説明

偏肉樹脂シートの製造方法

【課題】従来よりさらにアニール処理を短くして、生産性を向上させることができる偏肉樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】溶融した樹脂をダイ12からシート状に押し出す押出工程100と、押し出した溶融樹脂シート14aを型ローラ16とニップローラ18で挟み、型ローラ16の表面の加工形状を転写し、樹脂シート14を成形するシート成形工程114と、樹脂シート14を剥離ローラ20から剥離する剥離工程115と、樹脂シート14を加熱装置22で加熱しながら搬送する搬送工程と、樹脂シートの幅方向における表面の最高温度が(Tg−40)℃以上Tg以下の温度で、樹脂シート14を切断する切断工程124と、樹脂シート14を、(Tg−40)℃以上Tg℃以下の温度で連続的にアニール処理を行うアニール処理工程126と、を有することを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏肉樹脂シートの製造方法に係り、特に、各種表示装置の背面に配される導光版や各種光学素子に使用するのに好適な偏肉樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂シートの押出成形においては、Tダイから押し出された溶融樹脂シートは、冷却ロールにより冷却され、その後、取引ロールにより引き取られながら搬送部での空冷により冷却・固化し、切断機で幅方向に切断されてシート状に成形される。
【0003】
このようにして成形された樹脂シートは、成形時に、溶融させるための加熱、固化させるための冷却などの温度変化により、残留歪みが残存し易い。そのため、経時変化により形状が安定しなかったり、物性が充分に発揮されないという問題があった。
【0004】
そこで、熱可塑性樹脂成形体品の残留歪みの緩和や変形を矯正する目的で、あるいは、結晶性熱可塑性樹脂成形品の結晶化を進行させて強度を高める目的で、いわゆるアニール処理が施されている。アニール処理は温度が高いほど短時間で大きな効果が得られるが、温度が高すぎると樹脂が溶融して所望の形状の成形体を得られないため、熱可塑性樹脂の場合は樹脂のガラス転移温度Tgより20〜40℃低い温度、結晶性樹脂の場合は、実使用する最高温度より10〜20℃高い温度でアニールされるのが一般的である。
【0005】
残留歪みの緩和や結晶化の進行の際には、局部的な体積変化が起こり、成形品の形状や寸法が若干変化するため、アニール処理は主に形状や寸法精度が厳しくない用途の成形品や、ほぼ等方的な形状の成形品で行われていた。シート状の成形品などでは厚み方向と長さ・幅方向の体積変化の挙動が異なるため、反りや波打ちなどの変形が起こりやすい。また、シートのサイズが大きいときには、昇温時に面内を均一に加熱することが困難であるため、不均一な昇温速度によっても変形が起こりやすい。平板でなく厚み分布がある形状の場合は、昇温速度が厚みによって局所的にことなるため、さらに変形が起こりやすかった。
【0006】
この対策として、例えば下記の特許文献1では、平板を積層した状態で側面および上下面に固定板を設置してアニールすることにより、アニールによる変形を防止する方法が開示されている。しかしながら、この方法では対象物が平板である場合は、アニールでの変形を抑制することができるが、厚み分布のあるシートには適用することができなかった。また積層することにより、内部まで伝熱するのに時間がかかってしまうためアニール時間が長くなり、また、アニールのセッティングにも時間がかかるため生産性が著しく低下するという問題があった。
【0007】
アニール時間を短くするために、例えば、下記の特許文献2、3には、加熱手段として遠赤外線を用いて連続的にアニールする方法が開示されている。
【特許文献1】特開2005−47126号公報
【特許文献2】特公平7−112715号公報
【特許文献3】特開平11−172026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2、3に記載されている方法および装置は、従来の温風加熱方式に比べて成形品の加熱時間が飛躍的に短くなり、アニール処理時間を短くすることが可能であった。しかしながら、大量にアニール処理を行う必要がある場合は、さらにアニール処理時間を短くする必要があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、従来よりさらにアニール処理を短くして、生産性を向上させることができる偏肉樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1によれば、溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、押し出した溶融樹脂シートを型ローラとニップローラで挟み、該型ローラの表面の加工形状を該溶融樹脂シートに転写し、冷却固化することにより樹脂シートを成形するシート成形工程と、前記樹脂シートを剥離ローラから剥離する剥離工程と、前記樹脂シートを加熱装置で加熱しながら、引取ローラで引っ張り搬送する搬送工程と、前記樹脂のガラス転移温度をTgとした時、前記樹脂シートの幅方向における表面の最高温度が(Tg−40)℃以上Tg℃以下の温度で、前記樹脂シートを切断手段により所定の長さに切断する切断工程と、前記切断手段により切断された樹脂シートを、(Tg−40)℃以上Tg℃以下の温度で連続的にアニール処理を行うアニール処理工程と、を有することを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法を提供する。
【0011】
請求項1によれば、切断工程を樹脂シートの幅方向における表面の最高温度が(Tg−40)℃以上Tg℃以下の温度を有する状態で切断を行い、さらに、次工程のアニール処理工程も(Tg−40)℃以上Tg以下の温度で行っているので、切断工程後からアニール処理工程までに樹脂シートを冷却する必要がないため、アニール処理時間を減らすことができ、生産性を向上させることができる。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記アニール処理工程は、前記樹脂シートを平面状の支持部材で支持して行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2によれば、アニール処理工程時において、樹脂シートを平面状の支持部材で支持してアニール処理することで、高温で柔らかい状態の樹脂シートが自重により平らになり、樹脂シートの変形の矯正を容易に行うことができる。
【0014】
請求項3は請求項1または2において、前記樹脂シートの幅方向における厚み分布の、最厚部と最薄部の厚みの差が0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、厚み分布の最厚部と最薄部の差を上記範囲とすることにより、搬送工程およびアニール処理工程において、樹脂シートの温度調節を容易に行うことができるので、反りなどの形状変化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の偏肉樹脂シートの製造方法によれば、切断工程からアニール処理工程において、温度を維持しながら連続的に行っているため、樹脂シートを冷却する必要がないので、アニール処理の時間を短くすることができ、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に従って、本発明に係る偏肉樹脂シートの製造方法の好ましい実施の形態ついて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る樹脂シートの製造方法の全体工程図であり、図2は各工程における装置構成を示す概念図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の偏肉樹脂シートの製造方法は、主として、原料の計量や混合を行う原料工程100、溶融した樹脂を連続してシート状(帯状)に押し出す押出工程112と、押し出した溶融樹脂シート14aを冷却固化することにより樹脂シート14を成形するシート成形工程114と、樹脂シート14を剥離する剥離工程115と、剥離された樹脂シート14を次工程である切断工程124に搬送する搬送工程116と、樹脂シート14を所定サイズ(長さ・幅)に裁切断する切断工程124と、樹脂シート14を徐冷し、残留歪みの除去を行うアニール処理工程126とで構成される。
【0020】
以下、図2を参照に本発明が適用される樹脂シートの製造装置の主要な構成を説明する。
【0021】
図2に示すように、原料工程100では、原料サイロ128(又は原料タンク)及び添加物サイロ130(又は添加物タンク)から自動計量機132に送られた原料樹脂および添加物が自動計量され混合器134で原料樹脂と添加物が所定比率になるように混合される。
【0022】
本発明に適用される原料樹脂の樹脂材料としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどが挙げられる。
【0023】
また、これらの熱可塑性樹脂に光拡散粒子を含んでもよく、光拡散粒子としては、例えば、シリコーンやシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウムなどの無機粒子やポリメチルメタクリレート粒子などが挙げられる。散乱粒子を添加する場合、最初に、原料樹脂に散乱粒子を所定濃度よりも高濃度に添加されたマスターペレットが造粒機で製造される。次いで、マスターバッチ方式を好適に採用することで、散乱粒子を所定濃度よりも高濃度に添加されたマスターペレットと散乱粒子が添加されていないベースペレットとが混合器134で所定比率混合される。散乱粒子以外の添加物を添加する場合も同様である。
【0024】
原料工程100で適切に計量・混合された原料樹脂は押出工程112に送られる。
【0025】
押出工程112では、混合器134で混合された原料樹脂がホッパー136を介して押出機138に投入される。原料樹脂が押出機138により混練りされながら溶融される。押出機138は単軸式押出機及び多軸式押出機の何れでもよく、押出機138の内部を真空にするベント機能を含むものが好ましい。押出機138で溶融された原料樹脂は、スクリューポンプ又はギアポンプなどの定量ポンプ140により供給管142を介してダイ12(例えばTダイ)に送られる。ダイ12からシート状に押し出された溶融樹脂シート14aは次にシート成形工程114に送られる。
【0026】
シート成形工程114では、ダイ12から押し出された溶融樹脂シート14aが、型ローラ16とニップローラ18とで挟まれる。溶融樹脂シート14aが幅方向に厚み分布を持つ形状に成形されながら、冷却・固化される。固化した樹脂シート14は剥離ローラ20で剥離される(剥離工程)。シート成形工程114を経た樹脂シート14は次に搬送工程116に送られる。
【0027】
搬送工程116は、剥離ローラ20から剥離された樹脂シート14を切断工程124に搬送する工程である。搬送は引取ロール24により樹脂シートが引っ張れることにより行う。本発明は、搬送工程において樹脂シート14を加熱し、その余熱を利用してアニール処理工程を行っている。そのため、搬送工程において、加熱装置を用いて、樹脂シートの温度調節を行っている。
【0028】
搬送工程116により温度制御され搬送された樹脂シート14は、切断工程124に送られる。切断工程124は樹脂シート14を所定長さに切り揃える工程である。また、樹脂シート14の幅方向両端部分(耳部)を切除する工程を有することもできる。切断手段174としては、レーザーカッター、電子ビーム切断、超音波カッターなどを用いることができる。また、受け刃と押し当て刃とからなるギロチンタイプの切断手段を用いることもできる。
【0029】
また、樹脂シートに形成された形状が複数の厚肉部を有している場合には、切断工程124において、その形状の継ぎ目で搬送方向に切断する工程も有することができる。
【0030】
また、樹脂シート14は、シート成形工程114で所定の形状に成形されるが、樹脂シート14の両縁部は、その形状において中央部に比較して寸法精度が悪くなる。また、残留歪みも大きくなるので、切断することが好ましい。切断部分は、樹脂シート14の両端部各20〜30mm切断することが好ましい。樹脂シートの両縁部は図2に示すように、樹脂シートを搬送方向と直交する方向に切断する前に切断することもできるし、所定の形状にシートを切断し、アニール処理を行う前に切断することもできる。
【0031】
切断された樹脂シート14の一部は回収ボックス176で回収され、回収された樹脂は廃棄又は再利用される。
【0032】
切断された樹脂シート14は、ローラ194により駆動されるコンベアベルト196で、アニール処理工程126に搬送される。アニール処理工程は、樹脂シート14の急激な温度変化を防止するために設けられたものである。樹脂シート14に急激な温度変化を生じた場合、たとえば、樹脂シート14の表面近傍が塑性状態になっているのに、樹脂シート14の内部が弾性状態であり、この部分の硬化による収縮で樹脂シート14の表面形状が悪化する。また、樹脂シート14の表裏面に温度差を生じ、樹脂シート14に反りを生じる不具合もある。
【0033】
次に上記各工程のうち、本発明の特徴をなすシート成形工程114からアニール処理工程126の詳細について図3および図4により説明する。
【0034】
樹脂シートの製造ライン10は、押出機138によって溶融された原料樹脂をシート状に賦形するためのダイ12と、表面に偏肉形状が形成された型ローラ16と、型ローラ16に対向配置されるニップローラ18と、型ローラ16に対向配置される剥離ローラ20と、樹脂シート14の温度を制御する加熱装置22と、により構成される。
【0035】
ダイ12より押し出したシート状の溶融樹脂シート14aを、型ローラ16と型ローラ16に対向配置されるニップローラとで挟圧し、型ローラ16表面の偏肉形状の反転型を樹脂シート14に転写して成形し、樹脂シート14を型ローラ16に対向配置される剥離ローラ20に巻き掛けることにより徐冷し、歪みが除去された状態で、搬送される。
【0036】
この樹脂シートの製造において、ダイ12の樹脂シート14の押し出し速度は、0.1〜50m/分、好ましくは0.3〜30m/分の値が採用できる。したがって、型ローラ16の周速も略これに一致させる。なお、各ローラの速度ムラは、設定値に対して、1%以内に制御することが好ましい。
【0037】
ニップローラ18の型ローラ16への押し付け圧は、線圧換算(各ニップローラの弾性変形による面接触を線接触と仮定して換算した値)で、0〜200kN/m(kgf/cm)とすることが好ましく、0〜100kN/m(kgf/cm)とするのがより好ましい。
【0038】
型ローラ16の表面には、例えば、図4(a)、(b)に示される偏肉樹脂シートを成形するための反転形状が形成されている。図4は、成形後の樹脂シート14の断面図である。すなわち、樹脂シート14の裏面は平面であり、樹脂シート14の表面には、走行方向に平行な直線状の偏肉形状面が形成されている。したがって、型ローラ16の表面には、図4(a)、(b)に示す形成後の樹脂シート14の反転形状のエンドレス溝を形成すればよい。本発明の樹脂シートの製造方法により製造される偏肉樹脂シートの厚みは、樹脂シートの最厚部の厚みをDmax、最薄部の厚みをDminとしたとき、最厚部と最薄部の厚み差Dmax−Dminが0.5mm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。また、図4(b)に示すように、厚肉の部分が2ヶ所以上ある場合のピッチLは200mm以上あることが好ましく、より好ましくは400mm以上である。
【0039】
型ローラ16の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキなどのメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0040】
型ローラ表面の逆蒲鉾形状の形成は、ローラ表面の材質にもよるが、一般的にはNC旋盤による切削加工と仕上げバフ加工との組み合わせが好ましく採用できる。また、他の公知の加工方法(切削加工、超音波加工、放電加工、など)も採用できる。型ローラ表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。型ローラ16は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で回転駆動される。
【0041】
ニップローラ18は、型ローラ16に対向配置され、型ローラ16とで樹脂シート14を挟圧するためのローラである。ニップローラ18の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキなどのメッキを施したもの、セラミックス、および各種の複合材料が採用できる。
【0042】
ニップローラ18の表面は鏡面状に加工されていることが好ましく、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。このような平滑な表面とすることにより、成形後の樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる。また、ニップローラ18は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で回転駆動される。尚、ニップローラ18に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0043】
ニップローラ18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラ16との間の樹脂シート14を所定の圧力で挟圧できるようになっている。この加圧手段は、いずれも、ニップローラ18と型ローラ16との接触点における法線方向に圧力を印加する構成のもので、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段が採用できる。
【0044】
ニップローラ18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラ18の背面側(型ローラ16の反対側)に図示しないバックアップローラを設ける構成、ローラの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラの構成、及びこれらを組み合わせた構成などが採用できる。
【0045】
また、剥離ローラ20は、型ローラ16に対向配置され、樹脂シート14を巻き掛けることにより樹脂シート14を型ローラ16より剥離するためのローラで、型ローラ16の180度下流側に配置される。剥離ローラ20の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面とすることにより、成形後の樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる。そして、剥離ローラ表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。剥離ローラ20の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。剥離ローラ20は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で矢印方向に回転駆動される。尚、剥離ローラ20に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂シート14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0046】
シート成形工程114および後の搬送工程116においては、加熱装置22を設けることが好ましい。加熱装置22は、図3に示すように、型ロール近傍、剥離ローラ近傍、搬送工程の樹脂シート14の下面側および上面側に設置する。加熱装置22としては、温風や遠赤外線ヒーター、近赤外線ヒーターなどの非接触のものであれば、特に限定されず用いることができるが、加熱効率の点から遠赤外線ヒーターを用いることが好ましい。
【0047】
加熱装置22による加熱は、切断工程124における切断において、樹脂のガラス温度をTgとしたとき、樹脂シート14の幅方向における表面の最高温度が(Tg−40)℃以上の温度で切断できるように加熱を行う。より好ましくは、(Tg−30)℃以上である。また、切断工程時の温度の上限は、Tg℃以下であることが好ましく、より好ましくは(Tg−10)℃以下である。上記温度で行うことにより、次のアニール処理工程126において、その余熱を利用してアニール処理を行うことができる。
【0048】
搬送工程における加熱は、剥離ローラ20による剥離後は、まず、樹脂シート14の下面側(型がついていない面側)から加熱装置22cにより加熱することが好ましい。樹脂シート14の上面側(型がついている面側)から加熱しすぎると、その後の熱収縮で変形してしまい、所望の形状の樹脂シートを得ることができない場合があるからである。少なくとも樹脂シート14の表面温度がTg以上の時は、樹脂シートの下面側から加熱することが好ましい。
【0049】
樹脂シート14は切断工程124の後に、アニール処理工程126に送られる。アニール処理は、樹脂シート14を平らな面の上に、樹脂シートの平面側を下にして置き、熱処理を行うことにより、自重を利用して樹脂シートの変形・反りを矯正し、残留歪みを徐協する工程である。
【0050】
アニール処理工程126としては、水平方向のトンネル形状とし、トンネル内部に温度調節手段を設け、樹脂シートの冷却温度プロファイルを制御できる構成が採用できる。温度調節手段としては、複数のノズルより温度制御されたエア(温風または冷風)を樹脂シート14に向けて噴出させる構成、加熱手段(ニクロム線ヒーター、赤外線ヒーター、誘電加熱手段など)により樹脂シート14の表裏面をそれぞれ加熱する構成など、公知の各手段が採用できる。
【0051】
アニール処理工程における樹脂シート14を支持する支持部材としては、図3に示すようなスチールベルト198を用いることもでき、耐熱性の高いフッ素樹脂含浸繊維のベルトやステンレスチェーンなどを用いることもできる。支持部材が平面性を有している方が、アニール処理後の樹脂シートの平面度に反映されるため、支持部材の平面度としては樹脂シートを支持する領域において0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3mm以下である。
【0052】
アニール処理工程126の雰囲気温度(アニール温度)は(Tg−40)℃以上(Tg-10)℃以下が好ましく、より好ましくは(Tg−30)℃以上(Tg−10)℃以下である。湿度は乾燥状態であることが好ましい。また、樹脂シートの温度は、切断工程124の樹脂シートの温度である(Tg-40)℃以上を維持するように搬送工程116において加熱を行う。より好ましくは(Tg−30)℃以上である。また、上限はTg℃以下が好ましく、より好ましくは(Tg−10)℃以下である。搬送工程116において加熱した後、その余熱でアニール処理工程126を行うことにより、途中で、冷却・加熱などの工程を行う必要がないため、装置を簡略化できるとともに、アニール処理の時間も短縮することができるので、生産性良く偏肉樹脂シートの製造をすることができる。
【0053】
アニール処理後は5℃/min以下の速度で徐冷することが好ましく、2℃/min以下の速度で徐冷することが好ましい。
【0054】
また、図2、図3においては、切断工程124の後、樹脂シート14を水平方向に移動し、アニール処理工程126を行っているが、図5に示すように、切断した樹脂シート14を1枚ずつ上下方向に移動させてアニール処理工程を行うこともできる。上記構成とすることにより、樹脂シート14のサイズが大きくなった場合においても、設備を小型化することができ、設備が大型化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用される樹脂シートの製造方法のフローを説明する工程図である。
【図2】本発明が適用される樹脂シートの製造装置の概念図である。
【図3】樹脂シートの製造装置のシート成形工程からアニール処理工程を示す構成図である。
【図4】樹脂シートの形状の一例を示す断面図である。
【図5】樹脂シートの製造装置の別の態様を示す構成図である。
【符号の説明】
【0056】
12…ダイ、14…樹脂シート、14a…溶融樹脂シート、16…型ローラ、18…ニップローラ、20…剥離ローラ、22…加熱装置、24…引取ローラ、26…測定基盤、100…原料工程、112…押出工程、114…シート成形工程、115…剥離工程、116…搬送工程、124…切断工程、128…原料サイロ、130…添加物サイロ、132…自動計量機、134…混合器、136…原料樹脂がホッパー、138…押出機、140…定量ポンプ、142…供給管、174…切断手段、176…回収ボックス、194…ローラ、196…コンベアベルト、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した樹脂をダイからシート状に押し出す押出工程と、
押し出した溶融樹脂シートを型ローラとニップローラで挟み、該型ローラの表面の加工形状を該溶融樹脂シートに転写し、冷却固化することにより樹脂シートを成形するシート成形工程と、
前記樹脂シートを剥離ローラから剥離する剥離工程と、
前記樹脂シートを加熱装置で加熱しながら、引取ローラで引っ張り搬送する搬送工程と、
前記樹脂のガラス転移温度をTgとした時、前記樹脂シートの幅方向における表面の最高温度が(Tg−40)℃以上Tg℃以下の温度で、前記樹脂シートを切断手段により所定の長さに切断する切断工程と、
前記切断手段により切断された樹脂シートを、(Tg−40)℃以上Tg℃以下の温度で連続的にアニール処理を行うアニール処理工程と、を有することを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記アニール処理工程は、前記樹脂シートを平面状の支持部材で支持して行うことを特徴とする請求項1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂シートの幅方向における厚み分布の、最厚部と最薄部の厚みの差が0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−64386(P2010−64386A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233376(P2008−233376)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】