説明

偏光素子、液晶装置及び電子機器

【課題】波長域が異なる光に対して優れた特性を発揮する偏光素子を提供すること。
【解決手段】複数の偏光部21R、21G、21Bと、前記複数の偏光部に含まれ、所定の波長域の光を吸収する光吸収材41R、41G、41Bとを備え、前記光吸収材が吸収する前記波長域は、前記偏光部21R、21G、21Bごとに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光素子、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光素子の一つとして、偏光ガラスが知られている。偏光ガラスは無機物のみで構成できるため、有機物を含む偏光板に比べて、光に対する劣化が著しく少ない。したがって、偏光ガラスは、近年、高輝度化が進んでいる液晶プロジェクターに有効な光デバイスとして注目されている。
【0003】
一般的な偏光ガラスとして、下記の特許文献1に記載されたものが公知である。その偏光ガラスの製造方法は以下の通りである。
(1)塩化物、臭化物、およびヨウ化物の群から選択した少なくとも一つのハロゲン化物および銀を含有する組成物から、所望の形状のガラス製品を作製する。
(2)そのガラス製品を、ガラス製品中にAgCl、AgBr、またはAgIの結晶を生成せしめるのに十分な期間にわたって、歪み点より高いが、ガラスの軟化点から約50℃は高くない温度にまで加熱し、結晶含有製品を作製する。
(3)この結晶含有製品を、結晶が少なくとも5:1のアスペクト比に伸長されるように、アニール点より高いが、ガラスが約108ポアズの粘度を示す温度より低い温度において応力下で伸長せしめる。
(4)その製品を、製品上に化学的な還元表面層を発達せしめるのに十分な期間にわたり、約250℃より高いが、ガラスのアニール点から約25℃は高くない温度の還元雰囲気に暴露する。ここで、伸長ハロゲン化銀粒子の少なくとも一部は銀元素に還元されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−169140号公報
【特許文献2】特開2004−256915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の製造方法では、ガラス製品中に万遍なくハロゲン化物が析出する一方で、還元工程ではガラス製品の表層のハロゲン化物しか還元できない。そのため、ガラス製品の厚さ方向の中央部分にハロゲン化物が残存する。その結果、偏光素子の透過率が低下し、この偏光素子を液晶表示装置などに適用した場合、十分な明るさが得られない虞がある。
【0006】
さらに、従来のフルカラー表示の液晶表示装置の多くは、例えば赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の複数種の色材層からなるカラーフィルターを備えている。一般に、偏光素子が持つ偏光特性は波長依存性を有しており、一つの偏光素子を用いた場合には赤色光、緑色光、青色光のそれぞれに対する偏光特性は異なる。そのため、赤色光、緑色光、青色光に対して平均的な偏光特性を持つ偏光素子を用いるのが通常であった。逆に言えば、偏光素子が持つ偏光特性は赤色光、緑色光、青色光の各々に対して最適化されたものではなかった。その結果、液晶表示装置として十分な明るさやコントラスト、色再現性が得られないという問題があった。
【0007】
なお、特許文献2は、可視域に吸収波長のピークを持つナノ粒子をコーティング材料に適用することが記載されているのみであり、偏光素子への応用については示唆されていない。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、複数の色光に対して優れた偏光特性を発揮する偏光素子を提供することを目的とする。また、そのような偏光素子を用いることで表示品位に優れた液晶装置を提供することを目的とする。また、この種の液晶装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る偏光素子は、複数の偏光部を備え、前記複数の偏光部のうち第1偏光部は、第1の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第1光吸収材を有し、前記複数の偏光部のうち第2偏光部は、第2の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第2光吸収材を有し、前記第2の波長域は前記第1の波長域とは異なることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1偏光部は、第1の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第1光吸収材を有し、第2偏光部は、第2の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第2光吸収材を有しているので、第1の波長域と第2の波長域とを適切に選択することにより、互いに異なる波長域の色光各々に対して偏光特性を高めることができる。その結果、本発明の偏光素子を液晶装置に用いた際に表示品位を高めることができる。
【0011】
上記の偏光素子において、前記第一偏光部及び前記第二偏光部は、互いに隣り合って配置されている。
この構成によれば、例えば液晶装置のサブ画素などのように互いに隣り合った2つの領域それぞれを異なる波長域の色光が透過する構成に適用する場合に、偏光特性をより高めることができる。
【0012】
上記の偏光素子において、前記複数の偏光部を支持する基材をさらに備え、前記第一偏光部及び前記第二偏光部からなる偏光部群が複数、前記基材の表面にマトリクス状に配置されている。
この構成によれば、例えば液晶装置のように複数のサブ画素を含む画素がマトリクス状に配置された構成に適用する場合において、偏光特性をより高めることができる。
【0013】
上記の偏光素子において、前記偏光部群は、2つの前記第一偏光部を含む。
この構成によれば、偏光部群が2つの第一偏光部を含むので、例えば液晶装置のように複数のサブ画素を含む画素がマトリクス状に配置された構成に適用する場合において、偏光特性をより高めることができる。
【0014】
上記の偏光素子において、前記第1の偏光部は、第1の母材及び当該第1の母材中に長軸方向が略一方向に配向するように分散された複数の第1の針状金属粒子を有し、前記第2の偏光部は、第2の母材及び当該第2の母材中に長軸方向が略一方向に配向するように分散された複数の第2の針状金属粒子を有する。
この構成によれば、第1の偏光部が第1の母材及び当該第1の母材中に長軸方向が略一方向に配向するように分散された複数の第1の針状金属粒子を有し、第2の偏光部が第2の母材及び当該第2の母材中に長軸方向が略一方向に配向するように分散された複数の第2の針状金属粒子を有するので、偏光特性の高い偏光素子を得ることができる。
【0015】
上記の偏光素子において、前記複数の第1の針状粒子の諸元は、前記第1の波長域に対応して設定され、前記複数の第2の針状粒子の諸元は、前記第2の波長域に対応して設定されている。
この構成によれば、複数の第1の針状粒子の諸元が第1の波長域に対応して設定され、複数の第2の針状粒子の諸元が第2の波長域に対応して設定されているので、複数の第1の針状粒子の諸元と複数の第2の針状粒子の諸元とを適切に選択することにより、互いに異なる波長域の色光各々に対して偏光特性を高めることができる。その結果、本発明の偏光素子を液晶装置に用いた際に表示品位を高めることができる。
【0016】
上記の偏光素子において、前記諸元は、材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくともいずれかである。
この構成によれば、諸元が、材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくともいずれかであるので、これら材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくともいずれかを適切に選択することにより、互いに異なる波長域の色光各々に対して偏光特性を高めることができる。その結果、本発明の偏光素子を液晶装置に用いた際に表示品位を高めることができる。
【0017】
上記の偏光素子において、前記複数の偏光部のうち第3偏光部は、第3の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第3光吸収材を有し、前記第1の波長域は赤色光に対応し、前記第2の波長域は緑色光に対応し、前記第3の波長域は青色光に対応する。
この構成によれば、例えば赤色画素、緑色画素、青色画素を備えた液晶装置に用いた場合において、好適な偏光素子を実現することができる。
【0018】
本発明に係る液晶装置は、一対の基板間に液晶が挟持され、カラーフィルターが設けられた液晶パネルと、前記液晶パネルの少なくとも一面側に配置された偏光素子とを備え、前記偏光素子として、上記の偏光素子が用いられている。
本発明の液晶装置は前記本発明の偏光素子を備えているため、表示品位に優れた液晶装置を実現することができる。
【0019】
本発明の電子機器は、前記本発明の液晶装置を備えたことを特徴とする。
本発明の電子機器は前記本発明の液晶装置を備えているため、表示品位に優れた液晶表示部を有する電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一実施形態に係る偏光素子の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係る偏光素子の一部の構成を示す平面図。
【図3】本実施形態に係る偏光素子の一部の構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図5】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図6】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図7】本実施形態に係る偏光素子の製造過程を示す工程図。
【図8】本発明の第二実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図。
【図9】本実施形態に係る液晶装置の構成を示す断面図。
【図10】本実施形態に係る液晶装置の一部の構成を示す断面図。
【図11】本発明の第三実施形態に係る電子機器の構成を示す斜視図。
【図12】本発明に係る偏光素子の他の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る偏光素子20を示す斜視図である。なお、以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0022】
図1に示すように、偏光素子20は、基材としてのガラス基板10によって支持されている。偏光素子20偏光素子20は、例えば複数のサブ画素からなる画素を複数有する液晶パネルの表示面などに貼り付けられて用いられる。
【0023】
ガラス基板10の具体的な材質は特に限定されるものではなく、公知のいかなるガラス基板を用いても良い。なお、透光性を有する基板であれば、特にガラス基板に限定されるものではなく、石英基板、水晶基板、サファイア基板、樹脂基板等を用いても良い。偏光素子20に耐熱性が要求される場合には、無機系の基板を用いることが望ましい。
【0024】
偏光素子20は、ガラス基板10の一面10aに設けられている。偏光素子20は、ある特定の偏光状態の偏光を透過する一方、他の偏光状態の偏光を吸収する特性を有する。
【0025】
偏光素子20は、複数の偏光部を備えている。複数の偏光部は、複数の偏光部21Rと複数の偏光部21Gと複数の偏光部21Bを含む。図1に示したように、一の偏光部21Rと一の偏光部21Gと一の偏光部21Bによって、一の偏光部群21が形成されている。従って、複数の偏光部群21は、偏光素子20内にマトリクス状に配置されている。各偏光部群21には、ガラス基板10の一面10aに平行な方向に並んで配置された複数の偏光部21R、21G及び21Bが形成されている。
【0026】
図2は、偏光素子20のうち一の偏光部群21の構成を示す平面図である。
図2に示すように、偏光部21R、21G及び21Bは、矩形の形状を持ち、一方向に長手に形成されている。偏光部21Rの短手方向をX軸方向とし、長手方向をY軸方向とする。
【0027】
偏光部21R、21G及び21Bは、等ピッチで一列に並んで配置されている。すなわち、偏光部21R、21G及び21Bは、短手方向に互いに隣り合って配置されている。偏光部21R、21G及び21Bは、それぞれ同一形状及び同一寸法を持つ。偏光部21R、21G及び21Bの配置及び寸法として、例えば偏光素子20が貼り付けられる液晶パネルのサブ画素の配置及び寸法に対応させた寸法とすることができる。
【0028】
図3は、図2におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。
図3に示すように、偏光部21R、21G及び21Bは、無機物を主原料とする透光性の母材50、例えばシリコン酸化物からなる母材50中に、金(Au)、銀(Ag)等からなる複数のナノロッド40(針状金属粒子)と、所定の波長域の光を吸収する光吸収材41が分散されたものである。
【0029】
光吸収材41は、偏光部21Rに含まれる赤色色材41Rと、偏光部21Gに含まれる緑色色材41Gと、偏光部21Bに含まれる青色色材41Bとを有している。赤色色材41R、緑色色材41G及び青色色材41Bについては、例えば染料や顔料などを用いることができる。また、赤色色材41R、緑色色材41G及び青色色材41Bは、一の物質に限られず、複数の物質の組み合わせであっても構わない。
【0030】
染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン、ポリメチン染料等が挙げられる。
【0031】
また、顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50,58;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられる。
【0032】
また、赤色色材41R、緑色色材41G及び青色色材41Bとして、例えば金属ナノ粒子を用いることもできる。金属ナノ粒子としては、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、銅ナノ粒子、金コア・銀シェル複合ナノ粒子、金コア・銅シェル複合ナノ粒子などが挙げられる。
【0033】
色材として、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、高い耐熱性が要求される場合には、金属ナノ粒子を用いればよい。
【0034】
赤色色材41Rは、第1の波長域、例えば650nm(赤色波長域)とは異なる波長域の光を吸収する。このため、偏光部21Rからは、赤色波長域の偏光成分が射出される。緑色色材41Gは、第2の波長域、例えば530nm(緑色波長域)とは異なる波長域の光を吸収する。このため、偏光部21Gからは、緑色波長域の偏光成分が射出される。青色色材41Bは、第3の波長域、例えば410nm(青色波長域)とは異なる波長域の光を吸収する。このため、偏光部21Bからは、青色波長域の偏光成分が射出される。このように、光吸収材41が吸収する波長域は、偏光部21R、21G及び21Bごとに設定されている。
【0035】
偏光部群21には、隔壁22が形成されている。隔壁22は、偏光部21R、21G及び21Bを仕切るように形成されている。隔壁22の材料としては、例えば無機材料や有機材料などを適宜用いることができる。
【0036】
個々のナノロッド40は、短軸方向が例えば数nmから数十nm程度、長軸方向が例えば数十nmから100nm程度の寸法を有している。ナノロッド40は、振動方向がナノロッド40の短軸方向と一致した偏光成分に対する吸収特性と、振動方向がナノロッド40の長軸方向と一致した偏光成分に対する吸収特性とが異なる。本実施形態では、以下説明するように、ナノロッド40の材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくとも一つを含む諸元が、偏光部21R、21G、21Bごとに設定されている。
【0037】
本実施形態では、ナノロッド40として、金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G、銀ナノロッド40B、が用いられている。金コア・銀シェルナノロッド40Rは、金(第1の金属)からなる針状結晶の表面が銀(第2の金属)で被覆された複合金属で構成されている。一方、銀ナノロッド40Bは銀単体から構成され、金ナノロッド40Gは金単体から構成されている。
【0038】
本実施形態の場合、偏光部21Rの内部には、金コア・銀シェルナノロッド40Rが配置されている。偏光部21Gの内部には、金ナノロッド40Gが配置されている。偏光部21Bの内部には、銀ナノロッド40Bが配置されている。3種類のナノロッド40は、略同一の方向、すなわち、ガラス基板10の主面(xy平面)に平行な方向であってx軸と平行な方向に配向している。
【0039】
これらの3種類のナノロッド40は、それぞれ異なる吸収ピーク波長を有している。金コア・銀シェルナノロッド40Rは、振動方向が長軸方向と一致した偏光成分に対して、第1の波長域あるいは第1の波長域の近傍、たとえば650nm(赤色波長域)に吸収ピーク波長を有している。金コア・銀シェルナノロッド40Rは、主に赤色波長域の光に対して振動方向が長軸方向と一致した偏光成分を吸収し、振動方向が短軸方向と一致した偏光成分を透過する特性を発現する。本実施形態において、赤色色材41Rが含まれた偏光部21Rに、金コア・銀シェルナノロッド40Rが含まれているため、赤色波長域の光成分を高精度に偏光することができる構成となっている。
【0040】
金ナノロッド40Gは、振動方向が短軸方向と一致した偏光成分に対して、第2の波長域あるいは第2の波長域の近傍、たとえば530nm(緑色波長域)に吸収ピーク波長を有している。金ナノロッド40Gは、主に緑色波長域の光に対して振動方向が短軸方向と一致した偏光成分を吸収し、振動方向が長軸方向と一致した偏光成分を透過する特性を発現する。本実施形態において、緑色色材41Gが含まれた偏光部21Gに、金ナノロッド40Gが含まれているため、緑色波長域の光成分を高精度に偏光することができる構成となっている。
【0041】
銀ナノロッド40Bは、振動方向が短軸方向と一致した偏光成分に対して、第3の波長域あるいは第3の波長域の近傍、たとえば410nm(青色波長域)に吸収ピーク波長を有している。銀ナノロッド40Bは、主に青色波長域の光に対して振動方向が短軸方向と一致した偏光成分を吸収し、振動方向が長軸方向と一致した偏光成分を透過する特性を発現する。本実施形態において、青色色材41Bが含まれた偏光部21Bに、銀ナノロッド40Bが含まれているため、青色波長域の光成分を高精度に偏光することができる構成となっている。
【0042】
各ナノロッド40のサイズの一例として、金コア・銀シェルナノロッド40Rは、長軸方向の寸法が例えば24nm、短軸方向の寸法が例えば12nm、アスペクト比が2である。金ナノロッド40Gは、長軸方向の寸法が例えば15nm、短軸方向の寸法が例えば5nm、アスペクト比が3である。銀ナノロッド40Bは、長軸方向の寸法が例えば40nm、短軸方向の寸法が例えば5nm、アスペクト比が8である。なお、アスペクト比とは、ナノロッド40の短軸方向の寸法に対する長軸方向の寸法の比である。
【0043】
上述したように、銀ナノロッド40Bおよび金ナノロッド40Gと金コア・銀シェルナノロッド40Rとでは、吸収ピーク波長を示す偏光成分の振動方向が異なる。したがって、偏光素子20において銀ナノロッド40Bおよび金ナノロッド40Gと金コア・銀シェルナノロッド40Rとを同一方向に配向させた場合、青色光および緑色光と赤色光とでは偏光素子20を透過する偏光成分の振動方向が異なる。
【0044】
しかしながら、この偏光素子20を液晶装置に適用する場合、液晶パネルの光入射側と光射出側とに本実施形態に係る偏光素子20を使用すれば、青色光、緑色光と赤色光とで透過する偏光成分が異なったとしても、液晶パネル内での偏光状態が異なるだけであり、表示上は差し支えない。
【0045】
このように、偏光部21Rには、偏光部21Rに入射する光の波長に対応して赤色色材41Rが含まれ、さらに金コア・銀シェルナノロッド40Rの諸元は偏光部21Rに入射する光の波長に対応して選択されている。
【0046】
偏光部21Gには、偏光部21Gに入射する光の波長に対応して緑色色材41Gが含まれ、さらに金ナノロッド40Gの諸元は偏光部21Gに入射する光の波長に対応して選択されている。
【0047】
偏光部21Bには、偏光部21Bに入射する光の波長に対応して青色色材41Bが含まれ、さらに銀ナノロッド40Bの諸元は偏光部21Bに入射する光の波長に対応して選択されている。
【0048】
ここで、赤色色材41Rが偏光部21Rに含まれていない状態において、所定の波長域の光に対して、偏光部21Rが透過させる偏光成分の透過率を偏光部21Rが遮断すべき偏光成分の透過率で除して得られる値を、所定の波長の光に対する偏光部21Rの消光比と定義する。偏光部21Gの消光比と偏光部21Bの消光比も同様に定義する。
【0049】
本発明による偏光素子20は、赤色波長域において、偏光部21Rの消光比は、偏光部21Gの消光比および偏光部21Bの消光比よりも大きい。また、緑色波長域において、偏光部21Gの消光比は、偏光部21Rの消光比および偏光部21Bの消光比よりも大きい。また、青色波長域において、偏光部21Bの消光比は、偏光部21Rの消光比および偏光部21Gの消光比よりも大きい。
【0050】
なお、所定の波長域において、金コア・銀シェルナノロッド4Rによって吸収されない偏光成分の透過率を、所定の波長域の光において金コア・銀シェルナノロッド4Rが透過させる偏光成分の透過率とみなすことができる。同様に、所定の波長域において、金ナノロッド4Gによって吸収されない偏光成分の透過率を、所定の波長域の光において金ナノロッド4Gが透過させる偏光成分の透過率とみなすことができる。また、所定の波長域において、銀ナノロッド4Bによって吸収されない偏光成分の透過率を、所定の波長域の光において銀ナノロッド4Bが透過させる偏光成分の透過率とみなすことができる。
【0051】
そのため、偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bごとに異なる波長域の色光が入射する場合であっても、各偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bにおける偏光特性が従来の偏光素子よりも高められている。
【0052】
次に、図4〜図7を参照して、本実施形態の偏光素子20の方法を説明する。
図4〜図7は、上記構成の偏光素子20の製造工程を示す図である。
まず、図4に示すように、ガラス基板10上に隔壁22を形成する。隔壁22は、偏光部21R、21G及び21Bを形成する領域を区切るように形成する。当該隔壁22は、例えばフォトリソグラフィ法やエッチング法などによってパターニングして形成することができる。勿論、他の方法により隔壁22を形成しても構わない。
【0053】
ガラス基板10上に隔壁22を形成した後、図5に示すように、ガラス基板10のうち隔壁22で囲まれた領域に、金コア・銀シェルナノロッド40R及び赤色色材41Rを含有する有機溶媒溶液61、金ナノロッド40G及び緑色色材41Gを含有する有機溶媒溶液62、銀ナノロッド40B及び青色色材41Bを含有する有機溶媒溶液63をそれぞれ塗布する(塗布工程)。有機溶媒溶液61〜63を塗布する際には、例えば液的吐出法などを用いることができる。
【0054】
有機溶媒溶液61〜63は、それぞれシリコン酸化物の原料であるポリシラザンを任意の有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒溶液61〜63を塗布した段階では、複数の金コア・銀シェルナノロッド40R、複数の金ナノロッド40G、複数の銀ナノロッド40Bは、それぞれランダムな方向を向いている。
【0055】
次に、図6に示すように、有機溶媒溶液61〜63に対してx軸と平行な方向に電界を印加する(電界印加工程)。このとき、第一電極71と第二電極72とが交互に複数配置されたステージ74上にガラス基板10を載置する。なお、図6には示していないが、第一電極71および第二電極72はy軸方向に延在している。第一電極71には高周波電源73を接続し、第二電極72は接地する。
【0056】
この状態で、第一電極71と第二電極72との間に高周波電圧を印加すると、有機溶媒溶液61〜63の内部に、x軸と平行な方向に電界が発生する。金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G、銀ナノロッド40Bは全て針状の形状をしており、各ナノロッド40には分極が生じている。そのため、各ナノロッド40は、長軸方向が電界の方向に沿うように配向する。
【0057】
次に、図7に示すように、例えばオーブン75等を用いて有機溶媒溶液61〜63を焼成する(焼成工程)。これにより、有機溶媒溶液61〜63中の有機溶媒が除去されるとともに、ポリシラザンが大気中の水分や酸素と反応して固化し、シリコン酸化物(母材50)に変化する。このとき、金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G、銀ナノロッド40Bが略同一方向に配向した状態で固定される。
以上の工程を経て、本実施形態の偏光素子20が完成する。
【0058】
従来の偏光素子は、光の波長に対してブロードな偏光特性を持つのが普通であり、偏光特性が各色光に対して最適化されているわけではなかった。そのため、例えば液晶装置に用いた際に輝度やコントラストの低下、色再現性の悪化等、表示上の不具合が生じていた。また、従来の偏光子を微細な形状に分断し、所定の平面上に並べることによって、互いに異なる波長域の色光各々に対して偏光特性が高い偏光素子を製造することは非常に困難である。
【0059】
これに対して、本発明の偏光素子20は、光吸収材が吸収する波長域が偏光部ごとに設定されている。そのため、偏光部に含まれているナノロッドの光吸収特性に対応するように、光吸収材が吸収する波長域を適切に選択することによって、複数の波長域の色光に対して高い偏光特性を示す偏光素子を実現することができる。また、本発明に係る偏光素子20は、既に説明したように公知の薄膜形成技術を用いて容易に製造できるため、従来と比較して偏光素子の厚さを薄くすることができる。
その結果、本発明の偏光素子20を液晶装置に用いた際に表示品位を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態の偏光素子20は、偏光素子20中に含まれるナノロッド40についての、材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくとも一つを含む諸元が、偏光部21R、21G、21Bごとに設定されている。そのため、それら諸元を適切に選択して設定することにより、互いに異なる波長域の色光各々に対して偏光特性を高めることができる。
【0061】
具体的には、本実施形態においてナノロッド40として用いられる、金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G、銀ナノロッド40Bは、赤色波長域、緑色波長域、青色波長域のそれぞれに特定の偏光成分の吸収ピーク波長を有している。そのため、1つの偏光素子が赤色光、緑色光、青色光の各色光に対応した偏光特性を有していることになる。その結果、本実施形態の偏光素子20を、サブ画素として赤色画素と緑色画素と青色画素とを有する画素を複数有する液晶装置に用いた場合、輝度やコントラストの低下、色再現性等を高められ、表示品位を向上させることができる。
【0062】
また、偏光素子20の構成材料が全て無機材料であるため、耐熱性に優れた偏光素子を実現することができる。
【0063】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を説明する。
図8及び図9は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す図である。本実施形態では、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)を画素スイッチング素子として用いたアクティブマトリクス方式の液晶表示装置の例を挙げて説明する。図8は本実施形態の液晶表示装置を各構成要素とともに対向基板の側から見た平面図、図9は図8のH−H’線に沿う断面図である。
【0064】
図8および図9に示すように、本実施形態の液晶表示装置31は、TFTアレイ基板PXと対向基板33とがシール材34によって貼り合わされ、このシール材34によって区画された領域内に液晶層35が封入された液晶パネル36を有している。液晶層35は、正の誘電率異方性を有する液晶材料から構成されている。シール材34の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる遮光膜(周辺見切り)37が形成されている。
【0065】
シール材34の外側の周辺回路領域には、データ線駆動回路38および外部回路実装端子39がTFTアレイ基板PXの一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路46が形成されている。TFTアレイ基板PXの残る一辺には、表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路46の間を接続するための複数の配線47が設けられている。
【0066】
また、対向基板33の角部においては、TFTアレイ基板PXと対向基板33との間で電気的導通をとるための基板間導通材42が配設されている。対向基板33の液晶層35側の面には、カラーフィルター43が形成されている。液晶パネル36の光入射側および光射出側には、偏光板44,45がそれぞれ配置されている。これらの偏光板44、45(特に偏光板45)は、上記実施形態の偏光素子である。なお、偏光板44側には、不図示のバックライトが配置されている。
【0067】
図10は、液晶表示装置31のうち1画素についての構成を模式的に示す分解斜視図である。
図10に示すように、液晶表示装置31は、マトリクス状に配列された複数の画素のそれぞれに、複数のサブ画素(赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXB)を含んでいる。赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBは、一画素内において一方向に等ピッチで並んで配置されている。
【0068】
カラーフィルター43は、赤色サブ画素PXR、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXBの各々に対応して、赤色色材層43R、緑色色材層43G、青色色材層43Bを有している。
【0069】
赤色色材層43Rは、赤色サブ画素PXRに平面視で重なる位置に配置されており、赤色サブ画素PXRを含む寸法に形成されている。緑色色材層43Gは、緑色サブ画素PXGに平面視で重なる位置に配置されており、緑色サブ画素PXGを含む寸法に形成されている。青色色材層43Bは、青色サブ画素PXBに平面視で重なる位置に配置されており、青色サブ画素PXBを含む寸法に形成されている。
【0070】
本実施形態に係る偏光板45では、偏光部21Rは、赤色サブ画素PXRに平面視で重なる位置に配置されており、赤色サブ画素PXRを含む寸法に形成されている。偏光部21Gは、緑色サブ画素PXGに平面視で重なる位置に配置されており、緑色サブ画素PXGを含む寸法に形成されている。偏光部21Bは、青色サブ画素PXBに平面視で重なる位置に配置されており、青色サブ画素PXBを含む寸法に形成されている。
【0071】
また、偏光部21Rは、赤色色材層43Rに平面視で重なる位置に配置されており、偏光部21Gは、緑色色材層43Gに平面視で重なる位置に配置されており、偏光部21Bは、青色色材層43Bに平面視で重なる位置に配置されている。
【0072】
この構成において、不図示のバックライトから射出され、赤色色材層43R、緑色色材層43G、青色色材層43Bを透過した光は、それぞれ偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bに照射されることになる。ここで、偏光板45の偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bには、ナノロッド40が含まれており、これらナノロッド40についての、材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくとも一つを含む諸元が、偏光部21R、偏光部21G、偏光部21Bごとに設定されている。そのため、偏光特性が各色光毎に高められた構成となっている。
【0073】
たとえば、赤色サブ画素PXRに対応する偏光部21Rは、赤色に適した金コア・銀シェルナノロッド40Rを備える。また、緑色サブ画素PXGに対応する偏光部21Gは、緑色に適した金ナノロッド40Gを備える。青色サブ画素PXBに対応する偏光部21Bは、青色に適した銀ナノロッド40Bを備える。このため、明るく、コントラストの高い表示が可能な液晶表示装置を実現できる。
【0074】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を説明する。
図11は本実施形態に係る携帯電話機の構成を示す斜視図である。
図11に示すように、携帯電話機1300(電子機器)は、複数の操作ボタン1302、受話口1303、送話口1304とともに、上記実施形態の液晶表示装置からなる表示部1301を備えている。
【0075】
なお、本発明の電子機器の具体例としては、上記の携帯電話機の他、プロジェクター、電子ブック、パーソナルコンピューター、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビジョン、ビューファインダー型またはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた電子機器等が挙げられる。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、液晶表示装置31の一画素内に3つのサブ画素PXR、PXG、PXBが含まれており、当該サブ画素PXR、PXG、PXBが、一画素内において一方向に等ピッチで並んで配置された構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
【0077】
例えば、図12に示すように、液晶表示装置31の一画素内に4つのサブ画素(第1の赤色サブ画素PXR1、緑色サブ画素PXG、青色サブ画素PXB、第2の赤色サブ画素PXR2)が配置されており、当該4つのサブ画素が一画素内にマトリクス状に配置された構成であっても構わない。
【0078】
この場合、カラーフィルター43の色材層は、赤色サブ画素PXRに対しては赤色色材層43R、緑色サブ画素PXGに対しては緑色色材層43G、青色サブ画素PXBに対しては青色色材層43B、もう一つの赤色サブ画素PXRについては赤色色材層43Rが、それぞれ平面視で重なる位置に配置される。
【0079】
また、偏光板45の構成としては、第1の赤色サブ画素PXR1が偏光部21R1と平面視で重なり、緑色サブ画素PXGが偏光部21Gと平面視で重なり、青色サブ画素PXBが偏光部21Bと平面視で重なり、第2の赤色サブ画素PXR2が偏光部21R2と平面視で重なる位置に配置される。
【0080】
なお、図12に示す構成では、液晶表示装置31の一画素内に、第1の赤色サブ画素PXR1及び第2の赤色サブ画素PXR2が設けられているため、赤色に対応する偏光部21R1および赤色に対応する偏光部21R2が設けられた構成となる。この場合、偏光部21R1に含まれる光吸収材41と偏光部21R2に含まれる光吸収材41は、共に赤色色材41Rとする。
【0081】
なお、液晶表示装置31のサブ画素の配置や形状、色などの構成が他の構成である場合には、偏光板45の偏光部の配置や形状、色を当該サブ画素の配置や色に対応させればよい。
【0082】
例えば、各サブ画素PXR、PXG、PXB、PXRが、正方形や長方形に形成されている場合には、偏光板45の偏光部21R、21G、21B、21Rの形状を対応させて正方形や長方形に形成すればよい。このような構成により、液晶表示装置31のサブ画素の配置や色などがどのような構成であっても、明るく、コントラストの高い表示が可能な液晶表示装置を実現できる。
【0083】
上記実施形態では、ナノロッド40の諸元を設定するに当たり、複数の互いに異なる波長に対して優れた偏光特性を有する偏光素子を実現する手段として、銀ナノロッド、金ナノロッド、金コア・銀シェルナノロッドというように、波長に応じてナノロッドの材料を選択した。この手段に代えて、波長に応じてナノロッドのアスペクト比を選択してもよい。ナノロッドのアスペクト比を変えることにより、吸収ピーク波長をシフトさせることができる。この手段によっても、複数の互いに異なる波長に対して優れた偏光特性を有する偏光素子を実現することができる。
【0084】
また、上記実施形態では、ナノロッドの材料として、金と銀を用いたが、これに限定されない。半導体材料を用いてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、3種類のナノロッドを用いることで、三つの波長域に吸収ピークを持つ偏光素子20を実現したが、本発明はこれに限定されない。例えば、画像表示を構成する色光が赤、緑、青、黄のように4つであれば、偏光素子がこれらの色に応じて四つの波長域に吸収ピークを持つように、4種類のナノロッドを用いればよい。
【0086】
また、画像表示を構成する色光が3つであっても、偏光素子が2つの波長域に吸収ピークを持つように、2種類のナノロッドを用いてもよい。この場合、画像表示を構成する3つの波長域のうち1つの波長域が、偏光素子が有する2つの吸収ピーク波長のいずれかと重なっていることが好ましい。
【0087】
さらに、波長域についても、青色波長域、緑色波長域、赤色波長域に限るものではない。その他、偏光素子の各部の構成材料、寸法、製造工程等に関して、適宜変更が可能である。
【0088】
また、上記実施形態では、ナノロッド40の諸元の一つであるナノロッド40の長軸方向の寸法として、例えば15nm〜40nmとした場合を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、長軸方向の寸法を40nm以上としても構わない。一例を挙げると、銀ナノロッド40Bの長軸方向の寸法を300nm〜500nm程度としても構わない。
【0089】
また、例えば赤色波長域や緑色波長域の光が照射される偏光部21R、21Gに用いられるナノロッドの材料として、金及び銀以外の金属、例えば銅などが用いられた構成であっても構わない。
【0090】
例えば、偏光部21Rに用いられるナノロッド40の材料として、銀を用いる構成であっても構わない。また、例えば偏光部21Gに用いられるナノロッド40の材料として、銅を用いる構成であっても構わない。また、例えば偏光部21Bに用いられるナノロッド40の材料として、赤リンを用いる構成であっても構わない。
【0091】
また、ナノロッド40の諸元の一つである分布密度を設定する場合には、ナノロッド40の分布密度が小さくなると、その分、透過率が上昇し、偏光度が低下することに鑑み、例えば実験やシミュレーションなどにより、予め最適な分布密度を設定することができる。
【0092】
なお、ナノロッド40の分布密度については、偏光部21R、21G、21Bごとに個別に設定することができる。偏光部21R、21G、21Bに含まれるナノロッド40の分布密度を個別に調整する場合、偏光素子20の製造過程において、有機溶媒溶液61〜63を作製する際に、単位量あたりの有機溶媒に含まれるナノロッド40の量を有機溶媒溶液61〜63ごとに個別に調整すればよい。
【0093】
また、上記実施形態では、偏光部21R、21G及び21Bの間に隔壁22が設けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。互いに隣り合う2つの偏光部、たとえば偏光部21Rと偏光部21Gとが互いに接するように形成されていても構わないる。また、互いに隣り合う2つの偏光部、たとえば偏光部21Rと偏光部21Gとの間に隙間が空いた構成であっても構わない。
【0094】
また、上記実施形態においては、偏光部21R、21G及び21Bにナノロッド40(金コア・銀シェルナノロッド40R、金ナノロッド40G及び銀ナノロッド40B)が含まれた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えばナノロッド40が設けられない構成であっても構わない。この場合、偏光部21R、21G及び21Bに、別の偏光手段を設けるようにすれば良い。
【0095】
また、上記実施形態においては、光吸収材として、カラーフィルターに用いられる色材が用いられた構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、ナノロッド40の光吸収特性を利用し、偏光部21R、21G及び21Bに入射する光の波長に対応するように、吸収ピーク波長の異なる複数種類のナノロッド40を適宜組み合わせて当該偏光部21R、21G及び21Bに含ませる構成としても構わない。
【符号の説明】
【0096】
10…ガラス基板 10a…一面 20…偏光素子 21…偏光部群 21R…偏光部、21G…偏光部、21B…偏光部 22…隔壁 31…液晶表示装置 PXR…赤色サブ画素、PXG…緑色サブ画素、PXB…青色サブ画素 35…液晶層 36…液晶パネル 40…ナノロッド 40R…金コア・銀シェルナノロッド、40G…金ナノロッド、40B…銀ナノロッド 41…光吸収材 41R…赤色色材 41G…緑色色材 41B…青色色材 43…カラーフィルター 43R…赤色色材層 43G…緑色色材層 43B…青色色材層 50…母材 61〜63…有機溶媒溶液 1300…携帯電話機(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の偏光部を備え、
前記複数の偏光部のうち第1偏光部は、第1の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第1光吸収材を有し、
前記複数の偏光部のうち第2偏光部は、第2の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第2光吸収材を有し、
前記第2の波長域は前記第1の波長域とは異なる
ことを特徴とする偏光素子。
【請求項2】
前記第一偏光部及び前記第二偏光部は、互いに隣り合って配置されている
請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
前記複数の偏光部を支持する基材をさらに備え、
前記第一偏光部及び前記第二偏光部からなる偏光部群が複数、前記基材の表面にマトリクス状に配置されている
請求項2に記載の偏光素子。
【請求項4】
前記偏光部群は、2つの前記第一偏光部を含む
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項5】
前記第1の偏光部は、第1の母材及び当該第1の母材中に長軸方向が略一方向に配向するように分散された複数の第1の針状金属粒子を有し、
前記第2の偏光部は、第2の母材及び当該第2の母材中に長軸方向が略一方向に配向するように分散された複数の第2の針状金属粒子を有する
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項6】
前記複数の第1の針状粒子の諸元は、前記第1の波長域に対応して設定され、
前記複数の第2の針状粒子の諸元は、前記第2の波長域に対応して設定されている
請求項5に記載の偏光素子。
【請求項7】
前記諸元は、材質、分布密度、径及び長軸方向の寸法のうち少なくともいずれかである
請求項6に記載の偏光素子。
【請求項8】
前記複数の偏光部のうち第3偏光部は、第3の波長域とは異なる波長域の光を吸収する第3光吸収材を有し、
前記第1の波長域は赤色光に対応し、前記第2の波長域は緑色光に対応し、前記第3の波長域は青色光に対応する
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項9】
一対の基板間に液晶が挟持され、カラーフィルターが設けられた液晶パネルと、
前記液晶パネルの少なくとも一面側に配置された偏光素子と
を備え、
前記偏光素子として、請求項1から8のうちいずれか一項に記載の偏光素子が用いられている
液晶装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−11827(P2013−11827A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146018(P2011−146018)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】