説明

偏平形金属化フィルムコンデンサ

【課題】本発明は、特性のバラツキをなくした偏平率の大きい薄型の金属化フィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】径方向の両側端部に設けられた折り曲げ部2を介して偏平化された巻芯部1と、この巻芯部1上に巻回された金属化フィルム3からなる偏平形金属化フィルムコンデンサである。この構成によれば、巻芯部に設けた折り曲げ部により、偏平化したときにこの折り曲げ部が折れ曲がるようにしているため、偏平率の大きいコンデンサ素子の特性のバラツキを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路を搭載した電気機器等に用いる偏平形金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に小型化フィルムコンデンサは、使用される機器あるいは電源部の小型化や、プリント基板上の搭載面積などの制約により、巻回したフィルムからなる円筒形状のコンデンサ素子をつぶして小判形状とした偏平形状としている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図8は従来のフィルムコンデンサを示しており、(a)は側面断面図、(b)はリード線引き出し側から見た平面図を示し、24はコンデンサ素子、25はコンデンサ素子24の両側端面に設けられた金属層、26は電極を引き出す端子、27は外装ケース、28は充填樹脂を示す。
【0004】
図8に示すように、コンデンサ素子24は偏平形状としており、ケース27に内蔵され、さらにその周囲は充填樹脂28にてケース内に充填されている。また、コンデンサ素子の両側端面には電極部として金属層25が設けられ、さらに金属層25に電極を引き出す端子26が接続されている。そして、この端子26がケース27の外部に出て、外部との接続ができるようにしている。
【0005】
また、図9は従来のフィルムコンデンサにおいて、コンデンサ素子を形成する方法を示すもので、金属化フィルムの巻取装置、および抑えローラの配置図を示している。
【0006】
図9において、20はコンデンサ素子の巻芯部、21は誘電体フィルムに金属膜電極蒸着した金属化フィルム、22は巻芯部形成先巻フィルム、29は金属化フィルム21を巻き取って形成するコンデンサ素子、30は抑えローラを示す。
【0007】
以上のように構成されたフィルムコンデンサについて、その動作を説明する。
【0008】
まず、図9で示すように、金属化フィルム21を、円筒形状とした巻芯部形成先巻フィルム22で形成された巻芯部20に巻き付ける。この際、巻き取り中のコンデンサ素子29の外周面側からは、金属化フィルム21のシワ発生防止のために、抑えローラ30が金属化フィルム21を加圧するように配置されている。なお、抑えローラ30は特にフィルムが薄い場合シワ発生防止対策として有効となっている。
【0009】
また、巻き取り中のコンデンサ素子29は円筒形状であり、コンデンサ素子29の両側端面に金属層を設ける際に、外部から圧力をかけてつぶし、偏平形状とする。特に大容量が必要なコンデンサでは、ケース内に配置するコンデンサ素子数も多くすることが必要となり、ケースに効率よく収めるには偏平率を大きくすることが必要となる。
【0010】
また図10は、円筒状のコンデンサ素子を押しつぶして得る方法とは別の方法で偏平形状のコンデンサ素子を得る方法を示す、偏平巻芯による巻取状況図であり、31は偏平巻芯、32は巻取機の平板コアを示す。
【0011】
図10で示すように、偏平形状とした偏平巻芯31を巻取機の平板コア32に装着し、金属化フィルム21、外装フィルム23を巻き付けて得る方法もある。
【特許文献1】特開昭55−124227号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の構成のうち、偏平形状の巻芯にフィルムを巻き付ける方法では、偏平率を大きくし、薄型対応とする場合、巻取作業中の偏平巻芯のコーナ部でのテンションコントロールが困難なため、フィルムストレスが大となっていた。また、円筒形状の巻芯の場合と比較すると、巻き取り速度が上がらないため大量生産には不向きであり、また、薄手フィルムに有効な抑えローラが使えないため、シワが入り易く、特性のバラツキが大となった。
【0013】
また、偏平巻芯を使わずに、円筒形状の巻芯とした場合、巻芯の径が大きくなると、偏平形状につぶす際に均一につぶすことが難しく、形状がいびつになり、シワの発生、フィルムへのストレスの不均一、端面の不揃い等、特性のバラツキが大となり、実現できていなかった。
【0014】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、特性のバラツキをなくした偏平率の大きい薄型の金属化フィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の金属化フィルムコンデンサは、径方向の両側端部に設けられた折り曲げ部を介して偏平化された巻芯部と、この巻芯部上に巻回された金属化フィルムからなる構成としたものである。
【0016】
この構成によれば、巻芯部に設けた折り曲げ部により、偏平化したときにこの折り曲げ部が折れ曲がるようにしているため、偏平率の大きいコンデンサ素子の特性のバラツキを抑えることができる。
【0017】
また、金属化フィルム巻取り時の巻芯部を丸形状とすることにより、巻取速度を上げることができ、生産工数を削減するものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によると、金属化フィルムコンデンサの小型で薄型形状を達成でき、また、生産工数も削減することができるという多大な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1〜図7を用いて説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における偏平形金属化フィルムコンデンサを示す図であり、(a)は側面断面図、(b)はコンデンサのリード線引き出し側から見た平面図を示す。
【0021】
図1において、1はコンデンサ素子の巻芯部、2は巻芯部1に設けられた折り曲げ部、3はフィルムに金属膜電極を蒸着した金属化フィルム、4はコンデンサ素子の絶縁保護とする外装フィルムを示す。さらに5は金属化フィルム3、巻芯部1、外装フィルム4からなるコンデンサ素子、6はコンデンサ素子5の端面に設けられた金属層、7は電極を引き出す端子、8はコンデンサ素子5が納められる外装ケース、9は充填樹脂を示す。なお、コンデンサ素子5は円筒状に巻回した後、偏平化したものである。
【0022】
次に図2は、図1で示す巻芯部1の偏平化する前の断面図を示したものであり、フィルム巻回後、矢印で示した方向に加圧することにより、折り曲げ部2を折り曲げ位置として偏平化できるようにしている。
【0023】
また図3は、金属化フィルムを巻取り中のコンデンサ素子と抑えローラの配置図を示す。図3において、10はフィルム巻き取り途中のコンデンサ素子、11は抑えローラを示し、図3で示す巻芯部1を巻回中心とし、抑えローラ11で抑えながら金属化フィルム3を巻き取る。なお、抑えローラ11で金属化フィルム3を抑えることにより、図4(b)、(c)、(d)で示す従来の不具合例であるシワ15、たるみ16、変形17を防止し、図4(a)で示すような正常なコンデンサ素子を形成することができる。
【0024】
以上のようにして形成される偏平形金属化フィルムコンデンサについて、さらに詳細に説明する。
【0025】
まず図3において、金属化フィルム3は、金属蒸着する誘電体フィルムをポリプロピレン(以下PP)フィルムとし、厚みを3.5μm、幅は80mmとし、形成するコンデンサ素子の容量は、300μFとした。また、巻芯部1の材質はポリエチレンテレフタレート(以下PET)とし、厚みを250μm、内径を80mmとした。また、巻芯部1は、図2で示すように、偏平化したときに折れ曲がりやすいように折り曲げ部2を設けている。なお、この折り曲げ部2は径方向の両側に2箇所、フィルム幅方向に亘って設けられている。そして、図3に示すように、巻芯部1を巻回中心として、金属化フィルム3を巻き付けている。なお、図3には示していないが、金属化フィルム3の終端は、図1で示す外装フィルム4を巻き付け、コンデンサ素子5の外周部に外装フィルム4が形成されるようにしている。
【0026】
そして図3に示すように、金属化フィルム巻回時、巻芯部1は内径80mmの円筒形状となっていることから、抑えローラ11を配置することができ、抑えローラ11がコンデンサ素子との間にフィルムをはさみ込み、フィルムのシワの発生を防いでいる。このように、本実施の形態では、偏平巻芯を用いてフィルムを巻回する方法ではできなかった抑えローラ11を配置できるようにしたことで、信頼性の高い金属化フィルムコンデンサの形成が可能となった。さらに、金属化フィルムの巻き取り速度は、巻芯を円筒状にした方が、従来の偏平巻芯を用いる場合より早く、3種類のサンプルで比較した結果、1/5〜1/6の時間に短縮することが可能となることがわかった。
【0027】
次に、コンデンサ素子を偏平化する工程について説明する。図3に示すように、本実施の形態では金属化フィルム巻取り中のコンデンサ素子10は円筒形状であり、コンデンサ素子の端面に金属層6を設ける前につぶして偏平形状としている。この際、図2に示すように、折り曲げ部2が折り曲げ位置となるように矢印の方向に加圧して偏平化したコンデンサ素子を得る。
【0028】
このように、あらかじめ折り曲げ部2を設け、容易に折れ曲がるようにしておくことで端面の不揃いなく、均一に偏平化ができ、図4(a)で示すような正常な素子が得られ、従来の丸形形状の巻芯とした場合に発生していた、図4(b)、(c)、(d)で示す、シワ15、たるみ16、変形17を防止することができる。
【0029】
なお、巻芯部の材質をPETとしたのは、機械的強度が強いため、巻芯部の厚みを薄くすることができ、要求に応じてさらに小型化が図れるためである。
【0030】
さらに、偏平化したコンデンサ素子を、図1(b)に示すように、両側端面に金属層6を形成し、120℃の真空中で熱処理した後、金属層6に電極を引き出す端子7が接続され、コンデンサ素子5が形成される。さらに、コンデンサ素子5は、外装ケース8に挿入され、充填樹脂9を充填して使用されるものである。なお、充填樹脂はエポキシ樹脂とした。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば巻芯部1に配した折り曲げ部2により均一に偏平化が可能となり、金属化フィルム巻取り時の巻芯を丸形状とすることによりコンデンサの特性のバラツキを抑え、かつ巻取速度を上げることができ、生産工数を削減することができる。
【0032】
なお、本実施の形態における巻芯部は図2で示すように、円筒状で、径方向の両側2箇所を内側に凹ませた形状とし、この凹ませた部分を折り曲げ部としたが、この形状に限定するものではなく、その他の形状であってもよい。それについて説明する。
【0033】
まず、本実施の形態に用いる巻芯部の第2の実施例について図5を用いて説明する。図5は、巻芯部の第2の実施例を示すものであり、12は円筒状の巻芯部の径方向の両側端部に設けた折り曲げ部であり、肉厚を薄くしている。すなわち、巻芯部の第2の実施例においては、径方向の両側に設けた折り曲げ部12が、フィルム幅方向に亘って薄くなっており、図中矢印の方向に圧力をかけて偏平化をする際に、薄くなった箇所で容易に折れ曲がることとなる。すなわち、この第2の巻芯部の実施例によれば、巻芯部1に配した折り曲げ部12により均一な偏平化が可能となる。また、金属化フィルム巻取り時は巻芯は円筒形状であるので、コンデンサの特性のバラツキを抑え、かつ巻取速度を上げることができ、生産工数を削減することができる。
【0034】
同様にして、巻芯部の第3、第4の実施例について図6および図7を用いて説明する。
【0035】
図6は、第3の巻芯部の実施例を示すもので、13は円筒状とした巻芯部の径方向の両側端部に設けた折り曲げ部であり、折り曲げ部は巻芯部を破断させている。このように、巻芯部1には、折り曲げ部13が径方向の両側に、フィルム幅方向に亘って直線形状に破断されたことによって設けられており、圧力をかけて偏平化する際に、破断部の強度が弱くなっているため、弱くなった箇所で容易に折れ曲がることとなる。
【0036】
また、図7は、第4の巻芯部の実施例を示すもので、2つの半円筒状の巻芯部を突き合わせて円筒状の巻芯部を形成したものであり、円筒状の巻芯部の径方向の両端にできる突合せ部を折り曲げ部14としている。そして、圧力をかけて偏平化をする際に、突き合わせ部、すなわち折り曲げ部14が弱くなっているため、この弱くなった折り曲げ部14で容易に折れ曲がることとなる。
【0037】
以上に示した、巻芯の第3の実施例および第4の実施例で示すような折り曲げ部13および14により、均一な偏平化が可能となり、また、金属化フィルム巻取り時は巻芯を円筒形状とすることができるのでコンデンサの特性のバラツキを抑え、かつ巻取速度を上げることができ、生産工数を削減することができる。
【0038】
なお、本実施の形態において、巻芯部の材質をPETとしたが、PPとしてもよく、PPにすることにより、金属層6形成後の120℃の真空中での熱処理の際に、偏平化した巻芯部間の接着強度を上げ、さらにバラツキを抑え、特性の向上を図ることが可能となる。
【0039】
また、特に、従来からの方法によると巻芯径を20mm以上とした場合、不具合が発生し、巻芯径を大きくして偏平率を大きくしたい場合に信頼性の高いコンデンサを得ることは困難であったが、本実施の形態により、巻芯径が20mm以上の偏平率の高い偏平形金属化フィルムコンデンサを得るのに有効である。
【0040】
さらに、巻芯として、先巻フィルムを用いて、ヒートシール等の接着により、溶着させた後に、折り曲げ部を形成させることによる構成も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の偏平形金属化フィルムコンデンサによると、小型で薄型形状を達成でき、また、生産工数も削減することができ、小型で薄型形状の要求が強い電源回路などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】(a)本発明の偏平形金属化フィルムコンデンサの実施の形態1における側面断面図、(b)本発明の偏平形金属化フィルムコンデンサの実施の形態1におけるコンデンサのリード線引き出し側から見た平面図
【図2】折り曲げ部を有する巻芯の実施例を示す図
【図3】金属化フィルムを巻取り中のコンデンサ素子と抑えローラの配置図
【図4】(a)正常な偏平化したコンデンサ素子を示す図、(b)偏平化したコンデンサ素子の不具合を示す第1の例を示す図、(c)偏平化したコンデンサ素子の不具合を示す第2の例を示す図、(d)偏平化したコンデンサ素子の不具合を示す第3の例を示す図
【図5】折り曲げ部を有する巻芯の第2の実施例を示す図
【図6】折り曲げ部を有する巻芯の第3の実施例を示す図
【図7】折り曲げ部を有する巻芯の第4の実施例を示す図
【図8】(a)従来のフィルムコンデンサの実施の形態1における側面断面図、(b)従来のフィルムコンデンサの実施の形態1におけるコンデンサのリード線引き出し側から見た平面図
【図9】従来のフィルムコンデンサの抑えローラの配置図
【図10】従来のフィルムコンデンサの偏平巻芯での巻取状況図
【符号の説明】
【0043】
1 巻芯部
2、12、13、14 折り曲げ部
3 金属化フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向の両側端部に設けられた折り曲げ部を介して偏平化された巻芯部と、この巻芯部上に巻回された金属化フィルムからなる偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
巻芯部を偏平化する前の円筒状における巻芯径を20mm以上とした請求項1に記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記折り曲げ部は、内側に凹ませた折り曲げ部である請求項1に記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記折り曲げ部は、肉厚を薄くした折り曲げ部である請求項1に記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記折り曲げ部は、破断した折り曲げ部である請求項1に記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記折り曲げ部は、2つの半円の円筒状のものを突き合わせて円筒状とし、この突合せ面を折り曲げ部とした請求項1に記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記巻芯部は、材質をポリエチレンテレフタレートとした請求項1〜6のいずれか一つに記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。
【請求項8】
前記巻芯部は、材質をポリプロピレンとした請求項1〜6のいずれか一つに記載の偏平形金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−98675(P2008−98675A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336269(P2007−336269)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【分割の表示】特願2003−325830(P2003−325830)の分割
【原出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】