説明

側溝改修部材及び側溝改修工法

【課題】U字側溝を暗渠に改修する作業の簡素化を実現する。
【解決手段】上部を切除した既存側溝体の開口部全体を覆う形状(底板部11)で、且つ端部を所定高さ起立させ(端板部12)、中央適宜位置に、管理口用矩形透孔を穿設すると共に、前記透孔周囲を立上げ板部で囲繞した基板1と、前記透孔に嵌合する下方部21、及びグレーチングを嵌合載置できる大きさの段差を有する上方部22からなる管理口形成枠体2とを備え、透孔に嵌合した管理口形成枠の高さを所望位置に固定できる連結機構を設けた改修部材を、改修対象の既存のU字側溝3の側溝体の上部を適宜範囲で切除し、その切除箇所の上部に載置固定して、側溝改修用部材内の所定位置に鉄筋を配置した後、管理口箇所を除く側溝改修部材の内方にコンクリートを打設し、開口部分となる管理口に所定のグレーチングを装着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の側溝を特に暗渠形式に改修するための側溝改修部材及び側溝改修工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
U字溝と称される上部が開口したコンクリート製の道路側溝(以下「側溝体」という)は、開口部分にコンクリート蓋や、或いはグレーチングと称される金属製蓋が装着されている。
【0003】
特にコンクリート蓋を使用した側溝体は、車両の通過による荷重負担や振動を受けるので、経年変化として蓋体や側溝体上部が破損する。そこで破損した側溝体は補修する必要があり、コンクリート蓋体を採用した既存側溝を暗渠に補修する手段として、特許文献1、2に開示されている。
【0004】
特許文献1(特開2003−119875号公報)には、従来技術として破損側溝体の上部を除去し、新しい部分を型枠で再構築する手段が開示されており、この型枠使用工事の煩雑さを問題点としてあげ、前記の対策として、側溝蓋を樹脂モルタルで側溝体の受け部に接着し、蓋体の上面及び側溝体の上面を切削し、切削箇所にシート材を貼着し、更に樹脂モルタルで被覆する改修工法が開示されている。
【0005】
特許文献2(特許3784820号公報)には、既存側溝体の上部を切除し、当該箇所に暗渠用蓋体を固着する手段(図5A)が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−119875号公報。
【特許文献2】特許3784820号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既存側溝体を暗渠に改修するのに、特許文献1記載の従来技術のように、型枠を使用する工事では、現場で型枠を構築し、またコンクリート固化後の型枠を除去しなければならず改修工事が非常に煩瑣である。
【0008】
また特許文献1記載の提案手段(樹脂モルタルを使用する工法)は、車両の走行によって表面の樹脂モルタルが剥離すると、再度の補修が必要であって、耐久性の点で課題を有し、コンクリート蓋体を側溝体の受け部に固定してしまうと、蓋体の開被が不可能となって、側溝清掃等ができなくなってしまい、管理口の設置は新たな構築となり、型枠使用の工事となってしまう。
【0009】
特許文献2記載の別形成した暗渠用蓋体を採用する手段は、蓋体自体が正確な規格の元で形成されているので、改修対象の側溝体の上部切除を正確に行なわなければならないが、改修対象の側溝体は経年変化(地盤の変化や土圧状態の変化)によって、上下左右に僅かなズレが生じている場合が多く、当該状況において、側溝体の正確な切除は煩瑣な作業となってしまう。
【0010】
そこで本発明は、既存U字側溝を暗渠に改修するに際して、現場施工を容易に行うことのできる改修工法及び当該改修工法に使用する改修部材を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る側溝改修部材は、上部を切除した既存U字側溝体の開口部全体を覆う形状で、且つ端部又は側縁或いは四周を所定高さ起立させ、中央適宜位置に、管理口用矩形透孔を穿設すると共に、前記透孔周囲を立上げ板部で囲繞した基板と、前記透孔に嵌合する下方部、及びグレーチングを嵌合載置できる大きさの段差を有する上方部からなる管理口形成枠体とを備え、透孔に嵌合した下方部と、下方部と重合する立ち上がり板部との間に、管理口形成枠の高さを所望位置に固定できる連結機構を設けてなることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明に係る側溝改修工法は、改修対象の既存のU字側溝の側溝体の上部を適宜範囲で切除し、上記の側溝改修用部材を前記切除箇所の上部に載置固定し、側溝改修用部材内の所定位置に鉄筋を配置した後、管理口箇所を除く側溝改修部材の内方にコンクリートを打設し、開口部分となる管理口に所定のグレーチングを装着してなることを特徴とするものである。
【0013】
従って既存のU字側溝は、上部を除去した部分に、グレーチングを装着した管理口を備えた暗渠蓋を構築することで、暗渠に改修されるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記の構成で、現場打ちによって既存U字側溝の改修がなされるもので、現場状況に柔軟に対応できると共に、型枠自体が暗渠蓋の一部を構成することになり、その改修工事が容易に行うことができたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明に係る側溝改修部材の実施形態について説明する。図1は実施形態を示したもので、基板1と管理口形成枠2の二つの部材で構成される。
【0016】
基板1は、既存のU字側溝3の規格に対応した幅と所定の長さ(暗渠蓋構築のための単位スパン)の底板部11を備え、前記底板部11の端部を、構築する単位暗渠蓋の厚さに対応するように所定高さに立ち上げた端板部12を形成し、更に中央適宜位置に管理口用矩形透孔13を穿設すると共に、前記透孔13の周囲を立上げ板部14で囲繞したものである。
【0017】
更に底板部11の両側適宜間隔でボルト孔15を穿設し、立上げ板部14の適宜位置に連結孔16を穿設してなる。
【0018】
尚基板1に付属する部品として、底板部11上に配置する鉄筋体17と、ボルト孔15に挿通する無頭ボルト18と、前記無頭ボルト18に螺合する緊締ナット19を備える。
【0019】
管理口形成枠2は、下方部21と上方部22で構成され、下方部21は、前記透孔13に嵌合する形状で、連結孔16と対応する位置に連結縦孔23を穿設して、前記連結縦孔23及び連結孔16に貫通装着する連結ボルト24及び連結ボルト24に螺合する緊締ナット25を備えてなる。
【0020】
上方部22は、グレーチング4が載置される載置平面部26と、クレーチング4の外枠縁となる枠立面部27からなる所定の載置段差を有する形状としたものである。
【0021】
次に前記改修用部材1,2を使用した本発明に係る側溝の改修工法を、工事手順に沿って説明する。
【0022】
図2に示した既存の蓋付の既存U字側溝3の上部を、図3に例示する通り適宜範囲で切断除去し、切除面上面の所定位置にボルト稙立孔32を穿設する。このボルト稙立孔32は、基板1を切除上面に載置し、ボルト孔15の位置に印を付け、当該印位置を穿って形成する。
【0023】
次に前記ボルト稙立孔32に無頭ボルト18の下端を差し入れ、接着剤を使用して固定する。この固定した無頭ボルト18がボルト孔15を挿通するように基板1を側溝切除上空間に配置して側溝に蓋をする形態とする。同時に無頭ボルト18に緊締ナット19を螺合緊締して、基板1をU字側溝3の切除上面に固定する。
【0024】
次に管理口形成枠2を装着するもので、この装着は下方部21を管理口用矩形透孔13に嵌合し、連結縦孔23及び連結孔16に連結ボルト24を貫通装着し、連結ボルト24に緊締ナット25を螺合して行う。この際に連結縦孔23のボルト貫通位置の調整で、管理口形成枠2の高さ調整を行なうものである。尚基板1の端板部12の高さ調整が必要な場合には、突出部分の切断で対応する。勿論管理口形成枠2の高さ調整手段は前記の構成に限定されないことは言うまでもない。
【0025】
改修部材(基板1及び管理口形成枠2)の設置を終了すると、底板部11上方位置適宜高さに所定の鉄筋体17を配置し(図4)、コンクリート5を底板部11上に流し込む。
【0026】
コンクリート5は、基板1の両端部の端板部12と、U字側溝3を切除した際の法面31で囲繞され且つ管理口形成枠2の外周の範囲で、所定の高さ(路面と一致する高さ)に打設される。
【0027】
コンクリート5が固化すると、管理口形成枠2にグレーチング4を載置装着すると、U字側溝3は暗渠に改修されることになる。
【0028】
前記の実施形態は、基板1において端板部12を備えたもので、特に法面31がコンクリート型枠を必要としないほどの状態であれば、コンクリートの固化によって暗渠が構築されるものである。
【0029】
尚前記法面31をコンクリート型枠として利用したが、路面状況が悪く、法面31をそのまま利用できない状況においては、細板木材、金属板等の型枠板を使用する。
【0030】
また前記した実施形態以外の図6に例示した基板1aのように、端板部12を備えずに、側板部12aを備えたものや、図7に例示した基板1bのように、端板部12と共に側板部12aも備えたものを採用しても良い。
【0031】
前記の基板1a,1bを採用した場合も、前記の基板1と同様の工程で暗渠を構築できるものであるが、基板1aを採用する場合には、端板部12に代えて細板木材、金属板等の型枠板を使用する。
【0032】
更に前記基板1a,1bの採用は、基板全体の強度が高められるので、基板の使用材料として薄いものを採用できる利点があることと、図8に例示する通り法面31が荒れてる現場においては、側溝の長手方向の型枠を必要とせずに暗渠を構築でき、法面31箇所の補修は、補修アスファルト6を充填するのみで良い。
【0033】
以上のとおり本発明は、傷の少ない既存のU字側溝体下方部分をそのまま残し、排水機能を維持した状態での工事ができると共に、暗渠構築用型枠を暗渠形成部材とすることで従前工法より工事の作業能率に優れ、且つ路面仕上げも確実に且つ奇麗に形成することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の改修部材(第一実施形態)の説明図(全体斜視図)
【図2】本発明工法の作業工程の説明図(改修前の断面図)。
【図3】同図(側溝の切除時)
【図4】同図(改修部材の組み込み)
【図5】同図(コンクリート打設時)
【図6】同改修部材(第二実施形態)の基板の説明図(斜視図)
【図7】同改修部材(第三実施形態)の基板の説明図。
【図8】同改修部材(第二、三実施形態)を使用した場合の作業工程の説明図(改修前の断面図)。
【図9】同改修部材(第二、三実施形態)を使用した場合の改修後断面図。
【符号の説明】
【0035】
1,1a,1b 基板
11 底板部
12 端板部
12a 側板部
13 管理口用矩形透孔
14 立上げ板部
15 ボルト孔
16 連結孔
17 鉄筋体
18 無頭ボルト
19 緊締ナット
2 管理口形成枠
21 下方部
22 上方部
23 連結縦孔
24 連結ボルト
25 緊締ナット
26 載置平面部
27 枠立面部
3 U字側溝
31 法面
32 ボルト稙立孔
4 グレーチング
5 コンクリート
6 補修アスファルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部を切除した既存側溝体の開口部全体を覆う形状で、且つ端部又は側縁或いは四周を所定高さ起立させ、中央適宜位置に、管理口用矩形透孔を穿設すると共に、前記透孔周囲を立上げ板部で囲繞した基板と、前記透孔に嵌合する下方部、及びグレーチングを嵌合載置できる大きさの段差を有する上方部からなる管理口形成枠体とを備え、透孔に嵌合した下方部と、下方部と重合する立ち上がり板部との間に、管理口形成枠の高さを所望位置に固定できる連結機構を設けてなることを特徴とする側溝改修部材。
【請求項2】
改修対象の既存のU字側溝の側溝体の上部を適宜範囲で切除し、請求項1記載の側溝改修用部材を前記切除箇所の上部に載置固定し、側溝改修用部材内の所定位置に鉄筋を配置した後、管理口箇所を除く側溝改修部材の内方にコンクリートを打設し、開口部分となる管理口に所定のグレーチングを装着してなることを特徴とする側溝改修工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−50826(P2008−50826A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227533(P2006−227533)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(504119527)高橋土建株式会社 (13)
【Fターム(参考)】