説明

健康な腎臓のバイオマーカ

本発明は、腎機能のモニタリングおよび腎不全、とりわけ、移植片拒絶と関連するものの予後および診断において有用な新規の健康な腎臓のバイオマーカを提供する。本発明はさらに、移植腎臓学における個別療法の評価および設計を支援するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生来の、または移植された腎臓の健康な腎臓の生理学的能力に対する尿バイオマーカに関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓の能力の高感度尿バイオマーカに対する探索には、様々な疾患の初期徴候を検出するための臨床的手段としての潜在的価値のために、重要な努力がなされてきた。統計学的に意味のある患者集団全体にわたるサンプルスクリーニングを可能にするESi−MS、DESI−MS、MALDI−TOF−MS、SELDI−TOF−MS、DIOS−MSまたはLC−MSなどの強力なプロテオミクス技術(proteomic techniques)の最近の急激な出現により、腎不全の特有の尿バイオマーカの発見および同定に至っている(ジハジ(Dihazi)ら,Expert Rev Proteomics.2007年2月;4(1):39−50)。
【0003】
臨床腎臓学では、移植患者の管理の成功には最も適切な療法の早期検出および実行が要求される。有効な診断方法としては、生物化学パラメータおよび生検が挙げられるが、同種移植片不全の唯一の非侵襲性バイオマーカは非感受性の、非特異的クレアチニンであり、これは早期の線維化変化を検出することができない。
【0004】
研究努力は疾患の尿バイオマーカに焦点が合わされてきた。古典的な尿プロテオーム研究は、不偏(unbiased)プロテオミクスアプローチは、急性尿細管間質性腎同種移植片拒絶と関連する尿タンパク質ピークを検出することができることを報告した。質量分析によるこれらのタンパク質ピークの同定は、これらが全て、おそらく損傷した近位尿細管細胞を反映するβ2−ミクログロブリンの切断形態に由来することを証明した(シャウブ(Schaub)ら,2005.Am.J.Transplant.5,729−738)。多くの研究がこの傾向に従い、2〜3例を挙げると以下の通りである:ジハジ(Dihazi)ら,Clin Chem.2007 Sep;53(9):1636−45;オバール(O’valle)ら,Transplant Proc.2007 Sep;39(7):2099−101;ペング(Peng)ら,J Int Med Res.2007 Jul−Aug;35(4):442−9;国際公開第07/121922号パンフレットおよび国際公開第07/104537号パンフレット)。公表された尿バイオマーカ研究の数は急激に増加している。ほとんどの研究が可溶性尿タンパクフラクションを調べており、腎疾患および泌尿生殖器疾患における潜在的なバイオマーカの同定に焦点を当てている。それらには、急性腎損傷、急性腎臓同種移植拒絶反応、糸球体疾患ならびに腎臓、膀胱および前立腺の癌の研究が含まれる。いくつかの研究により2〜3のバイオマーカタンパク質が同定されているが、多くの場合、報告されたバイオマーカは同定されていないままである(オリオルダン(O’Riordan)ら,Am J Transplant 2007;7:930−40;シャウブら,2005.Am.J.Transplant.5,729−738)。
【0005】
これらの努力にもかかわらず、現在のところ、健康な腎機能に対する標準はいずれの研究の対象にもなっていない。従来、健康な腎機能は、患者が疾患または疼痛の徴候を示さない場合に想定される。健康な腎機能をモニタすることは、初期の障害を識別するのを助け得るが、最も重要なことに、臨床医に、移植腎患者を管理するための強力な手段を提供することになるであろう。
【0006】
健康な腎機能を有する個体サンプル中に存在し、疾患において急激に減少する2〜3の尿タンパク質が知られている。最も顕著な例は、ウロモジュリンとしても知られているタム−ホースフォール糖タンパク質(THタンパク質)である(腎臓インターナショナル(Kidney International),Vol.16(1979),pp.279−289;JBC Vol.265,No.34,12月5日,pp.20764−20789,1990)。THタンパク質は一般に尿中に最も豊富にあるタンパク質であり、除去されなければ、その存在は、他のタンパク質の検出を妨害する可能性がある(ピシトクン(Pisitkun)ら,2004.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,13368−13373)。これは、還元剤の使用および加温により脱重合させることができる。ヒトTHタンパク質は高分子量凝集体を形成し、いくつかの作用物質により約100kDaのより小さな分子量のサブユニットに解離させることができる(スティーブンソン(Stevenson)ら,Biochem J 116:791−796,1970)。このように、尿バイオマーカ発見の分野では、尿サンプルからウロモジュリンを除去することは、それに診断価値が備わっていないので、一般的に用いられている。しかしながら、ウロモジュリンは、その抗炎症特性のために、ある関心を引いている。日本国特開2002−125673号公報は、新規ウロモジュリンヒト遺伝子および抗炎症薬としてのその使用を開示する。
【0007】
他の豊富な尿タンパク質はキニン類である。ミンドロイユ(Mindroiu)ら,J Biol Chem.1986年6月5日;261(16):7407−11)は、イヌ、ラットおよびヒトの新鮮尿中に排泄されたキニン類の型を、高性能液体クロマトグラフィを用いて比較した。彼等は、ヒト尿中において、キニン類の内容は大体、12%のブラジキニン、30%のLys−ブラジキニン、2%のdes−Arg1−ブラジキニン、および41%の、Lys−ブラジキニンと同一であるが、4位にプロリンの代わりにアラニンを有している、その時には未知のキニンであることを見出した。半精製ヒト低分子量キニノーゲンと共にインキュベートしたヒト尿カリクレインは総キニン類の76%をLys−ブラジキニンとして、7%をブラジキニンとして、17%を[Ala3]Lys−ブラジキニンとして放出した。このように、lys−ブラジキニンは、尿中のキニンの最も豊富な型であるが、その心血管病態生理における用途にもかかわらず、腎臓病態生理のための診断価値は、尿中におけるその存在から引き出されていない。
【0008】
移植腎機能の適応度を陽性と断定する標準は、初期の、そうでなければ検出不可能な線維化変化を検出する場合に臨床医にとって非常に重要である。
【0009】
新規LC−MS技術を利用し、尿バイオマーカ発見のためのそれらの革新的な戦略により、本発明者等は新規天然尿ペプチド類を同定してきた。それらは全て、疾患において尿濃度の減少を示し、これにより、それらは健康な腎臓能力のバイオマーカとして見なされる。そのため、本発明は医師に、健康な腎臓生理を想定するのではなく、診断するための臨床的手段を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第07/121922号パンフレット
【特許文献2】国際公開第07/104537号パンフレット
【特許文献3】特開2002−125673号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ジハジ(Dihazi)ら,Expert Rev Proteomics.2007年2月;4(1):39−50)
【非特許文献2】シャウブら,2005.Am.J.Transplant.5,729−738
【非特許文献3】ジハジら,Clin Chem.2007 Sep;53(9):1636−45
【非特許文献4】オバールら,Transplant Proc.2007 Sep;39(7):2099−101
【非特許文献5】ペングら,J Int Med Res.2007 Jul−Aug;35(4):442−9
【非特許文献6】オリオルダンら,Am J Transplant 2007;7:930−40
【非特許文献7】腎臓インターナショナル(Kidney International),Vol.16(1979),pp.279−289
【非特許文献8】JBC Vol.265,No.34,12月5日,pp.20764−20789,1990
【非特許文献9】ピシトクンら,2004.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101,13368−13373
【非特許文献10】スティーブンソンら,Biochem J 116:791−796,1970
【非特許文献11】ミンドロイユら,J Biol Chem.1986年6月5日;261(16):7407−11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は健康な腎臓生理の尿バイオマーカに関する。このように、本発明は健康な腎機能をモニタする生化学的手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の1つの観点は、健康な腎機能の生理的バイオマーカとして使用するための、SEQ ID NO(配列番号):1〜9およびそれらの組み合わせを含む群から選択される単離した尿ペプチド類を含む。
【0014】
別の観点では、本発明は、健康な腎機能の生理的バイオマーカとしてのSEQ ID NO:10を含む単離した尿ペプチドの使用を含む。
【0015】
腎機能は、移植腎の機能を含む。使用は、慢性移植腎症を含む腎症の予後および/または診断における使用を含む。
【0016】
別の観点では、本発明は、a)被験体から体液サンプルを収集する工程と、b)正確な定量化(quantization)のための内標準を添加する工程と、c)収集したサンプルを濃縮し、脱塩する工程と、d)プロテオミクス技術によりペプチド量を分析する工程と、e)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびそれらの組み合わせを含むペプチド類の量を定量化する工程と、f)工程e)で得られた値を対照値と比較する工程と、g)工程f)で集めた比較値を腎臓の生理的能力の評価または診断において適用する工程と、を含む腎臓生理をモニタし、予測し、および診断するための方法を提供する。
【0017】
サンプルは尿を含む。被験体は腎移植治療患者を含む。内標準は、分析するペプチドと同じ配列を有するが、炭素、窒素および水素の安定な同位体を組み込んでいる同位体標識ペプチドを含む。プロテオミクス技術はESI−MS、DESI−MS、DIOS−MS、SELDI−MS、MALDI−MS、LC/MS、タンデムLC−MS/MSおよび任意の他のハイスループット質量分析に基づく技術ならびに/または抗体に基づく技術、例えばELISA、タンパク質/ペプチドアレイ、抗体アレイまたはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
本発明の別の観点は、腎病態患者の治療の治療効果のモニタリングにおける腎臓生理をモニタし、予測しおよび診断するための方法の使用を含む。
【0019】
本発明の最終観点は、SEQ ID:1〜10を含む群の少なくとも1つのペプチドに結合し、および/またはそれを認識することができる少なくとも1つの分子を含む、個体の体液サンプルにおいて腎症をインビトロで診断するためのキットを含む。
【0020】
サンプルは尿を含む。結合する分子は、必要に応じて、標識形態の、または酵素に結合された抗体を含む。抗体は固体支持体に固定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】CADの尿バイオマーカの同定のための無標識定量戦略を示す図であり、代表的な基準ピークイオンクロマトグラムである。
【図1B】CADの尿バイオマーカの同定のための無標識定量戦略を示す図であり、示したサンプル群全体のm/z 642.6のイオンの代表的な抽出イオンクロマトグラム(XIC)である。
【図2A】教師なし(unsupervised)階層クラスタ分析は病理学的表現型に従い、個々の患者を分類する。図はCADサブタイプ(CAARおよびIF/TA)および対照標本(SRTおよびcont)からの定量的尿ポリペプチドデータに基づき、全データセットを考慮した、階層クラスタツリーを示す。
【図2B】教師なし(unsupervised)階層クラスタ分析は病理学的表現型に従い、個々の患者を分類する。図はCADサブタイプ(CAARおよびIF/TA)および対照標本(SRTおよびcont)からの定量的尿ポリペプチドデータに基づき、より変動の小さな500分子イオンを考慮した、階層クラスタツリーを示す。
【図3A】ウロモジュリンおよびキニン由来の特定のペプチド類は、CADの診断のためのバイオマーカである。示したペプチド類のイオン強度は、サンプル群内の平均値に対応する。値は平均±SDを表す。
【図3B】ウロモジュリンおよびキニン由来の特定のペプチド類は、CADの診断のためのバイオマーカである。示した強度は、個々の患者内の単一タンパク質由来のペプチド類全ての平均に対応する。値は平均±SDを表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、疾患の診断において臨床医を支援し、どの治療法が患者にとってより適切であり得るかについて指図する新規尿バイオマーカを同定するための臨床プロテオミクスにおける協調的努力の結果である。
【0023】
本発明者らは、定量的プロテオミクスのために新規LC−MS技術に基づき革新的無標識戦略を設計した。バイオマーカ発見に特異的なこの戦略は、無制限のサンプルの比較を可能にし、このため、統計学的に有効な結果が得られた(図1)。32個体のコホートにおける尿サンプルの分析から、本発明者らは、健康な腎臓能力のバイオマーカとして適任である9つの新規の天然由来の尿ペプチド類を同定した。というのも、それらの存在は、生検が間質性線維症および尿細管萎縮を反映する個体において際だって減少するが、クレアチニンおよび糸球体濾過速度の変化、あるいはそうでなければ、任意の特定の原因の証拠が示されなかったからである。表1は、対照群を含む研究コホートの臨床パラメータを示す。図1Bは異なる段階の疾患における尿バイオマーカに対する代表的な例を示す。
【0024】
そのため、本発明の第1の観点は、ヒト尿から単離した9つの新規ペプチドバイオマーカを含む。前記バイオマーカの配列は本明細書で開示したSEQ.ID NO:1〜9に対応する。
【0025】
本発明の関連では、「単離したペプチド」という用語は、ヒト身体から分離された体液中に含まれるペプチド、とりわけ尿などの排泄流体中のペプチドを示す。
【0026】
それらの研究の過程で、本発明者らは、これらのペプチドのいくつかをヒトTHタンパク質およびキニノゲンの両方のフラクションとして同定した。しかしながら、これらの天然由来のペプチド誘導体の存在の証拠が以前には示されていなかった。さらに、全長タンパク質は腎症において臨床的または診断価値を有していない。
【0027】
【表1】

【0028】
例外として、SEQ ID NO:10を含む尿ペプチドは、以前に同定されており、Lys−ブラジキニンに対応する。これは、高血圧に対するバイオマーカとして、心血管疾患および癌の発症および進行において臨床的用途を見出している。驚いたことに、本発明者により証明されるように、このペプチドは健康な腎機能の生理的バイオマーカとしての新規臨床用途を有する。
【0029】
このように、本出願において記載されている本発明の単一の発明概念は「健康な腎臓バイオマーカ(Healthy Kidney Biomarker)」を含み、これらの中には、全く新規なものもあり、産業上の利用において新規なものもある。したがって、本発明の別の観点は、健康な腎機能の生理的バイオマーカとしてのSEQ ID NO:10を含む単離した尿ペプチドの使用を含む。
【0030】
機能適応度のモニタリングは、腎移植患者において特に臨床的に興味深いので、本発明の別の観点は、腎臓同種移植片の腎機能をモニタする際のバイオマーカとしての、SEQ ID NO:1〜10またはそれらの組み合わせを含む群からの、単離した尿ペプチド類のいずれかの使用を含む。
【0031】
診断に到達し、または個別のより適した療法を決定するのに内科医をよりよく支援するために、本発明の別の観点は、腎症の予後および/または診断におけるSEQ ID NO:1〜10またはそれらの組み合わせを含む群からの単離した尿ペプチド類の使用を含む。特に、腎症が慢性移植腎症の場合である。
【0032】
図3A(最上パネル)は、ウロモジュリンに由来するペプチド類が、他の群よりも対照患者において著しく豊富であることを示す(対照対慢性活性抗体媒介性拒絶反応(CAAR)、p<0.0001)。キニノーゲンに由来するペプチド類のうち、ブラジキニンペプチド類(2つの異なる荷電状態を有する)が、慢性移植不全(CAD)患者よりも、安定腎移植(SRT)および対照においてより豊富であった(図3、中央パネル)。個々の患者におけるウロモジュリンおよびキニン類由来の特定のペプチド類の発現の検査により、ウロモジュリンペプチド類が、CAD群よりも、対照およびSRTにおいて一貫してより豊富であることが明らかになった(図3B)。ウロモジュリン由来の全てのペプチド類の平均強度を考慮することにより、より大きな感度が達成された。実際に、この値は、全てのCAD患者の94%(17/18)を100%の特異性で正確に同定することができるであろう(対照群のいずれも低レベルのウロモジュリンペプチドを有しなかった、図3B)。このように、バイオマーカ類の組み合わせは、本発明者らが同定した単一のバイオマーカのいずれよりも高い識別力を有し、この事実は、ここで同定したバイオマーカ混合物を使用すると、早期CAD診断の特異性および感度を増加させることになるであろうことを示している。
【0033】
このように、本発明によれば、ウロモジュリンおよびブラジキニンに由来するペプチド類は、健康な腎臓の特異的バイオマーカであり、その存在を使用して、CAD患者と影響されない個体を区別することができる。
【0034】
本発明の健康な腎臓のバイオマーカの使用により、腎臓学において患者をモニタするための臨床プロトコルを提供することが望ましい。そのため、本発明の別の観点は、a)被験体から体液サンプルを収集する工程と、b)正確な定量化のための内標準を添加する工程と、c)収集したサンプルを濃縮し、脱塩する工程と、d)プロテオミクス技術によりペプチド量を分析する工程と、e)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびそれらの組み合わせを含む群から選択したペプチド類の量を定量化する工程と、f)工程d)で得られた値を対照値と比較する工程と、g)工程e)で集めた比較値を腎臓の生理的能力の評価または診断において適用する工程と、を含む腎臓生理をモニタするための方法を含む。
【0035】
技術を定量的なものにするために、方法は、試料を収集した後、工程のいずれかを実行する前に内標準を添加することを含む。好ましい実施形態では、内標準は定量化される分析物ペプチドと同じ配列を有するが、炭素、窒素および水素の安定な同位体を組み込んでいる同位体標識されたペプチドである。これらの同位体は放射性ではないが、その臨床適用で役立つように、絶対単位(例えば、mol/lまたはmg/ml)での正確な定量化を可能にする。
【0036】
本発明の方法は、非侵襲性患者モニタリングプロトコルにおける使用にとりわけ適切である。その結果、本発明の好ましい実施形態は、体液サンプルが尿である本明細書で記載した方法を含む。さらに、本発明の方法は、腎移植の分野で特に有用である。したがって、別の好ましい実施形態は、被験体が腎移植治療患者である、本明細書で記載した方法を含む。
【0037】
本発明のペプチドが尿中で同定された時点で、本発明の方法を実行する際にいくつかのプロテオミクス技術を適用し得る。このように、本発明の好ましい実施形態は、ESI−MS,DESI−MS,DIOS−MS,SELDI−MS,MALDI−MS,LC/MS,タンデムLC−MS/MSおよび任意の他のハイスループット質量分析に基づく技術ならびに/または抗体に基づく技術、例えばELISA、タンパク質/ペプチドアレイ、抗体アレイまたはそれらの組み合わせを含む群から選択されるプロテオミクス技術を含む方法を含む。
【0038】
腎移植を受けた患者は、同種移植片適応度を助け、改善するための他の特定の物質を時折、補う一定の免疫抑制療法を受ける。しばしば、移植後の治療は、個々の患者に対し、再検討され、個別化されるべきである。臨床医がより良好な適応療法を決定するのを支援する際には、本発明の方法の好ましい実施形態は、個体の治療の治療効果をモニタする場合におけるその使用を含む。
【0039】
患者の腎機能の連続モニタリングでは、迅速な、容易に適用可能な方法が望ましい。したがって、本発明の観点は、SEQ ID 1〜10を含む群の少なくとも1つのペプチドに結合し、および/またはそれを認識することができる少なくとも1つの分子を含む、個体の体液サンプルにおける腎症のインビボトロ診断のためのキットを含む。
【0040】
本発明の好ましい実施形態は、使用サンプルが尿であり、結合分子が、必要に応じて標識され、または酵素に結合されている抗体であるキットを含む。そのような実施形態は固体支持体を含む実質的な構成要素をさらに含んでもよく、この場合、SEQ ID 1〜10およびそれらの組み合わせからなる群より選択される配列に結合し、認識することができる抗体が、前記固体支持体に付着され、または固定される。いくつかの実施形態では、固体支持体は尿溶液中に浸漬させるのに適した試験紙である。
【0041】
さらに、本発明のキットは、検出試薬、緩衝液または装置を含んでもよい。好ましい実施形態では、キットは検出アッセイ法を実行するのに必要な要素を全て含む。例えば、全ての対照、アッセイ法を実行するための使用説明書、ならびに分析および結果を提示するために必要なハードウエアまたはソフトウエアが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、キットは、試験紙形式におけるアッセイ法を含む。キットは、臨床状況、研究室状況または患者の家庭状況で使用するために設計してもよい。
【実施例】
【0043】
<実施例1>
[研究コホート(study cohort)]
32人の個体が、本研究に含まれており、18人の患者がCADの臨床特徴および病理組織特徴を有し、14人が対照であった。患者は2つの群、1)間質性線維症および尿細管萎縮(IF/TA)を有するが特定の病因のいずれの証拠も有さない8人の患者(5人の男性および3人の女性)(IF/TA群)、2)管周囲毛細血管喪失ありまたはなしの移植糸球体症(TG)およびIF/TA、および内弾性組織の複製、管周囲毛細血管内での広汎性C4d沈着およびドナー特異抗体の存在のない動脈内の線維性内膜肥厚を含む形態的特徴により規定される慢性活性抗体媒介性拒絶反応(CAAR)を有する10人の患者(7人の男性および3人の女性)(CAAR群)に分類された。
【0044】
移植レシピエントは全て、カルシニューリン阻害剤、ミコフェノール酸モフェチルおよびプレドニゾンを用いた、免疫抑制治療を受けた。年齢、性別、糖尿病罹病期間、動脈圧、肥満度指数、およびGFRに関してIF/TAとCAAR群の間には有意の差はなかった(表1)が、病理組織基準に従いこれらのCADサブ群に分類した(表2)。
【0045】
対照を2つの群に分類した:1)安定な腎移植レシピエント:タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルおよびプレドニゾンを用いた、免疫抑制治療後の初めての移植腎の5人の生体ドナーレシピエント、および2)健康な対照:正常血圧(収縮期血圧<130mmHgおよび拡張期血圧<80mmHg)で、糖尿病、虚血性心疾患、脳卒中または末梢血管疾患の病歴のない9人のボランティア。表1はCAD患者および対照の基本特性を示す。研究は、バロセロナにおける病院診療所の機関審査委員会により承認され、患者および対照のどちらも尿の収集および分析に対するインフォームドコンセントを受けた。
【0046】
[組織病理]
移植生検は、臨床的適応のために、超音波誘導を用いて18−ゲージ針により取得した2つのコアから構成された。パラフィン切片を調製し、ヘマトキシリン−エオシン、トリクロム、過ヨウ素酸−シッフおよび過ヨウ素酸−シッフ−メテナミン銀で染色した。生検を分析し、分子研究の結果が分かっていない病理学者によりバンフ(Banff)分類に従いスコア化した(27)。TGは、糸球体基底膜(GBM)の二重輪郭に基づく光学顕微鏡検査により診断し(28)、免疫蛍光研究により裏付けたが、この研究では、メサンギウムIgMおよび/またはC3または陰性の免疫蛍光所見が示された。TG生検における管周囲毛細血管炎は、最近のバンフアップデートに従い定量基準に従い類別した(27)。C4d染色を全ての生検において凍結組織を使用して実施した。マウスモノクローナル抗ヒトC4d 100lL(クイデルコーポレーション(Quidel Corporation)カルフォルニア州サンディエゴ)、続いて蛍光抗血清(CyTM2−結合アフィニピュア(AffiniPure)ヤギ抗マウスIgG、ジャクソンイミュノリサーチ研究所(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc)、ペンシルベニア州ウエストグローブ)を凍結切片に添加した。
【0047】
純粋IF/TAを有する全ての患者において、CAARまたは移植糸球体症(TG)の証拠はなく、C4dは陰性であった。CAAR群の全ての患者において、平均の糸球体二重輪郭(CG)スコアは1.89であり、C4dは陽性であった。慢性活性T−細胞媒介性拒絶反応の証拠は全てのサンプルにおいて、この群から除外した。表2はIF/TAおよびCAAR群におけるバンフスコアをまとめたものである。
【0048】
[サンプル調製および精製]
50mlの朝一番の尿を腎生検直前に収集した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(コンプリートミニ(Complete Mini)、ロシェ(Roche)、ドイツのマンハイム)を添加し、標本を直ちにドライアイス中で凍結させ、−80℃で分析まで保存した。尿サンプルを濃縮し、本質的には記載されている通り(12)の、わずかに改良した固定相として逆相HLBオアシス(Oasis)94226(ウォーターズ(Waters)、マサチューセッツ州ミルフォード)を用いた固相抽出により無機塩から分離した。簡単に説明すると、カートリッジを10mlの100%アセトニトリル(ACN)で調整し、10mlの0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)/5%ACNと平衡化させた。1mlのサンプル(0.1%のTFAでpH3に酸性化、5%ACNの最終濃度)を添加した後、カートリッジ床を10mlの0.1%TFA/5%ACNで洗浄し、ペプチドをその後、2mlの0.1%TFA/60%ACNで溶離した。有機塩類からの分離は、下記の通り、磁性ビーズ(ダイナビーズ(Dyna beads)、インビトロゲン(Invitrogen))を使用した強カチオン交換(SCX)によるものとした。ビーズを1M NaCl/50mM 重炭酸アンモニウムpH8.8で調整し、添加溶液(0.1%TFA/20%ACN)で平衡化させた。逆相工程からのサンプルの適用後、結合したペプチドを3度、添加溶液で洗浄した。溶離には、20%ACN中の500mM酢酸アンモニウムを使用した。溶離したペプチド類をスピードバック(SpeedVac)で乾燥させ、−80℃で保存した。
【0049】
[質量分析]
乾燥ペプチド類を10mlの0.1%TFA/2%ACNに溶解し、この溶液の10%を、ナノESIイオン源が備えられたQ−TOFプレミア(Premier)質量分析計(ウォーターズ/マイクロマス(Waters/Micromass))とラインで接続されたナノフロー超高圧液体クロマトグラフ(アクィティ(Acquity)、ウォーターズ/マイクロマス)から構成されるLC−MS/MSシステムで分析した。分離は、BEH 100μm×100mmカラム(ウォーターズ/マイクロマス)において、400μL/分の流速で、約3,000psiの動作背圧を用いて実行した。勾配は、2%Bから30%Bまで30分とし、続いて80%Bでの5分洗浄、2%Bでの7分平衡化工程とした。溶媒Aは0.1%ギ酸を含むLC−MSグレード水(オプティグレード(Optigrade)、LGC、UK)とし、溶媒Bは0.1%ギ酸を含むLC−MSグレードACN(オプティグレード、LGC、UK)とした。LC−MS/MS実験では、500msの調査MS走査後、3回のMS/MS走査(それぞれ、500ms)とし、MS調査走査における複数の荷電イオンが15カウント/sを超えた場合、これらはデータ依存モードで始動させた。LC−MS分析は、調査1s走査(MS/MS機能なし)を取得することにより、そのほかの点では、LC−MS/MS実験に対するものと同じLCおよびMSパラメータを用いることにより実行した。
【0050】
[データ解析]
(定量化)
MS/MSのために選択したイオンのリストを、無標識LC−MSデータ解析の自動化のために社内で書かれたプログラムであるペスカル(PESCAL)に送り込んだ(4)。その後、ペスカルは検出したイオンのm/zおよび保持時間(tR)を使用し個々の尿サンプルのLC−MS実行全体にわたり抽出イオンクロマトグラム(XIC)を構築した。XIC構築のためのウィンドウはそれぞれ、m/zおよびtRに対し25ppmおよび2分であった。これらのXICの強度値(ピーク面積および高さ)を、正規化ならびに統計的操作および解析のためにエクセルファイルで解析させた。ピーク強度値は、1つのサンプル内の全てのピークの平均強度に対し、その後、サンプル全体にわたる個々のペプチドイオンの平均に対して正規化させた。
【0051】
(統計的分析)
教師なしクラスタ分析では、正規化イオン強度値を対数変換させ、クラスタリングのためのクラスタ(エイセイン(Eisein)ソフトウエア)(29)およびクラスタリング結果の視覚化のためのツリービュー(TreeView)(エイセインソフトウエア)に送り込んだ。
【0052】
ノンパラメトリックマンホイットニー(Mann−Whitney)検定を使用して、LC−MS結果の統計的有意性を推測した。これらの分析を市販の統計パッケージ(プリズム、Prism)を用いて実施した。
【0053】
臨床化学検査の統計的有意性はスチューデントt検定により推測した。ポリペプチドイオン類の相対レベルもまた、判別分析(シスタット(Systat)、バージョン10.2、カルフォルニア州リッチモンド、USA)を用いて分析し、疾患状態間で最もよく識別するこれらのポリペプチド類の組み合わせを同定した。各サンプルに対する予測スコアを計算するために、同じポリペプチドイオン類を使用してロジスティック回帰モデルもまた、構築し、これにより、これらの値に基づく受診者動作特性(ROC)曲線を構築することができた(30)。
【0054】
(MS/MSデータ分析)
検出したペプチド類のサブセットの同一性を、マスコット(MASCOT)検索エンジンを用いて、国際タンパク質指数(International Protein Index)(IPI)ヒト(Human)データベース(バージョン3v.44)に対してに対しMS/MSスペクトルを検索することにより決定した。検索は親およびフラグメントイオンのそれぞれに対し50ppmおよび100ppmに限定した。酵素制限は選択しなかった。ヒットは、それらが統計的有意性しきい値を超えた場合(マスコットによる返送)有意であると考え、少なくとも2つのペプチド類がタンパク質エントリに一致した。
【0055】
[結果]
(患者)
本発明者らは、CADのバイオマーカとしてとして機能することができる尿ペプチド類の同定を目的とした。このため、14の対照と、はっきりとした臨床特徴を有する18の標本をこの研究に含めた(表1)。上記でより詳細に記載したように、病理組織パラメータにより患者群は2つのサブグループ:IF/TAおよびCAARに分類された(表2)。
【0056】
(分析法)
CADの有用なバイオマーカを同定する確率を増加させるために、本発明者らは、可能な限り包括的にかつ正確に、サンプル全体にわたって尿ペプチド類を定量することを目的とした。このために、本発明者らは、LC−MS/MS実験において以前検出されている、個々のペプチドイオン類の溶離プロファイルをLC−MSの実行において使用することから構成される分析法を使用した。そのため、本発明者らは、データ依存LC−MS/MSにより尿中で以前に検出された(が、必ずしも同定されていない)それらのイオンを(LC−MSにより)定量するだけであったので、これは標的定量戦略である。定量可能な尿ペプチド類のリストを作成するために、本発明者らは同じ患者群からの未消化尿ペプチド類を貯えておき、それらをLC−MS/MSにより分析した。これらの分析は3度実施し(サンプル群1つあたり3度)、前に報告されているように、各複製LC−MS/MS実験は除外リストとして前のLC−MS/M実験において同定されたペプチド類のリストを含む。これらの実験により、MS/MSに対する6250の多価イオンの選択が得られた。これは、フィルタリングされていないリストであり、これらのイオンの多くが1を超えるサンプルプールで検出されたことに注意すべきである。定量は、個々のサンプルのLC−MSデータから(プールなし)、データ依存LC−MS/MSによる定量のために選択された6250イオンの標的定量により実行された。
【0057】
この分析法がどのように働くかを実証するために、図1Aは、IFTA、CAAR、SRTおよび対照ドナーの尿から抽出したペプチド類の代表的なLC−MSイオンクロマトグラムを示す。これらのクロマトグラムのピークの各々は、いくつかのポリペプチド類の溶離により形成され、そのため、それらだけを使用して個々のペプチド類を定量することはできない。定量のために、本発明者らは、個々のペプチドの溶離プロファイル(すなわち、抽出イオンクロマトグラム、XIC)から得られたクロマトグラムの曲線下面積を計算し、その一例を図1Bに示す。このアプローチを実際的なものにするために、本発明者らは社内コンピュータプログラムを使用して、これらのXICの作成を自動化した。プログラムはまた、それらの強度を計算する(4)。図1Bで示した例示的な実施例では、m/z 642.6の分子イオンがIFTAに比べ、CAAR尿中で約5倍豊富に存在し、SRTおよび対照サンプルと比較した場合少なくとも15倍であった(図1B)。
【0058】
(無標識定量LC−MSデータの階層的クラスタリングは、基礎となる病理学的表現型により尿ペプチドームを分類する)
上記のように、この戦略を使用して、本発明者らは分析において、フィルタリング前に約6250イオン、および複製物を除去した後約2300を同定し、これらの全てに対し、本発明者らはXICを取得し、14対照および18CAD標本の全体にわたってそれらの強度を計算した。図2Aは、同定したペプチド類全ての強度を用いて、教師なし階層的クラスタリングに基づき、対照およびCAAR患者を分離でき、SRTとIFTAはいくらかの重なりを示したことを示す。データをフィルタリングして500少ない様々なペプチドイオンを含むようにすると、同様のクラスタリングパターンが得られた(図2Bおよび2Cを比較されたい)が、SRTおよび対照は図2Bで示した分析においてCAARから完全に分離され(500ペプチドのみを考慮)、一方、全てのペプチドイオンを分析に含ませた場合1人のSRT患者がCAAR/IFTAクラスタに入れられた(図2A)。さらにフィルタリングして、階層的クラスタリングに対しより少ない数のペプチド類を含むようにすると、図2Bのように同様の結果が得られた(データ示さず)。これらの結果から、CAD患者の尿中のポリペプチド組成は、SRTおよび対照被験体の組成とは著しく異なり、我々の無標識定量的LC−MS戦略はこれらの差を検出することができることが示される。
【0059】
(CADの診断のための特定のバイオマーカとしてのウロモジュリンおよびキニン類由来の特定のペプチド類の同定)
これらの標本間での分子の差をより詳細に特徴づけるために、本発明者らはマスコットデータベースサーチャにより同定することができる、サンプル全体にわたるペプチド類のサブセットの強度を比較した。図3A(最上パネル)は、ウロモジュリン由来のペプチド類は、他の群よりも対照患者において著しく豊富であった(対照対CAAR、p<0.0001)ことを示す。キニノーゲン由来のペプチド類のうち、ブラジキニンペプチド類(2つの異なる荷電状態を有する)は、SRTおよび対照において、CAD患者よりも豊富であった(図3、中央パネル)。個々の患者におけるウロモジュリンおよびキニン類由来の特定のペプチド類の発現の検査から、ウロモジュリンペプチド類が対照およびSRTにおいてCAD群よりも、一貫してより豊富であった(図3B)。対照とCAD群との間で最もよく識別される個々のペプチドイオン類は、m/z 638のウロモジュリンおよびm/z 1003のキニノーゲン由来のものであり、対照とCAD群患者との84%(14/18)の正確な識別が得られた。ロジスティック回帰分析では同じイオン類の選択が得られた。LRスコアから構築したROC曲線は、0.82の曲線下面積(AUC)値を提供した。
【0060】
ウロモジュリン由来のペプチド類全ての平均強度を考慮することにより、より大きな感度が達成された。実際、この値は、100%の特異性で全てのCAD患者の94%(17/18)を正確に識別することができた(対照群のいずれも低レベルのウロモジュリンペプチド類を有さなかった、図3B)。このように、バイオマーカ類の組み合わせは、本発明者らが同定した単一のバイオマーカのいずれよりも、大きな識別力を有し、この事実が、ここで同定したバイオマーカ混合物を使用すると、CAD診断の特異性および感度を増加させるであろうことを示している。
【0061】
他のペプチド類もこれらの標本で同定することができるが、これらは識別情報を提供しなかった。一例として、図3A(一番下のパネル)は、β−ミクログロブリン由来のペプチド類がサンプル群全体にわたり大体同じ量で存在したことを示す。このように、我々のデータは、ウロモジュリンおよびブラジキニン類由来のペプチド類が健康な腎臓の特異的なバイオマーカであり、それらの存在を使用してCAD患者および影響されない個体を識別することができるであろうことを示す。
【0062】
上記ペプチド類は、CADの診断に有用であるが、CAARとIFTA群の間の識別はできないであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康な腎機能の生理的バイオマーカとして使用するための、SEQ ID NO:1〜9およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、単離した尿ペプチド類。
【請求項2】
健康な腎機能の生理的バイオマーカとしてのSEQ ID NO:10を含む単離した尿ペプチドの使用。
【請求項3】
腎同種移植片の腎機能をモニタする場合における、バイオマーカとしての請求項1および2のいずれかに記載の単離した尿ペプチド類およびそれらの組み合わせの使用。
【請求項4】
腎症の予後および/または診断における、請求項1および2のいずれかに記載の単離した尿ペプチド類およびそれらの組み合わせの使用。
【請求項5】
前記腎症は慢性移植腎症を含む、請求項4記載の使用。
【請求項6】
a)被験体から体液サンプルを収集する工程と、
b)正確な定量化のための内標準を添加する工程と、
c)前記収集したサンプルを濃縮し、脱塩する工程と、
d)プロテオミクス技術によりペプチド量を分析する工程と、
e)SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびそれらの組み合わせを含む群から選択されたペプチド類の量を定量化する工程と、
f)工程d)で得られた値を対照値と比較する工程と、
g)工程e)で集めた比較値を腎臓の生理的能力の評価または診断において適用する工程と、
を含む腎臓生理をモニタし、予測し、および診断するための方法。
【請求項7】
前記体液サンプルは尿である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記被験体は腎移植治療患者であり、前記腎臓は移植腎である、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記内標準は、前記分析するペプチドと同じ配列を有するが、炭素、窒素および水素の安定な同位体を組み込んでいる同位体標識ペプチドである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記プロテオミクス技術は、ESI−MS、DESI−MS、DIOS−MS、SELDI−MS、MALDI−MS、LC/MS、タンデムLC−MS/MSおよび任意の他のハイスループット質量分析に基づく技術ならびに/またはELISA、タンパク質/ペプチドアレイ、抗体アレイまたはそれらの組み合わせを含む抗体に基づく技術を含む、請求項6記載の方法。
【請求項11】
腎病態患者の治療の治療効果をモニタするための請求項6記載の方法の使用。
【請求項12】
SEQ ID:1〜10からなる群の少なくとも1つのペプチドに結合し、および/またはそれを認識することができる少なくとも1つの分子を含む、個体の体液サンプルにおいて腎症をインビトロで診断するためのキット。
【請求項13】
前記サンプルは尿である、請求項12記載のキット。
【請求項14】
前記結合する分子は、必要に応じて、標識され、または酵素に結合された抗体である、請求項12記載のキット。
【請求項15】
前記抗体は固体支持体に固定される、請求項12記載のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3B】
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【図3A】
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【公表番号】特表2011−529453(P2011−529453A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520329(P2011−520329)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060062
【国際公開番号】WO2010/012306
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511027264)
【氏名又は名称原語表記】HOSPITAL CLINIC I PROVINCIAL DE BARCELONA
【住所又は居所原語表記】C/Villarroel,170,E−08036 Barcelona,Spain
【出願人】(511027275)インスティチュート デ インベスティガシオンス バイオメディクス アウグスト ぺーアイ アイ スンジェル (2)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT DE INVESTIGACIONS BIOMEDIQUES AUGUST PI I SUNYER
【住所又は居所原語表記】C/Villarroel,170,E−08036 Barcelona,Spain
【Fターム(参考)】