説明

偏光フィルムおよび該偏光フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置、並びに偏光フィルムおよび偏光板の製造方法

【課題】偏光フィルム自体の耐久性を高めることを可能とする技術を提供すること。
【解決手段】本発明では、所定の無機化合物が含浸され、前記無機化合物により無機架橋状態が内部に形成された偏光フィルムを提供する。該偏光フィルムは、その内部に無機架橋状態が形成されているため、フィルム自体の機械的強度が高く、従来の偏光フィルムに比べ、耐熱性や耐湿性の飛躍的な向上が実現可能であり、液晶表示装置の主要部材である偏光板に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムに関する。より詳しくは、液晶表示装置に好適に用いることが可能な偏光フィルムおよび該偏光フィルムを用いた偏光板、液晶表示装置、並びに偏光フィルムおよび偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、薄型で低消費電力という特長を持ち、コンピューター用ディスプレイ装置、携帯電話機、テレビ受像機など様々な機器の表示装置として広く用いられている。これらの液晶表示装置は主に液晶をガラス基板等で挟持した液晶セルの両面に、一定方向の偏光のみを通過する偏光板を配置した構造となっている。
【0003】
この液晶表示装置は、使用される用途が大幅に拡大しつつあり、その耐久性の向上が求められていることに伴い、液晶表示装置の各重要部材の耐久性を高めるため等の開発が進みつつある。
【0004】
例えば、特許文献1には、接着性および偏光板の耐久性を向上するために、酸素を含むガスの放電プラズマに接触させた後、表面をアルカリ性水溶液に接触させたTAC(トリアセチルセルロース)フィルムを、保護フィルムとして偏光フィルムに積層させた偏光板が開示されている。
【0005】
ところで、従来、偏光板に広く使用されているポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色した偏光フィルムは、外部から水分が浸入するとヨウ素が脱色し偏光度が低下したり、フィルムの変形による歪みによって均一な特性が崩れたりするなどの問題があり耐久性が不十分であった。
【0006】
そこで、前記のように保護フィルムとしてTACフィルムを用いると、若干の耐久性の向上は見込めるが、TACフィルムの水蒸気バリア性十分でないために、偏光フィルムへの水分の浸入を防ぐことが難しいという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献2では、TACフィルムに替えて、保護フィルムとして熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂フィルムなどの透湿性の小さいフィルムを用いることが提案されている。
【0008】
しかしながら、偏光フィルムと熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂フィルムとをポリビニルアルコール樹脂などの水溶性接着剤を使用して接着させた場合、熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂フィルムの透湿性が低いために接着層の水分が乾燥しにくく接着性が悪くなってしまうという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2008−144107号公報。
【特許文献2】特開平05−212828号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の通り、偏光板の耐久性を向上させるための方法として、偏光フィルムに保護フィルムを積層させる種々の方法が提案されているが、それぞれに前記のような問題を抱えており、耐久性向上の新たな技術が期待されている。
【0011】
また、液晶表示装置の更なる薄型化が求められている今日では、偏光フィルムに保護フィルムを積層させる方法では限界があり、耐久性を向上しつつ薄型化も達成しうるような新たな技術も期待されている。
【0012】
そこで、本発明では、偏光フィルム自体の耐久性を高めることを可能とする技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、まず、所定の無機元素を含む化合物が含浸され、
前記無機元素により無機架橋状態が内部に形成された偏光フィルムを提供する。
本発明に係る偏光フィルムは、その内部に無機架橋状態が形成されているため、フィルム自体の機械的強度が高い。
本発明に用いることができる前記フィルムは、偏光フィルムに用いることができる素材からなるフィルムであれば、その種類は特に限定されないが、光学特性の観点からポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。
本発明に用いることができる前記化合物は、偏光フィルムの内部で無機架橋状態を形成し得る無機元素を含む化合物であれば特に限定されないが、一例としては、ケイ素化合物を好適に用いることができる。
この場合のケイ素化合物の一例としては、ポリシラザンまたはアルコキシシランを挙げることができる。
本発明に係る偏光フィルムは、通常の偏光板に好適に用いることができる。
また、内面に電極が配置された一対の基板と、
該基板間に挟持された液晶層と、を備える液晶パネルと、
前記液晶パネルに光を照射するための光源と、からなる液晶表示装置にも好適に用いることができる。
更に、(a−1)内面に電極が配置された一対の基板と、
(a−2)該基板間に挟持された液晶層と、を備え、
少なくとも第1サブピクセル、第2サブピクセル及び第3サブピクセルを1組としたピクセルが、複数、2次元マトリクス状に配列されたカラー液晶パネルと、
(b)該カラー液晶パネルに光を照射するための光源と、からなり、
前記光源は、第1原色、第2原色及び第3原色から構成された光の三原色の内の第1原色に相当する第1原色光を出射し、
前記カラー液晶パネルには、
(A)第2サブピクセルと同光路上に配置され、
第2原色に相当する第2原色光を発光する第2原色発光粒子から成り、
前記光源から出射された第1原色光によって励起されて第2原色光を発光する第2原色発光領域と、
(B)第3サブピクセルと同光路上に配置され、
第3原色に相当する第3原色光を発光する第3原色発光粒子から成り、
前記光源から出射された第1原色光によって励起されて第3原色光を発光する第3原色発光領域と、
(C)第1サブピクセルと同光路上に配置され、
光源から出射された第1原色光を拡散または通過させる拡散または通過領域と、
が少なくとも備えられたカラー液晶表示装置にも好適に用いることができる。
【0014】
本発明では、次に、フィルムに、超臨界状態下で所定の無機元素を含む化合物を含浸させ、
前記フィルム内部で前記無機元素により無機架橋状態を形成させる工程を少なくとも行う偏光フィルムの製造方法を提供する。
通常、偏光フィルム内に無機化合物を含浸させることは困難であるが、本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、超臨界状態下で含浸処理を行うことで、偏光フィルム内への無機化合物の含浸を成功させた。また、含浸させた化合物中の無機元素が、偏光フィルムの内部で無機架橋状態を形成することで、フィルム自体の機械的強度を向上させることに成功した。
本発明における超臨界状態に用いる媒体としては、前記化合物を偏光フィルム内へ含浸させることができれば、その種類は特に限定されないが、例えば、超臨界二酸化炭素を用いることができる。
本発明に係る製造方法を用いることができるフィルムは、偏光フィルムに用いることができる素材からなるフィルムであれば、その種類は特に限定されないが、光学特性の観点からポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。
本発明に係る製造方法に用いることができる前記化合物は、偏光フィルムの内部で無機架橋状態を形成し得る無機元素を含んでいれば特に限定されないが、一例としては、ケイ素化合物を好適に用いることができる。
この場合のケイ素化合物の一例としては、ポリシラザンまたはアルコキシシランを挙げることができる。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、偏光板の製造時に一工程として行うことで、偏光板の製造にも好適に用いることができる。
【0015】
ここで本発明で用いる技術用語を説明する。
「超臨界状態」とは、物質を加圧および加熱してある特定の圧力・温度領域を越えたときに液体であっても気体のような含浸性・拡散性・浸透性・粘性に加え液体のような流動性を併せ持つ特異的な状態をいう。例えば、二酸化炭素の場合には31.1℃、7.38MPa以上でこの状態となり、拡散性と溶解性が非常に高くなるため、この超臨界二酸化炭素を溶媒として用いることで、抽出作用や含浸作用を飛躍的に高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る偏光フィルムは、その内部に無機架橋状態が形成されているため、フィルム自体の機械的強度が高く、従来の偏光フィルムに比べ、耐熱性や耐湿性の飛躍的な向上が実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0018】
<偏光フィルム>
本発明に係る偏光フィルムは、所定の無機元素を含む化合物が含浸され、前記無機元素により無機架橋状態が内部に形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に用いることができるフィルムは、偏光フィルムに用いることができる素材からなるフィルムであれば、その種類は特に限定されず、あらゆる素材からなるフィルムを自由に選択して用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート(PC)、ビニロン、環状オレフィンポリマー、ポリスチレンナイロン、酢酸ブチルセルロール、セロハン、熱可塑性セルロース系樹脂からなるフィルムを、二色性染料やヨウ素等で染色し、一軸延伸や二軸延伸等により配向させたものを用いることができる。この中でも特に本発明においては、耐熱性や光学特性の観点からポリビニルアルコール系フィルムを好適に用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)共重合体フィルム、これらの部分ケン化または完全ケン化フィルム、ポリビニルアルコールの部分ポリエン化フィルムなどを挙げることができる。
【0020】
本発明に係る偏光フィルムに含浸させ得る前記化合物は、該化合物に含まれる無機元素がフィルム内で無機架橋状態を形成することができれば、その種類は特に限定されず、あらゆる化合物を1種または2種以上選択して自由に用いることができる。例えば、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)などのアルコキシド化合物を挙げることができる。この中でも特に本発明においては、ケイ素化合物が好適である。ケイ素化合物の種類も特に限定されず、あらゆるケイ素化合物を1種または2種以上選択して自由に用いることができるが、特に、アルコキシシラン化合物やポリシラザン化合物が好適である。アルコキシラン化合物の一例としては、下記化学式(1)に示すテトラエトキシシラン(TEOS)を、ポリシラザン化合物の一例としては、下記化学式(2)に示すペルヒドロポリシラザン(PHPS)を好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく水素原子の一部をアルキル基などで置換した化合物も用いることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
本発明に係る偏光フィルムの内部では、含浸させた前記化合物に含まれる無機元素が、無機架橋状態を形成する。この無機架橋状態により、偏光フィルムの機械的強度が上昇し、従来の偏光フィルムに比べ、耐熱性や耐湿性が著しく向上する。無機架橋状態の具体的な形成過程を、テトラエトキシシラン(TEOS)およびペルヒドロポリシラザン(PHPS)を含浸させた場合を例に説明する。
【0024】
テトラエトキシシラン(TEOS)およびペルヒドロポリシラザン(PHPS)は、偏光フィルムの内部に含浸させると、下記化学式(3)および(4)に示すように、加水分解反応によって、酸化ケイ素に変化する。そして、この酸化ケイ素が、偏光フィルムの内部で、シリカネットワークを形成することにより、無機架橋状態が形成され、偏光フィルムの機械的強度が大幅に向上する。なお、この無機架橋状態は、原子吸光分析法やX線蛍光分析法などによる元素分析で確認することができる。
【0025】
【化3】

【0026】
【化4】

【0027】
<偏光板>
本発明に係る偏光フィルムは、従来の偏光フィルムに比べ、耐熱性や耐湿性が著しく高いため、偏光板の一部材として好適に用いることができる。
【0028】
本発明に係る偏光フィルムは、偏光フィルム自体の機械的強度が高いため、従来の偏光フィルムのように保護フィルムを積層させる必要がなく、偏光板の薄型化に貢献することが可能である。勿論、従来通り、偏光フィルムの片面または両面に、光学的に等方性のある保護フィルムを積層させて用いることも可能であり、その場合には、該保護フィルムによって、一層耐熱性や耐湿性を高めることが可能である。
【0029】
保護フィルムを用いる場合、その種類は特に限定されず、公知のあらゆる素材からなる保護フィルムを自由に選択して用いることができる。例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド、シクロ系またはノルボルネン系ポリオレフィンなどからなる保護フィルムを挙げることができる。
【0030】
また、本発明に係る偏光板は、少なくとも本発明に係る偏光フィルムを備えていれば、他の構成は特に限定されず、公知の偏光板に用いる構成を自由に採用することが可能である。例えば、ハードコート層、反射防止層、紫外線吸収層、アンチグレア層、アンチリフレクション層、ハーフリフレクション層、反射層、蓄光層、拡散層、エレクトロルミネッセンス層、視野角拡大層、輝度向上層などの機能層を積層させることも可能である。なお、これらの機能層は、目的に応じて、1種または2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0031】
<液晶表示装置・カラー液晶表示装置>
本発明に係る偏光フィルムは、従来の偏光フィルムに比べ、耐熱性や耐湿性が著しく高いため、液晶表示装置の一部材として好適に用いることができる。以下、液晶表示装置の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明に係る液晶表示装置1の一実施形態の概略構成を示す断面模式図である。本発明に係る液晶表示装置1は、大別すると、一対の基板13と、該基板13間に挟持された液晶層14と、からなる液晶パネル10と、該液晶パネル10に光を照射するための光源20と、からなる。
【0033】
本発明に係る液晶表示装置1の前記液晶パネル10には、前述した本発明に係る偏光フィルム11を備えていることを特徴とする。液晶パネル10における偏光フィルム11の配置場所は、少なくとも液晶層14を挟んで入射側偏光フィルムと出射側偏光フィルムとして配置されれば特に限定されず、通常の液晶表示装置における偏光フィルムの配置に準じて自由に設計することができる。なお、偏光フィルム11の詳細な構成は、前述と同様であるため、ここでは説明を割愛する。
【0034】
それぞれの基板13は、内面に電極12がそれぞれ配置されている。また、必要に応じて、電極12と液晶層14との間に液晶分子を一定方向に並べるための配向膜15、電極12と基板13との間または基板13と偏光フィルム11との間にカラー表示するためのカラーフィルター16、など通常の液晶表示装置に用いられる部材を自由に選択して用いることができる。
【0035】
基板13は、特に限定されず、通常の液晶表示装置に用いられているものを自由に選択して用いることができる。例えば、ガラス基板、石英基板、半導体基板、およびこれらの表面に絶縁膜を形成した基板、などを挙げることができる。この中でも製造コスト低減の観点からは、ガラス基板を用いることが好ましい。ガラス基板の具体例としては、高歪点ガラス、ソーダガラス(NaO・CaO・SiO)、硼珪酸ガラス(NaO・B・SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、鉛ガラス(NaO・PbO・SiO)、無アルカリガラス、などが挙げられる。その他、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、などの有機ポリマーからなる基板を採用することも可能である。
【0036】
それぞれの基板13の内面に配置される電極12も、特に限定されず、通常の液晶表示装置に用いられているものを自由に選択して用いることができる。例えば、インジウムと錫との合金酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)などを挙げることができる。
【0037】
それぞれの基板13の内面に配向膜15を配置する場合、この配向膜15も特に限定されず、通常の液晶表示装置に用いられているものを自由に選択して用いることができる。例えば、ポリイミドなどの高分子からなる配向膜15を挙げることができる。
【0038】
本発明に係る液晶パネル10に、カラーフィルター16を配置する場合、このカラーフィルター16も特に限定されず、通常の液晶表示装置に用いられているものを自由に選択して用いることができる。例えば、マトリックス状にパターニングされた遮光膜(ブラックマトリックス)と、この遮光膜の開口部分、すなわち画素となる部分に対応して配列されたR(赤)、G(緑)、B(青)の各サブ画素と、遮光膜及び各要素を保護する保護膜とを備えるカラーフィルターなどを挙げることができる。
【0039】
液晶層14の具体的構成も特に限定されず、通常の液晶表示装置に用いられている構造に準じて自由に設計することができる。例えば、図1に示すように、スペーサー17により所定間隔を離して対向配置された一対の基板13との間に、液晶材料を注入してなる構成を挙げることができる。スペーサー17は、一対の基板13間を所定距離保持するためのものである。また、液晶層14を構成する液晶も、通常用いられている液晶を自由に選択して用いることができる。例えば、ネマティック液晶、スメクティック液晶、コレスティック液晶、などが挙げられる。また、その駆動方法も特に限定されず、通常用いられている駆動方法を自由に選択して用いることができる。例えば、TN(Twisted Nematic)方式、VA(Virtical Alignment)方式、IPS(In-Place-Switching)方式、などが挙げられる。
【0040】
本発明に係る光源20も、特に限定されず、通常の液晶表示装置に用いられているものを自由に選択して用いることができる。例えば、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)又はLED(Light Emitting Diode)を挙げることができる。図1では、光源20を直下式に配置する場合を例として示しているが、液晶表示装置1の一端側(エッジ側)に冷陰極管又はLED等の光源を配置し、ガラスやプラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)からなる導光板等を介して液晶表示装置1の全面に光を行き渡らせる方式(エッジ式)で配置することも自由である。また、光源20から出射された光の光路上には、拡散シート、プリズムシートなどの光学機能シート21を配置することも可能である。
【0041】
図2は、本発明に係るカラー液晶表示装置100の一実施形態の概略構成を示す断面模式図である。本発明に係るカラー液晶表示装置100は、大別すると、(a−1)一対の基板13と、(a−2)該基板13間に挟持された液晶層14と、を備え、第1〜3ピクセルを1組としたピクセルが、複数、2次元マトリックス状に配列されたカラー液晶パネル10と、該カラー液晶パネル10に光を照射するための光源20と、からなる。
【0042】
本発明に係るカラー液晶表示装置100の前記液晶パネル10には、図1に示す液晶表示装置1と同様に、前述した本発明に係る偏光フィルム11を備えていることを特徴とする。液晶パネル10における偏光フィルム11の配置場所は、少なくとも液晶層14を挟んで入射側偏光フィルムと出射側偏光フィルムとして配置されれば特に限定されず、通常の液晶表示装置における偏光フィルムの配置に準じて自由に設計することができる。なお、偏光フィルム11の詳細な構成は、前述と同様であるため、ここでは説明を割愛する。また、基板13、電極12、液晶層14、配向膜15、などは、図1に示す前記液晶表示装置1と同様に、通常の液晶表示装置に用いられているものを自由に選択して用いることができる。
【0043】
本発明に係るカラー液晶表示装置100の光源20は、第1原色、第2原色及び第3原色から構成された光の三原色の内の第1原色に相当する第1原色光を出射する。例えば、第1原色光を青色の光(例えば、波長λ1:440nm乃至460nmの範囲内のいずれかの値の波長)、第2原色を緑色の光、第3原色を赤色の光、と構成することができる。第1〜3原色の色はこれに限定されるものではなく、必要に応じて、第1原色、第2原色、第3原色を、それぞれ、赤色、緑色、青色とすることもでき、あるいは第1原色、第2原色、第3原色を、それぞれ、緑色、赤色、青色とすることもできる。
【0044】
光源20の具体的な装置は、任意の第1原色光を出射することができればその種類は限定されず、公知の光源を自由に選択して用いることができる。例えば、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、冷陰極線型の蛍光ランプ(CCFL)、熱陰極線型の蛍光ランプ(HCFL)、外部電極型の蛍光ランプ(EEFL,External Electrode Fluorescent Lamp)、有機エレクトロルミネッセンス発光装置、無機エレクトロルミネッセンス発光装置、などを挙げることができる。なお、これらの発光ダイオード(LED)、蛍光ランプ、エレクトロルミネッセンス発光装置の数は本質的に任意であり、要求される仕様に基づき決定すればよい。
【0045】
本発明に係るカラー液晶表示装置100のカラー液晶パネル10には、前記本発明に係る偏光フィルム11の他に、(A)第2原色発光領域102、(B)第3原色発光領域103、(C)拡散または通過領域、を少なくとも備えることを特徴とする。以下、それぞれの領域について、詳細に説明する。
【0046】
(A)第2原色発光領域102
第2原色発光領域102は、カラー液晶パネル10の第2ピクセルと同光路上に配置され、第2原色に相当する第2原色光を発光する第2原色発光粒子から成る領域である。この第2原色発光領域102では、これを構成する前記第2原色発光粒子が、光源20から出射された第1原色光によって励起されて第2原色光を発光する。
【0047】
第2原色発光粒子は、光源20から出射された第1原色光によって励起されて第2原色光を発光し得る粒子であれば、その種類は特に限定されず、公知のあらゆる発光粒子を自由に選択して用いることができる。例えば、第2原色発光粒子を、緑色を発光する蛍光体粒子とする場合、かかる緑色発光蛍光体として、(ME:Eu)Ga、(M:RE)x(Si,Al)12(O,N)16、(M:Tb)x(Si,Al)12(O,N)16、(M:Yb)x(Si,Al)12(O,N)16、LaPO:Ce,Tb、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、MgAl1119:Ce,Tb、YSiO:Ce,Tb、MgAl1119:CE,Tb,Mn、(Sr,Ba)SiO:Euを挙げることができる。ここで、「ME」は、Ca、Sr及びBaから成る群から選択された少なくとも1種類の原子を意味し、「M」は、Li、Mg及びCaから成る群から選択された少なくとも1種類の原子を意味し、「RE」は、Tb及びYbを意味する(以下同じ)。
【0048】
(B)第3原色発光領域103
第3原色発光領域103は、カラー液晶パネル10の第3ピクセルと同光路上に配置され、第3原色に相当する第3原色光を発光する第3原色発光粒子から成る領域である。この第3原色発光領域103では、これを構成する前記第3原色発光粒子が、光源20から出射された第1原色光によって励起されて第3原色光を発光する。
【0049】
第3原色発光粒子は、光源20から出射された第1原色光によって励起されて第3原色光を発光し得る粒子であれば、その種類は特に限定されず、公知のあらゆる発光粒子を自由に選択して用いることができる。例えば、第3原色発光粒子を、赤色を発光する蛍光体粒子とする場合、かかる赤色発光蛍光体として、(ME:Eu)S、(M:Sm)x(Si,Al)12(O,N)16、MESi:Eu、(Ca:Eu)SiN、(Ca:Eu)AlSiN、Y:Eu、YVO:Eu、Y(P,V)O:Eu、3.5MgO・0.5MgF・Ge:Mn、CaSiO:Pb,Mn、MgAsO11:Mn、(Sr,Mg)(PO:Sn、LaS:Eu、YS:Euを挙げることができる。
【0050】
これらの第2原色発光領域102および第3原色発光領域103は、シアン色を発光する構成としてもよく、この場合には、緑色発光蛍光体粒子(例えば、LaPO:Ce,Tb、BaMgAl1017:Eu,Mn、ZnSiO:Mn、MgAl1119:Ce,Tb、YSiO:Ce,Tb、MgAl1119:CE,Tb,Mn)と青色発光蛍光体粒子(例えば、BaMgAl1017:Eu、BaMgAl1627:Eu、Sr:Eu、Sr(POCl:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)(POCl:Eu、CaWO、CaWO:Pb)を混合したものを用いればよい。
【0051】
蛍光体粒子から成る第2原色発光領域102および第3原色発光領域103は、蛍光体粒子から調製された蛍光体粒子組成物を使用し、例えば、赤色の感光性の蛍光体粒子組成物(赤色発光蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、赤色発光蛍光体層から成る第3原色発光領域103を形成し、次いで、緑色の感光性の蛍光体粒子組成物(緑色発光蛍光体スラリー)を全面に塗布し、露光、現像して、緑色発光蛍光体層から成る第2原色発光領域102を形成することができる。なお、第3原色発光領域103の形成と第2原色発光領域102の形成の順序を逆にしてもよい。あるいは又、赤色発光蛍光体スラリー、緑色発光蛍光体スラリーを順次塗布した後、各蛍光体スラリーを順次露光、現像して、第3原色発光領域103、第2原色発光領域102を形成してもよいし、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、フロート塗布法、沈降塗布法、蛍光体フィルム転写法等により第2原色発光領域102、第3原色発光領域103を形成してもよい。
【0052】
その他、第2原色発光領域102や第3原色発光領域103を構成する材料は、発光蛍光粒子に限定されず、例えば、間接遷移型のシリコン系材料において、直接遷移型のように、キャリアを効率良く光へ変換させるために、キャリアの波動関数を局所化し、量子効果を用いた、2次元量子井戸構造、1次元量子井戸構造(量子細線)、0次元量子井戸構造(量子ドット)等の量子井戸構造を適用した発光粒子を挙げることもできる。また、半導体材料に添加された希土類原子は殻内遷移により鋭く発光することが知られており、このような技術を適用した発光粒子を挙げることもできる。
【0053】
第2原色発光領域102および第3原色発光領域103は、それぞれ第2サブプクセルおよび第3サブピクセルと同光路上に配置されていれば、液晶層14を挟んで入射側または出射側のどちらに配置してもよい。
【0054】
第2原色発光領域102および第3原色発光領域103を液晶層14より出射側に配置する場合、図示しないが、第2原色発光領域102および第3原色発光領域103と出射側の電極12との間に、第1原色光を第2原色発光領域102へと集光する第2集光部材、及び、第1原色光を第3原色発光領域103へと集光する第3集光部材を更に備えることが望ましい。これらの第2集光部材および第3集光部材により、視差の発生や光学的クロストークの発生を確実に防止することができるからである。この場合の第2集光部材および第3集光部材は、屈折率分布型レンズが多数配列されて成るレンズアレイ、レンチキュラーレンズ又はマイクロレンズ・アレイが一体化されて成る構成とすることができる。
【0055】
一方、第2原色発光領域102および第3原色発光領域103を液晶層14より入射側に配置する場合、図示しないが、第2原色発光領域102および第3原色発光領域103と入射側の電極12との間に、第2原色発光領域102から発光された第2原色光を第2サブピクセルへと集光する第2集光部材、及び、第3原色発光領域103から発光された第3原色光を第3サブピクセルへと集光する第3集光部材を更に備えることが望ましい。これらの第2集光部材および第3集光部材により、視差の発生や光学的クロストークの発生を確実に防止することができるからである。
【0056】
(C)拡散または通過領域
拡散または通過領域101は、第1サブピクセルと同光路上に配置され、光源20から出射された第1原色光を拡散または通過させる領域である。この領域は、液晶層14より出射側に配置する場合、第1原色光を拡散させる拡散領域(図2中符号101)となり、液晶層14より入射側に配置する場合、第1原色光を通過させる通過領域(図示せず)となる。
【0057】
拡散領域101は、光源20から出射された第1原色光を拡散させることができれば、その構成は特に限定されないが、例えば、透明バインダー樹脂中に微粒子から成る光拡散剤が分散されて成り、例えば、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった各種の塗布法によって形成することができる。光拡散剤は、光源20からの光を拡散させる性質を有する粒子であり、無機材料粒子あるいは有機材料粒子から構成することができる。無機材料粒子を構成する無機材料として、具体的には、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、マグネシウムシリケート、又は、これらの混合物を例示することができる。一方、有機材料粒子を構成する樹脂として、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、メラミン系樹脂を例示することができる。光拡散剤の形状として、例えば、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状を挙げることができる。
【0058】
その他、拡散領域101は、光拡散シート(光拡散フィルム)から構成してもよい。
【0059】
拡散領域101と出射側の電極12との間には、図示しないが、第1原色光を拡散領域101へと集光する第1集光部材を更に備えることが望ましい。この第1集光部材により、視差の発生や光学的クロストークの発生を確実に防止することができるからである。この場合の第1集光部材は、屈折率分布型レンズが多数配列されて成るレンズアレイ、レンチキュラーレンズ又はマイクロレンズ・アレイが一体化されて成る構成とすることができる。
【0060】
通過領域と入射側の電極12との間には、通過領域を通過した第1原色光を第1サブピクセルへと集光する第1集光部材を更に備えることが望ましい。この第1集光部材により、視差の発生や光学的クロストークの発生を確実に防止することができるからである。
【0061】
本発明に係るカラー液晶表示装置100において、第2原色発光領域102と第3原色発光領域103との間の領域、拡散または通過領域と第2原色発光領域102との間の領域、拡散または通過領域と第3原色発光領域103との間の領域には、光吸収層104(所謂ブラックマトリクス)を形成することができる。光吸収層104を構成する材料としては、第1原色光、第2原色光、第3原色光を99%以上吸収する材料を選択することが好ましい。例えば、カーボン、金属薄膜、耐熱性有機樹脂、ガラスペースト等の材料を挙げることができ、具体的には、感光性ポリイミド樹脂、酸化クロムや、酸化クロム/クロム積層膜を例示することができる。光吸収層104は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法とエッチング法との組合せ、真空蒸着法やスパッタリング法、スピンコーティング法とリフトオフ法との組合せ、スクリーン印刷法、リソグラフィ技術等、使用する材料に依存して適宜選択された方法にて形成することができる。
【0062】
第2原色発光領域102、第3原色発光領域103、および拡散または通過領域の光源20側には、第1原色光を透過し、第2原色光及び第3原色光を反射する光反射膜18を配置することが好ましい。第2原色光及び第3原色光を反射する光反射膜を配置することによって、第2原色発光領域及び第3原色発光領域にて発光した第2原色光及び第3原色光が、第2サブピクセル及び第3サブピクセルに侵入することが無くなり、効率良く第2原色発光領域及び第3原色発光領域から第2原色光及び第3原色光が出射され、明るく明瞭な画像を得ることができる。
【0063】
本発明に係るカラー液晶表示装置100に光反射膜18を配置する場合、第1原色光を透過し、第2原色光及び第3原色光を反射するものであれば特に限定されず、公知の光反射膜を自由に選択して用いることができる。例えば、酸化シリコン膜、酸化ニオブ膜、低屈折率材料と高屈折率材料とから成る多層積層膜(例えば、酸化シリコン膜と酸化ニオブ膜とから成る多層積層膜)から構成することができ、例えば、各種の塗布法やスパッタリング法等の物理的気相成長法によって形成することができる。また、フィルム状の光反射膜を積層することで配置してもよい。
【0064】
また、第2原色発光領域102、第3原色発光領域103、および拡散または通過領域や、第1集光部材、第2集光部材、および第3集光部材には、平滑化膜19が積層配置されていることが好ましい。平滑化膜19を配置することによって、第2原色発光領域102、第3原色発光領域103、および拡散または通過領域や、第1集光部材、第2集光部材、および第3集光部材の表面の凹凸や厚さの相違を吸収することができ、一層効果的に明るく明瞭な画像を得ることができる。
【0065】
本発明に係るカラー液晶表示装置100に平滑化膜19を配置する場合、その種類は特に限定されず、公知の平滑化膜を自由に選択して用いることができる。例えば、アクリル樹脂やシリコーン樹脂から構成することができ、例えば、各種の塗布法によって形成することができる。また、フィルム状の平滑化膜を積層することで配置してもよい。
【0066】
本発明に係るカラー液晶表示装置100において、拡散または通過領域の大きさと第1サブピクセルが実際に光を通過させる部分の大きさとは、同じ大きさであってもよいし、前者が大きくてもよいし、後者が大きくてもよい。また、拡散または通過領域の外形形状と第1サブピクセルが実際に光を通過させる部分の外形形状とは、同形であってもよいし、相似形であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0067】
同様に、第2原色発光領域102の大きさと第2サブピクセルが実際に光を通過させる部分の大きさとは、同じ大きさであってもよいし、前者が大きくてもよいし、後者が大きくてもよい。また、第2原色発光領域102の外形形状と第2サブピクセルが実際に光を通過させる部分の外形形状とは、同形であってもよいし、相似形であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0068】
同様に、第3原色発光領域103の大きさと第3サブピクセルが実際に光を通過させる部分の大きさとは、同じ大きさであってもよいし、前者が大きくてもよいし、後者が大きくてもよい。また、第3原色発光領域103の外形形状と第3サブピクセルが実際に光を通過させる部分の外形形状とは、同形であってもよいし、相似形であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0069】
本発明に係るカラー液晶表示装置100において、1つのピクセルは、少なくとも第1サブピクセル、第2サブピクセル及び第3サブピクセルを備えていればよく、第4のサブピクセル、第5のサブピクセル・・・を更に備えていてもよい。第4のサブピクセル、第5のサブピクセル・・・が表示すべき色は、カラー液晶表示装置100に要求される仕様に基づき決定すればよく、例えば、輝度向上のための白色、色再現範囲を拡大するための補色、色再現範囲を拡大するためにイエロー色やシアン色、マゼンタ色を例示することができる。
【0070】
この場合、第i番目の発光領域(i=4,5・・・)は、第i番目のサブピクセルと同光路上に配置され、第i番目の色に相当する光を発光する発光粒子から成り、光源20から出射された第1原色光によって励起されて第i番目の色に相当する光を発光する領域となる。
【0071】
なお、本発明に係るカラー液晶表示装置100のサブピクセルの配列状態も特に限定されず、通常の液晶表示装置に準じて自由に設計することができる。例えば、デルタ配列、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、レクタングル配列を挙げることができる。
【0072】
以上説明した本発明に係るカラー液晶表示装置100は、カラーフィルターを用いなくともカラー表示が可能であるが、画像の色純度を一層向上させるために、カラーフィルターを配置することも可能である。
【0073】
<偏光フィルムの製造方法>
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、フィルムに、超臨界状態下で所定の無機元素を含む化合物を含浸させ、前記フィルム内部で前記無機元素により無機架橋状態を形成させる工程を少なくとも行う方法である。
【0074】
通常、偏光フィルム内に無機化合物を含浸させることは困難であるが、本発明に係る偏光フィルムの製造方法では、超臨界状態下で含浸処理を行うことで、偏光フィルム内への無機化合物の含浸を可能としている。
【0075】
本発明に係る製造方法に用いることができるフィルムは、偏光フィルムに用いることができる素材からなるフィルムであれば、その種類は特に限定されず、あらゆる素材からなるフィルムを自由に選択して用いることができる。例えば、ポリカーボネート(PC)、ビニロン、ポリビニルアルコール、環状オレフィンポリマー、ポリスチレンナイロン、酢酸ブチルセルロール、セロハン、熱可塑性セルロース系樹脂からなるフィルムを、二色性染料やヨウ素等で染色し、一軸延伸や二軸延伸等により配向させたものを用いることができる。この中でも特に本発明においては、耐熱性や光学特性の観点からポリビニルアルコール系フィルムを好適に用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)共重合体フィルム、これらの部分ケン化または完全ケン化フィルム、ポリビニルアルコールの部分ポリエン化フィルムなどを挙げることができる。
【0076】
超臨界状態に用いる媒体の種類も特に限定されず、後述する化合物を偏光フィルム内へ含浸させることが可能な媒体であれば、自由に選択して用いることができる。例えば、二酸化炭素(CO)、エタン(C)、エチレン(C)、一酸化窒素(NO)、キセノン(Xe)、クロロトリフルオロメタン(CFCl)、モノフルオロメタン(CHF)、メタン(CH)、プロパン(C)、プロピレン(C)、クリプトン(Kr)、などが挙げられる。この中でも特に本発明においては、エタン(C)、エチレン(C)、一酸化窒素(NO)、キセノン(Xe)、クロロトリフルオロメタン(CFCl)、モノフルオロメタン(CHF)が好ましく、二酸化炭素(CO)がより好ましい。それぞれの臨界温度および臨界圧力等を下記表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
本発明に係る製造方法において、偏光フィルムに含浸させる前記化合物は、該化合物に含まれる無機元素がフィルム内で無機架橋状態を形成することができれば、その種類は特に限定されず、あらゆる化合物を1種または2種以上選択して自由に用いることができる。例えば、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)などのアルコキシド化合物を挙げることができる。この中でも特に本発明においては、ケイ素化合物が好適である。ケイ素化合物の種類も特に限定されず、あらゆるケイ素化合物を1種または2種以上選択して自由に用いることができるが、特に、アルコキシシラン化合物やポリシラザン化合物が好適である。アルコキシラン化合物の一例としては、前記化学式(1)に示すテトラエトキシシラン(TEOS)を、ポリシラザン化合物の一例としては、前記化学式(2)に示すペルヒドロポリシラザン(PHPS)を好適に用いられるが、これらに限定されるものではなく水素原子の一部をアルキル基などで置換した化合物も用いることができる。
【0079】
これらの化合物は、通常、各化合物に適応可能な溶媒に溶解させた状態で用いる。例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)を含浸させる場合には、溶媒としてエチルアルコールなどを、ペルヒドロポリシラザン(PHPS)を含浸させる場合には、溶媒としてキシレンなどを好適に用いることができる。また、反応性を高めるために遷移金属やアミン化合物などの触媒成分を添加して、反応温度を低下させることも可能である。
【0080】
本発明に係る製造方法においては次に、偏光フィルムの内部で、含浸させた前記化合物に含まれる無機元素により無機架橋状態を形成させる。この無機架橋状態を形成させることにより、偏光フィルムの機械的強度を上昇させ、従来の偏光フィルムに比べ、耐熱性や耐湿性が著しく向上させることができる。
【0081】
例えば、前記化合物としてテトラエトキシシラン(TEOS)またはペルヒドロポリシラザン(PHPS)を用いた場合、含浸されたテトラエトキシシラン(TEOS)またはペルヒドロポリシラザン(PHPS)が、溶液中またはフィルム内部に含有される水分と反応することで、前記化学式(3)および(4)に示すように、加水分解反応によって、酸化ケイ素に変化する。そして、この酸化ケイ素が、偏光フィルムの内部で、シリカネットワークを形成することにより、無機架橋状態が形成され、偏光フィルムの機械的強度が大幅に向上する。なお、この無機架橋状態は、原子吸光分析法やX線蛍光分析法などによる元素分析で確認することができる。
【0082】
以上説明した含浸・架橋形成工程の具体的な流れを、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明に係る製造方法における含浸・架橋形成工程で用いる超臨界処理装置の概要を示す模式図である。
【0083】
図3中、高圧容器Iには、予め処理を行う偏光フィルム(図示せず)を入れておく。この高圧容器Iに、ボンベIIより供給され、高圧送液ポンプIIIで加圧された液化二酸化炭素を送り込む。含浸する化合物と補助溶媒の溶液は、別の高圧送液ポンプIVにより前記高圧容器Iに送られる。高圧容器I内部は、圧力調整バルブVによって規定の圧力に制御され、また熱交換用コイルVIを備えた恒温槽VIIによって容器温度を制御することで、高圧容器I内部を超臨界状態に保持する。そして、高圧容器I内部で偏光フィルムが前記化合物と補助溶媒を含む超臨界二酸化炭素に浸漬されることで、偏光フィルム内部に前記化合物が浸透し、前記化合物に含まれた無機化合物により、偏光フィルム内部に無機架橋状態が形成される。
【0084】
本発明に係る製造方法では、通常の偏光フィルムの製造方法と同様に、膨潤・染色・延伸・固定・乾燥といった一連の工程を行うことも可能である。膨潤工程を設けずに染色工程により膨潤を行ったり、染色工程と延伸工程とを同時に行ったり、染色工程を延伸工程後に行ったりする方法のいずれも採用可能である。より具体的には、例えば、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムの溶液に浸漬した後、一軸に延伸する方法、一軸に延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムの溶液に浸漬する方法等を挙げることができる。ヨウ素を吸着配向させたポリビニルアルコール系樹脂の一軸延伸フィルムを、ヨウ化カリウムおよびホウ酸を含む水溶液で処理する方法としては、例えば、このフィルムをヨウ化カリウムおよびホウ酸を含む水溶液に浸漬する方法を挙げることができる。
【0085】
このような従来の一連の工程を行い偏向フィルムを作製した後に、前記含浸・架橋形成工程を行うことが好ましい。
【0086】
<偏向板の製造方法>
本発明に係る偏光フィルムの製造方法は、偏光板の製造時に一工程として行うことで、偏光板の製造に好適に用いることができる。例えば、前記偏光フィルムの製造方法により、偏光フィルムを作製し、該偏光フィルムに、必要に応じてハードコート層、反射防止層、紫外線吸収層、アンチグレア層、アンチリフレクション層、ハーフリフレクション層、反射層、蓄光層、拡散層、エレクトロルミネッセンス層、視野角拡大層、輝度向上層などの機能層を、公知の接着剤を用いて貼り合わせ、次いで、該接着剤を電子線等により固化させることにより偏光板を製造することができる。
【0087】
また、本発明に係る偏光フィルムの製造方法で製造した偏光フィルムは、偏光フィルム自体の機械的強度が高いため、従来の偏光フィルムのように保護フィルムを積層させる必要はないが、耐熱性や耐湿性を一層高めるために、偏光フィルムの片面または両面に、光学的に等方性のある保護フィルムを、前記機能層に加えて積層させて、偏光板を製造することも可能である。
【実施例】
【0088】
本実施例では、含浸・架橋形成工程を行い、内部に無機架橋状態を形成した偏光フィルムと、含浸・架橋形成工程を行わず、内部に無機架橋状態が形成されていない偏光フィルムとの、湿度変化における耐久性の違いを調べた。
【0089】
<偏光フィルムの作製>
ポリビニルアルコールフィルムを膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥の順に処理して偏光フィルムを作製した。すなわち、まず、ポリビニルアルコールフィルムを30℃の水中に3分間浸漬させて膨潤させた。次に、ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比を1/10に固定し、ヨウ素濃度30〜50g/Lの範囲で適宣選択した30℃のホウ酸4重量%の水溶液中に5分間浸漬させ、染色した。その後、ホウ酸4重量%の50℃の水溶液中で延伸倍率が5倍となるように一軸延伸を行った。続いて、ヨウ化カリウム40g/L、ホウ酸40g/Lの40℃の水溶液中にポリビニルアルコールフィルムが延伸された状態を保持して5分間浸漬させて固定処理を行った。この後PVAフィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥することで偏光フィルムを作製した。
【0090】
次に、前記で作製した偏光フィルムを、前記図3に示す超臨界処理装置の高圧容器Iに入れ、高圧送液ポンプIIIで加圧された液化二酸化炭素を送り込んだ。同時に、キシレン溶媒中に20重量%のペルヒドロポリシラザン(PHPS)が溶解したPHPS溶液(「NP110−20」、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製)を更にキシレンで10倍に希釈して2重量%濃度PHPS溶液としたものを、前記液化二酸化炭素に対して体積比20%の比率になるように、別の高圧送液ポンプIVにより前記高圧容器Iに送り込んだ。
【0091】
PHPS溶液を含む超臨界二酸化炭素を高圧容器Iに充填した状態で、温度70℃、圧力10MPaの条件で5時間保持することで、含浸処理および内部無機架橋形成を行い、本発明に係る偏光フィルムを得た。
【0092】
なお、比較例としては、含浸・架橋形成工程を行わないこと以外は同様の方法で作製した偏光フィルムを用いた。
【0093】
<評価>
(1)偏光度
偏光度は、分光光度計(「V7100」、日本分光(株)社製)を用いて測定した。なお、偏光度は、以下の数式1により求めることができる。
【0094】
【数1】

(平行透過率):同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値
90(直交透過率):同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値
【0095】
(2)試料長変化
湿度を0%から95%まで徐々に上げながら、前記で作製した実施例および比較例に係る変更フィルムの長さの変化を観察した。なお、フィルム長は、延伸方向の長さを測定した。
【0096】
<結果>
(1)偏光度
実施例および比較例に係る変更フィルムは、いずれも偏光度は99%であり、含浸・架橋形成工程を行うことによる偏光度の変化は生じないことが分かった。この結果より、含浸・架橋形成工程を行っても、偏光フィルムの機能は失われないことが確認できた。
【0097】
(2)試料長変化
試料長の変化を図4に示す。図4に示す通り、比較例に係る偏光フィルムは、湿度が90%を超えた時点で試料長が減少することが分かった。これは、フィルムが高湿度で収縮変化を起こしていることを示している。一方、実施例に係る偏光フィルムは、湿度を95%まで上昇させても、全く収縮が見られなかった。この結果より、含浸・架橋形成工程を行うことにより、偏光フィルムの湿度に対する耐久性が大幅に向上することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る液晶表示装置1の一実施形態の概略構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明に係るカラー液晶表示装置100の一実施形態の概略構成を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る偏光フィルムの製造方法における含浸・架橋形成工程で用いる超臨界処理装置の概要を示す模式図である。
【図4】実施例における試料長変化の測定結果を示す図面代用グラフである。
【符号の説明】
【0099】
1 液晶表示装置
11 偏光フィルム
12 電極
13 基板
14 液晶層
15 配向膜
16 カラーフィルター
17 スペーサー
18 光反射膜
19 平滑化膜
20 光源
21 光学機能シート
100 カラー液晶表示装置
101 拡散または通過領域
102 第2原色発光領域
103 第3原色発光領域
104 光吸収層
I 高圧容器
II ボンベ
III、IV 高圧送液ポンプ
V 圧力調整バルブ
VI 熱交換用コイル
VII 恒温槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムに所定の無機元素を含む化合物が含浸され、
前記無機元素により無機架橋状態が内部に形成された偏光フィルム。
【請求項2】
前記フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムである請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記化合物は、ケイ素化合物である請求項1または2に記載の偏光フィルム。
【請求項4】
前記ケイ素化合物は、ポリシラザンまたはアルコキシシランである請求項2記載の偏光フィルム。
【請求項5】
所定の無機元素を含む化合物が含浸され、
前記無機元素により無機架橋状態が内部に形成された偏光フィルムが少なくとも備えられた偏光板。
【請求項6】
内面に電極が配置された一対の基板と、
該基板間に挟持された液晶層と、を備える液晶パネルと、
前記液晶パネルに光を照射するための光源と、からなり、
前記液晶パネルには、
所定の無機元素を含む化合物が含浸され、
前記無機元素により無機架橋状態が内部に形成された偏光フィルムが少なくとも備えられた液晶表示装置。
【請求項7】
(a−1)内面に電極が配置された一対の基板と、
(a−2)該基板間に挟持された液晶層と、を備え、
少なくとも第1サブピクセル、第2サブピクセル及び第3サブピクセルを1組としたピクセルが、複数、2次元マトリクス状に配列されたカラー液晶パネルと、
(b)該カラー液晶パネルに光を照射するための光源と、からなり、
前記光源は、第1原色、第2原色及び第3原色から構成された光の三原色の内の第1原色に相当する第1原色光を出射し、
前記カラー液晶パネルには、
(A)第2サブピクセルと同光路上に配置され、
第2原色に相当する第2原色光を発光する第2原色発光粒子から成り、
前記光源から出射された第1原色光によって励起されて第2原色光を発光する第2原色発光領域と、
(B)第3サブピクセルと同光路上に配置され、
第3原色に相当する第3原色光を発光する第3原色発光粒子から成り、
前記光源から出射された第1原色光によって励起されて第3原色光を発光する第3原色発光領域と、
(C)第1サブピクセルと同光路上に配置され、
光源から出射された第1原色光を拡散または通過させる拡散または通過領域と、
(D)所定の無機元素を含む化合物が含浸され、
前記無機元素により無機架橋状態が内部に形成された偏光フィルムと、
が少なくとも備えられたカラー液晶表示装置。
【請求項8】
フィルムに、超臨界状態下で所定の無機元素を含む化合物を含浸させ、
前記フィルム内部で前記無機元素により無機架橋状態を形成させる工程を少なくとも行う偏光フィルムの製造方法。
【請求項9】
超臨界二酸化炭素を媒体として前記化合物をフィルムに含浸させる請求項8記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムである請求項8または9に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記化合物は、ケイ素化合物である請求項8から10のいずれか一項に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記ケイ素化合物は、ポリシラザンまたはアルコキシシランである請求項11記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項13】
フィルムに、超臨界状態下で所定の無機元素を含む化合物を含浸させ、
前記フィルム内部で前記無機元素により無機架橋状態を形成させて偏光フィルムを製造する工程を少なくとも行う偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−91820(P2010−91820A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262057(P2008−262057)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】