説明

倉庫作業計画作成システムおよび倉庫作業計画作成方法

【課題】複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を実用的な時間で一度に作成すること。
【解決手段】作業割付部13bが、複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けた後に、個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を割り付ける。すなわち、作業割付部13bは、複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する処理と、個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する処理との2段階に分けて作業計画を作成する。このような倉庫作業計画作成処理によれば、1回の作業計画の作成処理で探索される組み合わせ数が減るので、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を実用的な時間で一度に作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する倉庫作業計画作成システムおよび倉庫作業計画作成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロット生産やバッチ処理によって最終製品や半製品(以下、最終製品および半製品をまとめて製品と総称する)を製造する場合、ロットなどの所定単位毎に製品をまとめる必要がある。このため、製品の製造ラインには、製品を一時的に保管するための倉庫や仮置き場(以下、倉庫および仮置き場をまとめて倉庫と総称する)が用意されている。倉庫内に保管されている製品を運搬する際には運搬車両(AGV(Automated Guided Vehicle)を含む)や搬送台車などの運搬設備が使用され、運搬設備への製品の荷役にはクレーン設備が使用される。ところが、一般に、これらの設備を同時に使用できる台数には制限がある。このため、倉庫内に保管されている製品を移動する際には、限られた設備数で製品を効率的に運搬および荷役する必要がある。
【0003】
限られた設備数で製品を効率的に運搬および荷役する際のポイントとしては、設備の待ち時間が短いこと、設備の作業時間が短いこと(例えば運搬車両であれば走行経路が短いこと)、および設備の作業負荷が設備間で平準化されていることなどが挙げられる。このような背景から、これらのポイントを考慮して各設備の作業計画を作成する各種の作業計画作成方法が提案されている。具体的には、特許文献1には、運搬車両の走行経路が他の運搬車両の走行経路と重なるか否かを考慮しながら運搬車両の作業計画を作成する作業計画作成方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−254847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際の物流では、運搬車両だけでなく搬送台車を使った製品の運搬作業やクレーン設備のみでの製品の運搬作業などがあり、ある設備の運搬作業が他の設備の運搬作業と競合することがある。また、倉庫が複数の棟によって構成されている場合には、ある棟における作業が他の棟における作業に影響を与えることがある。具体的には、運搬車両を利用して倉庫の各棟からバースに製品を出庫する場合、バースに載置可能な製品数や使用可能な運搬車両の台数に上限があるために、ある棟の出庫作業が他の棟の出庫作業に影響を与えることがある。
【0006】
しかしながら、従来の作業計画作成方法は、運搬車両以外の設備を考慮して運搬車両の作業計画を作成していないために、運搬車両に多くの待ち時間が発生し、製品を効率的に移動できなくなることがある。また、従来の作業計画作成方法は、一つの棟内に配置された運搬車両の作業計画を作成するものであるために、倉庫が複数の棟によって構成されている場合、他の棟における作業の影響によって運搬車両が作業計画通りに作業できなくなることがある。なお、このような問題点を解決するために、複数種の設備および複数の棟の作業計画を一度に作成することが考えられる。ところが、複数種の設備および複数の棟の作業計画を一度に作成しようとすると、探索する組み合わせ数が膨大になることから、解くべき計画問題が大規模、且つ、複雑になり、実用的な時間で計画問題を解くことが難しくなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を実用的な時間で一度に作成可能な倉庫作業計画作成システムおよび倉庫作業計画作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る倉庫作業計画作成システムは、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する倉庫作業計画作成システムであって、前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付け、該作業計画が割り付けられていない該計画対象期間内の時間帯に個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を割り付ける計画作成装置を備える。
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る倉庫作業計画作成方法は、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する倉庫作業計画作成方法であって、前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けるステップと、該作業計画が割り付けられていない該計画対象期間内の時間帯に個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を割り付けるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る倉庫作業計画作成システムおよび倉庫作業計画作成方法によれば、複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する処理と、個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する処理との2段階に分けて作業計画を作成するので、1回の作業計画の作成処理で探索される組み合わせ数が減り、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を実用的な時間で一度に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムが作業計画を作成する対象とする倉庫の一構成例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、仕様情報テーブル、管理情報テーブル、および在庫情報テーブルの一例を示す図である。
【図4】図4は、倉庫クレーン作業実績テーブル、船積みクレーン作業実績テーブル、および運搬作業実績テーブルの一例を示す図である。
【図5】図5は、車両運搬計画テーブルの一例を示す図である。
【図6】図6は、船積み作業計画テーブルおよび船積みグループ内訳テーブルの一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施形態である倉庫作業計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、入庫作業情報の一例を示す図である。
【図9】図9は、出荷作業情報の一例を示す図である。
【図10】図10は、車両出荷作業の一例を示す模式図である。
【図11】図11は、搬入出間口、運搬車両、製品置場、倉庫クレーン、および船積みクレーンの占有時間帯の一例を示す図である。
【図12】図12は、作業負荷データの作成方法を説明するための模式図である。
【図13】図13は、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図14は、倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画情報の一例を示す図である。
【図15】図15は、車両出荷作業リストの一例を示す図である。
【図16】図16は、車両出荷作業計画の割付推奨時間帯の算出方法を説明するための図である。
【図17】図17は、倉庫クレーンの負荷情報の一例を示す図である。
【図18】図18は、図17に示す倉庫クレーンの負荷情報に個別の棟のみに関係する作業の負荷情報を加えた図である。
【図19】図19は、オペレータの余裕人数情報の算出方法を説明するための図である。
【図20】図20は、車両出荷作業計画の割付方法を説明するための図である。
【図21】図21は、車両出荷作業リストの一例を示す図である。
【図22】図22は、荷役作業リストの一例を示す図である。
【図23】図23は、従来方法によって作成された車両出荷作業計画の割付結果および間口占有状況を示す図である。
【図24】図24は、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理によって作成された車両出荷作業計画の割付結果および間口占有状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムの構成および動作について説明する。
【0013】
〔倉庫の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムが作業計画を作成する対象とする倉庫の構成について説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムが作業計画を作成する対象とする倉庫の一構成例を示す模式図である。図1に示す倉庫は、バースに停泊している船舶によって出荷される製品を保管するための場所であり、複数の製品倉庫1a,1b,1cを備えている。各製品倉庫は、製品が保管される複数の棟1a1〜1a3,1b1〜1b3,1c1〜1c3によって構成されている。各棟には、各棟に搬入出される製品の荷役を行う倉庫クレーン2a1〜2a3,2b1〜2b3,2c1〜2c3が設けられている。各製品倉庫には、工場内で製造された製品を製品倉庫内に搬入するためのコンベア3a,3b,3cと、棟間の製品移動を可能にするための棟間を移動可能な搬送台車4a,4b,4cと、が設置されている。
【0015】
工場内で製造された製品は、コンベア3a,3b,3cだけでなく、後述する運搬車両6によっても製品倉庫内に搬入することができる。棟間およびバースへの製品の移動は、製品5が荷役される台車6aと台車6aを牽引する牽引部6bとが分離可能な運搬車両6によっても行うことができる。すなわち、棟内に保管されている製品5は、各棟の搬入出間口7a1〜7a3,7b1〜7b3,7c1〜7c3に台車6aを置き、各棟の倉庫クレーンによって台車6aに製品5を荷役した後、牽引部6bによって台車6aを運び出すことにより、他の棟又はバースへと移動することができる。但し、各棟の搬入出間口に置くことが可能な台車6aの数には上限がある。
【0016】
運搬車両6によって各棟から搬出された製品5は、船舶8a,8b,8cが船付けされるバースA,B,Cの製品置場に載置される。各船舶には、製品5が積み込まれる複数のハッチ8a1,8a2、8b1,8b2、8c1,8c2が設けられている。各バースには、製品置場に載置された製品5を船舶8a,8b,8cのハッチ内に積み込むための船積みクレーン9a,9b,9cが設けられている。各船積みクレーンは船舶の複数のハッチ間を移動可能に構成されている。
【0017】
〔倉庫作業計画作成システムの構成〕
次に、図2を参照して、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムの構成について説明する。
【0018】
図2は、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システムの構成を示すブロック図である。図2に示すように、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成システム10は、ワークステーションやパーソナルコンピュータなどの情報処理装置によって構成され、計画対象情報保存装置11、計画条件入力装置12、計画作成装置13、および計画出力装置14を備えている。計画対象情報保存装置11は、ハードディスクなどの不揮発性の記憶装置によって構成され、倉庫における作業計画を作成するために必要な各種情報を記憶している。
【0019】
計画対象情報保存装置11は、製品情報データベース(DB)11a、進捗状況データベース(DB)11b、車両運搬計画情報データベース(DB)11c、および出荷計画データベース(DB)11dを備えている。製品情報DB11aは、複数の製品毎の仕様情報を示す仕様情報テーブル、複数の製品毎の梱包日時および出荷日時に関する情報を示す管理情報テーブル、および複数の製品毎の倉庫内における保管場所に関する情報を示す在庫情報テーブルを記憶している。
【0020】
図3(a)〜(c)はそれぞれ、仕様情報テーブル、管理情報テーブル、および在庫情報テーブルの一例を示す図である。図3(a)に示すように、仕様情報テーブルは、製品毎に付与された固有の識別情報(製品ID)と、製品IDに対応する製品の幅、外径、重量、品種、および納入先に関するデータとを関連付けして記憶している。
【0021】
図3(b)に示すように、管理情報テーブルは、製品ID、製品IDに対応する製品の梱包フラグ(値が1である場合は製品が梱包済みであることを示し、値が0である場合には製品が梱包済みでないことを示すフラグ)、製品IDに対応する製品の梱包日時(予定/実績)、製品IDに対応する製品の出荷フラグ(値が1である場合は製品が出荷済みであることを示し、値が0である場合は製品が出荷済みでないことを示すフラグ)、製品IDに対応する製品の出荷日時(予定/実績)、および製品IDに対応する製品の出荷作業に使われる設備(クレーン,船,トラックなど)に関するデータを関連付けして記憶している。
【0022】
図3(c)に示すように、在庫情報テーブルは、製品ID、製品IDに対応する製品が保管されている棟に付与された固有の識別情報(棟ID)、製品IDに対応する製品が保管されている棟内の行番号、および製品IDに対応する製品が保管されている棟内の列番号に関するデータを関連付けして記憶している。
【0023】
進捗状況DB11bは、倉庫クレーン2a1〜2a3,2b1〜2b3,2c1〜2c3の作業情報を示す倉庫クレーン作業実績テーブル、船積みクレーン9a,9b,9cの作業情報を示す船積みクレーン作業実績テーブル、および運搬車両6の作業情報を示す運搬作業実績テーブルを記憶している。
【0024】
図4(a)〜(c)はそれぞれ、倉庫クレーン作業実績テーブル、船積みクレーン作業実績テーブル、および運搬作業実績テーブルの一例を示す図である。図4(a)に示すように、倉庫クレーン作業実績テーブルは、倉庫クレーン2a1〜2a3,2b1〜2b3,2c1〜2c3に付与された固有の識別情報(倉庫クレーンID)、倉庫クレーンIDに対応する倉庫クレーンが配置されている棟の棟ID、倉庫クレーンIDに対応する倉庫クレーンが搬送する製品の製品ID、製品の搬送作業が完了した日時、製品の搬送元の行番号および列番号(CVは、製品の搬送元がコンベア3a,3b,3c、すなわち工場であることを示す)、製品の搬送先の行番号および列番号、および作業種(搬入作業の場合にはIN、搬出作業の場合にはOUT)に関するデータを関連付けして記憶している。
【0025】
図4(b)に示すように、船積みクレーン作業実績テーブルは、船積みクレーン9a,9b,9cに付与された固有の識別情報(船積みクレーンID)、船積みクレーンIDに対応する船積みクレーンが設置されているバースに付与された固有の識別情報(バースID)、船積みクレーンIDに対応する船積みクレーンが搬送する製品の製品ID、製品の搬送作業が完了した日時、および船積みする製品が属する船積みグループに付与された固有の識別情報(船積みGr.No.)に関するデータを関連付けして記憶している。
【0026】
図4(c)に示すように、運搬作業実績テーブルは、運搬車両6に付与された固有の識別情報(車両No.)、車両No.に対応する運搬車両6が運搬する製品が属するロットに付与された固有の識別情報(運搬ロットNo.)、車両No.に対応する運搬車両6が運搬する製品の製品ID、運搬作業が完了した時刻、および運搬車両6が運搬する製品の搬送元および搬送先に関するデータを関連付けして記憶している。
【0027】
車両運搬計画情報DB11cは、運搬車両6を利用した製品倉庫1a,1b,1cへの製品の入庫作業および製品倉庫1a,1b,1cからの製品の出庫作業に関する情報を示す車両運搬計画テーブルを記憶している。図5は、車両運搬計画テーブルの一例を示す図である。図5に示すように、車両運搬計画テーブルは、製品の製品ID、運搬車両6が到着する棟の棟ID、運搬車両6の到着予定時刻(間口到着予定時刻)、運搬車両6が行う作業が入庫作業と出庫作業のいずれの作業であるかを示す入出庫種別、および運搬車両6が搬送する製品の運搬ロットNo.に関するデータを関連付けして記憶している。
【0028】
出荷計画DB11dは、製品の出荷作業に関する情報を示す船積み作業計画テーブル、および船舶8a,8b,8cに船積みされる製品グループの構成を示す船積みグループ内訳テーブルを記憶している。図6(a),(b)はそれぞれ、船積み作業計画テーブルおよび船積みグループ内訳テーブルの一例を示す図である。図6(a)に示すように、船積み作業計画テーブルは、船積みGr.No.、船積みGr.No.に含まれる製品群が船積みされる船舶に付与された固有の識別情報(運搬船ID)、船積みGr.No.に対応する製品グループが船積みされるハッチに付与された固有の識別情報(ハッチNo.)、船積みGr.No.に対応する製品グループの船積み開始時刻、船積みGr.No.に対応する製品グループの船積み終了時刻、運搬船IDに対応する船舶が停泊するバースのバースID、および船積みGr.No.に対応する製品グループを船積みする際に使用される船積みクレーンの船積みクレーンIDに関するデータを関連付けして記憶している。図6(b)に示すように、船積みグループ内訳テーブルは、船積みGr.No.と、船積みGr.No.に対応する船積みグループに含まれる製品の製品IDに関するデータとを関連付けして記憶している。
【0029】
計画条件入力装置12は、キーボード、テンキー、マウスポインタなどの情報入力装置によって構成され、オペレータの操作入力情報を計画作成装置13に出力する。計画作成装置13は、CPUなどの演算処理装置がROMなどの記憶装置内に記憶されているコンピュータプログラムを実行することによって、作業作成部13aおよび作業割付部13bとして機能する。作業作成部13aおよび作業割付部13bの機能については後述する。計画出力装置14は、液晶ディスプレイやプリンタなどの出力装置によって構成され、計画作成装置13に接続されている。計画出力装置14は、計画作成装置13によって作成された作業計画の情報を出力する。
【0030】
〔倉庫作業計画作成処理〕
このような構成を有する倉庫作業計画作成システム10は、以下に示す倉庫作業計画作成処理を実行することによって、複数の棟によって構成される倉庫内における製品の運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する。以下、図7および図13に示すフローチャートを参照して、本発明の第1および第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理を実行する際の倉庫作業計画作成システム10の動作について説明する。
【0031】
〔第1の実施形態〕
始めに、図7に示すフローチャートを参照して、本発明の第1の実施形態である倉庫作業計画作成処理を実行する際の倉庫作業計画作成システム10の動作について説明する。図7は、本発明の第1の実施形態である倉庫作業計画作成処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、オペレータが計画条件入力装置12を操作することによって計画条件データおよび倉庫作業計画の作成指示を入力したタイミングで開始となり、倉庫作業計画作成処理はステップS1の処理に進む。オペレータが入力する計画条件データとしては、倉庫作業計画を作成するための各種パラメータ(例えばクレーン設備(倉庫クレーンおよび船積みクレーン)の標準荷役時間,運搬車両の標準運搬時間など)や設備の休止情報,設備を操作するオペレータの配置情報,優先して作業することが必要な緊急指定材などに関する情報を例示することができる。
【0032】
ステップS1の処理では、作業作成部13aが、図4(a)に示す倉庫クレーン作業実績テーブルおよび図5に示す車両運搬計画テーブルを参照して、倉庫クレーン2a1〜2a3,2b1〜2b3,2c1〜2c3や運搬車両6によって工場から製品倉庫1a,1b,1cに搬送されてくる製品に関する情報を入庫作業情報として抽出する。図8は、入庫作業情報の一例を示す図である。図8に示す入庫作業情報は、製品ID、製品IDに対応する製品が搬送される棟の棟ID、および製品IDに対応する製品の到着予定時刻(倉庫到着予定日時)を示すデータである。これにより、ステップS1の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS2の処理に進む。
【0033】
ステップS2の処理では、作業作成部13aが、図6(a)に示す船積み作業計画テーブルおよび図6(b)に示す船積みグループ内訳テーブルを参照して、製品倉庫1a,1b,1cから出荷される製品に関する情報を出荷作業情報として抽出する。図9は、出荷作業情報の一例を示す図である。図9に示す出荷作業情報は、船舶に船積みされる製品の製品ID、製品IDに対応する製品が船積みされる船舶が停泊するバースのバースID、製品IDに対応する製品が船積みされる船舶の運搬船ID、および製品の船積み予定日時を示すデータである。これにより、ステップS2の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS3の処理に進む。
【0034】
ステップS3の処理では、作業作成部13aが、図3(c)に示す在庫情報テーブルを参照して、各棟およびバースに載置されている製品に関する情報を在庫情報として抽出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS4の処理に進む。
【0035】
ステップS4の処理では、作業作成部13aが、製品倉庫1a,1b,1cに保管されている製品であって、工場返品等の出荷以外の目的で出庫される製品に関する情報を出庫作業情報として抽出する。これにより、ステップS4の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS5の処理に進む。
【0036】
ステップS5の処理では、作業作成部13aが、コンベア3a,3b,3c又は運搬車両6で運ばれてきた製品を製品倉庫1a,1b,1c内に搬入する入庫作業、および出荷製品を運搬台車1台分にまとめて運搬する車両出荷作業に関する情報を倉庫作業データとして作成する。具体的には、作業作成部13aは、図5に示す車両運搬計画テーブルとステップS1の処理によって作成された入庫作業情報から入庫作業に関する情報を作成する。また、作業作成部13aは、ステップS2の処理によって作成された出荷作業情報に含まれる製品について、(1)ステップS1の処理によって作成された入庫作業情報およびステップS3の処理によって作成された在庫情報に基づいて出荷前に保管されている棟を特定し、(2)出荷前に保管されている棟が同じであり、搬送されるバース位置が同じであり、且つ、船積み予定日時の最早値と最遅値との差が規定時間以下である出荷製品のグループを1つの台車ロットとしてまとめることによって、車両出荷作業に関する情報を作成する。
【0037】
図10は、車両出荷作業の一例を示す模式図である。図11(a)〜(e)はそれぞれ、搬入出間口、運搬車両、製品置場、倉庫クレーン、および船積みクレーンの占有時間帯の一例を示す図である。図10に示すように、車両出荷作業は、搬入出間口への空台車の搬入作業、搬入出間口での空台車への製品の積み込み作業、バースへの台車の移動作業、およびバースでの製品の船積み作業の4種類の作業によって構成されている。従って、図11(a)に示すように、搬入出間口での作業が行われている時間帯(時刻T=t2〜t3)では、1つの作業が1台車分の搬入出間口を占有し、図11(b)に示すように、運搬車両が走行している時間帯(時刻T=t1〜t2,t3〜t4)では、1つの作業が運搬車両1台を占有する。また、図11(d)に示すように、搬入出間口での作業が行われている時間帯(時刻T=t2〜t3)では、製品の荷役が行われるために、1台の倉庫クレーンが占有されることになる。また、図11(c),(e)に示すように、船積み作業が行われている時間帯(時刻T=t4〜t5)では、製品の荷役が行われるために、製品置場と1台の船積みクレーンとが占有されることになる。但し、各時刻で使用できる設備数には上限がある。
【0038】
従って、ある棟における車両出荷作業は他の棟における車両出荷作業に影響を与えることになる。すなわち、倉庫の各棟では、船積み作業が並行して行われている各バースに運搬車両を用いて運搬する製品を出庫する。各バースに置ける製品数や使用できる運搬車両の台数には上限があるので、ある棟の車両出荷作業が他の車両出荷作業に影響を与える。このため、車両出荷作業は、複数棟に関連する作業として扱われる。これにより、ステップS5の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS6の処理に進む。
【0039】
ステップS6の処理では、作業作成部13aが、個別の棟のみに関連する作業の負荷に関する情報を作業負荷データとして作成する。ここで、図12を参照して、作業負荷データの作成方法について説明する。図12は、作業負荷データの作成方法を説明するための模式図である。作業負荷データを作成する際には、作業作成部13aは、ステップS1およびステップS4の処理によって作成された入庫作業情報および出庫作業情報と製品が到着してから荷役作業に移るまでの標準所要時間とに基づいて、入庫作業及び出庫作業毎の荷役作業時間帯を算出し、図12に示すようにその時間帯を積み上げることによって作業負荷データを作成する。図12に示す例では、負荷が2となっている時間帯(時刻T=t1〜t2,t3〜t4,t5〜t6)では、荷役作業が重複していることを示す。なお、作業作成部13aは、荷役作業時間帯の長さに適当な係数を乗算することによって、不確実さ(作業の遅延や待ち時間など)を荷役作業時間帯の時間長に反映させるようにしてもよい。これにより、ステップS6の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS7の処理に進む。
【0040】
ステップS7の処理では、作業割付部13bが、ステップS6の処理によって作成された作業負荷データを用いて、複数棟に関連する作業としてステップS5の処理によって作成された車両出荷作業の作業計画を計画対象期間内に割り付ける。具体的には、作業割付部13bは、船積み作業の待ち時間と各設備の負荷が上限値を超える時間の最小化(平準化)とを評価値とし、車両出荷作業の負荷が上限値以下となることとその他の設備や製品に関する制約(例えば使用可能な設備数など)とを制約条件として、車両出荷作業の作業計画を計画対象期間内に割り付ける。なお、ここで解かれる計画問題は、使用できる設備に上限がある制約の下で計画を立てる問題であるので、資源制約付きプロジェクトスケジューリング問題として取り扱うことができる。
【0041】
この種の問題は、例えばタブーサーチなどのメタヒューリスティクスを使った解法を用いて実用時間で解くことが可能である。ここで、計画問題の解法は、本願発明の出願時点で公知であるので詳細な説明は省略する。計画問題の解法の詳細については、例えば参考文献(Koji Nonobe and ToshihideIbaraki, Formulation and tabu search algorithm for the resource constrained project scheduling problem, in Essays and Surveys in Metaheuristics, edited by CelsoC. Rebeiro and Pierre Hansen, KluwerAcademic Publishers, Boston, pp.557-588, 2002)を参照するとよい。なお、ここで解かれる計画問題は、混合整数問題に帰着させて解くことも可能である。緊急指定材など作業優先度の高い製品がある場合には、この処理ステップにおいてその製品に関する作業計画を割り付けるとよい。これにより、ステップS7の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS8の処理に進む。
【0042】
ステップS8の処理では、作業割付部13bが、車両出荷作業の作業計画が割り付けられていない時間帯に個別の棟のみに関係する作業の作業計画を割り付ける。これにより、ステップS8の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS9の処理に進む。
【0043】
ステップS9の処理では、作業割付部13bが、例えばステップS8の処理によって割り付けた個別の棟のみに関係する作業が規定時刻まで完了しないなど、作成された作業計画に不整合があるか否かを判別する。そして、作成された作業計画に不整合がある場合には、作業割付部13bは、ルールやヒューリスティクスなどの解法を用いて不整合を解消する。これにより、ステップS9の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS10の処理に進む。
【0044】
ステップS10の処理では、計画出力装置14が、ステップS9の処理によって不整合が解消された倉庫作業計画を出力する。これにより、ステップS10の処理は完了し、一連の倉庫作業計画作成処理は終了する。
【0045】
以上の説明から明らかなように、本発明の第1の実施形態である倉庫作業計画作成処理によれば、作業割付部13bが、複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けた後に、個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を割り付ける。すなわち、作業割付部13bは、複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する処理と、個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する処理との2段階に分けて作業計画を作成する。このような倉庫作業計画作成処理によれば、1回の作業計画の作成処理で探索される組み合わせ数が減るので、複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を実用的な時間で一度に作成することができる。
【0046】
また、本発明の第1の実施形態である倉庫作業計画作成処理によれば、作業割付部13bが、個別の棟のみに関連する作業の負荷に関する情報を作業負荷データとして用いて、複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けるので、作業負荷が平準化された作業計画を作成することができる。
【0047】
〔第2の実施形態〕
倉庫クレーンはオペレータによって操作される。このとき、オペレータの人数が倉庫クレーンの数より少ない場合、1人のオペレータが複数の倉庫クレーンを操作し、オペレータが乗っていない倉庫クレーンでは製品の荷役ができなくなる。このため、計画対象期間内の各時間帯における各倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画は倉庫作業計画を作成する際の制約条件となる。なお、船積みクレーンなどの倉庫クレーン以外の荷役設備や運搬車両などの運搬設備に対するオペレータの割付計画も同様に倉庫作業計画を作成する際の制約条件となる。そこで、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理は、計画対象期間内の各時間帯における各倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画を考慮して倉庫作業計画を作成する。以下、図13に示すフローチャートを参照して、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理の流れについて説明する。
【0048】
図13は、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理の流れを示すフローチャートである。図13に示すフローチャートは、オペレータが計画条件入力装置12を操作することによって計画条件データおよび倉庫作業計画の作成指示を入力したタイミングで開始となり、倉庫作業計画作成処理はステップS21の処理に進む。なお、図13に示すステップS21〜ステップS26の処理内容は、図7に示すステップS1〜ステップS6の処理内容と同じであるので、以下ではその説明を省略し、ステップS27の処理から説明を始める。
【0049】
また、上述の計画条件データとしては、倉庫作業計画を作成するための各種パラメータ(例えばクレーン設備(倉庫クレーンおよび船積みクレーン)の標準荷役時間、運搬車両の標準運搬時間など)や設備の休止情報、設備を操作するオペレータの配置情報、優先して作業することが必要な緊急指定材などに関する情報を例示することができる。設備を操作するオペレータの配置情報には、各倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画情報が含まれる。図14は、倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画情報の一例を示す図である。
【0050】
図14に示す割付計画情報では、製品が搬入出される棟が3つのグループに分類され、各グループの棟に設けられた倉庫クレーンに割り付けるオペレータの人数が計画対象期間の時間帯毎に設定されている。なお、本実施形態では、図1に示すように各棟には倉庫クレーンが1基ずつ設けられているので、オペレータの割り付け人数の最大値はグループを構成する棟数と等しくなっている。すなわち、グループ1(棟1a1,棟1a2,棟1a3),グループ2(棟1b1,棟1b2,棟1b3),およびグループ3(棟1c1,棟1c2,棟1c3)の各グループに割り付け可能なオペレータの人数は0〜3人である。但し、グループ数やオペレータの割り付け人数の範囲は設備や操業方法に応じて変化する。また、オペレータの人数が指定されていない時間帯(例えば5/7 16:00〜17:00)は休憩時間であり、オペレータが一人も配置されていない。
【0051】
ステップS27の処理では、作業割付部13bが、ステップS26の処理によって作成された作業負荷データと図14に示す倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画情報とを用いて車両出荷作業の作業計画を計画対象期間内に割り付ける。具体的には、作業割付部13bは、船積み作業の待ち時間と各設備の負荷が上限値を超える時間との最小化(平準化)を評価値とし、車両出荷作業の負荷が上限値以下となることとその他の設備や製品に関する制約(例えば使用可能な設備数など)と倉庫クレーンを操作するオペレータの人数に関する制約と間口配置可能台車数とを制約条件として、車両出荷作業の作業計画を計画対象期間内に割り付ける。なお、ここで解かれる計画問題は、ステップS7の処理と同様の方法によって解くことができる。また、評価値を明示的に定義せずに、以下に示す手順に従って計画問題を解くことも可能である。以下、評価値を定義せずに計画問題を解く方法について説明する。
【0052】
評価値を定義せずに計画問題を解く場合、始めに、作業割付部13bは、例えば同じ運搬ロットに含まれる製品の船積み予定日時の中の最早時刻を運搬ロット間で比較することによって車両出荷作業を優先順(最早時刻が早い順)に配列し、図15に示すような車両出荷作業が優先順(最早時刻が早い順)に配列された車両出荷作業リストを作成する。次に、作業割付部13bは、作成した車両出荷作業リストに含まれる車両出荷作業を先頭から順に選択し、選択した車両出荷作業の作業計画の割付を推奨する時間帯(割付推奨時間帯)を算出する。具体的には、作業割付部13bは、運搬ロットを構成する各製品について、図16に示すように製品の船積み予定日時(時刻T=t3)より最大先行開始時間(先行時間2)前の日時(時刻T=t1)と製品の船積み予定日時(T=t3)より最小先行開始時間(先行時間1)前の日時(時刻T=t2)との間の時間帯を割付推奨時間帯として算出し、各製品の割付推奨時間帯が重複する時間帯をその車両出荷作業の作業計画の割付推奨時間帯として算出する。
【0053】
次に、作業割付部13bは、選択した車両出荷作業を行う倉庫クレーンの負荷に関する情報と倉庫クレーンを操作するオペレータの余裕人数に関する情報とを用いて、選択した車両出荷作業の作業計画を割付可能な時間帯を割付推奨時間帯の範囲内で算出する。図17は、倉庫クレーンの負荷に関する情報の一例を示す図である。図17に示す情報は、ステップS6の処理内容と同じ処理内容によって作成することができる。図17に示す例では、車両出荷作業が割り付けられている時間帯における倉庫クレーン負荷の値は1に設定され、車両出荷作業が割り付けられていない時間帯における倉庫クレーン負荷の値は0に設定されている。従って、車両出荷作業は倉庫クレーン負荷の値が0に設定されている時間帯に割り付けることができる。
【0054】
しかしながら、倉庫クレーンは車両出荷作業以外の作業も行う。そこで、車両出荷作業の作業計画の割付可能時間帯は、車両出荷作業以外の作業に伴う倉庫クレーンの負荷も考慮して決定する必要がある。図18は、図17に示す倉庫クレーンの負荷に関する情報に個別の棟のみに関係する作業による倉庫クレーンの負荷に関する情報を加えた図である。ここで、負荷上限値を1とし、この値を負荷が越えないことを割付可能時間帯の条件として加えている。図18に示すように、車両出荷作業以外の作業も考慮した場合には、車両出荷作業のみを考慮した場合には割付可能時間帯であった時間帯(例えば5/8 4:00-5:00)が割付可能時間帯ではなくなっている。このため、作業割付部13bは、図18に示す倉庫クレーンの負荷に関する情報に基づいて、選択した車両出荷作業の作業計画を割付可能な時間帯を算出する。
【0055】
一方、作業割付部13bは、倉庫クレーンを操作するオペレータの余裕人数に関する情報を用いて、選択した車両出荷作業の作業計画を割付可能な時間帯を算出する。具体的には、作業割付部13bは、図14に示すオペレータの割付計画情報から図19(a)に示すような計画対象期間におけるオペレータの割付人数をグループ毎に算出する。なお、図19(a)は、図14に示すグループ1について算出された計画対象期間におけるオペレータの割付人数を示している。また、作業割付部13bは、既に割付済みの車両出荷作業の作業計画に基づいて、図19(b)に示すような計画対象期間における倉庫クレーンの負荷に関する情報を算出する。なお、図19(b)は、図14に示すグループ1に属する倉庫クレーンの計画対象期間における負荷を示している。次に、作業割付部13bは、図19(a)に示すオペレータの割付人数から図19(b)に示す倉庫クレーンの負荷に関する情報を減算することによって、図19(c)に示すような計画対象期間内におけるオペレータの余裕人数に関する情報をグループ毎に算出する。これにより、作業割付部13bは、オペレータの余裕人数が所定値以上の時間帯を車両出荷作業の作業計画を割付可能な時間帯として算出する。
【0056】
そして最後に、作業割付部13bは、倉庫クレーンの負荷に関する情報から算出された割付可能時間帯と倉庫クレーンを操作するオペレータの余裕人数に関する情報から算出された割付可能時間帯とが重複する時間帯を車両出荷作業計画の割付可能時間帯として算出する。
【0057】
次に、作業割付部13bは、算出された割付可能時間帯の中で使用可能な車両台数の制約を満たしている最早時刻に車両出荷作業の作業計画を割り付ける。この際、作業割付部13bは、各棟の間口制約(間口に配置可能な台車上限間数を超えない)および運搬車両の使用台数制約を考慮して、割付可能時間帯に前詰めで車両出荷作業の作業計画を割り付けていく。運搬車両の使用台数制約については、作業割付部13bは、既に割り付けられている車両出荷作業の情報から使用車両台数を計算し、使用車両台数が規定の台数を超えない程度に車両出荷作業の作業計画を前詰めで割り付ける。具体的には、作業割付部13bは、図20に示すように、割付済み作業A〜Cから使用車両台数の時間変化を算出する。
【0058】
図20に示す例では、割付済み作業A〜Cによって時刻T=t1〜t2の間に使用車両台数が規定台数に到達していることから、作業割付部13bは、時刻T=t2以後の時間帯を車両出荷作業を割付可能な時間帯として、時刻T=t2に運搬ロットID=SK0012の運搬ロットの出庫作業計画を割り当てている。なお、作業割付部13bは、岸壁の余裕状況をチェックしてバースへの台車移動作業およびバースでの製品船積み作業も割り付ける。また、車両運搬作業には最低必要時間長が設定されており、この設定値より長い時間の作業とすることが制約条件となっている。以上の処理を図15に示す車両出荷作業リストに含まれる全ての車両出荷作業に対して順に実行する。これにより、ステップS27の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS28の処理に進む。
【0059】
ステップS28の処理では、作業割付部13bが、倉庫クレーンを操作するオペレータの作業計画を割り付ける。具体的には、始めに、作業割付部13bは、計画対象期間を複数の時間帯に分割し、オペレータの作業計画が割り付けられていない時間帯を時刻が早いものから順に選択する。次に、作業割付部13bは、選択した時間帯における同一グループ内の各倉庫クレーンのオペレータ余裕値Sfを算出し、算出されたオペレータ余裕値Sfが小さい倉庫クレーンから順にオペレータの作業計画を割り付ける。但し、選択した時間帯に既に車両出荷作業が割り付けられている場合、作業割付部13bは、必ずその倉庫クレーンにオペレータが割り付けられるようにオペレータの作業計画を割り付ける。
【0060】
ここで、オペレータ余裕値Sfとは、作業負荷値Lfとオペレータ処理能力値Cfとの差分値Sf(=Cf−Lf)であり、その値が小さいほど、倉庫クレーンの作業負荷が大きいことを意味する。作業負荷値Lfは、選択した時間帯における個別の棟のみに関係する作業の作業量と選択した時間帯の1つ前の時間帯(先行時間帯)における残り作業量(詳しくは後述)とによって決まる値である。オペレータ処理能力値Cfは、選択された時間帯、グループを構成する棟数、および割付済の車両出荷作業のための出庫作業量によって決まる値である。作業負荷値Lfとオペレータ処理能力値Cfとは前述した値の線形関数や非線形関数から算出することができる。また、先行時間帯における残り作業量は下記計算式により算出することができる。また、作業量は、作業に要する時間又は荷役される製品数に基づいて計算することができる。作業割付部13bは、以上の処理をオペレータの作業計画が割り当てられていない全ての時間枠に対して順に実行する。これにより、ステップS28の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS29の処理に進む。
【0061】
〔先行時間帯における残り作業量〕
(1)先行時間帯において該当棟にオペレータが割り付けられている場合
(1−1)該当棟のオペレータ余裕値Sfが正:残り作業量=0(余裕があるので作業が全て処理できるという意味)
(1−2)該当棟のオペレータ余裕値Sfが負:残り作業量=−(オペレータ余裕値Sf)(オペレータが処理できなかった仕事量の計算)
(2)先行時間帯において該当棟にオペレータが割り付けられていない場合
残り作業量=先行時間帯における該当棟の作業負荷値Lf(オペレータが割り当てられていないので作業量をそのまま持ち越し)
【0062】
ステップS29の処理では、作業割付部13bが、車両出荷作業の作業計画が割り付けられていない時間帯に個別の棟のみに関係する作業の作業計画を割り付ける。具体的には、作業割付部13bは、倉庫クレーンに対するオペレータの作業計画の割付状態、間口配置台車数、および設備稼働可能状況を制約条件として、個別の棟のみに関係する作業の作業計画を割り付ける。これにより、ステップS29の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS30の処理に進む。
【0063】
ステップS30の処理では、作業割付部13bが、倉庫クレーンを操作するオペレータの割付計画を修正する。具体的には、作業割付部13bは、計画対象期間の先頭の時間帯から順に以下の条件(1)〜(3)を満たす時間帯を抽出する。次に、作業割付部13bは、抽出された時間帯において以下の条件(1)〜(3)を満たす棟以外の棟におけるオペレータが割り付けられていない時間帯にオペレータを割り付けることによって作業の前倒しができる場合、オペレータの割付計画を修正する。これにより、ステップS30の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS31の処理に進む。
【0064】
条件(1):1つの棟で荷役時間が割り当てられていない
条件(2):オペレータの作業計画が割り当てられている
条件(3):時間長が設定値以上
【0065】
ステップS31の処理では、作業割付部13bが、制約条件を満たしていない作業計画があるか否かを判別し、制約条件を満たしていない作業計画がある場合、その作業計画を後ろにスライドさせるなどの処理により制約条件を満たすように作業計画を修正する。これにより、ステップS31の処理は完了し、倉庫作業計画作成処理はステップS32の処理に進む。
【0066】
ステップS32の処理では、計画出力装置14が、ステップS31の処理後の倉庫作業計画を出力する。これにより、ステップS32の処理は完了し、一連の倉庫作業計画作成処理は終了する。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理によれば、作業割付部13bが、使用可能な設備数、倉庫クレーンを操作するオペレータの人数、および各棟の間口に配置可能な運搬設備の数を制約条件として、倉庫クレーンの作業負荷余裕値が所定値以上の時間帯に車両出荷作業の作業計画を優先順に前詰めで計画対象期間に割り付けるので、計画対象期間内の各時間帯における各倉庫クレーンに対するオペレータの割付計画を考慮して倉庫作業計画を作成することができる。
【0068】
〔実施例〕
従来技術および本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理を利用して5月8日の1時から2時までの1時間を計画対象期間として、以下の計算条件のもとに計画対象期間における倉庫作業計画を作成した。
【0069】
計算条件(1):倉庫クレーンおよび船積みクレーンの1回の荷役に要する時間は2分
計算条件(2):倉庫と岸壁との間の運搬車両の移動に要する時間は4分
計算条件(3):船積みクレーンは岸壁に運ばれた台車の上から直接製品を船に積込む(一旦岸壁に下ろすことは行わない)
計算条件(4):計画対象期間にグループ1の棟に割り当てられている倉庫クレーンオペレータは2人
計算条件(5):倉庫の間口や岸壁に台車が到着してから荷役を開始可能になるまで2分必要
計算条件(6):船積みクレーンID=LCr5の船積みクレーンで船積みを行う製品の運搬を担当する車両は1台
【0070】
図21は、計画対象期間に船積みクレーンID=LCr5の船積みクレーンで船積み予定の製品を岸壁に搬出する運搬ロットのリストを示す。本実施例では、運搬ロットに船積み順がついている。なお、実際の操業では製品一個一個について船積み順がつけられている場合もあるが、その場合でも本特許で提案する技術は適用可能である。図22は、計画対象期間に図14に示すグループ1に属する棟で行われる予定である荷役作業(但し、個別棟のみに関連する作業のみ)のリストを示す。但し、このリストは製品一個単位のものではなく運搬ロット単位に集約したものである。図24は、本発明の第2の実施形態である倉庫作業計画作成処理によって作成された倉庫作業計画(グループ1に属する棟および船積みクレーンID=LCr5の船積みクレーン関連)をガントチャート表示したものである。実線の細い四角形が製品1個の荷役作業であり、点線が間口や岸壁を台車が占有している時間帯である。また、図23は、比較のために、個別棟のみに関連する作業を先に割付けた後に、複数棟に関連する作業(車両出荷作業)を割り付けた場合の結果を示したものである。
【0071】
図23に示す倉庫作業計画では、棟2に割付けられた運搬ロットID=LX2531の運搬ロットの荷役作業のため、運搬ロットID=SK0059の運搬ロットの荷役作業が遅れている。このため、船積みクレーンID=LCr5の船積みクレーンに作業停止時間が発生し、運搬ロットID=SK0060の運搬ロットおよび運搬ロットID=SK0061の運搬ロットの船積み作業が計画時間帯内に完了していない。これに対して、図24に示す倉庫作業計画では、運搬ロットID=LX2531の運搬ロットの荷役作業を後回しにすることによって、運搬ロットID=SK0059の運搬ロットの荷役作業を早めている。このため、船積みクレーンID=LCr5の船積みクレーンの作業停止時間がなくなり、計画時間期間内に図21に示す全ての運搬ロットの船積み作業を完了する倉庫作業計画が作成されている。また、図24に示す倉庫作業計画では、車両出荷作業は個別の棟のみに関係する作業の負荷も考慮して割り付けられているので、車両出荷作業によって個別の棟のみに関係する作業が大幅に遅れることがない計画になっている。
【0072】
なお、本発明に係る倉庫作業計画作成処理によって得られる解は、探索を使ったアルゴリズム(多数の荷役作業順の組み合わせを試してよい順番を選択するアルゴリズム)を用いても得られる。しかしながら、本発明に係る倉庫作業計画作成処理の適用対象は、制約条件が複雑であり組み合わせの数も多い。このため、良好な計画結果を得るためには多くの計算時間を要する場合が多い。本発明に係る倉庫作業計画作成処理では、市販のパーソナルコンピュータを使用し、対象棟が10棟以上、計画対象期間が24時間を越えても数分以内に良好な計画結果を得ることが可能である。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。例えば、本発明の一実施形態である倉庫作業計画作成システムを条件や計画対象作業を変更しながら何度も使用して作業計画を作成するシステム構成に組み入れることによって計画立案支援装置を構築してもよい。例えば、特開2010−95333号公報には、計画作成結果およびシミュレーション結果を表示して先行関係や船積み中断などの原因を視覚化し、各種条件を変更しながら何度も計画作成およびシミュレーションを行って作業計画を決定する倉庫作業計画立案支援装置が開示されている。この特許文献には、具体的な作業計画作成方法は開示されていないが、本発明の一実施形態である倉庫作業計画作成システムを組み込むことによって計画立案支援装置を構築することができる。このように、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1a,1b,1c 製品倉庫
1a1〜1a3,1b1〜1b3,1c1〜1c3 棟
2a1〜2a3,2b1〜2b3,2c1〜2c3 倉庫クレーン
3a,3b,3c コンベア
4a,4b,4c 搬送台車
5 製品
6 運搬車両
6a 台車
6b 牽引部
7a1〜7a3,7b1〜7b3,7c1〜7c3 搬入出間口
8a,8b,8c 船舶
8a1,8a2、8b1,8b2、8c1,8c2 ハッチ
9a,9b,9c 船積みクレーン
10 倉庫作業計画作成システム
11 計画対象情報保存装置
11a 製品情報データベース(DB)
11b 進捗状況データベース(DB)
11c 車両運搬計画情報データベース(DB)
11d 出荷計画データベース(DB)
12 計画条件入力装置
13 計画作成装置
13a 作業作成部
13b 作業割付部
14 計画出力装置
A,B,C バース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する倉庫作業計画作成システムであって、
前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付け、該作業計画が割り付けられていない該計画対象期間内の時間帯に個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を割り付ける計画作成装置を備えることを特徴とする倉庫作業計画作成システム。
【請求項2】
前記計画作成装置は、個別の棟のみに関係する作業を行う際の運搬設備および荷役設備の作業負荷を算出し、該作業負荷を平準化させるように前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けることを特徴とする請求項1に記載の倉庫作業計画作成システム。
【請求項3】
前記計画作成装置は、使用可能な運搬設備の数を制約条件として前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を作成することを特徴とする請求項1又は2に記載の倉庫作業計画作成システム。
【請求項4】
前記計画作成装置は、各棟における製品の入庫情報および出庫情報に基づいて、個別の棟のみに関係する作業を行う際の運搬設備および荷役設備の作業負荷を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の倉庫作業計画作成システム。
【請求項5】
前記計画作成装置は、使用可能な運搬設備および荷役設備の数、運搬設備および荷役設備を操作するオペレータの人数、および各棟の間口に配置可能な運搬設備の数のうちの少なくとも1つを制約条件として、荷役設備の作業負荷余裕値が所定値以上の時間帯に前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を優先順に前詰めで計画対象期間に割り付けることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか1項に記載の倉庫作業計画作成システム。
【請求項6】
前記計画作成装置は、前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けた後、該計画対象期間を複数の時間帯に分割し、個別の棟のみに関係する作業を行う際の荷役設備の作業負荷に基づいて荷役設備のオペレータの作業計画を割り付けるか否かを時間帯毎に決定し、荷役設備のオペレータの作業計画が割り付けられた時間帯に個別の棟のみに関係する荷役設備の作業計画を割り付けることを特徴とする請求項4又は5に記載の倉庫作業計画作成システム。
【請求項7】
前記計画作成装置は、前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付け後、該計画対象期間を複数の時間帯に分割し、個別の棟のみに関係する作業を行う際の荷役設備の作業負荷に基づいて荷役設備のオペレータの作業計画を割り付けるか否かを時間帯毎に決定し、荷役設備のオペレータが割り当てられた時間帯に個別の棟のみに関係する荷役設備の作業計画を割り付け、荷役設備のオペレータが割り付けられているのにもかかわらず荷役作業の作業計画が割り当てられていない時間帯の一部もしくは全部についてオペレータを割り当てる棟を変更することによって荷役作業の前倒しが可能であるか否かを判別し、荷役作業の前倒しが可能である場合、オペレータを割り当てる棟を変更することを特徴とする請求項4〜6のうち、いずれか1項に記載の倉庫作業計画作成システム。
【請求項8】
複数の棟によって構成される倉庫内の製品を搬入出するための運搬設備および荷役設備の作業計画を作成する倉庫作業計画作成方法であって、
前記複数の棟に関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を計画対象期間に割り付けるステップと、
該作業計画が割り付けられていない該計画対象期間内の時間帯に個別の棟のみに関係する運搬設備および荷役設備の作業計画を割り付けるステップと、
を含むことを特徴とする倉庫作業計画作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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