、前記指示が送信され、前記ディジタルピッキング制御手段または前記音声認識ピッキング制御手段は、仕分け作業のために取り出された物品の識別情報を読み取ったスキャナの出力信号を受信して、仕分け作業の結果を前記指示情報と照合することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【0013】
〈構成8〉
構成6または7に記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、それぞれ行き先が別であって、ピッキングまたは仕分けをするいずれかの物品が共通するもののデータを、前記台車に搭載できるケースの数に相当するだけ組み合わせて、物品の行き先毎に、棚別にピッキングする物品の数を表示するデータを、棚毎に、物品の行き先別にピッキングまたは仕分けをする物品の数を表示するデータに変換して、前記ディジタルピッキング制御手段または前記音声認識ピッキング制御手段に供給するデータ変換手段を備えたことを特徴とする物品のピッキングシステム。
【発明の効果】
【0014】
〈構成1の効果〉
ディジタルピッキング用棚には、ピッキング数量の多い物品を保管する。一般の棚には、その他の物品を保管する。その他の物品のうち、ディジタルピッキング用棚に保管された物品よりも、ピッキング数量が多くなった物品があったら、保管場所の入れ替え(ロケーション更新)を行う。ロケーション更新手段は、自動的に各棚のピッキング数量を監視して、ロケーションの更新を制御し、保管場所の最適化をすることができる。
〈構成2の効果〉
ピッキングの対象となる物品と各物品を保管する棚との関係を記憶したロケーションデータを記憶した記憶装置が設けられており、ロケーション更新指示が出力されるとともに、自動的にロケーションデータを書き換えるので、円滑に最適化管理ができる。
〈構成3の効果〉
自動搬送機に自動的にロケーション更新を実行させるよう、ロケーション更新制御データを生成するので、無人で定期的にロケーションの最適化が可能になる。
〈構成4の効果〉
単純な演算処理で、ローテーション更新制御データを生成できる。
〈構成5の効果〉
ディジタルピッキング用棚に取り付ける表示装置をユニット化して、これを装着する棚を切り替えれば、物品の入れ替えをせずにディジタルピッキング用棚に保管する物品の入れ替えができる。
〈構成6の効果〉
ディジタルピッキング用棚と一般用の棚とが混在していてよい。指定された一個の棚の前で複数のケースに対して一気にピッキングができるので、効率が良い。ピッキングをする物品に共通するものが多いほど効率が良い。
〈構成7の効果〉
台車に物品を搭載し、棚側に行き先を指定したケースを保管しても、類似した仕分け作業ができる。
〈構成8の効果〉
一般のピッキングオーダーは、物品の行き先毎に、ロケーション(棚)別にピッキングする物品の数を表示するデータで構成される。行き先が別でも、ピッキングする物品の相当部分が共通なものは、構成6の処理が適する。そのためのデータの組み合わせと変換処理をすることができる。データ処理の方法は構成7についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の倉庫に保管した物品のピッキングシステム10を示す機能ブロック図である。
【図2】棚の構造を示し、(a)はディジタルピッキング用棚、(b)は一般の棚の説明図である。
【図3】ピッキング数量の比較動作説明図である。
【図4】ロケーション更新制御データ25の説明図である。
【図5】自動的にピッキング等の処理を実行する自動搬送機70の説明図である。
【図6】倉庫に保管した物品のピッキングシステムの実施例プログラムフローチャートである。
【図7】実施例5のピッキングシステムの説明図である。
【図8】実施例5の手順を利用した仕分け作業の説明図である。。
【図9】ピッキング管理データの処理方法説明図である。
【図10】ディジタルピッキング用棚40のピッキング制御動作説明図である。
【図11】一般の棚60のピッキング制御動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を実施例毎に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は実施例1の倉庫に保管した物品のピッキングシステム10を示す機能ブロック図である。
本発明のピッキングシステム10は、管理サーバ11により制御される。管理サーバ11は、ディスプレイ12とキーボード13とマウス14と制御装置15とを備えている。また、通信装置16とアンテナ17を介して無線ローカルエリアネットワーク(LAN)に接続されている。この無線LANは、物品を保管する倉庫内で利用される。倉庫内には、図2で説明するディジタルピッキング用棚40が配置され、その通信装置52が無線LANと接続されている。また、倉庫内を移動する係員は、通信装置65を所持し、これが無線LANと接続されている。
【0018】
制御装置15の中には、記憶装置20や演算処理装置30が収納されている。管理サーバ11は既知の汎用コンピュータであり、演算処理装置30を構成するプログラムモジュールは、記憶装置20に記憶されたデータを使用して所定の演算処理を実行する。演算処理装置30中に記載した各手段は、コンピュータに所定の機能を付与するプログラムモジュールである。
【0019】
上記の記憶装置20において、ロケーションデータ21は、ピッキングの対象となる物品と各物品を保管する棚との関係を示すデータである。どの棚は倉庫のどこにあって、どの物品がどの棚に保管されているかを明示する。また、どの棚が、ディジタルピッキング用棚であるか、どの棚が一般の棚であるかを明示するデータを含む。ピッキング管理データ22は、ピッキングオーダーやピッキングの結果等を含む。
【0020】
ピッキングオーダーは、どの行き先にどの物品を配送するといった内容である。このオーダーの内容から、行き先別に、どの棚から何個ずつ物品をピッキングするかという手順を示すデータが作成される。従って、棚を指定する識別情報と、ピッキングする物品の数を示すデータが、ピッキング管理データ22に含められる。このようにデータを構成すれば、ディジタルピッキング用棚に対しては文字等のディスプレイに表示される情報に変換され、一般の棚に対しては、合成音声に変換できる。
【0021】
ピッキング指示情報23は、ディジタルピッキング用棚40の表示装置50に対して、その棚に保管された物品42をピッキングするための文字情報の指示を含むデータである。このデータはピッキング管理データ22に含まれた、棚を指定する識別情報と、ピッキングする物品の数を示すデータを利用して生成される。ピッキング指示合成音声24は、図2を用いて説明する係員68が装着した端末装置67に対して、指定された一般の棚60から指定された物品42をピッキングするための指示を含む、コンピュータが生成した合成音声を含むデータである。このデータもピッキング管理データ22に含まれた、棚を指定する識別情報と、ピッキングする物品の数を示すデータを利用して生成される。ロケーション更新制御データ25は、棚に保管された物品42を入れ替えて保管するための、ロケーション更新指示を含むデータである。
【0022】
図2は、棚の構造を示し、(a)はディジタルピッキング用棚、(b)は一般の棚の説明図である。
図1に示した演算処理装置30の説明の前に、本発明のシステムを採用する倉庫に設けられた2種類の棚の説明をする。(a)に示すディジタルピッキング用棚40は、物品42を保管するための棚であって、ピッキングのための情報を表示する表示装置50を備える。
【0023】
表示装置50は、ディスプレイ51と通信装置52とを備える。通信装置52には、ディスプレイ51とスキャナ53とが接続されている。スキャナ53は、ディジタルピッキング用棚40から物品42を取り出すときの出入り口等に設けられている。通信装置52は管理サーバ11の送信したピッキング指示情報23を受信する。ピッキング指示情報23はに含まれた文字情報がディスプレイ51に表示される。係員はディスプレイ51の表示に従ってピッキング作業をする。係員が物品42を取り出すとスキャナ53がそれを読み取る。スキャナ53が読み取った情報がピッキング応答45である。ピッキング応答45は通信装置52を通じて管理サーバ11に返信される。スキャナからは、物品の識別コードと棚識別コードとが送信される。棚を指定する識別情報及びピッキングする物品の数を示すデータと、スキャナで読み取ったデータを照合すれば、ピッキング指示の内容どおりに正確にピッキング作業がされたかの確認ができる。この結果は、ピッキング管理データ22に含められる。
【0024】
図2の(b)に示すように、ディジタルピッキング用棚40以外の一般の棚60は上記のような表示装置50を備えていない。一般の棚60を含む全ての棚には、それぞれ多数の棚を識別するための棚識別コード61が取り付けられている。棚識別コード61は係員68の所持するスキャナにより読み取ることができる状態に取り付けられている。係員68は、ヘッドセット67を装着している。ヘッドセット67はマイクとイヤホンを一体化したものである。ヘッドセット67には通信装置65が接続されている。また係員68はスキャナ64を所持しており、一般の棚60から物品42を取り出すたびにスキャナ64でスキャンする。そのスキャナ64の出力信号が通信装置65に送られるように構成されている。
【0025】
一般の棚60を使用した物品42のピッキングは次のように行なわれる。管理サーバ11からは、ピッキング指示を音声にしたピッキング指示合成音声62が送信される。通信装置65はこのピッキング音声応答63を受信して、ヘッドセット67を駆動する。係員68は指示に従って該当する棚に行き、物品42を取り出す。係員68がこの指示を了解したときには、その音声が通信装置65から管理サーバ11に対して送信される。スキャナ64の出力信号も送信される。ピッキングの結果は、ピッキング音声応答63やスキャナ64の出力信号により管理サーバ11に通知される。スキャナからは、物品の識別コードと棚識別コードとが送信される。棚を指定する識別情報及びピッキングする物品の数を示すデータと、スキャナで読み取ったデータを照合すれば、ピッキング指示の内容どおりに正確にピッキング作業がされたかの確認ができる。この結果は、ピッキング管理データ22に含められる。即ち、一般の棚60を使用した場合も、ディジタルピッキング用棚40を使用した場合も、共通のデータ処理をする。これにより、両者を混在させることができる。
【0026】
ディジタルピッキング用棚40を設置するためのコストは、一般の棚60を設置するためのコストに比べて高額になる。また、LAN等に対する接続設定が必要だから、安易に増設ができない。従って、例えば、倉庫の特定のコーナーにのみディジタルピッキング用棚40を設けておき、他の場所には、一般の棚60を設けておく。一般の棚60は自由に増設したり位置変更したりできる。そして、一般の棚60については、ヘッドセット67を用いた音声応答システムでピッキングが行なわれる。
【0027】
ディジタルピッキング用棚40と一般の棚60を併用する場合には、高頻度でピッキングされる物品をディジタルピッキング用棚40に保管するとよい。ところが、需要の変動、季節変動、モデルチェンジ等が原因で、取扱い量が激減したり激増したりする物品も少なくない。本発明では、そうした場合にディジタルピッキング用棚40を有効に利用する。この目的のために、図1に示した管理サーバ11には、次のような機能が付与されている。
【0028】
再び図1に戻って、演算処理装置30に設けられている各手段の機能を説明する。ディジタルピッキング制御手段31は、ディジタルピッキング用棚40の表示装置50に対して、その棚に保管された物品42をピッキングするための文字情報を含む指示を表示させる。さらに、当該物品42のピッキングが完了した旨の応答を通信装置16から受信して、ピッキングの結果を記憶装置20のピッキング管理データ22に記憶させるという処理を繰り返す機能を持つ。このとき、ピッキング指示の内容とピッキングの結果とを照合する処理も実行する。
【0029】
音声認識ピッキング制御手段32は、図2に示した係員68が装着した通信装置65に対して、指定された一般の棚60から、指定された物品42をピッキングするための指示を含む、コンピュータが生成した合成音声62を送信する。さらに、係員68の音声応答63を受信して、指定された物品42のピッキングを実行した旨の応答を認識する。その後、スキャナ64の出力等によるピッキングの結果を記憶装置20に記憶させるという処理を繰り返す機能を持つ。このとき、ピッキング指示の内容とピッキングの結果とを照合する処理も実行する。
【0030】
図3は、ピッキング数量の比較動作説明図である。
図1に示したピッキング数量比較手段33は、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42と一般の棚60に保管された物品42の、一定期間におけるピッキング数量を比較する機能を持つ。このために、例えば、図3に示すように、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42(W1〜W5)のピッキング数量データ26と、一般の棚60に保管された物品42(W11〜)のピッキング数量データ27を、例えば、1月間監視する。そして、両者の累積カウントした値を比較する。
【0031】
ロケーション更新手段34は、上記の比較の結果、一般の棚60に、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42よりもピッキング数量が多い物品42が検出されたとき、ロケーション更新制御データ25を出力する。即ち、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42と、この物品42よりもピッキング数量が多い物品42とを入れ替えてピッキング数量が多い物品42をディジタルピッキング用棚40に保管するように、指示を出力する。例えば、図3の例では、物品W5とW11の保管場所を入れ替える指示を出力する。
【0032】
図4は、ロケーション更新制御データ25の説明図である。
ロケーション更新制御データ25は、例えば、管理サーバ11のディスプレイ12に表示する。あるいは、図示しないプリンタ等により印刷出力してもよい。その指示は、例えば、図4に示すように、ディジタルピッキング用棚40のロジカルゾーンLZ1に保管された物品と、一般の棚60のロジカルゾーンLZ12に保管された物品全部を入れ替えるようにという内容になる。なお、ロケーション更新手段35は、同時に、ロケーションデータ21の内容の書き換えも行う。これにより、その後の制御には、書き換えられたロケーションデータ21が参照される。
【実施例2】
【0033】
図5は、自動的にピッキング等の処理を実行する自動搬送機70の説明図である。
倉庫には、全ての棚に保管された物品のピッキング処理を自動的に実行する装置が設けられたものがある。また、単に、ある棚から別の棚への物品を運搬する処理のみを自動的に行なう装置が設けられたものもある。図の自動搬送機70はこの機能を持つ装置である。この装置があれば、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42と、一般の棚60に保管された物品42とを自動的に入れ替えることができる。
【0034】
図のように、物品を各棚にパレット41を使用して保管しておくと、物品の入れ替えを効率良く実行できる。即ち、パレット41に搭載した物品は、一挙に別の棚に移動させることができる。パレットを指定する識別情報と、パレットの移動先を指定する識別情報を制御に使用するとよい。比較的荷動きの少ない時間を利用して自動的に保管場所の最適化をすることが好ましい。
【実施例3】
【0035】
図6は倉庫に保管した物品のピッキングシステムの実施例プログラムフローチャートである。
このフローチャートで、ピッキング数量比較手段33とロケーション更新手段34の動作を具体的に説明する。ピッキング数量比較手段33は、例えば、月始めの最初の土曜日等に起動する。自動的に起動してもよいし、係員により起動されるようにしてもよい。まず、ステップS11で、ピッキング管理データ22を参照して、直近一ヶ月間のピッキング数量の集計をする。ピッキング管理データ22には、過去のピッキング指示やその結果を示すデータが蓄積されている。先月のピッキング結果を、該当する物品が保管された棚毎に集計する。
【0036】
図3で説明したようなデータを得ても良いが、この例では、別の方法を説明する。即ち、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品も一般の棚に保管された物品も区別することなく、ピッキング数量を積算して出力する。そして、ピッキング数量の多い順に並べ替える。
【0037】
一定期間毎に各物品のピッキング総数を計算し、得られたピッキング総数を相互に比較して、ピッキング総数が多い物品から順番に、ディジタルピッキング用棚40に対する割り付けをする。即ち、該当する物品を該当するディジタルピッキング用棚40に保管するというロケーションデータ21を生成する。全てのディジタルピッキング用棚40に対する物品の割り付けが終了したら、残りの物品42を一般の棚に割り付ける。こうして、新たなロケーションデータ21が完成する。これまでディジタルピッキング用棚40に割り付けられていた物品と、新たにディジタルピッキング用棚40に割り付けられた物品とを検出して、ローテーション更新制御データ25を生成する。
【0038】
これらの手順をフローチャートにすると、図6のとおりになる。上記の説明と重複するが、簡単に手順を説明する。ステップS11では、直近1月間のピッキング管理データを読む。ステップS12では、各物品のピッキング総数を計算する。ステップS13では、ピッキング総数が多い順にソートをする。ステップS14では、データから、総数最大の物品を選択をする。ステップS15では、選択した物品をディジタルピッキング用棚40のひとつに割り付けする。ステップS16では、処理対象のデータからその物品と棚を除外をする。
【0039】
ステップS17では、ディジタルピッキング用棚はまだ残っているかどうかという判断をする。この判断の結果がイエスのときはステップS14の処理に移行し、ノーのときはステップS18の処理に移行する。ステップS14〜17は、ディジタルピッキング用棚の数だけ、繰り返される。ステップS18では、残りの物品を一般の棚に割り付けする。ステップS19では、上記の結果をまとめて、ロケーションデータ21を更新する。
【0040】
ステップS20では、全てのディジタルピッキング用棚の物品を読み取る。そして、ステップS21で、新たにディジタルピッキング用棚に割り付けられた物品を検出する。その結果にもとづいて、ステップS22で、ローテーション更新制御データ25を生成する。ステップS23では、そのロケーション更新制御データを出力する。ステップS24では、図5に示すようにして、自動搬送機による入れ替え処理をする。
【実施例4】
【0041】
上記の例では、過去の一定期間のピッキング数量を比較し、その結果に基づいて、ディジタルピッキング用棚40に保管された物品42と一般の棚60に保管された物品42とを入れ替えるようにした。しかしながら、この実施例ではもっと簡便な方法で保管棚の設定の最適化をする。
【0042】
この実施例では、図2の(a)に示したディジタルピッキング用棚40に取り付ける表示装置50をユニット化しておく。そのユニットには、ディスプレイ51と通信装置52とスキャナ53とを一体に組み込んでしまう。ユニットはどの棚にも簡単に着脱できるようにしておく。無線LANを使用するなら、各ユニットは一つのケースに収納できる。有線LANならば、簡単に挿抜できるコネクタを採用するとよい。あるいは、棚の特定の場所に収納することにし、自動運搬装置で入れ替えできるようにしておくことが好ましい。
【0043】
そして、上記の判断基準で指定された任意の棚に、そのユニットを装着し、あるいは収納することで、該当する棚をディジタルピッキング用棚にする。即ち、物品の入れ替えはせず、ユニットを入れ替える。これにより、物品の入れ替えによる煩雑な作業無しで、簡単にディジタルピッキング用棚への切り替えができる。この方法は、ディジタルピッキング用棚が倉庫に散在していいても構わない場合に適する。ディスプレイ51と通信装置52とスキャナ53とを一体に組み込んであるので、どこに移動させられても、ディスプレイの識別コードと棚の識別コードとを対応付けておけば、該当する棚に対するピッキング指示が表示できる。スキャナから送信される信号にも、通信装置52により自動的に棚の識別コードを付加できる。
【0044】
以上のようなシステムにより、出荷の多い物品42はディジタルピッキングシステム10の対象にし、出荷の少ない物品42はその他の棚に保管できる。従って、高価なシステムを有効に活用し、ピッキング処理の効率化を図ることができる。また、その一方で、安価なシステムを柔軟に活用し、全体として設備コストを低減して、費用対効果を最適化することができる。しかも、共通のピッキング管理データ22を使用することができる。
【実施例5】
【0045】
上記の実施例のシステムで、ピッキングを指示するための基礎になるデータはピッキング管理データ22である。このデータにはピッキングオーダーを示すデータが含まれる。ピッキングオーダーの内容から、行き先別に、どの棚から何個ずつ物品をピッキングするかという手順を示すデータが生成される。このデータはピッキング管理データ22に含められる。ディジタルピッキング制御手段31は、係員に対する文字情報によるピッキング指示を生成する。このピッキング指示はディジタルピッキング用棚40のディスプレイ51に表示される。また、音声認識ピッキング制御手段32は、係員に対する音声情報によるピッキング指示を生成する。このピッキング指示は一般の棚60を使用したピッキング作業を音声により支援する。
【0046】
また、ディジタルピッキング用棚40を使用する場合も一般の棚60を使用する場合も、応答にはスキャナが使用される。即ち、ディジタルピッキング用棚40を使用する場合も一般の棚60を使用する場合も、ピッキングを指示するための基礎になるデータとスキャナを用いた応答データとを共通化している。コンピュータが、ロケーションデータ21を参照して、棚の種類に応じたマンマシンインタフェースを選択し、ディジタルピッキング制御手段31あるいは音声認識ピッキング制御手段32が起動する。
【0047】
図7は、実施例5のピッキングシステムの説明図である。図8は、全く同様の手順を利用した仕分け作業の説明図である。
図7において、隣り合った2個のディジタルピッキング用棚40には、それぞれ別の物品42と物品43とが保管されている。なお、図7の例も図8の例も、ディジタルピッキング用棚40と一般の棚60の両方に実施できる。従って、図中の棚には、40(60)と言うように符号を表示した。
【0048】
ここで、物品43の保管されているディジタルピッキング用棚40の前に、係員が台車72を移動させてきた場合を説明する。台車72には、4種類のそれぞれ別々に着色したケース74Rとケース74Bとケース74Yとケース74Gとが搭載されている。即ち、台車に複数の外観上区別されたケースが搭載されている。
【0049】
この状態で、ディジタルピッキング用棚40のディスプレイに、各ケースに物品43を何個ずつピッキングするかが表示される。係員は、各ケースに、指示どおりの物品43を収納する。一般には、オーダーの内容はケース毎に全く関連性が無い。従って、台車72を用いて1個のケースを運搬し、指定された棚の前に進んで指定された物品をピッキングする。
【0050】
しかしながら、例えば、同一のコンビニエンスストアのチェーン店の4店舗を比較したとき、各店舗に配達する物品は、数量が違っても共通するものが多い。そこで、この4店舗分のケースを色分けして区別する。そして、同じ台車72に搭載してピッキングをする。一個の棚の前で複数のケースに対して一気にピッキングができるので、効率が良い。ピッキングをする物品に共通するものが多いほど効率が良い。
【0051】
図8は、1つのディジタルピッキング用棚40に、複数のケースを保管する例を示す。ディジタルピッキング用棚40には、4種類のそれぞれ別々に着色したケース74Rとケース74Bとケース74Yとケース74Gとが保管されている。即ち、棚に複数の外観上区別されたケースが保管されている。係員は、1台の台車72に一種類の物品42を搭載して、ディジタルピッキング用棚40に向かう。
【0052】
この例の場合には、台車72に搭載された物品42を取り出して、ディジタルピッキング用棚40に保管された各ケースに収納する。ディジタルピッキング用棚40のディスプレイには、各ケースに物品42を何個ずつ取り出すかが表示される。係員は、各ケースに、指示どおりの物品42を収納する。この仕分け作業は、図7の例と全く同様の手順を利用できる。ケースと部品の位置関係が異なるだけである。ディスプレイに表示される指示情報も、台車に複数の商品を混載しても構わない。例えば、チェーン店が多数あって、ケースの種類が非常に多い場合には、この方法が適する。
【0053】
以上のように、係員に操作されて移動する台車には、複数の外観上区別されたケースであって、収納した物品の行き先が指定されたものが搭載される。外観上区別する方法には、ケースの色のほかに、ケースの形を変えても構わない。ケースは、それぞれ指定された行き先に物品を届けるために使用される。図7の例では、ピッキングの対象となる棚に保管された物品を、各ケースに何個ずつピッキングするかを示すように、ピッキング指示が送信されればよい。この場合、一個の棚に同一の物品を多数収納していることから、ディジタルピッキング棚の利用が適する。
【0054】
一方、図8の例では、係員に操作されて移動する台車には、少なくとも一種類の物品が必要な数量だけ搭載される。2種類以上の物品を搭載する場合には、明瞭に区別できる箱等に区分けして搭載する。必要な数量とは、該当する全てのケースに指定された物品を仕分けすることができる数量である。数量が不足していると、仕分け作業が完全に終了しないので、補充のためにかえって手数がかかる。仕分けに必要な数量かどうかは、台車の移動開始以前に、ピッキング制御手段が計算をしておくとよい。
【0055】
仕分け作業の対象となる棚には、複数の外観上区別されたケースであって、収納した物品の行き先が指定されたものが保管される。これらのケースは、図7のものと同様である。指示情報は、仕分けの対象となる棚に保管された各ケースに、台車に搭載された物品を何個ずつ収容するかを示す内容になる。この場合には、棚側に複数種類のケースを混在させるから、ディジタルピッキング用棚でなく、一般の棚でよい。しかし、図7の方法も図8の方法も物品やケースの種類や数に応じて、適宜作業性の良い方を選択するのがよく、両者を混在させて、いずれの方法でも制御できる本発明のシステムは、最も有効に機能する。
【0056】
図9は、ピッキング管理データの処理方法説明図である。
図7や図8に示した制御をするには、データ処理に工夫が必要になる。この図で、そのデータ加工処理方法を説明する。図の赤箱、青箱・・・は、ケースを示す。A店向け、B店向け・・・はケースの行き先を示す。a,b,c,dは、物品名を示す。L1,L2はロケーション(棚)名を示す。
【0057】
ここで説明するデータ加工処理は、図1に示したデータ変換手段が実行する。まず、予めピッキング管理データ22を参照して、ロケーション(棚)の全部または一部が共通するものを選択して配列する。一組のオーダー毎に、ピッキング用のケースを割付ける。ケースには、それぞれ明瞭に区別できる着色が施されている。図は、各オーダーから生成されたピッキング制御のためのデータを、A店向け、B店向け、C店向け、D店向けの4種類選択したところを示す。
【0058】
ピッキング制御のためのデータは、オーダー毎に、図の横長の破線枠Xに示したように、特定の配達先毎に、ロケーションL1、L2、L3、L4をこの順に廻っていくことと、それぞれの棚でピッキングする物品の数を表示している。これをそのまま文字情報や音声情報に変換すると、「棚L1に行ってください」「物品を2個ピックアップ」「棚L2に行ってください」「物品を5個ピックアップ」「棚L3に行ってください」・・・という順番に出力される。
【0059】
これに対して実施例5の方法では、各ピッキング制御のためのデータを参照して、ロケーション(棚)に着目して、データの組み替えを行う。組み替え後は、図9において実線の枠で示したものが一組のピッキング制御のためのデータになる。これを使用すると、「棚L1に行ってください」「赤箱に2個入れてください」「青箱に5個入れて下さい」「黄箱に5個入れて下さい」・・・という順番に、文字情報や音声情報が送信される。
【0060】
以上のように、それぞれ行き先が別であって、ピッキングする物品が共通するもののデータを、台車に搭載できるケースの数に相当するだけ組み合わせるとよい。ピッキングする物品が少なくとも一部共通するものであれば、同一の棚で一括してピッキングする効果がある。データ変換手段25は、そうしたデータを自動的に抽出して処理する機能を持つとよい。
【0061】
また、台車に搭載できるケースの数に相当する分だけ選択をして、データ変換をするとよい。図7や図8に示す方法を採用するのは限られた場合だけであるから、データ変換手段35に候補を選択させて、さらに、ケースの数毎に組を作って、上記の変換処理を実行させるとよい。これらの処理を全てデータ変換手段35に自動的に実行させてもよい。変換処理は、図9で説明したように、物品の行き先毎に、ロケーション別にピッキングする物品の数を表示するデータを、ロケーション毎に、物品の行き先別にピッキングする物品の数を表示するデータに変換するという手順になる。その結果を、ディジタルピッキング制御手段または音声認識ピッキング制御手段に供給すると、自動的に棚毎のピッキング指示が生成できる。
【0062】
図10は、ディジタルピッキング用棚40のピッキング制御動作説明図である。図11は、一般の棚60のピッキング制御動作説明図である。
上記のようにデータ変換手段35が動作すれば、デジタルピッキングシステムと音声認識ピッキングシステムとを混在させた場合でも、図7や図8の処理を実行することができる。図10と図11を用いて、その例を説明する。
【0063】
図10において、始めに、「棚L1に行ってください」という指示が出されて、係員は、該当するディジタルピッキング用棚40の前に、図7に示した台車72を運ぶ。ここで、ロケーションの確認処理の後、その棚のディスプレイ51に、「赤箱に2個入れてください」という表示がされる(ステップS31)。物品をピッキングしたとき、スキャナを操作する(ステップS32)。ディジタルピッキング制御手段31(図1)はこのスキャナのデータで作業の確認をする。次に、ステップS33で、ディスプレイ51に、「青箱に5個入れて下さい」という表示がされる。ステップS34でスキャナによる確認がされる。こうした作業を繰り返すことで、ケース74Rとケース74Bとケース74Yとケース74Gに、必要な物品がピッキングされる。
【0064】
図11において、音声ピッキングでも、図9で説明した共通のデータが使用できる。ステップS41で、「次は商品aの棚***です」という合成音声で、係員を該当する棚に移動させる。ステップS42で、係員は、スキャナを用いて棚の識別コードをスキャンする。これで、棚の確認がされる。ディジタルピッキング処理では、棚のディスプレイや案内ランプが位置を明示しているので、ここまでの処理は無くてもよい。
【0065】
ステップS43では、合成音声で、「赤箱に2個入れてください」と出力され、係員は「はい」と応答するとともに、スキャナで物品のバーコードをスキャンする。これで、ピッキングされた物品の確認ができる。ステップS44では、合成音声で、「青箱に5個入れて下さい」と出力され、係員は「はい」と応答するとともに、スキャナで物品のバーコードをスキャンする。こうした作業が繰り返される。
【0066】
即ち、ディジタルピッキング処理と共通の一組のピッキング指示情報を使用して、1個の棚で複数のケースについてのピッキングを終える。その後、次の一組のピッキング指示情報を使用して、別の棚に移動する。図9で説明をした組み替え後のピッキング制御のためのデータを一組ずつ読み出して制御をすれば、複数のケースについて、同時並行してピッキング処理が可能になる。
【0067】
以上のように、ディジタルピッキング用棚と一般の棚とを混在させるために、本発明では、ピッキング指示の内容と結果を示す情報を共通化した。係員に対して送信する指示情報を、文字情報に変換しても音声情報に変換してもよいように共通化した。即ち、ディジタルピッキング制御手段と音声認識ピッキング制御手段は、同じピッキング管理データを参照して、指示情報を送出できるようにした。また、作業確認のためのスキャナの信号処理も共通化した。状況に応じてディジタルピッキング用棚の位置が変更されても、ロケーションデータを参照して、棚の種類を区別し、指示情報を的確に送出してピッキング作業ができる。さらに、指示情報の共通化処理により、行き先が別であってもピッキングや仕分けをする物品が共通するものについて、一括処理による効率化を図ることが可能になった。
【符号の説明】
【0068】
10 ピッキングシステム
11 管理サーバ
12 ディスプレイ
13 キーボード
14 マウス
15 制御装置
16 通信装置
17 アンテナ
20 記憶装置
21 ロケーションデータ
22 ピッキング管理データ
23 ピッキング指示情報
24 ピッキング指示合成音声
25 ロケーション更新制御データ
26 ピッキング数量データ
27 ピッキング数量データ
30 演算処理装置
31 ディジタルピッキング制御手段
32 音声認識ピッキング制御手段
33 ピッキング数量比較手段
34 ロケーション更新手段
35 データ変換手段
40 ディジタルピッキング用棚
41 パレット
42 物品
43 物品
45 ピッキング応答
50 表示装置
51 ディスプレイ
52 通信装置
53 スキャナ
60 一般の棚
61 棚識別コード
62 ピッキング指示合成音声
63 ピッキング音声応答
64 スキャナ
65 通信装置
67 ヘッドセット
68 係員
70 自動搬送機
72 台車
74 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を保管するための棚であって、ピッキングのための情報を表示する表示装置とピッキングの結果を返信するための通信装置を備えたディジタルピッキング用棚と、
前記表示装置を備えていない一般の棚とが設けられており、
前記ディジタルピッキング用棚の表示装置に対して、その棚に保管された物品をピッキングするための指示を含む情報を表示し、
当該物品のピッキングが完了した旨の応答を前記通信装置から受信して、
前記ピッキングの結果を記憶装置に記憶するという処理を繰り返すディジタルピッキング制御手段と、
係員が装着した端末装置に対して、
指定された前記一般の棚から、指定された物品をピッキングするための指示を含む、コンピュータが生成した合成音声を送信し、
前記係員の音声を含む情報を受信して、指定された物品のピッキングが完了した旨の応答を認識し、
前記ピッキングの結果を記憶装置に記憶するという処理を繰り返す音声認識ピッキング制御手段と、
前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品と前記一般の棚に保管された物品の、一定期間におけるピッキング数量を比較するピッキング数量比較手段と、
前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品よりもピッキング数量が多い物品が検出されたとき、前記一定期間経過後に、前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品と、この物品よりもピッキング数量が多い物品とを入れ替えてピッキング数量が多い物品を前記ディジタルピッキング用棚に保管するための、ロケーション更新指示を出力するロケーション更新手段を備えたことを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、
ピッキングの対象となる物品と各物品を保管する棚との関係を示すロケーションデータを記憶した記憶装置が設けられ、
前記ディジタルピッキング制御手段は、前記ロケーションデータを参照して、ディジタルピッキング用棚に保管された物品について、ピッキング制御を実行し、
前記音声認識ピッキング制御手段は、前記ロケーションデータを参照して、一般の棚に保管された物品について、ピッキング制御を実行し、
前記ロケーション更新手段は、前記一定期間経過後に、前記ロケーション更新指示を出力するとともに、前記物品の入れ替え後の内容に、前記ロケーションデータを書き換えることを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、
ロケーション更新手段は、前記一定期間経過後に、前記ディジタルピッキング用棚に保管された物品と、この物品よりもピッキング数量が多い物品とを入れ替えて、ピッキング数量が多い物品を前記ディジタルピッキング用棚に保管する処理を、自動搬送機に実行させるための、ロケーション更新制御データを生成することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、
前記ピッキング数量比較手段は、一定期間毎に各物品のピッキング総数を計算し、得られたピッキング総数を相互に比較して、ピッキング総数が多い物品から順番に、ディジタルピッキング用棚に対する割り付けをし、全てのディジタルピッキング用棚に対する物品の割り付けが終了したら、残りの物品を一般の棚に割り付けて、新たなロケーションデータを生成し、
前記ロケーション更新手段は、これまでディジタルピッキング用棚に割り付けられていた物品と、新たにディジタルピッキング用棚に割り付けられた物品とを検出して、ローテーション更新制御データ25を生成することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムを使用する方法であって、
ディジタルピッキング用棚に取り付ける表示装置がユニット化されており、そのユニットには、ディスプレイと通信装置とスキャナとを一体に組み込み、ユニットはどの棚にも着脱できるようにされ、物品の入れ替えをせず、ユニットを入れ替えることにより、ディジタルピッキング用棚に保管された物品と、この物品よりもピッキング数量が多い物品とを入れ替えてピッキング数量が多い物品を前記ディジタルピッキング用棚に保管することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステムの管理方法。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、
係員に操作されて移動する台車には、複数の外観上区別されたケースであって、収納した物品の行き先が指定されたものが搭載され、
ピッキングの対象となる棚が前記ディジタルピッキング用棚の場合には、前記ディジタルピッキング制御手段が、ピッキング指示を伝達するための文字情報を含むピッキング指示情報を生成し、前記一般用の棚の場合には、前記音声認識ピッキング制御手段が、ピッキング指示を伝達するための音声情報を含むピッキング指示合成音声を生成して、
前記ピッキングの対象となる棚に保管された物品を、前記各ケースに何個ずつピッキングするかを示すように、前記ピッキング指示が送信され、
前記前記ディジタルピッキング制御手段または前記音声認識ピッキング制御手段は、ピッキングされた物品の識別情報を読み取ったスキャナの出力信号を受信して、ピッキングの結果を前記ピッキング指示と照合することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、
係員に操作されて移動する台車には、少なくとも一種類の物品が必要な数量だけ搭載され、いずれかの棚には、複数の外観上区別されたケースであって、収納した物品の行き先が指定されたものが保管されており、
前記棚が前記ディジタルピッキング用棚の場合には、前記ディジタルピッキング制御手段が、仕分け作業の指示を伝達するための文字情報を含む指示情報を生成し、前記一般用の棚の場合には、前記音声認識ピッキング制御手段が、仕分け作業の指示を伝達するための音声情報を含む指示合成音声を生成して、
前記棚に保管された各ケースに、前記台車に搭載された物品を何個ずつ収納するかを示すように、前記指示が送信され、
前記ディジタルピッキング制御手段または前記音声認識ピッキング制御手段は、仕分け作業のために取り出された物品の識別情報を読み取ったスキャナの出力信号を受信して、仕分け作業の結果を前記指示情報と照合することを特徴とする倉庫に保管した物品のピッキングシステム。
【請求項8】
請求項6または7に記載の倉庫に保管した物品のピッキングシステムにおいて、
それぞれ行き先が別であって、ピッキングまたは仕分けをするいずれかの物品が共通するもののデータを、前記台車に搭載できるケースの数に相当するだけ組み合わせて、
物品の行き先毎に、棚別にピッキングまたは仕分けをする物品の数を表示するデータを、棚毎に、物品の行き先別に物品の数を表示するデータに変換して、前記ディジタルピッキング制御手段または前記音声認識ピッキング制御手段に供給するデータ変換手段を備えたことを特徴とする物品のピッキングシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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