説明

偏光撮影装置

【課題】被写体からの光の直交する偏光成分を分離し結像させた重像の画像信号から、直交する偏光成分の像間の強度比を算出するに際し、計算を単純化し演算時間を短縮する。
【解決手段】複屈折特性を有する複屈折光学素子13により、被写体1からの光Bを偏光方向が直交する常光線(O光線B)と異常光線(E光線B)とに分離し、マトリクス状に画素が配列された固体撮像素子11の異なる位置にそれぞれO光線像IおよびE光線像Iとして結像させる。ここで、O光線像IとE光線像Iとの相対的変位方向である重像間変位方向Sと、固体撮像素子11の画素配列の一方向(x方向)とが一致するように、複屈折光学素子が配置される。固体撮像素子11より得られるO光線像IとE光線像Iとが重ね合わされた像の信号、および、重像間変位量算出部23により算出される重像間変位量Dに基づき、O光線像IとE光線像Iとの強度比を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの光の偏光状態を撮影する偏光撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体からの光の偏光状態を観察することによって、被写体の所定の特徴を強調して検出することができることが知られている。例えば、液晶基板や半導体ウェーハ等の外観検査装置では、撮像素子の前に偏光子を配置して、特定の偏光成分の光を撮影する装置が提案されている。この装置は、偏光成分を所定の方向に制限することによって、特定の欠陥を際立たせようとするものであり、偏光方向を異ならせた複数の偏光成分の光を撮影して検査を行う。
【0003】
例えば、特許文献1によれば、被写体により反射された光の光路を2方向に分岐させ、それぞれの光路に偏光板と撮像部とを配置し、それぞれの撮像部が互いに偏光方向の直交する偏光成分の光を受光するようにした欠陥検査装置が開示されている。すなわち、この欠陥検査装置では、被写体からの異なる偏光方向の光による画像を同時に得るために、撮像部を2つ設けている。
【0004】
また、特許文献2では、撮像素子の隣接する画素ごとに、方位の異なる偏光軸を有する偏光素子を配置し、1回の撮影により1つの撮像素子で、複数の偏光方向に対応した信号を取り込むことができる偏光撮影装置が開示されている。したがって、特許文献2に記載の撮像素子を用いることにより、1回の撮影で、被写体からの異なる偏光方向の光による画像を合成することが可能になる。
【0005】
すなわち、特許文献1および2に開示された装置によれば、1回の撮影で同時に、被写体からの異なる偏光方向の光による画像を取得することができる。したがって、撮像素子の手前に偏光フィルタを配置し、偏光フィルタの偏光方向を変えつつ複数回撮影して、偏光方向の異なる光による画像を取得する場合と比べて、短時間のうちに撮影を行うことができ、検査装置に用いた場合には、タクトタイムを短くすることができる。
【0006】
一方、硝子の内部反射などに起因して2重化された像(重像)から、もとの画像を復元する技術が提案されている(例えば、特許文献3および4、非特許文献1参照)。例えば、非特許文献1では、2重化された像の強度比を既知のものとして、2重化された像の像間の相対的変位量および変位方向を推定し、それら推定した変位量および変位方向と2重化された像に基づき原画像Iを復元している。
【0007】
非特許文献1によれば、観測画像をg、原画像をf、単位行列をI、硝子の内部反射率の自乗をγ、内部反射による重像の変位pの変形を行う作用をA(p)とすると、2つの像が多重化されている重像の生成過程は、式(1)のようにモデル化できる。
【数1】

【0008】
γおよびAが与えられている場合、式(1)の級数展開により、原画像の推定値f^は式(2)で得られる。なお、f^は、fの上に「^(ハット)」がついていることを示す。以下、他の符号に^を付した場合も同様とする。
【数2】

【0009】
ここで、内部反射率γが1よりも小さい値であり、多重反射像のコントラストが減少することを前提としているので、式(2)は収束が保証されている。ここで、原画像fを推定するために、pの値を変えながら下記の最適化推定を行う。
【数3】

変位量pを推定して重像から原画像を復元する場合、復元処理が正しく行われれば、原画像成分以外がキャンセルされ、画像信号の変動成分が減少する。しかし、変位量pが正しい値からずれると、画像に不自然なエッジが発生し、画像信号の変動成分が増加する。したがって、変位量pの推定値p^は、変動成分を計算する様なノルムを用いる最小ノルム推定(式(3))によりで求めることができる。式(3)において、Lは例えば微分演算や差分演算等の画像の変動成分を算出する処理であり||・||はノルムを表している。
【0010】
以降においては、重像の画像データから像の強度比、変位量、変位方向を推定する計算を重像推定演算と呼ぶことにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−274161号公報
【特許文献2】特開2009−042040号公報
【特許文献3】特開2009−133642号公報
【特許文献4】特開2009−134357号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】矢野高宏,清水雅夫,奥富正敏著「多重像画像からの原画像の復元と重像間変位推定」,画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2009),2009年7月,OS1-3:23
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示された欠陥検査装置では、2つの撮像部を設けているために撮像素子等の部品が重複して必要となりコスト高となる。また、特許文献2に開示された偏光撮影装置では、画素毎に偏光素子を配置した特殊な撮像素子が必要となりコスト高となるうえに、撮像素子を通常の撮影用途と兼用することができないという問題点がある。
【0014】
そこで、本発明の発明者は、1つの撮像素子を用いて1回の撮影によって偏光状態を測定し、且つ、通常の撮影装置との兼用も可能な偏光撮影装置として、複屈折材料(例えば、方解石、水晶板)により形成される複屈折光学素子を用いて、被写体からの光を直交する2つの偏光成分に分離し重ね合わせた、重像の画像データを取得し、これに上述の特許文献3および4並びに非特許文献1に記載のような重像推定演算を適用することにより偏光状態の推定を行うことを考えついた。
【0015】
しかし、重像間推定演算は、重像から元の画像を復元するために、多数の微分または差分演算と繰り返し推定を行う必要があり、計算過程が複雑で処理に時間を要する。さらに、硝子等による内部反射による重像の場合は、内部反射率がほぼ一定であり、すなわち、重像間の強度比が一定の条件の下で変位方向と変位量とを計算している。しかし、偏光状態の撮影に適用する場合には、重像間の強度比は未知の変数となるため、さらに推定計算に時間を要することが懸念される。このため、重像推定演算をさらに単純化・高速化することが必要となる。
【0016】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、被写体の偏光分布を取得する撮影装置において、上記の重像変位推定を用いて、被写体からの光の直交する偏光成分を分離して結像させた重像の画像信号から直交する偏光成分の像間の強度比を算出するに際し、計算を単純化して演算時間を短縮した偏光撮影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する請求項1に係る偏光撮影装置の発明は、
マトリクス状に複数の画素が配列された固体撮像素子と、被写体からの光を直交する第1の偏光成分と第2の偏光成分とに分離する複屈折光学素子を含み、前記第1の偏光成分による第1の像と前記第2の偏光成分による第2の像とを前記固体撮像素子上に結像させる光学系とを有し、前記固体撮像素子に結像される前記第1の像と前記第2の像との相対変位方向と、前記固体撮像素子の画素配列の一方向とを一致させるように構成された撮像部と、
前記光学系の光学特性情報に基づいて、前記固体撮像素子に結像される前記第1の像と前記第2の像との相対的変位量を算出する重像間変位量算出部と、
前記固体撮像素子から得られる第1の画像信号と、前記変位量とに基づいて、前記固体撮像素子に結像された、前記第1の像と前記第2の像との強度比を算出する第1の画像信号処理部と
を備えたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の偏光撮影装置において、
前記重像間変位量算出部は、前記複屈折光学素子の光学特性および前記光学系の像倍率を含む前記光学特性情報から、前記変位量を算出することを特徴とするものである。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の偏光撮影装置において、
前記第1の画像処理部は、前記第1の像と前記第2の像との強弱を判定し、該判定結果に基づいて、演算結果が収束するように重像推定演算を適用し、前記強度比を算出することを特徴とするものである。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1または2に記載の偏光撮影装置において、
前記光学系は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分とに対して異なる透過率を有する偏光素子を備えることを特徴とするものである。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の偏光撮影装置において、
前記偏光素子は、少なくとも前記第1の偏光成分または前記第2の偏光成分の透過率を、変更可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の偏光撮影装置において、
前記強度比および前記第1の画像信号に基づいて、前記複屈折光学素子を設けない場合に前記固体撮像素子により取得されるべき画像信号を推定し、第2の画像信号として出力する第2の画像信号処理部を有することを特徴とするものである。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の偏光撮影装置において、
前記第2の画像信号上に前記強度比に基づく信号を重ね合わせる第3の画像信号処理部を有することを特徴とするものである。
【0024】
請求項8に係る発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の偏光撮影装置において、
前記光学系は、前記複屈折光学素子が着脱可能に構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、固体撮像素子に結像される第1の像と第2の像との相対変位方向と、固体撮像素子の画素配列の一方向とを一致させたので、被写体からの光の直交する偏光成分を分離して結像させた重像の画像信号から、被写体からの光の直交する偏光成分の像間の強度比を算出するに際し、計算を単純化して演算時間を短縮した偏光撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る偏光撮影装置の概略構成を示す図である。
【図2】偏光成分による被写体像の分離を説明する図であり、図2(a)は、複屈折光学素子による常光線(O光線)と異常光線(E光線)の分離を示す上面図、図2(b)は、固体撮像素子の受光面上に結像する被写体像の変位を示す図である。
【図3】固体撮像素子の受光面における画素配列と、被写体像の変位方向との関係を示す図である。
【図4】被写体像の偏光成分間の強度比を算出するフローチャートである。
【図5】図4の各領域の被写体像の偏光成分間の強度比推定の詳細を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る偏光撮影装置の光学系の概略構成を説明する図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係る偏光撮影装置の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の第4実施の形態に係る偏光撮影装置の光学系の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、本発明の実施例を説明するに先立ち、本発明が基礎とする複屈折光学素子を用いた重像の形成と、その重像に基づいて直交する偏光成分の像間の強度比を求める重像推定演算について説明する。
【0028】
方解石や水晶などの複屈折特性を有する材料からなる複屈折光学素子では、入射した光線は結晶の異方性のために常光線(ordinary ray:O光線)と異常光線(extraordinary ray:E光線)とに分かれて進む。この2つの光線は互いに直交する偏光方向を有することが知られている。所定の厚みを有する複屈折光学素子を通過すると、O光線とE光線との相対的な分離量は、O光線の屈折率とE光線の屈折率および複屈折光学素子の厚みによって知ることが出来る。また、光学配置から、O光線とE光線とを特定することができる。
【0029】
複屈折光学素子を透過して撮像素子上に結像し観測された観測画像Iは、O光線による画像(第1の像、以下、O光線像とも呼ぶ)およびE光線による画像(第2の像、以下、E光線像とも呼ぶ)をそれぞれI,Iとすると、式(4)のように表すことができる。
【数4】

ここで、O光線に対するE光線の画像データ上(すなわち撮像素子上)のx方向およびy方向の変位量をD,Dとすると、式(4)は式(5)のように書き換えることができる。
【数5】

【0030】
ここで、Rは、O光線像に対するE光線像の強度比である。Rの推定値R^は、式(3)の最小ノルム推定と同様に、強度比Rを変化させたときに、最も滑らかな画像が得られるべきことから、R<1の場合は、最小ノルムの推定により式(6−1)により求めることができる。
【数6】

【0031】
Rの最適値推定に関しては、勾配降下法等の公知の方法を用いることができる。式(6−1)でNは項数を示しているが、項数が高いほどRの推定精度が高くなる。一般には項数を増やした方が原画像の復元精度が高くなる。その際の原画像Iの推定値I^は、式(7)で表される。
【数7】

ただし、式(6−1),(7)の右辺はRが1未満の場合に限って収束が保証されている。
【0032】
複屈折光学素子を使った重像の形成では、撮像素子の受光面上でのO光線に対するE光線の相対的変位量(重像間変位量)および相対的変位方向(重像間変位方向)は、複屈折光学素子を構成する複屈折材料の屈折率、形状、光学系の像倍率等の光学系の光学特性情報から求めることが出来る。しかしながら、O光線に対して、E光線の強度が1より小さい事は保証されていない。そこで、重像である観測画像Iが、
(i)O光線像に対するE光線像の強度比(R)がR<1.0であり、O光線に対してE光線がD,Dの変位量を有するものとする場合と、
(ii)E光線像に対するO光線像の強度比(R)がR<1.0であり、E光線に対してO光線が−D,−Dの変位量を有するものとする場合と
の双方の場合を考慮する。
【0033】
上記(i)および(ii)の何れの場合に属するかは、RにR<1の適当な数値を代入して、次の変動量の計算式(8)および(9)の計算をすれば良い。
【数8】

【数9】

【0034】
(i)O光線像に対するE光線像の強度比(R)がR<1.0であり、O光線に対してE光線がD,Dの変位量を有するものとする場合は、
【数10】

となり、(ii)E光線像に対するO光線像の強度比(R)がR<1.0であり、E光線に対してO光線が−D,−Dの変位量を有するものとする場合は
【数11】

となる。よって、1回の試算で上記(i),(ii)のいずれのケースであるか判断でき、判断した(i)または(ii)のケースに応じて、式(8)または(9)の一方について、変動量を最小にする強度比Rを求める最適化の計算を行えば良い。
【0035】
すなわち、(i)の場合は、式(6−1)によりO光線像に対するE光線像の強度比の推定を行う。
【数12】

また、(ii)の場合は、式(6−2)により、E光線像に対するO光線像の強度比の推定を行う。
【数13】

【0036】
以上のように、複屈折光学素子により、直交する2つの偏光成分に分離された2つの被写体像を重ね合わせた重像から、偏光成分の異なるO光線像とE光線像との強度比を推定することができる。また、推定した強度比を用いて、式(7)により複屈折光学素子を配置しなかった場合の被写体像を推定することができる。なお、具体的には、被写体からの光のO光線像とE光線像との強度比は、画像をW×Hの領域に区分して、同一領域内では強度比は変化しないものとして領域ごとに推定を行う。
【0037】
次に、計算を単純化する方法について説明する。
【0038】
O光線像IとE光線像Iとの相対的変位方向である重像間変位方向と、固体撮像素子のマトリクス状の画素配列の一方向、例えば、水平方向(x方向)とが一致するように、複屈折光学素子と固体撮像素子とを配置する。このようにすると、式(6−1)および(6−2)の変動量算出の演算Lを1次元で実行できるので、式(12)のように計算が単純化される。
【数14】

ここで、Lは、水平方向(x方向)の変動量を計算する演算であり、例えば、水平方向に隣接する画素データの差分値である。なお、右辺の±の符号は、O光線像に対するE光線像の強度比が1未満か1以上かによって+または−となり、上述の(i)および(ii)の判断方法と同様の方法で決定することができる。
【0039】
また、式(6−1),(6−2)、または、式(12)の強度比R^の計算において、O光線像とE光線像との強度比が1に近い場合は、Σの計算の収束性が悪くなるため、項数Nを大きくしなければならない。さらに、項数Nを大きくして強度比Rを推定しても、式(7)等による原画像の復元の品質は保証し難いうえ、原画像を復元する演算でも項数Nを大きくしなければならず、計算量が多くなる。
【0040】
そこで、測定対象に応じて、O光線とE光線との強度の差異が小さい場合においては、予めいずれかの偏光の強度を弱くするような光学素子を、複屈折光学素子の被写体側前方または後方に配置することによって、上記の強度比Rを1から離れた値にすることができる。例えば、異方性を有するフィルム等の透過性の材料を光路に配置することや、O光線またはE光線のいずれかの偏向方向をより透過させるように、例えば、O光線の偏光方向に対して、偏光方向を20度または70度傾けて偏光板を配置することによって実現できる。
【0041】
例えば、O光線像に対するE光線像の強度比が0.14〜7の範囲となる場合、O光線の透過率に対するE光線の透過率を1/10に抑える光学素子を用いれば、固体撮像素子11上での強度比は、0.014〜0.7となるので、実用的な項数N=10程度で強度比Rの推定が可能となる。そこで、この光学素子を使用した場合は、常に上述の(i)の場合、すなわち、O光線像に対するE光線像の強度比(R)がR<1.0であり、O光線に対してE光線がD,Dの変位量を有するものとする場合のみが発生するものとして、
【数15】

を最急降下法で求めれば良い。
【0042】
なお、偏光板を用いた場合は、測定対象に応じて、偏向板の偏向方向と複屈折光学素子のO光線またはE光線の偏向方向との成す角を適宜変更することができる。
【0043】
以下に、重像推定演算の計算を単純化し、計算時間の短縮を実現した本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0044】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る偏光撮影装置の概略構成を示す図である。偏光撮影装置10は、固体撮像素子11と、光学系12と、第1の画像信号処理部21と、光学系駆動制御部22と、重像間変位量算出部23と記憶部24とを備える。ここで、固体撮像素子11と光学系12とは、撮像部を構成する。また、図1において、破線は光線を示し、実線は画像信号の流れを示し、2点鎖線は画像信号以外のデータの流れを示している。
【0045】
固体撮像素子11は、マトリクス状に画素が配置された、CCD(charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等である。この固体撮像素子11は、受光面11aで検出した画像光強度を電気信号である画像信号に変換する。
【0046】
光学系12は、複屈折光学素子13とレンズ14等の他の光学素子とを含んで構成され、被写体1からの光Bを固体撮像素子11の受光面11aに結像させる。複屈折光学素子13は、方解石や水晶などの異方性を有する材料より形成され、被写体1からの光Bを常光線Bと異常光線Bとに分離する複屈折率特性を有する。光学系12は、複屈折光学素子13で分離された常光線Bと異常光線Bとをそれぞれ、固体撮像素子11の受光面11aの異なる(変位した)位置にO光線像(第1の像)およびE光線像(第2の像)として結像させる。図においては、光学系12の光学素子をレンズ14により代表して表示している。なお、図1では簡単のため、レンズ14を通過する常光線Bと異常光線Bとを直線的に表現しているが、実際には光学素子を通る光線は光学素子による偏向等を受ける。
【0047】
図2は、偏光成分による被写体像の変位を説明する図であり、図2(a)は、複屈折光学素子13による常光線(O光線)と異常光線(E光線)との分離を示す上面図である。被写体1からの光Bは、複屈折光学素子13に入射すると、複屈折光学素子13内でO光線BとE光線Bとに分離される(分離方向S)。O光線Bは、紙面に対して垂直な方向の直線偏光、E光線Bは紙面に対して平行な方向の直線偏光となる。(O光線Bは、被写体1からの光Bの紙面に対して垂直な偏光成分、E光線Bは、同じく紙面に対して平行な成分が分離されたものである。)なお、複屈折光学素子13の光学軸13aは、所望のO光線BとE光線Bとの分離が生じる向きに設定されている。
【0048】
また、図2(b)は、固体撮像素子11の受光面11a上に結像する被写体像を示す図である。複屈折光学素子13を透過したO光線BとE光線Bとは、光学系12によって撮像素子11の受光面11aに、それぞれO光線像IとE光線像Iとを結像する。図2(b)において、Sは、O光線像IとE光線像Iとの間の相対的変位方向である重像間変位方向Sを示している。固体撮像素子11は、O光線像IとE光線像Iとが重ね合わされた観測画像Iを電気信号に変換して第1の画像信号Iとして取り込む。
【0049】
複屈折光学素子13を透過した直後のO光線BとE光線Bとの分離幅Dは、O光線Bの屈折率をn、E光線Bの屈折率をn、複屈折光学素子13の厚みをdとすると式(13)により与えられる。
【数16】

したがって、光学系12の像倍率が解れば、第1の画像信号上でのO光線像IとE光線像Iとの重像間変位方向Sおよび変位量Dを知ることができる。
【0050】
図3は、固体撮像素子11の受光面11aにおける画素配列と、被写体像Iの重像間変位方向Sとの関係を示す図である。固体撮像素子11は、水平方向(x方向)と垂直方向(y方向)とに沿うマトリクス状に画素が配置されている。この撮像素子11の受光面11aに結像するO光線像IとE光線像Iとは、相対的に重像間変位方向Sに変位した画像として結像される。画素配列の一方向、例えば、x方向と重像間変位方向Sとを一致させるように、複屈折光学素子13と固体撮像素子11とが配置される。なお、これらの配置は固定にしても、レンズ枠の回転に応じて自動的に調整配置するようにしても、また、目盛りなど使用者が解るような指示によって所定の位置関係になるようにしても良い。
【0051】
また、図1に示した光学系駆動制御部22は、偏光撮影装置10全体を制御する図示しない制御部からの指示により、光学系12に含まれる光学素子、例えばレンズ14を駆動制御する。図1において、光学系駆動制御部22は、レンズ14と矢印で結ばれているが、レンズ14は光学系12の構成要素を代表して表示したものであり、光学系駆動制御部22は、光学系12の他の構成要素も制御する。重像間変位量算出部23は、光学系駆動制御部22から、偏光撮影時の光学系12の像倍率情報を取得する。重像間変位量算出部23はまた、複屈折率光学素子13のO光線BおよびE光線Bの屈折率n,n、並びに、厚みd、配置、形状等の光学特性の情報を保持し、式(13)により求めた分離幅Dに像倍率を乗じて、重像間変位量Dを算出して、第1の画像信号処理部21へ出力する。
【0052】
第1の画像信号処理部21は、固体撮像素子11と接続されており、固体撮像素子11からO光線像IとE光線像Iとが重ね合わされた像信号である第1の画像信号Iを受信する。O光線像IとE光線像Iとの相対的変位方向である重像間変位方向Sと、固体撮像素子11の画素配列の一方向とがx方向で一致するので、第1の信号処理部21は、式(12)に基づいて、第1の画像信号Iから水平方向にDまたは−Dずつシフトした画像データ群を生成して、強度比R(<1)を変更しながら各画像データに強度比Rのべき乗を乗算して加算する処理を行い、その変動成分である水平方向の差分値の総和を算出して、O光線像IとE光線像Iとの強度比Rの推定を行うことができる。
【0053】
さらに、第1の画像信号処理部21は、推定したO光線像IとE光線像Iとの強度比R、すなわち、被写体からの光の直交する偏光成分の像の強度比を記憶部24へ送信し、記憶部24はこれを記憶する。記憶部24に記憶された強度比Rのデータは、後の偏光状態の分析に使用される。または、強度比Rのデータは、順次処理され図示しない表示装置に表示されるようにしても良い。
【0054】
次に、第1の画像信号処理部21における処理内容についてより詳しく説明する。図4は、被写体像の直交する偏光成分、すなわちO光線像IとE光線像Iとの強度比Rを算出するフローチャートである。画像信号処理部21は、第1の画像信号を複数の領域に区分して、各領域内では強度比Rが一定であるものとし、すなわち、被写体の直交する偏光成分の像間の強度比が一定であるものとして、領域ごとの強度比Rを算出する。
【0055】
先ず、第1の画像信号処理部21は、第1の画像信号を固体撮像素子11上のW×Hの矩形領域に対応した領域に区分する(ステップS01)。各領域は、相互に重複するように設定しても良い。
【0056】
次に、W×Hに区分された各領域について、O光線像IとE光線像Iとの強度比R(w,h)を推定する(ステップS02)。ここで、R(w,h)は、領域(w,h)の強度比である。この推定を、順次全ての領域(w,h)に対して行う。ここで、領域(w,h)とは第1の画像信号をW×Hに区分した領域のうち、水平方向にw番目、垂直方向にh番目の領域を示すものとする。
【0057】
第1の画像信号処理部21では、複屈折光学素子13によるO光線像IとE光線像Iとの重像間変位方向Sと、固体撮像素子11の画素配列の一方向(x方向)が一致しているので、式(12)に示したように第1の画像信号から水平方向にDまたは−Dずつ変位させた画像データ群を生成して、強度比Rを変更しながら各画像データに強度比Rのべき乗を乗算して加算する処理を行い、その変動成分である水平方向の差分値の総和を算出して、O光線像IとE光線像Iとの強度比の推定を行う。
【0058】
また、O光線像Iに対するE光線像Iの強度比が1未満の場合と1以上の場合との場合分けを行うために、判定用データR<1.0の任意の数値でテストを行う。すなわち、強度比RをRとして、D方向に変位させた場合の変動成分の総和と−Dに変位させた場合の変動成分の総和を比較し、その総和が少ない方の変位方向を選択して最適値の計算を行う。
【0059】
図5は、図4のステップS02の各領域の被写体像の偏光成分間の強度比R(w,h)の計算過程の詳細を示すフローチャートである。先ず、第1の画像信号処理部21は、第1の画像信号I(x,y)、推定処理を行う項数N、任意の1より小さいRの判定用データR(例えば、R=0.8)を用意する(ステップS201)。ここで、(x,y)は、第1の画像信号をW×Hに区分した領域のうち、水平方向w,垂直方向hの領域(w,h)に含まれる画素位置を示す。
【0060】
次に、第1の画像信号処理部21は、O光線像Iに対するE光線像Iの強度が弱いと仮定した場合の変動量RT1を生成する(ステップS202)。すなわち、領域(w,h)内の第1の画像信号Iについて、式(8)の重像間変位方向Sをx方向のみとした式(14)の計算を行う。
【数17】

【0061】
さらに、第1の画像信号処理部21は、O光線像Iに対するE光線像Iの強度が強いと仮定した場合の変動量RT2を生成する(ステップS203)。すなわち、領域(w,h)内の第1の画像信号について、式(9)の重像間変位方向Sをx方向のみとした式(15)の計算を行う。
【数18】

【0062】
続いて、第1の信号処理部21は、式(14)および(15)で求めた変動量RT1とRT2とを比較して、O光線像IとE光線像Iとの強弱を判定する(ステップS204)。RT1>RT2の場合は、O光線像Iの強度に対するE光線像Iの強度が弱いと判断し、RT1<RT2の場合は、O光線像Iの強度に対するE光線像Iの強度が強いと判断する。
【0063】
O光線像Iの強度に対してE光線像Iの強度が弱い場合は(ステップS205)、R(w,h)の推定値R^(w,h)を、E光線像Iの強度/O光線像Iの強度として、式(12)に基づく式(16)により最急降下法により求める(ステップS206)。
【数19】

ここで強度比Rの推定値R^は1未満の数値となる。
【0064】
また、O光線像Iの強度に対してE光線像Iの強度が強い場合は、R(w,h)の推定値R^(w,h)を、O光線像I/E光線像Iの強度の強度として、式(12)に基づく式(17)により最急降下法により求める(ステップS207)。
【数20】

ここで、強度比Rの推定値R^は、1未満の数値となる。
【0065】
第1の画像信号をW×Hに区分した領域のうち、水平方向w、垂直方向hの領域についてこのようにして求めた強度比Rの推定値をR^(w,h)とする。
【0066】
なお、一例として、固体撮像素子11の画素配列を640画素×480画素とし、一つの領域の大きさを16画素×16画素とすることができる。この場合、領域間の重複が無い場合は、W=40、H=30となる。また、O光線像IとE光線像Iとの重像間変位量は、水平方向の幅の1/50〜1/20程度となる13〜32画素程度が好ましい。
【0067】
また、固体撮像素子11の水平方向の両端に近い領域については、式(16)または(17)の計算において、演算に必要となる画像信号Iの画素位置(x,y)が、固体撮像素子11の撮像可能な領域外になる場合があるが、領域外には固体撮像素子11の最も端に位置する画素の信号値と同じ画素値の信号が水平方向に並んでいるものとして処理するなど、適切な処理を行うことができる。
【0068】
以上説明したように本実施の形態によれば、被写体1からの光Bの複屈折光学素子13によるO光線像(第1の像)IとE光線像(第2の像)Iとの相対的変位方向(重像間変位方向S)と、固体撮像素子11の画素配列の一方向(x方向)とが一致するように、複屈折光学素子13と固体撮像素子11とを配置したので、被写体1からの光Bを偏光方向の異なるO光線BとE光線Bとに分離して固体撮像素子11に結像させた重像の画像信号Iから被写体1からの光Bの直交する2つの偏光成分の像I,I間の強度比を算出するに際し、重像間変位方向Sをx方向のみの計算に単純化し、演算時間を短縮することができる。
【0069】
さらに、複屈折光学素子13を用いて被写体1からの光Bを偏光方向の直交する偏光成分B,Bに分離して、固体撮像素子11に結像させ、得られた第1の画像信号Iを重像変位推定の方法を適用して、被写体像の直交する偏光成分間の強度比Rを推定したので、一つの固体撮像素子11を用いて一回の撮影によって、被写体像と偏光状態の撮影が可能である。
【0070】
また、本実施の形態の偏光撮影装置10では、固体撮像素子11の受光面11aの画素ごとに、それぞれ偏光方向の異なる特殊な偏光フィルタを配置する必要が無いので、安価に装置を構成することが可能であり、さらに、偏光撮影以外に通常の撮影を行うために固体撮像素子11を使用することが可能である。
【0071】
(第2実施の形態)
図6は、本発明の第2実施の形態に係る偏光撮影装置10の光学系の構成を説明する図である。本実施の形態は、第1実施の形態に係る偏光撮像装置において、複屈折光学素子13の被写体1側に偏光比を変化させる偏光素子16を設けたものである。したがって、本実施の形態の光学系12は、偏光素子16、複屈折光学素子13、レンズ14を含んで構成される。偏光素子16は、例えば、被写体1からの光BのO光線BとE光線Bとのそれぞれの偏光方向成分の強度比が、1/10〜10の範囲内にあるような被写体1に対しては、O光線像Iに対するE光線像Iの消光比を1/15程度とするものを使用する。
【0072】
これにより、固体撮像素子11の受光面11aでのO光線像Iに対するE光線像Iの強度比Rは、常に0.7未満となるので、O光線像IとE光線像Iとの強弱を判定し場合分けするためのステップが不用となる。すなわち、第1実施の形態の図5のフローチャートのステップS202〜S205,S207が不要となり、ステップS206で式(16)によって、強度比Rの推定を行うことができる。また、強度比Rが1から離れた値なので、演算の収束が速い。その他の構成、作用は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0073】
したがって、本実施の形態にかかる偏光撮影装置によれば、第1実施の形態の偏光撮影装置と比べ、さらに強度比Rの推定の計算を単純化することができ、演算時間を短縮することができる。
【0074】
(第3実施の形態)
図7は、本発明の第3実施の形態に係る偏光撮影装置の概略構成を示す図である。本実施の形態に係る偏光撮影装置10は、第1実施の形態により得られた領域ごとの直交する偏光成分の像の強度比Rを用いて、複屈折光学素子13を設けなかった場合の被写体像を推定するとともに、各領域の偏光分布を推定した被写体像の上に視覚的に表示するようにしたものである。
【0075】
このため、本実施の形態の偏光撮影装置10は、第1実施の形態の偏光撮影装置の構成に加え、第2の画像信号処理部26と第3の画像信号処理部27と表示部28とを備えると共に、記憶部24は、第1の画像信号処理部21ではなく第3の画像信号処理部27に接続されている。
【0076】
第2の画像信号処理部26は、第1の画像信号処理部21から出力された被写体像の偏光成分間の強度比R(w,h)を用いて、式(18)により複屈折光学素子13を設けなかった場合の被写体像の画像信号I^(x,y,w,h)を推定する。
【数21】

【0077】
ここで、R(w,h)の推定と、原画像Iの画像信号の推定は並行して行っても良い。すなわち、図4のフローチャートのループ内で、強度比R(w,h)の推定後に当該領域の画像信号の推定(式(18))を実行するようにしても良い。このようにして得られた各領域の原画像の画像信号の推定値I^(x,y,w,h)を貼り合わせ、原画像I全体の画像信号の推定値である第2の画像信号I^を得る。この第2の画像信号I^は、第1実施の形態において複屈折光学素子13を除外した場合に得られる2重化されていない像に相当する。このようにして得られた第2の画像信号I^により画像信号の輝度分布が求まることから、これと領域毎の強度比R(w,h)を用いることで、O光線像Iに対するE光線像Iの強度比だけでなく、強度の差分のデータを得ることができる。
【0078】
さらに、第2の画像信号処理部26は、第2の画像信号I^を第3の画像信号処理部27に送信する。第3の画像信号処理部27は、第2の画像信号I^を第2の画像信号処理部26から受信するとともに、強度比R(w,h)を第1の画像信号処理部21から受け取り、これら第2の画像信号I^と強度比R(w,h)との合成を行う。例えば、画像の領域ごとの強度比R(w,h)を、その値に応じた色で表現するものとし、第2の画像信号I^に基づく原画像Iと、強度比R(w,h)に基づく領域ごとの色を重ね合わせて、画像を生成する。生成した画像は、記憶部24に記憶するとともに、表示部28に表示する。その他の構成、作用は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0079】
本実施の形態によれば、各領域の偏光分布を、複屈折光学素子13が無い場合に得られる像と重ね合わせて、視覚的に分かりやすく表示することができる。
【0080】
なお、本実施の形態では、第3の画像信号処理部27による処理結果を記憶部24に記憶するとともに表示部28に表示するものとしたが、第2の画像信号処理部26で推定した第2の画像信号I^についても、記憶部24に記憶し、および/または、表示部28に表示するようにしても良い。
【0081】
(第4実施の形態)
図8は、本発明の第4実施の形態に係る偏光撮影装置の光学系の構成を説明する図である。本実施の形態に係る偏光撮影装置10は、第1実施の形態に係る偏光撮影装置10において、複屈折光学素子13を着脱可能としたものである。
【0082】
このため、偏光撮影装置10は、被写体1から固体撮像素子11に向かう光路上から光路外へ、あるいは、光路外から光路上へ、複屈折光学素子13を移動させるための駆動機構31を備えている。偏光撮影装置10の使用者により、偏光撮影装置10の図示しない入力部を介して複屈折光学素子13の着脱が指示されると、図示しない制御部が駆動機構31を制御して、複屈折光学素子13を駆動する。
【0083】
駆動機構31により光路外へ複屈折光学素子13を移動させた場合には、被写体1からの光Bは、偏光方向により光路が分離されることなく、光学系12により固体撮像素子11の受光面11aに結像する。これにより、固体撮像素子11からの画像信号は、通常の画像信号として処理することができる。すなわち、偏光撮影装置10は、通常の撮影装置として兼用することが可能になる。その他の構成、作用は、第1実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複屈折光学素子13を光路上に着脱可能としたので、同一の偏光撮影装置10を用いて、偏光状態の撮影と通常画像の撮影とを切り替えて行うことができる。
【0085】
なお、本実施の形態では、複屈折光学素子13を移動させて、偏光撮影と通常撮影とを切り替えるようにしたが、複屈折光学素子13の駆動機構31に代えて、ミラー等を用いて被写体1からの光の光路を、複屈折光学素子13を通らないように切り替え可能に構成しても良い。あるいは、複屈折光学素子13を、電気的に屈折率特性の有効・無効の切り替えが可能な誘電体材料を用いて構成し、複屈折率光学素子を制御する切り替え制御部を設けて偏光状態の撮影と通常の撮影とを切り替えるようにしても良い。
【0086】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、O光線像とE光線像との相対的変位方向である重像間変位方向Sと、固体撮像素子11の画素配列の水平方向(x方向)とが一致するように、複屈折光学素子と固体撮像素子11とを配置するものとしたが、これに限られない。重像間変位方向と固体撮像素子11の画素配列の垂直方向(y方向)とが一致するように、複屈折光学素子と固体撮像素子11とを配置しても良い。
【0087】
また、第1の実施形態では、複屈折光学素子による被写体からの光の偏光分離方向と固体撮像素子の画素配列方向とが、偏光撮影装置の筐体に対して固定されている場合のみならず、複屈折光学素子がレンズの鏡枠に組み込まれており、ズーム動作やフォーカス動作による鏡枠の回転に伴って回転し、その回転に連動して撮像素子を回転させて、複屈折光学素子の偏光分離方向と撮像素子の画素配列方向とを一致させる場合も含まれる。
【0088】
また、第2実施の形態における偏光素子16と第4実施の形態における駆動機構31は、第1実施の形態に係る偏光撮影装置10に付加したものとしたが、第3実施の形態に係る偏光撮影装置10に、これらの構成要素を組み込むことも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 被写体
10 偏光撮影装置
11 固体撮像素子
11a 受光面
12 光学系
13 複屈折光学素子
13a 光学軸
14 レンズ
16 偏光素子
21 第1の画像信号処理部
22 光学系駆動制御部
23 重像間変位量算出部
24 記憶部
26 第2の画像信号処理部
27 第3の画像信号処理部
28 表示部
31 駆動機構
B 被写体からの光
O光線(第1の偏光成分)
E光線(第2の偏光成分)
分離方向
重像間変位方向
x 水平方向(画素配列の一方向)
y 垂直方向
I 原画像
O光線像(第1の像)
E光線像(第2の像)
観測画像(第1の画像信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に複数の画素が配列された固体撮像素子と、被写体からの光を直交する第1の偏光成分と第2の偏光成分とに分離する複屈折光学素子を含み、前記第1の偏光成分による第1の像と前記第2の偏光成分による第2の像とを前記固体撮像素子上に結像させる光学系とを有し、前記固体撮像素子に結像される前記第1の像と前記第2の像との相対変位方向と、前記固体撮像素子の画素配列の一方向とを一致させるように構成された撮像部と、
前記光学系の光学特性情報に基づいて、前記固体撮像素子に結像される前記第1の像と前記第2の像との相対的変位量を算出する重像間変位量算出部と、
前記固体撮像素子から得られる第1の画像信号と、前記変位量とに基づいて、前記固体撮像素子に結像された、前記第1の像と前記第2の像との強度比を算出する第1の画像信号処理部と
を備えたことを特徴とする偏光撮影装置。
【請求項2】
前記重像間変位量算出部は、前記複屈折光学素子の光学特性および前記光学系の像倍率を含む前記光学特性情報から、前記変位量を算出することを特徴とする請求項1に記載の偏光撮影装置。
【請求項3】
前記第1の画像処理部は、前記第1の像と前記第2の像との強弱を判定し、該判定結果に基づいて、演算結果が収束するように重像推定演算を適用し、前記強度比を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の偏光撮影装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記第1の偏光成分と前記第2の偏光成分とに対して異なる透過率を有する偏光素子を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の偏光撮影装置。
【請求項5】
前記偏光素子は、少なくとも前記第1の偏光成分または前記第2の偏光成分の透過率を、変更可能に構成されていることを特徴とする請求項4に記載の偏光撮影装置。
【請求項6】
前記強度比および前記第1の画像信号に基づいて、前記複屈折光学素子を設けない場合に前記固体撮像素子により取得されるべき画像信号を推定し、第2の画像信号として出力する第2の画像信号処理部を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の偏光撮影装置。
【請求項7】
前記第2の画像信号上に前記強度比に基づく信号を重ね合わせる第3の画像信号処理部を有することを特徴とする請求項6に記載の偏光撮影装置。
【請求項8】
前記光学系は、前記複屈折光学素子が着脱可能に構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の偏光撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32963(P2012−32963A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171145(P2010−171145)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】