説明

偏光変換素子、偏光変換ユニット及び投写装置

【課題】有機フィルム製のλ/2波長板を用いても長寿命な偏光変換素子、これを備えた偏光変換ユニット、投写装置を実現する。
【解決手段】互いに略平行な光入射面11及び光出射面12と、光出射面11に対して所定の角度をもって順次接合された複数の透光性ユニット13と、透光性ユニット13の間に交互に設けられた偏光分離膜14及び反射ミラー膜15と、有し、光入射面11に入射した光束を偏光方向が異なる2種類の偏光光束に分離して光出射面から出射する偏光分離手段10と、2種類の偏光光束のうち、少なくとも一方の偏光方向を回転させて他方の偏光光束と揃える偏光回転素子40と、偏光回転素子40を一方の主面に形成され、偏光回転素子よりも高い熱伝導率を有する放熱透明基板30と、を備え、放熱透明基板30は、他方の主面において偏光分離手段10の光出射面12に対して無機材料主成分とする接合層20により接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からのランダム偏光光束を一種類の偏光光束に変換するための偏光変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶プロジェクター等の投写装置は、特許文献1や特許文献2に開示されているような構造を有する偏光変換素子を備えている。前記偏光変換素子は、光源から出射されるランダム偏光光束(互いに偏光面が直交するP偏光とS偏光や偏光面の方向がさまざまな直線偏光が混在した光束)を所定の直線偏光光束に統一して出射する素子である。
かかる偏光変換素子は、一般に、両主面にPBS膜(互いに直交関係のP偏光とS偏光のうち、何れか一方の直線偏光を透過させ、他方の直線偏光を反射させる機能を有する光学機能膜、所謂、偏光分離膜)と反射ミラー膜とを夫々形成された無色透明なガラス等の透光性基板を幾重にも交互に積層してなる積層体を作成し、入射面(積層面)に対して所定の角度、例えば45度(あるいは135度)の角度に切断して得た偏光ビームスプリッター(PBS:Polarizing Beam Splitter)アレイの出射側表面に、有機系材料、例えばポリカーボネートフィルム製のλ/2波長板を有機系の接着剤により接着した構成を備えており、光源からのランダム偏光光束は、光路上に配置された遮光板により選択的にPBS膜に入射してS偏光光束とP偏光光束とに分離され、P偏光光束は、前記PBS膜を透過し、S偏光光束は、前記PBS膜を反射する。
前記PBS膜を透過したP偏光光束は、λ/2波長板に入射すると、位相が180度ずれることにより、S偏光の光に変換されてλ/2波長板から入射し、前記PBS膜を反射したS偏光光束は、反射ミラー膜でさらに反射して、前記PBSアレイのλ/2波長板が配置されていない領域の出射面から出射する。
結果として、前記偏光変換素子から出射する光は、S偏光の光に統一されることとなる。
【0003】
ところで、かかる構成を有する偏光変換素子を採用した液晶プロジェクター等に用いられる光源としての白色の光源ランプは、近年、高出力化、短アーク長化が進行しており、上述のPBS、及びλ/2波長板に対する熱負荷が増大している。特に、樹脂フィルムからなり、光や熱による性能劣化(偏光回転効率や光透過性の劣化)を生じ易いλ/2波長板への熱負荷の影響は顕著である。
かかる問題に対し、特許文献3には、偏光変換素子において、少なくとも一方の偏光光束(直線偏光光)の偏光方向を回転させるλ/2位相差(樹脂)フィルムを、熱伝導率が一般的な透明ガラス(熱伝導率:0.8W/m/K)よりも高い熱伝導性を有する放熱透明基板上に形成したことが記載されている。
同文献においては、例えば、λ/2位相差フィルムは、偏光ビームスプリッターアレイと熱伝導放熱透明基板とによって挟持されている。
なお、熱伝導放熱透明基板の材料としては、(1)酸化アルミニウムの結晶物であるサファイア、(2)酸化アルミニウムと酸化イットリウムの結晶物であるYAG(イットリウムアルミニウムガーネット)、(3)酸化ケイ素の結晶物である水晶、の何れかが使用可能である。
耐熱性に課題のあるλ/2位相差フィルムを、高い熱伝導性を有する熱伝導放熱透明基板上に形成することで、λ/2位相差フィルムで発生した熱を熱伝導放熱透明基板に伝達して、速やかに外界(空気中)に放散させ、λ/2位相差フィルムの蓄熱を防止することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−298212公報
【特許文献2】特許第3309846号
【特許文献3】特許第4193376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3に記載の構成を有する偏光変換素子について、λ/2位相差フィルムを、偏光ビームスプリッター及び熱伝導放熱透明基板(水晶放熱板)によって挟持し、熱伝導放熱透明基板とλ/2位相差フィルムとを変性アクリルレートを主成分とする接着剤(PHOTOボンドPB300:サンライズMSI株式会社)により接着したものを液晶プロジェクターに組み込み、実機条件60度〜80度の高温度下で加速エージング試験を実施したところ、水晶放熱板の真下に配置したフィルム製のλ/2波長板と、接着剤とが早期に黄変してしまうという現象が発生した。
すなわち、偏光ビームスプリッターに水晶放熱板を配置することによりフィルム製λ/2波長板の冷却効果を高めるという技術的思想だけでは、偏光変換素子の長寿命化を達成することは出来ていない、ということが判明したのである。
上記の問題点を鑑みて、本発明は、有機フィルム製のλ/2波長板(位相差板)を用いても、耐熱・耐光性能に優れた構造を有する長寿命な偏光変換素子、これを備えた偏光変換ユニット、投写装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係る偏光変換素子は、互いに略平行な光入射面及び光出射面を有し、前記光出射面に対して所定の傾斜角度を有した接合面によって接合された複数の透光性基板と、前記複数の前記透光性基板の接合面間に交互に設けられ、前記光入射面に入射した光束を偏光方向が互いに直交して異なる2種類の直線偏光光束に分離して一方の直線偏光光束を透過させ、他方の直線偏光光束を反射させる偏光分離手段と、反射された前記他方の直線偏光光束を反射し、光路の向きをかえる反射手段と、前記光出射面側に接合層を介して接合された放熱透明基板と、該放熱透明基板の出射面に配置され、前記2種類の偏光光束のうち何れか一方の直線偏光光束の偏光面を回転させて他方の直線偏光光束の偏光面と平行な直線偏光光束に変換して出射する有機材料からなる偏光回転素子と、
を備え、前記接合層は、無機材料を主成分とする。
【0008】
本適用例によれば、耐熱性に問題のあるフィルム製の偏光回転手段を用いても、透光性基板、偏光分離手段及び反射手段からなる素子本体と、偏光回転手段と、の間に放熱透明基板を設け、さらに、放熱透明基板を偏光回転手段に対して、無機成分を主成分とする接合層により接合したことにより、接合層の黄変を抑制し、耐熱・耐光性能に優れた構造を有する長寿命な偏光変換素子を実現することが出来る。
【0009】
[適用例2]本適用例に係る偏光変換素子は、前記接合層は、シロキサン結合を含み結晶化度が45%以下であるSi骨格と、該Si骨格にプラズマ重合法により結合される有機基からなる脱離基と、を含み、エネルギーを付与して表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより発現する接着性により、前記出射面側に前記放熱透明基板を接合することを特徴とする。
【0010】
本適用例によれば、放熱透明基板を出射面側に接合する際に、有機材料からなる接着剤を用いることなく、プラズマ重合法により接合したことで、接合層及び偏光回転手段の黄変を抑制し、耐熱・耐光性能に優れた構造を有する長寿命な偏光変換素子を実現することが出来る。
【0011】
[適用例3]本適用例に係る偏光変換素子は、適用例1において、前記接合層は、前記透光性基板に設けられた微結晶連続薄膜と、前記放熱透明基板に設けられた微結晶連続薄膜とを接触させて、前記透光性基板の微結晶連続薄膜と、前記放熱透明基板の微結晶連続薄膜の接触界面及び結晶粒界に原子拡散接合法により形成される、または前記透光性基板及び前記放熱透明基板のうちの何れか一方に設けられた微結晶連続薄膜と、何れか他方に設けられた微結晶構造とを接触させて、前記微結晶連続薄膜と前記微結晶構造との接触界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせる原子拡散接合法によって形成されることを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、放熱透明基板を偏光分離手段に対して接合する際に、有機材料からなる接着剤を用いることなく、原子拡散接合法により接合したことで、接合層及び偏光回転手段の黄変を抑制し、耐熱・耐光性能に優れた構造を有する長寿命な偏光変換素子を実現することが出来る。
【0013】
[適用例4]本適用例に係る偏光変換素子は、適用例1乃至3の何れかにおいて、前記放熱透明基板は、前記偏光分離手段と前記反射手段との配列方向に平行な両端部に、第1の溝部を備える。
【0014】
本適用例によれば、水晶放熱板の結晶光学軸が出射光の偏光面に対して0度または90度となるように、放熱透明基板に対して高精度で積層することが可能になり、偏光変換素子からの出射光に不必要な位相差が付くことを防止することが出来る。
【0015】
[適用例5]本適用例に係る偏光変換素子は、適用例4において、前記放熱透明基板は、前記透光性基板と、前記偏光分離手段又は前記反射手段と、の間の積層接着面に対応する箇所に、第2の溝部を備える。
【0016】
本適用例によれば、プラズマ重合法又は原子拡散接合法によって偏光分離手段に放熱透明基板を接合する際に、放熱透明基板のクラックや、透光性ユニットと偏光分離膜又は反射ミラー膜との間の剥離(割れ)の原因となる、透光性基板と偏光分離膜又は反射ミラー膜と積層接着面に生じる段差を避ける接合することが出来る。
また、偏光分離膜と放熱透明基板との接着面、反射ミラー膜と放熱透明基板との接着面付近に発生する気泡を、接着時に第2の溝部から逃がして光の透過率を確保することが可能になる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係る偏光変換素子は、適用例5において、前記第1の溝部及び前記第2の溝部の深さは、前記放熱透明基板の厚みに対して3乃至3.5対10の比率である。
【0018】
本適用例によれば、放熱透明基板に対する溝入れの安定化と、強度保証とを両立することが出来る。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る偏光変換素子は、適用例5又は6において、前記第1の溝部及び前記第2の溝部の幅は、0.1mm以上0.2mm以下である。
【0020】
本適用例によれば、溝部による放熱透明基板における光の透過率の低下を防ぐことが可能になる。
【0021】
[適用例8]本適用例に係る偏光変換ユニットは、適用例1乃至7の何れかの偏光変換素子と、当該偏光変換素子及び光源からの光束を選択的に前記偏光分離膜に入射させるための遮光板と、を着脱可能に組み込むための治具と、を備える。
【0022】
本適用例によれば、適用例1乃至7の何れかの偏光変換素子を、液晶プロジェクターなどの投射装置に組み込む時に、光源からの光束が偏光変換素子に入射する角度が常に一定になって、PS変換が正確に行えるような姿勢で組み込むことが出来る。
【0023】
[適用例9]本適用例に係る透写装置は、光源と、適用例8の偏光変換ユニットと、前記偏光変換ユニットから出射された光を画像信号に基づいて変調する光変調手段と、前記光変調手段から射出された変調光を投写する投写光学系と、を備える。
【0024】
本適用例によれば、適用例1乃至7の何れかの耐熱・耐光性能に優れた偏光変換素子を備え、高輝度の光源を使って鮮明な映像を長時間投影可能な投影装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を適用した液晶プロジェクターの一例を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を組み込んだ偏光変換ユニットの外観を示す図。
【図3】図2に示す偏光変換ユニットの分解図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る偏光変換素子の一例を示す図。
【図5】偏光分離スプリッターアレイの製造工程を説明する図。
【図6】偏光分離スプリッターアレイの製造工程を説明する図。
【図7】偏光分離スプリッターアレイの製造工程を説明する図。
【図8】偏光分離スプリッターアレイの製造工程を説明する図。
【図9】偏光分離スプリッターアレイの製造工程を説明する図。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る偏光変換素子の変形例を示す図。
【図11】本発明の第2の実施形態にかかる偏光変換素子の一例を示す図。
【図12】本発明の第3の実施形態にかかる偏光変換素子の一例を示す図。
【図13】本発明の第4の実施形態にかかる偏光変換素子の一例を示す図。
【図14】透光性ユニット等の角部が削られた状態でプラズマ重合法による水晶放熱板の結合を行った場合のPBSの状態を示す図。
【図15】図13の構成の偏光変換素子において、PBSと水晶放熱板との間の接合層をさらに拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態例を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を適用した液晶プロジェクターの一例を示す図である。
図1に示す投写型表示装置(液晶プロジェクター)100は、光源110と、第1のレンズアレイ111と、本発に係る偏光変換素子を組み込んだ偏光変換ユニット120と、重畳レンズ121と、で構成される照明光学系を備えている。また、ダイクロイックミラー131、132と、反射ミラー133とを含む色光分離光学系130を備えている。さらに、入射側レンズ140と、リレーレンズ141と、反射ミラー142、143とを含む導光光学系を備えている。また、3枚のフィールドレンズ144、145、146と、3枚の液晶ライトバルブ150R、150G、150Bと、クロスダイクロイックプリズム160と、投写レンズ170とを備えている。
【0027】
反射ミラー146は、重畳レンズから射出された光を色光分離光学系130の方向に反射する機能を有している。色光分離光学系130は、2枚のダイクロイックミラー131、132により、重畳レンズ121から射出される光を、赤、緑、青の3色の色光に分離する機能を有している。第1のダイクロイックミラー131は、重畳レンズ121から射出される光のうち赤色光成分を透過させるとともに、青色光成分と緑色光成分とを反射する。第1のダイクロイックミラー131を透過した赤色光は、反射ミラー133で反射され、フィールドレンズ144を通って赤光用の液晶ライトバルブ150Rに達する。このフィールドレンズ144は、重畳レンズ121から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の液晶ライトバルブの前に設けられたフィールドレンズ145、146も同様である。
【0028】
第1のダイクロイックミラー131で反射された青色光と緑色光のうちで、緑色光は第2のダイクロイックミラー132によって反射され、フィールドレンズ145を通って緑光用の液晶ライトバルブ150Gに達する。一方、青色光は、第2のダイクロイックミラー132を透過し、導光光学系、すなわち、入射側レンズ140、反射ミラー142、リレーレンズ141、反射ミラー143を通り、さらに、フィールドレンズ146を通って青色光用の液晶ライトバルブ150Bに達する。
なお、青色光に導光光学系が用いられているのは、青色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ140に入射した光束をそのまま、フィールドレンズ146に伝えるためである。
【0029】
3つの液晶ライトバルブ150R、150G、150Bは、入射した光を、与えられた画像情報(画像信号)に従って変調する光変調手段としての機能を有している。これにより、3つの液晶ライトバルブ150R、150G、150Bに入射した各色光は、与えられた画像情報に従って変調されて各色光の画像を形成する。
3つの液晶ライトバルブ150R、150G、150Bから射出された3色の変調光は、クロスダイクロイックプリズム160に入射する。
クロスダイクロイックプリズム160は、3色の変調光を合成してカラー画像を形成する色光合成部としての機能を有している。クロスダイクロイックプリズム160には、赤光を反射する誘電体多層膜と、青光を反射する誘電体多層膜とが、4つの直角プリズムの界面に略X字状に形成されている。これらの誘電体多層膜によって3色の変調光が合成されて、カラー画像を投写するための合成光が形成される。クロスダイクロイックプリズム160で生成された合成光は、投写レンズ170の方向に射出される。投写レンズ170は、この合成光を投写スクリーン上に投写する機能を有し、投写スクリーン上にカラー画像を表示する。
【0030】
図2は、図1の液晶プロジェクターの光学エンジン内に搭載される、本発明の実施の形態に係る偏光変換素子を組み込んだ偏光変換ユニットの外観を示す図である。
図3は、図2の偏光変換ユニットの分解斜視図である。
図2、図3に示す偏光変換ユニット120は、ユニット枠200と、本発明の偏光変換素子1、遮光板210と、レンズアレイ220と、クリップ230と、を備えている。ユニット枠200の一方の開口面(図3では下面)側からは、後述する2つの偏光変換素子本体を有する偏光変換素子1が挿入され、もう一方の開口面(図3では上面)側からは、遮光板210とレンズアレイ220とがこの順に挿入される。これらの光学素子210、220は、ユニット枠200に収納された状態で、4つのクリップ230で上下2方向から挟持される。クリップ230は弾性体で形成されているので容易に着脱することができ、偏光変換ユニット120の各部品もユニット枠に容易に着脱することができる。
かかるユニット枠200によって、液晶プロジェクターに対して、偏光変換素子1を、光源からの光束が偏光変換素子1(特に後述のPBS膜)に入射する角度が常に一定になって、PS変換が正確に行える姿勢で組み込むことが出来る。
後述するような、耐熱・耐光性能に優れた本発明の偏光変換素子を備えた偏光変換ユニットを組み込むことで、高輝度・高発熱の光源を使って鮮明な映像を長時間投影可能な液晶プロジェクターとすることが出来る。
【0031】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る偏光変換素子の一例を示す図であり、(a)は各部材の積層関係を示す断面図、(b)は水晶放熱板(放熱透明基板)の光軸方向を示す図である。
本発明の偏光変換素子1は、互いに略平行な光入射面11及び光出射面12を備え、図1に示す遮光板210からのランダム偏光光束の、光入射面11への入射方向と直交する方向に2つ結合された素子本体としての偏光分離スプリッターアレイ(以下、PBSアレイと称する)10(10A、10B)と、PBSアレイ10の光出射面12に対して接合層20により接合された、例えば水晶を材料とする熱伝導性の高い放熱透明基板(以下、水晶放熱板と記載する)30と、さらに、水晶放熱板30上に接着された有機材料からなる偏光回転素子(以下、λ/2位相差フィルムと記載する)40と、を備えている。
水晶放熱板30上のλ/2位相差フィルムは、変性アクリルレート又は変性メタクリレートを主成分とする接着剤あるいはプラズマ重合法(特開2010−113056号公報)などを用いて接合可能である。
【0032】
各PBSアレイ10は、互いに略平行な光入射面13a及び光出射面13b、並びに前記光出射面に対して所定の傾斜角度(例えば、45度あるいは135度)を有した接合面13cを備え、且つ互いの接合面によって直列に接合された透光性ユニット(透光性基板)13と、透光性ユニット13の間に交互に設けられた偏光分離手段としての偏光分離膜(PBS膜)14及び反射手段としての反射ミラー膜15と、を備えている。
なお、PBSアレイ10は、ガラス等の無色透明の基板(透光性板材)、PBS膜、及び反射ミラー膜を、接着剤(変性メタクリレートを主成分とするUT20(商品名:株式会社アーデル)、あるいは変性アクリルレートを主成分とするPB300等)により交互に幾重にも積層・接着し、上述の光出射面に対する角度で切断して形成している。
PBSアレイ10の製造工程をより詳しく説明すると、大きく分けて膜形成工程と、接着工程と、切断工程と、研磨工程と、から成っている。
【0033】
図5乃至図9は、本実施形態にかかる偏光分離スプリッターアレイの製造工程を説明する図である。
最初の膜形成工程では、図5に示すように、まず複数の透光性板材(ガラス等の無色透明基板)13Aが準備される。これらの透光性板材13Aは、互いに略平行な第1面13A1及び第2面13A2を有している。
複数の透光性板材13Aのうち、いくつかの透光性板材13Aの第1面13A1には、PBS膜14が形成され、第2面13A2には、反射ミラー膜15が形成される。その他の透光性板材13Aの第1面13A1及び第2面13A2には、これらの膜の何れかが形成されるか、あるいは何れの膜も形成されていない。
図6に示す接着工程では、これらの透光性板材13Aと、が接着剤16Aによって交互に貼り合わされる。このとき、PBS膜14と反射ミラー膜15とが透光性板材13Aを挟んで交互に積層されるようにする。
ここで、接着剤16Aとして変成アクリルレートを主成分とする接着剤を用いた場合、その厚みは約20μmとなる。変性メタクリレートを主成分とする接着剤の場合は、5〜10μmである。
【0034】
次に、図7に示すように、透光性板材13Aの第1面13A1にほぼ垂直な方向から紫外線が照射される。なお、紫外線は、PBS膜14及び反射ミラー膜15を通過するため、図7中全ての接着剤16Aは同時に硬化される。
これにより、PBS膜14と透光性板材13Aの間と、反射ミラー膜15及び第2の透光性板材の間に、それぞれ接着層16が形成される。そして、複数の透光性板材13Aが接合された積層体400が形成される。
なお、透光性板材13Aの第1面13A1にほぼ平行な方向から紫外線を照射してもよい。
次に、図8に示すように、切断工程として、第1面13A1と所定の角度θ(約45度)をなす切断面でほぼ平行に積層体400が切断されて、積層ブロック410が切り出される。
図9に示す、続く研磨工程では、切り出された積層ブロック410の切断面410Aを研磨装置500で研磨することにより、PBSアレイ10が得られる。
なお、切断された透光性板材13Aが、図4のPBSアレイ10における透光性ユニット13となる。
【0035】
図4に戻り、偏光分離膜14は、互いに偏光面が直交するP偏光光束及びS偏光光束が混在したランダム偏光光束が入射すると、P偏光光束を選択的に透過させ、S偏光光束を反射させる。
従って、光入射面11から入射したランダム偏光光束は、偏光分離膜14に入射すると、偏光分離膜14によってP偏光光束とS偏光光束に分離される。
分離された偏光光束のうち、P偏光光束は、偏光分離膜14を透過し水晶放熱板30に至り、水晶放熱板30の出射面31から出射される。なお、この際、水晶放熱板30の光学軸は、P偏光光束及びS偏光光束の偏光面の何れか一方の偏光面と一致する向きに設定しているので(図4(b))、P偏光光束の偏光面と前記光学軸とは平行或いは直交関係となるため当該P偏光光束に位相差が生じることはない。
【0036】
さらに、偏光分離膜14で反射されたS偏光光束は、反射ミラー膜15で反射されて水晶放熱板30に至り、さら水晶放熱板30を透過して、λ/2位相差板としてのλ/2位相差フィルム40に入射する。
λ/2位相差フィルム40に入射したS偏光光束は、λ/2位相差フィルム40を透過する過程で180度位相がずれるので、偏光面が90度回転されて、P偏光光束に変換されて出射されることとなる。
これにより、偏光変換素子1に入射したランダム偏光光束は、すべて1種類の偏光光束(P偏光光束)に揃えられて出射されることになる。
【0037】
水晶放熱板30は、熱伝導率が一般的な透明ガラス(熱伝導率:0.8W/m/K)よりも高い水晶から構成されて、λ/2位相差フィルム40に対して放熱板として機能する。
すなわち、高い熱伝導性を有し、偏光回転素子で発生した熱を水晶放熱板30に伝達して、速やかに外界(空気中)に放散させ、偏光回転素子の蓄熱を防止することが可能になる。
このとき、水晶放熱板30の配置箇所は、特許文献3の構造とは異なり、まずPBS10の出射面に直に積層し、次に当該水晶放熱板30の主表面にλ/2位相差フィルム40を積層する構造とした。また、本発明では、λ/2位相差フィルム40の表面に更に、水晶放熱板を積層する構造とはしていない。本願発明者は、λ/2位相差フィルム40の一方の主面を大気中に曝露しつつ、他方の主面に水晶放熱板を配置し、λ/2位相差フィルム40の積層された面とは反対側の前記水晶放熱板の主面をPBS10の出射面に直に積層させたことを特徴としている。
それに加え、本実施形態においては、水晶放熱板30をPBSアレイ10に接合する接合層20として、変性アクリルレートなどの有機溶剤を主成分とする接着剤を用いることなく、無機材料を主成分とする接合膜を用いた。
例えば、接合層20は、分子接合するプラズマ重合膜であり、その主材料は、ポリオルガノシロキシサンである。プラズマ重合膜は、プラズマ重合法により形成されシロキシサン結合を含み、結晶化度が45%以下であるSi骨格と、このSi骨格に結合する有機基からなる脱離基とを含む。そして、エネルギーを付与して表面付近に存在する脱離基が、Si骨格から脱離することにより、接着性を発現する。
このプラズマ重合膜は、エネルギーが付与されると、その表面及び内部に活性手が生じるため、プラズマ重合膜に強力な接着性が発現する。
【0038】
また、接合層20は、プラズマ重合法のみならず、原子拡散接合法により形成してもよい。
原子拡散接合法とは、まず、真空容器内におけるスパッタリングやイオンプレーティング等の真空成膜により、PBSアレイ10を構成する透光性ユニット13及び水晶放熱板30にそれぞれ微結晶連続薄膜を成膜する。そして、微結晶連続薄膜同士を、成膜中又は成膜後に重ね合わせて、接合界面及び結晶粒界において原子拡散を生じさせることにより透光性ユニット及び水晶放熱板の間で強固に接合する方法である。
なお、微結晶連続薄膜同士を重ね合わせるだけでなく、透光性ユニット13及び水晶放熱板30のいずれか一方に微結晶連続薄膜を形成し、他方に微結晶構造を形成する。
そして、これらの微結晶連続薄膜と微結晶構造とを重ね合わせることにより、原子拡散接合を実施することも出来る。
【0039】
このように、接合層20を無機化した構成を備えた偏光変換素子1を、実際に液晶プロジェクターに組み込んで、背景技術で説明した高温度・加速エージング試験を実施したところ、接合層20、及び有機フィルム製のλ/2位相差フィルム40が黄変する現象は見られなかった。
上述した実験において、上記の特許文献3に記載の構造、即ちλ/2位相差フィルムをPBSと水晶放熱板30とで挟持した構造において、変性アクリルレートを主成分とした接着剤で接着した場合は、フィルムの黄変・発火が発生することが分かり、また、同じく特許文献3の構成において、本実施形態のようにPBS上に水晶放熱板を配置し、さらに、その上にλ/2位相差フィルムを積層し、更に水晶放熱板を積層してしまうと、変性アクリルレートを主成分とした接着剤で水晶放熱板とPBSとの間にλ/2位相差フィルムを接合してしまうと、同様に、発熱・黄変してしまう問題が生じる。
【0040】
それに対し、本実施形態においては、PBSアレイ10に水晶放熱板30を直に、無機化した手法で接合することで、黄変を抑制することが出来た。
従来品(特許文献3の構造)において、変性アクリレートを主成分とする接着剤によって接着した場合、接着剤や位相差フィルムが黄変する問題があるが、無機的な方法によってPBS10の出射面に直に積層し、次に当該水晶放熱板30の主表面にλ/2位相差フィルム40を積層する構造することによって、こういった問題を防止して、従来品に比し長寿命が可能であることが確認出来た。
すなわち、PBSアレイ10に対して水晶放熱板30を、変性アクリレートを主成分した接着剤を用いて接合しているような従来製品においても、PBSアレイ10と水晶放熱板30との接合方法を変更することで、偏光変換素子を長寿命化させることが可能である。
【0041】
ところで、図4に示す構成において、偏光変換素子が、P偏光光束に統一して出射させる、所謂P偏光光学系エンジン用としたが、S偏光光束に統一して出射させるS偏光光学系光学エンジン用にアレンジすることが可能である。
即ち、この場合、図10に示すように、偏光分離膜14を透過したP偏光をS偏光に変換するためのλ/2位相差フィルム40を、水晶放熱板30におけるP偏光の出射領域に配置することになるが、収束度の強い光が、中心部のλ/2位相差フィル編む40Aに集光し、蓄熱、発熱の原因となるため、図4に示すP偏光光学系の構成が、より望ましいと言える。
なお、本実施形態で使用するλ/2位相差フィルムには、ポラテクノ社製のNR(ポリビニルアルコール系)、HPC(ポリカーボネート系)や、WBR(広帯域用)、WBR−90PCARやWBR−90PC(CL)ARなどのWBR−90シリーズ(広帯域用1/2波長板)などがある。
【0042】
以下に説明する実施形態は、図10に示す場合にも適用可能であるが、図4に示す構成に基づいて説明していく。
図11は、本発明の第2の実施形態にかかる偏光変換素子の一例を示す図であり、(a)は各部材の積層関係を示す断面図、(b)は概略斜視図である。
本実施形態においては、水晶放熱板30の、PBSアレイ10への接合面側に、2種類の溝部を設けている。
図11に示す溝部31は、2枚接合されたPBSアレイ10A、10Bの接合部に生じる段差をさけるための溝部であり、さらに、溝部32(第1の溝部)は、図11(b)から分かるように、水晶からなる放熱透明基板の光軸と、PBSアレイ10から出射されるS偏光光束及びP偏光光束の偏光面の方向と一致させる若しくは直交させて出射光に不要な位相差が付かないようにするための、組み付け時の位置決め用のマーカー溝である。
溝部32は、水晶放熱板30における、偏光分離膜14と反射ミラー膜15の配列方向に平行な両端部に設けられている。
このマーカー溝によって、水晶放熱板の結晶光学軸が出射光の偏光面に対して所定の角度(0度または90度)となるように、PBSアレイ10に対して高精度で積層することが可能になる。
【0043】
図12は、本発明の第3の実施形態にかかる偏光変換素子の一例を示す図であり、(a)は各部材の積層関係を示す断面図、(b)は概略斜視図である。
本実施形態においては、偏光変換素子がS偏光光束に統一して出射させるS偏光光学系光学エンジンの場合、図11に示したような、水晶放熱板30の光軸を、図12(b)に示すように45度ずらし、波長特性を持たせた水晶放熱板30Aとしたことが特徴的である。
この場合、水晶放熱板30Aは、偏光分離膜14で反射して、さらに反射ミラー膜15によって反射してPBSアレイ10から出射したS偏光の位相を180度ずらしてP偏光とするλ/2波長板として動作する。水晶放熱板30Aを出射したP偏光は、さらにλ/2位相差フィルム40によってS偏光に変換される。
かかる構成によれば、偏光変換素子が、S偏光光学系光学エンジン用の場合でも、偏光変換素子1の中心部にλ/2位相差フィルム40を配置する必要がなく、かかる偏光回転素子の蓄熱・発熱を効果的に抑制して、素子の長寿命化を図ることが出来る。
【0044】
図13は、本発明の第4の実施形態にかかる偏光変換素子の一例を示す図であり、(a)は各部材の積層関係を示す断面図、(b)は概略斜視図、(c)は、(a)の一部を拡大した図である。
本実施形態においては、水晶放熱板30の、PBSアレイ10における透光性ユニット13と、偏光分離膜14又は反射ミラー膜15との接合部との対応箇所に、第2の溝部として、図11に示したような溝部32を形成している。
上述の図5乃至図9で説明したように、本実施形態のPBSアレイ10は、ガラス等の無色透明の基板、PBS膜、及び反射ミラー膜を、接着剤(変性メタクリレートを主成分とするUT20、あるいは変性アクリルレートを主成分とするPB300等)により交互に幾重にも積層・接着し、上述の光出射面に対する角度で切断して形成し、さらに切断面を研磨して製造している。
この際、接着剤は粘度が高いため、透明基板とPBS膜、さらに透明基板と反射ミラー膜との間の接着層16が厚くなる。このように厚い接着層16を有する積層体が切り出されると、接着層16の端部に歪みや荒れが生じる。具体的には、接着層16が変性アクリルレート系のPB300の場合は約0.3μm、変性メタクリレート系のUT20の場合は、約0.2μmの段差が端部に生じる。
このような歪みや荒れが生じた状態で、図9に示したように切断面が研磨されると、接着層16の近傍における透光性ユニット13やPBS膜14、反射ミラー膜15の角部が削られてしまう。
この状態で、上述のプラズマ重合法によりPBSアレイ10に水晶放熱板30を接合すると、以下のような問題が生じる。
【0045】
図14は、透光性ユニット13等の角部が削られた状態でプラズマ重合法による水晶放熱板の結合を行った場合のPBSの状態を示す図である。
接合層20を介して水晶放熱板30を積層し、プラズマ重合法により接合する場合、その過程でエネルギー(圧縮力)を付与すると、水晶放熱板30における削られた角部17に当接する部分33付近に応力が集中することになる。
厚みの大きい接着剤(変性アクリルレートを主成分とするもので20μm、変性メタクリレートを主成分とするもので5〜10μm)と異なり、プラズマ重合法に用いられる接合膜は、厚みが5nm〜10000nmと極薄であるため、PBSアレイ10の表面に発生した段差を吸収することが出来ない。
従って、圧縮力が付与されることで、水晶放熱板30の部分33に過剰な応力が集中し、当接部分33にクラックが発生してしまったり、PBSアレイ10において、透光性ユニット13と、PBS膜14又は反射ミラー15とが剥離してしまったりするという不具合が発生する。
【0046】
そこで、図13に示したように、水晶放熱板30のPBSアレイ10と対向する面、特に、透光性ユニット13とPBS膜14(反射ミラー15)との接合箇所に対応する箇所に、溝32を設けることで、削られた箇所17が、水晶放熱板30に接触するのを避け、上記のような不具合を回避することが出来る。
なお、溝部32は、図11について説明したように、水晶放熱板30の光軸を、PBSアレイ10から出射するP偏光光束、S偏光光束の偏光面と合わせるための、位置合わせ用の溝としても機能し得ることは言うまでもない。
ここで、図13(c)に示す溝部32の深さtは、水晶放熱板30(30A)の厚みに対して、10:3〜3.5の比率に設定する。
深さtの最小値は、溝入れ装置によって溝部32を形成する時に安定して確実に溝を入れられる最小の深さとなる。すなわち、あまりに浅すぎると、水晶放熱板30の全体に溝が入らない可能性がある。逆に、水晶放熱板30の厚みに対して溝の深さが大きすぎると、取り扱い上、またはプラズマ重合法においてエネルギー(圧縮力)を与えた時に水晶放熱板30が割れてしまうなど強度的な問題が発生する。
【0047】
また、溝部32の幅hは、0.1mm≦h≦0.2mmに設定する。
hの最小値は、溝入れ装置の能力に依存するが、最大値は、PBSアレイ10の分光特性を保証できる最大の値となる。すなわち、偏光分離膜14、反射ミラー膜15から出射する直線偏光光束が、溝部32にかかって光の透過率が低下するのを防止し得る最大の幅となる。
また、図14に示す場合、接合層20における、削られた箇所17付近に気泡が発生することがある。これにより、PBSアレイ10から出射して接合層20を通過する光の透過率が低下したり、接合層20と水晶放熱板30との間に隙間が生じて両者がはがれやすくなったりするなどの問題がある。
【0048】
図15は、図13の構成の偏光変換素子において、PBSアレイ10と水晶放熱板30との間の接合層をさらに拡大して示す図である。
図15に示すように、溝部32を設けていることで、真空のチャンバー内でプラズマ重合法による接合を行う際には、溝部32から空気が抜けて、気泡を消滅させることが出来、上記の問題を解決することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 偏光変換素子、10 偏光分離手段、11 光入射面、12 光出射面、13 透光性基板、14 偏光分離膜、15 反射ミラー膜、20 接合層、30 放熱透明基板、31 溝部、32 溝部、40 λ/2位相差フィルム、110 光源、111 レンズアレイ、120 偏光変換ユニット、121 重畳レンズ、130 色光分離光学系、131 ダイクロイックミラー、132 ダイクロイックミラー、133 反射ミラー、140 入射側レンズ、141 リレーレンズ、142 反射ミラー、143 反射ミラー、144 フィールドレンズ、145 フィールドレンズ、146 フィールドレンズ、146 反射ミラー、150B 液晶ライトバルブ、150G 液晶ライトバルブ、150R 液晶ライトバルブ、160 クロスダイクロイックプリズム、170 投写レンズ、200 ユニット枠、210 遮光板、220 レンズアレイ、230 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略平行な光入射面及び光出射面を有し、前記光出射面に対して所定の傾斜角度を有した接合面によって接合された複数の透光性基板と、
前記複数の前記透光性基板の接合面間に交互に設けられ、前記光入射面に入射した光束を偏光方向が互いに直交して異なる2種類の直線偏光光束に分離して一方の直線偏光光束を透過させ、他方の直線偏光光束を反射させる偏光分離手段と、
反射された前記他方の直線偏光光束を反射し、光路の向きをかえる反射手段と、
前記光出射面側に接合層を介して接合された放熱透明基板と、
該放熱透明基板の出射面に配置され、前記2種類の偏光光束のうち何れか一方の直線偏光光束の偏光面を回転させて他方の直線偏光光束の偏光面と平行な直線偏光光束に変換して出射する有機材料からなる偏光回転素子と、
を備え、
前記接合層は、無機材料を主成分とすることを特徴とする偏光変換素子。
【請求項2】
前記接合層は、シロキサン結合を含み結晶化度が45%以下であるSi骨格と、該Si骨格にプラズマ重合法により結合される有機基からなる脱離基と、を含み、エネルギーを付与して表面付近に存在する前記脱離基が前記Si骨格から脱離することにより発現する接着性により、前記出射面側に前記放熱透明基板を接合することを特徴とする請求項1に記載の偏光変換素子。
【請求項3】
前記接合層は、前記透光性基板に設けられた微結晶連続薄膜と、前記放熱透明基板に設けられた微結晶連続薄膜とを接触させて、前記透光性基板の微結晶連続薄膜と、前記放熱透明基板の微結晶連続薄膜の接触界面及び結晶粒界に原子拡散接合法により形成される、または前記透光性基板及び前記放熱透明基板のうちの何れか一方に設けられた微結晶連続薄膜と、何れか他方に設けられた微結晶構造とを接触させて、前記微結晶連続薄膜と前記微結晶構造との接触界面及び結晶粒界に原子拡散を生じさせる原子拡散接合法によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の偏光変換素子。
【請求項4】
前記放熱透明基板は、前記偏光分離手段と前記反射手段との配列方向に平行な両端部に、第1の溝部を備えることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の偏光変換素子。
【請求項5】
前記放熱透明基板は、前記透光性基板と、前記偏光分離手段又は前記反射手段と、の間の積層接着面に対応する箇所に、第2の溝部を備えることを特徴とする請求項4に記載の偏光変換素子。
【請求項6】
前記第1の溝部及び前記第2の溝部の深さは、前記放熱透明基板の厚みに対して3乃至3.5対10の比率であることを特徴とする請求項5に記載の偏光変換素子。
【請求項7】
前記第1の溝部及び前記第2の溝部の幅は、0.1mm以上0.2mm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の偏光変換素子。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の偏光変換素子と、当該偏光変換素子及び光源からの光束を選択的に前記偏光分離膜に入射させるための遮光板と、を着脱可能に組み込むための治具と、を備えることを特徴とする偏光変換ユニット。
【請求項9】
前記光源と、請求項8に記載の偏光変換ユニットと、前記偏光変換ユニットから出射された光を画像信号に基づいて変調する光変調手段と、前記光変調手段から射出された変調光を投写する投写光学系と、を備える投写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−123035(P2012−123035A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271219(P2010−271219)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】