説明

側溝構造

【課題】 楔を蓋固定手段として用いることでコンクリート蓋を確実に固定させ、併せてその楔を間隙形成手段としても機能させることで側溝ブロックとコンクリート蓋との間に間隙を形成させ、この間隙を利用した流水系を形成させることで路面上の雨水を側溝本体の溝空間内に流入させ、かつコンクリート蓋と側溝本体との接触による破損を防止できる側溝構造の提供。
【解決手段】 側溝本体1の左右の蓋受け段部2、2間に架設状態に装着されるコンクリート蓋5を備え、蓋受け内壁面21とコンクリート蓋の蓋側面50との間に蓋固定手段としての楔3が打ち込まれると共に、この楔を間隙形成手段として間隙4aが形成されると共に、蓋受け底面20とコンクリート蓋の蓋裏面51との間に流水間隙4bが形成され、この流水間隙を介して溝空間10と間隙とが連通した雨水流入系4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクート製の側溝本体と、この側溝本体に装着させるコンクリート蓋を備えた側溝構造であり、特に、コンクリート蓋を側溝本体に一体的に固定させるための固定技術と、コンクリート蓋と側溝本体との間隙を利用した雨水排水技術との組み合わせ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
側溝構造として、溝空間を保持して対向する左右側壁の上部内面に蓋受け段部が形成されたコンクリート製の側溝本体と、前記左右の蓋受け段部間に架設状態に装着されるコンクリート蓋とを備えたものが一般的に知られている。
【0003】
前記コンクリート蓋は装着状態でのズレ動きを防止することが必要となるが、確実な蓋固定手段として、例えば固定ボルト等が用いられている。
尚、側溝本体とコンクリート蓋との間に楔(クサビ)を打ち込むことでコンクリート蓋を固定させる従来技術は見受けられないが、楔は本来固定手段として使用するものであるから、これをコンクリート蓋の蓋固定手段として用いることは通常のことと言える。
【0004】
又、従来、路面上の雨水を側溝内に排水させるために、側溝本体とコンクリート蓋との間に流水路を形成させ、この流水路を通して溝空間内に流入させるようにした側溝構造が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、この従来の側溝構造は、流水路を通して雨水を溝空間内に流入させる技術であるが、流水路を形成させるために楔を用いることを主旨とする本発明とは異なるし、その楔を用いてコンクリート蓋を固定させる技術でもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−242161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、楔を蓋固定手段として用いることでコンクリート蓋を確実に固定させ、併せてその楔を間隙形成手段としても機能させることで側溝本体とコンクリート蓋との間に間隙を形成させ、この間隙を利用した流水系を形成させることで路面上の雨水を側溝本体の溝空間内に流入させ、かつコンクリート蓋と側溝本体との接触による破損を防止できるようにした側溝構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明の側溝構造は、以下の構成を採用した。
即ち、請求項1記載の側溝構造は、
溝空間(10)を保持して対向する左右側壁(1a)、(1b)の上部内面に蓋受け内壁面(21)と蓋受け底面(20)からなる蓋受け段部(2)が形成されたコンクリート製の側溝本体(1)と、前記左右の蓋受け段部(2)、(2)間に架設状態に装着されるコンクリート蓋(5)とを備えている側溝構造において、
前記蓋受け内壁面(21)と、この蓋受け内壁面(21)に対向したコンクリート蓋(5)の蓋側面(50)との間に蓋固定手段としての楔(3)が打ち込まれると共に、この楔(3)を間隙形成手段として前記蓋受け内壁面(21)と蓋側面(50)との間に間隙(4a)が形成され、
かつ前記蓋受け底面(20)と、この蓋受け底面(20)に対向したコンクリート蓋(5)の蓋裏面(51)との間に流水間隙(4b)が形成され、
この流水間隙(4b)を介して前記溝空間(10)と間隙(4a)とが連通した雨水流入系(4)が形成されている構成とした。
【0009】
また、請求項2記載の側溝構造は、
前記楔(3)の打ち込み位置において、蓋受け内壁面(21)に壁側楔保持溝(30)が形成されると共に、蓋側面(50)に蓋側楔保持溝(31)が形成され、この壁側楔保持溝(30)と蓋側楔保持溝(31)内に楔(3)が打ち込まれている構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明(請求項1)の側溝構造は、楔(3)にコンクリート蓋(5)の蓋固定手段と、雨水流入系(4)の間隙(4a)を形成させるための間隙形成手段との2通りの機能を持たせている構成に特徴がある。
【0011】
すなわち、側溝本体(1)の蓋受け内壁面(21)と、コンクリート蓋(5)の蓋側面(50)との間に楔(3)を打ち込むため、コンクリート蓋(5)を簡単な作業で確実に固定させることができる。
特に、コンクリート蓋(5)を側溝本体(1)に一体化させる必要がある場合に、楔(3)によって確実に固定し一体化させることができる。
【0012】
又、この楔(3)によって側溝本体(1)の蓋受け内壁面(21)と、コンクリート蓋(5)の蓋側面(50)との間に間隙(4a)を形成させることができる。
そして、側溝本体(1)の蓋受け底面(20)と、コンクリート蓋(5)の蓋裏面(51)との間に流水間隙(4b)を形成させ、この流水間隙(4b)を介して溝空間(10)と間隙(4a)とを連通させた雨水流入系(4)を形成させている。
従って、間隙(4a)から流水間隙(4b)を経て溝空間(10)に至るという雨水流入系(4)により雨水を側溝内に排水することができる。
【0013】
又、前記したように、楔(3)によって側溝本体(1)の蓋受け内壁面(21)と、コンクリート蓋(5)の蓋側面(50)との間に間隙(4a)を形成させることができるため、コンクリート蓋(5)の蓋側面(50)と側溝本体(1)の蓋受け内壁面(21)とが直接に接触することがなく、両面(50)、(21)の破損を防止できる。
【0014】
又、楔(3)の打ち込み位置に形成した壁側楔保持溝(30)と蓋側楔保持溝(31)内に楔(3)を打ち込むことにより(請求項2)、コンクリート蓋(5)の側溝長手方向への移動を規制することができ、楔(3)による側溝幅方向への固定と相まってコンクリート蓋(5)をより確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係る側溝構造を示す斜視図。
【図2】その側溝構造を示す側面断面図で、図3のA−A断面図.
【図3】その側溝構造を示す平面図。
【図4】その側溝構造を示す正面断面図。
【図5】要部の拡大断面図。
【図6】本発明の実施例2に係る側溝構造を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
図1〜図5に示す実施例1の側溝構造は、コンクリート製の側溝本体1と、コンクリート蓋5とを備え、前記側溝本体1は、溝空間10を保持して対向するコンクリート製の左右側壁1a、1bと、この左右側壁1a、1bの上部を連結する非コンクリート製の上部連結部材11を備えた自由勾配側溝本体に形成されている。
【0017】
前記上部連結部材11は小さな断面積で十分な連結強度を得ることができるようにするために非コンクリート製としたもので、実施例では角形鋼管によって形成されている。
尚、上部連結部材11としては角形鋼管に限らず、アングル型鋼材、チャンネル型鋼材、丸形鋼管、そのほか必要な強度が得られる材料であれば、鋼材やスチール材やステンレス材等の金属以外にプラスチック材等を使用できるし、その本数についても実施例1では3本としているが、1本又は複数本(例えば2本)でもよい。
【0018】
実施例1では、上記のように左右側壁1a、1bを上部連結部材11で連結しただけの側溝本体1を形成しているが、上部連結部材11に加えて底部に梯子状枠による底部連結部材(図示省略)を取り付けた側溝本体を形成することもできる。
尚、図中90はコンクリートベースで、この上に側溝本体1が設置され、この側溝本体1の底部に側溝の底面を形成する底版91(インバート)が打設される。
【0019】
前記左右側壁1a、1bの内面上部には内向きの膨出部12が形成され、この膨出部12の上が蓋受け段部2に形成され、この左右の蓋受け段部2、2間にコンクリート蓋5が架設状態に装着されている。
この蓋受け段部2は、膨出部12の上面に形成された蓋受け底面20と、この膨出部12より上方に延長した上部側壁13の内面に形成された蓋受け内側面21とで形成されている。
【0020】
従って、コンクリート蓋5の架設状態で、コンクリート蓋5の蓋側面50が前記蓋受け段部2の蓋受け内壁面21に対向し、コンクリート蓋5の蓋裏面51の左右端部が前記蓋受け段部2の蓋受け底面20に対向する。
【0021】
本実施例では、側溝本体1の左右側壁のうち、道路側側壁1b(図2、図5では右側)の上部側壁13の上端面13bが民地側側壁1a(図2、図5では左側)の上部側壁13の上端面13aよりも低く形成されている。
そして、コンクリート蓋5の高さが民地側の上部側壁13の上端面13aとほぼ一致して形成され、これによりコンクリート蓋5の道路側の蓋側面50は中程から上方が上部側壁13の上端面13bよりも上方に露出した状態になっている。
【0022】
そして、前記コンクリート蓋5の装着状態を固定させるために、側溝本体1とコンクリート蓋5との間に蓋固定手段としての楔3が打ち込まれている。
この場合、民地側では、楔3の打ち込み位置(実施例では1箇所)において、蓋受け内壁面21に壁側楔保持溝30が形成されると共に、蓋側面50に蓋側楔保持溝31が形成され、この壁側楔保持溝30と蓋側楔保持溝31内に楔3が打ち込まれている。
【0023】
この壁側楔保持溝30と蓋側楔保持溝31とにより、コンクリート蓋5の側溝長手方向(矢印A方向)への移動を規制することができ、楔3の本来の固定方向である側溝幅方向(矢印B方向)への固定と相まってコンクリート蓋5をより確実に固定することができる。
【0024】
又、道路側では、楔3の打ち込み位置(実施例では2箇所)において、蓋受け内壁面21と蓋側面50との間に直接に楔3が打ち込まれている。
【0025】
前記楔3は、片面又は両面が勾配面に形成され、その材質は錆びの発生がないプラスチックが好ましいし、勾配面にすべり止め加工を施してもよい。
又、いずれかの片面又は両面にボンド等の接着剤を塗布した上で打ち込むようにしてもよく、この場合、蓋側面50(蓋側楔保持溝31)に接触する勾配面にのみ接着剤を塗布しておけば、コンクリート蓋5の着脱に際し接着剤が支障になることがない。
尚、楔3に接着剤を塗布する場合、その塗布面を凹凸面に形成させると、それだけ接着面積を増加できるため接着力を増大できる。
【0026】
実施例では、民地側を1個の楔3で固定し、道路を2個の楔3によって固定し、又、民地側の楔3を壁側楔保持溝30と蓋側楔保持溝31内に打ち込むようにしたが、楔3の個数、それに壁側楔保持溝30や蓋側楔保持溝31の有無、個数等も適宜に決めることができる。
【0027】
前記楔3はコンクリート蓋5の蓋固定手段となるものであるが、この楔3を蓋受け内壁面21と蓋側面50の間に打ち込むことで蓋受け内壁面21と蓋側面50の間にスリット状の間隙4aを形成させることができるもので、このことから楔3を間隙形成手段として機能させることができる。
尚、道路側の間隙4aは、道路側の上部側壁13の内面に凹部14を形成することで間隙4aのスリット幅を拡大させている。
【0028】
そして、前記蓋受け段部2の蓋受け底面20と、この蓋受け底面20に対向したコンクリート蓋5の蓋裏面51との間に流水間隙4bが形成されており、この実施例の流水間隙4bは、蓋裏面51に蓋側面50から蓋受け底面20を越えるように延長して溝状に形成されている。
このような流水間隙4bを形成することによって、この流水間隙4bを介して前記溝空間10と間隙4aとを連通させた雨水流入系4を形成させることができる。
【0029】
又、間隙4aによってコンクリート蓋5の蓋側面50と側溝本体1の蓋受け内壁面21とが直接に接触することがなくなるため、両面50、21が接触することによる破損を防止できる。
【0030】
本実施例の側溝構造は、非透水性下地層81の上に排水性路面表層82を形成させた排水性舗装路8の路肩部に設置され、その排水性路面表層82を前記道路側の上部側壁13の上端面13bを超えてコンクリート蓋5の蓋側面50まで延長するように形成している。
【0031】
従って、排水性舗装路8の路面上の雨水は排水性路面表層82内を側溝方向に流動していき、さらに間隙4aから流水間隙4bを経て溝空間10に至るという雨水流入系4により側溝内に排水される。
同様に、コンクリート蓋5上の雨水は民地側の間隙4aから流水間隙4bを経て溝空間10に至るという雨水流入系4により側溝内に排水される。
【0032】
尚、コンクリート蓋5に水落ち孔や手掛け孔を形成して、ここから雨水を側溝内に排水させることができるのは勿論であるし、コンクリート蓋5の形状についても実施例の平蓋に限定されず、例えば、断面縁石状の境界型蓋や上面片側に縁石部を一体に形成したL字状蓋を使用できる。
【0033】
本実施例の側溝構造では、側溝本体1の側溝長手方向両端部は、等辺山形型材(アングル型鋼材)60をスリット状の通水間隙61を保持して左右の蓋受け底面20間に架設し、その上で前記排水性路面表層82に一体に連続するように等辺山形型材60の上に排水性蓋表層83を形成させた透水蓋構造としている。
【0034】
特に、このような透水蓋構造では、コンクリート蓋5のズレ動きを確実に防止させるためコンクリート蓋5を側溝本体1に一体化させるように固定させることが要求されるが、上記したように楔3を打ち込むという簡単な手間で確実にコンクリート蓋5を側溝本体1に固定させ一体化させることができる。
【0035】
前記排水性舗装路8では、その路面上の雨水は排水性路面表層82内を側溝方向に流動していき、さらに排水性蓋表層83から通水間隙61を経て溝空間10に至るという経路で側溝内に排水される。
【0036】
尚、実施例では、側溝本体1の側溝長手方向両端部に等辺山形型材60を用いた透水蓋構造を形成したが、これに限定されるものではなく、この側溝長手方向両端部にコンクリート蓋を装着させてもよい。
【0037】
コンクリート蓋5の側溝長手方向両端部の裏面には、前記上部連結部材11の上に被さる状態に装着されるため、上部連結部材11との干渉を避けるために切欠部55が形成されている。
【実施例2】
【0038】
次に、図6で示す実施例2は、U字側溝本体による側溝本体1の左右の蓋受け段部2に、コンクリート蓋5を架設状態に装着させた例である。
この場合、コンクリート蓋5の両側にそれぞれ1個または複数個の楔3を打ち込むようにさせ、かつ各楔3の打ち込み位置において、壁側楔保持溝30と蓋側楔保持溝31内に楔3を打ち込むようにしている。
【0039】
又、雨水流入系4を形成する流水間隙4bは、蓋受け段部2の蓋受け底面20に溝状に形成され、この流水間隙4bを介して前記溝空間10と間隙4aとが連通した雨水流入系4が形成されている。
尚、その他の構成は前記実施例1と同様であり、図面の符号を同じにしている。
【0040】
本発明では、側溝本体として自由勾配側溝本体やU字側溝本体等、コンクリート蓋を蓋受け部に架設状態に装着させるものについては全ての側溝に適用できる。
実施例1では非コンクリート製の上部連結部材11(必要に応じて底部連結部材)によって左右側壁1a、1bを連結した自由勾配側溝本体を例にとったが、例えば、左右側壁の両端部をコンクリート梁によって一体に連結した通常の自由勾配側溝本体に本発明を適用できるのは勿論である。
【0041】
又、雨水流入系4を形成する流水間隙4bについて、例えば、蓋受け底面20と蓋裏面51との間に、波状の板材など、流水間隙4bを形成させるための間隔保持用スペーサ部材等を介在させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 側溝本体
1a 側壁
1b 側壁
10 溝空間
2 蓋受け段部
20 蓋受け底面
21 蓋受け内壁面
3 楔
30 壁側楔保持溝
31 蓋側楔保持溝
4 雨水流入系
4a 間隙
4b 流水間隙
5 コンクリート蓋
50 蓋側面
51 蓋裏面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝空間(10)を保持して対向する左右側壁(1a)、(1b)の上部内面に蓋受け内壁面(21)と蓋受け底面(20)からなる蓋受け段部(2)が形成されたコンクリート製の側溝本体(1)と、前記左右の蓋受け段部(2)、(2)間に架設状態に装着されるコンクリート蓋(5)とを備えている側溝構造において、
前記蓋受け内壁面(21)と、この蓋受け内壁面(21)に対向したコンクリート蓋(5)の蓋側面(50)との間に蓋固定手段としての楔(3)が打ち込まれると共に、この楔(3)を間隙形成手段として前記蓋受け内壁面(21)と蓋側面(50)との間に間隙(4a)が形成され、
かつ前記蓋受け底面(20)と、この蓋受け底面(20)に対向したコンクリート蓋(5)の蓋裏面(51)との間に流水間隙(4b)が形成され、
この流水間隙(4b)を介して前記溝空間(10)と間隙(4a)とが連通した雨水流入系(4)が形成されていることを特徴とする側溝構造。
【請求項2】
前記楔(3)の打ち込み位置において、蓋受け内壁面(21)に壁側楔保持溝(30)が形成されると共に、蓋側面(50)に蓋側楔保持溝(31)が形成され、この壁側楔保持溝(30)と蓋側楔保持溝(31)内に楔(3)が打ち込まれていることを特徴とする請求項1記載の側溝構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219491(P2012−219491A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85373(P2011−85373)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(504127887)エムシー産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】