説明

側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法、及び側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の製造方法

【課題】 金属表面を被覆した場合に、耐食性、耐摩擦性、耐水性、耐溶剤性、耐光性、低温硬化性に優れるとともに無色透明な表面被覆膜を得ることのできる側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を得る。
【解決手段】 本発明の側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法では、下記式(I)
【化1】


(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数2〜6のアルキレン基、R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基を示す。jは1〜3の整数である)で表される加水分解性シリル基を有する不飽和カルボン酸エステルを、非アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下、C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートとの混合溶媒中で付加重合させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の防錆等に用いることのできる側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体とその製造方法、該側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の中間原料として有用な側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体とその製造方法、及び前記側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を金属表面に被覆した表面被覆金属とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金、銀、銅等の金属やそれらの合金の表面を防錆等の目的で被覆する手段として、有機−無機複合体であるハイブリッドポリマーによる被覆が提案されている。このようなハイブリッドポリマーとしては、例えば、ビニル基や(メタ)アクリロイル基等の末端重合性基を有するアルコキシシラン類を付加重合によりポリマー化して、側鎖にシラノール基又はアルコキシシリル基を有するポリマーを合成し、次いでこのポリマーとアルコキシシラン化合物とを加水分解・脱水縮合反応に付すことにより得られる側鎖にポリシロキサン鎖を有するビニル系重合体が知られている。
【0003】
このようなハイブリッドポリマーにより表面被覆された金属は、有機ポリマー及び無機ポリマーの持つ透明性のため地金の色が損なわれず、有機ポリマーの柔軟性により製膜過程の加熱冷却に伴う膨張・収縮に耐え、かつ無機ポリマーの硬さにより耐摩擦性に優れるという利点を有する。しかし、被覆したハイブリッドポリマーの密着性は未だ不十分であり、特に表面に酸化層が形成されにくい貴金属表面に被覆した場合には、ハイブリッドポリマーの被膜が剥離しやすいという欠点がある。
【0004】
ハイブリッドポリマーの長所を損なわずに上記の欠点を解消する技術として、特開2004−26939号公報には、上記ハイブリッドポリマーの無機ポリマー部の一部の末端にチオール基を導入することが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−26939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らの検討によれば、前記文献記載の方法のように、有機ポリマー鎖の形成を重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いて行うと、得られるハイブリッドポリマーを銀表面に被覆したとき、被膜が淡黄色を帯びて見えることがあるという欠点を有する。
したがって、本発明の目的は、金属表面を被覆した場合に、耐食性、耐摩擦性、耐水性、耐溶剤性、耐光性、低温硬化性に優れるとともに無色透明な表面被覆膜を得ることのできる側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体と、その効率的な製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、該側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の中間原料として有用な側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体と、その効率的な製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐食性、耐摩擦性に優れ、しかも表面被膜に着色や変色なく外観が美麗な表面被覆金属と、その効率的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究の結果、加水分解性ケイ素原子含有基を有する不飽和カルボン酸エステルをアゾ系ラジカル重合開始剤の存在下で付加重合させて得られるポリマーを用いてハイブリッドポリマーを合成し、そのハイブリッドポリマーを金属表面に被覆すると、被膜が着色したり変色すること、それはアゾ系ラジカル重合開始剤の分解物(残存物)が熱や光により或いは他の成分との反応により化学変化することによるものと推測されること、加水分解性ケイ素原子含有基を有する不飽和カルボン酸エステルを非アゾ系のラジカル重合開始剤の存在下、特定の溶媒の組み合わせからなる混合溶媒中で付加重合させると、重合反応が円滑に進行して無色のポリマーが得られること、こうして得られたポリマーとアルコキシシラン化合物とを加水分解・脱水縮合反応に付すと、硬化温度が200℃以下のハイブリッドポリマーが得られること、このハイブリッドポリマーを金属表面に被覆すると、耐食性、耐摩擦性、耐水性、耐溶剤性、耐光性に優れるとともに、着色や変色の無い無色透明な表面被覆膜が得られること等の知見を得た。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数2〜6のアルキレン基、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。jは1〜3の整数である。R3及びR4は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい)
で表される加水分解性シリル基を有する不飽和カルボン酸エステルを、非アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下、C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートとの混合溶媒中で付加重合させることを特徴とする側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法を提供する。
【0009】
この製造方法では、非アゾ系ラジカル重合開始剤として過酸化物系ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0010】
本発明は、また、前記の製造方法により得られる側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体を提供する。
【0011】
本発明は、さらに、前記の側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体と、下記式(II)
【化2】

(式中、R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。kは2〜4の整数である。R5及びR6は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい)
で表されるアルコキシシラン化合物、又は前記式(II)で表される化合物及び下記式(III)
【化3】

(式中、R7及びR9は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基、R8は炭素数2〜6のアルキレン基を示す。mは1〜3の整数である。R7及びR9は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい)
で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物を、加水分解・脱水縮合反応に付すことを特徴とする側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらにまた、前記の製造方法により得られる側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記の側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を金属表面に被覆した表面被覆金属を提供する。
【0014】
本発明は、さらに、前記の側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を含む溶液を金属に塗工することを特徴とする表面被覆金属の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面被覆金属は、耐食性、耐摩擦性に優れるとともに、表面被膜に着色や変色が見られず、外観が美麗である。本発明の表面被覆金属の製造方法によれば、このような表面被覆金属を工業的に効率よく製造できる。また、本発明によれば、耐食性、耐摩擦性、耐水性、耐溶剤性、耐光性に優れ、しかも着色や変色の無い表面被覆膜を形成できる側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体とその製造方法、該側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の中間原料として有用な側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体とその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造]
本発明の側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法では、前記式(I)で表される加水分解性シリル基を有する不飽和カルボン酸エステルを、非アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下、C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートとの混合溶媒中で付加重合させて、側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体を得る。
【0017】
式(I)中、R1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数2〜6のアルキレン基、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。jは1〜3の整数である。R3及びR4は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
1における炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基が挙げられる。R1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。R2における炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。R2としては、炭素数3〜5のアルキレン基が好ましく、特にトリメチレン基(−CH2CH2CH2−)が好ましい。R3、R4における炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基が挙げられる。R3、R4としては、メチル基又はエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。jとしては、特に2が好ましい。
【0019】
式(I)で表される化合物の代表的な例として、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルジプロピルメチルシランなどが挙げられる。これらの中でも、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシランが特に好ましい。
【0020】
付加重合反応では、ハイブリッドポリマーによる被膜の着色や変色を防止するため、重合開始剤として非アゾ系ラジカル重合開始剤を用いる。非アゾ系ラジカル重合開始剤としては、分子内にアゾ基を有しない重合開始剤であればよく、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド類;p−メンタンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類;イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネートなどのパーオキシエステル類;ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾイン類;トリクロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;2−クロロチオキサントンなどのチオキサントン類などが挙げられる。これらのなかでも、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシジカーボネート類などの過酸化物系ラジカル重合開始剤が好ましく、特に、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類が好ましい。
【0021】
また、本発明では、反応溶媒(重合溶媒)としてC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートとの混合溶媒を用いる。一般に、非アゾ系ラジカル重合開始剤の分解温度(開始剤として機能する温度)はアゾ系ラジカル重合開始剤と比較して高いが、上記混合溶媒は沸点が高いため、非アゾ系ラジカル重合開始剤の分解温度まで温度を上げることができ、付加重合を円滑に進行させることができる。また、この混合溶媒は一般に水溶性であるため、反応生成物を単離することなく溶媒に溶解した状態で次の加水分解・脱水縮合反応に供することが可能である。さらに、この混合溶媒を重合溶媒として用いると、無色の加水分解性シリル基含有重合体が得られ、この重合体を用いてハイブリッドポリマーを製造すると、着色や変色の無い表面被覆膜を形成できる。
【0022】
2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(=エトキシエタノール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル、1,3−プロパンジオールモノメチルエーテル、1,3−プロパンジオールモノエチルエーテル、1,3−プロパンジオールモノプロピルエーテル、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテル(=プロピレングリコールモノメチルエーテル)、1,2−プロパンジオールモノエチルエーテル、1,2−プロパンジオールモノプロピルエーテル、1,4−ブタンジオールモノメチルエーテル、1,4−ブタンジオールモノエチルエーテル、1,3−ブタンジオールモノメチルエーテル、1,3−ブタンジオールモノエチルエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテル(=プロピレングリコールモノメチルエーテル)が特に好ましい。
【0023】
2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオールモノメチルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオールモノエチルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオールモノプロピルエーテルアセテート、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテルアセテート、1,2−プロパンジオールモノエチルエーテルアセテート、1,2−プロパンジオールモノプロピルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールモノメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールモノメチルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテルアセテート(1,2−プロパンジオール−2−メチルエーテル−1−アセテート、1,2−プロパンジオール−1−メチルエーテル−2−アセテート)、1,3−ブタンジオールモノメチルエーテルアセテート(1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル−1−アセテート、1,3−ブタンジオール−1−メチルエーテル−3−アセテート)が好ましく、とりわけ1,3−ブタンジオールモノメチルエーテルアセテート(特に1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル−1−アセテート)が好ましい。
【0024】
2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートの混合比率は、式(I)で表される化合物の種類や前記溶媒の種類等によって適宜選択できるが、生成するポリマー及び最終的に得られるハイブリッドポリマーの物性等の点から、前者/後者(容量比;20℃)=60/40〜90/10の範囲が好ましく、前者/後者(容量比;20℃)=70/30〜80/20の範囲が特に好ましい。前者/後者(容量比;20℃)の値が小さすぎると、用いる溶媒の組み合わせによっても異なるが、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られるクロマトグラムにおいて、分子量の低い領域(例えば、分子量2000〜8000)と分子量の高い領域(例えば、分子量35000〜60000)に2つのピーク(山)が見られるようになる(多峰性のポリマーが生成しやすくなる)場合がある。このような多峰性の側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマーをアルコキシシラン化合物と反応させて得られる側鎖にポリシロキサン鎖を有するポリマーは、硬化温度が高くなりやすく(例えば200℃を超える温度となり)、また非水溶性となりやすい。一方、前者/後者(重量比)の値が大きすぎると、重合により得られる側鎖に加水分解性シリル基を有するポリマーをアルコキシシラン化合物と反応させた場合、ゲル化しやすくなる。
【0025】
反応溶媒は前記C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートに加えて、他の溶媒を少量含んでいてもよい。前記C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートの総量は、通常、反応溶媒全体の50重量%以上、好ましくは反応溶媒全体の70重量%以上、さらに好ましくは反応溶媒全体の90重量%以上であり、反応溶媒が実質的に前記C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートのみで構成されていてもよい。
【0026】
重合温度は、重合開始剤の分解温度と溶媒の沸点によって異なるが、通常50〜200℃、好ましくは100〜160℃である。重合温度が低すぎると重合に時間がかかり、逆に高すぎると激しく沸騰しやすい。
【0027】
上記重合反応により、下記式(IV)
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4、jは前記に同じ)
で表される側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体が生成する。重合溶媒としてC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートの混合溶媒を用いると、ほぼ単峰性(ショルダーを有する場合も含める)で且つ数万の重量平均分子量を有するポリマーを得ることができる。例えば、生成するポリマーの重量平均分子量は、通常10000〜50000であり、好ましくは12000〜30000である。重量平均分子量が小さすぎる場合は粘度が低く硬化しにくく、逆に大きすぎる場合は粘度が高く塗布前に硬化しやすい。分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、例えば1.0〜4、好ましくは1.0〜2.5程度である。
【0028】
得られた重合溶液は必要に応じて溶媒を留去して所望の濃度の溶液とし、次の反応に供される。また、公知の分離精製手段により単離したものを次の反応に供することもできる。
【0029】
[側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の製造]
本発明の側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の製造方法では、上記反応により得られる側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体と、前記式(II)で表されるアルコキシシラン化合物、又は前記式(II)で表される化合物及び下記式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物を加水分解・脱水縮合反応に付す。
【0030】
式(II)中、R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。kは2〜4の整数である。R5及びR6は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、式(III)中、R7及びR9は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基、R8は炭素数2〜6のアルキレン基を示す。mは1〜3の整数である。R7及びR9は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
5、R6、R7、R9における炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル基が挙げられる。R5としては、メチル基又はエチル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。kとしては、特に4が好ましい。R7としては、メチル基又はエチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。mとしては、特に3が好ましい。
【0032】
8における炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。R8としては、炭素数3〜5のアルキレン基が好ましく、特にトリメチレン基(−CH2CH2CH2−)が好ましい。
【0033】
式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の代表的な例として、例えば、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラエトキシシラン、ジプロポキシジメチルシラン、トリプロポキシメチルシラン、テトラプロポキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、テトラエトキシシランが特に好ましい。
【0034】
式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の代表的な例として、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルエトキシジメチルシラン、δ−メルカプトブチルトリメトキシシラン、δ−メルカプトブチルジメトキシメチルシラン、δ−メルカプトブチルメトキシジメチルシラン、δ−メルカプトブチルトリエトキシシラン、δ−メルカプトブチルジエトキシメチルシラン、δ−メルカプトブチルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。これらの中でも、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのγ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン等が好ましい。
【0035】
式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の使用量は、式(IV)で表される側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体を形成するモノマー1モルに対して、例えば0.05〜0.8モル、好ましくは0.1〜0.5モル程度である。式(II)で表されるアルコキシシラン化合物の使用量が少なすぎると、耐摩擦性、耐溶剤性が低下し、逆に使用量が多すぎると、粘度が低下し、膜が剥離しやすくなる。
【0036】
式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の使用量は、式(IV)で表される側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体のモノマー1モルに対して、一般に0.001〜0.1モル、好ましくは0.005〜0.09モルである。式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の使用量が少なすぎると、得られるハイブリッドポリマーを金属表面(特に貴金属表面)に被覆した場合に剥離しやすく、逆に使用量が多すぎると、着色又は変色の原因になりやすい。
【0037】
なお、得られるポリシロキサン鎖を有する重合体におけるイオウ原子(S)のケイ素原子(Si)に対する存在比率は、好ましくは0.3〜10モル%、より好ましくは0.5〜10モル%、特に好ましくは0.5〜4.8モル%である。このような比率となるように、式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物の使用量を調整してもよい。
【0038】
加水分解・脱水縮合反応は、公知の方法を利用できる。例えば、式(IV)で表される側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の溶液に、式(II)で表されるアルコキシシラン化合物、又は式(II)で表される化合物及び式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物を加え、希塩酸等の酸の水溶液を滴下して反応させることにより加水分解・脱水縮合反応を行うことができる。なお、式(II)で表される化合物及び式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物を反応させる場合には、段階的に反応を行ってもよく、式(II)で表される化合物及び式(III)で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物のうち一方をまず反応させ、次いで他方を反応させてもよい。前記酸は加水分解の触媒として作用する。酸の水溶液の使用量は、例えば、反応当量が例示される。希塩酸を用いる場合の濃度は、例えば0.0001〜0.002N程度である。反応に供する式(IV)で表される側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の溶液としては、例えば、前記式(I)で表される化合物の重合反応後の反応液またはその濃縮液を用いることができる。
【0039】
加水分解・脱水縮合反応における反応温度は、例えば40〜100℃、好ましくは50〜80℃である。
【0040】
上記反応により、シロキサン結合が形成されて、下記式(V)
【化5】

(式中、R1、R2は前記に同じ)
で表される側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体(ハイブリッドポリマー)が生成する。式(V)中のケイ素原子の三つの結合手のうち、少なくとも一つには酸素原子が結合しており、残りの結合手には炭素数1〜3のアルキル基が結合している。好ましくは、ケイ素原子には二つの酸素原子が結合し、残りの一つの結合手にはメチル基が結合している。ケイ素原子に結合した酸素原子は他のケイ素原子、すなわち、式(V)、式(II)又は式(III)の化合物のケイ素原子とシロキサン結合を形成しているか、又は加水分解により水素原子と共に末端水酸基を形成している。該末端水酸基は、水素結合可能な化学種(例えば、他の部分構造中の末端水酸基、重合体中に取り込んだ溶媒分子、金属表面の吸着水等)と水素結合を形成しうる。
【0041】
本発明の方法によれば、数万の重量平均分子量を有する無色透明の、側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を得ることができる。こうして得られる重合体の製膜温度は、例えば100〜180℃であり、好ましくは110〜160℃、特に好ましくは130〜150℃である。製膜温度が低すぎると硬化に時間がかかる点で不利であり、逆に製膜温度が高すぎると膜が剥離しやすい。
【0042】
得られた反応液は、必要に応じて濾過により大気中からの混入物を除去したり、粘度調整を行った後、金属塗工用の塗布液として使用される。この塗布液の粘度としては、塗布方法、要求される膜厚、作業性を考慮して適宜選択できるが、一般に5〜50cP(0.005〜0.05Pa・s)が好ましく、特にスプレー法では10〜30cP(0.01〜0.03Pa・s)の範囲が好ましい。
【0043】
[表面被覆金属の製造]
本発明の表面被覆金属の製造方法では、上記で得られた側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を含む溶液を金属に塗工する。金属としては、特に限定されず、金、銀、銅、合金等が挙げられるが、本発明によれば、ハイブリッドポリマー中にメルカプト基を有しており、金属に直接化学結合しうるため、金属が金や銀等の貴金属であっても強固な被膜が得られる。金属に塗工する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコーター法などが挙げられる。前記側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を含む溶液を金属に塗布した後に、加熱、乾燥することにより、縮合反応を完全に進行させ、溶媒を除去することにより硬い被膜が形成される。被膜の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、本発明によれば、1〜10μm、特に1〜5μmという薄い被膜であっても、充分に金属の防錆機能を持つという利点がある。
【0044】
本発明では、加水分解性シリル基を有する不飽和カルボン酸エステルを、非アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下、特定の溶媒の組み合わせからなる混合溶媒中で付加重合させて得られるポリマーと、アルコキシシラン化合物とを加水分解・脱水縮合反応に付して得られるハイブリッドポリマーを金属表面に被覆するので、表面被膜に着色や変色が見られない美麗な外観を呈するとともに、耐食性、耐摩擦性に優れる表面被覆金属が得られる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)の分析条件は下記の通りである。
[GPC分析条件]
・装置:(株)島津製作所製、SHIMADZU CBM−10A(コントローラ)、RID−10A(検出器)、CTO−10A(オーブン)、SIL−10A(オートインジェクター)、LC−10AT(ポンプ)、DGU−12A(デガッサー)
・カラム:昭和電工(株)製、Shodex KF−803L、KF−804L、KF−G(ガードカラム)の3本を直列につないで使用
・サンプル:ポリマー溶液0.2mLをTHF(テトラヒドロフラン)1mLに溶解したもの
・注入量:100μL
・オーブン温度:40℃
・移動相:THF
・移動相流量:1mL/min
【0046】
[耐食性試験]
実施例で得られた被膜の性能を耐食性試験により評価した。具体的には、被覆した金属を、硫化ナトリウム5重量%水溶液を入れたデシケータの中板の上に室温で1ヶ月放置した。
【0047】
[環境サイクル試験]
実施例で得られた被膜の性能をJIS−K5600に準拠した環境サイクル試験により評価した。具体的には、被覆した金属を、恒温恒湿機に入れ、50℃90%RHで18時間、続いて−20℃で3時間、さらに25℃50%RHで3時間の環境を10回繰り返した。
【0048】
[鉛筆硬度試験]
実施例で得られた被膜の性能をJIS−K5400に準拠した鉛筆引っかき試験により評価した。具体的には、被覆した金属に、各硬度の鉛筆を45°に当て、芯が折れない程度にできる限り強く塗面に押し付け、前方に均一な速さで引っかいた(各鉛筆につき位置を変えて5回)。下地の金属に届く被膜の破れが、5回の引っかきのうち1回以下である鉛筆のうち、最も高い硬度をもって、当該被覆の強度の指標とした。
【0049】
実施例1
γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン150.0g、ジ−t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)4.73gを、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテル(1,2−プロパンジオール−1−メチルエーテル−2−オール)580.5mLと1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル−1−アセテート(=3−メトキシブチルアセテート)193.5mLの混合溶媒[前者/後者(容量比;20℃)=75/25]に溶解し、窒素ガス雰囲気中、124℃で3時間撹拌してラジカル重合を行った。得られた重合溶液を40〜50℃で減圧下(32hPa)に濃縮した。生成したポリマーの分子量をGPCにより測定したところ、ピークは単峰性(僅かにショルダーが見られる)で、重量平均分子量は12000、数平均分子量は11500であった。
得られた濃縮液(ポリマー濃度約1.0mol/L)195.0mLに、テトラエトキシシラン4.81mL、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.20mLを加えて溶解し、これに0.0005N塩酸8.57mLを撹拌しながらゆっくり滴下した後、60℃で3時間撹拌した。得られた反応混合液を、孔径5〜10μmの濾過板を用いて濾過し、無色透明のハイブリッドポリマー溶液を得た。ハイブリッドポリマー溶液の粘度は11.2cP(0.0112Pa・s)であった。
純度99.9%の銀のメダル(直径27〜40mm、厚さ2〜3mm)に上記ハイブリッドポリマー溶液をスプレー法で塗布した。その後、130℃の温風乾燥機内で30分間乾燥することにより、銀の表面に無色透明の被膜を形成させた。
被膜の性能を耐食性試験及び環境サイクル試験により評価したところ、変色又は剥離等の劣化は全く見られなかった。また、被膜の性能を鉛筆硬度試験により評価した結果、4Hを示した。
【0050】
実施例2
γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン150.0g、ジ−t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)4.73gを、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテル(1,2−プロパンジオール−1−メチルエーテル−2−オール)580.5mLと1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル−1−アセテート(=3−メトキシブチルアセテート)193.5mLの混合溶媒[前者/後者(容量比;20℃)=75/25]に溶解し、窒素ガス雰囲気中、124℃で3時間撹拌してラジカル重合を行った。得られた重合溶液を40〜50℃で減圧下(32hPa)に濃縮した。生成したポリマーの分子量をGPCにより測定したところ、ピークは単峰性(僅かにショルダーが見られる)で、重量平均分子量は12000、数平均分子量は11500であった。
得られた濃縮液(ポリマー濃度約1.0mol/L)150.0mLに、テトラエトキシシラン21.92mL、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.23mLを加えて溶解し、これに0.0005N塩酸12.42mLを撹拌しながらゆっくり滴下した後、60℃で3時間撹拌した。得られた反応混合液を、孔径5〜10μmの濾過板を用いて濾過し、無色透明のハイブリッドポリマー溶液を得た。ハイブリッドポリマー溶液の粘度は18.5cP(0.0185Pa・s)であった。
純度99.9%の銀のメダル(直径27〜40mm、厚さ2〜3mm)に上記ハイブリッドポリマー溶液をスプレー法で塗布した。その後、130℃の温風乾燥機内で30分間乾燥することにより、銀の表面に無色透明の被膜を形成させた。
被膜の性能を耐食性試験及び環境サイクル試験により評価したところ、変色又は剥離等の劣化は全く見られなかった。また、被膜の性能を鉛筆硬度試験により評価した結果、6Hを示した。
【0051】
実施例3
γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン19.0g、ジ−t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)1.20gを、1,2−プロパンジオールモノメチルエーテル(1,2−プロパンジオール−1−メチルエーテル−2−オール)63.7mLと1,3−ブタンジオール−3−メチルエーテル−1−アセテート(=3−メトキシブチルアセテート)24.5mLとエトキシエタノール9.8mLの混合溶媒[3者の容量比(20℃9):65/25/10]に溶解し、窒素ガス雰囲気中、119℃で2時間20分撹拌してラジカル重合を行った。得られた重合溶液を40〜50℃で減圧下(32hPa)に濃縮した。生成したポリマーの分子量をGPCにより測定したところ、ピークはショルダーのあるやや広い形状で、重量平均分子量は17900、数平均分子量は5500であった。
得られた濃縮液(ポリマー濃度約0.8mol/L)100.5mLに、テトラエトキシシラン1.82mL、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.08mLを加えて溶解し、これに0.001N塩酸3.55mLを撹拌しながらゆっくり滴下した後、60℃で5時間撹拌した。得られた反応混合液を、孔径5〜10μmの濾過板を用いて濾過し、無色透明のハイブリッドポリマー溶液を得た。ハイブリッドポリマー溶液の粘度は15.1cP(0.0151Pa・s)であった。
純度99.9%の銀のメダル(直径27〜40mm、厚さ2〜3mm)に上記ハイブリッドポリマー溶液をスプレー法で塗布した。その後、150℃の温風乾燥機内で30分間乾燥することにより、銀の表面に無色透明の被膜を形成させた。
被膜の性能を耐食性試験及び環境サイクル試験により評価したところ、変色又は剥離等の劣化は全く見られなかった。また、被膜の性能を鉛筆硬度試験により評価した結果、4Hを示した。
【0052】
比較例1
γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン76.0g、ジ−t−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)2.4gを、エトキシエタノール294.0mLとテトラヒドロフラン98.0mLの混合溶媒[前者/後者(容量比;20℃)=75/25]に溶解し、窒素ガス雰囲気中、114℃で6時間撹拌してラジカル重合を行った。得られた重合溶液を40〜50℃で減圧下(32hPa)に濃縮した。生成したポリマーの分子量をGPCにより測定したところ、ピークは単峰性で、重量平均分子量は65000、数平均分子量は23000であった。
得られた濃縮液(ポリマー濃度約1.0mol/L)65.0mLに、テトラエトキシシラン1.48mL、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン0.07mLを加えて溶解し、これに0.001N塩酸2.88mLを撹拌しながらゆっくり滴下した後、60℃で5時間撹拌した。このハイブリッドポリマー溶液は加温中にゲル化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

(式中、R1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基、R2は炭素数2〜6のアルキレン基、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。jは1〜3の整数である。R3及びR4は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい)
で表される加水分解性シリル基を有する不飽和カルボン酸エステルを、非アゾ系ラジカル重合開始剤の存在下、C2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルとC2-4アルキレングリコールモノC1-3アルキルエーテルアセテートとの混合溶媒中で付加重合させることを特徴とする側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法。
【請求項2】
非アゾ系ラジカル重合開始剤として過酸化物系ラジカル重合開始剤を用いる請求項1記載の側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法により得られる側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体。
【請求項4】
請求項3記載の側鎖に加水分解性シリル基を有する重合体と、下記式(II)
【化2】

(式中、R5及びR6は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。kは2〜4の整数である。R5及びR6は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい)
で表されるアルコキシシラン化合物、又は前記式(II)で表される化合物及び下記式(III)
【化3】

(式中、R7及びR9は、同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基、R8は炭素数2〜6のアルキレン基を示す。mは1〜3の整数である。R7及びR9は、それぞれ、複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい)
で表されるメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物を、加水分解・脱水縮合反応に付すことを特徴とする側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法により得られる側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体。
【請求項6】
請求項5記載の側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を金属表面に被覆した表面被覆金属。
【請求項7】
請求項5記載の側鎖にポリシロキサン鎖を有する重合体を含む溶液を金属に塗工することを特徴とする表面被覆金属の製造方法。

【公開番号】特開2008−127433(P2008−127433A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311954(P2006−311954)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(503208150)独立行政法人 造幣局 (8)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】