説明

偏光露光装置

【課題】基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、基板と遮光マスクの位置合わせが1回のみで、複数箇所の露光を精度良く、しかも短時間で行うことが可能な偏光露光装置を提供する。
【解決手段】被媒体情報をもとに、1回のアライメントで設定した位置を基準として、遮光マスク又は基板ステージの機械動作によって露光位置へ移動し、設定した露光位置で停止し、露光位置に移動した後、露光条件算出機構で算出された露光条件をもとに露光を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ分野に関わる配向膜、位相差層を形成するための偏光露光工程に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに用いられる配向膜は、液晶を整列させる機能を持つ。電圧ON時、またはOFF時に液晶をある方向に整列させることにより、光通過時に位相差を付与し、さらに表示用偏光板を用いることによって黒白表示を実現している。
【0003】
配向膜は、布等で一定方向に擦ることによって、配向膜上に注入、もしくは塗布された液晶を整列させることができる。これはラビング工程と呼ばれている。液晶は、ラビング処理された配向膜の上ではラビング方向に整列し、液晶層は異方性をもつことになる。
【0004】
偏光板を通った光が、ある角度で異方性を持った液晶層に入射した場合、液晶の遅延相に対応する光成分のみ位相差を生じる。これにより、光は円偏光に変化したり、90°回転した直線偏光になったりする。
【0005】
以上のメカニズムを用いることによって、液晶に電圧を印加する状態(ON)と印加しない状態(OFF)で通過する光の偏光状態を操作することができる。
【0006】
ラビング工程は、前述の通り、配向膜を布等で擦る必要があるが、近年は光配向技術が確立しつつあり、露光工程で非接触のプロセスにてラビングと同一の効果を持たせることができる。
【0007】
ラビング工程は処理中の発塵やラビング布の交換頻度が高い等の理由で生産性を落とす原因となっていた。ラビング工程を露光工程に切り替えることにより、非接触プロセスが実現するため、生産性向上が見込める。
【0008】
ラビング工程の露光機代替には、偏光露光と呼ばれる手段が用いられる。偏光板は入射光のなかの横波、もしくは縦波のみを選択的に透過する光学素子であり、一般的にはP波、S波と呼ばれる。
【0009】
偏光露光が展開される代表的なものとして、光配向膜が挙げられる。配向膜は、その上に形成される液晶層を、ある方向に整列させる配向規制力を持つ膜である。光配向膜に偏光露光光を照射することにより、所望の方向に液晶層の配向規制力を持たせることができる。偏光光に反応するメカニズムとしては材料により多種多様であり、ここでは言及しない。
【0010】
また、液晶パネルに使用される位相差板を、カラーフィルタ上に位相差膜を形成させる、いわゆるインセル位相差膜と呼ばれる技術も提案されており、ここでも偏光露光技術が展開される。
【0011】
通常の位相差板は、TAC(トリアセチルセルロース)、もしくはポリカーボネートからなり、液晶表示用偏光フィルムの保護膜として、位相差特性を付加したものが多い。延伸法などの方法でフィルムを伸ばすことによって、分子の整列に異方性を持たせることによって、所望の位相差特性を持たせるものである。
【0012】
TACの優位な点は、製造方法が容易であり、安価であるということが大きい。しかし欠点として、Red、Green、Blueの3色全ての画素で同一の位相差特性しか持たせられないという点が挙げられる。
【0013】
パネルでの位相差フィルムの役割は、斜め視野角コントラストを向上させることを目的とすることが多い。したがって、理想的には、波長の異なるRed、Green、Blueの各色で位相差特性を制御する必要がある。
【0014】
インセル位相差膜は、Red、Green、Blueの各画素で位相差に階調をつけることができる。これにより、各画素で適正な波長分散を得ることが可能となり、最適な視野角コントラストを得ることができる。
【0015】
位相差膜に階調をつける方法としては、偏光露光量を制御する方法が一般的である。例えば先行文献1では、光ビームを被露光体に対して相対的に走査する方法をとっているが、走査速度を調整することによって実質的には露光量を制御することができる。
【0016】
また、近年の液晶TV大型化に伴い、斜め視野角のコントラスト向上は益々求められている。
【0017】
一般的に位相差膜には2軸性重合性液晶が用いられる。2軸とは、面内の位相差Reと膜厚方向の位相差Rthである。2軸の位相差膜を形成するための手段として、コレステリック液晶を使用する方法がある。
【0018】
コレステリック液晶に偏光露光光を照射することによって、膜厚方向に形成されていた液晶の螺旋が偏光方向に異方性を持つようになる。コレステリック液晶は、膜厚方向に既に位相差を持っているため、偏光露光光を照射することによって、面内位相差も発現させることができる。これにより、ReとRthの特性を持たせる。
【0019】
コレステリック液晶は、同一膜厚でも露光量や露光照度、偏光特性等を変えることによって階調出しできるという特徴がある。したがって、塗布、現像を1工程で済ますことは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2005−316167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述の通り、各画素で位相差膜の特性に階調をつける方法としては、偏光露光量を制御する方法が知られているが、例えば、3色以上のパターンの階調出しにおいて、色毎に塗布、露光、現像を繰り返す必要がある。つまり、位相差膜の階調を出すためには、3色カラーフィルタであれば3回のフォトリソ工程が追加されることになり、工程負荷が大きい。
【0022】
また、露光工程では画素数分の工程が必要となり、当然処理時間も長くなるという不具合がある。特に基板と遮光マスクの位置合わせを行うアライメント工程にて多くの時間を必要とする。そのため、アライメント工程を簡略化することが出来れば、処理時間も大幅に短縮することができる。
【0023】
そこで本発明は、問題点に対処し、基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、基板と遮光マスクの位置合わせが1回のみで、複数箇所の露光を精度良く、しかも短時間で行うことが可能な偏光露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願にかかる第1の発明は、
少なくとも光源から被露光基板に至るまでの光照射経路に偏光板を介在させた偏光露光装置であって、少なくとも以下の機構を備えることを特徴とする偏光露光装置である。
(1)遮光マスクに予め印されたマスクアライメントマークおよび基板上に予め印された基板アライメントマークの位置をカメラで観察するカメラ機構、
(2)遮光マスク又は基板ステージを動作して前記遮光マスクと前記基板のアライメントを行うアライメント機構、
(3)被露光媒体の媒体情報を偏光露光装置に入力する入力機構、
(4)前記入力機構で入力された前記媒体情報から、少なくともステージ移動量又遮光マスク移動量、および露光量を含む露光条件を算出する露光条件算出機構、
(5)前記アライメント機構で設定した位置を基準として、遮光マスク又は基板ステージの機械動作によって露光位置へ移動し、設定した露光位置で停止する露光位置移動機構、(6)前記露光位置移動機構で露光位置に移動した後、前記露光条件算出機構で算出された露光条件をもとに露光を行う露光機構。
また、第2の発明は、
前記光源は、紫外線を照射することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第3の発明は、
前記媒体情報が、露光箇所の位置情報、露光量の少なくとも一つから選ばれることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第4の発明は、
前記偏光板の偏光面が、光照射方向に対して垂直になるように設置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第5の発明は、
前記光方向を光軸として、前記光軸に対して前記偏光板の回転角度を調整することができる偏光板回転角度調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第6の発明は、
前記偏光板回転角度調整機構は、−30°以上+30°以下の範囲で可変であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第7の発明は、
前記偏光板は光照射経路におけるインテグレーターレンズ直前、もしくは直後、あるいはインテグレーターレンズ内に具備されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第8の発明は、
前記偏光板は金属膜スリット間隔が400μm以下のワイヤグリッド偏光板であり、光照射方向に対して垂直に設置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第9の発明は、
前記偏光板は2枚以上の偏光板を繋ぎ合わせたものからなり、繋ぎ部の間隔が5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の偏光露光装置
である。
また、第10の発明は、
請求項1乃至9のいずれかに記載の偏光露光装置が近接露光方式、又は近接走査露光方式、又は投影露光方式のうちいずれか一つを採用することを特徴とする偏光露光装置
である。
また、第11の発明は、
請求項1乃至10に記載の偏光露光装置を用いて作製したことを特徴とする位相差膜付きカラーフィルタ
である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は以上の構成であるから、以下に示す如き効果がある。すなわち、第1の発明によれば、
本発明の偏光露光装置を用いることによって、
基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、基板と遮光マスクの位置合わせが1回のみで、複数箇所の露光を精度良く、しかも短時間で行うことが可能な偏光露光装置を提供することが可能となる。
例えば、1回のフォトリソ工程で、かつ1回のアライメントにて位置決めができるため、他の画素を露光する際に再度アライメント調整をする必要が無くなる。そのため短い処理時間で複数の画素上にそれぞれの適正階調で位相差膜を形成することができる。また、例えばカラーフィルタを作製した場合は、カラーフィルタ各色上の位相差膜に適正な位相差ReとRthを付与し、パネル化した際の斜め視認性を向上させることができる。
【0026】
また、第2の発明によれば、
光源に、紫外線を照射する紫外線を用いることによって、複数箇所の露光を精度良く、しかも短時間で行うことが可能な偏光露光装置を提供することが可能となる。
また、第3の発明によれば、
前記媒体情報が、露光箇所の位置情報、露光量の少なくとも一つから選ばれることによって、基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、基板と遮光マスクの位置合わせが1回のみで、複数箇所の露光を精度良く、しかも短時間で行うことが可能な偏光露光装置を提供することが可能となる。
また第4の発明によれば、
前記偏光板の偏光面が、光照射方向に対して垂直になるように設置することによって、偏光板を紫外線照射方向に対して傾斜させる場合に比べて偏光板の面積を効率良く利用することができ、また、被露光基板面での露光光特性を均一に得ることができる。基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、複数箇所の露光を精度良く行うことが可能となる。
また、第5の発明によれば、
前記光方向を光軸として、前記光軸に対して前記偏光板の回転角度を調整することができる偏光板回転角度調整機構を備えることによって、偏光板を紫外線照射方向に対して傾斜させる場合に比べて偏光板の面積を効率良く利用することができ、また、被露光基板面での露光光特性を均一に得ることができる。基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、複数箇所の露光を精度良く行うことが可能となる。
また、第6の発明によれば、
偏光板の光照射方向と垂直な面内で、偏光板を−30°以上+30°以下の範囲で可変であることによって、各色における偏光角度を独立で制御することができる。
また、第7の発明によれば、
偏光板を紫外線照射経路におけるインテグレーターレンズ4直前、もしくは直後、あるいはインテグレーターレンズ4内に具備することにより、露光機内で最も集光している領域に偏光板を介在させることとなり、偏光板の面積を最小限にし、コストを抑えることができる。
また、第8の発明によれば、
偏光板の金属膜スリット間隔が400μm以下のワイヤグリッド偏光板を採用し、光照射方向に対して垂直に設置することにより、波長を選択的に偏光させることができる。特に紫外線領域の波長を選択的に偏光させることができ、また、耐熱性が高いため、紫外線集光部に具備しても長寿命で使用することができる。
また、第9の発明によれば、
偏光板は2枚以上の偏光板を繋ぎ合わせたものからなり、繋ぎ部の間隔が5mm以下とすることによって、大面積の偏光板が必要な場合も小片の繋ぎ合わせで1枚の偏光板を形成することが可能で、繋ぎ部のムラも発生しない。
また、第10の発明によれば、
露光装置が近接走査露光方式を選択すると安価な装置で且つ処理時間の短い露光が可能となる。また、近接走査露光方式を採用することによって、遮光マスク費用が安価で、遮光マスク異物起因の欠陥が発生しにくく、且つ処理時間の短い露光が可能となる。また、投影露光方式を採用することによって、形成パターンの解像度が高く、形成パターンの座標位置補正が容易で、且つ処理時間の短い露光が可能となる。
また、第11の発明によれば、本発明の偏光露光装置を用いることによって、露光精度の良い位相差膜付きカラーフィルタを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明における偏光露光装置の概略図
【図2】本発明における偏光板回転角度調整機構の概略図
【図3】遮光マスクアライメントの位置と基板アライメント位置を模式的に示した概略図
【図4】各画素上の位相差層を露光する工程を示した概略図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明における偏光露光装置、およびその方法に基づいて、コレステリック液晶を偏光露光することによって、位相差特性値を制御する実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明における偏光露光装置の構成を示す概略図である。プロキシミティー露光機に偏光板5を具備した形態を示したものであり、偏光露光装置の光学経路を示す。光源1から発生した光は、楕円ミラー2に反射して、ミラーに反射された光が熱線カットフィルター3に反射してインテグレーターレンズ4を通る。そして、偏光板5によって偏光化された光はコリメーションレンズ6にて反射し、凹面鏡7を介することによって平行光となる。平行光はマスク8に入射され、マスク開口部の光のみが被照射基板上の塗布膜に照射される。
【0030】
また、露光方式は、近接露光方式、又は近接走査露光方式、又は投影露光方式のうちいずれか一つを採用する。
【0031】
上記で使用する光源としては、紫外線を照射するランプが用いられるが、その他公知の光源を用いても良い。また露光量は照度に時間を乗じたエネルギーである。したがって、露光装置に搭載した照度計の測定値から、所望の露光量に必要な露光時間を算出する。算出された露光時間はシャッター開閉によって制御する。シャッターはインテグレーター手前に具備するのが一般的である。
【0032】
ここで、偏光板5はインテグレーターレンズ44の直後に設置してあるが、インテグレーターレンズ4前、またはインテグレーターレンズ4の中に設置してもかまわない。また、スペースが許せば、光源から遮光マスクまでの光路中のどの位置に設置してもかまわない。しかし、スペース以外に偏光板5の大きさも関与してくるため、インテグレーターレンズ4前後等の光学設計的になるべく集光している位置が望ましい。
【0033】
また、通常偏光板は一枚板を使用するが、大型サイズは現市場に存在しない。本発明ではインテグレーターレンズを本発明の偏光露光装置に採用することによって、小版の偏光板を複数継ぎ接ぎした偏光板を大型サイズの偏光板として使用することが可能となる。前述の小版の偏光板を複数継ぎ接ぎした偏光板を通過した露光光は、インテグレーターレンズ44を通過させることによって、照度分布を均一化させ、最終照射面での強度ムラを抑えることができる。
【0034】
なお、前述の小版の偏光板を複数継ぎ接ぎした偏光板は、隣接する偏光板同士が密着して隣接していても良い。また、2枚の偏光板の繋ぎ部の間隔が5mm以下に配置してあればインテグレーターレンズによって照度分布を均一化させ、最終照射面での強度ムラを抑えることができる。
【0035】
図2は、本発明における偏光板回転角度調整機構の概略図であり、光路中の偏光板およびインテグレーターレンズの回転方向を示した概略図である。本発明は、前記偏光板が、光照射方向に対して垂直に設置されており、前記偏光板の回転角度を調整することができる偏光板回転角度調整機構を備えている。本発明では傾斜を必要としないタイプの偏光板を用いることができる。図2(a)は、X−Z平面におけるインテグレーターレンズ4と偏光板5との位置関係を示し、偏光板を光軸に対して垂直に設置する。図2(b)は、Y−Z平面における偏光板5の回転方向12を示す。回転軸は即ち光軸となる。
【0036】
なお、偏光板回転角度調整機構が調整できる偏光板の回転角度の範囲は、−30°以上+30°以下の範囲で可変であることが好ましい。前記の範囲まで調整できると偏光板の回転補正を十分に行うことができる。
【0037】
本発明では、ワイヤグリッド式の傾斜無し偏光板を用いることができる。
【0038】
なお、上記のワイヤグリッド偏光板は、金属膜スリット間隔が400μm以下で、光照射方向に対して垂直に設置することが好ましい。金属膜スリット間隔は、即ち偏光化できる波長を意味し、一般的には水銀ランプの主波長である365nmをターゲットとするものである。つまり、金属膜スリット間隔を小さくすれば、より短波長側の紫外線を偏光化することができ、使用する材料の感度に応じた偏光板を選定する必要がある。
【0039】
一方、多層膜偏光板等の光軸に対して偏光板を傾斜させることによって光を偏光させるタイプは、光学経路中に平行光となる経路を設け、この平行光位置に偏光板を搭載する必要がある。これは、集光、もしくは発散光位置に傾斜型偏光板を搭載すると、最終照射エリアでの照度、偏光特性が著しく不均一になるためである。
【0040】
図3は、遮光マスクアライメント位置13と基板アライメント位置17を模式的に示した概略図である。本図は、遮光マスク14を用いた、近接露光方式における4面付けのカラーフィルタ基板の露光を想定したものである。遮光マスクは、開口部及び遮光部を選択的に設けた遮光パターン18と遮光マスクアライメントマークが4隅に設けられている。一方カラーフィルタ基板15には、3色以上の画素が規則的に配列された画素パターン34が4箇所に配置され、各画素パターン34の周囲にカラーフィルタアライメントマークが4隅に設けられている。
【0041】
図3(a)は1つ目のカラーフィルタ、図3(b)は2つ目のカラーフィルタ、図3(c)は3つ目のカラーフィルタ、図3(d)は4つ目のカラーフィルタ上の重合性液晶を露光した状態をあらわしている。各画素パターン34を最初に露光する前にアライメント調整を行う。位置が決まった後、パターンを露光すると、遮光マスク14の遮光パターン34に合わせた箇所に露光される。ここでは、各カラーフィルタの面付けで4箇所のカラーフィルタアライメントマーク17を設けた方式を示しているが、カラーフィルタアライメントマーク17は4つに限定するものではない。ただし、回転ズレを補正するためには、最低2つのアライメントマークが必要となる。なお、各画素パターンへの移動は基板ステージを動かしても良いし、遮光マスクを動かしても良く、機械的な制御を行えばよい。
【0042】
図3(e)は、図3(a)〜(d)において、遮光マスクアライメントマーク16とカラーフィルタアライメントマーク17が重なっている箇所を拡大したものである。図は遮光マスクアライメントマーク16とカラーフィルタアライメントマーク17の位置合わせが完了した状態を示すもので、遮光マスクと基板のそれぞれのアライメントマーク重心がある許容値内に収まった段階でアライメント完了とする。アライメントマークの形状は限定するものではないが、重心の算出が容易にできるように上下左右が対象のものが望ましい。
【0043】
各アライメントの検知については、CCDカメラで両者のアライメントマークを確認しながら行う。アライメントマークの検出はコントラスト差によって行っている。アライメントマークエッジにてコントラストは最大となり、左右エッジの中点を算出することによって重心座標を割り出すことができる。
【0044】
なお、今回図示はしないが、各色の場所、画像ピッチ、各色の露光量等の情報を処理ユニットに入力し、演算ユニットにてそれぞれ変換を行う。変換を行った各情報は、移動量に関する情報はステージユニットへ送信し、移動先の露光量についての情報は、露光ユニットへデータを送信し、それぞれのユニットで処理を行う。
【0045】
図4は、Red、Green、Blueの各画素上の位相差層を露光する工程を示した概略図である。遮光マスク14は、遮光部19と開口部が選択的に配列された遮光パターンを備え、さらに遮光マスクアライメントマーク16を両端に配置している。遮光部は画素ピッチ分をシフトさせることによって、Red、Green、Blueの3色を選択露光することができる。一方、カラーフィルタ基板15は、基板21上にBlack、Red、Green、Blueの各画素がマトリクス状に配列されており、さらに各画素上にコレスティック液晶を主成分とした重合性樹脂20が塗布されている。重合性液晶20が塗布された面を上にして、その上に遮光マスク14を配置する。なお、本図は、近接露光方式を採用しているため、カラーフィルタ基板15と遮光マスク14の間隔をあけておく。
【0046】
図4(a)はRedを露光した時のカラーフィルタ基板と遮光マスクの位置を示したものである。まず、遮光マスクに予め印されたマスクアライメントマークおよび基板上に予め印された基板アライメントマークの位置をカメラで観察する。そして、遮光マスク又は基板ステージを動作して前記遮光マスクと前記基板のアライメントを行う。
【0047】
図で示すように、Red露光前に遮光マスク14とカラーフィルタ基板15のアライメントを行う。遮光マスクアライメントマーク16とカラーフィルタアライメントマーク17の位置合わせ13を行って、両者の位置を固定する。
【0048】
この時、GreenとBlueの各画素上は、遮光マスク14の遮光部19によって遮光されており、Redのみが開口部となるような遮光パターンが形成された遮光マスク14を用いる。そして、Redの画素に適した偏光特性が得られる露光条件でRed画素22上の重合性液晶に露光を行う。なお、アライメントを行う画素はRedに限定するものではない。Green、またはBlueでもかまわない。
【0049】
露光工程を行うために、被露光媒体の媒体情報を偏光露光装置に入力する。そして入力された媒体情報から、少なくともステージ移動量又遮光マスク移動量、および露光量を含む露光条件を算出する。その他の媒体情報としては、露光箇所の位置情報、各色の場所、画像ピッチ、各色の露光量等が挙げられる。これらの情報を処理ユニットに入力し、演算後、移動量とステージユニットへ、移動先の露光量を露光ユニットへデータを送り、処理を行う。
【0050】
続いて、アライメント機構で設定した位置を基準として、遮光マスク又は基板ステージの機械動作によって露光位置へ移動し、設定した露光位置で停止させる。そして、露光位置に移動した後、算出された露光条件をもとに露光を行う。
【0051】
図4(b)はGreenを露光した時のカラーフィルタ基板と遮光マスクの位置を示したものである。また図4(c)はBlueを露光した時の状態を示したものである。Redでアライメントしているため、Green、Blueでのアライメントは不要である。その代わりにGreen、Blueの各画素幅分を基板ステージの移動にて、図に示す状態に遮光マスクと基板の位置を合わせる。これは遮光マスクの移動でもかまわない。移動はアライメント時に算出した軸を基準に平行移動させるもので、品種毎に画素幅が異なる場合は、プログラム上で移動量が入力できるようなレシピを作成できることが望ましい。
【0052】
また、各色での露光量や偏光特性が調整できるように、プログラム上のレシピに露光条件を入力することによって、自動で画素移動、露光条件調整をさせることができる。例えば、ある品種における画素ピッチ、各画素の露光量、および偏光板の回転補正角度をレシピとして保存することによって、各画素を所望の条件で自動露光することができる。
【0053】
このように、上記の機構を備えた偏光露光装置を用いるとアライメントを1回実施するだけで、各画素上の重合性液晶を精度良く、しかも短時間に露光することができるようになった。
【実施例】
【0054】
以下、実施形態に沿った具体的な露光検証結果について説明する。露光装置の機構は図1に示した通りであるが、本検証においては、インテグレーターレンズの後にワイヤグリッド式偏光板を搭載した近接露光装置によって行った。
【0055】
被露光基板は3色画素からなるカラーフィルタに配向膜を塗布、ラビングし、その上にコレステリック液晶からなる重合性液晶を塗布した基板を使用した。
【0056】
露光量はRed、Green、Blueそれぞれで10mJ/cm、30mJ/cm、60mJ/cmとして偏光露光することによって3色それぞれでの位相差Re、Rthの階調出しを行った。
【0057】
アライメントは1ショットにつき4箇所のアライメントマークを使い、Red、Green、Blueの順で露光した。また、Redアライメント後のGreen、Blueの露光は、ステージを画素幅分移動することによって行い、同一遮光マスクを使用した。
【0058】
ワイヤグリッド偏光板は回転可能な構造とし、各色の遅層軸のずれはこの偏光板を回転させることによって補正した。
【0059】
表1は従来の近接露光装置における露光タクトと本発明を採用した近接露光装置の露光タクトを表にしたものである。本発明により、露光タクトが104secから64secに短縮できることが確認された。ただし、偏光板の軸調整時間は含まない。
【表1】

【0060】
以上の結果より、同一遮光マスクで、アライメント回数1回にて3色階調出しできることが確認され、タクトも短縮されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の偏光露光装置を用いることによって、基板上の複数箇所に遮光マスクを用いて露光を行う際に、基板と遮光マスクの位置合わせが1回のみで、複数箇所の露光を精度良く、しかも短時間で行うことが可能な偏光露光装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1 ・・・光源
2 ・・・楕円ミラー
3 ・・・熱線カットフィルター
4 ・・・インテグレーターレンズ
5 ・・・偏光板
6 ・・・コリメーションミラー
7 ・・・凹面ミラー
8 ・・・遮光マスク
9 ・・・塗布膜
10・・・ガラス基板
11・・・露光ステージ
12・・・偏光板回転軸
13・・・位置合わせ
14・・・遮光マスク
15・・・カラーフィルタ基板
16・・・遮光マスクアライメントマーク
17・・・カラーフィルタアライメントマーク
18・・・遮光パターン
19・・・遮光部
20・・・重合性液晶
21・・・基板
22・・・Red画素
23・・・Green画素
24・・・Blue画素
25・・・Black画素
30・・・露光光
31・・・被露光基板
34・・・画素パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも光源から被露光基板に至るまでの光照射経路に偏光板を介在させた偏光露光装置であって、少なくとも以下の機構を備えることを特徴とする偏光露光装置。
(1)遮光マスクに予め印されたマスクアライメントマークおよび基板上に予め印された基板アライメントマークの位置をカメラで観察するカメラ機構。
(2)遮光マスク又は基板ステージを動作して前記遮光マスクと前記基板のアライメントを行うアライメント機構。
(3)被露光媒体の媒体情報を偏光露光装置に入力する入力機構。
(4)前記入力機構で入力された前記媒体情報から、少なくともステージ移動量又遮光マスク移動量、および露光量を含む露光条件を算出する露光条件算出機構。
(5)前記アライメント機構で設定した位置を基準として、遮光マスク又は基板ステージの機械動作によって露光位置へ移動し、設定した露光位置で停止する露光位置移動機構。(6)前記露光位置移動機構で露光位置に移動した後、前記露光条件算出機構で算出された露光条件をもとに露光を行う露光機構。
【請求項2】
前記光源は、紫外線を照射することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の偏光露光装置。
【請求項3】
前記媒体情報が、露光箇所の位置情報、露光量の少なくとも一つから選ばれることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の偏光露光装置
【請求項4】
前記偏光板の偏光面が、光照射方向に対して垂直になるように設置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の偏光露光装置
【請求項5】
前記光方向を光軸として、前記光軸に対して前記偏光板の回転角度を調整することができる偏光板回転角度調整機構を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の偏光露光装置。
【請求項6】
前記偏光板回転角度調整機構は、−30°以上+30°以下の範囲で可変であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の偏光露光装置。
【請求項7】
前記偏光板は光照射経路におけるインテグレーターレンズ直前、もしくは直後、あるいはインテグレーターレンズ内に具備されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の偏光露光装置。
【請求項8】
前記偏光板は金属膜スリット間隔が400μm以下のワイヤグリッド偏光板であり、光照射方向に対して垂直に設置することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の偏光露光装置。
【請求項9】
前記偏光板は2枚以上の偏光板を繋ぎ合わせたものからなり、繋ぎ部の間隔が5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の偏光露光装置
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の偏光露光装置が近接露光方式、又は近接走査露光方式、又は投影露光方式のうちいずれか一つを採用することを特徴とする偏光露光装置。
【請求項11】
請求項1乃至10に記載の偏光露光装置を用いて作製したことを特徴とする位相差膜付きカラーフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−69994(P2011−69994A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220945(P2009−220945)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】