説明

偏波モード分散補償方法及び光伝送システム

【目的】1次PMD補償が可能であって、かつ光パルスの強度変化を発生させないで、高次PMDを抑圧することが可能である。
【解決手段】第1偏波面コントローラ202は、受信光パルス号301に応じて、受信光パルス信号301の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号103を生成する。DGD補償器104は第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対してDGDを付与してPMD補償光パルス信号105を生成する。第2偏波面コントローラ212は、PMD補償光パルス信号のDOPの値を更に大きな値になるように、送信光パルス信号211を構成する光パルスの偏波面を回転制御して、高次偏波面制御光パルス信号を、DGD補償器から出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光伝送システムにおいて、高次偏波モード分散に起因して生じる光パルスの時間波形の歪みを除去するための偏波モード分散補償方法、及びこの方法を実施することが可能である光伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムにおいて伝送速度が高速になる程、光パルスの偏光状態を反映する偏波モード分散(PMD: Polarization Mode Dispersion)に起因して発生する光パルスの時間波形の歪が伝送品質に与える影響が大きくなり、PMDを補償する必要性が高まる。
【0003】
PMDは、光伝送路を構成する光ファイバに加えられる曲げ応力、温度変化、あるいは光ファイバの製造過程においてコアの断面形状が僅かに楕円形状となる等の影響によって、光ファイバに複屈折性が発現することによって発生する。また、光パルスの偏光状態変動は、例えば、システムのメンテナンスの作業中に光ファイバ伝送路に触れるといった事態によって生じ、あるいは光ファイバ伝送路の架橋部の振動等によって生じる。
【0004】
図1(A)〜(C)を参照して、このPMDによって、光ファイバを伝播する光パルスの時間波形が歪む現象を説明する。図1(A)〜図1(C)は、複屈折性を有する光ファイバを光パルスが伝播する前と後におけるその時間波形の変化の様子を示す図である。
【0005】
図1(A)は、光伝送路10を伝播する前の光パルスのx及びy軸方向の偏波成分についての時間波形と、光伝送路10を伝播した後のx及びy軸方向の偏波成分についての時間波形とを示している。図1(B)は、光伝送路10を伝播する前の光パルスのx及びy軸方向の偏波成分を合成した時間波形を示す図である。図1(C)は、光伝送路10を伝播した後の光パルスのx及びy軸方向の偏波成分を合成した時間波形を示す図である。図1(A)〜図1(C)において、時間波形は横軸方向に時間軸をとって、その光強度を模式的に示してある。
【0006】
光伝送路10を伝播する前の光パルス20のx及びy軸方向の偏波成分(以後、固有偏光モードということもある)は、時間軸上でそのピーク位置が一致している。従って、伝送前の信号を構成する光パルス20の時間波形は、x及びy軸方向の偏波成分を合成したものであるから、図1(B)に示すように単峰性のパルス波形である。光パルス20が光伝送路10を伝播すると、光伝送路10の有する複屈折性に起因して、光パルス20のx軸とy軸方向の偏波成分の間に伝播時間差、すなわち群遅延(DGD:Differential Group Delay)が生じる。この現象がPMDである。PMDによって、光伝送路10から出力される伝送後の信号を構成する光パルス22の時間波形は、図1(C)に示すように、単峰性ではなく双峰性のピークを複数持つ歪んだ光パルスとなる。
【0007】
伝送によって生じる光パルスの時間波形の歪量を少なくするための偏波モード分散補償装置(以後、PMD補償装置ということもある)には、従来、光段補償方法と電気段補償方法の2通りの方法が知られている。電気段補償方法は、電子デバイスの動作速度の上限に起因して、伝送速度が40 Gbit/sを超える光パス信号の偏波モード分散補償を行うことが困難となる。そこで、光段補償方法が必要とされる。
【0008】
光段補償方法として、偏光度(DOP: Degree of Polarization)をモニターして、DGDを補償する方法(例えば、特許文献1、2、及び非特許文献1参照)、あるいはスペクトルホールバーンニング(SHB: Spectrum Hole Burning)をモニターしてDGDを補償する方法(非特許文献1参照)が知られている。
【0009】
DOPをモニターしてDGDを補償する方法は、波形歪みの補償の対象である光信号の伝送ビットレートに依存せずに実行できること、及び任意のRZ(Return to Zero)フォーマットの光信号に対しても適用が可能であるという特長を有している。この方法を実施するための、PMD補償装置は、偏波面コントローラ、偏光度補償器(以後、DGD補償器ということもある)、偏波解析器、及びこれらを制御するための制御装置を具えて構成される。このPMD補償装置を用いるPMD補償方法には、DOPが極大となるように、偏波面コントローラ及びDGD補償器を適応的に制御し、PMDによる光パルスの時間波形歪を補償するアルゴリズムが利用されている。
【0010】
図2を参照して、従来の1次PMD補償装置の構成及びその動作を説明する。図2は、従来の1次PMD補償装置の概略的ブロック構成図である。光信号の通路を太線で示し、電気信号の通路を細線で示してある。
【0011】
ここで、1次PMD補償装置と表記した理由は、後述する高次PMDを補償する装置と区別するためである。ただし、以後の説明においては、煩雑を回避するため特に区別する必要がある場合を除き1次PMD補償装置を単にPMD補償装置ということもある。
【0012】
PMD補償装置100は、偏波面コントローラ102、DGD補償器104、制御信号生成器106、光分岐器108、及び偏波解析器110を具えて構成されている。偏波面コントローラ102は、制御信号生成器106から供給される制御信号107aに応じて、入力光信号101の偏光状態を任意に変換することができる。
【0013】
DGD補償器104は、制御信号生成器106から供給される制御信号107bに応じて、偏波面コントローラ102から出力される光信号103の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対してDGD量を任意に調整することができる。すなわち、DGD補償器104は、偏波面コントローラ102から出力される光信号103のDGD量を減少させて、光信号103のDGD補償を行う機能を有している。
【0014】
PMD補償装置100においては、入力光信号101に対して以下の第1から第3ステップから成るPMD補償方法が実施される。
【0015】
第1ステップは、入力光信号101に対して、この入力光信号101の2つの固有偏光モードのうちPMD補償装置100に先に到達した固有偏光モード成分の偏波方向と、DGD補償器の遅相軸(Slow axis)の方向とが合致するように、偏波面コントローラ102が制御されるステップである。
【0016】
DGD補償器から出力される光信号105は、光分岐器108で受信光パルス信号109aと受信光パルス信号109bに分岐される。受信光パルス信号109bは、偏波解析器110に入力される。第2ステップは、この偏波解析器110において、受信光パルス信号109bのストークスパラメータを抽出して、DOPを算出するステップである。また、受信光パルス信号109aは、PMD補償装置100の後段に設けられる受信処理部(図示を省略してある。)に入力されて、電気信号の形態に変換する等の受信処理が行われる。
【0017】
第3ステップは、制御信号生成器106において、偏波解析器110から出力されるDOP信号111に基づいて、上述の偏波解析器110で算出されたDOPが極大と成るように、偏波面コントローラ102及びDGD補償器104へ供給すべき制御信号107a及び107bを算出するステップである。PMDに起因する光パルスの時間波形歪は、DOPが極大のときに最小となることが知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0018】
上述の第1から第3ステップを繰り返して、フィードバック制御を行うことによって、PMD補償装置100において、光パルスの時間波形歪の補償が実行される。
【0019】
光ファイバの複屈折性に起因して、その伝播速度の偏波面の方向依存性が生ずるが、このとき光の位相速度が遅い偏波面の方向を規定する軸を遅相軸(slow axis)と呼び、伝播する光の位相速度が速い偏波面の方向を規定する軸を進相軸(fast axis)と呼ぶ。この遅相軸と進相軸との間の伝播時間差が、図1(A)〜図1(C)を参照して説明したPMDであり1次PMDと呼ばれることもある。以後の説明の便宜のため、図1(A)に示す図において、x軸を遅相軸とし、y軸を進相軸とする。
【0020】
光伝送路としての光ファイバの長さが短い場合には、進相軸と遅相軸とは図1(A)に示すように、その方向が光の伝播方向(z軸方向)に対して保存された状態で存在する。しかしながら、光伝送路としての光ファイバの長さが長くなると、進相軸と遅相軸とは、その方向が光の伝播方向(z軸方向)に対して保存された状態で存在するのではなく、z軸の位置に対応して進相軸及び遅相軸の向きは変化するという現象を無視することができなくなる。
【0021】
この光ファイバを光パルスが伝播する場合、光パルスの波長スペクトル成分のうち長波長成分と短波長成分とでは、その進相軸及び遅相軸の向きも異なってくる。すなわち、進相軸及び遅相軸の向きのz軸依存性が波長成分ごとに異なり、光パルスの時間波形は、1次PMDとは異なり複雑に変形する。このように、z軸の位置に対応して進相軸及び遅相軸の向きが変化することに起因して発生するPMDを高次PMDと呼ぶ。
【0022】
光伝送システムにおいて伝送速度が高速になる程、伝送される光パルス信号を構成する光パルスの時間波形の半値幅を狭くする必要がある。すなわち、伝送速度が高速になる程、この光パルスの波長スペクトル幅は広くなる。従って、光パルスの波長スペクトル成分のうち長波長成分と短波長成分とでは、上述したように、進相軸及び遅相軸の向きが異なることから、光パルスの波長スペクトル幅は広くなるほど、進相軸及び遅相軸の向きの相違が大きくなる。この結果、光伝送システムにおいて伝送速度が高速になる程、高次PMDの影響が現れやすくなる。言い換えると、光伝送システムにおいて伝送速度が高速になる程、高次PMDの抑圧を行う必要性が増す。
【0023】
高次PMDを抑圧する光段補償方法を実現する装置として、偏波面コントローラとDGD補償器とからなる1次PMD補償器を多段に直列接続した装置が開示されている(例えば、特許文献3及び非特許文献2参照)。また、高次PMD成分及び非偏光成分を偏光子によって除去する方法が開示されている(例えば、非特許文献3参照)。また、直交偏波モードの一方の偏光成分を偏光子によってフィルターする方法が開示されている(例えば非特許文献4参照)。
【特許文献1】特表2006-527386号公報
【特許文献2】特開2006-211507号公報
【特許文献3】特開2004-350285号公報
【非特許文献1】磯村章彦、石川丈二「自動偏波モード分散補償技術の現状と課題」OPTRONICS、2003年、No.10、pp.126〜129.
【非特許文献2】Henrik Sunnerud, et al., "A Comparison Between Different PMD Compensation Techniques", Journal of Lightwave Technology Vol. 20, No. 3, (2002).
【非特許文献3】H. Toda, et al., "Distributed PMD Compensation Experiment Using Polarizers", IEICE Trans., Commun., Vol. E-90B, No. 10, (2007).
【非特許文献4】木坂由明、他「単一偏波コントローラーを用いた一段構成の全次PMD補償器」電子情報通信学会総合大会2006年、B-10-74.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
光伝送路としての光ファイバの1次PMD成分が高次PMD成分よりも十分に大きく光パルスの時間波形の歪の支配的要因となっている場合、受信側において1台の偏波面コントローラと1台のDGD補償器を具えて構成されるPMD補償器によって十分にPMDが補償される。この場合、仮に光ファイバ伝送路を伝播する光パルスの偏光状態が高速度に変動しているとしても、光パルスの時間波形歪は十分に補償することが可能である。
【0025】
しかしながら、光ファイバの高次PMD成分が1次PMD成分に比べて無視できない程度に大きく、光パルスの時間波形の歪の発生要因となっている場合は、1次PMDの補償を行ったうえで高次PMDの抑圧を行う必要がある。
【0026】
高次PMDを抑圧する光段補償方法を実現する装置として、偏波面コントローラとDGD補償器とからなる1次PMD補償器を多段に直列接続した装置においては、偏波面コントローラの追従速度が光パルスの偏波面の時間変動速度よりも遅い場合、高次PMD抑圧のために多段のDGD補償器によって、一時的に光パルスの時間波形の歪が発生する。
【0027】
また、高次PMD成分及び非偏光成分を偏光子によって除去する方法を実現する方式の装置においては、高次PMDの抑圧操作が行われることによって光パルスの強度に変動が発生する。
【0028】
一般に、1次PMDの時間変化率よりも、光パルスの偏光状態の時間変化率の方が高速度であることが知られている。そして、従来の高次PMD抑圧器の動作特性は光パルスの偏光状態に強く依存するので、光パルスの偏光状態の変動に追随して高次PMD抑圧を実現できない可能性がある。
【0029】
そこで、この発明の目的は、1次PMD補償が可能であって、かつ光パルスの強度変化を発生させないで、高次PMDを抑圧する方法及びこの方法を実現するための光伝送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この発明の発明者は、受信側で1次PMDを補償しかつ高次PMDを抑圧する処理を行うと、高次PMD抑圧処理のために一時的に光パルスの時間波形の歪が発生し、あるいは光パルスの強度に変動をきたす場合があることを、実験によって知った。
【0031】
そこで、この発明の発明者は、様々な思考を重ね実験を繰り返すことによって、受信側に配置される1次PMD補償装置が具える偏波面コントローラの他に、送信側にも2台目の偏波面コントローラを配置し、この偏波面コントローラによって送信光パルス信号の偏光状態を調整するステップを実行することで、光パルスの強度変化を発生させないで高次PMDを抑圧することが可能であることを見出した。
【0032】
上述の理念に基づくこの発明の要旨によれば、以下のPMD補償方法及び光伝送システムが提供される。
【0033】
この発明のPMD補償方法は、光ファイバ伝送路のPMDによって発生する光パルスの時間波形を整形する構成とされてなる光伝送システムにおけるPMD補償方法であって、1次PMD補償ステップと、高次PMD抑圧ステップとを含んでいる。
【0034】
1次PMD補償ステップは、受信側において、受信光パルス信号を構成する光パルスのDOPが第1の極大となるようにこの受信光パルス信号の偏光状態を調整することにより、PMD補償光パルス信号を生成するステップである。
【0035】
高次PMD抑圧ステップは、受信側において第1の極大を与える偏光状態に固定しておいて、送信側において、更に送信光パルス信号を構成する光パルスの偏波面を回転制御して、受信側において観測されるPMD補償光パルス信号のDOPが第1の極大より大きな第2の極大となる第2偏波面制御光パルス信号を生成するステップである。
【0036】
1次PMD補償ステップは、1次補償信号生成ステップと、受信光パルス信号偏波面制御ステップと、DGD補償ステップとを含んで構成するのが好適である。
【0037】
1次補償信号生成ステップは、PMD補償光パルス信号をタップして、受信光パルス信号に応じて、この受信光パルス信号の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号を生成するために必要な受信光パルス信号の偏波面の回転量を与える第1偏波面回転パラメータ信号、及び第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対してDGDを付与してPMD補償光パルス信号を生成するために必要なDGD量を与えるDGDパラメータ信号を生成するステップである。
【0038】
受信光パルス信号偏波面制御ステップは、第1偏波面回転パラメータ信号に基づいて、受信光パルス信号の偏波面を回転制御して、第1偏波面制御光パルス信号を生成するステップである。
【0039】
DGD補償ステップは、DGDパラメータ信号に基づいて第1偏波面制御光パルス信号のDGDを減少させて、PMD補償光パルス信号を生成するステップである。
【0040】
また、高次PMD抑圧ステップは、第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップと、第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップとを含んで構成するのが好適である。
【0041】
第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップは、PMD補償光パルス信号をタップして、受信光パルス号に応じて、送信光パルス信号の偏光状態を調整して第2偏波面制御光パルス信号を生成するために必要な送信光パルス信号の偏波面の回転量を与える第2偏波面回転パラメータ信号を生成するステップである。
【0042】
第2偏波面制御光パルス信号生成ステップは、送信側において、第2偏波面回転パラメータ信号に基づいて送信光パルス信号の偏波面を回転することによって、第2偏波面制御光パルス信号を生成するステップである。
【0043】
この発明のPMD補償方法は、以下に示す、光ファイバ伝送路のPMDによって発生する光パルスの時間波形を整形するPMD補償を行う構成とされたこの発明の光伝送システムを利用するのが好適である。
【0044】
この発明の光伝送システムは、PMD補償光パルス信号を生成するPMD補償部を具える受信装置と、第2偏波面コントローラを具える送信装置とを具えている。
【0045】
PMD補償部は、受信光パルス信号の偏光状態を調整することによって第1偏波面制御光パルス信号を生成し、かつこの第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対してDGDを付与することによって、受信光パルス信号を構成する光パルスのDOPが第1の極大となるように第1偏波面制御光パルス信号の偏光状態を調整してPMD補償光パルス信号を生成する。
【0046】
PMD補償部は、第1偏波面コントローラ、DGD補償器、偏波解析器及び制御信号生成器を具えて構成される。
【0047】
第1偏波面コントローラは、受信光パルス号に応じて、この受信光パルス信号の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号を生成する。
【0048】
DGD補償器は、第1偏波面コントローラから供給される第1偏波面制御光パルス信号に応じて、この第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対してDGDを付与してPMD補償光パルス信号を生成する。
【0049】
偏波解析器は、PMD補償光パルス信号のストークスパラメータを算出し、このストークスパラメータを、電気信号であるストークスパラメータ信号に変換して出力する。
【0050】
制御信号生成器は、ストークスパラメータ信号から、受信光パルス信号の偏波面の回転量を指示する第1偏波面回転パラメータ信号、第1偏波面制御光パルス信号のDGD差を指示するDGDパラメータ信号、及び送信光パルス号の偏波面の回転量を指示する第2偏波面回転パラメータ信号を生成して、第1偏波面コントローラ、DGD補償器、及び第2偏波面コントローラにそれぞれ出力する。
【0051】
第2偏波面コントローラは、受信側において第1の極大を与える偏光状態に固定しておいて、送信光パルス信号を構成する光パルスの偏波面を回転制御して、受信側において観測されるPMD補償光パルス信号の第1の極大より大きな第2の極大となる高次偏波面制御光パルス信号を生成する。
【0052】
また、上述のこの発明の光伝送システムは、PMD補償光パルス信号を生成するPMD補償部を受信装置に具えており、第2偏波面コントローラを送信装置に具えていることから、この発明の光伝送システムによってこの発明のPMD補償方法に含まれる、1次PMD補償ステップ及び高次PMD抑圧ステップを以下のように実現する。
【0053】
上述の1次PMD補償ステップに含まれる1次補償信号生成ステップは、第1偏波面回転角度算出ステップと、第1 DGD差算出ステップと、第1 DOP比較ステップと、1次補償パラメータ信号供給ステップと、1次PMD補償値設定ステップとを含んで構成する。
【0054】
第1偏波面回転角度算出ステップは、第1偏波面コントローラによって、第1偏波面コントローラの光軸の向きを回転させつつ、偏波解析器によってPMD補償光パルス信号のDOPを測定し、制御信号生成器によって当該DOPが極大となるPMD補償光パルス信号の偏波面の回転角度を算出するステップである。
【0055】
第1 DGD差算出ステップは、PMD補償光パルス信号の偏波面の回転角度を、第1偏波面回転角度算出ステップで算出された偏波面の回転角度に固定して、DGD補償器によって偏波面制御モニター光信号のDGD差を変化させつつ、偏波解析器によってPMD補償モニター光信号のDOPを測定し、制御信号生成器によって当該DOPが第1の極大となる第1偏波面制御光パルス信号のDGD差を算出するステップである。
【0056】
第1 DOP比較ステップは、算出されたDGD差をDGD補償器に設定して、偏波解析器によって第1偏波面制御光パルス信号のDOPを測定し、当該DOPが予め設定しておいたDOPの最小基準値である、基準DOPの値を超えているか否かを判定するステップである。
【0057】
1次補償パラメータ信号供給ステップは、第1 DOP比較ステップで測定されたDOPが、基準DOPを超えている場合における、受信光パルス信号の偏波面の回転角度を、制御信号生成器から第1偏波面コントローラに対して受信光パルス信号の偏波面の回転角度として指示する、第1偏波面回転パラメータ信号を生成して出力すると共に、第1 DOP比較ステップで測定されたDOPが、基準DOPを超えている場合における、第1偏波面制御光パルス信号のDGD差を、制御信号生成器からDGD補償器に対して、第1偏波面制御光パルス信号のDGD差として指示するDGDパラメータ信号を生成して出力するステップである。
【0058】
1次PMD補償値設定ステップは、第1偏波面回転パラメータ信号によって、受信光パルス信号の偏波面の回転角度を第1偏波面コントローラに設定し、かつDGDパラメータ信号によって第1偏波面制御光パルス信号のDGD差をDGD補償器に設定するステップである。
【0059】
また、上述の高次PMD抑圧ステップは、第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップと第2偏波面制御光パルス信号生成ステップを含み、この発明の光伝送システムによって以下のように実現する。
【0060】
第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップは、第2偏波面回転角度算出ステップと、第2 DGD差算出ステップと、第2 DOP比較ステップとを含んで、以下のように実現する。
【0061】
第2偏波面回転角度算出ステップは、第2偏波面コントローラによって、第2偏波面コントローラの光軸の向きを回転させつつ、偏波解析器によってPMD補償光パルス信号のDOPを測定し、制御信号生成器によって当該DOPが極大となるPMD補償光パルス信号の偏波面の回転角度を算出するステップである。
【0062】
第2 DGD差算出ステップは、PMD補償光パルス信号の偏波面の回転角度を、第2偏波面回転角度算出ステップで算出された偏波面の回転角度に固定して、DGD補償器によって偏波面制御モニター光信号のDGD差を変化させつつ、偏波解析器によってPMD補償モニター光信号のDOPを測定し、制御信号生成器によって当該DOPが第2の極大となる第1偏波面制御光パルス信号のDGD差を算出するステップである。
【0063】
第2 DOP比較ステップは、算出されたDGD差をDGD補償器に設定して、偏波解析器によって第1偏波面制御光パルス信号のDOPを測定し、当該DOPが予め設定しておいたDOPの最小基準値である、基準DOPの値を超えているか否かを判定するステップである。
【0064】
また、第2偏波面制御光パルス信号生成ステップは、高次補償パラメータ信号供給ステップと高次PMD抑圧値設定ステップとを含んでいる。
【0065】
高次補償パラメータ信号供給ステップは、第2 DOP比較ステップで測定されたDOPが、基準DOPを超えている場合における、受信光パルス信号の偏波面の回転角度を、制御信号生成器から第1偏波面コントローラに対して受信光パルス信号の偏波面の回転角度として指示する、第1偏波面回転パラメータ信号を生成して出力すると共に、第2 DOP比較ステップで測定されたDOPが、基準DOPを超えている場合における、第1偏波面制御光パルス信号のDGD差を、制御信号生成器からDGD補償器に対して、第1偏波面制御光パルス信号のDGD差として指示するDGDパラメータ信号を生成して出力するステップである。
【0066】
高次PMD抑圧値設定ステップは、第1偏波面回転パラメータ信号によって、受信光パルス信号の偏波面の回転角度を第1偏波面コントローラに設定し、かつDGDパラメータ信号によって第1偏波面制御光パルス信号のDGD差をDGD補償器に設定するステップである。
【発明の効果】
【0067】
この発明のPMD補償方法によれば、受信側において偏光子等を利用する、あるいは1次PMD補償を多段に実行する等の手法による高次PMD抑圧処理が行われる構成とはされておらず、高次PMD抑圧処理は、送信側に配置される第2偏波面コントローラによって実行される。
【0068】
この発明のPMD補償方法では、まず、受信側において1次DGD補償ステップが実行され、受信光パルス信号を構成する光パルスのDOPが第1の極大となるように受信光パルス信号の偏光状態が調整される。このとき、受信光パルス信号に高次PMD成分が存在していても、一般的に受信光パルス信号の1次PMD成分の方が高次PMD成分より大きいため、DOPを第1の極大となるようにPMD補償部を駆動させれば、受信光パルス信号のDOPを十分に大きくすることが可能である。
【0069】
次に、PMD補償部を上述のように受信光パルス信号のDOPが第1の極大となるように固定した状態で、第2偏波面コントローラを制御して、DGD補償器から出力されるPMD補償光パルス信号のDOPが第1の極大より更に大きな第2の極大となるように、送信側において第2偏波面制御光パルス信号を生成するステップが実行される。このステップが高次PMD抑圧ステップである。
【0070】
このように、送信側において第2偏波面コントローラを制御することにより高次PMD抑圧ステップが実現されるので、高次PMD抑圧ステップを実行中に受信光パルス信号を構成する光パルスの強度に変動が生じない。すなわち、これは、PMD補償部が、偏波面コントローラ、DGD発生器を具えて構成されており、偏波面コントローラは偏波面の回転を、DGD発生器は遅延を与える機能を持つものであり、両者は協働して光伝送路を伝播する光信号の直交偏波間の位相差を変化させるのみであり、光強度を変化させるものではないことによる。
【0071】
DOPは1次PMD成分及び高次PMD成分を含めたPMDの総量である総PMDの大きさと負の相関関係を有することから、DOPを1次PMD及び高次PMDを含めたPMDの総量を表すパラメータとして、1次PMD補償ステップ及び高次PMD抑圧ステップにおいて利用することが有効である。すなわち、DOPが極大となるようにPMD補償部及び第2偏波面コントローラを制御することによって、PMDの総量を十分に小さくすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
以下、図3〜図6を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図3はこの発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係などを概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の素子および動作条件などを取り上げることがあるが、これら素子および動作条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、図3において図2に示した従来例のPMD補償装置と構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
【0073】
<実施の形態の光伝送システムの構成>
図3を参照して、この発明の実施の形態の光伝送システムの構成について説明する。図3は、この発明の実施の形態の光伝送システムの概略的ブロック構成図である。光信号の通路を太線で示し、電気信号の通路を細線で示してある。
【0074】
この発明の実施の形態の光伝送システムは、送信信号生成部210及び第2偏波面コントローラ212を具える送信装置200と、PMD補償部100及び受信信号処理部120を具える受信装置300とを具えている。送信信号生成部210は送信光パルス信号211を生成して出力する。受信信号処理部120は、受信光パルス信号109aが入力されて電気信号の形態に変換する等の受信処理を行う。
【0075】
PMD補償部100は、第1偏波面コントローラ202、DGD補償器104、光分岐器108、偏波解析器110及び制御信号生成器106を具えて構成される。光分岐器108としては、市販の光ファイバ型光カプラ等を適宜利用できる。
【0076】
第1偏波面コントローラ202は、受信光パルス号301に応じて、受信光パルス信号301の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号103を生成する。
【0077】
DGD補償器104は、第1偏波面コントローラ202から供給される第1偏波面制御光パルス信号103に応じて、第1偏波面制御光パルス信号103の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対してDGDを付与してPMD補償光パルス信号105を生成する。
【0078】
PMD補償光パルス信号105は、光分岐器108に入力されて受信光パルス信号109aと受信光パルス信号109bとに分岐される。受信光パルス信号109aはPMDが補償された受信光パルス信号として受信信号処理部120に入力されて受信処理が完了する。一方、受信光パルス信号109bは偏波解析器110に入力される。
【0079】
偏波解析器110は、受信光パルス信号109bのストークスパラメータを算出し、ストークスパラメータを、電気信号であるストークスパラメータ信号111に変換して出力する。
【0080】
制御信号生成器106は、ストークスパラメータ信号111が入力されて、ストークスパラメータ信号111から、受信光パルス号301の偏波面の回転量を指示する第1偏波面回転パラメータ信号107a、第1偏波面制御光パルス信号103のDGD差を指示するDGDパラメータ信号107b、及び第2偏波面回転パラメータ信号107cを生成して、それぞれ第1偏波面コントローラ202、DGD補償器104及び第2偏波面コントローラ212にそれぞれ出力する。
【0081】
第2偏波面コントローラ212は、受信装置300において第1の極大を与える偏光状態に固定しておいて、送信信号生成部210から出力される送信光パルス信号211を構成する光パルスの偏波面を回転制御して、受信装置300において観測されるPMD補償光パルス信号105の第1の極大より大きな第2の極大となる高次偏波面制御光パルス信号を、PMD補償光パルス信号105に代えて、DGD補償器104から出力させる。
【0082】
DOPとは、光パルスの全光強度に対する偏光成分の光強度の占める割合として定義される値であるので、ストークスパラメータ(S0, S1, S2, S3)によって次式(1)で与えられる。
DOP={S12+S22+S32}1/2/S0 (1)
従って、ストークスパラメータが算出されれば、DOPは式(1)を用いて算出される。
【0083】
第1偏波面コントローラ202及び第2偏波面コントローラ212は、原理的には、1/2波長板及び1/4波長板を組み合わせて構成することが可能であり、偏波面コントローラ等の名称で市販されている装置を適宜利用することが可能である。また、電圧等の制御信号に従って、光ファイバのコアにストレスを与え、偏波面を制御する装置も利用できる。DGD補償器104は電圧等の制御信号に従って直交偏波モード間の光路差をモータ等により変化させる装置を適宜利用することができる。また、複数の複屈折結晶間に偏波ローテータを配置する偏波スイッチ型のDGD補償器も利用できる。
【0084】
ここでは、第1偏波面コントローラ202及び第2偏波面コントローラ212、DGD補償器104として、偏波面コントローラとしての機能とDGD補償器としての機能とを合わせて具えている、ジェネラルフォトニクス社(General Photonics Corporation)製のPMDエミュレータPMDE-301を使用した。このPMDエミュレータによれば、入力光に対して、外部からの制御信号に従って、その偏光面を回転制御しかつDGDを制御して出力することが可能である。すなわち、このPMDエミュレータPMDE-301は、外部からの制御信号に従って、入力光の偏波面の方向及びDGDを調整して出力する仕様で形成されている。
【0085】
具体的には、PMDエミュレータPMDE-301に対して、PMDエミュレータPMDE-301が具えているI/O接続端子にパーソナルコンピュータ等のロジック制御回路を接続し、TTLレベルの信号を供給することによって、入力光の偏波面の方向及びDGDを調整して出力させることが可能である。
【0086】
偏波解析器110には、ジェネラルフォトニクス社のDOP計測器POD-101Aを利用した。DOP計測器POD-101Aから出力されるストークスパラメータ信号111は、USBインターフェース(図示を省略してある。)を介して、制御信号生成器106に供給される。制御信号生成器106は、ストークスパラメータからDOPを算出するプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータを利用した。すなわち、このパーソナルコンピュータによって、DOP計測器POD-101Aから出力されるストークスパラメータ信号111からDOPを算出した。
【0087】
PMDエミュレータPMDE-301、DOP計測器POD-101A、及びストークスパラメータからDOPを算出するプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータを利用して、以下に詳説する1次偏波モード分散補償ステップ及び高次偏波モード分散抑圧ステップを全て手動操作することによって実行することが可能である。もちろん、これらのステップに対して、汎用コンピュータ等を利用して適宜自動化することも可能であることはいうまでもない。
【0088】
<実施の形態の光伝送システムの動作>
上述したこの発明の光伝送システムによれば、以下に説明するこの発明の実施の形態のPMD補償方法を実施することが可能である。以下の説明においては、上述の1次偏波モード分散補償ステップ及び高次偏波モード分散抑圧ステップを全て手動操作することを前提として説明し、汎用コンピュータ等を利用してこれらのステップを適宜自動化する具体的手法については言及しない。
【0089】
図4及び図5を参照して、この発明の光伝送システムを利用して実行されるPMD補償方法の実施の形態について説明する。図4は1次PMD補償ステップの説明に供するフローチャートであり、図5は高次PMD抑圧ステップの説明に供するフローチャートである。
【0090】
図4に示すフローチャートでは、ステップS10において基準DOPが設定され、その後、光伝送システムが動作を開始することを想定している。従って、光伝送システムが稼動を開始した時点で、受信光パルス信号301のDOPの常時観測が始められる。受信光パルス信号301の常時観測は、以下に示す通常DOP計測ステップであるステップS100、及び第1 DOP比較ステップであるステップS102によって実行される。
【0091】
ステップS100は、DGD補償器104から出力されるPMD補償光パルス信号105のDOPを偏波解析器110によって測定するステップである。DOPを偏波解析器110に入力されるPMD補償光パルス信号は、光分岐器108で分岐された受信光パルス信号109bであるが、受信光パルス信号109bは光強度が減少している以外はPMD補償光パルス信号105となんら変わるところはない。従って、DOPを偏波解析器110から出力されるDOP信号111は、PMD補償光パルス信号105のDOP信号であると見なすことができる。以後、説明の便宜上、受信光パルス信号109bをPMD補償光パルス信号105ということもある。
【0092】
ステップS102は、ステップS100で測定されたDOPが、基準DOP以上であるか否かを判定するステップである。ステップS100で測定されたDOPが基準DOP以上である限り、ステップS100が実行され、恒常的にPMD補償光パルス信号105、すなわち受信光パルス信号109bのDOPが監視され続けられる。
【0093】
一方、ステップS102において、ステップS100で測定されたDOPが基準DOPを下回ったと判定された場合は、1次PMD補償ステップが実行される。そのために、ステップS12が実行される。
【0094】
ステップS12は、DGD補償器104から出力されるPMD補償光パルス信号105のDOPを、第1偏波面コントローラ202の相異なる複数とおりの回転角度に対して、それぞれDOPを測定する第1偏波面回転角度算出ステップである。第1偏波面コントローラ202の相異なる複数とおりの回転角度とは、例えば、2π/5ラジアン、4π/5ラジアン、πラジアンの3点を選択して、それぞれの回転量に対するPMD補償光パルス信号105のDOPを、偏波解析器110によって計測する。この際、DGD補償器104に設定されているDGDは、任意の値に固定されている。
【0095】
第1偏波面コントローラ202の相異なる複数とおりの回転に対するDOPの値から、極大のDOPを与える回転角度を算出する。ここでの回転量算出ステップは、例えば、二次補間法等が利用される。この時点で、第1偏波面コントローラ202の回転角度が暫定的に確定される。
【0096】
次に、ステップS14に進み、上述の第1偏波面回転角度算出ステップによって算出されたDOPの暫定値を与える回転角度に第1偏波面コントローラ202を固定して、PMD補償光パルス信号105のDOPを、DGD補償器104の相異なる複数とおりの群遅延量に対して、それぞれDOPを測定する。
【0097】
上述の相異なる複数とおりの群遅延量に対するDOPの値から、極大のDOPを与える群遅延量を算出するステップS14が第1 DGD差算出ステップである。第1 DGD差算出ステップにおいても、上述の回転量計算ステップの場合と同様に、二次補間法等を利用して実行される。
【0098】
第1偏波面回転角度算出ステップ及び第1 DGD差算出ステップが終了した時点で、上述のステップS100で測定されたDOPと第1 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPとを比較して、第1 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPが上述の基準DOP以上であれば、1次PMD補償ステップを終了しステップS16に進む。一方、第1 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPが上述の基準DOP以下であれば、ステップS12が実行される。この第1 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPと基準DOPとを比較するステップが、第1 DOP比較ステップである。
【0099】
ステップS16は、1次補償パラメータ信号供給ステップであって、第1 DOP比較ステップが終了した時点での第1偏波面コントローラ202の回転角度及びDGD補償器104のDGD差を、制御信号生成器106から第1偏波面コントローラ202に対して受信光パルス信号301の偏波面の回転角度として指示し、第1偏波面制御光パルス信号103のDGD差をDGD補償器104に対して指示するステップである。すなわち、1次補償パラメータ信号供給ステップは、第1偏波面回転パラメータ信号107a及びDGDパラメータ信号107bを、それぞれ第1偏波面コントローラ202及びDGD補償器104に供給するステップである。
【0100】
ステップS16に続いて、ステップS18が実行される。ステップS18は、1次PMD補償値設定ステップであって、1次PMD補償値設定ステップは、第1偏波面回転パラメータ信号107aによって、受信光パルス信号301の偏波面の回転角度を第1偏波面コントローラ202に設定し、かつDGDパラメータ信号107bによって第1偏波面制御光パルス信号103のDGD差をDGD補償器104に設定するステップである。
【0101】
1次PMD補償値設定ステップの終了時点におけるPMD補償光パルス信号105のDOPの値がDOPの第1の極大である。
【0102】
ステップS18が終了すると、ステップS200に進む。ステップS200は、高次PMD抑圧ステップの最初のステップである。
【0103】
次に、図5を参照して高次PMD抑圧ステップについて説明する。図5は、上述したS10、S100、S102、S12、S14、S16、及びS18についても便宜上含めて示してあるが、高次PMD抑圧ステップの最初のステップはステップS200である。
【0104】
高次PMD抑圧ステップは、第2偏波面コントローラ212によって、第2偏波面コントローラ212の光軸の向きを回転させつつ、偏波解析器110によってPMD補償光パルス信号109bのDOPを測定し、制御信号生成器106によって当該DOPが極大となるPMD補償光パルス信号105の偏波面の回転角度を算出して第2偏波面回転角度を算出し、第2偏波面コントローラ212の光軸をこの回転角度に設定するステップである。
【0105】
ステップS200は、上述のステップS100と同様に、DGD補償器104から出力されるPMD補償光パルス信号105のDOPを偏波解析器110によって測定するステップである。また、S202は、上述のステップS102と同様に、ステップS200で測定されたDOPが、基準DOP以上であるか否かを判定するステップである。ステップS200で測定されたDOPが基準DOP以上である限り、ステップS200が実行され、恒常的にPMD補償光パルス信号105、すなわち受信光パルス信号109bのDOPが監視され続けられる。
【0106】
PMD補償光パルス信号105をタップして、受信光パルス号301に応じて、送信光パルス信号201の偏光状態を調整して第2偏波面制御光パルス信号201を生成するために必要な送信光パルス信号211の偏波面の回転量を与える第2偏波面回転パラメータ信号を生成するステップである第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップを以下のように実現することが可能である。
【0107】
上述の第2偏波面制御光パルス信号生成ステップは、第2 DGD差算出ステップと、第2 DOP比較ステップと、高次補償パラメータ信号供給ステップと、高次PMD抑圧値設定ステップとを含んで、以下のように実現される。
【0108】
ステップS202において、ステップS200で測定されたDOPが基準DOP以下であると判定された場合、ステップS22が実行される。ステップS22は、DGD補償器104から出力されるPMD補償光パルス信号105のDOPを、第2偏波面コントローラ212の光軸の向きを回転させつつ、第2偏波面コントローラ212の相異なる複数とおりの回転角度に対して、それぞれDOPを測定する第2偏波面回転角度算出ステップである。
【0109】
第2偏波面コントローラ212の相異なる複数とおりの回転角度とは、上述した第1偏波面コントローラ202と同様に、例えば、2π/5ラジアン、4π/5ラジアン、πラジアンの3点を選択して、それぞれの回転量に対するPMD補償光パルス信号105のDOPを、偏波解析器110によって計測する。この際、DGD補償器104に設定されているDGDは、任意の値に固定されている。
【0110】
第2偏波面コントローラ212の相異なる複数とおりの回転に対するDOPの値から、極大のDOPを与える回転角度を算出する。ここでの回転量算出ステップも、上述のS12の場合と同様に、二次補間法等が利用される。この時点で、第1偏波面コントローラ202の回転角度が暫定的に確定される。
【0111】
次に、上述の第2偏波面回転角度算出ステップによって算出されたDOPの暫定値を与える回転角度に第2偏波面コントローラ212を固定して、PMD補償光パルス信号105のDOPを、DGD補償器104の相異なる複数とおりの群遅延量に対して、それぞれDOPを測定する。
【0112】
上述の相異なる複数とおりの群遅延量に対するDOPの値から、極大のDOPを与える群遅延量を算出するステップが第2 DGD差算出ステップである。第2 DGD差算出ステップにおいても、上述の回転量計算ステップの場合と同様に、二次補間法等を利用して実行される。
【0113】
第2偏波面回転角度算出ステップ及び第2 DGD差算出ステップが終了した時点で、上述のステップS200で測定されたDOPと第2 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPとを比較して、第2 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPが上述の基準DOP以上であれば、次のステップであるステップS24に進む。一方、第2 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPが上述の基準DOP以下であれば、ステップS22が実行される。この第2 DGD差算出ステップが終了した時点で得られているDOPと基準DOPとを比較するステップが、第2 DOP比較ステップである。
【0114】
第2 DOP比較ステップが終了した後、上述の第1 DOP比較ステップの終了後と同様の、高次補償パラメータ信号供給ステップ及び高次PMD抑圧値設定ステップが実行される。
【0115】
高次補償パラメータ信号供給ステップは、第2 DOP比較ステップが終了した時点での第1偏波面コントローラ202の回転角度及びDGD補償器104のDGD差を、制御信号生成器106から第1偏波面コントローラ202に対して受信光パルス信号301の偏波面の回転角度として指示し、第1偏波面制御光パルス信号103のDGD差をDGD補償器104に対して指示するステップである。すなわち、高次補償パラメータ信号供給ステップも1次補償パラメータ信号供給ステップと同様に、第1偏波面回転パラメータ信号107a及びDGDパラメータ信号107bを、それぞれ第1偏波面コントローラ202及びDGD補償器104に供給するステップである。
【0116】
高次PMD抑圧値設定ステップは、上述の高次補償パラメータ信号供給ステップにおいて供給された第1偏波面回転パラメータ信号107aによって、受信光パルス信号301の偏波面の回転角度を第1偏波面コントローラ202に設定し、かつDGDパラメータ信号107bによって第1偏波面制御光パルス信号103のDGD差をDGD補償器104に設定するステップである。
【0117】
ステップS22が終了後、ステップS24に進む。ステップS24は、上述のステップS12と同様の内容のステップである。ステップS12と異なる点は、第1偏波面コントローラ202による受信光パルス号301の偏波面の回転量がステップS12より小さい点である。
【0118】
ステップS24が終了するとステップS26に進む。ステップS26も、上述のステップS14と同様のステップである。ここでもDGD補償器によって補償されるDGD量がステップS14の場合より小さいことが異なる点である。
【0119】
ステップS26が終了すると、ステップS200を含み、ステップS22、S24、及びS26から成るフローが実行されることによって、高次PMD抑圧ステップが実現される。
【0120】
図6(A)及び図6(B)を参照して、PMD補償を行ったPMD補償光パルス信号の時間波形及びQ値について説明する。図6(A)は1次PMD補償ステップだけを実行した場合のPMD補償光パルス信号波形を示し、図6(B)は1次PMD補償ステップ及び高次PMD抑圧ステップを実行した場合のPMD補償光パルス信号の時間波形を示している。
【0121】
図6(A)及び図6(B)において、横軸に時間軸を示しており、一目盛3 ps(ピコ秒)となるように目盛ってある。縦軸は光強度を任意スケールで示してある。
【0122】
図6(A)及び図6(B)に示す実験に用いた光パルス信号は、光パルス信号の光搬送波の包絡線強度を直接検波によって検出することによって検波を行う方式であるOOK(On Off Keying)方式によってコーディングされた光パルス信号である。なお、この実験では、伝送レートを160 Gbit/sとし、伝送距離を254 kmとした。
【0123】
図6(A)と図6(B)とを比較すると、図6(B)に示すPMD補償光パルス信号のアイパターンのアイ開口が僅かに広いことが分かる。すなわち、1次PMD補償ステップ及び高次PMD抑圧ステップを実行することによって、1次PMD補償ステップのみを実行した場合と比較して、ビットエラーレートの小さい通信が可能となることを意味している。
【0124】
しかしながら、図6(A)及び図6(B)に示すそれぞれのアイパターンのアイ開口の差はそれほど大きくはない。すなわち、この実験によって行われた光伝送においては、本質的にビットエラーレートが小さく、受信光パルス信号の品質をアイパターンのアイ開口の差として比較することが難しい。すなわち、この実験によって行われた光伝送は、現実的な測定時間内でエラーを検出するのは難しいケースである。
【0125】
実際の光伝送システムにおいては、現実的な測定時間内でエラーを検出するのは難しい程度のビットエラーレートであっても、システムの信号対雑音比(S/N比)が十分に小さいとはいえないケースがある。この場合には、受信光パルス信号の受信品質として、以下に述べるQ値が使われる。
【0126】
光伝送システム等の、ディジタル信号を用いる伝送システムの受信装置では、識別時間毎に受信信号レベルを閾値レベルと比較して、時間軸上で光パルスのあるなしを決定する。例えば、光パルスの有無を示すデータとして、光パルスがある場合を「1」、光パルスがない場合を「0」と決定する。この受信装置により受信された信号レベル、すなわち光パルスの強度は雑音により揺らいでおり、信号レベルの分布は確率密度関数により表現することができる。
【0127】
一般に、ビットエラーレート(BER:bit error rate)が低い領域では、現実的な測定時間内でエラーを検出するのは難しいので、システムの信号対雑音比は、次式(2)で与えられるQ値により評価される。
Q(dB)=10log{|μ10|/(σ10)} (2)
ここで、μ1は受信後の「1」の信号レベルの平均値、μ0は受信後の「0」の信号レベルの平均値、σ1は受信後の「1」の信号レベルの標準偏差、σ0は受信後の「0」の信号レベルの標準偏差である。
【0128】
図6(A)に示す1次PMD補償ステップだけを実行した場合のPMD補償光パルス信号のQ値は18 dBであった。一方図6(B)に示す1次PMD補償ステップ及び高次PMD抑圧ステップを実行した場合のPMD補償光パルス信号のQ値は24 dBであった。すなわち、高次PMD抑圧ステップを実行することによって、Q値を6 dB向上させることが可能となることがわかった。Q値はBERをデシベル表示したものに相当するから、Q値が6 dB向上したことは、BERに換算して1/4に低減されたことを意味し、現実の光伝送システムにあっては非常に有効な効果である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】複屈折性を有する光ファイバを光パルスが伝播する前と後におけるその時間波形の変化の様子を示す図であり、(A)は、光伝送路を伝播する前の光パルスのx及びy軸方向の偏波成分についての時間波形と、光伝送路を伝播した後のx及びy軸方向の偏波成分についての時間波形とを示し、(B)は、光伝送路を伝播する前の光パルスのx及びy軸方向の偏波成分を合成した時間波形を示し、(C)は、光伝送路を伝播した後の光パルスのx及びy軸方向の偏波成分を合成した時間波形を示す図である。
【図2】従来の1次PMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【図3】この発明の実施の形態の光伝送システムの概略的ブロック構成図である。
【図4】1次PMD補償ステップの説明に供するフローチャートである。
【図5】高次PMD抑圧ステップの説明に供するフローチャートである。
【図6】PMD補償光パルス信号の時間波形を示す図であり、(A)は1次PMD補償ステップだけを実行した場合のPMD補償光パルス信号の時間波形を示し、(B)は1次PMD補償ステップ及び高次PMD抑圧ステップを実行した場合のPMD補償光パルス信号の時間波形を示している。
【符号の説明】
【0130】
100:PMD補償部
104:DGD補償器
106:制御信号生成器
108:光カプラ
110:偏波解析器
120:受信信号処理部
150:光伝送路
200:送信装置
202:第1偏波面コントローラ
210:送信信号生成部
212:第2偏波面コントローラ
300:受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ伝送路の偏波モード分散によって発生する光パルスの時間波形を整形する構成とされてなる光伝送システムにおける偏波モード分散補償方法であって、
受信側において、受信光パルス信号を構成する光パルスの偏光度が第1の極大となるように該受信光パルス信号の偏光状態を調整することにより、偏波モード分散補償光パルス信号を生成する1次偏波モード分散補償ステップと、
受信側において前記第1の極大を与える偏光状態に固定しておいて、送信側において、送信光パルス信号を構成する光パルスの偏波面を回転制御して、受信側において観測される前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏光度が前記第1の極大より大きな第2の極大となる第2偏波面制御光パルス信号を生成する高次偏波モード分散抑圧ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【請求項2】
前記1次偏波モード分散補償ステップは、
前記偏波モード分散補償光パルス信号をタップして、前記受信光パルス号に応じて、該受信光パルス信号の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号を生成するために必要な前記受信光パルス信号の偏波面の回転量を与える第1偏波面回転パラメータ信号、及び前記第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対して群遅延を付与して前記偏波モード分散補償光パルス信号を生成するために必要な群遅延量を与える群遅延パラメータ信号を生成する1次補償信号生成ステップと、
前記第1偏波面回転パラメータ信号に基づいて、前記受信光パルス信号の偏波面を回転制御して、前記第1偏波面制御光パルス信号を生成する受信光パルス信号偏波面制御ステップと、
前記群遅延パラメータ信号に基づいて前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延を減少させて、前記偏波モード分散補償光パルス信号を生成する群遅延差補償ステップと
を含み、
前記高次偏波モード分散抑圧ステップは、
前記偏波モード分散補償光パルス信号をタップして、前記受信光パルス号に応じて、前記送信光パルス信号の偏光状態を調整して第2偏波面制御光パルス信号を生成するために必要な前記送信光パルス信号の偏波面の回転量を与える第2偏波面回転パラメータ信号を生成する第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップと、
前記送信側において、前記第2偏波面回転パラメータ信号に基づいて前記送信光パルス信号の偏波面を回転することによって、前記第2偏波面制御光パルス信号を生成する第2偏波面制御光パルス信号生成ステップと
を含むことを特徴とする請求項1に記載の偏波モード分散補償方法。
【請求項3】
受信光パルス信号の偏光状態を調整することによって第1偏波面制御光パルス信号を生成し、かつ該第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対して群遅延を付与することによって、前記受信光パルス信号を構成する光パルスの偏光度が第1の極大となるように該受信光パルス信号の偏光状態を調整して、偏波モード分散補償光パルス信号を生成する偏波モード分散補償部を具える受信側装置と、
前記偏波モード分散補償光パルス信号の前記第1の極大より大きな第2の極大となる第2偏波面制御光パルス信号を生成する第2偏波面コントローラを具える送信側装置と
を具え、
前記偏波モード分散補償部は、第1偏波面コントローラ、群遅延補償器、制御信号生成器、及び偏波解析器を具え、
前記第1偏波面コントローラは、受信光パルス号に応じて、該受信光パルス信号の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号を生成し、
前記群遅延補償器は、前記第1偏波面コントローラから供給される第1偏波面制御光パルス信号に応じて、該第1偏波面制御光パルス信号固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対して群遅延を付与して偏波モード分散補償光パルス信号を生成し、
前記偏波解析器は、前記偏波モード分散補償光パルス信号のストークスパラメータを算出し、該ストークスパラメータを電気信号であるストークスパラメータ信号に変換して出力し、
前記制御信号生成器は、前記ストークスパラメータ信号から、前記受信光パルス号の偏波面の回転量を指示する第1偏波面回転パラメータ信号、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を指示する群遅延パラメータ信号、及び送信光パルス信号の偏波面の回転量を指示する第2偏波面回転パラメータ信号を生成して、前記第1偏波面コントローラ、前記群遅延補償器、及び前記第2偏波面コントローラにそれぞれ出力する
ことを特徴とする光伝送システムを用いる偏波モード分散補償方法であって、
前記受信側装置において、前記受信光パルス信号を構成する光パルスの偏光度を第1の極大となるように該受信光パルス信号の偏光状態を調整することにより、前記偏波モード分散補償光パルス信号を生成して出力する1次偏波モード分散補償ステップと、
前記受信側装置において、前記第1の極大を与える偏光状態に固定しておいて、前記送信側装置において、前記送信光パルス信号を構成する光パルスの偏光度を前記第1の極大より大きな第2の極大となる前記第2偏波面制御光パルス信号を生成する高次偏波モード分散抑圧ステップと
を含み、
前記1次偏波モード分散補償ステップは、
前記偏波モード分散補償光パルス信号をタップして、前記受信光パルス信号の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号を生成するために必要な前記受信光パルス信号の偏波面の回転量を与える第1偏波面回転パラメータ信号、及び前記第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対して群遅延を付与して前記偏波モード分散補償光パルス信号を生成するために必要な前記群遅延量を与える群遅延パラメータ信号を生成する1次補償信号生成ステップと、
前記第1偏波面回転パラメータ信号に基づいて、前記第1偏波面コントローラによって前記受信光パルス信号の偏波面を回転制御して、前記第1偏波面制御光パルス信号を生成して出力する受信光パルス信号偏波面制御ステップと、
前記群遅延パラメータ信号に基づいて、前記群遅延補償器によって、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を減少させて、前記偏波モード分散補償光パルス信号を生成して出力する群遅延差補償ステップと
を含み、
前記高次偏波モード分散抑圧ステップは、
前記偏波モード分散補償光パルス信号をタップして、前記受信光パルス号に応じて、前記送信光パルス信号の偏光状態を調整して前記第2偏波面制御光パルス信号を生成するために必要な前記送信光パルス信号の偏波面の回転量を与える第2偏波面回転パラメータ信号を生成する第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップと、
前記送信側において、前記送信光パルス信号を構成する光パルスの偏光状態を調整する第2偏波面コントローラに前記第2偏波面回転パラメータ信号を供給して、該第2偏波面コントローラによって前記送信光パルス信号の偏波面を回転して、第2偏波面制御光パル信号を生成して出力する第2偏波面制御光パルス信号生成ステップと
を含むことを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【請求項4】
前記1次補償信号生成ステップは、
前記第1偏波面コントローラによって、前記第1偏波面コントローラの光軸の向きを回転させつつ、前記偏波解析器によって前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏光度を測定し、前記制御信号生成器によって当該偏光度が極大となる前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏波面の回転角度を算出する第1偏波面回転角度算出ステップと、
前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏波面の回転角度を、第1偏波面回転角度算出ステップで算出された偏波面の回転角度に固定して、前記群遅延補償器によって前記偏波面制御モニター光信号の群遅延差を変化させつつ、前記偏波解析器によって前記偏波モード分散補償モニター光信号の偏光度を測定し、前記制御信号生成器によって当該偏光度が前記第1の極大となる前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を算出する第1群遅延差算出ステップと、
算出された該群遅延差を前記群遅延補償器に設定して、前記偏波解析器によって前記第1偏波面制御光パルス信号の偏光度を測定し、当該偏光度が予め設定しておいた偏光度の最小基準値である、基準偏光度の値を超えているか否かを判定する第1偏光度比較ステップと、
前記第1偏光度比較ステップで測定された偏光度が、前記基準偏光度を超えている場合における、前記受信光パルス信号の偏波面の回転角度を、前記制御信号生成器から前記第1偏波面コントローラに対して前記受信光パルス信号の偏波面の回転角度として指示する、前記第1偏波面回転パラメータ信号を生成して出力すると共に、
前記第1偏光度比較ステップで測定された偏光度が、前記基準偏光度を超えている場合における、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を、前記制御信号生成器から前記群遅延補償器に対して、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差として指示する前記群遅延パラメータ信号を生成して出力する1次補償パラメータ信号供給ステップと、
前記第1偏波面回転パラメータ信号によって、前記受信光パルス信号の偏波面の回転角度を前記第1偏波面コントローラに設定し、かつ前記群遅延パラメータ信号によって前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を前記群遅延補償器に設定する1次偏波モード分散補償値設定ステップと
を含み、
前記高次偏波モード分散抑圧ステップは、
前記第2偏波面回転パラメータ信号生成ステップが、
前記第2偏波面コントローラによって、前記第2偏波面コントローラの光軸の向きを回転させつつ、前記偏波解析器によって前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏光度を測定し、前記制御信号生成器によって当該偏光度が極大となる前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏波面の回転角度を算出する第2偏波面回転角度算出ステップと、
前記偏波モード分散補償光パルス信号の偏波面の回転角度を、第2偏波面回転角度算出ステップで算出された偏波面の回転角度に固定して、前記群遅延補償器によって前記偏波面制御モニター光信号の群遅延差を変化させつつ、前記偏波解析器によって前記偏波モード分散補償モニター光信号の偏光度を測定し、前記制御信号生成器によって当該偏光度が前記第2の極大となる前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を算出する第2群遅延差算出ステップと、
算出された該群遅延差を前記群遅延補償器に設定して、前記偏波解析器によって前記第1偏波面制御光パルス信号の偏光度を測定し、当該偏光度が予め設定しておいた偏光度の最小基準値である、基準偏光度の値を超えているか否かを判定する第2偏光度比較ステップと
を含み、
前記第2偏波面制御光パルス信号生成ステップが、
前記第2偏光度比較ステップで測定された偏光度が、前記基準偏光度を超えている場合における、前記受信光パルス信号の偏波面の回転角度を、前記制御信号生成器から前記第1偏波面コントローラに対して前記受信光パルス信号の偏波面の回転角度として指示する、前記第1偏波面回転パラメータ信号を生成して出力すると共に、
前記第2偏光度比較ステップで測定された偏光度が、前記基準偏光度を超えている場合における、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を、前記制御信号生成器から前記群遅延補償器に対して、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差として指示する前記群遅延パラメータ信号を生成して出力する高次補償パラメータ信号供給ステップと、
前記第1偏波面回転パラメータ信号によって、前記受信光パルス信号の偏波面の回転角度を前記第1偏波面コントローラに設定し、かつ前記群遅延パラメータ信号によって前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を前記群遅延補償器に設定する高次偏波モード分散抑圧値設定ステップと
を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の偏波モード分散補償方法。
【請求項5】
光ファイバ伝送路の偏波モード分散によって発生する光パルスの時間波形を整形する偏波モード分散補償を行う構成の光伝送システムであって、
受信側装置は、受信光パルス信号の偏光状態を調整することによって第1偏波面制御光パルス信号を生成し、かつ該第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対して群遅延を付与することによって、前記受信光パルス信号を構成する光パルスの偏光度が第1の極大となるように前記第1偏波面制御光パルス信号の偏光状態を調整して、偏波モード分散補償光パルス信号を生成する偏波モード分散補償部を具え、
送信側装置は、受信側において前記第1の極大を与える偏光状態に固定しておいて、送信光パルス信号を構成する光パルスの偏波面を回転制御して、受信側において観測される前記偏波モード分散補償光パルス信号の前記第1の極大より大きな第2の極大となる第2偏波面制御光パルス信号を生成する第2偏波面コントローラを具えている
ことを特徴とする光伝送システム。
【請求項6】
前記偏波モード分散補償部は、第1偏波面コントローラ、群遅延補償器、偏波解析器及び制御信号生成器、を具え、
前記第1偏波面コントローラは、前記受信光パルス号に応じて、該受信光パルス信号の偏光状態を調整して第1偏波面制御光パルス信号を生成し、
前記群遅延補償器は、前記第1偏波面コントローラから供給される第1偏波面制御光パルス信号に応じて、該第1偏波面制御光パルス信号の固有偏光モードの一方の偏光モード成分に対して群遅延を付与して偏波モード分散補償光パルス信号を生成し、
前記偏波解析器は、前記偏波モード分散補償光パルス信号のストークスパラメータを算出し、該ストークスパラメータを、電気信号であるストークスパラメータ信号に変換して出力し、
前記制御信号生成器は、前記ストークスパラメータ信号から、前記受信光パルス号の偏波面の回転量を指示する第1偏波面回転パラメータ信号、前記第1偏波面制御光パルス信号の群遅延差を指示する群遅延パラメータ信号、及び前記送信光パルス信号の偏波面の回転量を指示する第2偏波面回転パラメータ信号を生成して、前記第1偏波面コントローラ、前記群遅延補償器、及び前記第2偏波面コントローラにそれぞれ出力する
ことを特徴とする請求項5に記載の光伝送システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−45491(P2010−45491A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206805(P2008−206805)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人情報通信研究機構「λユーティリティ技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】