偏光位相分離素子、光ヘッド装置及び光通信装置
【課題】入射角度依存性が小さいホモダイン検出に用いられる偏光位相分離素子を提供する。
【解決手段】直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して位相差を与えず、他方の光に対してのみ、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えるように、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料を有する波長板と、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えられた光を含む2つの光が入射し、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する偏光性回折格子と、を備えた、偏光位相分離素子を提供することにより上記課題を解決する。
【解決手段】直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して位相差を与えず、他方の光に対してのみ、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えるように、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料を有する波長板と、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えられた光を含む2つの光が入射し、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する偏光性回折格子と、を備えた、偏光位相分離素子を提供することにより上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光位相分離素子、光ヘッド装置及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体である光ディスクは、半導体レーザの短波長化及び対物レンズの高NA化によって、記録密度を向上させ、光ディスクにおける記録容量を増加させてきた。現在、Blu−rayディスクが商品化されているものの、光ディスクにおける記録容量を更に増やすためには、半導体レーザの短波長化及び対物レンズの高NA化による手法は限界に達しつつある。このような大容量化に対応すべく、光ディスクに複数の情報記録層を形成した多層光ディスクがある。多層光ディスクでは、情報記録層を多層化することにより、記録される情報量を増やすことができるが、多層化することにより、各々の情報記録層からの反射率が低下してしまう。従って、情報記録層からの光を高いS/N比で検出することが可能な方法が求められている。このように情報記録層からの光を高いS/N比で検出する方法として、光ディスクの情報記録層から反射される信号光と、光ディスクとは異なる光学系で反射された参照光を用いたホモダイン検出による検出方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、光ファイバを用いた光通信においては、光通信における情報の伝送容量を増加させるため、光の強度変調のみならず位相変調(PSK:Phase Shift Keying)方式による通信方法が検討されている。このような位相変調方式による通信方法では、光の位相検出が必要となるため、信号光用の光ファイバと、参照光用の光ファイバとに分岐させるとともに、参照光を遅延させて、同一の光源から出力させた信号光と参照光とを互いに干渉させるホモダイン検出による光信号位相検出が行われる(特許文献2、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310942号公報
【特許文献2】特開2007−64860号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D-S. Ly-Ganon, K. Katoh, and K. Kikuchi, "Unrepeated 210-km transmission with coherent detection and digital signal processing of 20-Gb/s QPSK signal", Technical Digest of OFC2005, OTuL4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているホモダイン検出を用いる光ヘッド装置では、偏光変換分離素子として角度選択性偏光変換素子を用いており、この角度選択性偏光変換素子は、入射光の入射角によって出射する光の偏光状態を変えて出射させることができる。しかし、この角度選択性偏光変換素子は、位相変化の値の入射角度依存性が極めて大きいため、角度選択性偏光変換素子の前段にある無偏光回折格子を、角度分布を有するような発散光、収束光の光路中に設けると、無偏光回折格子で回折して角度選択性偏光変換素子へ進行する光の方向(入射角)が変化する。このため、とくに安定した機能を発揮させることは困難であり、また、製造時における組立工程等においてバラツキが生じ、安定した光学特性が得られないといった問題点を有していた。
【0007】
また、特許文献2及び非特許文献1に開示されているホモダイン検出を用いた光電界波形観測装置では、光位相ダイバーシティ回路を用いているが、光位相ダイバーシティ回路では、位相検出の際に、偏光ビームスプリッタを複数用いる必要があり、部品点数が増加することにより、製造される光通信装置の小型化が困難なものとなり、更には、光通信装置の製造の際の組立工程が複雑になるという問題点を有していた。
【0008】
従って、上記問題点を有しない、入射光の角度依存性が少なく単純な構成の偏光位相分離素子及びこの偏光位相分離素子を用いた光ヘッド装置、光通信装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の偏光位相分離素子は、直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して位相差を与えず、他方の光に対してのみ、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えるように、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料を有する波長板と、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えられた光を含む2つの光が入射し、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する偏光性回折格子と、を備えている。
【0010】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記偏光性回折格子は、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる複屈折性材料層および、屈折率がnsとなる等方性材料からなる等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率nsは、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、前記複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記位相板の光学軸の方向とが、略45°の角度をなす。
【0011】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、前記第2の領域にのみ、高分子液晶を有する。
【0012】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、前記第1の領域および前記第2の領域は、いずれも高分子液晶を有し、前記第1の領域における高分子液晶は厚さ方向に略平行に配向される。
【0013】
また、本発明の偏光位相分離素子は、直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第1の領域と、他方の光に対して、互いに直交する、第1の円偏光の光と第2の円偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第2の領域と、を有する偏光性回折格子と、と備える。
【0014】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記偏光性回折格子は、第1の領域が、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる第1の複屈折性材料層および、屈折率がns1となる等方性材料からなる第1の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns1は、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、前記第1の複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記s偏光の光の方向とが、略45°の角度をなし、第2の領域が、右回りの円偏光の光に対する屈折率nRと左回りの円偏光の光に対する屈折率nL(nR≠nL)を有する複屈折材料からなる第2の複屈折性材料層および、屈折率がns2となる等方性材料からなる第2の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns2は、前記常光屈折率nRまたは前記異常光屈折率nLと略等しい。
【0015】
また、本発明の光ヘッド装置は、光源と、前記光源からの光のうち、互いに直交するs偏光の光とp偏光の光毎に偏向分離する偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された一方の光を光ディスクに集光させる対物レンズと、前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された他方の光を反射する反射ミラーと、前記光ディスクで反射された光および、前記反射ミラーで反射された光を検出する光検出器と、を備え、前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、前記記載の偏光位相分離素子を備える。
【0016】
また、本発明の光通信装置は、互いに直交するs偏光の光とp偏光の光とが異なる方向から入射して合波させる偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタを出射する光を検出する光検出器と、を備え、前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、前記記載の偏光位相分離素子を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入射角度依存性が小さく、部品点数が少ないホモダイン検出に用いられる偏光位相分離素子を得ることができる。また、この偏光位相分離素子を用いた光ヘッド装置では、光学的に安定したホモダイン検出が可能でとくに、情報記録層が複数層有する光ディスクの記録・再生が可能な光ヘッド装置を実現できる。更に、この偏光位相分離素子を用いた光通信装置では、部品点数が少なく小型化が実現できる光通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態における偏光位相分離素子の構成図
【図2】第1の実施の形態に用いられる分割波長板の構成図
【図3】第1の実施の形態に用いられる偏光性回折格子の構成図
【図4】第1の形態における偏光位相分離素子の入射角度と偏光角の相関図
【図5】第2の実施の形態における偏光位相分離素子の構成図
【図6】第2の実施の形態に用いられる偏光性回折格子の構成図
【図7】コレステリック相(高分子)液晶に入射する光の波長と屈折率との関係図
【図8】第2の実施の形態における偏光位相分離素子の入射角度と偏光角の相関図
【図9】光ヘッド装置の実施の形態の構成図
【図10】光通信装置の実施の形態の構成図
【図11】実施例における光ヘッド装置の受光光学系および各光学距離を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0020】
〔偏光位相分離素子の第1の実施の形態〕
偏光位相分離素子の第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態における偏光位相分離素子の構成図である。本実施の形態における偏光位相分離素子10は、無偏光回折格子20、波長板30及び偏光性回折格子40を有し、図1に示すように、この順に光が入射するように構成されている。
【0021】
無偏光回折格子20は、例えば、光学的に等方性の屈折率を示す等方性材料からなる透明基板の表面に周期的な凹凸が形成されたものであったり、透明基板の表面に、他の等方性材料が凹凸状に形成されたものであったりしてもよい。回折格子の断面が矩形状の凹凸である場合、±1次回折光の回折効率が最大になるように設定すると、+1次回折光と−1次回折光の光量をそれぞれ大きくすることができ、直進透過する0次回折光(直進透過光)を小さくすることができるので、効率よく2つの光に分岐することができる。また、回折格子の断面がブレーズ形状の凹凸またはブレーズ状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状の凹凸である場合、0次回折光と例えば+1次回折光の光量をそれぞれ大きくすることができ、−1次回折光を小さくすることができるので、効率よく2つの光に分岐することができる。尚、回折角度は、入射する光の波長と回折格子の周期の幅(格子ピッチ)によって決定するので、例えば、回折角度を大きくして光を分岐させる場合は、格子ピッチを狭く設計するとよい。
【0022】
波長板30は、無偏光回折格子20で分岐された2つの光それぞれに対応した、第1の領域31と第2の領域32を有しており、第1の領域31または第2の領域32のいずれかは、信号光と参照光との間にπ/2の位相差が与えられるように設定されていればよい。例えば、第1の領域31は等方性材料から構成され、第2の領域32は複屈折性材料から構成され、第2の領域32の厚さを調整することで所望の位相差を与えることができる。また、第1の領域31または第2の領域のいずれか一方は、透明な等方性材料から構成されているものに限らず、空気であってもよい。一方が空気である場合、他方の領域にのみ所望の位相差を与えられるように設計された複屈折性材料が備えられていればよい。詳細の構成については後述する。
【0023】
偏光性回折格子40は、入射する光のうち互いに直交する偏光状態の光毎、透過または回折させて進行する方向が互いに異なるように作用する。例えば、入射する光のうち、第1の直線偏光の光は直進透過させ、第1の直線偏光の光と直交する第2の直線偏光の光を回折させる機能を有する。偏光性回折格子40は、例えば、光学的に複屈折性を示す複屈折性材料と等方性材料とが、断面が周期的な凹凸を形成するように構成される。そして、複屈折性材料の常光屈折率noまたは異常光屈折率ne(no≠ne)と、等方性材料の屈折率nsとが略一致する材料を組み合わせることによって、上記の作用を得ることができる。尚、回折角度は、無偏光回折格子20と同様に、回折角度を大きくして光を分岐させる場合、格子ピッチを狭く設計するとよい。詳細の構成については後述する。
【0024】
次に、偏光位相分離素子10の作用について説明する。本実施の形態における偏光位相分離素子10に入射した光50は、無偏光回折格子20により透過および/または回折によって、互いに分離した2つの光51aと51bと、に分岐される。尚、光50は信号光と参照光とが合波された光であり、図1において偏光位相分離素子10にはZ軸方向に入射する。矢印S1は信号光の偏光方向を示すものであり、矢印S2は参照光の偏光方向を示すものである。図1では、矢印S1に示される信号光の偏光方向はX軸方向であり、矢印S2に示される参照光の偏光方向はY軸方向とし、信号光の偏光方向と参照光の偏光方向とは、略直交して入射する。
【0025】
分岐された光51aは、波長板30における第1の領域31に入射し、分岐された光51bは、波長板30における第2の領域32に入射する。波長板30における第1の領域31に入射した光51aは、信号光と参照光、つまり、X軸方向の光成分とY軸方向の光成分とにおいて位相差が付加されることなく光52aとして出射される。一方、分割波長板30における第2の領域32に入射した光51bは、信号光と参照光との間でπ/2の位相差が付加され光52bとして出射される。尚、位相差はπ/2に限らず、π/2の奇数倍となるようにすれば同様の効果を得ることができるが、波長板の厚さを薄くできることを考えると位相差がπ/2とすることが好ましい。
【0026】
次に、光52a及び光52bは、偏光性回折格子40に入射する。偏光性回折格子40に用いる複屈折性材料の光学軸40aは、矢印S1に示される信号光の偏光方向及び矢印S2に示される参照光の偏光方向と、略45°の角度をなしている。よって、偏光性回折格子40に入射した光52a及び光52bはそれぞれ、光学軸40aの方向の直線偏光の光と光学軸40aと直交する方向の直線偏光の光とに分岐される。即ち、偏光性回折格子40に入射した光52aは、光学軸40aに直交する偏光方向の光53aと光学軸40aと平行な偏光方向の光53bとに分岐され出射される。尚、光学軸は、遅相軸または進相軸のいずれかである。例えば、光学軸40aが遅相軸であって、複屈折性材料の異常光屈折率neとなる方向とし、複屈折性材料の常光屈折率noと等方性材料の屈折率nsと略一致(no≒ns、ne≠ns)している場合を考える。このとき、光53aは、光学軸40aに直交する直線偏光の光であるため、偏光性回折格子40において回折されることなくそのまま直進して出射され、光53bは、光学軸40aに平行な直線偏光の光であるため、偏光性回折格子40において回折されて出射される。
【0027】
このため、偏光分離素子10に入射した光50は、進行方向が異なる4つの光53a、53b、53c及び53dとして出射され、4つの光53a、53b、53c及び53dは、光50の位相差を基準にしたとき、信号光と参照光との位相差が、各々180°、0°、270°、90°となる。
【0028】
次に、本実施の形態における偏光分離素子10の機能について、ジョーンズベクトルを用いて説明する。信号光の電場強度(=1)に対して電場強度がA倍となるような参照光を入射させるとすると、入射する光50における電場E1は、数1に示す式で表される。
【0029】
【数1】
この後、無偏光回折格子20によって2つの光51a及び光51bに分岐され、更に、波長板30を透過した、光52aにおける電場E2、光52bにおける電場E3は、数2、数3に示す式で表される。
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
尚、数2におけるα、数3におけるβは、光を分岐した際における強度の係数である。また、数3におけるMは、s偏光とp偏光との間において、π/2の位相差を与えるジョーンズ行列であり、例えば、数4に示されるものである。
【0032】
【数4】
更に、偏光性回折格子40によって、光52aは光53aと光53bとに分岐され、光53aにおける電場E4、光53bにおける電場E5は、数5、数6に示す式で表される。同様に、偏光性回折格子40によって、光52bは光53cと光53dとに分岐され、光53cにおける電場E6、光53dにおける電場E7は、数7、数8に示す式で表される。
【0033】
【数5】
【0034】
【数6】
【0035】
【数7】
【0036】
【数8】
ここで、数5におけるP1、数6におけるP2は、偏光子を表すジョーンズ行列であり、例えば、数9、数10に示す式で表される。尚、γ、δは強度の係数を示す。
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
ここで、数9及び数10に示す式を用い、α、β、γ、δを1とした場合、電場E4、E5、E6及びE7により得られる光信号強度I4、I5、I6及びI7は、以下のように、表すことができる。
【0039】
I4=(1+A2−2AcosΔφ)/4、
I5=(1+A2+2AcosΔφ)/4、
I6=(1+A2+2AsinΔφ)/4、
I7=(1+A2−2AsinΔφ)/4、
上記光信号強度I4、I5、I6及びI7に基づき、下記の演算を行うことにより、A倍に増強された信号Sigを検出することができる。
【0040】
Sig={(I4−I5)2+(I6+I7)2}1/2
={(AcosΔφ)2+(AsinΔφ)2}1/2
=A
これより、偏光位相分離素子を透過した4つの光それぞれを検出し、更に、演算機能を有する光検出器を備えることで、信号Sigを高い感度で検出することができる。また、偏光位相分離素子と光検出器と、を含む光学系を光検出装置ともいい、この光検出装置において、高いS/N比を得ることができる。
【0041】
(波長板)
次に、本実施の形態における偏光分離素子10に用いられる波長板30について説明する。波長板30としては、様々な構成のものが考えられる。尚、図1に示すように、第1の領域31と第2の領域32は、無偏光回折格子20で分岐した2つの光51a、51bがそれぞれ入射するように配置されていればよく、第1の領域31と第2の領域32の形状やこれらの領域の境界線がどのようなものであってもよい。
【0042】
図2は、波長板30の具体的な構成として、波長板60、波長板70及び波長板80の断面模式図を例示したものである。具体的には、図2(a)に示されるように、波長板60は、第1の領域61において、等方性材料63が透明基板65及び66に挟持され、第2の領域62において、複屈折性材料となる高分子液晶64と等方性材料63とが透明基板65及び66に挟持される構造を有する。図2(a)においては、高分子液晶64は、Y軸方向に平行に配向される。波長板60は、透明基板66上に一様に高分子液晶膜を成膜した後、フォトリソグラフィ及びエッチング加工により第1の領域61における高分子液晶膜を除去し、第2の領域62にのみ高分子液晶64を形成し、この後、充填剤となる等方性材料63を透明基板65と透明基板66との間に、充填させることにより形成することができる。尚、第2の領域62には等方性材料63が備えられていない(空気)構造であってもよい。
【0043】
また、図2(b)に示されるように、波長板70は、第1の領域71が、透明基板面に垂直方向(Z軸方向)に配向された垂直配向液晶73を有し、第2の領域72が、透明基板面に水平方向に配向された水平配向液晶74を有する。図2(b)においては、水平配向液晶74は、Y軸方向に平行に配向される。このような波長板70の形成方法は、透明基板75及び76において、第1の領域71では液晶が垂直配向するように、第2の領域72では液晶が水平配向するように、配向処理を行い、配向処理の行われた面を対向させて液晶を封入することにより製造することができる。尚、配向処理の方法としては、配向膜のラビング、光配向処理、イオンビーム照射、配向させるための溝形成等の方法を用いることができる。
【0044】
また、図2(c)に示されるように、波長板80は、透明基板83上の第1の領域81には何も形成せず、基板83上の第2の領域82上にのみ複屈折層84として構造複屈折を有する材料やフォトニック結晶を形成することにより発生する位相差を調整するものである。この他、複屈折層84として延伸した高分子フィルムを形成したものであってもよい。また、第1の領域または第2の領域を透過する光に対して、位相差を与えないものとして、媒質が空気であってもよく、その場合、波長板は、実質的に第1の領域または第2の領域のいずれかに配置するものであって、入射する波長λの光に対してπ/2の奇数倍の位相差を与える複屈折性材料を形成すればよい。
【0045】
(偏光性回折格子)
次に、偏光性回折格子40について説明する。本実施の形態における偏光分離素子10に用いられる偏光性回折格子40は、図3に示すように、断面がブレーズ形状または、ブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状を有し、高分子液晶からなる複屈折性材料層44と、等方性材料が、複屈折性材料層44の凹凸を平坦化するように配置されてなる等方性材料層45とが、透明基板42及び43に挟持される構造を有する。尚、複屈折性材料層44は、凸条となる部分が+Y方向に厚くなるような(擬似)ブレーズ形状の傾きを有するが、逆の傾きを有するものであってもよく、さらに、光学軸の方向が45°方向であれば、X−Y平面において複屈折性材料層44の長手方向が任意の方向に揃うものでもよい。
【0046】
また、複屈折性材料層44の配向方向(遅相軸)は、図3のX−Y平面において、X軸より45°の角度をなす方向とする。尚、等方性材料の屈折率をnsとするとき、等方性材料は、高分子液晶の常光屈折率noまたは異常光屈折率ne(no≠ne)のいずれか一方に略一致する材料によって構成されている。尚、偏光性回折格子として、断面が(擬似)ブレーズ形状とすると、透過または回折して分岐する光の利用効率を高くできる点で好ましいが、これに限らず矩形状の周期的凹凸を有するものであってもよい。
【0047】
ここで、屈折率の関係をns≒no、ns≠neとするとき、高分子液晶の遅相軸方向となる異常光屈折率の方向の偏光成分の光は回折され、高分子液晶の進相軸方向となる常光屈折率の方向の偏光成分の光は回折されることなく直進透過する。このような偏光性回折格子40は、透明基板42上に高分子液晶膜を形成した後、フォトリソグラフィとエッチングを繰り返し行うことにより擬似ブレーズ形状となる高分子液晶からなる複屈折性材料層44を形成し、この後、透明基板42と透明基板43との間に、充填剤として等方性材料を充填した等方性材料層45を形成することにより作製することができる。また、複屈折性材料層44の形成方法としては、構造複屈折又はフォトニック結晶を格子状に形成する方法により作製することも可能である。
【0048】
(偏光分離素子の入射角依存性)
次に、本実施の形態における偏光分離素子10の入射角度依存性について説明する。図4は、本実施の形態における偏光分離素子10の波長板30の第2の領域32において生じるp偏光とs偏光の位相差と、従来の偏光位相変換分離素子、即ち、特許文献1に記載されている偏光位相変換分離素子となる角度選択性偏光変換素子において生じるp偏光とs偏光の位相差とについて、入射角度依存性を計算した結果である。尚、計算方法は、4×4行列法を用い、入射角度は空気中からの入射を想定した角度を示している。
【0049】
従来の角度選択性偏光変換素子については、光学軸を光軸と一致させた水晶において計算を行ったものであり、水晶における常光屈折率を1.557、異常光屈折率を1.567とし、入射角度10°で生じる位相差が、90°となるように、厚さを0.86mmとして行った。一方、本実施の形態における波長板30については、第2の領域32に、水平配向している高分子液晶膜を形成した場合について、入射角度依存性の計算を行ったものであり、高分子液晶における常光屈折率を1.510、異常光屈折率を1.552とし、厚さを2.4μmとして行った。
【0050】
図4に示されるように、本実施の形態における偏光分離素子10の波長板30では、入射角度が変化しても、出射される光のs偏光とp偏光との間に生じる位相差は略90°で、殆ど変化しないのに対し、従来の偏光位相変換分離素子に用いられる角度選択性偏光変換素子では、入射角度が変化すると、出射される光の位相差も変化してしまう。このように、本実施の形態において用いられる波長板30は、従来の角度選択性偏光変換素子に比べ、光の入射角度依存性が極めて低く、光学設計の自由度が大きく、製造のバラツキにより光学特性が大きく変化することも少ない。
【0051】
〔偏光位相分離素子の第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる構成の偏光位相分離素子である。図5は、本実施の形態における偏光位相分離素子110は、無偏光回折格子120と偏光性回折格子130を有し、この順に光が入射するように構成されている。
【0052】
無偏光回折格子120は、第1の実施の形態の無偏光回折格子と同様のものを用いることができ、等方性材料によって断面が矩形状または(擬似)ブレーズ形状の凹凸を有する。偏光性回折格子130は、無偏光回折格子120で分岐された2つの光それぞれに対応し、いずれも複屈折性材料を含む、第1の領域131と第2の領域132を有する。偏光性回折格子130は、入射する光のうち互いに直交する偏光状態の光毎、透過または回折させて進行する方向が互いに異なるように作用する。例えば、第1の領域131では、入射する光のうち、第1の直線偏光の光は直進透過させ、第1の直線偏光の光と直交する第2の直線偏光の光を回折させる機能を有し、第2の領域132では、入射する光のうち、第1の円偏光の光となる左回りの円偏光の光は直進透過させ、第1の円偏光の光と直交する第2の円偏光の光となる右回りの円偏光の光は回折させる機能を有する。詳細の構成については後述する。尚、第1の円偏光の光が右回りの円偏光の光、第2の円偏光の光が左回りの円偏光の光であってもよい。
【0053】
次に、偏光位相分離素子110の作用について説明する。本実施の形態における偏光位相分離素子110に入射した光150は、無偏光回折格子120により透過および/または回折によって、互いに分離した2つの光151aと151bと、に分岐される。尚、光150は信号光と参照光とが合波された光であり、図5において偏光位相分離素子110にはZ軸方向に入射する。矢印S1は信号光の偏光方向を示すものであり、矢印S2は参照光の偏光方向を示すものである。本実施の形態では、矢印S1に示される信号光の偏光方向はX軸方向であり、矢印S2に示される参照光の偏光方向はY軸方向であり、矢印S1に示される信号光の偏光方向と矢印S2に示される参照光の偏光方向とは、略直交して入射する。
【0054】
次に、光151a及び光151bは、偏光性回折格子130に入射する。偏光性回折格子130は第1の領域131と第2の領域132を有しており、第1の領域131に用いる複屈折性材料の光学軸131aは、矢印S1に示される信号光の偏光方向及び矢印S2に示される参照光の偏光方向と、略45°の角度をなしている。よって、第1の領域131に入射した光151aは、光学軸131aの方向の直線偏光の光と光学軸131aと直交する方向の直線偏光の光とに分岐される。即ち、第1の領域131に入射した光151aは、光学軸131aに直交する偏光方向の光152aと光学軸131aと平行な偏光方向の光152bとに分岐され出射される。尚、光学軸は、遅相軸または進相軸のいずれかである。例えば、光学軸131aが遅相軸であって、複屈折性材料の異常光屈折率neとなる方向とし、複屈折性材料の常光屈折率noと等方性材料の屈折率ns1と略一致(no≒ns1、ne≠ns1)している場合を考える。このとき、光152aは、光学軸131aに直交する直線偏光の光であるため、第1の領域131において回折されることなくそのまま直進して出射され、光152bは、光学軸131aに平行な直線偏光の光であるため、第1の領域131において回折されて出射される。
【0055】
また、第2の領域132は右回りの円偏光の光に対する屈折率と、左回りの円偏光の光に対する屈折率とが異なる複屈折性材料を有する。よって、第2の領域132に入射した光151bは、右回りの円偏光の光と左回りの円偏光の光毎に分岐される。例えば、複屈折性材料の右回りの円偏光の光に対する屈折率をnR、左回りの円偏光の光に対する屈折率をnLとし、複屈折性材料のnLと等方性材料の屈折率ns2と略一致(nL≒ns2、nR≠ns2)させる場合を考える。このとき、光151bのうち、左回りの円偏光の光は、第2の領域132において回折されることなくそのまま直進して出射され、右回りの円偏光の光は、第2の領域132において回折されて出射される。
【0056】
このように、偏光位相分離素子110に入射した光150は、進行方向が異なる4つの光151a、151b、151c及び151dに分光される。尚、偏光性回折格子130の第2の領域132に形成される円偏光分離機能を有する回折格子としてはコレステリック相液晶を含む回折格子を用いることができる。
【0057】
次に、本実施の形態における偏光分離素子110の機能について、ジョーンズベクトルを用いて説明する。信号光の電場強度(=1)に対して電場強度がA倍となるような参照光を入射させるとすると、入射する光150における電場E1は、数11に示す式で表される。
【0058】
【数11】
この後、無偏光回折格子120によって2つの光151a及び光151bに分岐され、光151aにおける電場E2、光151bにおける電場E3は、数12、数13に示す式で表される。
【0059】
【数12】
【0060】
【数13】
尚、数12におけるα、数13におけるβは、光を分岐した際における強度の係数である。更に、偏光性回折格子130によって、光151aは光152aと光152bとに分岐され、光152aにおける電場E4、光152bにおける電場E5は、数14、数15に示す式で表される。同様に、偏光性回折格子130によって、光151bは光152cと光152dとに分岐され、光152cにおける電場E6、光152dにおける電場E7は、数16、数17に示す式で表される。
【0061】
【数14】
【0062】
【数15】
【0063】
【数16】
【0064】
【数17】
ここで、数14におけるP1、数15におけるP2は、偏光子を表すジョーンズ行列であり、例えば、数18、数19に示す式で表される。尚、γ、δは強度の係数を示す。
【0065】
【数18】
【0066】
【数19】
また、数16におけるP3、数17におけるP4は、偏光子を表すジョーンズ行列であり、例えば、数20、数21に示す式で表される。尚、ε、ηは強度の係数を示す。
【0067】
【数20】
【0068】
【数21】
数18及び数19に示す式を用い、α、β、γ、δ、ε、ηを1とした場合、電場E4、E5、E6及びE7により得られる光信号強度I4、I5、I6及びI7は、以下のように、表すことができる。
【0069】
I4=(1+A2−2AcosΔφ)/4、
I5=(1+A2+2AcosΔφ)/4、
I6=(1+A2−2AsinΔφ)/4、
I7=(1+A2+2AsinΔφ)/4、
上記光信号強度I4、I5、I6及びI7に基づき、下記の演算を行うことにより、A倍に増強された信号Sigを検出することができる。
【0070】
Sig={(I4−I5)2+(I6+I7)2}1/2
={(AcosΔφ)2+(AsinΔφ)2}1/2
=A
これより、偏光位相分離素子を透過した4つの光それぞれを検出し、更に、演算機能を有する光検出器を備えることで、信号Sigを高い感度で検出することができる。そして、偏光位相分離素子と光検出器と、を含む光検出装置により高いS/N比を得ることができる。
【0071】
次に、図6に偏光性回折格子130の具体的な構成として断面模式図を示す。この偏光性回折格子130は、図5にも示すように、第1の領域131と第2の領域132を有している。また、偏光性回折格子130は、図6に示すように、第1の領域131には、断面がブレーズ形状または、ブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状を有し、高分子液晶からなる第1の複屈折性材料層133と、等方性材料が、第1の複屈折性材料層133の凹凸を平坦化するように配置されてなる第1の等方性材料層135とが、透明基板137及び透明基板138に挟持される構造を有する。尚、第2の領域132には、第1の等方性材料層135のみが透明基板137及び透明基板138に挟持される構造を有する。
【0072】
また、第1の複屈折性材料層133の配向方向(遅相軸)は、図5のX−Y平面において、X軸より45°の角度をなす方向となる。尚、第1の等方性材料層135を構成する等方性材料の屈折率をns1とするとき、等方性材料は、高分子液晶の常光屈折率noまたは異常光屈折率ne(no≠ne)のいずれか一方に略一致する材料によって構成する。尚、偏光性回折格子として、断面が(擬似)ブレーズ形状とすると、透過または回折して分岐する光の利用効率を高くできる点で好ましいが、これに限らず矩形状の周期的凹凸を有するものであってもよい。
【0073】
また、第2の領域132には、断面がブレーズ形状または、ブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状を有し、コレステリック相高分子液晶からなる第2の複屈折性材料層134と、等方性材料が、第2の複屈折性材料層134の凹凸を平坦化するように配置される第2の等方性材料層136とが、透明基板138及び透明基板139に挟持される構造を有する。尚、第1の領域131には、第2の等方性材料層136のみが透明基板138及び透明基板139に挟持される構造を有する。
【0074】
また、第2の複屈折性材料層134を構成するコレステリック相高分子液晶は、液晶分子が厚さ方向に10回転以上螺旋しているものである。コレステリック相高分子液晶は、入射する光の波長λが螺旋ピッチPとコレステリック相高分子液晶の屈折率n(λ)との積と同程度の場合、螺旋軸方向と平行に入射する光のうち、液晶分子のねじれ方向と同じ回転方向となる円偏光がほぼ反射され、逆向きの回転方向となる円偏光はほぼ透過する円偏光依存性を有する。この反射特性を示す波長帯域の中心波長λ0(以下、選択反射波長という)は、螺旋ピッチをP、液晶の常光屈折率をno、異常光屈折率をneとすると、
λ0=(ne+no)×P/2
の関係で表すことができ、また、反射帯域幅Δλは、
Δλ=|ne−no|×P
の関係で表すことができる。尚、この(λ0±Δλ/2)を反射波長帯域という。
【0075】
このことから、反射波長帯域の光が、液晶分子の螺旋軸方向と平行する方向に進行し液晶分子のねじれ方向と同じ回転方向となる円偏光である場合、コレステリック相高分子液晶は反射作用を有する。反射波長帯域の反射率は、コレステリック相高分子液晶内部の螺旋ピッチ数に依存する。螺旋ピッチ数は液晶分子の回転数で表し、10回転を超える螺旋ピッチ数では厚さに依存せず反射波長帯域でほぼ一様に高い反射率を示す。
【0076】
図7は、コレステリック相高分子液晶の屈折率の波長依存性を示す特性図である。例として液晶分子のねじれ方向が、光の進行方向に対して右回りであるとして説明する。この場合、右回りの円偏光の光が入射すると、反射波長帯域の近傍において屈折率の変化が大きくなる。なお、直線偏光の光が入射した場合であっても、直線偏光の光のうち、右回りの円偏光の光の成分に対して上記のような作用を生じる。一方、左回りの円偏光の光に対して反射波長帯域を有さないので、大きな屈折率の変動は生じない。このとき、波長λの右回りの円偏光に対する屈折率をnR(λ)、左回りの円偏光に対する屈折率をnL(λ)とし、円偏光屈折率異方性ΔnC(λ)=|nR(λ)−nL(λ)|とする。
【0077】
このとき、反射波長帯域の近傍では、0ではないΔnCを有する。また、反射波長帯域から大きく離れた波長の光が入射すると、ΔnCがほぼ0となるため、円偏光屈折率異方性が発現しなくなる。この反射波長帯域は、螺旋ピッチPを調整することによって制御することができる。この場合、不斉炭素を有するネマチック液晶やネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック相液晶を構成するが、このカイラル剤の添加量を調整して反射波長帯域を決定することができる。
【0078】
図7に示すように、反射波長帯域より短波長側においてΔnC(>0)の値の波長依存性が小さく安定した領域があり、例えば、対象とする光の波長λAをこの領域付近に合わせるように波長λAよりも長波長側に反射波長帯域を設定することもできる。また、対象とする光の波長λAを反射波長帯域内に設定して高いてΔnCを得ることもできるが、一方の円偏光の光の反射率が大きくなり、光利用効率が低減するので、対象とする光の波長λAは反射波長帯域より外側に設定することが好ましい。
【0079】
次に、第2の複屈折性材料層134の凹凸を平坦化するように配置される第2の等方性材料層136について説明する。第2の等方性材料層136を構成する等方性材料の屈折率をns2は、等方性材料は、コレステリック相高分子液晶の右回り円偏光に対する屈折率nRまたは左回り円偏光に対する屈折率をnL(nR≠nL)のいずれか一方に略一致する材料によって構成する。尚、偏光性回折格子として、断面が(擬似)ブレーズ形状とすると、透過または回折して分岐する光の利用効率を高くできる点で好ましいが、これに限らず矩形状の周期的凹凸を有するものであってもよい。また、第1の複屈折性材料層133および第2の複屈折性材料層134は、凸条となる部分が+Y方向に厚くなるような(擬似)ブレーズ形状の傾きを有するが、逆の傾きを有するものであってもよく、さらに、光学軸の方向が45°方向であれば、X−Y平面において第1の複屈折性材料層133および第2の複屈折性材料層144の長手方向が任意の方向に揃うものでもよい。
【0080】
尚、図6に示すように、第1の領域131と第2の領域132は、無偏光回折格子120で分岐した2つの光151a、151bがそれぞれ入射するように配置されていれば、第1の領域131と第2の領域132の形状やこれらの領域の境界線がどのようなものであってもよい。また、第1の複屈折性材料層133と第1の等方性材料層135との組み合わせ、第2の複屈折性材料層134と第2の等方性材料層136との組み合わせは、それぞれ分けて、複数の層を構成しているが、例えば、第1の等方性材料層135の等方性材料の屈折率ns1と、第2の等方性材料層136の等方性材料の屈折率ns2と、を一致させる条件が成立する場合、偏光性回折格子130の構成をより単純化できる。つまり、第2の複屈折材料層134を、透明基板138上に配置させて、第1の等方性材料層135で凹凸を平坦化させる1層の構造とすることもできる。
【0081】
尚、第1の複屈折性材料層133として高分子液晶をブレーズ状に形成する方法としては、透明基板138上に高分子液晶膜を成膜した後、フォトリソグラフィとエッチング加工を繰り返すことにより形成することが可能である。また、高分子コレステリック相液晶134をブレーズ状に形成する方法としては、透明基板139上に高分子コレステリック相液晶膜を成膜した後、フォトリソグラフィとエッチング加工を繰り返すことにより形成することが可能である。
【0082】
次に、本実施の形態における偏光分離素子110の入射角度依存性について説明する。図8は、本実施の形態における偏光分離素子110の偏光性回折格子130の第1の領域131において生じる回折光の回折効率および、第2の領域132において生じる回折光の回折効率の入射角度依存性を計算した結果である。第1の領域131において、第1の等方性材料層135を構成する等方性材料の屈折率ns1が、第1の複屈折性材料層133である高分子液晶の常光屈折率noに略一致する。そして、第2の領域132において、第2の等方性材料層136を構成する等方性材料の屈折率ns2が、第2の複屈折性材料層134であるコレステリック相高分子液晶の左回り円偏光の屈折率nLに略一致する。つまり、第1の領域131において、異常光屈折率となる方向の直線偏光の光で入射する光は回折させ、常光屈折率となる方向の直線偏光の光で入射する光は透過させる。また、第1の領域132において、右回りの円偏光の光で入射する光は回折させ、左回りの円偏光の光で入射する光は透過させる。
【0083】
具体的に、第1の複屈折性材料層133は、常光屈折率noが1.52、異常光屈折率noが1.57のネマッチック液晶からなり、回折格子ピッチ10μmで、断面形状が、ブレーズ形状を16段で各段の高さが0.5μmとなる階段形状に近似した擬似ブレーズ形状を考える。また、第2の複屈折性材料層134は、左回りの円偏光の屈折率nLが1.640、右回りの円偏光の屈折率nLが1.627、のコレステリック液晶からなり、回折格子ピッチ10μmで、断面形状が、ブレーズ形状を8段で各段の高さが3.9μmとなる階段形状に近似した擬似ブレーズ形状を考える。尚、コレステリック相液晶に用いた液晶のネマッチック相における常光屈折率は1.55、異常光屈折率は1.75とし、コレステリックのカイラルピッチを0.36μmとし、左右の円偏光の屈折率はド・フリース方程式を用いて計算した。また、回折格子の計算にはRigorous Coupled Wave Analysis(RCWA)法を用いた。図8のように、入射角度が9°〜11°の範囲において、それぞれの回折効率の入射角度依存性はほとんどみられない。
【0084】
このように、本実施の形態における偏光位相分離素子110は、無偏光回折格子120と偏光性回折格子130により構成されているため、入射角度の依存性が小さく、所望の位相差を有する偏光状態で互いに異なる4つの方向に進行する光に分離することができる。さらに、組立等の製造コストを低減させることができる。
【0085】
〔光ヘッド装置の実施の形態〕
次に、光ヘッド装置の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における偏光位相分離素子10または、第2の実施の形態における偏光位相分離素子110を有する光ヘッド装置である。
【0086】
図9に、本実施の形態における光ヘッド装置の構成を示す。本実施の形態における光ヘッド装置210において、光源211から出射された光は、互いに直交する直線偏光であるp偏光とs偏光との光量比が所定の値となるように偏光面を調整して配置された1/2波長板212に入射する。偏光ビームスプリッタ213はs偏光の光は反射し、p偏光の光は直進透過する偏光依存性を有する。そして、偏光ビームスプリッタ213に入射するs偏光の光は光ディスク217側へ偏向され、p偏光の光は直進するよう偏光成分毎に光が分岐される。偏光ビームスプリッタ213によって偏向されたs偏光の光は、コリメータレンズ214によって平行光となり、1/4波長板215によって円偏光の光となった後、対物レンズ216によって光ディスク217に照射される。光ディスク217に照射された光は、光ディスク217の情報記録面で反射され、逆回りの円偏光の光となり、対物レンズ216を介し、1/4波長板215によりp偏光の光となり、コリメータレンズ214及び、偏光ビームスプリッタ213を直進透過し、偏光ビームスプリッタ221に入射する。
【0087】
一方、光源211からの光のうち、偏光ビームスプリッタ213を直進透過するp偏光の光は、コリメータレンズ218により平行光となった後、1/4波長板219により円偏光の光となり、反射ミラー220によって反射される。反射ミラー220により反射された光は逆回りの円偏光の光となり、1/4波長板219によりs偏光の光となり、コリメータレンズ218を介し、偏光ビームスプリッタ213により偏向され、偏光ビームスプリッタ221に入射する。このように、偏光ビームスプリッタ213より、偏光ビームスプリッタ221側に進行する光として、光ディスク217の情報記録面において反射された光(p偏光の光)と、反射ミラー220において反射された光(s偏光の光)とが合波される。尚、合波された光のうち、光ディスク217の情報記録面において反射された光を信号光とし、反射ミラー220において反射された光を参照光とする。
【0088】
偏光ビームスプリッタ221は、s偏光の光およびp偏光の光について一部を透過、一部を反射させる特性を有する。そして、偏光ビームスプリッタ221においては、合波された光のうち信号光の一部が直進透過し、サーボ用光検出器222に入射する。光ヘッド装置210では、不図示のフォーカスエラーサーボ、トラッキングエラーサーボを有しており、サーボ用光検出器222により検出される光量に基づきフォーカスエラーサーボ、トラッキングエラーサーボが制御される。一方、偏光ビームスプリッタ221において偏向された信号光と参照光は、偏光位相分離素子10または偏光位相分離素子110により、進行方向が異なる4つの光に分離され、再生信号用光検出器224に入射する。再生信号用光検出器224に入射した光信号は、不図示の演算回路により演算が行われた後、再生信号として出力される。尚、上記反射ミラー222に代えて、コーナービームスプリッタ等を用いてもよい。
【0089】
本実施の形態における光ヘッド装置は、第1の実施の形態における偏光位相分離素子10または第2の実施の形態における偏光位相分離素子110を用いているため、光学設計の自由度が大きく、とくに発散光または収束光の光路中に配置した場合でも、入射角度依存性が小さく安定したホモダイン検出を用いた光ヘッド装置を得ることができる。
【0090】
〔光通信装置の実施の形態〕
次に、光通信装置の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における偏光位相分離素子10または、第2の実施の形態における偏光位相分離素子110を有する光通信装置である。本実施の形態における光通信装置310は、偏光ビームスプリッタ311、偏光位相分離素子10または偏光位相分離素子110、光検出器313を有しており、偏光ビームスプリッタ311は、p偏光の光を直進させ、s偏光の光を偏向させる機能を有している。
【0091】
図10に示す光通信装置310には、信号光314を入射させるための信号光用光ファイバ315と、参照光316を入射させるための参照光用光ファイバ317とが接続されている。信号光用光ファイバ315からは強度及び位相が変調された信号光314が入射されている。尚、参照光316は、不図示の局部発振器からの光を用いてもよく、また、信号光と同一光源からの光を用いてもよい。信号光314と参照光316は、偏光ビームスプリッタ311に各々異なる方向より入射させることにより合波される。即ち、信号光314と参照光316との入射方向は異なり、信号光314のうちp偏光成分は偏光ビームスプリッタ311において直進透過し、参照光316のうちs偏光成分は偏光ビームスプリッタ311により偏向される。これにより、信号光314のp偏光成分の光と参照光316のs偏光成分の光は合波されて、偏光位相分離素子10(110)に入射する。偏光位相分離素子10(110)に入射した光は、4つの光に分岐され、光検出器313に入射し強度が検出される。尚、偏光分離素子10は、第2の実施の形態における偏光分離素子110を用いてもよい。
【0092】
ここで、光検出器313に入射する分岐された4つの光における光信号強度I4、I5、I6及びI7は、第1の実施の形態に示す偏光位相分離素子10を用いると、以下のようになる。
【0093】
I4=(1+A2−2AcosΔφ)/4、
I5=(1+A2+2AcosΔφ)/4、
I6=(1+A2+2AsinΔφ)/4、
I7=(1+A2−2AsinΔφ)/4、
ここで、例えば、Δφの値が、0、π/2、π、3π/2の4値である場合、光検出器313が、I4−I5の演算、I7−I6の演算を行う機能を有するとすると、Sig1=I4−I5=AcosΔφ、Sig2=I7−I6=AsinΔφより、下記に基づき、Δφの値を知ることができる。
【0094】
Δφ=0の場合、(Sig1、Sig2)=A(1、0)、
Δφ=π/2の場合、(Sig1、Sig2)=A(0、1)、
Δφ=πの場合、(Sig1、Sig2)=A(−1、0)、
Δφ=3π/2の場合、(Sig1、Sig2)=A(0、−1)、
以上より、位相情報を検知することが可能な小型で組立等の製造が容易な光通信装置310を得ることができる。
【実施例】
【0095】
実施例として、偏光位相分離素子10を光ヘッド装置に配置した場合について説明する。図11は、図9の光ヘッド装置210のうちコリメータレンズ214(または218)および偏光位相分離素子10、再生信号用光検出器224について示したものであり、偏光ビームスプリッタ213および221については図示していない。光源から出射され光ディスクによって反射された信号光はコリメータレンズ214によって集光光となり、光源から出射され反射ミラー220によって反射された参照光はコリメータレンズ218によって集光光となる。2つの光は図示しない偏光ビームスプリッタ221によって合波され、偏光位相分離素子10によって4つの光に分岐され、再生信号用光検出器224に至る。
【0096】
光の波長を405nm、ビーム径を2mmφ、コリメータレンズ214からの焦点距離を15mmとし、再生信号用光検出器224から光軸に沿った方向にそれぞれ5.8mm、3.8mm、3.2mmの位置に無偏光回折格子20、波長板30、偏光性回折格子40を配置する。
【0097】
無偏光回折格子20は厚さ2mmの石英ガラス基板の平面上に、X軸方向が長手方向でY軸方向に周期的な凹凸加工を行った回折格子であり、周期的な凹凸構造のピッチが2.3μm、凹凸の深さが422nmとなるように加工する。石英ガラスの屈折率を1.48とすると、波長405nmの光に対して、±1次回折効率は40%、0次回折効率は略0%となる。このようにして、光線を追跡すると厚さ2mmの石英ガラス基板を通過後、+1次回折光と−1次回折光は空間的に重ならなくなる。
【0098】
波長板30は図2(b)の波長板70と同様の構造を有しており、厚さ0.3mmの一対の石英ガラス基板で高分子液晶を挟持した構造となっている。一対の石英ガラス基板は第1の領域71、第2の領域72に対してそれぞれ垂直配向処理、Y方向が異常光方向となるような水平配向処理がなされ、配向処理を施した平面を対向させるように重ね、その空隙を液晶で満たすようにする。高分子液晶の異常光屈折率を1.57、常光屈折率を1.52とし、高分子液晶の厚さを2μmとする。このとき垂直配向をした第1の領域71ではX軸方向、Y軸方向の直線偏光に対して位相差が発生せずに、第2の領域72ではX軸方向、Y軸方向の直線偏光に対してπの位相差が発生する。第1の領域に対しては無偏光回折格子による+1次回折光が入射し、第2の領域に対しては−1次回折光が入射するので−1次回折光はX軸方向とY軸方向の直線偏光に対してπの位相差が与えられる。
【0099】
偏光性回折格子40は厚さ0.3mmの石英ガラス基板(X−Y平面)上でX軸方向から45度方向に配向した高分子液晶を16段の擬似ブレーズ形状とし、充填材によって厚さ0.3mmの石英ガラス基板と貼り合わせる。高分子液晶の異常光屈折率を1.57、常光屈折率を1.52、充填材の屈折率を1.52とする。ブレーズ形状は長手方向がX軸方向で、Y軸方向に対して周期的に配置され、回折格子ピッチは10μm、ブレーズの各段の高さは0.5μmである。RCWA法によって回折効率を計算すると、このとき常光屈折率となる方向と同一方向の直線偏光した光が入射した場合には回折せずに直進透過し、異常光屈折率となる方向の直線偏光が入射した場合には1次回折効率が90%となる。
【0100】
以上のように偏光位相分離素子10に入射した光50は4つの光束53a、53b、53c、53dの4つの光束に分岐され、再生信号用光検出器224に照射される。再生信号用光検出器224によって得られた信号に対し、演算を行うことによってS/N比の高い再生信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0101】
10 偏光位相分離素子
20 無偏光回折格子
30、60 波長板
31、61 第1の領域
32、62 第2の領域
40 偏光性回折格子
40a 光学軸
42、43、65、66 透明基板
44 複屈折性材料層
45 等方性材料層
50、51a、51b、52a、52b、53a、53b、53c、53d 光
63 等方性材料
64 高分子液晶
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光位相分離素子、光ヘッド装置及び光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体である光ディスクは、半導体レーザの短波長化及び対物レンズの高NA化によって、記録密度を向上させ、光ディスクにおける記録容量を増加させてきた。現在、Blu−rayディスクが商品化されているものの、光ディスクにおける記録容量を更に増やすためには、半導体レーザの短波長化及び対物レンズの高NA化による手法は限界に達しつつある。このような大容量化に対応すべく、光ディスクに複数の情報記録層を形成した多層光ディスクがある。多層光ディスクでは、情報記録層を多層化することにより、記録される情報量を増やすことができるが、多層化することにより、各々の情報記録層からの反射率が低下してしまう。従って、情報記録層からの光を高いS/N比で検出することが可能な方法が求められている。このように情報記録層からの光を高いS/N比で検出する方法として、光ディスクの情報記録層から反射される信号光と、光ディスクとは異なる光学系で反射された参照光を用いたホモダイン検出による検出方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、光ファイバを用いた光通信においては、光通信における情報の伝送容量を増加させるため、光の強度変調のみならず位相変調(PSK:Phase Shift Keying)方式による通信方法が検討されている。このような位相変調方式による通信方法では、光の位相検出が必要となるため、信号光用の光ファイバと、参照光用の光ファイバとに分岐させるとともに、参照光を遅延させて、同一の光源から出力させた信号光と参照光とを互いに干渉させるホモダイン検出による光信号位相検出が行われる(特許文献2、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−310942号公報
【特許文献2】特開2007−64860号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】D-S. Ly-Ganon, K. Katoh, and K. Kikuchi, "Unrepeated 210-km transmission with coherent detection and digital signal processing of 20-Gb/s QPSK signal", Technical Digest of OFC2005, OTuL4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されているホモダイン検出を用いる光ヘッド装置では、偏光変換分離素子として角度選択性偏光変換素子を用いており、この角度選択性偏光変換素子は、入射光の入射角によって出射する光の偏光状態を変えて出射させることができる。しかし、この角度選択性偏光変換素子は、位相変化の値の入射角度依存性が極めて大きいため、角度選択性偏光変換素子の前段にある無偏光回折格子を、角度分布を有するような発散光、収束光の光路中に設けると、無偏光回折格子で回折して角度選択性偏光変換素子へ進行する光の方向(入射角)が変化する。このため、とくに安定した機能を発揮させることは困難であり、また、製造時における組立工程等においてバラツキが生じ、安定した光学特性が得られないといった問題点を有していた。
【0007】
また、特許文献2及び非特許文献1に開示されているホモダイン検出を用いた光電界波形観測装置では、光位相ダイバーシティ回路を用いているが、光位相ダイバーシティ回路では、位相検出の際に、偏光ビームスプリッタを複数用いる必要があり、部品点数が増加することにより、製造される光通信装置の小型化が困難なものとなり、更には、光通信装置の製造の際の組立工程が複雑になるという問題点を有していた。
【0008】
従って、上記問題点を有しない、入射光の角度依存性が少なく単純な構成の偏光位相分離素子及びこの偏光位相分離素子を用いた光ヘッド装置、光通信装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の偏光位相分離素子は、直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して位相差を与えず、他方の光に対してのみ、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えるように、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料を有する波長板と、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えられた光を含む2つの光が入射し、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する偏光性回折格子と、を備えている。
【0010】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記偏光性回折格子は、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる複屈折性材料層および、屈折率がnsとなる等方性材料からなる等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率nsは、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、前記複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記位相板の光学軸の方向とが、略45°の角度をなす。
【0011】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、前記第2の領域にのみ、高分子液晶を有する。
【0012】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、前記第1の領域および前記第2の領域は、いずれも高分子液晶を有し、前記第1の領域における高分子液晶は厚さ方向に略平行に配向される。
【0013】
また、本発明の偏光位相分離素子は、直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第1の領域と、他方の光に対して、互いに直交する、第1の円偏光の光と第2の円偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第2の領域と、を有する偏光性回折格子と、と備える。
【0014】
また、本発明の偏光位相分離素子は、前記偏光性回折格子は、第1の領域が、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる第1の複屈折性材料層および、屈折率がns1となる等方性材料からなる第1の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns1は、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、前記第1の複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記s偏光の光の方向とが、略45°の角度をなし、第2の領域が、右回りの円偏光の光に対する屈折率nRと左回りの円偏光の光に対する屈折率nL(nR≠nL)を有する複屈折材料からなる第2の複屈折性材料層および、屈折率がns2となる等方性材料からなる第2の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns2は、前記常光屈折率nRまたは前記異常光屈折率nLと略等しい。
【0015】
また、本発明の光ヘッド装置は、光源と、前記光源からの光のうち、互いに直交するs偏光の光とp偏光の光毎に偏向分離する偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された一方の光を光ディスクに集光させる対物レンズと、前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された他方の光を反射する反射ミラーと、前記光ディスクで反射された光および、前記反射ミラーで反射された光を検出する光検出器と、を備え、前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、前記記載の偏光位相分離素子を備える。
【0016】
また、本発明の光通信装置は、互いに直交するs偏光の光とp偏光の光とが異なる方向から入射して合波させる偏光ビームスプリッタと、前記偏光ビームスプリッタを出射する光を検出する光検出器と、を備え、前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、前記記載の偏光位相分離素子を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、入射角度依存性が小さく、部品点数が少ないホモダイン検出に用いられる偏光位相分離素子を得ることができる。また、この偏光位相分離素子を用いた光ヘッド装置では、光学的に安定したホモダイン検出が可能でとくに、情報記録層が複数層有する光ディスクの記録・再生が可能な光ヘッド装置を実現できる。更に、この偏光位相分離素子を用いた光通信装置では、部品点数が少なく小型化が実現できる光通信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態における偏光位相分離素子の構成図
【図2】第1の実施の形態に用いられる分割波長板の構成図
【図3】第1の実施の形態に用いられる偏光性回折格子の構成図
【図4】第1の形態における偏光位相分離素子の入射角度と偏光角の相関図
【図5】第2の実施の形態における偏光位相分離素子の構成図
【図6】第2の実施の形態に用いられる偏光性回折格子の構成図
【図7】コレステリック相(高分子)液晶に入射する光の波長と屈折率との関係図
【図8】第2の実施の形態における偏光位相分離素子の入射角度と偏光角の相関図
【図9】光ヘッド装置の実施の形態の構成図
【図10】光通信装置の実施の形態の構成図
【図11】実施例における光ヘッド装置の受光光学系および各光学距離を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0020】
〔偏光位相分離素子の第1の実施の形態〕
偏光位相分離素子の第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態における偏光位相分離素子の構成図である。本実施の形態における偏光位相分離素子10は、無偏光回折格子20、波長板30及び偏光性回折格子40を有し、図1に示すように、この順に光が入射するように構成されている。
【0021】
無偏光回折格子20は、例えば、光学的に等方性の屈折率を示す等方性材料からなる透明基板の表面に周期的な凹凸が形成されたものであったり、透明基板の表面に、他の等方性材料が凹凸状に形成されたものであったりしてもよい。回折格子の断面が矩形状の凹凸である場合、±1次回折光の回折効率が最大になるように設定すると、+1次回折光と−1次回折光の光量をそれぞれ大きくすることができ、直進透過する0次回折光(直進透過光)を小さくすることができるので、効率よく2つの光に分岐することができる。また、回折格子の断面がブレーズ形状の凹凸またはブレーズ状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状の凹凸である場合、0次回折光と例えば+1次回折光の光量をそれぞれ大きくすることができ、−1次回折光を小さくすることができるので、効率よく2つの光に分岐することができる。尚、回折角度は、入射する光の波長と回折格子の周期の幅(格子ピッチ)によって決定するので、例えば、回折角度を大きくして光を分岐させる場合は、格子ピッチを狭く設計するとよい。
【0022】
波長板30は、無偏光回折格子20で分岐された2つの光それぞれに対応した、第1の領域31と第2の領域32を有しており、第1の領域31または第2の領域32のいずれかは、信号光と参照光との間にπ/2の位相差が与えられるように設定されていればよい。例えば、第1の領域31は等方性材料から構成され、第2の領域32は複屈折性材料から構成され、第2の領域32の厚さを調整することで所望の位相差を与えることができる。また、第1の領域31または第2の領域のいずれか一方は、透明な等方性材料から構成されているものに限らず、空気であってもよい。一方が空気である場合、他方の領域にのみ所望の位相差を与えられるように設計された複屈折性材料が備えられていればよい。詳細の構成については後述する。
【0023】
偏光性回折格子40は、入射する光のうち互いに直交する偏光状態の光毎、透過または回折させて進行する方向が互いに異なるように作用する。例えば、入射する光のうち、第1の直線偏光の光は直進透過させ、第1の直線偏光の光と直交する第2の直線偏光の光を回折させる機能を有する。偏光性回折格子40は、例えば、光学的に複屈折性を示す複屈折性材料と等方性材料とが、断面が周期的な凹凸を形成するように構成される。そして、複屈折性材料の常光屈折率noまたは異常光屈折率ne(no≠ne)と、等方性材料の屈折率nsとが略一致する材料を組み合わせることによって、上記の作用を得ることができる。尚、回折角度は、無偏光回折格子20と同様に、回折角度を大きくして光を分岐させる場合、格子ピッチを狭く設計するとよい。詳細の構成については後述する。
【0024】
次に、偏光位相分離素子10の作用について説明する。本実施の形態における偏光位相分離素子10に入射した光50は、無偏光回折格子20により透過および/または回折によって、互いに分離した2つの光51aと51bと、に分岐される。尚、光50は信号光と参照光とが合波された光であり、図1において偏光位相分離素子10にはZ軸方向に入射する。矢印S1は信号光の偏光方向を示すものであり、矢印S2は参照光の偏光方向を示すものである。図1では、矢印S1に示される信号光の偏光方向はX軸方向であり、矢印S2に示される参照光の偏光方向はY軸方向とし、信号光の偏光方向と参照光の偏光方向とは、略直交して入射する。
【0025】
分岐された光51aは、波長板30における第1の領域31に入射し、分岐された光51bは、波長板30における第2の領域32に入射する。波長板30における第1の領域31に入射した光51aは、信号光と参照光、つまり、X軸方向の光成分とY軸方向の光成分とにおいて位相差が付加されることなく光52aとして出射される。一方、分割波長板30における第2の領域32に入射した光51bは、信号光と参照光との間でπ/2の位相差が付加され光52bとして出射される。尚、位相差はπ/2に限らず、π/2の奇数倍となるようにすれば同様の効果を得ることができるが、波長板の厚さを薄くできることを考えると位相差がπ/2とすることが好ましい。
【0026】
次に、光52a及び光52bは、偏光性回折格子40に入射する。偏光性回折格子40に用いる複屈折性材料の光学軸40aは、矢印S1に示される信号光の偏光方向及び矢印S2に示される参照光の偏光方向と、略45°の角度をなしている。よって、偏光性回折格子40に入射した光52a及び光52bはそれぞれ、光学軸40aの方向の直線偏光の光と光学軸40aと直交する方向の直線偏光の光とに分岐される。即ち、偏光性回折格子40に入射した光52aは、光学軸40aに直交する偏光方向の光53aと光学軸40aと平行な偏光方向の光53bとに分岐され出射される。尚、光学軸は、遅相軸または進相軸のいずれかである。例えば、光学軸40aが遅相軸であって、複屈折性材料の異常光屈折率neとなる方向とし、複屈折性材料の常光屈折率noと等方性材料の屈折率nsと略一致(no≒ns、ne≠ns)している場合を考える。このとき、光53aは、光学軸40aに直交する直線偏光の光であるため、偏光性回折格子40において回折されることなくそのまま直進して出射され、光53bは、光学軸40aに平行な直線偏光の光であるため、偏光性回折格子40において回折されて出射される。
【0027】
このため、偏光分離素子10に入射した光50は、進行方向が異なる4つの光53a、53b、53c及び53dとして出射され、4つの光53a、53b、53c及び53dは、光50の位相差を基準にしたとき、信号光と参照光との位相差が、各々180°、0°、270°、90°となる。
【0028】
次に、本実施の形態における偏光分離素子10の機能について、ジョーンズベクトルを用いて説明する。信号光の電場強度(=1)に対して電場強度がA倍となるような参照光を入射させるとすると、入射する光50における電場E1は、数1に示す式で表される。
【0029】
【数1】
この後、無偏光回折格子20によって2つの光51a及び光51bに分岐され、更に、波長板30を透過した、光52aにおける電場E2、光52bにおける電場E3は、数2、数3に示す式で表される。
【0030】
【数2】
【0031】
【数3】
尚、数2におけるα、数3におけるβは、光を分岐した際における強度の係数である。また、数3におけるMは、s偏光とp偏光との間において、π/2の位相差を与えるジョーンズ行列であり、例えば、数4に示されるものである。
【0032】
【数4】
更に、偏光性回折格子40によって、光52aは光53aと光53bとに分岐され、光53aにおける電場E4、光53bにおける電場E5は、数5、数6に示す式で表される。同様に、偏光性回折格子40によって、光52bは光53cと光53dとに分岐され、光53cにおける電場E6、光53dにおける電場E7は、数7、数8に示す式で表される。
【0033】
【数5】
【0034】
【数6】
【0035】
【数7】
【0036】
【数8】
ここで、数5におけるP1、数6におけるP2は、偏光子を表すジョーンズ行列であり、例えば、数9、数10に示す式で表される。尚、γ、δは強度の係数を示す。
【0037】
【数9】
【0038】
【数10】
ここで、数9及び数10に示す式を用い、α、β、γ、δを1とした場合、電場E4、E5、E6及びE7により得られる光信号強度I4、I5、I6及びI7は、以下のように、表すことができる。
【0039】
I4=(1+A2−2AcosΔφ)/4、
I5=(1+A2+2AcosΔφ)/4、
I6=(1+A2+2AsinΔφ)/4、
I7=(1+A2−2AsinΔφ)/4、
上記光信号強度I4、I5、I6及びI7に基づき、下記の演算を行うことにより、A倍に増強された信号Sigを検出することができる。
【0040】
Sig={(I4−I5)2+(I6+I7)2}1/2
={(AcosΔφ)2+(AsinΔφ)2}1/2
=A
これより、偏光位相分離素子を透過した4つの光それぞれを検出し、更に、演算機能を有する光検出器を備えることで、信号Sigを高い感度で検出することができる。また、偏光位相分離素子と光検出器と、を含む光学系を光検出装置ともいい、この光検出装置において、高いS/N比を得ることができる。
【0041】
(波長板)
次に、本実施の形態における偏光分離素子10に用いられる波長板30について説明する。波長板30としては、様々な構成のものが考えられる。尚、図1に示すように、第1の領域31と第2の領域32は、無偏光回折格子20で分岐した2つの光51a、51bがそれぞれ入射するように配置されていればよく、第1の領域31と第2の領域32の形状やこれらの領域の境界線がどのようなものであってもよい。
【0042】
図2は、波長板30の具体的な構成として、波長板60、波長板70及び波長板80の断面模式図を例示したものである。具体的には、図2(a)に示されるように、波長板60は、第1の領域61において、等方性材料63が透明基板65及び66に挟持され、第2の領域62において、複屈折性材料となる高分子液晶64と等方性材料63とが透明基板65及び66に挟持される構造を有する。図2(a)においては、高分子液晶64は、Y軸方向に平行に配向される。波長板60は、透明基板66上に一様に高分子液晶膜を成膜した後、フォトリソグラフィ及びエッチング加工により第1の領域61における高分子液晶膜を除去し、第2の領域62にのみ高分子液晶64を形成し、この後、充填剤となる等方性材料63を透明基板65と透明基板66との間に、充填させることにより形成することができる。尚、第2の領域62には等方性材料63が備えられていない(空気)構造であってもよい。
【0043】
また、図2(b)に示されるように、波長板70は、第1の領域71が、透明基板面に垂直方向(Z軸方向)に配向された垂直配向液晶73を有し、第2の領域72が、透明基板面に水平方向に配向された水平配向液晶74を有する。図2(b)においては、水平配向液晶74は、Y軸方向に平行に配向される。このような波長板70の形成方法は、透明基板75及び76において、第1の領域71では液晶が垂直配向するように、第2の領域72では液晶が水平配向するように、配向処理を行い、配向処理の行われた面を対向させて液晶を封入することにより製造することができる。尚、配向処理の方法としては、配向膜のラビング、光配向処理、イオンビーム照射、配向させるための溝形成等の方法を用いることができる。
【0044】
また、図2(c)に示されるように、波長板80は、透明基板83上の第1の領域81には何も形成せず、基板83上の第2の領域82上にのみ複屈折層84として構造複屈折を有する材料やフォトニック結晶を形成することにより発生する位相差を調整するものである。この他、複屈折層84として延伸した高分子フィルムを形成したものであってもよい。また、第1の領域または第2の領域を透過する光に対して、位相差を与えないものとして、媒質が空気であってもよく、その場合、波長板は、実質的に第1の領域または第2の領域のいずれかに配置するものであって、入射する波長λの光に対してπ/2の奇数倍の位相差を与える複屈折性材料を形成すればよい。
【0045】
(偏光性回折格子)
次に、偏光性回折格子40について説明する。本実施の形態における偏光分離素子10に用いられる偏光性回折格子40は、図3に示すように、断面がブレーズ形状または、ブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状を有し、高分子液晶からなる複屈折性材料層44と、等方性材料が、複屈折性材料層44の凹凸を平坦化するように配置されてなる等方性材料層45とが、透明基板42及び43に挟持される構造を有する。尚、複屈折性材料層44は、凸条となる部分が+Y方向に厚くなるような(擬似)ブレーズ形状の傾きを有するが、逆の傾きを有するものであってもよく、さらに、光学軸の方向が45°方向であれば、X−Y平面において複屈折性材料層44の長手方向が任意の方向に揃うものでもよい。
【0046】
また、複屈折性材料層44の配向方向(遅相軸)は、図3のX−Y平面において、X軸より45°の角度をなす方向とする。尚、等方性材料の屈折率をnsとするとき、等方性材料は、高分子液晶の常光屈折率noまたは異常光屈折率ne(no≠ne)のいずれか一方に略一致する材料によって構成されている。尚、偏光性回折格子として、断面が(擬似)ブレーズ形状とすると、透過または回折して分岐する光の利用効率を高くできる点で好ましいが、これに限らず矩形状の周期的凹凸を有するものであってもよい。
【0047】
ここで、屈折率の関係をns≒no、ns≠neとするとき、高分子液晶の遅相軸方向となる異常光屈折率の方向の偏光成分の光は回折され、高分子液晶の進相軸方向となる常光屈折率の方向の偏光成分の光は回折されることなく直進透過する。このような偏光性回折格子40は、透明基板42上に高分子液晶膜を形成した後、フォトリソグラフィとエッチングを繰り返し行うことにより擬似ブレーズ形状となる高分子液晶からなる複屈折性材料層44を形成し、この後、透明基板42と透明基板43との間に、充填剤として等方性材料を充填した等方性材料層45を形成することにより作製することができる。また、複屈折性材料層44の形成方法としては、構造複屈折又はフォトニック結晶を格子状に形成する方法により作製することも可能である。
【0048】
(偏光分離素子の入射角依存性)
次に、本実施の形態における偏光分離素子10の入射角度依存性について説明する。図4は、本実施の形態における偏光分離素子10の波長板30の第2の領域32において生じるp偏光とs偏光の位相差と、従来の偏光位相変換分離素子、即ち、特許文献1に記載されている偏光位相変換分離素子となる角度選択性偏光変換素子において生じるp偏光とs偏光の位相差とについて、入射角度依存性を計算した結果である。尚、計算方法は、4×4行列法を用い、入射角度は空気中からの入射を想定した角度を示している。
【0049】
従来の角度選択性偏光変換素子については、光学軸を光軸と一致させた水晶において計算を行ったものであり、水晶における常光屈折率を1.557、異常光屈折率を1.567とし、入射角度10°で生じる位相差が、90°となるように、厚さを0.86mmとして行った。一方、本実施の形態における波長板30については、第2の領域32に、水平配向している高分子液晶膜を形成した場合について、入射角度依存性の計算を行ったものであり、高分子液晶における常光屈折率を1.510、異常光屈折率を1.552とし、厚さを2.4μmとして行った。
【0050】
図4に示されるように、本実施の形態における偏光分離素子10の波長板30では、入射角度が変化しても、出射される光のs偏光とp偏光との間に生じる位相差は略90°で、殆ど変化しないのに対し、従来の偏光位相変換分離素子に用いられる角度選択性偏光変換素子では、入射角度が変化すると、出射される光の位相差も変化してしまう。このように、本実施の形態において用いられる波長板30は、従来の角度選択性偏光変換素子に比べ、光の入射角度依存性が極めて低く、光学設計の自由度が大きく、製造のバラツキにより光学特性が大きく変化することも少ない。
【0051】
〔偏光位相分離素子の第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態とは異なる構成の偏光位相分離素子である。図5は、本実施の形態における偏光位相分離素子110は、無偏光回折格子120と偏光性回折格子130を有し、この順に光が入射するように構成されている。
【0052】
無偏光回折格子120は、第1の実施の形態の無偏光回折格子と同様のものを用いることができ、等方性材料によって断面が矩形状または(擬似)ブレーズ形状の凹凸を有する。偏光性回折格子130は、無偏光回折格子120で分岐された2つの光それぞれに対応し、いずれも複屈折性材料を含む、第1の領域131と第2の領域132を有する。偏光性回折格子130は、入射する光のうち互いに直交する偏光状態の光毎、透過または回折させて進行する方向が互いに異なるように作用する。例えば、第1の領域131では、入射する光のうち、第1の直線偏光の光は直進透過させ、第1の直線偏光の光と直交する第2の直線偏光の光を回折させる機能を有し、第2の領域132では、入射する光のうち、第1の円偏光の光となる左回りの円偏光の光は直進透過させ、第1の円偏光の光と直交する第2の円偏光の光となる右回りの円偏光の光は回折させる機能を有する。詳細の構成については後述する。尚、第1の円偏光の光が右回りの円偏光の光、第2の円偏光の光が左回りの円偏光の光であってもよい。
【0053】
次に、偏光位相分離素子110の作用について説明する。本実施の形態における偏光位相分離素子110に入射した光150は、無偏光回折格子120により透過および/または回折によって、互いに分離した2つの光151aと151bと、に分岐される。尚、光150は信号光と参照光とが合波された光であり、図5において偏光位相分離素子110にはZ軸方向に入射する。矢印S1は信号光の偏光方向を示すものであり、矢印S2は参照光の偏光方向を示すものである。本実施の形態では、矢印S1に示される信号光の偏光方向はX軸方向であり、矢印S2に示される参照光の偏光方向はY軸方向であり、矢印S1に示される信号光の偏光方向と矢印S2に示される参照光の偏光方向とは、略直交して入射する。
【0054】
次に、光151a及び光151bは、偏光性回折格子130に入射する。偏光性回折格子130は第1の領域131と第2の領域132を有しており、第1の領域131に用いる複屈折性材料の光学軸131aは、矢印S1に示される信号光の偏光方向及び矢印S2に示される参照光の偏光方向と、略45°の角度をなしている。よって、第1の領域131に入射した光151aは、光学軸131aの方向の直線偏光の光と光学軸131aと直交する方向の直線偏光の光とに分岐される。即ち、第1の領域131に入射した光151aは、光学軸131aに直交する偏光方向の光152aと光学軸131aと平行な偏光方向の光152bとに分岐され出射される。尚、光学軸は、遅相軸または進相軸のいずれかである。例えば、光学軸131aが遅相軸であって、複屈折性材料の異常光屈折率neとなる方向とし、複屈折性材料の常光屈折率noと等方性材料の屈折率ns1と略一致(no≒ns1、ne≠ns1)している場合を考える。このとき、光152aは、光学軸131aに直交する直線偏光の光であるため、第1の領域131において回折されることなくそのまま直進して出射され、光152bは、光学軸131aに平行な直線偏光の光であるため、第1の領域131において回折されて出射される。
【0055】
また、第2の領域132は右回りの円偏光の光に対する屈折率と、左回りの円偏光の光に対する屈折率とが異なる複屈折性材料を有する。よって、第2の領域132に入射した光151bは、右回りの円偏光の光と左回りの円偏光の光毎に分岐される。例えば、複屈折性材料の右回りの円偏光の光に対する屈折率をnR、左回りの円偏光の光に対する屈折率をnLとし、複屈折性材料のnLと等方性材料の屈折率ns2と略一致(nL≒ns2、nR≠ns2)させる場合を考える。このとき、光151bのうち、左回りの円偏光の光は、第2の領域132において回折されることなくそのまま直進して出射され、右回りの円偏光の光は、第2の領域132において回折されて出射される。
【0056】
このように、偏光位相分離素子110に入射した光150は、進行方向が異なる4つの光151a、151b、151c及び151dに分光される。尚、偏光性回折格子130の第2の領域132に形成される円偏光分離機能を有する回折格子としてはコレステリック相液晶を含む回折格子を用いることができる。
【0057】
次に、本実施の形態における偏光分離素子110の機能について、ジョーンズベクトルを用いて説明する。信号光の電場強度(=1)に対して電場強度がA倍となるような参照光を入射させるとすると、入射する光150における電場E1は、数11に示す式で表される。
【0058】
【数11】
この後、無偏光回折格子120によって2つの光151a及び光151bに分岐され、光151aにおける電場E2、光151bにおける電場E3は、数12、数13に示す式で表される。
【0059】
【数12】
【0060】
【数13】
尚、数12におけるα、数13におけるβは、光を分岐した際における強度の係数である。更に、偏光性回折格子130によって、光151aは光152aと光152bとに分岐され、光152aにおける電場E4、光152bにおける電場E5は、数14、数15に示す式で表される。同様に、偏光性回折格子130によって、光151bは光152cと光152dとに分岐され、光152cにおける電場E6、光152dにおける電場E7は、数16、数17に示す式で表される。
【0061】
【数14】
【0062】
【数15】
【0063】
【数16】
【0064】
【数17】
ここで、数14におけるP1、数15におけるP2は、偏光子を表すジョーンズ行列であり、例えば、数18、数19に示す式で表される。尚、γ、δは強度の係数を示す。
【0065】
【数18】
【0066】
【数19】
また、数16におけるP3、数17におけるP4は、偏光子を表すジョーンズ行列であり、例えば、数20、数21に示す式で表される。尚、ε、ηは強度の係数を示す。
【0067】
【数20】
【0068】
【数21】
数18及び数19に示す式を用い、α、β、γ、δ、ε、ηを1とした場合、電場E4、E5、E6及びE7により得られる光信号強度I4、I5、I6及びI7は、以下のように、表すことができる。
【0069】
I4=(1+A2−2AcosΔφ)/4、
I5=(1+A2+2AcosΔφ)/4、
I6=(1+A2−2AsinΔφ)/4、
I7=(1+A2+2AsinΔφ)/4、
上記光信号強度I4、I5、I6及びI7に基づき、下記の演算を行うことにより、A倍に増強された信号Sigを検出することができる。
【0070】
Sig={(I4−I5)2+(I6+I7)2}1/2
={(AcosΔφ)2+(AsinΔφ)2}1/2
=A
これより、偏光位相分離素子を透過した4つの光それぞれを検出し、更に、演算機能を有する光検出器を備えることで、信号Sigを高い感度で検出することができる。そして、偏光位相分離素子と光検出器と、を含む光検出装置により高いS/N比を得ることができる。
【0071】
次に、図6に偏光性回折格子130の具体的な構成として断面模式図を示す。この偏光性回折格子130は、図5にも示すように、第1の領域131と第2の領域132を有している。また、偏光性回折格子130は、図6に示すように、第1の領域131には、断面がブレーズ形状または、ブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状を有し、高分子液晶からなる第1の複屈折性材料層133と、等方性材料が、第1の複屈折性材料層133の凹凸を平坦化するように配置されてなる第1の等方性材料層135とが、透明基板137及び透明基板138に挟持される構造を有する。尚、第2の領域132には、第1の等方性材料層135のみが透明基板137及び透明基板138に挟持される構造を有する。
【0072】
また、第1の複屈折性材料層133の配向方向(遅相軸)は、図5のX−Y平面において、X軸より45°の角度をなす方向となる。尚、第1の等方性材料層135を構成する等方性材料の屈折率をns1とするとき、等方性材料は、高分子液晶の常光屈折率noまたは異常光屈折率ne(no≠ne)のいずれか一方に略一致する材料によって構成する。尚、偏光性回折格子として、断面が(擬似)ブレーズ形状とすると、透過または回折して分岐する光の利用効率を高くできる点で好ましいが、これに限らず矩形状の周期的凹凸を有するものであってもよい。
【0073】
また、第2の領域132には、断面がブレーズ形状または、ブレーズ形状を階段状に近似した擬似ブレーズ形状を有し、コレステリック相高分子液晶からなる第2の複屈折性材料層134と、等方性材料が、第2の複屈折性材料層134の凹凸を平坦化するように配置される第2の等方性材料層136とが、透明基板138及び透明基板139に挟持される構造を有する。尚、第1の領域131には、第2の等方性材料層136のみが透明基板138及び透明基板139に挟持される構造を有する。
【0074】
また、第2の複屈折性材料層134を構成するコレステリック相高分子液晶は、液晶分子が厚さ方向に10回転以上螺旋しているものである。コレステリック相高分子液晶は、入射する光の波長λが螺旋ピッチPとコレステリック相高分子液晶の屈折率n(λ)との積と同程度の場合、螺旋軸方向と平行に入射する光のうち、液晶分子のねじれ方向と同じ回転方向となる円偏光がほぼ反射され、逆向きの回転方向となる円偏光はほぼ透過する円偏光依存性を有する。この反射特性を示す波長帯域の中心波長λ0(以下、選択反射波長という)は、螺旋ピッチをP、液晶の常光屈折率をno、異常光屈折率をneとすると、
λ0=(ne+no)×P/2
の関係で表すことができ、また、反射帯域幅Δλは、
Δλ=|ne−no|×P
の関係で表すことができる。尚、この(λ0±Δλ/2)を反射波長帯域という。
【0075】
このことから、反射波長帯域の光が、液晶分子の螺旋軸方向と平行する方向に進行し液晶分子のねじれ方向と同じ回転方向となる円偏光である場合、コレステリック相高分子液晶は反射作用を有する。反射波長帯域の反射率は、コレステリック相高分子液晶内部の螺旋ピッチ数に依存する。螺旋ピッチ数は液晶分子の回転数で表し、10回転を超える螺旋ピッチ数では厚さに依存せず反射波長帯域でほぼ一様に高い反射率を示す。
【0076】
図7は、コレステリック相高分子液晶の屈折率の波長依存性を示す特性図である。例として液晶分子のねじれ方向が、光の進行方向に対して右回りであるとして説明する。この場合、右回りの円偏光の光が入射すると、反射波長帯域の近傍において屈折率の変化が大きくなる。なお、直線偏光の光が入射した場合であっても、直線偏光の光のうち、右回りの円偏光の光の成分に対して上記のような作用を生じる。一方、左回りの円偏光の光に対して反射波長帯域を有さないので、大きな屈折率の変動は生じない。このとき、波長λの右回りの円偏光に対する屈折率をnR(λ)、左回りの円偏光に対する屈折率をnL(λ)とし、円偏光屈折率異方性ΔnC(λ)=|nR(λ)−nL(λ)|とする。
【0077】
このとき、反射波長帯域の近傍では、0ではないΔnCを有する。また、反射波長帯域から大きく離れた波長の光が入射すると、ΔnCがほぼ0となるため、円偏光屈折率異方性が発現しなくなる。この反射波長帯域は、螺旋ピッチPを調整することによって制御することができる。この場合、不斉炭素を有するネマチック液晶やネマチック液晶にカイラル剤を添加してコレステリック相液晶を構成するが、このカイラル剤の添加量を調整して反射波長帯域を決定することができる。
【0078】
図7に示すように、反射波長帯域より短波長側においてΔnC(>0)の値の波長依存性が小さく安定した領域があり、例えば、対象とする光の波長λAをこの領域付近に合わせるように波長λAよりも長波長側に反射波長帯域を設定することもできる。また、対象とする光の波長λAを反射波長帯域内に設定して高いてΔnCを得ることもできるが、一方の円偏光の光の反射率が大きくなり、光利用効率が低減するので、対象とする光の波長λAは反射波長帯域より外側に設定することが好ましい。
【0079】
次に、第2の複屈折性材料層134の凹凸を平坦化するように配置される第2の等方性材料層136について説明する。第2の等方性材料層136を構成する等方性材料の屈折率をns2は、等方性材料は、コレステリック相高分子液晶の右回り円偏光に対する屈折率nRまたは左回り円偏光に対する屈折率をnL(nR≠nL)のいずれか一方に略一致する材料によって構成する。尚、偏光性回折格子として、断面が(擬似)ブレーズ形状とすると、透過または回折して分岐する光の利用効率を高くできる点で好ましいが、これに限らず矩形状の周期的凹凸を有するものであってもよい。また、第1の複屈折性材料層133および第2の複屈折性材料層134は、凸条となる部分が+Y方向に厚くなるような(擬似)ブレーズ形状の傾きを有するが、逆の傾きを有するものであってもよく、さらに、光学軸の方向が45°方向であれば、X−Y平面において第1の複屈折性材料層133および第2の複屈折性材料層144の長手方向が任意の方向に揃うものでもよい。
【0080】
尚、図6に示すように、第1の領域131と第2の領域132は、無偏光回折格子120で分岐した2つの光151a、151bがそれぞれ入射するように配置されていれば、第1の領域131と第2の領域132の形状やこれらの領域の境界線がどのようなものであってもよい。また、第1の複屈折性材料層133と第1の等方性材料層135との組み合わせ、第2の複屈折性材料層134と第2の等方性材料層136との組み合わせは、それぞれ分けて、複数の層を構成しているが、例えば、第1の等方性材料層135の等方性材料の屈折率ns1と、第2の等方性材料層136の等方性材料の屈折率ns2と、を一致させる条件が成立する場合、偏光性回折格子130の構成をより単純化できる。つまり、第2の複屈折材料層134を、透明基板138上に配置させて、第1の等方性材料層135で凹凸を平坦化させる1層の構造とすることもできる。
【0081】
尚、第1の複屈折性材料層133として高分子液晶をブレーズ状に形成する方法としては、透明基板138上に高分子液晶膜を成膜した後、フォトリソグラフィとエッチング加工を繰り返すことにより形成することが可能である。また、高分子コレステリック相液晶134をブレーズ状に形成する方法としては、透明基板139上に高分子コレステリック相液晶膜を成膜した後、フォトリソグラフィとエッチング加工を繰り返すことにより形成することが可能である。
【0082】
次に、本実施の形態における偏光分離素子110の入射角度依存性について説明する。図8は、本実施の形態における偏光分離素子110の偏光性回折格子130の第1の領域131において生じる回折光の回折効率および、第2の領域132において生じる回折光の回折効率の入射角度依存性を計算した結果である。第1の領域131において、第1の等方性材料層135を構成する等方性材料の屈折率ns1が、第1の複屈折性材料層133である高分子液晶の常光屈折率noに略一致する。そして、第2の領域132において、第2の等方性材料層136を構成する等方性材料の屈折率ns2が、第2の複屈折性材料層134であるコレステリック相高分子液晶の左回り円偏光の屈折率nLに略一致する。つまり、第1の領域131において、異常光屈折率となる方向の直線偏光の光で入射する光は回折させ、常光屈折率となる方向の直線偏光の光で入射する光は透過させる。また、第1の領域132において、右回りの円偏光の光で入射する光は回折させ、左回りの円偏光の光で入射する光は透過させる。
【0083】
具体的に、第1の複屈折性材料層133は、常光屈折率noが1.52、異常光屈折率noが1.57のネマッチック液晶からなり、回折格子ピッチ10μmで、断面形状が、ブレーズ形状を16段で各段の高さが0.5μmとなる階段形状に近似した擬似ブレーズ形状を考える。また、第2の複屈折性材料層134は、左回りの円偏光の屈折率nLが1.640、右回りの円偏光の屈折率nLが1.627、のコレステリック液晶からなり、回折格子ピッチ10μmで、断面形状が、ブレーズ形状を8段で各段の高さが3.9μmとなる階段形状に近似した擬似ブレーズ形状を考える。尚、コレステリック相液晶に用いた液晶のネマッチック相における常光屈折率は1.55、異常光屈折率は1.75とし、コレステリックのカイラルピッチを0.36μmとし、左右の円偏光の屈折率はド・フリース方程式を用いて計算した。また、回折格子の計算にはRigorous Coupled Wave Analysis(RCWA)法を用いた。図8のように、入射角度が9°〜11°の範囲において、それぞれの回折効率の入射角度依存性はほとんどみられない。
【0084】
このように、本実施の形態における偏光位相分離素子110は、無偏光回折格子120と偏光性回折格子130により構成されているため、入射角度の依存性が小さく、所望の位相差を有する偏光状態で互いに異なる4つの方向に進行する光に分離することができる。さらに、組立等の製造コストを低減させることができる。
【0085】
〔光ヘッド装置の実施の形態〕
次に、光ヘッド装置の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における偏光位相分離素子10または、第2の実施の形態における偏光位相分離素子110を有する光ヘッド装置である。
【0086】
図9に、本実施の形態における光ヘッド装置の構成を示す。本実施の形態における光ヘッド装置210において、光源211から出射された光は、互いに直交する直線偏光であるp偏光とs偏光との光量比が所定の値となるように偏光面を調整して配置された1/2波長板212に入射する。偏光ビームスプリッタ213はs偏光の光は反射し、p偏光の光は直進透過する偏光依存性を有する。そして、偏光ビームスプリッタ213に入射するs偏光の光は光ディスク217側へ偏向され、p偏光の光は直進するよう偏光成分毎に光が分岐される。偏光ビームスプリッタ213によって偏向されたs偏光の光は、コリメータレンズ214によって平行光となり、1/4波長板215によって円偏光の光となった後、対物レンズ216によって光ディスク217に照射される。光ディスク217に照射された光は、光ディスク217の情報記録面で反射され、逆回りの円偏光の光となり、対物レンズ216を介し、1/4波長板215によりp偏光の光となり、コリメータレンズ214及び、偏光ビームスプリッタ213を直進透過し、偏光ビームスプリッタ221に入射する。
【0087】
一方、光源211からの光のうち、偏光ビームスプリッタ213を直進透過するp偏光の光は、コリメータレンズ218により平行光となった後、1/4波長板219により円偏光の光となり、反射ミラー220によって反射される。反射ミラー220により反射された光は逆回りの円偏光の光となり、1/4波長板219によりs偏光の光となり、コリメータレンズ218を介し、偏光ビームスプリッタ213により偏向され、偏光ビームスプリッタ221に入射する。このように、偏光ビームスプリッタ213より、偏光ビームスプリッタ221側に進行する光として、光ディスク217の情報記録面において反射された光(p偏光の光)と、反射ミラー220において反射された光(s偏光の光)とが合波される。尚、合波された光のうち、光ディスク217の情報記録面において反射された光を信号光とし、反射ミラー220において反射された光を参照光とする。
【0088】
偏光ビームスプリッタ221は、s偏光の光およびp偏光の光について一部を透過、一部を反射させる特性を有する。そして、偏光ビームスプリッタ221においては、合波された光のうち信号光の一部が直進透過し、サーボ用光検出器222に入射する。光ヘッド装置210では、不図示のフォーカスエラーサーボ、トラッキングエラーサーボを有しており、サーボ用光検出器222により検出される光量に基づきフォーカスエラーサーボ、トラッキングエラーサーボが制御される。一方、偏光ビームスプリッタ221において偏向された信号光と参照光は、偏光位相分離素子10または偏光位相分離素子110により、進行方向が異なる4つの光に分離され、再生信号用光検出器224に入射する。再生信号用光検出器224に入射した光信号は、不図示の演算回路により演算が行われた後、再生信号として出力される。尚、上記反射ミラー222に代えて、コーナービームスプリッタ等を用いてもよい。
【0089】
本実施の形態における光ヘッド装置は、第1の実施の形態における偏光位相分離素子10または第2の実施の形態における偏光位相分離素子110を用いているため、光学設計の自由度が大きく、とくに発散光または収束光の光路中に配置した場合でも、入射角度依存性が小さく安定したホモダイン検出を用いた光ヘッド装置を得ることができる。
【0090】
〔光通信装置の実施の形態〕
次に、光通信装置の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態における偏光位相分離素子10または、第2の実施の形態における偏光位相分離素子110を有する光通信装置である。本実施の形態における光通信装置310は、偏光ビームスプリッタ311、偏光位相分離素子10または偏光位相分離素子110、光検出器313を有しており、偏光ビームスプリッタ311は、p偏光の光を直進させ、s偏光の光を偏向させる機能を有している。
【0091】
図10に示す光通信装置310には、信号光314を入射させるための信号光用光ファイバ315と、参照光316を入射させるための参照光用光ファイバ317とが接続されている。信号光用光ファイバ315からは強度及び位相が変調された信号光314が入射されている。尚、参照光316は、不図示の局部発振器からの光を用いてもよく、また、信号光と同一光源からの光を用いてもよい。信号光314と参照光316は、偏光ビームスプリッタ311に各々異なる方向より入射させることにより合波される。即ち、信号光314と参照光316との入射方向は異なり、信号光314のうちp偏光成分は偏光ビームスプリッタ311において直進透過し、参照光316のうちs偏光成分は偏光ビームスプリッタ311により偏向される。これにより、信号光314のp偏光成分の光と参照光316のs偏光成分の光は合波されて、偏光位相分離素子10(110)に入射する。偏光位相分離素子10(110)に入射した光は、4つの光に分岐され、光検出器313に入射し強度が検出される。尚、偏光分離素子10は、第2の実施の形態における偏光分離素子110を用いてもよい。
【0092】
ここで、光検出器313に入射する分岐された4つの光における光信号強度I4、I5、I6及びI7は、第1の実施の形態に示す偏光位相分離素子10を用いると、以下のようになる。
【0093】
I4=(1+A2−2AcosΔφ)/4、
I5=(1+A2+2AcosΔφ)/4、
I6=(1+A2+2AsinΔφ)/4、
I7=(1+A2−2AsinΔφ)/4、
ここで、例えば、Δφの値が、0、π/2、π、3π/2の4値である場合、光検出器313が、I4−I5の演算、I7−I6の演算を行う機能を有するとすると、Sig1=I4−I5=AcosΔφ、Sig2=I7−I6=AsinΔφより、下記に基づき、Δφの値を知ることができる。
【0094】
Δφ=0の場合、(Sig1、Sig2)=A(1、0)、
Δφ=π/2の場合、(Sig1、Sig2)=A(0、1)、
Δφ=πの場合、(Sig1、Sig2)=A(−1、0)、
Δφ=3π/2の場合、(Sig1、Sig2)=A(0、−1)、
以上より、位相情報を検知することが可能な小型で組立等の製造が容易な光通信装置310を得ることができる。
【実施例】
【0095】
実施例として、偏光位相分離素子10を光ヘッド装置に配置した場合について説明する。図11は、図9の光ヘッド装置210のうちコリメータレンズ214(または218)および偏光位相分離素子10、再生信号用光検出器224について示したものであり、偏光ビームスプリッタ213および221については図示していない。光源から出射され光ディスクによって反射された信号光はコリメータレンズ214によって集光光となり、光源から出射され反射ミラー220によって反射された参照光はコリメータレンズ218によって集光光となる。2つの光は図示しない偏光ビームスプリッタ221によって合波され、偏光位相分離素子10によって4つの光に分岐され、再生信号用光検出器224に至る。
【0096】
光の波長を405nm、ビーム径を2mmφ、コリメータレンズ214からの焦点距離を15mmとし、再生信号用光検出器224から光軸に沿った方向にそれぞれ5.8mm、3.8mm、3.2mmの位置に無偏光回折格子20、波長板30、偏光性回折格子40を配置する。
【0097】
無偏光回折格子20は厚さ2mmの石英ガラス基板の平面上に、X軸方向が長手方向でY軸方向に周期的な凹凸加工を行った回折格子であり、周期的な凹凸構造のピッチが2.3μm、凹凸の深さが422nmとなるように加工する。石英ガラスの屈折率を1.48とすると、波長405nmの光に対して、±1次回折効率は40%、0次回折効率は略0%となる。このようにして、光線を追跡すると厚さ2mmの石英ガラス基板を通過後、+1次回折光と−1次回折光は空間的に重ならなくなる。
【0098】
波長板30は図2(b)の波長板70と同様の構造を有しており、厚さ0.3mmの一対の石英ガラス基板で高分子液晶を挟持した構造となっている。一対の石英ガラス基板は第1の領域71、第2の領域72に対してそれぞれ垂直配向処理、Y方向が異常光方向となるような水平配向処理がなされ、配向処理を施した平面を対向させるように重ね、その空隙を液晶で満たすようにする。高分子液晶の異常光屈折率を1.57、常光屈折率を1.52とし、高分子液晶の厚さを2μmとする。このとき垂直配向をした第1の領域71ではX軸方向、Y軸方向の直線偏光に対して位相差が発生せずに、第2の領域72ではX軸方向、Y軸方向の直線偏光に対してπの位相差が発生する。第1の領域に対しては無偏光回折格子による+1次回折光が入射し、第2の領域に対しては−1次回折光が入射するので−1次回折光はX軸方向とY軸方向の直線偏光に対してπの位相差が与えられる。
【0099】
偏光性回折格子40は厚さ0.3mmの石英ガラス基板(X−Y平面)上でX軸方向から45度方向に配向した高分子液晶を16段の擬似ブレーズ形状とし、充填材によって厚さ0.3mmの石英ガラス基板と貼り合わせる。高分子液晶の異常光屈折率を1.57、常光屈折率を1.52、充填材の屈折率を1.52とする。ブレーズ形状は長手方向がX軸方向で、Y軸方向に対して周期的に配置され、回折格子ピッチは10μm、ブレーズの各段の高さは0.5μmである。RCWA法によって回折効率を計算すると、このとき常光屈折率となる方向と同一方向の直線偏光した光が入射した場合には回折せずに直進透過し、異常光屈折率となる方向の直線偏光が入射した場合には1次回折効率が90%となる。
【0100】
以上のように偏光位相分離素子10に入射した光50は4つの光束53a、53b、53c、53dの4つの光束に分岐され、再生信号用光検出器224に照射される。再生信号用光検出器224によって得られた信号に対し、演算を行うことによってS/N比の高い再生信号を得ることができる。
【符号の説明】
【0101】
10 偏光位相分離素子
20 無偏光回折格子
30、60 波長板
31、61 第1の領域
32、62 第2の領域
40 偏光性回折格子
40a 光学軸
42、43、65、66 透明基板
44 複屈折性材料層
45 等方性材料層
50、51a、51b、52a、52b、53a、53b、53c、53d 光
63 等方性材料
64 高分子液晶
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、
前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して位相差を与えず、他方の光に対してのみ、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えるように、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料を有する波長板と、
π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えられた光を含む2つの光が入射し、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する偏光性回折格子と、を備えた、偏光位相分離素子。
【請求項2】
前記偏光性回折格子は、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる複屈折性材料層および、屈折率がnsとなる等方性材料からなる等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率nsは、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、
前記複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記位相板の光学軸の方向とが、略45°の角度をなす請求項1に記載の偏光位相分離素子。
【請求項3】
前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、
前記第2の領域にのみ、高分子液晶を有する請求項1または請求項2に記載の偏光位相分離素子。
【請求項4】
前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、
前記第1の領域および前記第2の領域は、いずれも高分子液晶を有し、
前記第1の領域における高分子液晶は厚さ方向に略平行に配向される請求項1または請求項2に記載の偏光位相分離素子。
【請求項5】
直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、
前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第1の領域と、他方の光に対して、互いに直交する、第1の円偏光の光と第2の円偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第2の領域と、を有する偏光性回折格子と、と備えた偏光位相分離素子。
【請求項6】
前記偏光性回折格子は、第1の領域が、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる第1の複屈折性材料層および、屈折率がns1となる等方性材料からなる第1の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns1は、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、前記第1の複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記s偏光の光の方向とが、略45°の角度をなし、
第2の領域が、右回りの円偏光の光に対する屈折率nRと左回りの円偏光の光に対する屈折率nL(nR≠nL)を有する複屈折材料からなる第2の複屈折性材料層および、屈折率がns2となる等方性材料からなる第2の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns2は、前記常光屈折率nRまたは前記異常光屈折率nLと略等しい請求項5に記載の偏光位相分離素子。
【請求項7】
光源と、
前記光源からの光のうち、互いに直交するs偏光の光とp偏光の光毎に偏向分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された一方の光を光ディスクに集光させる対物レンズと、
前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された他方の光を反射する反射ミラーと、
前記光ディスクで反射された光および、前記反射ミラーで反射された光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、請求項1〜6いずれか1項に記載の偏光位相分離素子を備えた光ヘッド装置。
【請求項8】
互いに直交するs偏光の光とp偏光の光とが異なる方向から入射して合波させる偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタを出射する光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、請求項1〜6いずれか1項に記載の偏光位相分離素子を備えた光通信装置。
【請求項1】
直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、
前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して位相差を与えず、他方の光に対してのみ、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えるように、厚さ方向に光学軸が揃った複屈折性材料を有する波長板と、
π/2の奇数倍に略等しい位相差を与えられた光を含む2つの光が入射し、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する偏光性回折格子と、を備えた、偏光位相分離素子。
【請求項2】
前記偏光性回折格子は、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる複屈折性材料層および、屈折率がnsとなる等方性材料からなる等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率nsは、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、
前記複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記位相板の光学軸の方向とが、略45°の角度をなす請求項1に記載の偏光位相分離素子。
【請求項3】
前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、
前記第2の領域にのみ、高分子液晶を有する請求項1または請求項2に記載の偏光位相分離素子。
【請求項4】
前記波長板は、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、位相差を与えない、第1の領域と、前記s偏光の光と前記p偏光の光との間で、π/2の奇数倍に略等しい位相差を与える第2の領域を有し、
前記第1の領域および前記第2の領域は、いずれも高分子液晶を有し、
前記第1の領域における高分子液晶は厚さ方向に略平行に配向される請求項1または請求項2に記載の偏光位相分離素子。
【請求項5】
直線偏光の光であるs偏光の光と、前記s偏光の光と直交するp偏光の光とが含まれる入射光を、2つの進行方向に分岐する無偏光回折格子と、
前記無偏光回折格子により分岐された2つの光のうち、一方の光に対して、互いに直交する、第1の直線偏光の光と第2の直線偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第1の領域と、他方の光に対して、互いに直交する、第1の円偏光の光と第2の円偏光の光毎、2つの進行方向に分岐する第2の領域と、を有する偏光性回折格子と、と備えた偏光位相分離素子。
【請求項6】
前記偏光性回折格子は、第1の領域が、光学軸が厚さ方向に揃い、常光屈折率noと異常光屈折率ne(no≠ne)を有する複屈折性材料からなる第1の複屈折性材料層および、屈折率がns1となる等方性材料からなる第1の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns1は、前記常光屈折率noまたは前記異常光屈折率neと略等しく、前記第1の複屈折性材料層の光学軸の方向と、前記s偏光の光の方向とが、略45°の角度をなし、
第2の領域が、右回りの円偏光の光に対する屈折率nRと左回りの円偏光の光に対する屈折率nL(nR≠nL)を有する複屈折材料からなる第2の複屈折性材料層および、屈折率がns2となる等方性材料からなる第2の等方性材料層によって周期的凹凸が形成され、前記屈折率ns2は、前記常光屈折率nRまたは前記異常光屈折率nLと略等しい請求項5に記載の偏光位相分離素子。
【請求項7】
光源と、
前記光源からの光のうち、互いに直交するs偏光の光とp偏光の光毎に偏向分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された一方の光を光ディスクに集光させる対物レンズと、
前記偏光ビームスプリッタで偏向分離された他方の光を反射する反射ミラーと、
前記光ディスクで反射された光および、前記反射ミラーで反射された光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、請求項1〜6いずれか1項に記載の偏光位相分離素子を備えた光ヘッド装置。
【請求項8】
互いに直交するs偏光の光とp偏光の光とが異なる方向から入射して合波させる偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタを出射する光を検出する光検出器と、を備え、
前記偏光ビームスプリッタと前記光検出器との間の光路中に、請求項1〜6いずれか1項に記載の偏光位相分離素子を備えた光通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−44204(P2011−44204A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192264(P2009−192264)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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