説明

偏光状態測定装置及び偏光状態測定方法

【課題】被検体を透過した透過光の偏光状態を測定する新たな手法の提案。
【解決手段】光学装置3は、光源300から出射し、第2偏光部308によって変換された直線偏光が被検体Sを透過した透過光を検光して出射する検光部314を有する。また、光学装置3は、検光部314からの出射光を直交分離する直交分離部316と、直交分離部316によって直交分離された光を受光する受光部320とを有する。演算装置は、回転装置330に回転制御信号を出力し、回転面が透過光の光路に対して直交するよう検光部314を回転制御する。そして、演算装置は、検光部314の回転中に直交分離部316によって直交分離された光を受光部320で受光した強度を用いて、被検体Sを透過した透過光の偏光状態を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏光が被検体を透過した透過光の偏光状態を測定する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
物質を透過した光を測定することで、その物質に直接触れることなく、物質の状態を知ることができる。例えば、グルコースのような光学活性物質を直線偏光が通過するとき、その偏光面が回転する旋光性と呼ばれる性質が知られている。直線偏光は左右円偏光の重ね合わせである。左右円偏光それぞれに対する屈折率が異なるため、物質内を進行する左右円偏光の速度に差が生じる。そのため、被検体を通過した左右円偏光に位相差が生じ、この左右円偏光を合成した光は偏光面が回転している。
【0003】
また、直線偏光が、左右円偏光に対する吸収率が異なる物質(キラルな物質)に入射すると、円偏光二色性(円二色性)と呼ばれる特性により、左右円偏光の光の振幅(光の大きさ)が変化する。この旋光性や円偏光二色性により、物質を透過した透過光は、入射時から偏光面が回転した楕円偏光となる。円偏光二色性や旋光性に着目した偏光状態の測定技術が、例えば特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/029652号公報明細書
【特許文献2】特開2007−93289号公報
【特許文献3】特開2004−340833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献2に開示されている技術では、液晶素子を通った光を被検体に入射し、当該液晶素子に対する印加電圧を制御することで、種々の位相差を持つ光を被検体に入射させる。そして、被検体を透過した各位相差の光の強度を検出することで、被検体の偏光状態を測定する。しかし、位相差を作り出す液晶素子は温度依存性が高いため、恒温を保った状態で測定を行わないと、偏光状態の測定精度が低下するという問題がある。
【0006】
また、特許文献3に開示されている技術では、被検体に左右の円偏光成分を等量含む光を照射する。そして、被検体を透過した透過光を左右円偏光に直交分離し、直交分離した偏光の光強度を検出して被検体の円偏光二色性を評価している。しかし、特許文献3の方法は、光学系を構成する偏光子やプリズムの精度、組立誤差といった光学系に係る誤差(以下、包括的に「光学系誤差」と称す。)が全く無い理想的な状態を前提としている。光学系誤差が全く無い状態は、実用面ではあり得ない。また、偏光状態の測定には、被検体を透過した透過光の微小な光強度の変化を捉えることが必要となり、僅かな光学系誤差が測定誤差につながるため、光学系誤差を無視することはできない。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、被検体を透過した透過光の偏光状態を測定する新たな手法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための第1の形態は、直線偏光が被検体を透過した透過光を検光して出射する検光部と、前記検光部からの出射光を直交分離する直交分離部と、前記直交分離部によって直交分離された光を受光する受光部と、回転面が前記透過光の光路に対して直交するよう前記検光部を回転させる回転制御部と、前記検光部の回転中に前記直交分離された光を前記受光部で受光した強度を用いて前記透過光の偏光状態を測定する偏光状態測定部と、を備えた偏光状態測定装置である。
【0009】
また、他の形態として、直線偏光が被検体を透過した透過光を検光して出射する検光部と、前記検光部からの出射光を直交分離する直交分離部と、前記直交分離部によって直交分離された光を受光する受光部と、を備えた光学装置を制御して前記透過光の偏光状態を測定する方法であって、回転面が前記透過光の光路に対して直交するよう前記検光部を回転させることと、前記検光部の回転中に前記直交分離された光を前記受光部で受光した強度を用いて前記透過光の偏光状態を測定することと、を含む偏光状態測定方法を構成することとしてもよい。
【0010】
この第1の形態等によれば、回転面が透過光の光路に対して直交するよう検光部を回転させる。そして、検光部の回転中に直交分離された光を受光部で受光した強度を用いて、被検体を透過した透過光の偏光状態を測定する。被検体が有する円偏光二色性及び旋光性により、直線偏光が被検体を透過した透過光は、偏光面が回転した楕円偏光となる。検光部の回転中に直交分離された光を受光部で受光した強度が描く軌跡を観測することで、被検体を透過した透過光の偏光状態を測定することができる。また、この構成では、光学系を構成する偏光子やプリズムの精度、組立誤差等に起因する光学系誤差を、受光部で受光した光の強度が描く軌跡という形で捉えることができるため、光学系誤差も併せて補償することが可能となる。
【0011】
また、第2の形態として、第1の形態の偏光状態測定装置における前記回転制御部が、所定の角度範囲で前記検光部を回転させる、偏光状態測定装置を構成することとしてもよい。
【0012】
この第2の形態によれば、回転制御部が、所定の角度範囲で検光部を回転させる。所定の角度範囲は、例えば、受光部で受光した光の強度が描く軌跡の長軸方向の頂点と短軸方向の頂点とを確定可能な角度範囲とすればよい。この角度範囲で検光部を回転させることで、被検体を透過した透過光の偏光状態を測定することができる。
【0013】
また、第3の形態として、第1又は第2の形態の偏光状態測定装置における前記偏光状態測定部が、前記受光した光の強度を用いて、前記透過光の振動軌跡を判定する振動軌跡判定部を有し、この振動軌跡判定部によって判定された振動軌跡を用いて前記透過光の偏光状態を測定する、偏光状態測定装置を構成することとしてもよい。
【0014】
この第3の形態によれば、受光した光の強度を用いて、透過光の振動軌跡を判定する。透過光の振動軌跡は、楕円偏光である透過光の振動方向を表す軌跡である。この透過光の振動軌跡を、検光部の回転中に直交分離された光を受光部で受光した強度を用いて判定する。そして、判定した振動軌跡を用いることで、透過光の偏光状態の測定を的確に行うことができる。
【0015】
また、第4の形態として、第1〜第3の何れかの形態の偏光状態測定装置における前記偏光状態測定部が、前記透過光を楕円偏光とみなし、楕円の特徴値を測定することで前記偏光状態を測定する、偏光状態測定装置を構成することとしてもよい。
【0016】
この第4の形態によれば、透過光を楕円偏光とみなし、楕円の特徴値を測定する。楕円の特徴値は、例えば楕円の長軸や短軸の長さが挙げられる。これらの特徴値を測定することで、楕円偏光の形状を正しく把握することができる。
【0017】
また、第5の形態として、第1〜第4の何れかの形態の偏光状態測定装置における前記直線偏光は、偏角が45°でなる、偏光状態測定装置を構成することとしてもよい。
【0018】
この第5の形態によれば、被検体に入射させる直線偏光の偏角を45°とすることで、直交分離部によって直交分離された光を受光部で受光した強度の微小な変化を捉え、高い正確性で偏光状態を測定することが可能となる。
【0019】
また、第6の形態として、第1〜第5の何れかの形態の偏光状態測定装置における前記検光部が、グラントムソンプリズムを有してなる、偏光状態測定装置を構成することとしてもよい。
【0020】
この第6の形態によれば、検光部がグラントムソンプリズムを有してなるため、高い偏光純度(この場合は検光の純度と言える。)が得られる。
【0021】
また、第7の形態として、第1〜第6の何れかの形態の偏光状態測定装置における前記直交分離部が、ウォラストンプリズムを有してなる、偏光状態測定装置を構成することとしてもよい。
【0022】
この第7の形態によれば、直交分離部がウォラストンプリズムを有してなるため、検光部から出射した直線偏光を簡易且つ適切に直交分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】偏光状態測定装置の機能構成を示すブロック図。
【図2】光学装置を構成する光学系の構成図。
【図3】偏光状態測定の原理の説明図。
【図4】偏光状態測定の原理の説明図。
【図5】偏光状態測定の原理の説明図。
【図6】光強度データのデータ構成図。
【図7】偏光状態測定処理の流れを示すフローチャート。
【図8】第2偏光状態測定処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面を参照して、光学装置を用いて被検体の透過光の偏光状態を測定する偏光状態測定装置に本発明を適用した実施形態を説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態が以下説明する実施形態に限定されるわけではないことは勿論である。
【0025】
図1は、本実施形態における偏光状態測定装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。偏光状態測定装置1は、主要な構成として、光学装置3と、演算装置5とを備えて構成される。偏光状態測定装置1は、例えば、果物の糖分を測定する糖分測定装置や、人間の血糖値を測定する血糖値測定装置といった測定用機器に組み込まれて利用される。
【0026】
1.光学装置3の構成
図2は、光学装置3の光学的な構成の概略を示す図である。光学装置3は、例えば、光源300と、減光部302と、第1偏光部304と、位相差調整部306と、第2偏光部308と、第1集光部310と、第2集光部312と、検光部314と、直交分離部316と、第3集光部318と、受光部320と、回転装置330とを有して構成される。
【0027】
第1集光部310と第2集光部312との間には、被検体Sが配置されている。被検体Sは、光学活性物質を含有する固体や液体等の任意の試料とすることが可能である。本実施形態では、被検体Sを、グルコースを主成分とする試薬とする。被検体Sの円偏光二色性や旋光性を評価するために、被検体Sを透過した透過光の偏光状態を測定する実施形態である。
【0028】
光源300は、光を生成して出射する装置であり、例えば半導体レーザー(レーザーダイオード)を有して構成される。光源300は、所定波長(例えば650ナノメートル[nm])の位相の揃った光であるレーザー光を、ハーフミラーである端面から放射する。
【0029】
減光部302は、光源300から放射された光の量を減少させる素子であり、例えばND(Neutral Density)フィルター等の光学フィルターを有して構成される。
【0030】
第1偏光部304は、減光部302によって減光された光を直線偏光に変換する素子(偏光子)であり、例えば偏光プリズム等の偏光用光学素子を有して構成される。
【0031】
位相差調整部306は、第1偏光部304の出射光の位相差を調整する素子(位相子)であり、例えば波長板等のリタデーションプレートを有して構成される。本実施形態では、位相差調整部306は、1/2波長板を有してなる。
【0032】
第2偏光部308は、位相差調整部306によって位相差が調整された偏光を直線偏光に変換する素子(偏光子)であり、例えば偏光プリズム等の偏光用光学素子を有して構成される。本実施形態では、第2偏光部308は、グランタイプの偏光子の一種であるグラントムソンプリズムを有してなる。
【0033】
第1集光部310は、第2偏光部308から入射した直線偏光を集光する素子であり、例えば集光レンズを有して構成される。第1集光部310で集光された光は、被検体Sに入射する。
【0034】
第2集光部312は、被検体Sを透過した透過光を集光するレンズであり、第2集光部312で集光された光は検光部314に入射する。
【0035】
検光部314は、第2集光部312で集光された透過光を検光する素子(検光子)であり、例えば偏光プリズム等の偏光用光学素子を有して構成される。本実施形態では、検光部314は、第2偏光部308と同様に、グラントムソンプリズムを有してなる。
【0036】
また、検光部314は、回転装置330の回転駆動に従って、光の入射方向に対する垂直方向(検光子の周方向)に沿って回転する。つまり、回転装置330は、回転面が被検体Sを透過した透過光の光路に対して直交するよう検光部314を回転させる。回転装置330は、例えば、パルス電力を印加する度に一定の角度だけ回転するステッピングモーター等の回転機構を有する装置であり、演算装置5から出力される回転制御信号に従って検光部314を回転駆動する。
【0037】
直交分離部316は、検光部314から入射した直線偏光を、所定の開き角を成す直交成分に分離する素子である。本実施形態では、直交分離部316は、偏光用光学素子の一種であるウォラストンプリズムを有してなる。
【0038】
第3集光部318は、直交分離部316で直交分離された直線偏光を集光する集光レンズである。第3集光部318で集光された直線偏光は、受光部320に入射する。
【0039】
受光部320は、直交分離部316によって直交分離され、第3集光部318で集光された直線偏光を受光する素子であり、フォトダイオード等の光検出器を有して構成される。受光部320は、第1受光部320A及び第2受光部320Bを有し、直交分離部316によって直交分離された互いに垂直な偏光成分(P成分及びS成分)を検出し、その光強度に応じた電圧値を検出電圧(Ex,Ey)として、演算装置5に出力する。
【0040】
2.原理
図2の下部には、光学装置3が有する各構成部から出射した光の偏光状態を模式的に描いている。本実施形態では、光源300からの出射光の進行方向をz軸とし、図2の下部では、紙面向かって手前方向を正とする前後方向をz軸方向として図示している。また、光の進行方向及び磁場を含む面をzy平面、光の進行方向及び電場を含む面をzx平面とし、それらに直交するxy平面を上下左右方向の平面として図示している。また、xy平面において、楕円偏光を楕円形状で示し、直線偏光を直線状のベクトルで示している。
【0041】
光源300から出射し、減光部302によって減光された光は、例えば偏角を「α0」とする直線偏光に近い楕円偏光、言うなれば擬似的な直線偏光である。但し、図2では、偏光の電場ベクトルがx軸と成す角度を偏角「α」として定義している。この偏角「α0」の楕円偏光は、第1偏光部304によって、より直線偏光に近い楕円偏光に変換される。つまり、図2に示すように、偏角「α0」はそのまま変化せず、楕円の短軸の長さがやや縮まった楕円偏光が第1偏光部304から出射する。
【0042】
第1偏光部304からの出射光は、位相差調整部306によって位相差が調整される。本実施形態では、位相差調整部306は1/2波長板を有する。そのため、位相差調整部306に入射した偏光は、その偏光面が回転する。つまり、入射光の偏光方向と1/2波長板の光学軸との成す角度を「γ」とした場合、位相差調整部306からの出射光は、入射光の偏光方向から「2γ」の回転を受ける。これにより、位相差調整部306からの出射光は、例えば偏角を「α1(<α0)」とする楕円偏光となる。
【0043】
位相差調整部306からの出射光は、第2偏光部308によって、ほぼ完全な直線偏光に変換される。本実施形態では、第2偏光部308はグラントムソンプリズムを有して構成される。そのため、入射光に対する光路は変化せず、常光線成分及び異常光線成分のうちの異常光線成分が直線偏光として出射する。これにより、第2偏光部308からの出射光は、偏角を“α1”とする直線偏光となる。
【0044】
被検体Sが有する旋光性により、被検体Sに入射した直線偏光の偏光面が回転する。本実施形態では、被検体Sは、グルコースを主成分とする水溶液である。グルコースは光学活性を有するため、左右円偏光それぞれに対する屈折率が異なる。そのため、直線偏光を被検体Sに入射すると、被検体S内を進行する左右円偏光の速度に差が生じる。その結果、被検体Sを通過した左右円偏光には位相差が生じ、被検体Sを透過した透過光は、入射時の直線偏光から偏光面が回転している。
【0045】
また、グルコースは、その内部構造がキラルであるため、円偏光を吸収する際に左右円偏光に対して吸光度に差が生ずる。そのため、直線偏光が被検体Sに入射すると、円偏光二色性により、左右円偏光の光の振幅(光の大きさ)が変化する。その結果、被検体Sを透過した透過光は、左右で異なる振幅を有する光となる。
【0046】
上記の旋光性及び円偏光二色性により、被検体Sから出射する光は、入射時と位相及び振幅が異なっている。そのため、直線偏光であった入射光は、被検体Sを透過することで楕円偏光に変化する。つまり、図2に示すように、被検体Sの入射時には偏角「α1」であった直線偏光が、被検体Sを透過することで偏角「φ」の楕円偏光となる。楕円偏光であることに鑑み、以下では偏角「φ」のことを楕円方位角「φ」として説明する。
【0047】
本実施形態では、被検体Sを透過した透過光を楕円偏光とみなし、楕円の特徴値を測定することで透過光の偏光状態を測定する。具体的には、検光部314を回転させながら、受光部320によって検出される光強度の検出電圧(Ex,Ey)のデータを取得する。そして、楕円の長軸の長さに対応する受光光の強度が最大となる検出電圧(Exmax,Eymax)と、楕円の短軸の長さに対応する受光光の強度が最小となる検出電圧(Exmin,Eymin)とを特徴値として測定する。そして、これらの特徴値を用いて、透過光の偏光状態を示す偏光パラメーター値を算出する。
【0048】
つまり、検光部314を固定した状態において、受光部320によって検出される光強度は、一組の検出電圧(Ex,Ey)のデータとなる。検光部314の回転状態を様々に変化させながら、光強度を検出した検出電圧(Ex,Ey)のデータ組を取得し、Ex−Ey平面に描かれる受光光の強度の軌跡を観測する。
【0049】
また、本実施形態では、被検体Sに入射する直線偏光の偏角が「45°」となるように初期校正を行う(α1=45°)。具体的には、被検体Sを光学装置3に配置していない状態で「Ex=Ey」となるように第1偏光部304を位置決めする。直線偏光の偏角を「45°」とする理由は、次の通りである。
【0050】
透過光の偏光状態を正しく測定するためには、直交分離部316によって直交分離された光(P波及びS波)の強度を、受光部320で正しく検出することが必要となる。しかし、フォトダイオード等の光検出器で生ずる電圧は微小値であり、ノイズに埋もれ得るレベルである。従って、僅かな光強度の変化でも、大きな電圧値の変化として捉えることが必要となる。
【0051】
検出電圧「Ex」と「Ey」との比「Y=Ey/Ex」を考える。「Ey=1」として「Y=1/Ex」の双曲線を考えた場合、この双曲線は「Ex」の値の増加に伴い減衰する。「Ex」の値が大きい範囲では、「Ex」の値が変化しても「Y」の値はほとんど変化しない。しかし、「Ex」の値が小さい範囲では、「Ex」の値が少し変化しただけで「Y」の値は大きく変化する。
【0052】
従って、「Ey」と「Ex」との比を「1:1」とすることで、「Ex」の僅かな変化に対して「Y=Ey/Ex」を大きく変化させることができる。つまり、「Ex=Ey」となるように初期校正を行っておくことで、被検体Sを配置した場合に、「Ex」に対する「Ey」の相対的な変化(「Ey」に対する「Ex」の相対的な変化)が明確となり、偏光状態の測定精度を向上させることができる。
【0053】
図3は、偏光パラメーター値の算出方法の説明図である。ここでは、検光部314を「0°〜360°」の角度範囲で回転させる場合を図示している。図3において、横軸は検出電圧「Ex」であり、縦軸は検出電圧「Ey」である。検光部314を回転させながらサンプリングした検出電圧(Ex,Ey)の軌跡を実線で描いている。
【0054】
回転の開始位置S及び終了位置Gは、被検体Sに入射する直線偏光の偏角が「45°」となる位置である。この開始位置Sを基準として検光部314を一回転させる。すると、図3に示すように、例えばピーナッツ形状(瓢箪形状)の軌跡が得られる。完全な楕円軌跡として図示していないのは、被検体Sにはグルコース以外の成分が含まれているため、これらの成分の屈折率や透過率の影響を受けることを想定したためである。
【0055】
検出電圧(Ex,Ey)のデータ組のうち、光強度の絶対値が最大となるデータと、光強度の絶対値が最小となるデータとを、楕円の特徴値として測定する。つまり、「(Ex2+Ey21/2」が最大となる検出電圧(Exmax,Eymax)と、「(Ex2+Ey21/2」が最小となる検出電圧(Exmin,Eymin)とを特徴値として測定する。
【0056】
図3では、(Exmax,Eymax)に相当する座標上の点を白丸の点Aで、(Exmin,Eymin)に相当する座標上の点を白丸の点Bでそれぞれ図示している。Ex−Ey平面において、原点Oを始点とし、点Aを終点とするベクトルOAが、最大の光強度に相当するベクトルとなる。また、原点Oを始点とし、点Bを終点とするベクトルOBが、最小の光強度に相当するベクトルとなる。
【0057】
このとき、検出電圧(Exmax,Eymax)及び(Exmin,Eymin)を用いて、例えば次式(1)及び(2)に従って楕円率角“θ”及び楕円方位角“φ”をそれぞれ算出する。
【数1】

【数2】

【0058】
なお、図3では、検光部314を「0°〜360°」の角度範囲で回転させる場合を例示したが、検光部314を回転させる角度範囲はこれに限られるわけではない。検光部314を回転させることで得られる楕円の軌跡は「±180°」の方向で対称となる。そのため、検光部314を少なくとも「180°」回転させれば、その対称性から全体的な軌跡を再現することができる。
【0059】
そこで、図4に示すように、例えば角度「δ」分の余裕を持たせて「0°〜180°+δ」の角度範囲で検光部314を回転させることとしてもよい。つまり、偏角「45°」の位置を開始位置Sとし、「225°+δ」の位置を終了位置Gとして、検光部314を回転制御する。なお、「δ」の値は適宜選択することが可能であるが、例えば「0°〜10°」の範囲で選択した値とすればよい。
【0060】
また、検光部314を一回転させるのではなく、複数回回転させることとしてもよい。具体的には、例えば図5に示すように、検光部314を「0°〜720°」の角度範囲で回転制御してもよい。つまり、偏角「45°」の位置を開始位置S及び終了位置Gとして、検光部314を二回転させて楕円の軌跡を描く。勿論、回転の角度範囲を更に広げて、検光部314を三回転以上させることとしてもよい。
【0061】
さらに、上記の場合において、検光部314を回転させる方向は、一定の方向としてもよいし、途中で反転させることとしてもよい。
【0062】
例えば、図4において「0°〜180°+δ」の角度範囲で検光部314を回転制御する場合において、「0°〜180°+δ」までは第1回転方向(正方向)に検光部314を回転制御した後、「180°+δ〜0°」までは第2回転方向(負方向)に検光部314を回転制御することとしてもよい。
【0063】
また、図5において「0°〜720°」の角度範囲で検光部314を二回転させる場合において、一回転目は検光部314を第1回転方向(正方向)に回転制御し、二回転目は第2回転方向(負方向)に検光部314を回転制御することとしてもよい。
【0064】
3.演算装置5の構成
演算装置5は、光学装置3の制御を行う制御装置であるとともに、光学装置3の受光部320から取得した検出電圧(Ex,Ey)に基づいて、被検体Sを透過した透過光の偏光状態を演算する演算装置である。
【0065】
図1に示すように、演算装置5は、処理部510と、入力部520と、表示部530と、音出力部540と、通信部550と、記憶部560とを備えて構成され、各部がバス580を介して接続されるコンピューターシステムである。
【0066】
処理部510は、記憶部560に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って、演算装置5の各部や光学装置3を統括的に制御する制御装置及び演算装置であり、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサーを有して構成される。処理部510は、主要な機能部として、回転制御部511と、偏光状態測定部513とを有する。
【0067】
回転制御部511は、回転装置330による検光部314の回転を制御する。具体的には、予め定められた回転状態で、或いは、検査員によって指示入力された回転状態で検光部314を回転制御する回転制御信号を回転装置330に出力する。
【0068】
偏光状態測定部513は、光学装置3の受光部320から取得した検出電圧(Ex,Ey)に基づいて、被検体Sを透過した透過光の偏光状態を演算して測定する。つまり、式(1)及び(2)に従って偏光パラメーター値を算出する。
【0069】
入力部520は、例えばキーボードやボタンスイッチ等を有して構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号を処理部510に出力する。この入力部520の操作により、各種データの入力や、偏光状態の測定開始指示といった各種指示入力がなされる。
【0070】
表示部530は、処理部510から出力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置であり、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等を有して構成される。表示部530には、偏光状態測定部513によって測定された偏光状態(偏光パラメーター値)等の情報が表示される。
【0071】
音出力部540は、処理部510から出力される音出力信号に基づく音出力を行う音出力装置であり、例えばスピーカー等を有して構成される。音出力部540からは、初期校正や偏光状態測定に係る音声ガイダンスやアラーム音等が音出力される。
【0072】
通信部550は、演算装置5が外部の情報処理装置との間で有線通信又は無線通信を行うための通信装置である。通信部550は、例えば、有線ケーブルを介して通信を行う有線通信モジュールや、無線LANやスペクトラム拡散通信等を行う無線通信モジュール等を有して構成される。
【0073】
記憶部560は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュROM、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置(メモリー)を有して構成され、演算装置5のシステムプログラムや、回転制御機能、偏光状態測定機能等の各種機能を実現するための各種プログラム、各種データ等を記憶している。また、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
【0074】
記憶部560には、プログラムとして、処理部510によって読み出され、偏光状態測定処理(図7参照)として実行される偏光状態測定プログラム561が記憶されている。偏光状態測定プログラム561は、偏光パラメーター値算出処理として実行される偏光パラメーター値算出プログラム561Aをサブルーチンとして含む。これらの処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0075】
また、記憶部560には、データとして、例えば、光強度データ563と、偏光状態測定データ565とが記憶される。
【0076】
図6は、光強度データ563のデータ構成例を示す図である。光強度データ563には、回転角563Aと、検出電圧563Bとが対応付けて記憶される。回転角563Aは、回転装置330が検光部314を回転させる際の回転角であり、所定の角度範囲の回転角が記憶される。また、検出電圧563Bは、各回転角563Aについて受光部320(第1受光部320A及び第2受光部320B)から取得した検出電圧(Ex,Ey)のデータが記憶される。
【0077】
偏光状態測定データ565は、偏光状態測定処理において測定された透過光の偏光状態を示す測定データである。例えば、偏光パラメーター値算出処理によって算出された楕円率角565Aや楕円方位角565Bがこれに含まれる。
【0078】
4.処理の流れ
図7は、記憶部560に記憶されている偏光状態測定プログラム561が処理部510によって読み出されることで、偏光状態測定装置1において実行される偏光状態測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0079】
最初に、処理部510は、初期校正処理を行う(ステップA1)。具体的には、被検体Sの検査を行う検査員に第1偏光部304を位置決めするように指示する。この指示に従って、検査員は第1偏光部304を位置決めして、被検体Sに入射する直線偏光の偏角を調整する。この偏角の調整の一手法としては、例えば、回転面が光路に対して直交するよう第1偏光部304を回転させるよう検査員に指示する。検査員は、この指示に従って、回転角を少しずつ変化させながら第1偏光部304を回転させる。
【0080】
このとき、処理部510は、第1偏光部304の各回転角について受光部320から出力される検出電圧(Ex,Ey)をサンプリングする。そして、「Ex=Ey」となったことを検知すると、その旨を検査員に報知するアナウンスやアラーム音を音出力部540から音出力させたり、その旨を報知するメッセージを表示部530に表示させるなどして、偏角の調整に成功したことを検査員に報知する。これにより、初期校正は完了となる。
【0081】
次いで、回転制御部511が、検光部314の回転制御を開始する(ステップA3)。そして、処理部510は、受光部320から検出電圧(Ex,Ey)を取得し、光強度データ563として記憶部560に記憶させる(ステップA5)。
【0082】
その後、回転制御部511は、検光部314の回転を終了するか否かを判定し(ステップA7)、回転を継続すると判定した場合は(ステップA7;No)、回転制御を継続し、ステップA5に戻る。また、回転を終了すると判定した場合は(ステップA7;Yes)、検光部314の回転制御を終了する(ステップA9)。
【0083】
次いで、処理部510は、記憶部560に記憶されている偏光パラメーター値算出プログラム561Aに従って、偏光パラメーター値算出処理を行う(ステップA11〜A15)。
【0084】
偏光状態測定部513は、楕円軌跡の特徴値を抽出する(ステップA11)。具体的には、記憶部560の光強度データ563を参照し、最大光強度及び最小光強度に相当する検出電圧(Ex,Ey)のデータを楕円軌跡の特徴値として抽出する。これは、被検体Sを透過した透過光を楕円偏光とみなし、楕円の特徴値を測定することに相当する。
【0085】
そして、偏光状態測定部513は、抽出した特徴値を用いて、式(1)に従って楕円率角565Aを算出し、偏光状態測定データ565として記憶部560に記憶させる(ステップA13)。また、偏光状態測定部513は、抽出した特徴値を用いて、式(2)に従って楕円方位角565Bを算出し、偏光状態測定データ565として記憶部560に記憶させる(ステップA15)。そして、偏光状態測定部513は、偏光パラメーター値算出処理を終了する。
【0086】
次いで、処理部510は、偏光状態の測定を終了するか否かを判定し(ステップA17)、測定を継続すると判定した場合は(ステップA17;No)、ステップA3に戻る。また、測定を終了すると判定した場合は(ステップA17;Yes)、偏光状態測定処理を終了する。
【0087】
5.作用効果
偏光状態測定装置1において、光学装置3は、光源300から出射し、第2偏光部308によって変換された直線偏光が被検体Sを透過した透過光を検光して出射する検光部314を有する。また、光学装置3は、検光部314からの出射光を直交分離する直交分離部316と、直交分離部316によって直交分離された光を受光する受光部320とを有する。演算装置5は、回転装置330に回転制御信号を出力し、回転面が透過光の光路に対して直交するよう検光部314を回転制御する。そして、演算装置5は、検光部314の回転中に直交分離部316によって直交分離された光を受光部320で受光した強度を用いて、被検体Sを透過した透過光の偏光状態を測定する。
【0088】
被検体Sが有する円偏光二色性及び旋光性により、直線偏光が被検体Sを透過した透過光は楕円偏光に変換される。そこで、直線偏光が被検体Sを透過した透過光を楕円偏光とみなし、楕円の特徴値を測定することで偏光状態を測定する。受光部320で受光した光の強度が最大となる電圧値と、受光部320で受光した光の強度が最小となる電圧値とを特徴値として測定することで、楕円形状を定める楕円率角や楕円方位角といった偏光パラメーター値を算出することができる。
【0089】
受光部320で受光される光の強度には、光学装置3を構成する偏光子やプリズムの精度、光学系の組立誤差等に依存する光学系誤差が内在している。従って、検光部314を固定した状態で受光光の強度を測定したとしても、それが必ずしも楕円の長軸方向の頂点と一致している保証はない。しかし、本実施形態では、検光部314を回転させながら受光部320で受光される光の強度の軌跡を描くことで、楕円の長軸方向及び短軸方向の頂点をきちんと確定できる。
【0090】
通常、光学系の組立誤差は、それぞれの光学素子の位置合わせに依存する。位置合わせで最も影響が大きいのは、偏光プリズムや集光レンズの光軸が一直線上に並んでいるかどうかである。光軸がずれている場合、被検体Sを透過した透過光が受光部320(フォトダイオード)上にきちんと焦点を結ばず、受光部320で本来生ずべき電圧が検出されなくなるため、いわゆる光軸調整を行うことが必要となる。
【0091】
光軸調整は、例えば、光学系を構成する光学素子の位置や向きを変えながら、その焦点位置の変化を捉えることで実現可能であるが、これには機械的限界がある。本実施形態では、従来の光軸調整方法では追い込めなかった光学系誤差を、受光光の強度が描く軌跡という形で捉えることができる。つまり、検光部314を様々な回転状態(回転角度、回転方向、回転回数)で回転させながら受光部320で受光した光の強度の軌跡を描くことで、光学系誤差を含めた形で、被検体Sを透過した透過光の偏光状態を正しく測定することができる。
【0092】
本実施形態の偏光状態測定装置1は、例えば、果物の糖分を測定する糖分測定装置や、人間の血糖値を測定する血糖値測定装置といった測定用機器に組み込んで利用することが可能である。糖分測定装置に適用する場合は、果物を被検体Sとして光学装置3に設定して実験を行う。また、血糖値測定装置に適用する場合は、人間の耳たぶや指先、指の表皮部等を測定用部位とし、当該測定用部位に直線偏光を照射して、その透過光の偏光状態を測定する。そして、偏光状態として測定した楕円率角や楕円方位角といった偏光パラメーター値に基づいて、被検体Sである人間の血糖値(グルコース濃度)を測定する。
【0093】
6.変形例
本発明を適用可能な実施例は、上記の実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。以下、変形例について説明する。
【0094】
6−1.透過光の振動軌跡判定
上記の実施形態では、検光部314を回転させた場合に受光部320によって受光される受光光の光強度の検出電圧が描く軌跡に基づいて、透過光の振動軌跡を判定した。しかし、振動軌跡の判定方法はこれに限られるわけではない。
【0095】
例えば、(1)パターンマッチングを用いた振動軌跡判定方法を適用することとしてもよい。具体的には、楕円の長軸の長さ、短軸の長さ、楕円率、楕円方位角といった楕円形状を定める各種のパラメーター値に基づいて、複数の楕円パターンのデータ(以下、「楕円パターンデータ」と称す。)を記憶部560に予めデータベース化しておく。楕円パターンデータは、例えば、その楕円形状に応じた光強度のデータ組として定めておくことができる。
【0096】
この場合、検光部314を回転させた場合に受光部320によって取得される受光光の光強度のデータ組と、データベース化された複数種類の楕円パターンデータとのパターンマッチング処理を行う。そして、パターンマッチング処理により適合度が高いと判定された楕円パターンデータにより定まる楕円軌跡を、被検体Sを透過した透過光の振動軌跡と判定する。
【0097】
また、他の方法として、(2)平均処理を用いた振動軌跡判定方法を適用することとしてもよい。具体的には、回転方向を一定にして、或いは、回転方向を逆転させて、検光部314を複数回回転させる。検光部314をN回回転させることで、N回転分の光強度のデータ組が得られる。そして、このN回転分の光強度のデータ組を平均処理(例えば加算平均)し、その平均処理の結果として得られた光強度のデータ組により定まる軌跡を、被検体Sを透過した透過光の振動軌跡と判定する。
【0098】
図8は、本変形例において、演算装置5の処理部510が、図7の偏光状態測定処理に代えて実行する第2偏光状態測定処理の流れを示すフローチャートである。なお、偏光状態測定処理と同一のステップについては同一の符号を付して、説明を省略する。図示は省略するが、本変形例では、処理部510は、受光部320の受光光の強度を用いて、透過光の振動軌跡を判定する振動軌跡判定部を機能部として有する。
【0099】
ステップA9において検光部314の回転制御を終了した後、振動軌跡判定部は、振動軌跡判定処理を行う(ステップB10)。この振動軌跡判定処理は、上述した(1)パターンマッチングを用いた振動軌跡判定方法や、(2)平均処理を用いた振動軌跡判定方法、を適用した処理として実現することができる。
【0100】
その後、偏光状態測定部513は、ステップB10の振動軌跡判定処理で判定した振動軌跡の特徴値を抽出する(ステップB11)。具体的には、振動軌跡判定処理で判定された振動軌跡を示す光強度のデータ組のうち、最大光強度及び最小光強度に対応するデータを楕円の特徴値として抽出する。そして、抽出した特徴値を用いて、楕円率角“θ”及び楕円方位角“φ”を算出する。
【0101】
6−2.楕円の特徴値の測定
上記の実施形態では、受光部320の検出電圧(Ex,Ey)のうち、最大光強度に対応する検出電圧(Exmax,Eymax)及び最小光強度に対応する検出電圧(Exmin,Eymin)を特徴値として測定した。これ以外にも、次のようにして特徴値を測定することとしてもよい。
【0102】
検出電圧(Ex,Ey)の座標平面において、原点Oを始点とし、楕円軌跡上の点Aを終点とする第1特徴値ベクトルOAと、原点Oを始点とし、楕円軌跡上の点Bを終点とする第2特徴値ベクトルOBとの2本のベクトルを考える。このとき、第1特徴値ベクトルOAと第2特徴値ベクトルOBとの成す角度が「90°」となるように第1特徴値A及び第2特徴値Bを選択する。
【0103】
具体的には、例えば、第1特徴値ベクトルOAと第2特徴値ベクトルOBとの成す角度が「90°」となる特徴値A及びBの組合せのうち、2本のベクトルの大きさの差が最大となる組合せを判定する。つまり、|OA|−|OB|が最大となる特徴値の組合せを判定し、当該組合せに含まれる特徴値A及びBを用いて偏光状態を測定する。
【0104】
なお、この楕円の特徴値の測定方法は、上記の振動軌跡判定方法を適用した場合も実質的に同一に適用可能である。具体的には、図8の第2偏光状態測定処理において、ステップB10において振動軌跡判定処理を行った後、偏光状態測定部513が、振動軌跡判定処理で判定された振動軌跡の中から、上記の条件を満たす特徴値A及びBの組合せを特徴値として抽出する(ステップB11)。
【0105】
6−3.偏光パラメーター値の算出方法
上記の実施形態では、式(1)及び式(2)に従って偏光パラメーター値を算出したが、偏光パラメーター値の算出方法はこれに限られない。例えば、次式(3)及び(4)に従って偏光パラメーター値を算出することも可能である。
【数3】

【数4】

【0106】
6−4.直線偏光の偏角
上記の実施形態では、被検体Sに入射する直線偏光の偏角を「45°」としたが、これは偏光状態の測定精度を向上させるための工夫の1つであり、必ずしも偏角を「45°」としなければならないわけではない。
【0107】
また、上記の実施形態では、被検体Sの前段に配置された第1偏光部304を位置決めすることで初期校正を行ったが、被検体Sの後段に配置された検光部314を位置決めすることで初期校正を行ってもよい。この場合は、例えば、回転面が光路に対して直交するよう検光部314を回転させる。そして、「Ex=Ey」を満たす検光部314の設置角度を基準として、検光部314を回転制御すればよい。
【0108】
6−5.偏光用光学素子
上記の実施形態では、第2偏光部308や検光部314が、グラントムソンプリズムを有して構成されるものとして説明したが、これ以外の偏光用光学素子を有する構成としてもよいことは勿論である。例えば、第2偏光部308や検光部314が、同じグランタイプの偏光用光学素子であるグランテーラープリズムを有する構成としてもよい。
【0109】
また、上記の実施形態では、直交分離部316が、ウォラストンプリズムを有して構成されるものとして説明したが、直交分離部316を構成する偏光用光学素子も適宜変更可能である。例えば、グランレーザープリズムやローションプリズムといった直交分離機能を有する偏光用光学素子を有する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 偏光状態測定装置、 3 光学装置、 5 演算装置、
300 光源、 302 減光部、 304 第1偏光部、 306 位相差調整部、
308 第2偏光部、 310 第1集光部、 312 第2集光部、
314 検光部、 316 直交分離部、 318 第3集光部、 320 受光部、
330 回転装置、 510 処理部、520 入力部、 530 表示部、
540 音出力部、 550 通信部、 560 記憶部、 580 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光が被検体を透過した透過光を検光して出射する検光部と、
前記検光部からの出射光を直交分離する直交分離部と、
前記直交分離部によって直交分離された光を受光する受光部と、
回転面が前記透過光の光路に対して直交するよう前記検光部を回転させる回転制御部と、
前記検光部の回転中に前記直交分離された光を前記受光部で受光した強度を用いて前記透過光の偏光状態を測定する偏光状態測定部と、
を備えた偏光状態測定装置。
【請求項2】
前記回転制御部は、所定の角度範囲で前記検光部を回転させる、
請求項1に記載の偏光状態測定装置。
【請求項3】
前記偏光状態測定部は、前記受光した光の強度を用いて、前記透過光の振動軌跡を判定する振動軌跡判定部を有し、この振動軌跡判定部によって判定された振動軌跡を用いて前記透過光の偏光状態を測定する、
請求項1又は2に記載の偏光状態測定装置。
【請求項4】
前記偏光状態測定部は、前記透過光を楕円偏光とみなし、楕円の特徴値を測定することで前記偏光状態を測定する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の偏光状態測定装置。
【請求項5】
前記直線偏光は、偏角が45°でなる、
請求項1〜4の何れか一項に記載の偏光状態測定装置。
【請求項6】
前記検光部は、グラントムソンプリズムを有してなる、
請求項1〜5の何れか一項に記載の偏光状態測定装置。
【請求項7】
前記直交分離部は、ウォラストンプリズムを有してなる、
請求項1〜6の何れか一項に記載の偏光状態測定装置。
【請求項8】
直線偏光が被検体を透過した透過光を検光して出射する検光部と、前記検光部からの出射光を直交分離する直交分離部と、前記直交分離部によって直交分離された光を受光する受光部と、を備えた光学装置を制御して前記透過光の偏光状態を測定する方法であって、
回転面が前記透過光の光路に対して直交するよう前記検光部を回転させることと、
前記検光部の回転中に前記直交分離された光を前記受光部で受光した強度を用いて前記透過光の偏光状態を測定することと、
を含む偏光状態測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−36792(P2013−36792A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171535(P2011−171535)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】