偏波発信源の定位が改善されたスマートアンテナシステム
アンテナアレイ及び信号前処理装置及び方法。アンテナアレイは二個の直交電気双極子(30)及び二個の直交磁気双極子(40)を有する直交偏波アレイである。前処理装置は信号発信源定位のための空間スペクトル情報を得るために、アンテナからの信号を前処理するためのものである。前処理装置は、各素子毎に信号自己相関行列を形成するために前記入力の後に接続された自己相関器と、前記自己相関行列を平均化し、それによって発信源定位を推定するために固有構造に基づく推定器に使用するために適した標本共分散行列を形成する平滑化器とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートアンテナの方法および装置に関し、さらに詳しくは、入射電磁放射の到来角度を決定するための追加的パラメータとしての偏波の使用に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
ベクトルセンサは、任意の偏波による入射電磁波の到来角度および偏波の推定を可能にする。この十年間に、ベクトルセンサを使用する発信源定位および偏波推定のための多くのアレイ処理技術が開発された。A.NehoraiおよびE.Paldi、「Vector−sensor array processing for electromagnetic source localization」、IEEE Trans.on Signal Processing、第42巻、376〜398頁、1994年2月、は、クラーメル・ラオ境界(CRB)およびベクトル積和到来方向(DOA)推定器を開発した。その内容を参照によってここに組み込む。ベクトルセンサを使用するポラリメトリックモデリングが、B.HochwaldおよびA.Nehorai、「Polarimetric modeling and parameter estimation with application to remote sensing」、IEEE Trans.On Signal Processing、第43巻、1923〜1935頁、1995年8月、で実行され、その内容を参照によってここに組み込む。
【0003】
ベクトルセンサに関連する識別可能性および一意性の問題が、G.F.Hatke、第27回Asilomar Conf.1993、1365〜1369頁、K.C.Ho、K.C.Tan、W.Ser、Signal Processing、第47巻、41〜54頁、1995年11月、B.HochwaldおよびA.Nehorai、IEEE Trans on Signal Processing、第44巻第1号、83〜95頁、1996年1月、K.C.Tan、K.C.Ho、A.Nehorai、IEEE Trans.Signal Processing、第44巻、3099〜3107頁、1996年12月、で分析されている。上記文書の各々の内容を参照によってここに組み込む。
【0004】
ESPRITおよびベクトルセンサを使用して発信源を定位するための多重信号分類(MUSIC)のような固有構造に基づく技術は、広く研究されてきた。J.Li、IEEE Trans.Antenna Propagation、第41巻、379〜387頁、1993年3月は、ESPRITアルゴリズムをベクトルセンサアレイに適用した。その内容を参照によってここに組み込む。ベクトルセンサを使用するESPRITに基づく方向探知アルゴリズムはさらに、その内容を参照によってここに組み込むK.T.WongおよびM.Zoltowski、IEEE Trans.Antenna Propagation、第48巻、671〜681頁、2000年5月をはじめ、幾つかの論文で研究されている。同じ問題に対してMUSICに基づくアルゴリズムが、K.T.WongおよびM.Zoltowski、IEEE Trans.Antenna Propagation、第48巻、1235〜1245頁および2205〜2210頁、2000年8月で適用されている。これらの技術は、無相関または部分相関信号の場合、高分解能および漸近的有効推定を生み出す。しかし、これらの技術は非特異信号相関行列を想定しているので、マルチパスシナリオにおける単一発信源からの信号のような完全相関信号の場合、困難に遭遇する。後者は、都市環境におけるセルラ電話では、特に一般的である。
【0005】
データ共分散行列で信号を無相関化するために、EvansらはProc.1st ASSP Workshop spectral Estimation、カナダ、オンタリオ州ハミルトン、1981年、134〜139頁で、空間平滑化と呼ばれる前処理技術を提案した。その内容を参照によってここに組み込む。その後の何人かの著者が、空間平滑化方法を、フォワードバックワード平均化の方法と組み合わせて研究した。上記組合せの欠点は、アレイのアパーチャの有効長が低減し、その結果、分解能および精度が低下することである。代替的空間平均化方法は冗長性平均化である。冗長性平均化に基づく前処理方法は、DOA推定器にバイアスを誘発することが示された。
【0006】
様々に偏波する発信源の定位のための最尤(ML)法が、WaxおよびZiskind、IEEE Transactions Antenna Propagation、第38巻、111〜1114頁、90年7月に提案された。最尤法は、シミュレーテッドアニーリングアルゴリズムを使用して、信号のDOAおよび偏波ベクトルを効率的に探索する。
【0007】
しかし、上記の方法は依然として、同一信号のマルチパスバージョンを見るときに予想される、相関信号を持つことによって導入される問題を克服していない。
【0008】
したがって、上記の限界を持たず、したがって都市領域のセルラ電話およびマルチパスが著しい問題となるようなその他の場合に、スマートアンテナに使用可能な無相関化方法の必要性が広く認識されており、それを持つことは非常に有利である。
【発明の開示】
【0009】
本発明の一態様では、相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備えた直交偏波アンテナ素子であって、各磁気双極子が共通位置を前記電気双極子のそれぞれ一つと実質的に共有する直交偏波アンテナ素子を提供する。好ましくは、前記予め定められた角度は略直角である。さらに、前記複数の双極子はアジマス面全体から電磁気源情報を得るように配設される。
【0010】
前記電磁源情報は、信号定位、信号偏波、およびデータ内容から成る群の少なくとも一つの抽出を可能にするようなものであることが好ましい。
【0011】
素子は、実質的にアジマス面全体から信号を検出するように配設することが好ましく、前記電気双極子および前記磁気双極子は、前記信号の偏波情報に対して相互に補足し、それによって前記素子が前記アジマス面内の実質的に全ての偏波情報を得ることを可能にするように構成される。
【0012】
前記素子は四個の双極子を備え、前記双極子のうちの二個が電気双極子であり、前記双極子のうちの二個が磁気双極子であることが好ましい。好適な実施形態では、二つの電気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子の各々が前記電気双極子の一つと同一方向に向けられる。
【0013】
本発明の第二態様では、複数のアンテナ素子を備えた直交偏波アンテナアレイであって、各素子が相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備え、各磁気双極子が前記電気双極子のそれぞれと共通位置を実質的に共有して成る、直交偏波アンテナアレイを提供する。個々の素子の特性は上述した通りであり、アレイへの素子の配列は、信号のマルチパス変動から発信源を解く能力のような追加的特性をアレイに提供する。n個の素子を有するアレイの場合、アレイはn−1個の信号を解くことができる。
【0014】
一実施形態では、アレイは、双極子間の切替えのための電気的スイッチもしくはスイッチング素子、または前記アレイ全体のデータを収集するための素子間の切替えのためのスイッチを備える。
【0015】
一実施形態では、アレイは、前記アンテナからの信号を前処理して信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、それに接続された信号前処理装置を有しており、該前処理装置は、
各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するために構成されたセンサ自己相関器と、
前記自己相関行列を平滑化し、それによって空間スペクトル情報を含む少なくとも一つの共分散行列を形成するために構成された平滑化器と、
を備えている。
【0016】
アンテナアレイは、固有構造に基づく信号源定位技術で前記標本共分散行列を使用するために構成された発信源定位装置がそれに接続されることが好ましい。
【0017】
前記平滑化器はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平滑化を適用し、それによって定位できる信号源の最大個数を増大するように構成することが好ましい。
【0018】
アレイは、前記発信源定位装置で前記標本共分散行列と一緒に使用するために、アンテナ特定的パラメータのステアリングベクトルを持つことが好ましい。
【0019】
一実施形態では、アレイは、信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、前記アンテナからの信号を前処理するために、それに接続された信号前処理装置を持ち、該前処理装置は、
各素子のための信号自己相関行列を形成するために、前記入力の後に接続された自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、それによって発信源定位を推定するために、固有構造に基づく推定器で使用するのに適した標本共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された平滑化器と、
を備えている。
【0020】
本発明の第三の好適な実施形態では、複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該方法が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得て、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成し、前記自己相関行列を平滑化して、そこから固有構造に基づく信号源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成することを含む方法を提供する。
【0021】
該方法はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大することを含むことができる。
【0022】
該方法はさらに、各アンテナに対し少なくとも一回、前記固有構造に基づく信号定位技術で前記標本共分散行列と一緒に使用するためのステアリングベクトルを得ることを含むことができる。
【0023】
該方法では四つのセンサ型から感知または取得が行なわれる。好ましくは、センサ型は二つのそれぞれ直交する電気双極子および二つのそれぞれ直交する磁気双極子である。
【0024】
四つのセンサ型は全て、単一面内で感知するように配設することが好ましい。換言すると、それらはその面を完全に網羅するように配設されるが、言うまでもなく、それらは依然として平面の上または下から来る信号を感知することができる。
【0025】
該方法は、前記共分散行列のデータから得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、それぞれの発信源に指向するビームを提供することを含むことができる。
【0026】
好ましくは、前記着信信号はノイズ信号であり、該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、前記ノイズ干渉信号のそれぞれの発信源に対してゼロ個の指向ビームを提供することを含むことができる。
【0027】
本発明の第四態様では、複数の様々なセンサ型を使用して得た着信信号を処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該方法が、着信信号の到来角度および偏波情報を得て、前記センサのアレイ全体に対し信号自己相関行列を形成し、前記信号自己相関行列から、発信源定位を推定するための最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列を形成することを含む方法を提供する。
【0028】
【0029】
該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、それぞれの発信源への指向ビームを提供することができる。
【0030】
一般的に着信信号はノイズを含み、それに対して該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、検出されたノイズのそれぞれの発信源に対しゼロ個の指向ビームを提供することをさらに含む。
【0031】
本発明の第五態様では、複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該装置が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するように構成されたセンサ自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、それによって固有構造に基づく発信源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成するように構成された平滑化器とを備えて成る装置を提供する。
【0032】
前記平滑化器はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大するように構成することが好ましい。
【0033】
該装置は、前記固有値に基づく信号定位技術で、前記標本共分散行列と一緒に使用するためにステアリングベクトルを利用することができる。
【0034】
該装置は、上述した四つのセンサ型を利用することが好ましい。
【0035】
該装置は、発信源定位を推定するための最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列をそこから抽出することのできる共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後にも接続される、共分散ユニットを備えることができる。
【0036】
該装置は、前記着信信号を発生させた見かけの信号源の総数に従って、前記平滑化器と前記相互相関器との間の切替を行うためのスイッチングユニットを備えることができる。
【0037】
本発明の第六態様では、複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該処理が発信源定位のためであり、該装置が、着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ素子毎に信号自己相関行列を形成するために前記入力の後に接続された自己相関器と、発信源定位を推定するために最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列が前記自己相関行列から抽出可能である共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された共分散ユニットとを備えて成る装置を提供する。
【0038】
【0039】
特に定義しない限り、本書で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術の通常の熟練者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本書に提示する材料、方法、および実施例は、単なる例証であって、限定の意図はない。
【0040】
本発明の前処理装置ならびに前処理方法およびシステムの実現は、ソフトウェアまたはハードウェアまたはそれらの組合せを使用して、選択されたタスクまたはステップを自動的に実行または完成することを含む。さらに、本発明の方法およびシステムの好適な実施形態の実際の計装および機器に応じて、選択されるステップは、任意のオペレーティングシステムもしくは任意のファームウェア上のハードウェアまたはソフトウェアで、もしくはそれらの組合せで実現することができる。例えば、ハードウェアとしては、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとしては、本発明の選択されたステップは、適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される、複数のソフトウェア命令として実現することができる。いずれの場合も、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームのようなデータプロセッサによって実行されると記載することができる。
【0041】
図面の簡単な記述
本発明を本書では、単なる例として添付の図面に関連して説明する。今、図面の細部について特に言及すると、図示する細部は例示であって、単に本発明の好適な実施形態を分かりやすく論じることを目的としており、本発明の原理および概念的側面についての最も有用かつ容易に理解される説明であると信じられるものを提供することを目的に提示することを強調しておく。これに関して、本発明の構造上の詳細を、本発明の基本的理解に必要である以上に詳しく示そうとはせず、図面に即した説明は、本発明の幾つかの形態をいかに実際に具現することができるかを、当業者に明確にするものである。
図面の簡単な記述
図1は、二つのセルラ基地局を示し、かつ単一の基地局が二つの移動信号源/標的を追跡する場合に、本発明の好適な実施形態に係る発信源定位がスペクトルのより効率的な使用をいかに導くかを示す模式図である。
図2a〜2dは、理想的環境および現実的環境における移動基地局のカバレージパターンを示す略図である。
図3は、電気双極子アンテナの簡略図である。
図4は、直交配設された二つの電気双極子の簡略図である。
図5は、磁気双極子の簡略図である。
図6は、直交配設された二つの磁気双極子の簡略図である。
図7は、本発明の第一の好適な実施形態に従って一緒に配置された、二つの直交配設電気双極子および二つの直交配設磁気双極子を備えたアンテナユニットの簡略図である。
図8は、本発明に従って作動する、図7の素子のような素子のアレイから空間情報を得るための方法の第一の好適な実施形態を示す略図である。
図9は、本発明に従って作動する、素子のアレイから空間情報を得るための前処理の代替的な好適な実施形態を示す簡易流れ図である。
図10は、マルチパス誤差を持つ二発信源二基地局システムにおいて本発明の実施形態に係る正確な発信源定位の利点を示す簡略図である。
図11は、三次元グリッドに配置された図7のアンテナアレイユニットを示す略図である。
図12は、アンテナ素子間の切替を示す略図である。
図13は、本発明に係る方法を含む様々な無相関化方法について、一組100個のデータサンプル(スナップショット)に基づく結果を比較するグラフである。
図14は、シミュレーション結果を示すさらなるグラフであり、SNR=20dBにおけるRSME対角度η2を示す。
図15は、特に異なる偏波を有し、−30°、−15°、0°、および20°の方向から到来する、四つのコヒーレントな発信源の場合のシミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
図16は、この場合、−60°、−50°、30°、および45°の方向からの四つの追加のコヒーレントな発信源を使用して、合計で八つのコヒーレントな発信源とし、それらが本発明の実施形態ではコヒーレントであると識別することに成功したが、先行技術では成功しなかった、シミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施形態は、アレイベクトルセンサを使用して発信源定位するためのスマートアンテナおよび関連方法を記載する。一実施形態では、最尤推定量が完全相関された発信源に対する発信源定位を提供する。第二実施形態では、前処理方法は、信号相関行列の特異性によって表わされる問題を克服する。第二実施形態は、完全相関信号を含むシナリオにおけるDOA推定のために、固有値に基づくMUSIC、MVDR、およびESPRIT方法のようなスペクトルに基づくアルゴリズムを使用するための空間スペクトル情報を提供する、本書でベクトルセンサ平滑化(VSS)と呼ぶ手順に基づく。ひとたび発信源が定位されると、指向ビームを使用して通信し、それによってスペクトルのより効率的な使用を行なうことが可能になる。本方法は動的実時間発信源定位を可能にするので、指向ビーム技術を移動発信源に使用することができる。
【0043】
また、アジマス面の偏波情報を得るために最適化された直交偏向アンテナアレイについても開示する。上記の方法のいずれかを直交偏波アレイと一緒に使用すると、それぞれの方法の単独使用と比較して、改善された定位性能が達成される。
【0044】
本発明に係るスマートアンテナの原理および動作は、図面および付随する説明を参照することにより、いっそうよく理解することができる。
【0045】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用を、以下の詳細な説明に記載しあるいは図面に示す構成要素の構成および配設の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、あるいは様々な仕方で実施または実行することができる。また、本書で使用する表現および用語は説明のためのものであって、限定とみなすべきではないことも理解されたい。
【0046】
今、図面を参照すると、図1は、二つのセルラ基地局を示しかつ本発明の利点を示す模式図である。第一移動基地局10は、一範囲のセルラ電話機12、14、および16と通信している。基地局10は、例えば建物から反射する信号のマルチパス効果のため、どの方向から信号が来るかを高精度で決定することができない。したがって信号は強く指向されない。参照番号18は、様々な信号の空間/電力分布を示す。図から明らかであるように、発信源12への信号の二次ノードの方向は、発信源14への主ノードの方向と一致する。それは、発信源12および14が同一周波数またはその他の干渉周波数を使用することを妨げる。発信源の方向が正確には分からないので、発信源のいずれかに対しより狭幅のビームを使用することは不可能である。
【0047】
基地局20は、本発明の好適な実施形態では、下で詳細に説明するように、発信源22および24の方向を正確に決定することができる。静的発信源を定位することができるだけでなく、定位は実時間で達成することができるので、動的発信源22および24を追跡することもできる。発信源24は車両であり、本発明の好適な実施形態では、それを狭幅のビームで追跡することが可能である。
【0048】
今、図2を参照すると、それは、都市環境におけるセルラ電話基地局の特定の問題を示す略図である。図2aは、平坦な連続した地勢における基地局のカバレージエリアを示す。図2bは、平坦な断続的地勢における指向性アンテナのカバレージエリアを示す。図2cは、建物が信号の自由通過に対する障害となる都市の地勢に対する基地局のカバレージエリアを示す。図2dは郊外、つまり図2cより建物の密度が低い地勢に対する指向性アンテナのカバレージエリアを示す。都市および郊外環境における建物は、信号を遮りあるいは反射させ、したがって信号源の定位を困難にする。セルラ基地局は、マルチパス誤差として知られる現象である、幾つかの異なる方向から接近する同一信号を見る場合があり、あるいは信号の到来を全く見ない場合がある。発信源定位のための現在のアルゴリズムは、二つのマルチパス誤差を超えると失敗する傾向がある。
【0049】
アンテナ
図3〜7は、感知アンテナ双極子と、それらを本発明の第一実施形態に係る直交偏波アンテナにいかに組み込むことができるかを示す。
【0050】
今、図3を参照すると、それは典型的な電気双極子を示す。双極子30は、二つの側方に延びる極32および34を含む。図4では、二つのそのような双極子30が一緒に直交配置される。
【0051】
今、図5を参照すると、それは典型的な磁気双極子を示す。双極子40は、矩形を描く単一のワイヤによって形成される。
【0052】
図6には、一緒に直交配置された二つの磁気双極子が示される。
【0053】
今、図7を参照すると、それは、本発明の好適な実施形態に係るアンテナ素子を示す略図である。二つの電気双極子30が、図4に示すように一緒に直交配置される。加えて、二つの磁気双極子40もまた図6に示すように一緒に直交配置され、電気双極子と一緒に、四つの相互に直交する感知双極子を有するアンテナ素子を形成する。四つの双極子は全て、同一平面内で感知する。アンテナが図に示すように向けられた場合には、感知はアジマスまたは水平面内で最大になり、センサはアジマス面内の偏波情報を得ることができる。理解されるように、セルラ通信を考慮する場合、そのような通信の大部分はアジマス面に限定される。セルラ信号は偏波され、したがって、下で説明するように、マルチパス誤差を除去するために、偏波を追加パラメータとして使用することができる。アジマス面からの偏倚も感知することができるが、略垂直信号は失われる。
【0054】
ベクトルセンサ平滑化(VSS)
今、図8を参照すると、それは、図7の素子のような素子のアレイから空間情報を得るための方法の第一の好適な実施形態を示す略図である。段階S1で、アレイの様々なセンサおよび素子から情報が得られる。各センサにおけるデータは厳密に同一ではない。換言すると、同一信号源からのマルチパスバージョンに対し、信号によって搬送されるデータは同一であり続けるが、各個別双極子によってピックアップされる特定のパラメータは異なる。双極子が図7に示すように直交配設された場合、かつ信号が偏波される場合には、情報の量が最大になる。次いで、段階S2で、アレイにおける各々のセンサ型つまり双極子構成に対し、自己相関行列が作成される。換言すると、第一の意味で電気双極子に対し一つの自己相関行列が作成され、直交的な意味で電気双極子に対し第二の自己相関行列が作成される。第三の自己相関行列が第一の意味で磁気双極子に対して形成され、第四の自己相関行列が直交的な意味で磁気双極子に対して形成される。
【0055】
段階S3で、自己相関行列の平均が取られる。つまり、自己相関行列が総和され、次いで行列の総数で除算される。結果は拡張された共分散行列であり、以下ではRVSSと呼ぶ。ここでvssはベクトルセンサ平滑化を指す。
【0056】
行列RVSSにフォワードバックワード平均化を適用してRVSS−FBを形成する任意選択的段階S4がその後に続く。フォワードバックワード平均化は、信号を無相関化するための当業者には公知の方法であり、それについては前に言及した。さらに詳しくは、フォワードバックワード平均化は、自己相関行列の複素共役に対するその両側の反対角行列の乗算を使用して自己相関行列に適用されるプロセスである。数学的に、フォワードバックワード平均化は次のように実行される。
【0057】
フォワードバックワード平均化の使用は、定位できる信号源の最大個数が二倍になるので有利である。しかし、フォワードバックワード平均化法は、対称的なアレイ、遠距離場近似、およびアレイの中心における不等信号位相を前提としている。したがって、それは常に適用可能なものではない。一般的に、携帯電話の発信源に対し、これらの前提は特に対称的なアレイの前提は真である。前提が真でない場合には、フォワードバックワード平均化無しでベクトルセンサ平滑化を使用することが賢明である。信号を無相関化する他の方法を考慮することもできる。
【0058】
段階S5では、下で(14)で定義する、ステアリングベクトルqが使用される。連続的に図示されているが、段階S5はそのすぐ前の段階とは独立しており、したがって処理時間を節約するために並行して実行することができる。
【0059】
段階S6において、RVSS−FBが段階S4から得られた場合にはそれが、さもなければRVSSが、MUSICおよびMVDRのようなスペクトルに基づくアルゴリズムの使用のために引き渡される。ステアリングベクトルqもまた引き渡される。理論的には、ステアリングベクトルはどの自己相関行列からも、つまりセンサ素子の各々に対して、生成することができる。しかし、単一のステアリングベクトルqだけが引き渡されることが好ましい。全てのセンサが同一信号を得るので、異なるセンサから得られるステアリングベクトルの間に有意の差は無い。
【0060】
段階1〜5に記載した手順は、スペクトルに基づくアルゴリズムのための前処理段階として役立つ。次いで、それは同一信号のマルチパスバージョンを特徴付けるタスクを完了する。
【0061】
最尤推定
今、図9を参照すると、それは、上述した種類のアレイから空間情報を得る代替的方法を示す簡易流れ図である。図9において、第一段階S10は、図7に示した種類のアンテナアレイ素子の双極子またはセンサから情報を得る。段階S11では、ちょうど図8の方法で行われたように、情報が個々の素子毎に自己相関化され、相関行列Rn,jが形成される。段階S12では、標本共分散行列^Ryが作成される。段階S13では、標本共分散行列が推定値として最尤推定量に供給される。段階S14で、最尤推定量を使用してアジマス面内の発信源の方向が得られる。
【0062】
方法間の比較
最尤(ML)推定は、図8のVSS法および固有構造に基づく技術より高い精度を達成し、最大限の理論的分解能のクラーメル・ラオ境界に迫る。しかし、MLは、特に多数の着信信号に対して、計算量的に高価につく。しかし、着信信号数が一個の場合をはじめ少数である場合、計算コストはそれほど大きくなく、精度の向上によって正当化することができる。したがって、本発明に係る方向探知器の好適な実施形態は、図8に係るVSS推定量および図9に係る最尤推定量の両方を組み込み、二つの方法の間で切り替えられる信号経路の適切な閾値を選択する。
【0063】
上記の実施形態のいずれにおいても、アレイにおける個々のセンサおよび個々の素子からデータを収集し、そこから自己相関行列を組み立てるための専用ハードウェアを提供することが可能である。代替実施形態では、高速切替技術を使用して、様々なセンサから順番に、または様々な素子から順番にデータを取ることが可能である。特に好適な実施形態では、各素子の四個のセンサの各々に対し単一のデータ収集ユニットを使用し、センサ間の切替を達成する。こうしてアンテナはハードウェアを節約する。
【0064】
本発明の実施形態を使用するセルラ電話
今、図10を参照すると、それはセルラ電話環境における発信源定位の使用を示す略図である。基地局は発信源を定位することができるので、方向がかなり近い場合でも同一チャネルを異なる方向に再使用することができ、確実に隣接する基地局によって使用することができる。図10では、発信源100は信号を基地局102へ送信する。信号は五つの異なる経路を介して基地局に到達する。上述した方法を使用して、基地局102は単一発信源が信頼できることを特定し、発信源を定位し、比較的高精度に指向されたビームにより通信することができる。次いで、発信源104が全く同じチャネルを使用して隣接基地局106と通信することができる。信号はまた、基地局102に達することもできる。基地局102は、偏波が異なるので、発信源100の信号を誤って識別することは無い。したがってチャネル干渉は発生しない。
【0065】
そのようなアンテナは、識別されたノイズ源に向かってゼロ個の所定のチャネルを指向させることによって、ノイズ源を無効にすることもできる。
【0066】
以下で、実施形態の数学的説明を提供する。ベクトルセンサアレイを使用する測定モデルについて論じる。次いで、DOAおよび偏波ベクトルのためのML推定量を導出する。該導出の後に、固有構造に基づく発信源定位のための前処理段階として、ベクトルセンサ平滑化(VSS)法が続く。提案したアルゴリズムの性能について、コンピュータシミュレーションを介して評価し、説明する。
【0067】
信号の特徴付け
着信信号の偏波について考慮することから始める。着信信号が(θ,φ)の方向から入射する平面波であると仮定する。ここでθは仰角であり、φはアジマス角である。横方向入射電界の複素包絡面は、
によって球座標系で表わすことができる。
ここでEφおよびEθはその水平および垂直成分である。所定の偏波に対し、センサにおける電界成分は、
および
によって記述することができる。ここでAは信号の複素振幅である。パラメータγおよびηは偏波を決定し、受信信号の水平および垂直成分の振幅および位相に関連する。s(t)は送信された狭帯域信号のベースバンド等価物である。
【0068】
(1)の電界は、
によってx,y,zデカルト座標系で表わすことができる。
【0069】
(2)および(3)を(4)に代入することにより、
が得られる。
【0070】
どの平面も到来角度θ,φ、複素振幅A、および偏波パラメータγおよびηによって特徴付けることができる。
【0071】
偏波パラメータは、ベクトル記法によって
と表わすことができ、E(t)は、
の形で書き直すことができる。
【0072】
同様に、入射磁界は
によって与えられる。ここでZ0は媒体の特性インピーダンスである。
【0073】
アレイベクトルセンサの偏波信号に対する空間応答
1.センサ応答
今、電気または磁気のいずれかであり線形偏波することのできる、一般的型の単極子または双極子センサについて考慮する。Vx、Vy、Vzが,、任意の入射電界または磁界のx,y,z成分に対するセンサ応答を表わすとする。したがって、センサ出力端子における全信号は、
(式中、下付き添字EおよびHは電界および磁界を表わす)
および
によって記載することができる。
【0074】
2. ベクトルセンサの応答
今、図11を参照すると、それは、三次元面内の磁気および電気素子の両方を探るための複数の直交構成部品センサを示す。
【0075】
図11に示すように、(x0,y0,z0)に配置され、角度δだけ方位角を回転した三個の電気および三個の磁気直交センサを含む、ベクトルセンサについて考慮する。これらのセンサの係数Vx、Vy、およびVzは、
ここで、wは電気センサの誘導電圧と磁気センサの対応する誘導電圧の間の比を表わす。
【0076】
【0077】
一般的に、ベクトルセンサは、上述した六個の素子の一部分を含むことができ、したがって対応する空間応答ベクトルサイズは、1≦L≦6によって与えられる。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
アルゴリズム
最尤推定量
本節では、前節で示した問題について、ML推定量を導出する。温和な正則性条件下で、ML推定量は、スナップショットの数が無限大に近づくにつれて、クラーメル・ラオ下限(CRLB)に漸近的に到達する。
【0085】
【0086】
【0087】
したがって、
である。
【0088】
【0089】
(24)を(23)に代入すると、
となる。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
最後に、信号DOAのML推定量は、
によって与えられ、偏波ベクトルの推定は、対応する一般化固有ベクトル
によって与えられる。
【0094】
信号のML推定は、今、
と書くことができる。
【0095】
ML推定量は漸近的に最適であることが知られているが、それは(θ,φ)を推定するための2M次元探索手順を含む。したがって、Mが大きい場合、ML推定量は計算量的に高価になり、数値的に解く必要がある。対照的に、上で導出されたML推定量は、偏波ベクトルに対する探索手順を含まないことに注目されたい。
【0096】
MUSICおよびESPRITのような固有構造に基づく技術は、多重発信源環境で発信源の方向を推定するのに計算的に効率的である。これらのアルゴリズムは、無相関または部分相関信号を想定している。以下では、完全相関信号の存在下において固有構造に基づく技術を利用するための処理方法を提示する。
【0097】
【0098】
【0099】
方程式(13)を方程式(16)に代入することによって、アレイにおける測定モデルは、
の形に書くことができる。
【0100】
【0101】
【0102】
L種類の異なるセンサ型によって取得した情報は、信号が完全に相関されない測定空間を得るのに役立つ。我々は、発信源定位のための固有構造に基づくアルゴリズムに必要な要件である、信号部分空間全体に及ぶために、この事実を利用する。
【0103】
方程式(33)は行列形式で
と書き直すことができる。ここで、
である。
【0104】
【0105】
M次元の信号部分空間を決定するために、M≦min(L,N)であることが要求される。この要件は、空間の無相関化のために他の方法を使用することができる場合、緩和することができる。例えば、上述したフォワードバックワード平均化を適用することによって、定位することのできる完全相関信号の最大個数は二倍になる。
【0106】
【0107】
今、図12を参照すると、それは素子間の切替を示す略図である。スイッチング制御ユニット200は、センサ素子1〜4の各々に設けられたスイッチ202を制御して、信号の様々な双極子アウトレット間の切替を行なう。様々な双極子間のスイッチサイクルとして検出される信号は、その後の処理段階の準備が整った行列位置に順次記録される。この方法によるスイッチの使用は、システムの入力の側面を大幅に簡素化する。
【0108】
シミュレーション
上述した様々な実施形態に係る技術の性能を、つまり様々なベクトルセンサ型について、評価するために、シミュレーションを実行した。様々なシナリオに対し、性能を評価した。前節の主張を検証するために、コヒーレントなマルチパスから構成される信号環境をコンピュータでシミュレーションした。
【0109】
次の場合についてのシミュレーションを提示する。1)前処理無し、2)フォワードバックワード平均化(FB)、3)VSS、および4)FBとVSSの組合せ(VSS−FB)。ベクトルセンサアレイを使用した発信源定位のためのクラーメル・ラオ境界(CRB)は、A.NehoraiおよびE.Paldi、「Vector−sensor array processing for electromagnetic source localization」、IEEE Trans.on Signal Processing、第42巻、376〜398頁、1994年2月で導出された。その内容を参照によってここに組み込む。
【0110】
シミュレーションに使用したアレイは、y軸に沿って半波長の素子間間隔で配置されたベクトルセンサの12素子の線形アレイである。三種類のアレイを使用する。
a.垂直偏波センサアレイ − 各アンテナ素子は、垂直電気センサ(図3)から成る。これはスカラセンサの事例であり、VSS前処理は適用することができない。
b.デュアル偏波アレイ − ベクトルセンサは垂直および水平電気双極子(図11に従って図4でδ=0°)から成る。
c.直交偏波ベクトルセンサアレイ − ベクトルセンサは四つの直交部品つまり二つの直交電気双極子および二つの直行磁気双極子から成る(センサ番号1、2、4、および5、w=1と仮定して式(11)に従ってδ=45°)。
d.シミュレーションでは、発信源がアジマス面内にある、つまりθ=90°と仮定した。
【0111】
第一シナリオでは、DOAが4°、0°であり、楕円偏波p1=(0.707e−j60°,0.707)、p2=(0.707ej80°,0.707)の二つの等電力の完全相関発信源を検討した。ζ1=(0.707ej50°,0.707ej110°)、ζ2=(0.707ej80°,0.707)となるように、原点における二つの入射信号の位相差は、110°であった。アレイから採った標本の数は100であった。
【0112】
今、図13を参照すると、それは、様々な無相関化方法の上述したシナリオの結果を比較するグラフであり、クラーメル・ラオ境界をも示す。二乗平均誤差(RSME)対信号対雑音比(SNR)が示されている。SNRが増加するにつれて、FB−MUSICのRSMEが減少するが、それが漸近的にも効果的な推定量ではないことが分かる。前処理無しのMUSICは、完全相関発信源では予想通り失敗する。
【0113】
VH MUSICおよびFB MUSICアルゴリズムは、コヒーレントな発信源を分解する能力を持つ一方、MUSICアルゴリズム単独ではそうではないことが明らかである。グラフはまた、MLがクラーメル・ラオ境界(CRB)に達することができることをも示す。
【0114】
今、図14を参照すると、それは三種類のベクトルセンサおよび三通りの前処理に対するSNR=20dBにおけるRSME対角度η2を示すグラフである。図14における点Aは、SNR=20dBにおける図13の点である。この目的のために、上記の図13で使用したのと同じシナリオを、SNRを20dBに設定して使用し、RMSEを偏波パラメータη2の関数として描画している。上記方程式(6)を参照されたい。ここで下付き添字2は発信源の数を指す。図14から、FB MUSICがBおよびCと表記された二つの点付近で失敗することが明らかである。それは、アレイ中心における二つの信号の位相差が0または180度となる場合を反映している。アレイの出力で観察された二つの発信源の偏波が相互に比例する点Dでは、VH MUSICは失敗する。上記のシナリオでは、両方の偏波ベクトルの絶対値が同一となるように選択されたことに留意されたい。実際には、同一信号のマルチパスバージョンは通常同一振幅を持たない。偏波ベクトルが同一でない一般的な事例では、限界は存在しない。VSS MUSICとFB MUSICの組合せであるVSS FB MUSICアルゴリズムでは、FB前処理が信号共分散行列における特異性を除去するのに失敗したときに、それはVSS前処理によって除去され、その逆も然りであるので、上記問題は存在しない。VSS−FBアルゴリズムは、MLの場合と同様に、CRB分解能をもたらす。
【0115】
今、図15を参照すると、それは−30、−10、0、および20度のDOAならびに無作為に選択された偏波を持つ四つの等電力の完全相関信号を比較したグラフである。全ての信号のSNRは15dBであり、100のスナップショットをアレイから収集した。MUSICおよびFB−MUSICアルゴリズムをA型のベクトルセンサを持つアレイに適用する一方、VSSおよびMUSICおよびVSS−FB−MUSICアルゴリズムをBおよびC型のベクトルセンサのアレイに適用した。予想通り、A型のアレイを使用すると、この場合、VSS前処理が信号共分散行列の階数を、四つの発信源を解くために必要とされる4に増大することができないので、MUSICおよびFB−MUSICは信号のDOAを解くことに失敗することを観察することができる。対照的に、B型のベクトルセンサによるVSS−FB−MUSICおよびC型のベクトルセンサによるVSS−MUSICおよびVSS−FB−MUSICは、四つの完全相関信号を解くことができる。
【0116】
今、図16を参照すると、それは四つの追加のコヒーレントな発信源、つまり−70°、−50°、−30°、−10°、0°、20°、40°、および60°の方向からの八つの発信源を使用した結果を示す。図から、C型センサによるVSS FB MUSICだけが、八つのコヒーレントな発信源を解くことができることを見ることができる。他の場合は全て失敗する。C型の直交アレイを使用したベクトル感知の場合、VSS前処理により結果的に階数4の信号相関行列が得られる。追加のFB前処理段階は、信号相関行列の階数を二倍に、この場合8にする。それは八つの発信源を解くのに十分である。
【0117】
分かりやすくするため別個の実施態様で説明されている本発明のいくつもの特徴は、組み合わせて単一の実施態様にして提供することもできることは分かるであろう。逆に簡略化するため単一の実施態様で説明されている本発明の各種特徴は、別個に又は適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0118】
本発明を、その具体的実施態様とともに説明してきたが、多くの代替、変形と変更が当業技術者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲の精神と広い範囲内に入っているこのような代替、変形と変更をすべて含むものである。本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び特許願は、あたかも、個々の刊行物、特許又は特許願各々が、本願に具体的にかつ個々に参照して示されているように、本願に援用するものである。さらに、本願における任意の文献の引用もしくは確認は、このような文献が本発明に対する従来技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】二つのセルラ基地局を示し、かつ単一の基地局が二つの移動信号源/標的を追跡する場合に、本発明の好適な実施形態に係る発信源定位がスペクトルのより効率的な使用をいかに導くかを示す模式図である。
【図2】図2a〜2dは、理想的環境および現実的環境における移動基地局のカバレージパターンを示す略図である。
【図3】電気双極子アンテナの簡略図である。
【図4】直交配設された二つの電気双極子の簡略図である。
【図5】磁気双極子の簡略図である。
【図6】直交配設された二つの磁気双極子の簡略図である。
【図7】本発明の第一の好適な実施形態に従って一緒に配置された、二つの直交配設電気双極子および二つの直交配設磁気双極子を備えたアンテナユニットの簡略図である。
【図8】本発明に従って作動する、図7の素子のような素子のアレイから空間情報を得るための方法の第一の好適な実施形態を示す略図である。
【図9】本発明に従って作動する、素子のアレイから空間情報を得るための前処理の代替的な好適な実施形態を示す簡易流れ図である。
【図10】マルチパス誤差を持つ二発信源二基地局システムにおいて本発明の実施形態に係る正確な発信源定位の利点を示す簡略図である。
【図11】三次元グリッドに配置された図7のアンテナアレイユニットを示す略図である。
【図12】アンテナ素子間の切替を示す略図である。
【図13】本発明に係る方法を含む様々な無相関化方法について、一組100個のデータサンプル(スナップショット)に基づく結果を比較するグラフである。
【図14】シミュレーション結果を示すさらなるグラフであり、SNR=20dBにおけるRSME対角度η2を示す。
【図15】特に異なる偏波を有し、−30°、−15°、0°、および20°の方向から到来する、四つのコヒーレントな発信源の場合のシミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
【図16】−60°、−50°、30°、および45°の方向からの四つの追加のコヒーレントな発信源を使用して、合計で八つのコヒーレントな発信源とし、それらが本発明の実施形態ではコヒーレントであると識別することに成功したが、先行技術では成功しなかった、シミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートアンテナの方法および装置に関し、さらに詳しくは、入射電磁放射の到来角度を決定するための追加的パラメータとしての偏波の使用に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
ベクトルセンサは、任意の偏波による入射電磁波の到来角度および偏波の推定を可能にする。この十年間に、ベクトルセンサを使用する発信源定位および偏波推定のための多くのアレイ処理技術が開発された。A.NehoraiおよびE.Paldi、「Vector−sensor array processing for electromagnetic source localization」、IEEE Trans.on Signal Processing、第42巻、376〜398頁、1994年2月、は、クラーメル・ラオ境界(CRB)およびベクトル積和到来方向(DOA)推定器を開発した。その内容を参照によってここに組み込む。ベクトルセンサを使用するポラリメトリックモデリングが、B.HochwaldおよびA.Nehorai、「Polarimetric modeling and parameter estimation with application to remote sensing」、IEEE Trans.On Signal Processing、第43巻、1923〜1935頁、1995年8月、で実行され、その内容を参照によってここに組み込む。
【0003】
ベクトルセンサに関連する識別可能性および一意性の問題が、G.F.Hatke、第27回Asilomar Conf.1993、1365〜1369頁、K.C.Ho、K.C.Tan、W.Ser、Signal Processing、第47巻、41〜54頁、1995年11月、B.HochwaldおよびA.Nehorai、IEEE Trans on Signal Processing、第44巻第1号、83〜95頁、1996年1月、K.C.Tan、K.C.Ho、A.Nehorai、IEEE Trans.Signal Processing、第44巻、3099〜3107頁、1996年12月、で分析されている。上記文書の各々の内容を参照によってここに組み込む。
【0004】
ESPRITおよびベクトルセンサを使用して発信源を定位するための多重信号分類(MUSIC)のような固有構造に基づく技術は、広く研究されてきた。J.Li、IEEE Trans.Antenna Propagation、第41巻、379〜387頁、1993年3月は、ESPRITアルゴリズムをベクトルセンサアレイに適用した。その内容を参照によってここに組み込む。ベクトルセンサを使用するESPRITに基づく方向探知アルゴリズムはさらに、その内容を参照によってここに組み込むK.T.WongおよびM.Zoltowski、IEEE Trans.Antenna Propagation、第48巻、671〜681頁、2000年5月をはじめ、幾つかの論文で研究されている。同じ問題に対してMUSICに基づくアルゴリズムが、K.T.WongおよびM.Zoltowski、IEEE Trans.Antenna Propagation、第48巻、1235〜1245頁および2205〜2210頁、2000年8月で適用されている。これらの技術は、無相関または部分相関信号の場合、高分解能および漸近的有効推定を生み出す。しかし、これらの技術は非特異信号相関行列を想定しているので、マルチパスシナリオにおける単一発信源からの信号のような完全相関信号の場合、困難に遭遇する。後者は、都市環境におけるセルラ電話では、特に一般的である。
【0005】
データ共分散行列で信号を無相関化するために、EvansらはProc.1st ASSP Workshop spectral Estimation、カナダ、オンタリオ州ハミルトン、1981年、134〜139頁で、空間平滑化と呼ばれる前処理技術を提案した。その内容を参照によってここに組み込む。その後の何人かの著者が、空間平滑化方法を、フォワードバックワード平均化の方法と組み合わせて研究した。上記組合せの欠点は、アレイのアパーチャの有効長が低減し、その結果、分解能および精度が低下することである。代替的空間平均化方法は冗長性平均化である。冗長性平均化に基づく前処理方法は、DOA推定器にバイアスを誘発することが示された。
【0006】
様々に偏波する発信源の定位のための最尤(ML)法が、WaxおよびZiskind、IEEE Transactions Antenna Propagation、第38巻、111〜1114頁、90年7月に提案された。最尤法は、シミュレーテッドアニーリングアルゴリズムを使用して、信号のDOAおよび偏波ベクトルを効率的に探索する。
【0007】
しかし、上記の方法は依然として、同一信号のマルチパスバージョンを見るときに予想される、相関信号を持つことによって導入される問題を克服していない。
【0008】
したがって、上記の限界を持たず、したがって都市領域のセルラ電話およびマルチパスが著しい問題となるようなその他の場合に、スマートアンテナに使用可能な無相関化方法の必要性が広く認識されており、それを持つことは非常に有利である。
【発明の開示】
【0009】
本発明の一態様では、相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備えた直交偏波アンテナ素子であって、各磁気双極子が共通位置を前記電気双極子のそれぞれ一つと実質的に共有する直交偏波アンテナ素子を提供する。好ましくは、前記予め定められた角度は略直角である。さらに、前記複数の双極子はアジマス面全体から電磁気源情報を得るように配設される。
【0010】
前記電磁源情報は、信号定位、信号偏波、およびデータ内容から成る群の少なくとも一つの抽出を可能にするようなものであることが好ましい。
【0011】
素子は、実質的にアジマス面全体から信号を検出するように配設することが好ましく、前記電気双極子および前記磁気双極子は、前記信号の偏波情報に対して相互に補足し、それによって前記素子が前記アジマス面内の実質的に全ての偏波情報を得ることを可能にするように構成される。
【0012】
前記素子は四個の双極子を備え、前記双極子のうちの二個が電気双極子であり、前記双極子のうちの二個が磁気双極子であることが好ましい。好適な実施形態では、二つの電気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子の各々が前記電気双極子の一つと同一方向に向けられる。
【0013】
本発明の第二態様では、複数のアンテナ素子を備えた直交偏波アンテナアレイであって、各素子が相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備え、各磁気双極子が前記電気双極子のそれぞれと共通位置を実質的に共有して成る、直交偏波アンテナアレイを提供する。個々の素子の特性は上述した通りであり、アレイへの素子の配列は、信号のマルチパス変動から発信源を解く能力のような追加的特性をアレイに提供する。n個の素子を有するアレイの場合、アレイはn−1個の信号を解くことができる。
【0014】
一実施形態では、アレイは、双極子間の切替えのための電気的スイッチもしくはスイッチング素子、または前記アレイ全体のデータを収集するための素子間の切替えのためのスイッチを備える。
【0015】
一実施形態では、アレイは、前記アンテナからの信号を前処理して信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、それに接続された信号前処理装置を有しており、該前処理装置は、
各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するために構成されたセンサ自己相関器と、
前記自己相関行列を平滑化し、それによって空間スペクトル情報を含む少なくとも一つの共分散行列を形成するために構成された平滑化器と、
を備えている。
【0016】
アンテナアレイは、固有構造に基づく信号源定位技術で前記標本共分散行列を使用するために構成された発信源定位装置がそれに接続されることが好ましい。
【0017】
前記平滑化器はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平滑化を適用し、それによって定位できる信号源の最大個数を増大するように構成することが好ましい。
【0018】
アレイは、前記発信源定位装置で前記標本共分散行列と一緒に使用するために、アンテナ特定的パラメータのステアリングベクトルを持つことが好ましい。
【0019】
一実施形態では、アレイは、信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、前記アンテナからの信号を前処理するために、それに接続された信号前処理装置を持ち、該前処理装置は、
各素子のための信号自己相関行列を形成するために、前記入力の後に接続された自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、それによって発信源定位を推定するために、固有構造に基づく推定器で使用するのに適した標本共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された平滑化器と、
を備えている。
【0020】
本発明の第三の好適な実施形態では、複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該方法が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得て、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成し、前記自己相関行列を平滑化して、そこから固有構造に基づく信号源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成することを含む方法を提供する。
【0021】
該方法はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大することを含むことができる。
【0022】
該方法はさらに、各アンテナに対し少なくとも一回、前記固有構造に基づく信号定位技術で前記標本共分散行列と一緒に使用するためのステアリングベクトルを得ることを含むことができる。
【0023】
該方法では四つのセンサ型から感知または取得が行なわれる。好ましくは、センサ型は二つのそれぞれ直交する電気双極子および二つのそれぞれ直交する磁気双極子である。
【0024】
四つのセンサ型は全て、単一面内で感知するように配設することが好ましい。換言すると、それらはその面を完全に網羅するように配設されるが、言うまでもなく、それらは依然として平面の上または下から来る信号を感知することができる。
【0025】
該方法は、前記共分散行列のデータから得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、それぞれの発信源に指向するビームを提供することを含むことができる。
【0026】
好ましくは、前記着信信号はノイズ信号であり、該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、前記ノイズ干渉信号のそれぞれの発信源に対してゼロ個の指向ビームを提供することを含むことができる。
【0027】
本発明の第四態様では、複数の様々なセンサ型を使用して得た着信信号を処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該方法が、着信信号の到来角度および偏波情報を得て、前記センサのアレイ全体に対し信号自己相関行列を形成し、前記信号自己相関行列から、発信源定位を推定するための最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列を形成することを含む方法を提供する。
【0028】
【0029】
該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、それぞれの発信源への指向ビームを提供することができる。
【0030】
一般的に着信信号はノイズを含み、それに対して該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、検出されたノイズのそれぞれの発信源に対しゼロ個の指向ビームを提供することをさらに含む。
【0031】
本発明の第五態様では、複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該装置が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するように構成されたセンサ自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、それによって固有構造に基づく発信源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成するように構成された平滑化器とを備えて成る装置を提供する。
【0032】
前記平滑化器はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大するように構成することが好ましい。
【0033】
該装置は、前記固有値に基づく信号定位技術で、前記標本共分散行列と一緒に使用するためにステアリングベクトルを利用することができる。
【0034】
該装置は、上述した四つのセンサ型を利用することが好ましい。
【0035】
該装置は、発信源定位を推定するための最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列をそこから抽出することのできる共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後にも接続される、共分散ユニットを備えることができる。
【0036】
該装置は、前記着信信号を発生させた見かけの信号源の総数に従って、前記平滑化器と前記相互相関器との間の切替を行うためのスイッチングユニットを備えることができる。
【0037】
本発明の第六態様では、複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該処理が発信源定位のためであり、該装置が、着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ素子毎に信号自己相関行列を形成するために前記入力の後に接続された自己相関器と、発信源定位を推定するために最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列が前記自己相関行列から抽出可能である共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された共分散ユニットとを備えて成る装置を提供する。
【0038】
【0039】
特に定義しない限り、本書で使用する全ての技術および科学用語は、本発明が属する技術の通常の熟練者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本書に提示する材料、方法、および実施例は、単なる例証であって、限定の意図はない。
【0040】
本発明の前処理装置ならびに前処理方法およびシステムの実現は、ソフトウェアまたはハードウェアまたはそれらの組合せを使用して、選択されたタスクまたはステップを自動的に実行または完成することを含む。さらに、本発明の方法およびシステムの好適な実施形態の実際の計装および機器に応じて、選択されるステップは、任意のオペレーティングシステムもしくは任意のファームウェア上のハードウェアまたはソフトウェアで、もしくはそれらの組合せで実現することができる。例えば、ハードウェアとしては、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとしては、本発明の選択されたステップは、適切なオペレーティングシステムを使用してコンピュータによって実行される、複数のソフトウェア命令として実現することができる。いずれの場合も、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームのようなデータプロセッサによって実行されると記載することができる。
【0041】
図面の簡単な記述
本発明を本書では、単なる例として添付の図面に関連して説明する。今、図面の細部について特に言及すると、図示する細部は例示であって、単に本発明の好適な実施形態を分かりやすく論じることを目的としており、本発明の原理および概念的側面についての最も有用かつ容易に理解される説明であると信じられるものを提供することを目的に提示することを強調しておく。これに関して、本発明の構造上の詳細を、本発明の基本的理解に必要である以上に詳しく示そうとはせず、図面に即した説明は、本発明の幾つかの形態をいかに実際に具現することができるかを、当業者に明確にするものである。
図面の簡単な記述
図1は、二つのセルラ基地局を示し、かつ単一の基地局が二つの移動信号源/標的を追跡する場合に、本発明の好適な実施形態に係る発信源定位がスペクトルのより効率的な使用をいかに導くかを示す模式図である。
図2a〜2dは、理想的環境および現実的環境における移動基地局のカバレージパターンを示す略図である。
図3は、電気双極子アンテナの簡略図である。
図4は、直交配設された二つの電気双極子の簡略図である。
図5は、磁気双極子の簡略図である。
図6は、直交配設された二つの磁気双極子の簡略図である。
図7は、本発明の第一の好適な実施形態に従って一緒に配置された、二つの直交配設電気双極子および二つの直交配設磁気双極子を備えたアンテナユニットの簡略図である。
図8は、本発明に従って作動する、図7の素子のような素子のアレイから空間情報を得るための方法の第一の好適な実施形態を示す略図である。
図9は、本発明に従って作動する、素子のアレイから空間情報を得るための前処理の代替的な好適な実施形態を示す簡易流れ図である。
図10は、マルチパス誤差を持つ二発信源二基地局システムにおいて本発明の実施形態に係る正確な発信源定位の利点を示す簡略図である。
図11は、三次元グリッドに配置された図7のアンテナアレイユニットを示す略図である。
図12は、アンテナ素子間の切替を示す略図である。
図13は、本発明に係る方法を含む様々な無相関化方法について、一組100個のデータサンプル(スナップショット)に基づく結果を比較するグラフである。
図14は、シミュレーション結果を示すさらなるグラフであり、SNR=20dBにおけるRSME対角度η2を示す。
図15は、特に異なる偏波を有し、−30°、−15°、0°、および20°の方向から到来する、四つのコヒーレントな発信源の場合のシミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
図16は、この場合、−60°、−50°、30°、および45°の方向からの四つの追加のコヒーレントな発信源を使用して、合計で八つのコヒーレントな発信源とし、それらが本発明の実施形態ではコヒーレントであると識別することに成功したが、先行技術では成功しなかった、シミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明の実施形態は、アレイベクトルセンサを使用して発信源定位するためのスマートアンテナおよび関連方法を記載する。一実施形態では、最尤推定量が完全相関された発信源に対する発信源定位を提供する。第二実施形態では、前処理方法は、信号相関行列の特異性によって表わされる問題を克服する。第二実施形態は、完全相関信号を含むシナリオにおけるDOA推定のために、固有値に基づくMUSIC、MVDR、およびESPRIT方法のようなスペクトルに基づくアルゴリズムを使用するための空間スペクトル情報を提供する、本書でベクトルセンサ平滑化(VSS)と呼ぶ手順に基づく。ひとたび発信源が定位されると、指向ビームを使用して通信し、それによってスペクトルのより効率的な使用を行なうことが可能になる。本方法は動的実時間発信源定位を可能にするので、指向ビーム技術を移動発信源に使用することができる。
【0043】
また、アジマス面の偏波情報を得るために最適化された直交偏向アンテナアレイについても開示する。上記の方法のいずれかを直交偏波アレイと一緒に使用すると、それぞれの方法の単独使用と比較して、改善された定位性能が達成される。
【0044】
本発明に係るスマートアンテナの原理および動作は、図面および付随する説明を参照することにより、いっそうよく理解することができる。
【0045】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用を、以下の詳細な説明に記載しあるいは図面に示す構成要素の構成および配設の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、あるいは様々な仕方で実施または実行することができる。また、本書で使用する表現および用語は説明のためのものであって、限定とみなすべきではないことも理解されたい。
【0046】
今、図面を参照すると、図1は、二つのセルラ基地局を示しかつ本発明の利点を示す模式図である。第一移動基地局10は、一範囲のセルラ電話機12、14、および16と通信している。基地局10は、例えば建物から反射する信号のマルチパス効果のため、どの方向から信号が来るかを高精度で決定することができない。したがって信号は強く指向されない。参照番号18は、様々な信号の空間/電力分布を示す。図から明らかであるように、発信源12への信号の二次ノードの方向は、発信源14への主ノードの方向と一致する。それは、発信源12および14が同一周波数またはその他の干渉周波数を使用することを妨げる。発信源の方向が正確には分からないので、発信源のいずれかに対しより狭幅のビームを使用することは不可能である。
【0047】
基地局20は、本発明の好適な実施形態では、下で詳細に説明するように、発信源22および24の方向を正確に決定することができる。静的発信源を定位することができるだけでなく、定位は実時間で達成することができるので、動的発信源22および24を追跡することもできる。発信源24は車両であり、本発明の好適な実施形態では、それを狭幅のビームで追跡することが可能である。
【0048】
今、図2を参照すると、それは、都市環境におけるセルラ電話基地局の特定の問題を示す略図である。図2aは、平坦な連続した地勢における基地局のカバレージエリアを示す。図2bは、平坦な断続的地勢における指向性アンテナのカバレージエリアを示す。図2cは、建物が信号の自由通過に対する障害となる都市の地勢に対する基地局のカバレージエリアを示す。図2dは郊外、つまり図2cより建物の密度が低い地勢に対する指向性アンテナのカバレージエリアを示す。都市および郊外環境における建物は、信号を遮りあるいは反射させ、したがって信号源の定位を困難にする。セルラ基地局は、マルチパス誤差として知られる現象である、幾つかの異なる方向から接近する同一信号を見る場合があり、あるいは信号の到来を全く見ない場合がある。発信源定位のための現在のアルゴリズムは、二つのマルチパス誤差を超えると失敗する傾向がある。
【0049】
アンテナ
図3〜7は、感知アンテナ双極子と、それらを本発明の第一実施形態に係る直交偏波アンテナにいかに組み込むことができるかを示す。
【0050】
今、図3を参照すると、それは典型的な電気双極子を示す。双極子30は、二つの側方に延びる極32および34を含む。図4では、二つのそのような双極子30が一緒に直交配置される。
【0051】
今、図5を参照すると、それは典型的な磁気双極子を示す。双極子40は、矩形を描く単一のワイヤによって形成される。
【0052】
図6には、一緒に直交配置された二つの磁気双極子が示される。
【0053】
今、図7を参照すると、それは、本発明の好適な実施形態に係るアンテナ素子を示す略図である。二つの電気双極子30が、図4に示すように一緒に直交配置される。加えて、二つの磁気双極子40もまた図6に示すように一緒に直交配置され、電気双極子と一緒に、四つの相互に直交する感知双極子を有するアンテナ素子を形成する。四つの双極子は全て、同一平面内で感知する。アンテナが図に示すように向けられた場合には、感知はアジマスまたは水平面内で最大になり、センサはアジマス面内の偏波情報を得ることができる。理解されるように、セルラ通信を考慮する場合、そのような通信の大部分はアジマス面に限定される。セルラ信号は偏波され、したがって、下で説明するように、マルチパス誤差を除去するために、偏波を追加パラメータとして使用することができる。アジマス面からの偏倚も感知することができるが、略垂直信号は失われる。
【0054】
ベクトルセンサ平滑化(VSS)
今、図8を参照すると、それは、図7の素子のような素子のアレイから空間情報を得るための方法の第一の好適な実施形態を示す略図である。段階S1で、アレイの様々なセンサおよび素子から情報が得られる。各センサにおけるデータは厳密に同一ではない。換言すると、同一信号源からのマルチパスバージョンに対し、信号によって搬送されるデータは同一であり続けるが、各個別双極子によってピックアップされる特定のパラメータは異なる。双極子が図7に示すように直交配設された場合、かつ信号が偏波される場合には、情報の量が最大になる。次いで、段階S2で、アレイにおける各々のセンサ型つまり双極子構成に対し、自己相関行列が作成される。換言すると、第一の意味で電気双極子に対し一つの自己相関行列が作成され、直交的な意味で電気双極子に対し第二の自己相関行列が作成される。第三の自己相関行列が第一の意味で磁気双極子に対して形成され、第四の自己相関行列が直交的な意味で磁気双極子に対して形成される。
【0055】
段階S3で、自己相関行列の平均が取られる。つまり、自己相関行列が総和され、次いで行列の総数で除算される。結果は拡張された共分散行列であり、以下ではRVSSと呼ぶ。ここでvssはベクトルセンサ平滑化を指す。
【0056】
行列RVSSにフォワードバックワード平均化を適用してRVSS−FBを形成する任意選択的段階S4がその後に続く。フォワードバックワード平均化は、信号を無相関化するための当業者には公知の方法であり、それについては前に言及した。さらに詳しくは、フォワードバックワード平均化は、自己相関行列の複素共役に対するその両側の反対角行列の乗算を使用して自己相関行列に適用されるプロセスである。数学的に、フォワードバックワード平均化は次のように実行される。
【0057】
フォワードバックワード平均化の使用は、定位できる信号源の最大個数が二倍になるので有利である。しかし、フォワードバックワード平均化法は、対称的なアレイ、遠距離場近似、およびアレイの中心における不等信号位相を前提としている。したがって、それは常に適用可能なものではない。一般的に、携帯電話の発信源に対し、これらの前提は特に対称的なアレイの前提は真である。前提が真でない場合には、フォワードバックワード平均化無しでベクトルセンサ平滑化を使用することが賢明である。信号を無相関化する他の方法を考慮することもできる。
【0058】
段階S5では、下で(14)で定義する、ステアリングベクトルqが使用される。連続的に図示されているが、段階S5はそのすぐ前の段階とは独立しており、したがって処理時間を節約するために並行して実行することができる。
【0059】
段階S6において、RVSS−FBが段階S4から得られた場合にはそれが、さもなければRVSSが、MUSICおよびMVDRのようなスペクトルに基づくアルゴリズムの使用のために引き渡される。ステアリングベクトルqもまた引き渡される。理論的には、ステアリングベクトルはどの自己相関行列からも、つまりセンサ素子の各々に対して、生成することができる。しかし、単一のステアリングベクトルqだけが引き渡されることが好ましい。全てのセンサが同一信号を得るので、異なるセンサから得られるステアリングベクトルの間に有意の差は無い。
【0060】
段階1〜5に記載した手順は、スペクトルに基づくアルゴリズムのための前処理段階として役立つ。次いで、それは同一信号のマルチパスバージョンを特徴付けるタスクを完了する。
【0061】
最尤推定
今、図9を参照すると、それは、上述した種類のアレイから空間情報を得る代替的方法を示す簡易流れ図である。図9において、第一段階S10は、図7に示した種類のアンテナアレイ素子の双極子またはセンサから情報を得る。段階S11では、ちょうど図8の方法で行われたように、情報が個々の素子毎に自己相関化され、相関行列Rn,jが形成される。段階S12では、標本共分散行列^Ryが作成される。段階S13では、標本共分散行列が推定値として最尤推定量に供給される。段階S14で、最尤推定量を使用してアジマス面内の発信源の方向が得られる。
【0062】
方法間の比較
最尤(ML)推定は、図8のVSS法および固有構造に基づく技術より高い精度を達成し、最大限の理論的分解能のクラーメル・ラオ境界に迫る。しかし、MLは、特に多数の着信信号に対して、計算量的に高価につく。しかし、着信信号数が一個の場合をはじめ少数である場合、計算コストはそれほど大きくなく、精度の向上によって正当化することができる。したがって、本発明に係る方向探知器の好適な実施形態は、図8に係るVSS推定量および図9に係る最尤推定量の両方を組み込み、二つの方法の間で切り替えられる信号経路の適切な閾値を選択する。
【0063】
上記の実施形態のいずれにおいても、アレイにおける個々のセンサおよび個々の素子からデータを収集し、そこから自己相関行列を組み立てるための専用ハードウェアを提供することが可能である。代替実施形態では、高速切替技術を使用して、様々なセンサから順番に、または様々な素子から順番にデータを取ることが可能である。特に好適な実施形態では、各素子の四個のセンサの各々に対し単一のデータ収集ユニットを使用し、センサ間の切替を達成する。こうしてアンテナはハードウェアを節約する。
【0064】
本発明の実施形態を使用するセルラ電話
今、図10を参照すると、それはセルラ電話環境における発信源定位の使用を示す略図である。基地局は発信源を定位することができるので、方向がかなり近い場合でも同一チャネルを異なる方向に再使用することができ、確実に隣接する基地局によって使用することができる。図10では、発信源100は信号を基地局102へ送信する。信号は五つの異なる経路を介して基地局に到達する。上述した方法を使用して、基地局102は単一発信源が信頼できることを特定し、発信源を定位し、比較的高精度に指向されたビームにより通信することができる。次いで、発信源104が全く同じチャネルを使用して隣接基地局106と通信することができる。信号はまた、基地局102に達することもできる。基地局102は、偏波が異なるので、発信源100の信号を誤って識別することは無い。したがってチャネル干渉は発生しない。
【0065】
そのようなアンテナは、識別されたノイズ源に向かってゼロ個の所定のチャネルを指向させることによって、ノイズ源を無効にすることもできる。
【0066】
以下で、実施形態の数学的説明を提供する。ベクトルセンサアレイを使用する測定モデルについて論じる。次いで、DOAおよび偏波ベクトルのためのML推定量を導出する。該導出の後に、固有構造に基づく発信源定位のための前処理段階として、ベクトルセンサ平滑化(VSS)法が続く。提案したアルゴリズムの性能について、コンピュータシミュレーションを介して評価し、説明する。
【0067】
信号の特徴付け
着信信号の偏波について考慮することから始める。着信信号が(θ,φ)の方向から入射する平面波であると仮定する。ここでθは仰角であり、φはアジマス角である。横方向入射電界の複素包絡面は、
によって球座標系で表わすことができる。
ここでEφおよびEθはその水平および垂直成分である。所定の偏波に対し、センサにおける電界成分は、
および
によって記述することができる。ここでAは信号の複素振幅である。パラメータγおよびηは偏波を決定し、受信信号の水平および垂直成分の振幅および位相に関連する。s(t)は送信された狭帯域信号のベースバンド等価物である。
【0068】
(1)の電界は、
によってx,y,zデカルト座標系で表わすことができる。
【0069】
(2)および(3)を(4)に代入することにより、
が得られる。
【0070】
どの平面も到来角度θ,φ、複素振幅A、および偏波パラメータγおよびηによって特徴付けることができる。
【0071】
偏波パラメータは、ベクトル記法によって
と表わすことができ、E(t)は、
の形で書き直すことができる。
【0072】
同様に、入射磁界は
によって与えられる。ここでZ0は媒体の特性インピーダンスである。
【0073】
アレイベクトルセンサの偏波信号に対する空間応答
1.センサ応答
今、電気または磁気のいずれかであり線形偏波することのできる、一般的型の単極子または双極子センサについて考慮する。Vx、Vy、Vzが,、任意の入射電界または磁界のx,y,z成分に対するセンサ応答を表わすとする。したがって、センサ出力端子における全信号は、
(式中、下付き添字EおよびHは電界および磁界を表わす)
および
によって記載することができる。
【0074】
2. ベクトルセンサの応答
今、図11を参照すると、それは、三次元面内の磁気および電気素子の両方を探るための複数の直交構成部品センサを示す。
【0075】
図11に示すように、(x0,y0,z0)に配置され、角度δだけ方位角を回転した三個の電気および三個の磁気直交センサを含む、ベクトルセンサについて考慮する。これらのセンサの係数Vx、Vy、およびVzは、
ここで、wは電気センサの誘導電圧と磁気センサの対応する誘導電圧の間の比を表わす。
【0076】
【0077】
一般的に、ベクトルセンサは、上述した六個の素子の一部分を含むことができ、したがって対応する空間応答ベクトルサイズは、1≦L≦6によって与えられる。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
アルゴリズム
最尤推定量
本節では、前節で示した問題について、ML推定量を導出する。温和な正則性条件下で、ML推定量は、スナップショットの数が無限大に近づくにつれて、クラーメル・ラオ下限(CRLB)に漸近的に到達する。
【0085】
【0086】
【0087】
したがって、
である。
【0088】
【0089】
(24)を(23)に代入すると、
となる。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
最後に、信号DOAのML推定量は、
によって与えられ、偏波ベクトルの推定は、対応する一般化固有ベクトル
によって与えられる。
【0094】
信号のML推定は、今、
と書くことができる。
【0095】
ML推定量は漸近的に最適であることが知られているが、それは(θ,φ)を推定するための2M次元探索手順を含む。したがって、Mが大きい場合、ML推定量は計算量的に高価になり、数値的に解く必要がある。対照的に、上で導出されたML推定量は、偏波ベクトルに対する探索手順を含まないことに注目されたい。
【0096】
MUSICおよびESPRITのような固有構造に基づく技術は、多重発信源環境で発信源の方向を推定するのに計算的に効率的である。これらのアルゴリズムは、無相関または部分相関信号を想定している。以下では、完全相関信号の存在下において固有構造に基づく技術を利用するための処理方法を提示する。
【0097】
【0098】
【0099】
方程式(13)を方程式(16)に代入することによって、アレイにおける測定モデルは、
の形に書くことができる。
【0100】
【0101】
【0102】
L種類の異なるセンサ型によって取得した情報は、信号が完全に相関されない測定空間を得るのに役立つ。我々は、発信源定位のための固有構造に基づくアルゴリズムに必要な要件である、信号部分空間全体に及ぶために、この事実を利用する。
【0103】
方程式(33)は行列形式で
と書き直すことができる。ここで、
である。
【0104】
【0105】
M次元の信号部分空間を決定するために、M≦min(L,N)であることが要求される。この要件は、空間の無相関化のために他の方法を使用することができる場合、緩和することができる。例えば、上述したフォワードバックワード平均化を適用することによって、定位することのできる完全相関信号の最大個数は二倍になる。
【0106】
【0107】
今、図12を参照すると、それは素子間の切替を示す略図である。スイッチング制御ユニット200は、センサ素子1〜4の各々に設けられたスイッチ202を制御して、信号の様々な双極子アウトレット間の切替を行なう。様々な双極子間のスイッチサイクルとして検出される信号は、その後の処理段階の準備が整った行列位置に順次記録される。この方法によるスイッチの使用は、システムの入力の側面を大幅に簡素化する。
【0108】
シミュレーション
上述した様々な実施形態に係る技術の性能を、つまり様々なベクトルセンサ型について、評価するために、シミュレーションを実行した。様々なシナリオに対し、性能を評価した。前節の主張を検証するために、コヒーレントなマルチパスから構成される信号環境をコンピュータでシミュレーションした。
【0109】
次の場合についてのシミュレーションを提示する。1)前処理無し、2)フォワードバックワード平均化(FB)、3)VSS、および4)FBとVSSの組合せ(VSS−FB)。ベクトルセンサアレイを使用した発信源定位のためのクラーメル・ラオ境界(CRB)は、A.NehoraiおよびE.Paldi、「Vector−sensor array processing for electromagnetic source localization」、IEEE Trans.on Signal Processing、第42巻、376〜398頁、1994年2月で導出された。その内容を参照によってここに組み込む。
【0110】
シミュレーションに使用したアレイは、y軸に沿って半波長の素子間間隔で配置されたベクトルセンサの12素子の線形アレイである。三種類のアレイを使用する。
a.垂直偏波センサアレイ − 各アンテナ素子は、垂直電気センサ(図3)から成る。これはスカラセンサの事例であり、VSS前処理は適用することができない。
b.デュアル偏波アレイ − ベクトルセンサは垂直および水平電気双極子(図11に従って図4でδ=0°)から成る。
c.直交偏波ベクトルセンサアレイ − ベクトルセンサは四つの直交部品つまり二つの直交電気双極子および二つの直行磁気双極子から成る(センサ番号1、2、4、および5、w=1と仮定して式(11)に従ってδ=45°)。
d.シミュレーションでは、発信源がアジマス面内にある、つまりθ=90°と仮定した。
【0111】
第一シナリオでは、DOAが4°、0°であり、楕円偏波p1=(0.707e−j60°,0.707)、p2=(0.707ej80°,0.707)の二つの等電力の完全相関発信源を検討した。ζ1=(0.707ej50°,0.707ej110°)、ζ2=(0.707ej80°,0.707)となるように、原点における二つの入射信号の位相差は、110°であった。アレイから採った標本の数は100であった。
【0112】
今、図13を参照すると、それは、様々な無相関化方法の上述したシナリオの結果を比較するグラフであり、クラーメル・ラオ境界をも示す。二乗平均誤差(RSME)対信号対雑音比(SNR)が示されている。SNRが増加するにつれて、FB−MUSICのRSMEが減少するが、それが漸近的にも効果的な推定量ではないことが分かる。前処理無しのMUSICは、完全相関発信源では予想通り失敗する。
【0113】
VH MUSICおよびFB MUSICアルゴリズムは、コヒーレントな発信源を分解する能力を持つ一方、MUSICアルゴリズム単独ではそうではないことが明らかである。グラフはまた、MLがクラーメル・ラオ境界(CRB)に達することができることをも示す。
【0114】
今、図14を参照すると、それは三種類のベクトルセンサおよび三通りの前処理に対するSNR=20dBにおけるRSME対角度η2を示すグラフである。図14における点Aは、SNR=20dBにおける図13の点である。この目的のために、上記の図13で使用したのと同じシナリオを、SNRを20dBに設定して使用し、RMSEを偏波パラメータη2の関数として描画している。上記方程式(6)を参照されたい。ここで下付き添字2は発信源の数を指す。図14から、FB MUSICがBおよびCと表記された二つの点付近で失敗することが明らかである。それは、アレイ中心における二つの信号の位相差が0または180度となる場合を反映している。アレイの出力で観察された二つの発信源の偏波が相互に比例する点Dでは、VH MUSICは失敗する。上記のシナリオでは、両方の偏波ベクトルの絶対値が同一となるように選択されたことに留意されたい。実際には、同一信号のマルチパスバージョンは通常同一振幅を持たない。偏波ベクトルが同一でない一般的な事例では、限界は存在しない。VSS MUSICとFB MUSICの組合せであるVSS FB MUSICアルゴリズムでは、FB前処理が信号共分散行列における特異性を除去するのに失敗したときに、それはVSS前処理によって除去され、その逆も然りであるので、上記問題は存在しない。VSS−FBアルゴリズムは、MLの場合と同様に、CRB分解能をもたらす。
【0115】
今、図15を参照すると、それは−30、−10、0、および20度のDOAならびに無作為に選択された偏波を持つ四つの等電力の完全相関信号を比較したグラフである。全ての信号のSNRは15dBであり、100のスナップショットをアレイから収集した。MUSICおよびFB−MUSICアルゴリズムをA型のベクトルセンサを持つアレイに適用する一方、VSSおよびMUSICおよびVSS−FB−MUSICアルゴリズムをBおよびC型のベクトルセンサのアレイに適用した。予想通り、A型のアレイを使用すると、この場合、VSS前処理が信号共分散行列の階数を、四つの発信源を解くために必要とされる4に増大することができないので、MUSICおよびFB−MUSICは信号のDOAを解くことに失敗することを観察することができる。対照的に、B型のベクトルセンサによるVSS−FB−MUSICおよびC型のベクトルセンサによるVSS−MUSICおよびVSS−FB−MUSICは、四つの完全相関信号を解くことができる。
【0116】
今、図16を参照すると、それは四つの追加のコヒーレントな発信源、つまり−70°、−50°、−30°、−10°、0°、20°、40°、および60°の方向からの八つの発信源を使用した結果を示す。図から、C型センサによるVSS FB MUSICだけが、八つのコヒーレントな発信源を解くことができることを見ることができる。他の場合は全て失敗する。C型の直交アレイを使用したベクトル感知の場合、VSS前処理により結果的に階数4の信号相関行列が得られる。追加のFB前処理段階は、信号相関行列の階数を二倍に、この場合8にする。それは八つの発信源を解くのに十分である。
【0117】
分かりやすくするため別個の実施態様で説明されている本発明のいくつもの特徴は、組み合わせて単一の実施態様にして提供することもできることは分かるであろう。逆に簡略化するため単一の実施態様で説明されている本発明の各種特徴は、別個に又は適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0118】
本発明を、その具体的実施態様とともに説明してきたが、多くの代替、変形と変更が当業技術者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲の精神と広い範囲内に入っているこのような代替、変形と変更をすべて含むものである。本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び特許願は、あたかも、個々の刊行物、特許又は特許願各々が、本願に具体的にかつ個々に参照して示されているように、本願に援用するものである。さらに、本願における任意の文献の引用もしくは確認は、このような文献が本発明に対する従来技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】二つのセルラ基地局を示し、かつ単一の基地局が二つの移動信号源/標的を追跡する場合に、本発明の好適な実施形態に係る発信源定位がスペクトルのより効率的な使用をいかに導くかを示す模式図である。
【図2】図2a〜2dは、理想的環境および現実的環境における移動基地局のカバレージパターンを示す略図である。
【図3】電気双極子アンテナの簡略図である。
【図4】直交配設された二つの電気双極子の簡略図である。
【図5】磁気双極子の簡略図である。
【図6】直交配設された二つの磁気双極子の簡略図である。
【図7】本発明の第一の好適な実施形態に従って一緒に配置された、二つの直交配設電気双極子および二つの直交配設磁気双極子を備えたアンテナユニットの簡略図である。
【図8】本発明に従って作動する、図7の素子のような素子のアレイから空間情報を得るための方法の第一の好適な実施形態を示す略図である。
【図9】本発明に従って作動する、素子のアレイから空間情報を得るための前処理の代替的な好適な実施形態を示す簡易流れ図である。
【図10】マルチパス誤差を持つ二発信源二基地局システムにおいて本発明の実施形態に係る正確な発信源定位の利点を示す簡略図である。
【図11】三次元グリッドに配置された図7のアンテナアレイユニットを示す略図である。
【図12】アンテナ素子間の切替を示す略図である。
【図13】本発明に係る方法を含む様々な無相関化方法について、一組100個のデータサンプル(スナップショット)に基づく結果を比較するグラフである。
【図14】シミュレーション結果を示すさらなるグラフであり、SNR=20dBにおけるRSME対角度η2を示す。
【図15】特に異なる偏波を有し、−30°、−15°、0°、および20°の方向から到来する、四つのコヒーレントな発信源の場合のシミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
【図16】−60°、−50°、30°、および45°の方向からの四つの追加のコヒーレントな発信源を使用して、合計で八つのコヒーレントな発信源とし、それらが本発明の実施形態ではコヒーレントであると識別することに成功したが、先行技術では成功しなかった、シミュレーション結果を示すさらなるグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備えた直交偏波アンテナ素子であって、各磁気双極子が共通位置を前記電気双極子のそれぞれ一つと実質的に共有する直交偏波アンテナ素子。
【請求項2】
前記予め定められた角度は略90°である請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項3】
前記複数の双極子は近くから三次元周囲までの電磁気信号情報を得るように配設される請求項2に記載のアンテナ素子。
【請求項4】
前記電磁気信号情報は、信号定位、信号偏波、およびデータ内容から成る群の少なくとも一つの抽出を可能にするようなものである請求項3に記載のアンテナ素子。
【請求項5】
前記電気双極子および前記磁気双極子は、同じ場所に位置される請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項6】
前記電気双極子および前記磁気双極子は各々、それらの間で少なくとも二分の一の波長間隔で位置される請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項7】
実質的にアジマス面全体から信号を検出するように配設される請求項1に記載のアンテナ素子であって、前記電気双極子および前記磁気双極子は、前記信号の偏波情報に対して相互に補足し、それによって前記素子が前記アジマス面内の実質的に全ての偏波情報を得ることを可能にするように構成されるアンテナ素子。
【請求項8】
少なくとも一つの素子は四個の双極子を備える請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項9】
前記双極子のうちの二個が電気双極子であり、前記双極子のうちの二個が磁気双極子である請求項8に記載のアンテナ素子。
【請求項10】
前記二つの電気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子の各々が前記電気双極子の一つと同一方向に向けられる請求項9に記載のアンテナ素子。
【請求項11】
複数のアンテナ素子を備えた直交偏波アンテナアレイであって、各素子が相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備え、各磁気双極子が前記電気双極子のそれぞれと共通位置を実質的に共有して成る、直交偏波アンテナアレイ。
【請求項12】
前記予め定められた角度は略90°である請求項11に記載のアンテナアレイ。
【請求項13】
前記双極子は近くから三次元周囲までの信号情報を得るように配設される請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項14】
前記信号情報は、信号源検出、信号偏波、およびデータ内容から成る群の少なくとも一つを含む請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項15】
少なくとも一つの素子の前記電気双極子および前記磁気双極子は、同じ場所に位置される請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項16】
前記素子はそれぞれ、それらの間で実質的に半分の波長間隔で位置される請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項17】
アジマス面における検出のために配設される請求項12に記載のアンテナアレイであって、前記電気双極子は前記アジマス面内の第一偏波成分を検出するように配設され、前記磁気双極子は前記アジマス面内の前記第一偏波成分に直交する第二偏波成分を検出するように配設され、それによって前記アジマス面内の実質的に全ての偏波情報を得る、アンテナアレイ。
【請求項18】
少なくとも一つの素子は四個の双極子を備える請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項19】
前記双極子のうちの二個が電気双極子であり、前記双極子のうちの二個が磁気双極子である請求項18に記載のアンテナアレイ。
【請求項20】
前記二つの電気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子は相互に直交する請求項19に記載のアンテナアレイ。
【請求項21】
双極子間の切替えのための電気的スイッチ、または前記アレイ全体のデータを収集するための素子間の切替えのためのスイッチをさらに備える請求項11に記載のアンテナアレイ。
【請求項22】
請求項12に記載のアンテナアレイであって、前記アンテナからの信号を前処理して信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、それに接続された信号前処理装置を有しており、該前処理装置は、
各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するために構成されたセンサ自己相関器と、
前記自己相関行列を平滑化し、それによって空間スペクトル情報を含む少なくとも一つの共分散行列を形成するために構成された平滑化器と、
を備えるアンテナアレイ。
【請求項23】
固有構造に基づく信号源定位技術で前記標本共分散行列を使用するために構成された発信源定位装置を接続されている請求項22に記載のアンテナアレイ。
【請求項24】
前記平滑化器はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平滑化を適用し、それによって定位できる信号源の最大個数を増大するように構成される請求項22に記載のアンテナアレイ。
【請求項25】
前記前処理装置はさらに、前記発信源定位装置で前記標本共分散行列と一緒にステアリングベクトルを使用することができる請求項23に記載のアンテナアレイ。
【請求項26】
請求項12に記載のアンテナアレイであって、信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、前記アンテナからの信号を前処理するために、それに接続された信号前処理装置を持ち、該前処理装置は、
各素子のための信号自己相関行列を形成するために、前記素子からの入力の後に接続された自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、そこから発信源定位を推定するために、固有構造に基づく推定器で使用するのに適した標本共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された平滑化器と、
を備えるアンテナアレイ。
【請求項27】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該方法が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得て、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成し、前記自己相関行列を平滑化して、そこから固有構造に基づく信号源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成することを含む方法。
【請求項28】
前記標本共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大することをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記固有構造に基づく信号定位技術で前記標本共分散行列と一緒に使用するためのステアリングベクトルを得ることをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記得ることは四つのセンサ型から行なわれる請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記四つのセンサ型は二つのそれぞれ直交する電気双極子および二つのそれぞれ直交する磁気双極子である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記四つのセンサ型は全て、単一面内で感知するように配設される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記共分散行列のデータから得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、それぞれの発信源に指向するビームを提供することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、前記着信信号はノイズ信号であり、該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、前記ノイズ干渉信号のそれぞれの発信源に対してゼロ個の指向ビームを提供することをさらに含む方法。
【請求項35】
複数の様々なセンサ型を使用して得た着信信号を処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該処理が発信源定位のためであり、該方法が、着信信号の到来角度および偏波情報を得て、前記センサのアレイ全体に対し信号自己相関行列を形成し、前記信号自己相関行列から、発信源定位を推定するための最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列を形成することを含む方法。
【請求項36】
【請求項37】
前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、それぞれの発信源への指向ビームを提供する請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記着信信号はノイズ信号であり、該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、前記ノイズ信号のそれぞれの発信源に対しゼロ個の指向ビームを提供することをさらに含む請求項35に記載の方法。
【請求項39】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該装置が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するように構成されたセンサ自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、それによって固有構造に基づく信号源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成するように構成された平滑化器とを備えて成る装置。
【請求項40】
前記平滑化器はさらに、前記共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大するように構成される請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記固有構造に基づく信号定位技術で前記共分散行列と一緒にステアリングベクトルをさらに使用することができる請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記センサ型は四つのセンサ型を含む請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記四つのセンサ型は二つのそれぞれ直交する電気双極子および二つのそれぞれ直交する磁気双極子である請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記四つのセンサ型は全て、単一面内で感知するように配設される請求項43に記載の装置。
【請求項45】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該装置が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するために構成されたセンサ自己相関器と、発信源定位を推定するために最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列が抽出可能である共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された共分散ユニットとを備えて成る装置。
【請求項46】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該処理が発信源定位のためであり、該装置が、着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各素子毎に信号自己相関行列を形成するために前記入力の後に接続された自己相関器と、発信源定位を推定するために最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列が前記自己相関行列から抽出可能である共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された共分散行列とを備えて成る装置。
【請求項47】
【請求項1】
相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備えた直交偏波アンテナ素子であって、各磁気双極子が共通位置を前記電気双極子のそれぞれ一つと実質的に共有する直交偏波アンテナ素子。
【請求項2】
前記予め定められた角度は略90°である請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項3】
前記複数の双極子は近くから三次元周囲までの電磁気信号情報を得るように配設される請求項2に記載のアンテナ素子。
【請求項4】
前記電磁気信号情報は、信号定位、信号偏波、およびデータ内容から成る群の少なくとも一つの抽出を可能にするようなものである請求項3に記載のアンテナ素子。
【請求項5】
前記電気双極子および前記磁気双極子は、同じ場所に位置される請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項6】
前記電気双極子および前記磁気双極子は各々、それらの間で少なくとも二分の一の波長間隔で位置される請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項7】
実質的にアジマス面全体から信号を検出するように配設される請求項1に記載のアンテナ素子であって、前記電気双極子および前記磁気双極子は、前記信号の偏波情報に対して相互に補足し、それによって前記素子が前記アジマス面内の実質的に全ての偏波情報を得ることを可能にするように構成されるアンテナ素子。
【請求項8】
少なくとも一つの素子は四個の双極子を備える請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項9】
前記双極子のうちの二個が電気双極子であり、前記双極子のうちの二個が磁気双極子である請求項8に記載のアンテナ素子。
【請求項10】
前記二つの電気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子の各々が前記電気双極子の一つと同一方向に向けられる請求項9に記載のアンテナ素子。
【請求項11】
複数のアンテナ素子を備えた直交偏波アンテナアレイであって、各素子が相互に対して予め定められた角度に配設された複数の電気双極子と、相互に対して前記予め定められた角度に配設された複数の磁気双極子とを備え、各磁気双極子が前記電気双極子のそれぞれと共通位置を実質的に共有して成る、直交偏波アンテナアレイ。
【請求項12】
前記予め定められた角度は略90°である請求項11に記載のアンテナアレイ。
【請求項13】
前記双極子は近くから三次元周囲までの信号情報を得るように配設される請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項14】
前記信号情報は、信号源検出、信号偏波、およびデータ内容から成る群の少なくとも一つを含む請求項13に記載のアンテナアレイ。
【請求項15】
少なくとも一つの素子の前記電気双極子および前記磁気双極子は、同じ場所に位置される請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項16】
前記素子はそれぞれ、それらの間で実質的に半分の波長間隔で位置される請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項17】
アジマス面における検出のために配設される請求項12に記載のアンテナアレイであって、前記電気双極子は前記アジマス面内の第一偏波成分を検出するように配設され、前記磁気双極子は前記アジマス面内の前記第一偏波成分に直交する第二偏波成分を検出するように配設され、それによって前記アジマス面内の実質的に全ての偏波情報を得る、アンテナアレイ。
【請求項18】
少なくとも一つの素子は四個の双極子を備える請求項12に記載のアンテナアレイ。
【請求項19】
前記双極子のうちの二個が電気双極子であり、前記双極子のうちの二個が磁気双極子である請求項18に記載のアンテナアレイ。
【請求項20】
前記二つの電気双極子は相互に直交し、前記磁気双極子は相互に直交する請求項19に記載のアンテナアレイ。
【請求項21】
双極子間の切替えのための電気的スイッチ、または前記アレイ全体のデータを収集するための素子間の切替えのためのスイッチをさらに備える請求項11に記載のアンテナアレイ。
【請求項22】
請求項12に記載のアンテナアレイであって、前記アンテナからの信号を前処理して信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、それに接続された信号前処理装置を有しており、該前処理装置は、
各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するために構成されたセンサ自己相関器と、
前記自己相関行列を平滑化し、それによって空間スペクトル情報を含む少なくとも一つの共分散行列を形成するために構成された平滑化器と、
を備えるアンテナアレイ。
【請求項23】
固有構造に基づく信号源定位技術で前記標本共分散行列を使用するために構成された発信源定位装置を接続されている請求項22に記載のアンテナアレイ。
【請求項24】
前記平滑化器はさらに、前記標本共分散行列にフォワードバックワード平滑化を適用し、それによって定位できる信号源の最大個数を増大するように構成される請求項22に記載のアンテナアレイ。
【請求項25】
前記前処理装置はさらに、前記発信源定位装置で前記標本共分散行列と一緒にステアリングベクトルを使用することができる請求項23に記載のアンテナアレイ。
【請求項26】
請求項12に記載のアンテナアレイであって、信号源定位のための空間スペクトル情報を得るために、前記アンテナからの信号を前処理するために、それに接続された信号前処理装置を持ち、該前処理装置は、
各素子のための信号自己相関行列を形成するために、前記素子からの入力の後に接続された自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、そこから発信源定位を推定するために、固有構造に基づく推定器で使用するのに適した標本共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された平滑化器と、
を備えるアンテナアレイ。
【請求項27】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該方法が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得て、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成し、前記自己相関行列を平滑化して、そこから固有構造に基づく信号源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成することを含む方法。
【請求項28】
前記標本共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大することをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記固有構造に基づく信号定位技術で前記標本共分散行列と一緒に使用するためのステアリングベクトルを得ることをさらに含む請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記得ることは四つのセンサ型から行なわれる請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記四つのセンサ型は二つのそれぞれ直交する電気双極子および二つのそれぞれ直交する磁気双極子である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記四つのセンサ型は全て、単一面内で感知するように配設される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記共分散行列のデータから得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、それぞれの発信源に指向するビームを提供することを含む請求項27に記載の方法。
【請求項34】
請求項27に記載の方法であって、前記着信信号はノイズ信号であり、該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向装置への入力として使用して、前記ノイズ干渉信号のそれぞれの発信源に対してゼロ個の指向ビームを提供することをさらに含む方法。
【請求項35】
複数の様々なセンサ型を使用して得た着信信号を処理するための方法であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該処理が発信源定位のためであり、該方法が、着信信号の到来角度および偏波情報を得て、前記センサのアレイ全体に対し信号自己相関行列を形成し、前記信号自己相関行列から、発信源定位を推定するための最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列を形成することを含む方法。
【請求項36】
【請求項37】
前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、それぞれの発信源への指向ビームを提供する請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記着信信号はノイズ信号であり、該方法は、前記共分散行列から得た発信源定位情報をビーム指向器への入力として使用して、前記ノイズ信号のそれぞれの発信源に対しゼロ個の指向ビームを提供することをさらに含む請求項35に記載の方法。
【請求項39】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該装置が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するように構成されたセンサ自己相関器と、前記自己相関行列を平滑化し、それによって固有構造に基づく信号源定位技術で使用するのに適した少なくとも一つの共分散行列を形成するように構成された平滑化器とを備えて成る装置。
【請求項40】
前記平滑化器はさらに、前記共分散行列にフォワードバックワード平均化を適用し、それによって定位することのできる信号源の最大個数を増大するように構成される請求項39に記載の装置。
【請求項41】
前記固有構造に基づく信号定位技術で前記共分散行列と一緒にステアリングベクトルをさらに使用することができる請求項39に記載の装置。
【請求項42】
前記センサ型は四つのセンサ型を含む請求項39に記載の装置。
【請求項43】
前記四つのセンサ型は二つのそれぞれ直交する電気双極子および二つのそれぞれ直交する磁気双極子である請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記四つのセンサ型は全て、単一面内で感知するように配設される請求項43に記載の装置。
【請求項45】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を前処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該前処理が発信源定位のためであり、該装置が、前記様々なセンサ型の各々から着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各センサ型毎に信号自己相関行列を形成するために構成されたセンサ自己相関器と、発信源定位を推定するために最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列が抽出可能である共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された共分散ユニットとを備えて成る装置。
【請求項46】
複数の様々なセンサ型を使用して得られる着信信号を処理するための装置であって、該信号がコヒーレントな信号を含み、該処理が発信源定位のためであり、該装置が、着信信号の到来角度および偏波情報を得るための入力と、各素子毎に信号自己相関行列を形成するために前記入力の後に接続された自己相関器と、発信源定位を推定するために最尤推定量で使用するのに適した標本共分散行列が前記自己相関行列から抽出可能である共分散行列を形成するために、前記自己相関器の後に接続された共分散行列とを備えて成る装置。
【請求項47】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【公表番号】特表2006−507752(P2006−507752A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554885(P2004−554885)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000971
【国際公開番号】WO2004/049498
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505186946)ベン グリオン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/IL2003/000971
【国際公開番号】WO2004/049498
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505186946)ベン グリオン ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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