説明

偏心測定装置

【課題】モータを運転した際に、モータから振動や騒音、うなりを生じる場合、モータを取り外して、偏心の有無や、偏心の状態を確認する必要があった。
【解決手段】モータを取り外すことなく、固定子フレームに3個またはそれ以上の個数の加速度センサを取り付け、センサから得られる周波数成分を解析することで、モータの偏心の有無や、偏心の状態を測定することを特徴とする。本発明により、モータの偏心の測定が容易にできることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの偏心に関するものであり、運転時のフレームの振動を用いて、モータの偏心の有無や、偏心の状態を測定する装置である。
【背景技術】
【0002】
モータは、固定子鉄心、回転子鉄心、コイル、シャフト、フレームにより構成されている。
【0003】
モータを運転した時には、ギャップを通る磁束により、固定子鉄心と回転子鉄心に電磁力がはたらき、フレームを振動させる原因となる。図2は電磁力によりフレームが振動し、騒音を発する仕組みである。
【0004】
固定子鉄心に働く電磁力は、ギャップの磁束密度の高い場所、すなわち磁極のある場所で大きくなる。電磁力はギャップを狭くするように働き、固定子鉄心は内側へ引っ張られるため、鉄心は変形する。磁極のない場所は、磁極のある場所に比べ電磁力は小さいため、磁極付近でギャップを狭くする働きとは逆に、固定子鉄心は外側に変形する。固定子全体では、電磁力の大きい箇所は極数と等しい。
【0005】
モータが偏心すると、ギャップ磁束密度に不平衡が生じ、電磁力の分布にも不平衡が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−17622公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】誘導機電磁騒音解析技術調査専門委員会、「電気学会技術報告 第1048号」、電気学会、2006年、p.37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モータを運転した際に、モータから振動や騒音、うなりを生じる場合、モータを取り外して、偏心の有無や、偏心の状態を確認する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明によれば、モータの偏心の測定において、前記モータの固定子フレームに取り付けられる3個またはそれ以上の個数の加速度センサと、前記各個の加速度センサからの振動加速度信号に基づいて周波数成分を測定する周波数測定手段と、前記各個の振動加速度信号に基づく周波数成分を処理する周波数処理手段を備え、前記周波数処理手段は、前記各個の周波数成分を解析し、前記加速度センサ信号の個数総数と同数の周波数成分を比較し、前記モータの偏心を検知することを特徴とするモータ偏心測定装置。
【0010】
請求項2の発明によれば、前記各個の加速度センサは、各々円周方向に等間隔で固定子フレームに取り付けられることを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【0011】
請求項3の発明によれば、前記各個の加速度センサは、固定子フレームのモータ軸方向に2断面について各3個ずつ合計6個またはそれ以上の個数を取り付けられることを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【0012】
請求項4の発明によれば、前記各個の加速度センサは、径方向の振動加速度を検出する加速度センサであることを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【0013】
請求項5の発明によれば、前記の周波数処理手段は、加速度センサからの振動加速度信号を処理し、モータの静的偏心、動的偏心、斜態偏心を解析することを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【0014】
本発明は、モータが振動する場合や、騒音やうなりを生じる場合、モータを取り外すことなく、偏心の有無や、偏心の状態を確認できることを特徴とし、固定子フレームに取り付けた3個またはそれ以上の個数の加速度センサを用いて、得られる周波数成分を解析し、偏心の有無や、偏心の状態を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の偏心測定装置は、固定子フレームに3個またはそれ以上の個数の加速度センサ取り付け、得られる周波数成分を解析することで偏心の有無や、偏心の状態を測定するため、モータを取り外すことなく測定が行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】測定装置全体を示した図。
【図2】モータのギャップで生じる電磁力を示した説明図。
【図3】加速度センサを取り付けた様子をモータ軸方向から見た図。
【図4】静的偏心を示した図。
【図5】動的偏心を示した図。
【図6】斜態偏心を測定する際の測定装置全体を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、モータの固定子フレームに加速度センサを取り付けた測定装置全体の図である。
【0019】
固定子フレームに取り付ける加速度センサを取り付ける。図3は固定子フレームに取り付けられた加速度センサを軸方向から見た図である。取り付け位置は軸方向に対し垂直な関係となる断面上で、円周方向に等間隔となるようにする。
【0020】
測定装置は加速度センサから得られる周波数成分を解析し、偏心の有無、偏心の状態、偏心の方向などを判別する機能を有する。
【実施例1】
【0021】
図3は、3個の加速度センサを用いて測定を行う方法を示した図である。
【0022】
モータが偏心していない場合、3個の加速度センサから得られる振動の周波数成分と振幅は等しくなる。加振力の主要因は磁極数により生じるもので、その周波数は2×f[Hz]である。ここでfは電源周波数である。
【0023】
図4は、固定子内径の中心と回転子の回転中心が不一致した静的偏心を示した図である。この場合、3個の加速度センサから得られる振動の周波数は、磁極数により生じる2×f[Hz]と等しいが、回転子が偏心している方向に取り付けられている加速度センサからは振幅の大きな成分が得られる。その情報から偏心している方向を特定する。偏心方向を求める精度を上げる場合には、加速度センサを多くすればよい。
【0024】
図5は、回転子内径の中心と回転子の回転中心が不一致した動的偏心を示した図である。この場合、3個の加速度センサから得られる振動の周波数と振幅は等しいが、得られる周波数の中に、回転子1回転に等しい2×f/p[Hz]の成分が含まれる。ここでpはモータ極数である。
【0025】
静的偏心と動的偏心が組み合わさった場合、3個の加速度センサから得られる振動の周波数の中に、回転子1回転に等しい2×f/p[Hz]の成分が含まれ、また、磁極により生じる2×f[Hz]の周波数の振幅は静的偏心の偏心方向に取り付けられた加速度センサからは大きいものが測定される。
【実施例2】
【0026】
回転軸が斜めに傾いた状態を斜態偏心という。
【0027】
図6は、6個の加速度センサを用いて、斜態偏心の測定を行う方法を示した図である。斜態偏心では軸方向の2断面で回転子の偏心方向や偏心量が異なるため、軸方向2断面について各3個の合計6個またはそれ以上の個数で測定することで、軸の傾きを測定することが出来る。図6の、A1とA2、B1とB2、C1とC2は周方向の取り付け位置は同じである。
【0028】
軸の傾きが無い場合は、図6のA1とA2、B1とB2、C1とC2のそれぞれの組み合わせ間では、得られる周波数の振幅は等しくなる。
【0029】
軸の傾きがある場合は、図6のA1とA2、B1とB2、C1とC2のそれぞれは得られる周波数の振幅は異なる。このとき断面1での偏心方向をA1、B1、C1から求め、断面2での偏心方向をA2、B2、C2から求め、両者の偏心方向を比較することで軸の傾きを求めることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、モータの偏心の測定が容易に実施できる。振動や騒音の原因究明に要する時間を短縮することが出来るため、モータを扱うあらゆる場所に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 固定子鉄心
2 回転子鉄心
3 モータ
4 加速度センサ
5 測定装置
6 固定子内径
7 回転子外径
8 固定子中心
9 回転子中心と回転軸中心
10 固定子中心と回転軸中心
11 回転子中心
12 加速度センサA1
13 加速度センサA2
14 加速度センサB1
15 加速度センサB2
16 加速度センサC1
17 加速度センサC2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの偏心の測定において、前記モータの固定子フレームに取り付けられる3個またはそれ以上の個数の加速度センサと、前記各個の加速度センサからの振動加速度信号に基づいて周波数成分を測定する周波数測定手段と、前記各個の振動加速度信号に基づく周波数成分を処理する周波数処理手段を備え、前記周波数処理手段は、前記各個の周波数成分を解析し、前記加速度センサ信号の個数総数と同数の周波数成分を比較し、前記モータの偏心を検知することを特徴とするモータ偏心測定装置。
【請求項2】
前記各個の加速度センサは、各々円周方向に等間隔で固定子フレームに取り付けられることを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【請求項3】
前記各個の加速度センサは、固定子フレームのモータ軸方向に2断面について各3個ずつ合計6個またはそれ以上の個数を取り付けられることを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【請求項4】
前記各個の加速度センサは、径方向の振動加速度を検出する加速度センサであることを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。
【請求項5】
前記の周波数処理手段は、加速度センサからの振動加速度信号を処理し、モータの静的偏心、動的偏心、斜態偏心を解析することを特徴とする請求項1記載のモータ偏心測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−5282(P2012−5282A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139173(P2010−139173)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】