説明

停止作動型シリンダ・ヘッド・ガスケット

【課題】縁ストッパをなくし、最適化された縁ストッパ型ガスケットに可能であるより高い剛性を有する材料からビーズを形成することができるようにする、密封メカニズムを提供すること。
【解決手段】MLSガスケット120は、外側第1の周辺部210、上部第1のインサート面212および底部第1のインサート面214を有する第1のインサート層を含む燃焼密封インサートを含む。外側第1の周辺部210は、内側開口面によって囲まれる。第1のインサート層は、第1のインサート・ビーズ部220を含む。さらに、ガスケットは、上部第1の密封面170および底部第1の密封面172を有する第1の密封層を含む。底部第1の密封面170の一部分が、上部本体面160および上部第1のインサート面212のそれぞれと選択的に接触する。第1のインサート・ビーズ部220の圧縮が本体部140によって選択的に限定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、一般に多層スチール(MLS)・ガスケット(multi layersteel gasket)に関し、より詳しくはMLSガスケット用圧縮リミッタおよびMLSガスケット中に圧縮リミッタを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関には、少なくとも2つの鋼鉄製のガスケット層を有するMLSシリンダ・ヘッド・ガスケットが、好ましい選択になってきている。通常のMLSガスケットでは、層は、複数の開口部を有して形成される。より具体的には、通常のガスケットは、シリンダ穴開口部、冷却剤開口部、ボルト穴および油穴を含む。通常、ガスケットは、シリンダ穴開口部の周りには完全なビーズと、シリンダ穴開口部以外の開口部およびガスケットの外側周辺部を囲む半分のビーズとを有する。ボルト穴は、一般にガスケットの周辺部の周りに配置され、ボルトと共働してシリンダ・ヘッドとエンジン・ブロックの間にガスケットを固定する。シリンダ穴開口部、冷却剤穴および油穴は、ボルトをクランプで締め付け、半分または完全なビーズを変形させて生じた表面圧力によって密封され、それによってガスケットと接触する、シリンダ・ヘッドとエンジン・ブロックの部分の間に密封圧力が生成される。
【0003】
一般に、ボルトを締め付けたとき、ガスケットと接触するシリンダ・ヘッドとエンジン・ブロックの部分の間の表面圧力は、密封結合部の至る所で、いくらか変化する。シリンダ穴開口部の周りの密封がヘッド・ガスケットの製造において一般に第1の関心事であり、ガスケットの他の密封部分、普通は半分のビーズ部では、この設計の優先度を受け入れなければならない。エンジンの動作中、ヘッド・ガスケット位置における高い圧力および温度と動作条件によって、シリンダ・ヘッドとシリンダ・ブロックの間で変位が生じる。この変位によって密封圧力が変動し、さらに圧縮されないように阻止する面にビーズ部分が接触するまで、完全なビーズまたは半分のビーズを圧縮する恐れがある。密封圧力のこの変動は、シリンダ穴開口部を囲繞する完全なビーズに、特に広く見られる。
【0004】
実際、シリンダ・ヘッドおよびシリンダ・ブロックの嵌合面が、完全に平面である、または完全に平行であることは、ありえない。エンジンが間にガスケットを介在させずに組み立てられた場合、シリンダ・ヘッドとシリンダ・ブロックの間には隙間が存在することになる。シリンダ・ヘッドとシリンダ・ブロックの間にガスケットを取り付けて、ボルトなどのファスナ(図示せず)を、ボルト穴を貫通して取り付け、次いで締め付けてシリンダ・ヘッドおよびシリンダ・ブロックを固定したとき、応力が局在する領域が形成される。これらの隙間によって、ガスケットのボルト穴、シリンダ穴開口部および他の部分の周りに、むらのある密封応力が生じることになる。さらに、ガスケットは、エンジンの動作中、圧縮されるという高負荷を受けることになる。この高圧縮負荷によって、より大きい応力が生じ、望ましくない回復能力の減少、および/またはビーズ部分の亀裂やビーズ部分の塑性変形など、ガスケットの特性が引き起こされる恐れがある。
【0005】
MLSガスケット20の一部分を図1に示す。ガスケット20は、本体または基層(base layer)22、上層(top layer)24および底層(bottom layer)26を有する。シリンダ開口(cylinder aperture)30が、層22、24、26中に形成される。上層24および底層26はともに、シリンダ開口30を囲むビーズ32がその中に形成される。基層22は、その上に形成された浮出し縁ストッパ(embossed edge stopper)40をさらに含む。ビーズ32および浮出し縁ストッパ40は、シリンダ開口30を囲んで、シリンダ開口30の周りに、およびシリンダ・ヘッド(図示せず)とエンジン・ブロック(図示せず)の間に密封圧力をかける。
【0006】
動作の際、ガスケット20では、シリンダ・ヘッドとエンジン・ブロックの間の相対的な上下運動中、縁ストッパ40がビーズ32に隣接する上層24に衝撃を加えるので、エンジン中に部分的に応力が導入される。具体的には、シリンダ開口30に隣接して縁ストッパが配置されているので、アルミニウムが使用されているときは特に、シリンダ・ヘッドおよびエンジン・ブロックがともに歪むことになる。シリンダ穴の望ましくない歪みによって、エンジン性能およびリング密封能力が影響を受ける恐れがある。アルミニウムのシリンダ・ヘッドの中に形成されたバルブ・シートが歪められたところでは、著しい応力に直面する。鋼鉄のバルブ・シートが、アルミニウムのシリンダ・ヘッド内にしばしば挿入されるので、バルブ・シートとシリンダ・ヘッドの間の結合が、縁ストッパ40などのストッパによって応力が追加して加えられることによって、望ましくないことに劣化する恐れがある。また、厳しいまたは通常の動作中、縁ストッパ40などの浮出しが損なわれる、または一部分で平らにされる恐れがあり、浮出しによって、ビーズを望ましくない完全に圧縮されることからもう守ることができないため、ビーズが早く破壊されることに繋がる恐れがある。
【0007】
さらに、MLSガスケットの層すべては、通常被覆ステンレス鋼である。ガスケット層上の被覆は、ガスケット性能を高めるため使用され、通常、ステンレス鋼に施すのは、炭素鋼と比較したとき、より困難でコストがかかる。
【0008】
回復能力が望ましくないが減少したガスケット、および/または内燃機関(図示せず)のシリンダ・ヘッドとシリンダ・ブロックの間に介在させたガスケット中のシリンダ開口を囲繞する密封ビーズ部など、一部分における特性が変化したガスケットについて評価が行われた。評価した多くのガスケットの中で、望ましくない回復能力の減少、および/またはビーズ部分の特性の減少は、縁ストッパを有するときより大きかった。したがって、縁ストッパをなくし、最適化された縁ストッパ型ガスケットに可能であるより高い剛性を有する材料からビーズを形成することができるようにする、密封メカニズムを提供する必要がある。都合のよいガスケットによって、ガスケット層すべての表面領域の被覆に関連するコストおよび困難も軽減することができる。
【発明の要約】
【0009】
外部周辺部と、上部本体面と、下部本体面とを有する金属本体部含むMLSガスケットを一実施形態によって提供する。上部本体面および下部本体面は、全体的にその間に金属本体部の本体厚さを画定する。ガスケットは、金属本体部中に形成され、内側開口面によって画定される、少なくとも1つのシリンダ開口も含む。ガスケットは、外側第1の周辺部と、上部第1のインサート面と、底部第1のインサート面とを有する第1のインサート層を有する燃焼密封インサートを追加として含む。外側第1の周辺部は、内側開口面によって取り囲まれ、第1のインサート層は、第1のインサート・ビーズ部を含む。ガスケットは、さらに、上部第1の密封面および底部第1の密封面を有する第1の密封層を含む。底部第1の密封面の一部分は、上部本体面および上部第1のインサート面のそれぞれと選択的に接触している。第1のインサート・ビーズ部の圧縮は、本体部によって選択的に限定される。
【0010】
ここで添付図面を参照して、好ましい例示的な実施形態を詳細に示す。図面にはいくつかの実施形態が示されているが、本発明をよりよく例示し説明するために、図面は必ずしもスケール通りではなく、いくつかの外観は、誇張し、削除し、あるいは部分的に切断することがある。さらに、ここで述べる実施形態は、網羅するように、またはそうではなく、クレームを図面に示し、以下の詳細な記述に開示した、正確な形状および構成に制限や限定するようには企図されていない。具体的には、図示平面および本明細書の用語「平面」の使用は、ガスケット層の本体および表面の全体的に平坦な部分を包含するように企図されている。ガスケット層の本体および表面の一部分が、完全に平坦でないことがあり、層のビーズ部(あったとしても)が一般に平坦ではなく、ビーズ部の一部分およびガスケットの残された部分は、本明細書で述べるように、一般に平面を画定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
MLSガスケット120の一実施形態を図2に示す。ガスケット120は、ボルト穴124など複数の開口122、エンジンのシリンダ・ヘッド(図示せず)およびエンジン・ブロック(図示せず)の対応する開口と位置合わせされるシリンダ穴開口部126、および油穴128によって部分的に画定される。ガスケット120は、さらに、外側周辺部130によって画定される。エンジンを完全に組み立てたとき、以下で議論するように、ガスケット120は、シリンダ・ヘッドとシリンダ・ブロックの間に配置されて隙間を埋め、開口122の周りを密封し、ボルト(図示せず)をボルト穴124内で締め付けてガスケット120を圧縮する。ガスケット120によって生じる密封は、ガスケット120の開口122の間で、および外側周辺部130において漏れを防止するように働く。
【0012】
図3で最もよく分かるように、ガスケット120は、第1の密封層すなわち第1の金属層136、第2の密封層すなわち第2の金属層138、ガスケット本体部すなわち本体部140、およびインサート・アセンブリ(insert assembly)144を少なくとも有する多層のガスケットである。例示の実施形態では、インサート・アセンブリ144は、第1のインサート部150および第2のインサート部152を含む。本体部140は、層136、138に比べて、相対的に厚い金属層である。本体部140は、第1の金属層136と第2の金属層20の間に介在する。第1および第2の金属層136、138は、本体部140に比較して相対的に薄く、そしてガスケットの耐用年数にわたって、回復などの所望の性能要求を満たすために、高いばね定数(spring rate)および剛性を有する相対的に強固な金属である、301ステンレス鋼から構築することが好ましい。本体部140は、409ステンレス鋼など、それほど強固でない金属から、ある場合には亜鉛メッキされた、またはメッキされていない低炭素鋼さえから形成することが好ましい。金属層136、138、140は、それぞれ、図2で最もよく分かるように、ガスケット120中に組み込まれたとき、各金属層136、138、140の穴および開口すべてが位置合わせされるように、その中に形成される対応する開口122を含む。
【0013】
本体部140は、全体的に第1の平面P1を画定する上部本体面160、全体的に第2の平面P2を画定する下部本体面162、およびシリンダ開口166を画定する内側本体開口面164によって画定される。本体厚さTBは、一般に平面P1とP2の間の間隔によって画定される。
【0014】
第1の金属層136は、全体的に平面P3を画定する上部第1の密封面170と、全体的に平面P4を画定する底部第1の密封面172と、第1の内側開口面176によって画定される第1の内側密封開口174と、第1の外部周辺部178(図2)と、第1のビーズ部180とを含む。第1の金属層136は、最大厚さが平面P3と平面P4の間で一般に測定されるTA1である。
【0015】
第2の金属層138は、全体的に平面P5を画定する上部第2の密封面190と、全体的に平面P6を画定する底部第2の密封面192と、第2の内側開口面196によって画定される第2の内側密封開口194と、第2の外部周辺部198(図2)と、第2のビーズ部200とを含む。第2の金属層138は、最大厚さが平面P5と平面P6の間で一般に測定されるTA2である。
【0016】
第1のインサート部150は、外側第1の周辺部210と、全体的に平面P7を画定する上部第1のインサート面212と、全体的に平面P8を画定する底部第1のインサート面214と、第1の内側インサート面218によって画定される第1の内側インサート開口216と、第1のインサート内側縁222と第1のインサート外側縁224を分離する第1のインサート・ビーズ部220とを含む。第1のインサート部150は、最大厚さが平面P7と平面P8の間で一般に測定されるTI1である。
【0017】
第2のインサート部152は、外側第2の周辺部230と、全体的に平面P9を画定する上部第2のインサート面232と、全体的に平面P10を画定する底部第2のインサート面234と、第2の内側インサート面238によって画定される第2の内側インサート開口236と、第2のインサート内側縁242と第2のインサート外側縁244を分離する第2のインサート・ビーズ部240とを含む。第2のインサート部152は、最大厚さが平面P9と平面P10の間で一般に測定されるTI2である。
【0018】
一実施形態では、第1の金属層136、第2の金属層138、本体部140、第1のインサート部150、第2のインサート部152は、それぞれが実質的に一定の厚さを有する。
【0019】
第1のインサート部150の第1のインサート内側縁222および第1のインサート外側縁224は、全体的に平面P5と平面P6によって画定され、一方、ビーズ部220の上部第1のインサート面212および底部第1のインサート面214は、平面P5または平面P6いずれとも一般に共面でない。すなわち、ビーズ部220の上部第1のインサート面212は、平面P5と共面でなく、およびそれと平行でないことがあり、第1のインサート・ビーズ部220の底部第1のインサート面214は、平面P6と共面でなく、およびそれと平行でないことがある。理解されるように、ビーズ部220の上部第1のインサート面212および底部第1のインサート面214の一部分は、ガスケット120の動作中または装着中、平面P5とP6に平行であっても、および/または共面であってもよい。
【0020】
ビーズ部180、200、220、240は、シリンダ開口126を囲み、本体部140より剛性の高い材料から構築することが好ましい。また、ビーズ部180、200、220、240は、一般に平面P1と直角で軸方向に位置合わせされる。
【0021】
図示するように、周辺部210、230とシリンダ開口166の間にある隙間Gが識別できなくても、周辺部210、230は、その間に隙間Gを有してシリンダ開口166によって囲まれる。また図示するように、第1のビーズ部180の底部第1の密封面172の一部分は、選択的に上部第1のインサート面212と接触する。
【0022】
一実施形態では、第1のインサート層厚さTI1と第2のインサート層厚さTI2の総合厚さは、本体厚さTBより薄い。ガスケット120がシリンダ・ヘッド(図示せず)とエンジン・ブロック(図示せず)の間に配置される前の、取り付けられていない状態のガスケット120を図3に示す。ガスケット120が、シリンダ・ヘッドとエンジン・ブロックの間に取り付けられたとき、本体部140の上部本体面160が、第1の金属層136の底部第1の密封面172と全体的に完全に接触し、本体部140の下部本体面162が、第2の金属層138の上部第2の密封面190と全体的に完全に接触することが好ましい。
【0023】
動作の際、本体部140の厚さTBが厚さTI1およびTI2の総合厚さより厚いため、厚さTBによって、第1のインサート・ビーズ部220および第2のインサート・ビーズ部240が完全に圧縮されないように防止する。さらに、本体部140が平坦化および損傷を受けないように、より広い接触面面積をもたらすので、本体部140は、縁ストッパ40(図1に示す)など浮出し部のような、望ましくない部分が容易に平坦化されない。したがって、本体部140は、インサート・アセンブリ144のストッパとなりながら、インサート・アセンブリ144を保持する。
【0024】
第1の金属層136、第2の金属層138、第1のインサート部150、および第2のインサート部152は、それぞれ単一の完全なビーズ180、200、220、240によって示されているが、シリンダ開口126を所望のように密封するために、半分のビーズを含み、任意の数のビーズを積み重ねることができる。
【0025】
ガスケット120の代替実施形態をガスケット320として図4に示す。ガスケット320は、ボルト穴324などの複数の開口322、エンジンのシリンダ・ヘッドCHおよびシリンダ・ブロックCBの対応する開口と位置合わせされるシリンダ穴開口部326、および油穴328によって部分的に画定される。ガスケット320は、さらに、外側周辺部330によって画定される。エンジンが完全に組み立てられたとき、以下に議論するように、ガスケット320は、シリンダ・ヘッドCHとシリンダ・ブロックCB(図5)の間に配置されて、隙間を埋め開口322の周りを密封し、そしてボルト(図示せず)をボルト穴324内で締め付けてガスケット320を圧縮する。ガスケット320によって施される密封は、開口322の間で、およびガスケット320の外側周辺部330において漏れを防止するように働く。
【0026】
図4、図4A、図5で最もよく分かるように、ガスケット320は、ガスケット本体部すなわち本体部340とインサート・アセンブリ344とを有する多層ガスケットである。図5に示す実施形態では、インサート・アセンブリ344は、第1のインサート部350、第2のインサート部352、第3のインサート部354、および第4のインサート部356を含む。本体部340は、部分350、352、354、356と比較して相対的に厚い金属層である。インサート部350、352、354、356は、回復など所望の性能要求をガスケットの耐用年数にわたって満たすため、高いばね定数および剛性を有する比較的強固な金属、301ステンレス鋼から構築することが好ましい。本体部340は、409ステンレス鋼など、それほど強固でない金属から、またはいくつかの場合、亜鉛メッキされた、またはメッキされていない低炭素鋼からでも形成することが好ましい。
【0027】
本体部340は、全体的に第1の平面P11を画定する上部本体面360、全体的に第2の平面P12を画定する下部本体面362、およびシリンダ開口366を画定する内側本体開口面364によって画定される。本体厚さDBは、一般に平面P11と平面P12の間の間隔によって画定される。
【0028】
第1のインサート部350は、外側第1の周辺部370と、全体的に平面P13を画定する上部第1のインサート面372と、全体的に平面P14を画定する底部第1のインサート面374と、第1の内側インサート面378によって画定される第1の内側インサート開口376と、第1のインサート内側縁382と第1のインサート外側縁384を分離する第1のインサート・ビーズ部380とを含む。第1のインサート部350は、最大厚さが平面P13と平面P14の間で一般に測定されるDI1である。
【0029】
第2のインサート部352は、外側第2の周辺部390と、全体的に平面P15を画定する上部第2のインサート面392と、全体的に平面P16を画定する底部第2のインサート面394と、第2の内側インサート面398によって画定される第2の内側インサート開口396と、第2のインサート内側縁402と第2のインサート外側縁404を分離する第2のインサート・ビーズ部400とを含む。第2のインサート部352は、最大厚さが平面P15と平面P16の間で一般に測定されるDI2である。
【0030】
第3のインサート部354は、外側第3の周辺部410と、全体的に平面P17を画定する上部第3のインサート面412と、全体的に平面P18を画定する底部第3のインサート面414と、第3の内側インサート面418によって画定される第3の内側インサート開口416と、第3のインサート内側縁422と第3のインサート外側縁424を分離する第3のインサート・ビーズ部420とを含む。第3のインサート部354は、最大厚さが平面P17と平面P18の間で一般に測定されるDI3である。
【0031】
第4のインサート部356は、外側第4の周辺部430と、全体的に平面P19を画定する上部第4のインサート面432と、全体的に平面P20を画定する底部第4のインサート面434と、第4の内側インサート面438によって画定される第4の内側インサート開口436と、第4のインサート内側縁442と第4のインサート外側縁444を分離する第4のインサート・ビーズ部440とを含む。第4のインサート部356は、最大厚さが平面P19と平面P20の間で一般に測定されるDI4である。
【0032】
本体部340、第1のインサート部350、第2のインサート部352、第3のインサート部354および第4のインサート部356は、それぞれ全体的に厚さが一定である。図5に示すように、第1のインサート部350、第2のインサート部352、第3のインサート部354および第4のインサート部356は、明確にするために、ガスケット320が取り付けられたとき、シリンダ・ブロックCB、シリンダ・ヘッドCH、第1のインサート部350、第2のインサート部352、第3のインサート部354および第4のインサート部356が、所望のように接触するはずであるが、分解組立図で示されている。
【0033】
第1のインサート部350の第1のインサート内側縁382および第1のインサート外側縁384は、全体的に平面P13および平面P14によって画定され、一方、第1のインサート部350の上部第1のインサート面372および底部第1のインサート面374は、一般に平面P13または平面P14のいずれとも共面でない。すなわち、第1のインサート部350の上部第1のインサート面172は、平面P13と共面でなく、かつ平行でなくともよく、第1のインサート部350の底部第1のインサート面374は、平面P14と共面でなく、かつ平行でなくともよい。
【0034】
インサート・ビーズ部380、400、420、440は、シリンダ開口326を囲み、本体部340より剛性の高い材料から構築することが好ましい。また、インサート・ビーズ部380、400、420、440は、全体的に平面P11と直角で軸方向に位置合わせされる。
【0035】
図4A、図5に示すように、周辺部370、390、410、430とシリンダ開口366の間にある隙間Gが識別できないが、周辺部370、390、410、430は、その間に隙間Gを有してシリンダ開口366によって囲まれる。図4Aで最もよく分かるように、第1のインサート部350の少なくとも外側周辺部370は、少なくとも1つの輪郭成形タブ470をさらに含むことができる。第1のインサート部350の半径方向厚さは、一般に平面P13に平行に測定し、輪郭成形タブ470を含む、第1のインサート部350の一部分において、輪郭成形タブ470を含まない、第1のインサート部350の一部分におけるより大きい。それゆえに設けると、輪郭成形タブ470は、組み立てのための位置合わせガイドになる。さらに、輪郭成形タブ470は、ガスケット320の取り付け中、本体部340に溶接し、ガスケット320によってインサート・アセンブリ344を保持し、本体部340、インサート・アセンブリ344、およびシリンダ・ヘッドのずれを防止することができる。1つまたは複数の輪郭成形タブ470は、インサート部350、352、354、356のいずれか、またはすべてから延在することができる。
【0036】
第1のインサート部350、第2のインサート部352、第3のインサート部354、および第4のインサート部356は、それぞれ単一の完全なビーズ380、400、420、440によって示されているが、シリンダ開口326を所望のように密封するために、半分のビーズを含み任意の数のビーズを積み重ねることができる。
【0037】
ガスケット320がシリンダ・ヘッドCHとエンジン・ブロックCBの間に配置された後、取り付けられた状態のガスケット320を図5に示す。ガスケット320がシリンダ・ヘッドとエンジン・ブロックの間に取り付けられたとき、本体部340の上部本体面360は、シリンダ・ヘッドCHと全体的に完全に接触し、本体部340の下部本体面362は、エンジン・ブロックCBと全体的に完全に接触することが好ましい。
【0038】
動作の際、本体部340の厚さDBが厚さDI1、DI2、DI3、DI4の総合厚さより厚いので、厚さDBによって、第1のインサート・ビーズ部380、第2のインサート・ビーズ部400、第3のインサート・ビーズ部420および第4のインサート・ビーズ部440が完全に圧縮されないように防止する。さらに、本体部は、縁ストッパ40などの浮出しのような一部分が容易に平坦化されない。したがって、本体部340は、インサート・アセンブリ344のストッパとなりながら、インサート・アセンブリ344を保持する。
【0039】
他の開口122、322は、その周りで密封する、インサート・アセンブリ144、344に類似のインサート・アセンブリを有することができる。インサート部350、352、354、356は、単一の完全なビーズ380、400、420、440によって示されているが、所望に応じて、部分的なまたは複数のビーズを設けることができる。
【0040】
例示の実施形態では、インサート部350、352、354、356は、いずれも厚さが約0.0080インチ(0.2mm)であり、本体部340は、本体厚さTBが約0.040インチ(1mm)である。
【0041】
さらに、ガスケット320は、ステンレス鋼でない鋼を本体部340に使用することが可能であり、一方ステンレス鋼は、インサート部350に使用され、通常すべてステンレス鋼から構築されるガスケット20と比較して、費用が節約される。本体部140、340を高力低合金(HSLA;high strength low alloy)炭素鋼から形成し、インサート・アセンブリ144、344を比較的強固なステンレス鋼から形成することが好ましい。さらに、本体部分150、350へ炭素鋼を使用すると、ステンレス鋼のガスケット層への被覆に関連する費用が軽減される。ガスケット20のビーズ部の剛性と比較して、より剛性の高いインサート・アセンブリ144、344を使用すると、密封圧力がより高くなり、回復がより大きくなる。
【0042】
上記の記述は、本発明の方法およびシステムの例示の実施形態を示し述べるためだけに提示されたものである。網羅的であるように、または開示されたいかなる正確な形態にも本発明を限定するようには企図されていない。本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更を実施することができ、同等物をその要素の代わりに用いることができることは、当業者に理解されるはずである。さらに、基本的な範囲から逸脱せずに、本発明の教示に特定の状況または材料を適合させるため、多くの修正を実施することができる。したがって、本発明を実施するための最良の形態として考えられた、開示された特定の実施形態に、本発明が限定されないものとし、本発明は、請求項の範囲に含まれる実施形態をすべて含むものと企図される。本発明は、その精神または範囲から逸脱せずに、具体的に述べ示したようにではなく、別の方法で実施することができる。本発明の範囲は、添付の請求の範囲のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ガスケットの断片的な部分の拡大部分断面図である。
【図2】面製図法が隆起部分に適用された、一実施形態によるMLSシリンダ・ヘッド・ガスケットの平面図である。
【図2A】明確にするためにビーズ部の細部を省略した、図2の円で囲まれた部分2Aの拡大部分切欠図である。
【図3】図2のライン3−3に沿って取られた拡大部分断面図である。
【図4】面製図法が隆起部分に適用された、一実施形態によるMLSシリンダ・ヘッド・ガスケットの平面図である。
【図4A】明確にするためにビーズ部の細部を省略した、図4の円で囲まれた部分4Aの拡大図である。
【図5】明確にするために層を分離した、図4のライン5−5に沿って取られた拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0044】
20 MLSガスケット
22 本体、基層
24 上層
26 底層
30 シリンダ開口
32 ビーズ
40 浮出し縁ストッパ
120 MLSガスケット
122 開口
124 ボルト穴
126 シリンダ穴開口部、シリンダ開口
128 油穴
130 外側周辺部
136 第1の金属層
138 第2の金属層
140 本体部
144 インサート・アセンブリ
150 第1のインサート部
152 第2のインサート部
160 上部本体部
162 下部本体部
164 内側本体開口面、内側本体面
170 上部第1の密封面
172 底部第1の密封面、上部第1のインサート面
174 第1の内側密封開口
176 第1の内側開口面
178 第1の外部周辺部
180 第1のビーズ部
190 上部第2の密封面
192 底部第2の密封面
194 第2の内側密封開口
196 第2の内側開口面
198 第2の外部周辺部
200 第2のビーズ部
210 外側第1の周辺部
212 上部第1のインサート面
214 底部第1のインサート面
216 第1の内側インサート開口
218 第1の内側インサート面
220 第1のインサート・ビーズ部
222 第1のインサート内側縁
224 第1のインサート外側縁
230 外側第2の周辺部
232 上部第2のインサート面
234 底部第2のインサート面
236 第2の内側インサート開口
238 第2の内側インサート面
240 第2のインサート・ビーズ部
242 第2のインサート内側縁
244 第2のインサート外側縁
320 ガスケット
322 複数の開口
324 ボルト穴
326 シリンダ穴開口部、シリンダ開口部
328 油穴
330 外側周辺部
340 ガスケット本体部、本体部
344 インサート・アセンブリ
350 第1のインサート部
352 第2のインサート部
354 第3のインサート部
356 第4のインサート部
360 上部本体面
362 下部本体面
364 内側本体開口面
366 シリンダ開口
370 外側第1の周辺部
372 上部第1のインサート面
374 底部第1のインサート面
376 第1の内側インサート開口
378 第1の内側インサート面
380 第1のインサート・ビーズ部
382 第1のインサート内側縁
384 第1のインサート外側縁
392 上部第2のインサート面
394 底部第2のインサート面
396 第2の内側インサート開口
398 第2の内側インサート面
400 第2のインサート・ビーズ部
402 第2のインサート内側縁
410 外側第3の周辺部
412 上部第3のインサート面
414 底部第3のインサート面
416 第3の内側インサート開口
418 第3の内側インサート面
420 第3のインサート・ビーズ部
422 第3のインサート内側縁
424 第3のインサート外側縁
430 外側第4の周辺部
432 上部第4のインサート面
434 底部第4のインサート面
440 第4のインサート・ビーズ部
442 第4のインサート内側縁
444 第4のインサート外側縁
470 輪郭成形タブ
G 隙間
P1 第1の平面
P2 第2の平面
P3、P4、P5、P6、P7、P8、P9、P10 平面
P11 第1の平面
P12 第2の平面
P13、P14、P15、P16、P17、P18、P19、P20 平面
TB 本体厚さ
TI1、TI2、TA1、TA2 最大厚さ
DI1、DI2、DI3、DI4 最大厚さ
DB 本体厚さ
CH シリンダ・ヘッド
CB シリンダ・ブロック、エンジン・ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
MLSガスケットであって、
金属本体部であって、外部周辺部と、上部本体面と、下部本体面とを有し、前記上部本体面および前記下部本体面が、その間に前記金属本体部の本体厚さを全体的に画定する、金属本体部と、
前記金属本体部中に形成され、内側開口面によって画定される、少なくとも1つのシリンダ開口と、
燃焼密封インサートであって、外側第1の周辺部と、上部第1のインサート面と、底部第1のインサート面とを有する第1のインサート層を含み、前記外側第1の周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、前記第1のインサート層が第1のインサート・ビーズ部を含む、燃焼密封インサートと、
第1の密封層であって、上部第1の密封面および底部第1の密封面を有し、前記底部第1の密封面の一部分が前記上部本体面および前記上部第1のインサート面のそれぞれと選択的に接触し、前記第1のインサート・ビーズ部の圧縮が前記本体部によって選択的に限定される、第1の密封層とを含む、MLSガスケット。
【請求項2】
前記インサートが、外側第2の周辺部と、上部第2のインサート面と、底部第2のインサート面とを有する第2のインサート層を含み、
前記外側第2の周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、
前記第2のインサート層が第2のインサート・ビーズ部を含み、
前記第2のインサート・ビーズ部の圧縮が前記本体部によって選択的に限定される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
さらに、上部第2の密封面および底部第2の密封面を有する第2の密封層を含み、
前記上部第2の密封面の一部分が前記下部本体面および前記底部第2のインサート面のそれぞれと選択的に接触し、
前記第2の密封層が第2のビーズ部を含む、請求項2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記第1のインサート層および前記第2のインサート層の総合最大厚さが本体厚さより小さい、請求項2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記燃焼密封インサートが、さらに、第3のインサート層および第4のインサート層を含み、
前記第3のインサート層が外側周辺部と、上部密封面と、底部密封面とを含み、
前記外側周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、
前記第3のインサート層が第3のインサート・ビーズ部を含み、
前記第4のインサート層が外側周辺部と、上部密封面と、底部密封面とを含み、
前記外側周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、
前記第4のインサート層が第4のビーズ部を含む、請求項2に記載のガスケット。
【請求項6】
前記第1のインサート・ビーズ部、前記第2のインサート・ビーズ部、前記第3のインサート・ビーズ部および前記第4のインサート・ビーズ部が、一般に軸方向で一般に前記第1の平面に直角に位置合わせされる、請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記インサートの平均剛性が前記本体部の平均剛性より低い、請求項1に記載のガスケット。
【請求項8】
前記第1の密封層が第1のビーズ部を含み、
前記第1のビーズ部、前記第1のインサート・ビーズ部および前記第2のインサート・ビーズ部が一般に軸方向で前記シリンダ開口の軸に平行に位置合わせされる、請求項1に記載のガスケット。
【請求項9】
前記本体部が前記第1のインサート・ビーズ部用のストッパのみを形成する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項10】
MLSガスケットであって、
金属本体部であって、外部周辺部と、全体的に第1の平面を画定する上部本体面と、全体的に第2の平面を画定する下部本体面とを有し、前記上部本体面および前記下部本体面が、その間に前記金属本体部の本体厚さを画定する、金属本体部と、
前記金属本体部中に形成され、内側開口面によって画定される、少なくとも1つのシリンダ開口と、
燃焼密封インサートであって、第1のインサート層および第2のインサート層を含み、前記第1のインサート層が外側周辺部、上部密封面および底部密封面を含み、前記外側周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、前記第1のインサート層が第1のインサート・ビーズ部を含み、前記第2のインサート層が外側周辺部、上部密封面および底部密封面を含み、前記外側周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、前記第2のインサート層が第2のビーズ部を含み、前記第1のインサート・ビーズ部および前記第2のインサート・ビーズ部の圧縮が前記本体部によって選択的に限定される、燃焼密封インサートとを含む、MLSガスケット。
【請求項11】
さらに、上部第1の密封面および底部第1の密封面を有する第1の密封層を含み、
前記底部第1の密封面の一部分が前記上部本体面および前記上部第1のインサート面のそれぞれと選択的に接触する、請求項10に記載のガスケット。
【請求項12】
前記第1のインサート・ビーズ部および前記第2のインサート・ビーズ部が、一般に軸方向で一般に前記第1の平面に直角に位置合わせされる、請求項10に記載のガスケット。
【請求項13】
前記燃焼密封インサートが、さらに、第3のインサート層および第4のインサート層を含み、
前記第3のインサート層が外側周辺部と、上部密封面と、底部密封面とを含み、
前記外側周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、
前記第3のインサート層が第3のインサート・ビーズ部を含み、
前記第4のインサート層が外側周辺部と、上部密封面と、底部密封面とを含み、
前記外側周辺部が前記内側開口面によって囲まれ、
前記第4のインサート層が第4のビーズ部を含む、請求項10に記載のガスケット。
【請求項14】
前記第1のインサート・ビーズ部、前記第2のインサート・ビーズ部、前記第3のインサート・ビーズ部および前記第4のインサート・ビーズ部が、一般に軸方向で一般に前記第1の平面に直角に位置合わせされる、請求項13に記載のガスケット。
【請求項15】
前記第1のインサート層、前記第2のインサート層、前記第3のインサート層および前記第4のインサート層の総合最大厚さが本体厚さより小さい、請求項13に記載のガスケット。
【請求項16】
さらに、第1の外部周辺部によって少なくとも部分的に画定される輪郭成形タブを含み、
前記第1のインサート層の半径方向厚さが、一般に前記第1の平面に平行に測定され、前記輪郭成形タブを含む、前記第1のインサート層の一部分において、前記輪郭成形タブを含まない、前記第1のインサート層の一部分におけるより大きい、請求項10に記載のガスケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−39181(P2008−39181A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−181240(P2007−181240)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(500187063)デーナ、コーポレイション (23)
【Fターム(参考)】