説明

偏光板の製造

【課題】外観欠損の少ない偏光板の製造方法の提供。
【解決手段】本発明は少なくとも偏光子と樹脂フィルムからなる偏光板の製造方法において、前記偏光子と前記樹脂フィルムを貼り合わせする前に、前記樹脂フィルムに熱処理を行うことを特徴とする。従って、偏光子と樹脂フィルムを貼り合せる前に、少なくとも樹脂フィルムに対して熱処理を行うので、外観欠損等のない高品質の偏光板を製造することが可能になって、特に大画面モニター及びテレビ用LCDなどに使われる偏光板を製造するのに最適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
偏光板製造においての偏光子の両面に保護フィルム等を接着剤で貼合する直前に熱処理をする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム等に使用される加熱方法には従来、様々な手段が使用されている。例えば、
(1)熱ロール本体にカートリッジ型ヒーターを内設し、加熱ロールを加熱する方法。
(2)加熱ロール本体にシーズヒーターを内設し、加熱ロールを加熱する方法。
や特開平3−071811号のように、様々なより工夫された技術の開示もある。
【特許文献】特開平3−071811公報
【0003】
しかしながら上記の方法では加熱ロール本体内において温度調節機のONまたはOFE状態により一定の温度をローラー表面に保つことが困難な欠点があったし、設定加熱温度のばらつきがないように保たなくてはならない製造過程では限界があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
つまり、本発明者らが課題としたのは単なる従来のフィルム加熱処理方法でなくして、偏光板製造時における偏光子の両面に保護フィルム等の貼合時において外観損失をなくする解決手段を研究していた。
【0005】
樹脂フィルムにほんのわずかなヘコミ、クニック、耳伸び、耳つまり等の外観損傷を有していると、偏光子の両面に樹脂フィルムを貼合する際にカール、クニック、スジ状の変形といった外観欠損が発生する場合があり、最近の大型液晶画面での歩留まりが悪化する一つの要因となっていた。
【0006】
前記外観損傷の原因のひとつがフィルムの接着工程前に鹸化処理をおこなうとブロッキング(接着跡に伴う外観変形)やスジ状の変形やクニックが発生する場合がある。
【0007】
その他の外観損傷の原因としてはフィルムをロール状態のままに長期間保存するときに発生するブロッキングや陥没等の外観損傷が大きな要因である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、研究者らは創意工夫を重ねた結果、課題解決手段として偏光子と保護フィルム等の樹脂フィルムを貼り合せてなる偏光板の製造において、前記偏光子と前記樹脂フィルムを接着剤をもちいて貼り合せる直前に、少なくとも前記樹脂フィルムに精密温度制御された温熱冷熱を徐々に加えた熱処理及び徐々に冷却していく冷却処理を設けて行う工程を加えることで課題を解決できることを見出した。
【0009】
フィルムを接着前に鹸化処理をするとフィルム面に小さな障害要因、スジ状の変形や目視できないほどのチジミや接着に起因する外観変形等が生じるのが、フィルム面上に徐々に温熱処理を加えた後に徐々に冷却することで解決した。
【0010】
また、フィルムをロール状態のままに長期保存するとブロッキングや陥没等が発生し外観損層の大きな要因となっていたことも、前記の過熱及び冷却で解決できた。
【0011】
前記の外観損傷を有しているフィルムは温熱処理及び冷却処理を加えることで均一面の復元がおこると考えられる。
【0012】
前記をふまえて、なお詳しい工程手段としてはポリビニルアルコール系樹脂(PVA)をよう素染色したフィルムを連続的に延伸して偏光子に加工し、得られた該偏光子に前記樹脂フィルムの両面または片面を遠赤外線ヒーター及び加熱連続ローラーにて温熱処理をほどこし、その直後から徐々に冷却のための冷熱処理を徐々にする工程を経ながら、フィルムを搬送させ、直ちに偏光子と前記樹脂フィルムを接着剤で貼り合わせることを特徴とする。
【0013】
特に3〜1000マイクロメートルの波長帯を遠赤外線は吸収効率が高く、フィルムに当たると吸収されて分子や結晶を振動させ、熱エネルギーに変えるので復元作用が顕著に現れると考えられることと、特に高分子化合物は、遠赤外線波長域の赤外線をよく吸収することは周知されている。
【0014】
詳しくは前記樹脂フィルムがセルロースエステルであるが、COC(Cyclo−olefin Copolymer)もしくはCOP(Cyclo−olefin Polymer)のフィルムも貼り合せフィルムとして使用される。
【0015】
前記熱処理の条件は膜面温度が50℃〜Tg(ガラス転移点温度)以下であり、より詳しくは60℃〜100℃の範囲であり、さらに温度が70℃〜90℃の範囲であることが最適である。
【0016】
前記熱処理方法は横幅方向に少なくとも3面以上の遠赤外線ヒーターパネルを設け、各パネル自体が温度調節機能を有する。
【0017】
前記熱処理方法は長尺方向に少なくとも3面以上の遠赤外線ヒーターパネルを設け、各パネル自体が温度調節機能を有する。
【0018】
よって、遠赤外線パネルは合計で9面以上である。
【0019】
前記熱処理手段がヒートロール法でありローラー数は10本以上近接配列され、フィルムを徐々に加熱し一定加熱温度に達したローラー箇所より徐々に複数冷却ローラーにて冷却していく、ローラー郡に樹脂フィルム等が搬送されていく工程を特徴とする。
【0020】
前記温冷熱処理温度制御方法は比例制御もしくはPID(Proportional Integral Derivative)制御である。
【発明の効果】
【0021】
その結果、本発明は樹脂フィルムの外観損傷等の改良方法を具現化した装置を用いた結果、従来、偏光板上に生じた外観損傷を大幅に低減できるようになり、歩留まりが向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1の偏光子1と保護フィルム等の樹脂フィルム2とからなる偏光板6の製造において、前記偏光子と前記樹脂フィルムを接着剤5をもちいて貼り合せる直前に、少なくとも前記樹脂フィルムに精密温度制御された遠赤外線ヒーターによる熱処理3の工程を経て偏光板を製造することが最良の形態である。
【0023】
図2の加熱ローラー及び冷却ローラーは各ローラー群は20配列とし、加熱ローラーの直径は10〜15cmで、可能な限りとなりのローラーと近接するように配置し、冷却ローラーの直径は9〜15cmで、可能な限りとなりのローラーと近接させることが望ましい。
【0024】
ロール状の樹脂フィルム供給搬送側に加熱ローラー群を設置し、その過熱ローラー群上に遠赤外線パネルヒーターを設置し、次いで搬送進行方向に冷却ローラー群を設置し、冷却ロール群上部に冷風送風用の冷風ダクトを備え、加熱ローラー群のエリアと冷却ローラー群のエリアは樹脂フィルムが搬送可能な隙間が開口された状態で、温度遮蔽間仕切りカーテンで仕切られ、各ポイント数箇所に温度センサーでフィルムの温度を感知し温度調節機で感知箇所周辺の遠赤外線ヒーターパネル及び加熱冷却温度を適宜に設定温度に制御する方法が最良の形態である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施に使用する概略構成図
【0026】
【図2】熱処理装置の概略構成図
【符号の説明】
1.偏光子
2.樹脂フィルム
3.熱処理装置
4.ロール圧着装置
5.接着剤
6.偏光板
7.樹脂フィルムロール
8.遠赤外線ヒーターパネル
9.温度センサー
10.加熱ローラー郡
11.冷却ローラー郡
12.温度遮蔽間仕切りカーテン
13.冷風ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも偏光子と樹脂フィルムとからなる偏光板の製造において、前記偏光子と前記樹脂フィルムを貼り合せる直前に、少なくとも前記樹脂フィルムに温熱冷熱処理を行うことを特徴とする偏光板の製造。
【請求項2】
前記熱処理と、前記偏光子と前記樹脂フィルムとの貼り合せが連続して行われることを特徴とする請求項1に記載の偏光板の製造。
【請求項3】
ポリビニルアルコール系樹脂(PVA)を染色して連続的に延伸して前記偏光子に加工し、得られた該偏光子に前記樹脂フィルムの両面または片面を温熱冷熱処理後、この偏光子と前記樹脂フィルムを貼り合わせることを特徴とする請求項1と2に記載の偏光板の製造。
【請求項4】
前記樹脂フィルムがセルロースエステルである請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項5】
前記樹脂フィルムがCOC(Cyclo−olefin Copolymer)もしくはCOP(Cyclo−olefin Polymer)である請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項6】
前記熱処理の条件は膜面温度が50℃〜Tg(Glass transition temperatureガラス転移点温度)以下である請求項1〜5のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項7】
前記熱処理手段が遠赤外線ヒーターである請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項8】
前記熱処理手段がヒートロール法である請求項1〜7のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項9】
前記ヒートロール法でのローラー数は10本以上近接配列されている請求項1〜8のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項10】
前記熱処理手段が温風吹き付け法である請求項1〜9のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項11】
前記熱処理手段が冷却手段もそなえている請求項1〜10のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項12】
前記冷却の条件は膜面温度が20℃〜40℃以下である請求11に記載の偏光板の製造。
【請求項13】
前記熱処理温度調節制御方法は比例制御もしくはPID(Proportional Integral Derivative)制御である請求項1〜12のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項14】
前記熱処理のロールが近接したロール配置である請求項1から13のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項15】
熱処理時間は1秒〜60秒である請求項1から14のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項16】
前記樹脂フィルムの横幅面に対して少なくとも加熱温度を2分割もしくは3分割以上することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の偏光板の製造。
【請求項17】
前記樹脂フィルムの長尺方向面に対して少なくとも加熱温度を3分割以上にすることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の偏光板の製造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−15273(P2009−15273A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202333(P2007−202333)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000177232)株式会社サンリッツ (9)
【Fターム(参考)】