説明

倉庫システムとそのキャリアの管理方法

【課題】 倉庫システムで用いるキャリアの使用状況を組織的にに管理できるようにする。
【解決手段】キャリアにIDタグ(RFIDタグ)44を取り付け、自動倉庫からの出庫や倉庫システムから外部への出庫の都度に使用回数を検出して加算し、所定値に達するとキャリアを洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動倉庫や平置き倉庫などの倉庫システムとキャリアの管理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫や配送センターなどの倉庫システムでは、バケットやトレイ、パレットなどのキャリアを物品の保管や搬送に用いている。これらのキャリアは使用状況を管理する必要があるが、このことは今まで検討されていない。例えばキャリアが食品や農作物、水産物、肉類などの容器である場合、キャリアを繰り返して使用すると汚染が問題になる。また食品以外のキャリアでも、多数回入出庫してピッキングを繰り返したり、あるいはユーザとの間の通箱として用いて倉庫システムとユーザとの間を多数回行き来すると、キャリアの使用履歴の管理が必要になる。しかしこのような状況に適した、キャリアの管理方法は提案されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、倉庫システムで用いるキャリアの使用状況を組織的に管理できるようにすることにある(請求項1〜4)。
請求項2の発明での追加の課題は、キャリアを再使用する前に、使用状況をチェックできるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、洗浄や検査などのメンテナンスが必要なキャリアを抽出して、メンテナンスできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の倉庫システムでは、非接触で読み書き自在なIDタグを物品のキャリアに取り付けると共に、該IDタグにキャリアの使用状況に関するデータを書き込むための手段と、該IDタグから前記データを読み出すための手段とを設ける。
【0005】
非接触で読み書き自在なIDタグとしては例えばRFIDが有り、使用状況に関するデータとしては、キャリアの入庫回数や出庫回数、搬送回数、キャリアの使用回数、延べ使用時間、キャリアのメンテナンスを行った前回の日時や日付、前回のメンテナンスからの経過時間などがある。キャリアにはバケットやパレット、トレイなどがあり、いずれも物品の保管と搬送とに用いる。倉庫システムは自動倉庫や平置き倉庫、あるいはこれらを含むシステムを意味する。
【0006】
使用状況に関するデータは、例えばキャリアの倉庫システムへの入庫や出庫、あるいは倉庫システム内での搬送や処理の際に、書き込みあるいは読み出すのが好ましい。
特に好ましくは、キャリアの倉庫システムへの入庫時、もしくは倉庫システム内での自動倉庫などの所定の保管場所への入庫時、にデータを読み出す。
また好ましくは、前記データが所定の条件を満たす際に、キャリアのメンテナンスを行う。メンテナンスは例えばキャリアの洗浄や検査などである。
【0007】
この発明のキャリアの管理方法では、倉庫システムで用いるキャリアに、非接触で読み書き自在なIDタグを取り付けると共に、該IDタグにキャリアの使用状況に関するデータを書き込み、かつ読み取ることにより、キャリアの使用状況を管理する。この明細書において、倉庫システムでのキャリアの管理に関する開示は、倉庫システムの発明にもキャリアの管理方法の発明にも当てはまる。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、キャリアにIDタグを取り付けて、使用状況に関するデータをIDタグに書き込みかつ読み出して管理するので、キャリアの使用状況を組織的に管理できる。このため例えば、汚染されたキャリアや、長期間メンテナンスされていないキャリアなどに、物品を保管することが防止できる。
【0009】
ここでキャリアの入庫時に前記のデータを読み出すと、そのキャリアをそのまま引き続いて入庫用に使用して良いかどうかを容易に判別できる。例えば牛乳瓶やビール瓶などの配達に用いたキャリアの場合、倉庫システムに戻ってきた段階で瓶を洗浄に回すと共に、キャリアの使用状況を判別して、そのまま再使用するか、洗浄などのメンテナンスを行うかを判別できる。また部品や仕掛品の保管に用いるキャリアの場合、ピッキング用や工程での使用用に出庫した後に、倉庫システムやその内部の自動倉庫などへ戻ってきた段階で、そのまま再使用するか、他のキャリアに変更するかを判別できる。
【0010】
そして例えば入庫回数や出庫回数などでカウントした使用回数が所定値に達した、あるいは前回のメンテナンスから所定時間以上経過したなどで、キャリアを洗浄などのメンテナンスに回すようにすると、キャリアの状態を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図4に、実施例を示す。これらの図において、2は倉庫システムで、4は自動倉庫で、5,6は例えば一対の棚である。自動倉庫4内ではスタッカークレーン8などの搬送装置が物品をキャリア(ここではバケット)単位で搬送し、10は例えば入庫用のステーション、11は例えば出庫用のステーションである。また12はピッキング用の出庫ステーション、13はピッキング用の入庫ステーションである。14〜16はコンベヤで、14は入庫用のコンベヤ、15は出庫用のコンベヤ、16はピッキング用のコンベヤで、コンベヤ16を用いてピッキングエリア18を構成する。22〜25はRFIDのリーダライタで、コンベヤ14〜16上に設けても、ステーション10〜13上に設けても良い。またこれ以外に、スタッカークレーン8などにも、例えばRFIDのリーダライタを設けても良い。リーダライタ22は、自動倉庫4へ入庫するキャリアのIDタグのデータを読み取り、リーダライタ23はコンベヤ15から出庫するキャリアのIDタグのデータを読み取ると共に、出庫回数を加算する。リーダライタ24はステーション12から出庫するキャリアのIDタグのデータを読み取り、リーダライタ25はステーション13から入庫するキャリアのIDタグのデータを読み取り、出庫回数を加算する。ここではリーダライタ22〜25を用いたが、例えば入庫時にはIDタグのデータを読み取るのみにし、出庫時にIDタグにデータを書き込むようにすると、リーダライタ22,25は単なるRFIDのリーダに変えることができる。
【0013】
倉庫システム2には自動倉庫4以外に、例えば平置き倉庫30を設ける。32は倉庫システム2への入庫や出庫用のトラックバースで、34はキャリア(バケット)に物品をセットし、あるいはキャリアから物品を回収したりするための、物品のセットエリアである。倉庫システム2の内部で自動倉庫4の外部では、フォークリフト36や長距離コンベヤなどにより物品をキャリア単位で搬送し、例えばフォークリフト36や図示しない長距離コンベヤなどにRFIDのリーダライタ38を取り付けて、キャリアのIDタグにデータを読み書きする。40は洗浄メンテナンスエリアで、例えば所定回数入出庫したキャリアや、前回の洗浄から所定時間以上経過したキャリアを洗浄する。洗浄メンテナンスエリア40でメンテナンスを受けたキャリアのIDタグには、適宜のRFリーダライタを用いて、使用回数を0にリセットし、かつメンテナンス日を更新する。41は倉庫コンピュータで、倉庫システム2で保管中のキャリアと保管物品のデータを記憶し、特にキャリアのIDに保管物品のデータを関連付けて記憶している。
【0014】
図2にキャリアの例としてバケット42の例を示す。例えば前後のつば43,43の一方の内側などに、RFIDタグ44を取り付ける。RFIDタグ44の取付位置は自在であるが、つば43の内側とするのは、他の物と接触して損傷したりすることが少ないためである。
【0015】
RFIDタグ44のデータは、例えば図3に示すように、タグのIDとオプション、並びにキャリアの使用回数、前回キャリアを洗浄した日、キャリアのライフタイム(キャリアの寿命が到来する日)、及びキャリアの使途などから構成されている。タグのIDはキャリア自体のIDでもあり、倉庫コンピュータ41のデータベースをこのIDで検索すると、キャリアに関するデータが得られる。オプションの欄にはキャリアの使用状態の管理以外に必要なデータを記憶し、例えば自動倉庫4や平置き倉庫30でのキャリアの保管位置やキャリアの次の搬送先、キャリアに載せている物品のIDなどを記憶する。
【0016】
使用回数は、例えば自動倉庫4から出庫すると1加算し、倉庫システムからその外部へ出庫すると+n加算する。nの値は例えば2以上で、倉庫システム2内でキャリアを移動させる場合と、倉庫システム2の外部へキャリアを持ち出す場合とでの、キャリアの汚れの程度に応じて、nの値を定める。このようにしてキャリアの使用の程度を使用回数に換算して記憶する。前回洗浄日の項目には、前回キャリアを洗浄した日を記憶し、メンテナンスの内容が洗浄ではなく検査であるような場合は、前回の検査日を記憶する。ライフタイムの項目には、キャリアを使用できる最後の日を記載し、この日を越えたキャリアを廃棄する。使途の項目には、キャリアの使用状況の管理に関する他のデータを記憶する。例えばキャリアの用途や使い方が複数種類あり、倉庫システム2内でのみ使用するものと、倉庫システム2外へ搬出するものとがある場合や、保管物品によって次のメンテナンスまでの使用回数の上限値が異なる場合、これらを区別するためのデータを、使途として記憶する。
【0017】
図4に、バケットなどのキャリアの管理アルゴリズムを示す。バケットが卸売店や販売店への配送のためなどに倉庫システム2の外部へ持ち出され、トラックバース32などから戻ってきたものとする。自動倉庫4へ再入庫する前に、入庫ステーション10あるいは入庫用のコンベヤ14上で、RFIDのリーダライタ22によりバケットのIDタグのデータを読み取り、使用回数や前回の洗浄日、ライフタイムなどをチェックし、メンテナンスが必要である場合には洗浄メンテナンスエリア40へ搬送し、またライフタイムを経過しているバケットを廃棄する。また使途によって保管位置が限定される場合、その位置へ保管する。次いでスタッカークレーン8によりバケットを搬送し、自動倉庫4に保管する。倉庫システム2へ戻ってきたバケットを、自動倉庫4ではなく平置き倉庫30などに保管する場合、フォークリフト36で搬送する過程で、RFIDのリーダライタ38によりIDタグのデータを読み取り、上記と同様の処理を行う。このようにしてバケットを保管する。
【0018】
保管したバケットはピッキングエリア18へ出庫し、あるいは出庫ステーション11から物品のセットエリア34へ出庫する。バケットを出庫する場合、出庫先に応じた値を使用回数に加算し、例えばピッキングエリア18へ出庫すると1加算し、セットエリア34へ出庫した際も同様に1加算する。さらに倉庫システム2の外部へ出庫する場合、1よりも大きな値nを加算する。なおピッキングエリア18やセットエリア34を経由して外部へ出庫する場合、これらのエリアへの出庫に対する加算を省略し、合計でn加算しても良い。このようにしてバケットのIDタグには、出庫の回数で定まる値が使用の程度を表すデータとして加算されていく。
【0019】
バケットは倉庫システム2へ戻ってくる都度、あるいはステーション10,13やフォークリフト36での搬送を受ける都度、IDタグのデータを読み取られる。この際に、使用回数や前回の洗浄日からの経過時間、あるいはライフタイムを経過しているか否かをチェックし、使用回数が所定の値以上、あるいは前回洗浄日から所定の日数以上経過している場合には、洗浄メンテナンスエリア40で洗浄や検査を受ける。またライフタイムを超過している場合、そのバケットを廃棄する。
【0020】
例えばバケットが、瓶やペットボトルなどの飲料のキャリアとして用いられているとする。この場合、バケットが汚染されるのは主として倉庫システム2の外部へ配達されるためで、倉庫システム2から外部に何回出荷されたかをカウントすればよい。そしてこの場合は、倉庫システム2内でのバケットの移動回数を加算する必要がない。また所定の回数使用されたバケットは、倉庫システム2へ例えば戻ってきた時点で判別されて、洗浄が行われる。ここで複数の倉庫システムや工場、販売店などが組み合わされたネットワークを考えると、バケットがこれらのネットワーク内を転々流通しても、RFIDタグに使用回数や前回の洗浄日などが記載されているので、バケットが入庫した倉庫システムでバケットの状態を管理できる。
【0021】
例えばバケットが、部品や仕掛品あるいは半製品などの保管や搬送に用いられるものとする。この場合、同種のバケットを、部品用や仕掛品用、半製品用などに使い分けることが多いので、これらを使途の欄などに記述する。部品用のバケットなどの場合、ピッキングエリア18に頻繁に出庫すると、その間にバケットの汚染や損傷が生じることが考えられるので、ピッキングエリアへの出庫の都度、使用回数を1加算する。また仕掛品や半製品の詰め合わせなどのためにセットエリアへ出庫すると、使用回数を1加算する。そしてバケットが倉庫システム2から、外部の工場などへ搬送されると、1よりも大きな値nだけ加算する。この場合も、バケットの使用状況をバケットに取り付けたRFIDタグに記憶させることができ、バケットが転々と流通しても、バケットの使用状況を管理できる。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例の倉庫システムのレイアウトを模式的に示す平面図
【図2】実施例で用いたバケットの側面図
【図3】実施例でのRFIDタグのデータ構成を示す図
【図4】実施例でのバケットの管理アルゴリズムを示す図
【符号の説明】
【0023】
2 倉庫システム
4 自動倉庫
5,6 棚
8 スタッカークレーン
10〜13 ステーション
14〜16 コンベヤ
18 ピッキングエリア
22〜25 RFIDのリーダライタ
30 平置き倉庫
32 トラックバース
34 物品のセットエリア
36 フォークリフト
38 RFIDのリーダライタ
40 洗浄メンテナンスエリア
41 倉庫コンピュータ
42 バケット
43 つば
44 RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で読み書き自在なIDタグを物品のキャリアに取り付けると共に、該IDタグにキャリアの使用状況に関するデータを書き込むための手段と、該IDタグから前記データを読み出すための手段とを設けた、倉庫システム。
【請求項2】
キャリアの入庫時に、前記データを読み出すようにしたことを特徴とする、請求項1の倉庫システム。
【請求項3】
前記データが所定の条件を満たす際に、キャリアのメンテナンスを行うようにしたことを特徴とする、請求項1または2の倉庫システム。
【請求項4】
倉庫システムで用いるキャリアに、非接触で読み書き自在なIDタグを取り付けると共に、該IDタグにキャリアの使用状況に関するデータを書き込み、かつ読み取ることにより、キャリアの使用状況を管理するようにした、キャリアの管理方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate