説明

偽造防止装置

【課題】安価に製造でき、かつ偽装が容易に行えないようにして偽造を防止できる偽造防止装置を提供する。
【解決手段】偽造対象物の開閉部分または偽造対象物を収納するケースの開閉部分に取付けられる偽造防止装置において、ケースの開封時にマイクロコードが記録されたチップの一部が破損されてマイクロコードの再生が不能になるように構成する。チップは、少なくとも、基板と、該基板に積層された記録膜、接着剤を有することが好ましい。チップは反射膜を含んでもよい。また、チップはケースに対して接着され、記録膜と反射膜との間の接着力が接着剤のケースに対する接着力より弱く構成されており、ケースの開封時に記録膜より反射膜が剥離するなど破損する。マイクロコードが記録される際、マイクロコードは基本位置からの位置および角度を変更して記録できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止装置に関し、特に、偽造のために狙われる対象物(以下、偽造対象物という)を収納しているケース、例えば、各パチンコ台に毎に設置される主基板を収納しているケースの開封を検知するようにして未然に偽造対象物の偽造を防止する偽造防止装置に関する。また、本発明は、偽造対象物自体の開封を検知するようにして未然に偽造対象物の偽造を防止する偽造防止装置に関する。説明の便宜上、本発明を偽造対象物を収納しているケースの開封の検知に関連して主に説明するが、偽造対象物自体の開封を検知するものも含むものである。
【背景技術】
【0002】
偽造対象物を収納しているケースの開封がなされたか否かを検知する簡単なものとしてはシールがある。シールは偽造対象物を収納しているケースの開閉部分に、ケースが開封されると破損するように、貼り付けられる。このため、シールの破損により、ケースが開封されたことが検知され、偽造対象物が偽造された可能性があることがわかる。
【0003】
また、偽造対象物を収納しているケースの開封がなされたか否かを検知する他のものとしては特開2005−107745号公報に開示されているICタグがある。この偽造防止用ICタグは偽造対象物を収納しているケースの開閉部分に、ケースが開封されるとICタグ内のアンテナが破損するようになっている。このため、アンテナが破損すると、ICタグと読取り装置の間で信号の送受信が行うことができなくなり、このことにより、ケースが開封されたことが検知され、偽造対象物が偽造された可能性があることがわかる。
【特許文献1】特開2005−107745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偽造防止にシールを使用する場合、破損したシールに代えて、新たなシールを貼り付けることは容易に行うことができるので、すなわち、シールの偽装が容易に行えるので、偽造防止には不十分である。また、偽造防止用ICタグを使用する場合、ICタグ内にはアンテナに加えて、送受信器、記録装置等が形成されており、高価なものとなる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、安価に製造でき、かつ偽装が容易に行えないようにして偽造を防止できる偽造防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、偽造対象物の開閉部分または偽造対象物を収納するケースの開閉部分に取り付けられる偽造防止装置において、ケースの開封時にマイクロコードが記録されたチップの一部が破損されてマイクロコードの再生が不能になることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安価に製造でき、かつ偽造を防止できる偽造防止装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の偽造防止装置では、マイクロコードを記録するチップが偽造対象物を収納するケースの開閉部分に取り付けられる。ケースの開封時にはマイクロコードが記録されたチップの一部が破損される。そして、マイクロコードの再生が不能になるように構成されている。マイクロコードの再生が不能になっていると検知されたとき、ケースの開封が行われ偽造対象物の偽造がなされた可能性があることを認識できるようにする。
【0009】
チップは、少なくとも、基板と、該基板に積層された記録膜、接着剤を有することが好ましい。または、チップは、少なくとも、基板と、該基板に積層された記録膜、反射膜、接着剤を有することが好ましい。さらにまたは、チップは基板と、該基板に積層された第1記録膜、第1反射膜、中間層、第2記録膜、第2反射膜、接着剤を有することが好ましい。また、接着剤はケースに対して接着され、好ましくは、記録膜と反射膜との間の接着力が接着剤のケースに対する接着力より弱く構成されており、ケースの開封時に記録膜より反射膜が剥離する。マイクロコードが記録される際、マイクロコードは基本位置からの位置および角度を変更して記録できる。
【実施例】
【0010】
次に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の偽造防止装置(チップ)が取り付けられるケースの状態を示す断面図であり、図1aはチップを取り付ける前のケースが開いている状態を示し、図1bはチップを取り付ける際のケースが閉じた状態を示し、図1cはチップを取り付けた後のケースが閉じた状態を示し、図1dはケースを開封した状態を示す。図2はチップがケースの開閉部分に取付けられた状態を示す拡大図であり、図2aはチップの平面図を示し、図2bは図2aの断面A−Aを示し、図2cは図2aの断面B−Bを示す。図3はケースの開閉部分に取り付けられた偽造防止装置の詳細を示す断面図であり、図3aは偽造防止装置の封印時の断面を示し、図3bは偽造防止装置の開封時の断面を示す。図4は偽造防止装置に記録するコード(マイクロコード)の例を示す図であり、図4aはバーコード(マイクロバーコード)を示し、図4bはマイクロ二次元コードを示す。図5はバーコードが記録される位置と方向の一例を示す図である。図6はコードの記録・再生に用いる記録・再生装置の一例を示す斜視図である。図7は他の実施例のチップを示す断面図であり、チップの積層構造部分だけを示す。
【0011】
最初に、図1を参照すると、偽造対象物(図示せず)を収納するケース10が示されている。ケース10は、例えば、パチンコ台(図示せず)に取り付けられた下部ケース12と、下部ケース12に対して蝶番16により開閉可能に取り付けられた上部ケース14からなる。上部ケース14の開閉部分には、偽造防止装置(マイクロチップ)(以下チップということもある)20を挿入して封印するための貫通孔14aが形成されている。ケース10を封印するには、図1aに示すケース10が開いた状態から図1bに示すように閉じ、図1cに示すようにチップ20を貫通孔14aに挿入する。このとき、チップの下端に塗付されている接着剤によってチップ20は下部ケース12および上部ケース14に接着され、この結果、ケース10はチップ20によって封印されることになる。図1dは封印後の開封状態を示すが、このとき、後述するように、チップ20が破損する。なお、偽造対象物自体の開閉部分にチップを取り付けてもよい。
【0012】
図2を参照すると、チップ20にはマイクロコード22が記録されている。ケースの開閉部分は4つのリブ18によって下部ケース12の本体および上部ケース14の本体によって連結されている。
【0013】
図3aに示すように、チップ20は、基板20aに対して、順次、記録膜20b、反射膜20c、保護膜20d、接着剤20eが積層されて形成されたものである。ここで、基板20aは、記録再生の際に用いる光を透過できる任意の材質(一例としては透明な材質)からなるものである。また、チップ20は、接着剤20eが下部ケース12の上面、上部ケース14の貫通孔14aの内壁と貫通孔14a近傍の下面に接着されることによって下部ケース12および上部ケース14に接着される。そして、これらの膜を積層する際、接着剤20eの下部ケース12に対する接着力より弱い接着力をこれらの膜の間の少なくとも1個所に付与する。例えば、この実施例では、記録膜20bと反射膜20cとの間の接着力が接着剤20eの下部ケース12に対する接着力より弱くなるように形成されている。
【0014】
このため、図3bに示すように、ケース10の開封時には、チップ20の基板20aと記録膜20bは上部ケース14に接着された状態となり、反射膜20cと保護膜20dは下部ケース12に接着された状態となるので、記録膜20bから反射膜20cが剥離されることになる。反射膜20cがない状態では、再生時に、再生装置(または記録再生装置)からの光の反射光量が減り、マイクロコードを読み取ることができず、再生できないことになる。このことにより、開封後、再びケースを閉じたとしても、記録膜20bと反射膜20cを密着することが困難であるので、開封されたことを認識できる。また、剥離により記録膜もゆがみや破損が生じ再生できなくなり、開封されたことを認識できる。
【0015】
前述の実施例では、記録膜20bと反射膜20cとの間の接着力が接着剤20eの下部ケース12に対する接着力より弱くなるように形成されているが、その他の部分、例えば、基板20aと記録膜20bとの間の接着力を接着剤20eの下部ケース12に対する接着力より弱くなるようにしてもよい。また、チップは、記録再生が可能であれば、反射膜を含まないように構成してもよい。
【0016】
図4には、チップ20の記録膜20bに記録されるコードとして用いられるマイクロコードが示されている。図4aはマイクロバーコードを示す。図4bはマイクロ二次元コードを示す。図4から明らかなように、バーの幅は約1μm程度であり、バー間の距離は約2μmである。このときのチップの直径は約6mmであり、厚さは約1mmである。このようなチップを作成したり、チップにこのような微小の幅のマイクロコードを記録するには、一般には入手困難なチップ製造装置や記録(または記録再生)装置を用いる必要があり、このことより、チップの作成や記録を困難なものとしており、このため、偽装を困難なものとしている。なお、コードとしては、マイクロコードであれば、任意の適切なものであればよく、例えば、バーコードやQRコードであってもよい。なお、コードとして記録される情報は、任意の適切なものであるが、例えば、パチンコ台の場合、パチンコ台の番号、その他製造情報、年月日、場所、社名等がある。
【0017】
図5には、マイクロコードの位置と方向を変えた例が示されている。書き込み毎にマイクロコードの位置や角度を変えて、偽造の難度を高めている。例えば、基本位置(中央)からの位置X、Y、角度θの情報を付加する。なお、基本位置は例えばチップ外側のガイド部19(図2参照)などを基準として設定する。
【0018】
図6に示すように、記録再生装置30は、レーザダイオード32、ビームスキャン用2軸アクチュエータ34、コリメートレンズ36、2軸センサ38、フォーカス用1軸アクチュエータ40、対物レンズ42を有する。なお、図示の便宜上、再生時に必要な部品、例えば、チップ20からの反射光を分離するビームスプリッタや受光装置等は省略している。
【0019】
記録の際には、レーザダイオード32からの光はコリメータレンズ36により平行光として対物レンズ42に入射され、フォーカス用1軸アクチュエータ40により焦点がチップ20の記録膜に合わされ、記録される。ここで、ビームスキャン用2軸アクチュエータ34を平面内に動かすことで,平行光の角度を変え、記録膜上のスポットを移動することができる。このとき、2軸センサ38はビームスキャン用2軸アクチュエータ34の変位を検出するためのものである。なお、再生については説明を省略する。また、再生はカメラによる撮像を利用してもよい。
【0020】
図7は他の実施例のチップを示す。図7に示すように、この実施例のチップは、図3に関連して説明したチップに対して記録膜、反射膜を2層にしてそれらの間に中間層を設けたものである。すなわち、このチップ20は、基板20a、第1記録膜20b1、第1反射膜20c1、中間層20f、第2記録膜20b2、反射膜20c2、保護膜20dからなる。チップをこのように構成することによって、記録および再生を一層困難なものにし、偽造防止をより確実なものにすることができる。
【0021】
記録は、第1記録膜20b1、第2記録膜20b2にそれぞれ行われてもよいし、いずれか一方でもよい。また、一方の記録膜にダミー情報を記録するようにしてもよい。また、接着剤の接着力より弱い個所としては、任意の適切な個所、例えば、第1記録膜20b1と第1反射膜20c1との間、第1反射膜20c1と中間層20fとの間、中間層20fと第2記録膜20b2との間、または第2記録膜20b2と第2反射膜20c2との間等が選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の偽造防止装置(チップ)が取付けられるケースの状態を示す断面図であり、図1aはチップを取り付ける前のケースが開いている状態を示し、図1bはチップを取り付ける際のケースが閉じた状態を示し、図1cはチップを取り付けた後のケースが閉じた状態を示し、図1dはケースを開封した状態を示す。
【図2】チップがケースの開閉部分に取付けられた状態を示す拡大図であり、図2aはチップの平面図を示し、図2bは図2aの断面A−Aを示し、図2cは図2aの断面B−Bを示す。
【図3】ケースの開閉部分に取り付けられた偽造防止装置の詳細を示す断面図であり、図3aは偽造防止装置の封印時の断面を示し、図3bは偽造防止装置の開封時の断面を示す。
【図4】偽造防止装置に記録するコード(マイクロコード)の例を示す図であり、図4aはバーコード(マイクロバーコード)を示し、図4bはマイクロ二次元コードを示す。
【図5】バーコードが記録される位置と方向の一例を示す図である。
【図6】コードの記録再生に用いる記録再生装置の一例を示す斜視図である。
【図7】他の実施例のチップを示す断面図であり、チップの積層構造部分だけを示す。
【符号の説明】
【0023】
10 ケース
12 下部ケース
14 上部ケース
14a 貫通孔
20 チップ
20a 基板
20b 記録膜
20c 反射膜
20d 保護膜
20e 接着剤
22 コード(マイクロコード)
20b1 第1記録膜
20c1 第1反射膜
20f 中間層
20b2 第2記録膜
20c2 第2反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偽造対象物の開閉部分または偽造対象物を収納するケースの開閉部分に取り付けられる偽造防止装置において、ケースの開封時にマイクロコードが記録されたチップの一部が破損されてマイクロコードの再生が不能になることを特徴とする偽造防止装置。
【請求項2】
請求項1記載の偽造防止装置において、前記チップは、少なくとも、基板と、該基板に積層された記録膜、接着剤を有することを特徴とする偽造防止装置。
【請求項3】
請求項1記載の偽造防止装置において、前記チップは、少なくとも、基板と、該基板に積層された記録膜、反射膜、接着剤を有することを特徴とする偽造防止装置。
【請求項4】
請求項1記載の偽造防止装置において、前記チップは、基板と、該基板に積層された第1記録膜、第1反射膜、中間層、第2記録膜、第2反射膜、接着剤を有することを特徴とする偽造防止装置。
【請求項5】
請求項3または4記載の偽造防止装置において、前記チップは偽造対象物またはケースに対して接着され、記録膜と反射膜との間の接着力が接着剤の偽造対象物またはケースに対する接着力より弱く構成されており、偽造対象物またはケースの開封時に記録膜より反射膜が剥離することを特徴とする偽造防止装置。
【請求項6】
請求項1記載の偽造防止装置において、マイクロコードが記録される際、マイクロコードは基本位置からの位置および角度を変更して記録できることを特徴とする偽造防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−244448(P2009−244448A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89073(P2008−89073)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000134110)株式会社デジタルストリーム (3)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】