説明

個人特定情報取得システム

【課題】キーボードの入力タイミングを個人特定情報として取得し、様々な用途に用いることができる個人特定情報取得システムを提供する。
【解決手段】キーボード36と、キーボード36を使用しているユーザのユーザ名を記憶するユーザ名記憶手段45と、キーボード36からのキーコードを受信するキーボードコントローラと、キーコードを受信してから次のキーコードを受信するまでの入力間隔時間を測定する時間測定手段42と、キーコードの組み合わせごとの入力間隔時間を記憶するデータテーブル39が、ユーザ名記憶手段45に記憶されているユーザ名ごとに複数記憶されるデータテーブル記憶手段34とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザごとに異なるキーボードの入力タイミングを取得する個人特定情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
銀行のATMや、特定人しか出入りできない出入口のロック機構などでは、特定人であることを認証するためにパスワードを入力することが一般的である。
しかしパスワードを生年月日等で安易に設定してしまうとパスワードを簡単に解読されるおそれもある。
【0003】
そこで、個人認証を行うために、指紋や虹彩を検出してユーザを特定しようとする技術も開発されている。しかし、指紋や虹彩を検出するには専用装置が必要となり、導入するにはコスト高となってしまうため、指紋や虹彩によって個人認証を行うシステムはあまり普及が進んでいないという側面がある。
【0004】
そこで、パスワードの入力タイミングには個人差があることを用い、パスワードの入力タイミングに基いて、個人認証を行いセキュリティの強化を図ろうとする技術が開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
このような技術によれば、パスワード入力時の入力タイミングを測定するだけでよいので、低コストで個人認証を実行することが可能であるとされている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−73393号公報
【非特許文献1】納富一宏、山口俊光、石井博章、斎藤恵一、藤本哲男、「打鍵タイミングを用いた4桁暗証番号による個人認証」、神奈川工科大学研究報告、B理工学編第26号、2003年3月、p.73〜78
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られている入力タイミングを測定する技術は、パスワードの入力タイミングを測定して個人認証を行うことを目的とするものに限定されていた。
しかし、入力タイミングは、同一人であってもそのときの健康状態や心理状態によっても大きく異なってくると考えられるので、厳密な個人認証としては採用しにくいのではないかという課題がある。
【0007】
本発明者は、入力タイミングの測定をパスワード入力に限定せずに、一般的なキーボードから文章を打ち込む際の入力タイミングを個人を特定するための重要な情報であるとして取得し、この情報(個人特定情報)を個人認証に用いるだけでなく、そのときの健康状態等を把握できるのではないかと考え、本発明に想到した。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、キーボードの入力タイミングを個人特定情報として取得し、様々な用途に用いることができる個人特定情報取得システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる個人特定情報取得システムによれば、キーボードと、キーボードを使用しているユーザのユーザ名を記憶するユーザ名記憶手段と、キーボードからのキーコードを受信するキーボードドライバと、キーコードを受信してから次のキーコードを受信するまでの入力間隔時間を測定する時間測定手段と、キーコードの組み合わせごとの入力間隔時間を記憶するデータテーブルが、ユーザ名記憶手段に記憶されているユーザ名ごとに複数記憶されるデータテーブル記憶手段とを具備することを特徴としている。
この構成を採用することによって、ユーザごとに個人特定情報としてのキーボードの入力タイミングを蓄積させることができ、またキーコードの組み合わせごとに入力タイミングを記憶させるので、様々な入力タイミングのパターンを取得することができる。
【0010】
また、前記キーボードドライバが受信したキーコードに基いて、入力された単語を認識する単語認識手段が設けられ、ユーザ名ごとの各データテーブルは、単語認識手段によって認識された単語ごとに形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、単語ごとに入力タイミング情報を蓄積できる。つまり、ユーザが普段使用しない単語については全体的に入力タイミングが遅くなり、同じユーザでも慣れている単語については全体的に入力が速くなるため、単なるキーコード間の時間だけを記憶させておく場合よりも、より的確な入力タイミングを取得することができる。
【0011】
前記単語認識手段は、文字に対応するキーコードが入力されている間、文字以外の補助的な用途に用いられるキーコードが入力されてくるまでを1つの単語として認識することを特徴としてもよい。
このようにして容易に単語を認識することができる。
【0012】
さらに、前記時間測定手段は、前記単語認識手段によって検出された各単語全体の入力時間を測定し、単語全体の入力時間に対する単語中に入力された前記入力間隔時間の割合を算出し、前記各ユーザ名ごとのデータテーブルは、各単語ごとに単語全体の入力時間に対する単語中に入力された前記入力間隔時間の割合を記憶して形成されていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、単にキーコード間の入力間隔時間を入力タイミングとして取り扱う場合よりも、各個人における入力タイミングの特徴が明確に出るため、個人特定情報としての価値が大きくなり、セキュリティ分野のほかにも様々な分野に適用させることができる。
【0013】
また、前記入力間隔時間を、前記データテーブル記憶手段に記憶されている同じユーザ名の過去のデータテーブルの内容と比較する比較手段を具備することを特徴としてもよい。
これによれば、現在キーボード入力しているユーザの状態が、過去に蓄積された入力タイミング情報に基づいていつもと違う状態であること(例えば病気であったりする場合)を検出することができる。また、過去に蓄積された入力タイミング情報から、現在キーボード入力中のユーザが、全く違う人物であるということも考えられる。このような場合には、本人かそうでないかを容易に検出することができ、セキュリティ分野に役立てることができる。
【0014】
前記比較手段による比較の結果、入力間隔時間が過去のデータテーブルの内容と異なることが判明した場合には、入力間隔時間が異常であることを現在キーボード使用中のユーザに通知する通知手段を具備することを特徴としてもよい。
この構成によれば、ユーザの状態(身体的な状態が)が異常であることを通知する場合には、ユーザの健康管理に寄与することができ、またセキュリティ分野に用いる場合には、偽ったユーザ名を使用している者に対する警告等を発するなど何らかの対処を行うようにすることができる。
【0015】
前記時間測定手段よって測定された各単語全体の入力時間のうち、最短入力時間の125%より速い場合を、前記比較手段によって異常有無の検出に用いられることを特徴としてもよい。
すなわち、単語全体の入力時間が遅い場合には、各個人の入力タイミングの特徴はあまり出てこないが、単語全体の入力時間が速い場合には、各個人の入力タイミングの特徴がよく出てくるので、より正確な異常有無の検出ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる個人特定情報取得システムによれば、キーボードの入力タイミングを個人特定情報として取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
まず、本発明の概略構成について説明する。
本実施形態における個人特定情報取得システム30は、制御部32と、制御部32に接続された記憶装置34と、制御部32に接続されたキーボード36とを備えている。また、制御部32には、キーボード36から入力された文字を表示させるためのモニタ38が接続されている。
制御部32は、ユーザがキーボード36を使用して所定の文字を入力してきた場合に、入力タイミング(入力されてきたキーコードどうしの間の時間である入力間隔時間)を測定し、タイミング情報として、ユーザごとに、且つ単語ごとにデータテーブル39として記憶装置34に記憶するように動作する。
【0018】
制御部32としては、CPU、ROMおよびRAM等から構成される。CPUは、ROMあるいは他の記憶装置に予め記憶されている制御プログラムを読み出して実行することによって、以下に述べるような文字変換機能40、時間測定機能42、単語認識機能44、比較機能46を実現することができる。
なお、この実施形態では、キーボード36から入力されてきたキーコードを受信するキーボードドライバを制御部32に含めた概念として説明する。
【0019】
キーボード36は、ユーザが所定のキーを押下することで該当するキーのキーコードを出力する。
制御部32では、入力されたキーコードに基いて該当する文字をモニタ38に表示させる文字変換機能40を有している。
なお、ユーザは制御部32の文字変換機能40に基いて英語入力をするか日本語入力をするかを自由に選択できるが、英語か日本語かはモニタ38に実際に表示されるものであるから、制御部32で測定するキーボード36の入力タイミングとしては、ユーザが英語入力をしているか日本語入力をしているかにかかわらず、キーボード36の各キーに対応するキーコードのみに注目して各キーコード間の時間を測定するようにすればよい。
【0020】
制御部32は、入力されてきたキーコードと次に入力されてきたキーコードとの間の時間を測定する時間測定機能42によって入力タイミングを測定する。
時間測定機能の動作の具体例を図2に基いて説明する。
ここではユーザがキーボード36から「system」と入力した場合について説明している。ユーザがキーボード36から「system」と打ち込むと、キーボード36から制御部32へ文字「s」に該当するキーコードと、文字「y」に該当するキーコードと、文字「s」に該当するキーコードと、文字「t」に該当するキーコードと、文字「e」に該当するキーコードと、文字「m」に該当するキーコードとが順番に入力される。
【0021】
制御部32では、最初に入力されてきた「s」に該当するキーコードと、次に入力されてきた「y」に該当するキーコードとの間の時間tsyを算出する。さらに制御部32は、「y」に該当するキーコードと、次に入力されてきた「s」に該当するキーコードとの間の時間tysを測定する。そして、同様に「s」に該当するキーコードと、次に入力されてきた「t」に該当するキーコードとの間の時間tstを測定する。このように、制御部32では、入力されてきたキーコードと次に入力されてきたキーコードとの間の時間を順番に測定する。
【0022】
制御部32は、それぞれのキーコードどうしの組み合わせについて測定した時間を記憶装置34のデータテーブル39に記憶させる。
データテーブル39の構成としては図3に示すような構成となっている。
データテーブル39は、文字に該当するキーコード全種類どうしの組み合わせにおける時間を記憶できるように構成されている。しかも、同じキーコードの組み合わせであってもその組み合わせに係るキーコードが先に入力されたか後に入力されたかで測定される時間も異なるはずであるから、データテーブルは、先に入力されたキーコードの種類と、後に入力されたキーコードの種類とで格子状となるように形成される。図3ではC1が先に入力されたキーコードの種類を表し、C2が後に入力されたキーコードの種類を表している。
【0023】
なお、制御部32は、入力されてくるキーコードに基いて、どこからどこまでが一単語かを認識する単語認識機能44を有している。制御部32は、単語認識機能44によって認識された一単語の中で、キーコード間の時間を測定する。
単語認識機能44は、文字に該当するキーコードが続いている間は一単語として認識し、文字以外に対応するキーコードが入力されてきた場合は、そこで単語の入力が完了したと認識する。文字以外に対応するキーコードに対応するキーとしては、スペースキー、変換キー、ファンクションキー、バックスペースキー等があげられる。
【0024】
さらに単語認識機能44は、キーコードが入力されてきてから次のキーコードが入力されてくるまでの間に所定時間以上経過した場合には、そこまで入力されたキーコードまでを一単語と認識するようにするとよい。
【0025】
制御部32は、単語認識機能44によって認識された単語ごとにデータテーブル39を作成する。すなわち、同じキーコードの組み合わせを含む場合でも、単語が異なればユーザの入力タイミングが異なることが想定されるので、単語ごとに入力タイミングを蓄積させることが好ましいためである。
【0026】
なお、制御部32は、現在キーボード36を使用しているユーザを特定するために、キーボード36からユーザ名を入力させて、ユーザ名を記憶させておくユーザ名記憶部45を有している。
制御部32は、待機状態ではユーザ名を入力するように促す表示画面をモニタ38に表示させておき、ユーザが使用する際にはユーザ名を入力しない限り他の機能が起動しないように制御する。
【0027】
ユーザが、自らのユーザ名を入力した場合には、制御部32では入力されたユーザ名をユーザ名記憶部45に記憶し、ユーザ名に対応するデータテーブル39を作成する。制御部32の時間測定機能42と単語認識機能44は連動して、ユーザが入力してきたキーコードの入力タイミングを測定して対応するユーザ名ごと且つ認識された単語ごとにデータテーブル39に記憶させていく。
【0028】
すでにユーザ名記憶部45に同一のユーザ名が記憶されている場合には、制御部32は、すでに記憶されている同一ユーザ名のデータテーブル39に、認識された単語ごとにデータテーブル39に記憶させていく。
【0029】
また、制御部32には、上述のように作成されたデータテーブル39に基いて、各ユーザごとに現在入力中の入力タイミングと、記憶されている入力タイミングとを比較する比較機能46が設けられている。具体的には、比較機能46は、入力されてきたキーコードの入力タイミングと、同一ユーザ名で同一単語のデータテーブル39に記憶されている入力タイミングとを比較する。
【0030】
制御部32は、比較機能46が比較した結果、現在入力中の入力タイミングが蓄積されてきた同一ユーザの入力タイミングとは異なると判断した場合には、モニタ38にユーザが異なっている旨、またはユーザの体調が悪いようなので気をつけるように促す旨などの画面を表示させるように制御する。
【0031】
また、比較機能46は、現在入力中の単語全体の入力時間を時間測定機能42が測定した場合に、単語全体の入力時間が極端に長いような場合には、この極端に長い入力時間に基づく入力タイミングを過去の入力タイミングのデータテーブル39との比較対象としないようにすることが好ましい。すなわち、全体として遅い入力タイミングで入力されている場合には、個人の特徴があまり出ないので、比較する価値が無いためである。
【0032】
そこで、比較機能46は、入力された単語全体の入力時間と、過去に蓄積したデータテーブル39における単語全体の最短入力時間と比較する。そして、入力された単語全体の入力時間が、過去の最短入力時間と比較して所定の範囲内にある場合には、個人の特徴が正確にでているものとして、入力タイミングどうしを比較する。具体的には、比較機能46は、単語全体の入力時間が、過去の最短入力時間の125%よりも速ければ入力タイミングどうしを比較するようにし、そうでない場合(過去の最短入力時間の125%以上である場合)には入力タイミングどうしを比較しないように動作する。
【0033】
なお、制御部32の時間測定機能42が測定する時間の他の例と、作成されるデータテーブルの他の例について説明する。
図4に、時間測定機能42が測定する入力間隔時間の他の例を示す。
制御部32の時間測定機能42は、単語認識機能44が認識する単語ごとに各キーコード間の時間間隔を測定する。ここでは単語「system」について、「s」に該当するキーコードと、次に入力されてきた「y」に該当するキーコードとの間の時間tsyを算出する。さらに制御部32は、「y」に該当するキーコードと、次に入力されてきた「s」に該当するキーコードとの間の時間tysを測定する。そして、同様に「s」に該当するキーコードと、次に入力されてきた「t」に該当するキーコードとの間の時間tstを測定する。このように、制御部32では、入力されてきたキーコードと次に入力されてきたキーコードとの間の時間を順番に測定する。
【0034】
時間測定機能42は、単語認識機能44が認識した一単語全体の入力に要した時間Twを測定する。そして、時間測定機能42は、単語全体の入力時間Twに対する各キーコード間の時間tsy〜temの割合R1〜R5を算出する。
制御部32がデータテーブル47として記憶させるのは、この単語全体の入力時間に対する各キーコード間の時間の割合である。
【0035】
この例におけるデータテーブルの例を図5に示す。
データテーブル47は、ユーザ名ごと且つ単語ごとに単語全体の入力時間に対する各キーコード間の時間の割合Rn(nは単語を構成するキーコード間の数)が記憶される。
このデータテーブル47によれば、単語全体の入力時間に対する各キーコード間の相対的な時間が各ユーザのキーボードの入力タイミングとして記憶され、個人の特徴が良く現れたデータとして様々な利用に供することができる。
【実施例1】
【0036】
上述した実施形態をさらに具体化した実施例の構成について、図6に基づいて説明する。
本実施例は、個人特定情報取得システムとして通常のパーソナルコンピュータを採用したものである。
パーソナルコンピュータ50は、本体内にCPU52と、記憶装置51とを具備している。記憶装置51としては、半導体メモリであるROM53およびRAM54と、磁気ディスク装置であるハードディスク55とが設けられている。さらにパーソナルコンピュータ50は、周辺機器として表示装置であるモニタ56と、入力手段であるキーボード58と、ポインティングデバイスであるマウス(図示せず)とを備えている。
ハードディスク55内にはOS59(Operating System)が記憶されており、OS59が起動することにより、パーソナルコンピュータ50のシステム全体の制御を実行する。
【0037】
キーボード58は、通常PS/2やUSBといった規格に基いてパーソナルコンピュータ50に接続される。パーソナルコンピュータ50には、規格に基いたキーボード58の接続コネクタ60が設けられており、接続コネクタ60はハードウェアインターフェイスであるキーボードコントローラ61に接続されている。キーボードコントローラ61は、通常1チップのICで構成され、パーソナルコンピュータ50とキーボード58の間の通信を制御する。
【0038】
キーボードコントローラ61が受信したキーコードは、CPU52に送信される。
CPU52では、実行中のOS59のキーボードドライバ機能が、受信したキーコードに基づいて該当する文字に変換する(文字変換機能)。CPU52は、変換した文字を現在実行中のアプリケーションソフトに基いてモニタ56に表示させる。
【0039】
ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、ユーザ名が記憶されている。CPU52は、入力されたユーザ名が以前に記憶されているものであるか否かを判断し、以前に記憶されているものであった場合には同じユーザ名のデータテーブル64に入力タイミングを記憶し、同じユーザ名が記憶されていなかった場合には、このユーザ名に対応する新たなデータテーブル64を作成する。
【0040】
ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、キーボード58から入力されてきたキーコードの入力タイミングを測定し、収集するタイミング情報収集プログラム62が記憶されている。タイミング情報収集プログラムは、キーコード間の時間を測定する時間測定機能と、入力されたキーコードから単語を認識する単語認識機能とを有している。タイミング情報収集プログラム62によって収集された入力タイミングは、ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51内のデータテーブル64に記憶される。タイミング情報収集プログラム62は、CPU52によって読み出されて実行される。
【0041】
ハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、キーボード58から入力されてきたキーコードの入力タイミングと、データテーブル64内に記憶されている入力タイミングとを比較し、現在キーボード入力しているユーザの状態を解析するタイミング情報解析プログラム65が記憶されている。また、タイミング情報解析プログラム65は、ユーザの状態を解析した結果をモニタ56へ表示させる機能を有している。
タイミング情報収集プログラム62は、CPU52によって読み出されて実行される。
【0042】
以下、図7に基いて本実施例の動作について説明する。
キーボード58からユーザがユーザ名を入力すると、CPU52はユーザ名がすでに登録されているかどうかを確認し(ステップS100)、登録されているようであれば対応するユーザ名のデータテーブルにタイミング情報を記憶し、登録されていなければ新たなユーザ名でテータテーブルを作成する(ステップS101)。
【0043】
CPU52は、入力されてきたキーコード間の時間間隔を測定する(ステップS102)。測定された各キーコード間の時間は一旦記憶装置内に記憶される。CPU52は、最初に文字に対応するキーコードが入力されてから文字以外に対応するキーコードが入力される前までの間が1つの単語が入力されているものとして判断し、一単語全体が入力される全体時間を測定する(ステップS104)。
【0044】
CPU52は、各キーコード間の時間を単語全体の入力時間で除算し、単語全体の入力時間に対する各キーコード間の時間の割合を算出する(ステップS106)。CPU52は、算出された単語全体の入力時間に対する各キーコード間の時間の割合を、測定した入力タイミングのタイミング情報として単語ごとのデータテーブル64に記憶させる(ステップS108)。
【0045】
なお、単語ごとにデータテーブル64が作成されるので、CPU52は、以前に作成された同一の単語についてのデータテーブル64が存在している場合には、タイミング情報を記憶させつつ、以前のデータテーブル64に記憶されているタイミング情報と比較する(ステップS110)。
【0046】
CPU52は、比較した結果、以前のデータテーブル64に記憶されているタイミング情報とほぼ同一であればタイミング情報をそのまま蓄積し続ける。
CPU52は、比較した結果、以前のデータテーブル64に記憶されているタイミング情報とは異なっていると判断した場合には、入力タイミングが以前とは異なっている旨をモニタ56に表示して、ユーザに通知する(ステップS114)。
【0047】
なお、CPU52が比較した結果、以前のデータテーブル64に記憶されているタイミング情報とは異なっていると判断した場合には、CPU52は、単に入力タイミングが異なっているとの通知だけではなく、健康状態に問題がある旨をモニタ56に表示させてもよい。このようにすることで、ユーザはキーボード入力を行うだけで自分の健康状態を知ることができるようになり、ユーザの健康管理の維持に寄与する。
【実施例2】
【0048】
次に、上述した実施形態を実施例1とは別の構成で具体化した実施例2について、図8に基いて説明する。
実施例2では、個人特定情報取得システムとして、パーソナルコンピュータ50とネットワーク68を介して接続されたサーバ70とから構成される。なお、上述した実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する場合もある。
【0049】
パーソナルコンピュータ50およびサーバ70は、インターネット等のネットワーク68を介して接続されており、相互に通信可能に設けられている。
パーソナルコンピュータ50とサーバ70には、それぞれネットワーク接続用の通信ポート72が設けられており、データを所定のプロトコルで変換して通信が行われる。
【0050】
パーソナルコンピュータ50もサーバ70も内部の基本的なハードウェア構成はほぼ同様である。
すなわち、サーバ70は本体内にCPU74と、記憶装置71とを具備している。記憶装置71としては、半導体メモリであるROM73およびRAM75と、磁気ディスク装置であるハードディスク76とが設けられている。
ハードディスク76内にはOS77(Operating System)が記憶されており、OS77が起動することにより、サーバ70のシステム全体の制御を実行する。
【0051】
本実施例のパーソナルコンピュータ50のハードディスク55またはROM53等の記憶装置51には、パーソナルコンピュータ50のキーボード58から入力されてきたキーコードの入力タイミングを測定し、収集するタイミング情報収集プログラム62が記憶されている。タイミング情報収集プログラム62は、キーコード間の時間を測定する時間測定機能と、入力されたキーコードから単語を認識する単語認識機能とを有している。タイミング情報収集プログラム62によって収集された入力タイミングのタイミング情報は、通信ポートを介してサーバ70へ送信される。
タイミング情報のサーバ70への送信は、キーコード間の時間を測定する都度行ってもよいし、単語ごとにまとめて行ってもよい。
【0052】
サーバ70のハードディスク76またはRAM75等の記憶装置71には、パーソナルコンピュータ50から送信されてきたタイミング情報をデータテーブル78として記憶されている。すなわち、本実施例では、実際にキーボード58が設けられている装置では端に入力タイミングの測定のみを実行し、測定されたデータは別の装置でデータテーブルとして蓄積されている。
【0053】
また、サーバ70の記憶装置71には、受信したキーコードの入力タイミングと、データテーブル64内に記憶されている入力タイミングとを比較し、現在のユーザの状態を解析するタイミング情報解析プログラム65が記憶されている。また、タイミング情報解析プログラム65は、ユーザの状態を解析した結果をパーソナルコンピュータ50へ送信する機能を有している。
タイミング情報解析プログラム65は、CPU74によって読み出されて実行される。
【0054】
本実施例では、タイミング情報解析プログラム65によって、ネットワークセキュリティにおける個人認証を行うことができる。
つまり、タイミング情報解析プログラム65によって、現在入力中の入力タイミングが過去に記憶しておいたデータテーブル78の入力タイミングと異なる場合には、ネットワークにおけるパーソナルコンピュータ50の接続を認めないなどの処置を施し、その結果をパーソナルコンピュータ50へ送信する。
【0055】
なお、本実施例においては、上述したようにネットワークセキュリティにおける個人認証を実行するものに限定するのではなく、サーバ70を病院または健康保健に関する機関内に設置し、パーソナルコンピュータ50をユーザの自宅や職場等に設置し、タイミング情報解析プログラム65は、データテーブル78に記憶されている入力タイミングと、現在入力中の入力タイミングとを比較して、ユーザの健康状態を解析してパーソナルコンピュータ50に解析した健康状態を表示させるようにしてもよい。
【0056】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の個人特定情報取得システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】時間測定の方法を示す説明図である。
【図3】図2に示した時間測定の方法によるデータテーブルの構成を示す説明図である。
【図4】時間測定の他の方法を示す説明図である。
【図5】図4に示した時間測定の方法によるデータテーブルの構成を示す説明図である。
【図6】本発明をパーソナルコンピュータで実現した実施例1のブロック図である。
【図7】実施例1の動作を説明するフローチャートである。
【図8】本発明をパーソナルコンピュータとサーバとで実現した実施例2のブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
30 個人特定情報取得システム
32 制御部
34,51,71 記憶装置
36,58 キーボード
38,56 モニタ
39,47,64,78 データテーブル
40 文字変換機能
42 時間測定機能
44 単語認識機能
45 ユーザ名記憶部
46 比較機能
50 パーソナルコンピュータ
55,76 ハードディスク
60 接続コネクタ
61 キーボードコントローラ
62 タイミング情報収集プログラム
65 タイミング情報解析プログラム
68 ネットワーク
69,72 通信ポート
70 サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボードと、
キーボードを使用しているユーザのユーザ名を記憶するユーザ名記憶手段と、
キーボードからのキーコードを受信するキーボードドライバと、
キーコードを受信してから次のキーコードを受信するまでの入力間隔時間を測定する時間測定手段と、
キーコードの組み合わせごとの入力間隔時間を記憶するデータテーブルが、ユーザ名記憶手段に記憶されているユーザ名ごとに複数記憶されるデータテーブル記憶手段とを具備することを特徴とする個人特定情報取得システム。
【請求項2】
前記キーボードドライバが受信したキーコードに基いて、入力された単語を認識する単語認識手段が設けられ、
ユーザ名ごとの各データテーブルは、
単語認識手段によって認識された単語ごとに形成されていることを特徴とする請求項1記載の個人特定情報取得システム。
【請求項3】
前記単語認識手段は、
文字に対応するキーコードが入力されている間、文字以外の補助的な用途に用いられるキーコードが入力されてくるまでを1つの単語として認識することを特徴とする請求項2記載の個人特定情報取得システム。
【請求項4】
前記時間測定手段は、前記単語認識手段によって検出された各単語全体の入力時間を測定し、単語全体の入力時間に対する単語中に入力された前記入力間隔時間の割合を算出し、
前記各ユーザ名ごとのデータテーブルは、各単語ごとに単語全体の入力時間に対する単語中に入力された前記入力間隔時間の割合を記憶して形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の個人特定情報取得システム。
【請求項5】
前記入力間隔時間を、前記データテーブル記憶手段に記憶されている同じユーザ名の過去のデータテーブルの内容と比較する比較手段を具備することを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項記載の個人特定情報取得システム。
【請求項6】
前記比較手段による比較の結果、入力間隔時間が過去のデータテーブルの内容と異なることが判明した場合には、入力間隔時間が異常であることを現在キーボード使用中のユーザに通知する通知手段を具備することを特徴とする請求項5記載の個人特定情報取得システム。
【請求項7】
前記時間測定手段よって測定された各単語全体の入力時間のうち、最短入力時間の125%より速い場合を、前記比較手段による比較対象とすることを特徴とする請求項5または請求項6記載の個人特定情報取得システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−9530(P2008−9530A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176832(P2006−176832)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】