説明

傾動可能な蓋を有するタイヤブランクの加硫プレス

本発明は、タイヤブランク用の加硫プレスに関し、この加硫プレスは、タンク(4)と、摺動案内部材によってタンクに連結された蓋(6)とを有し、蓋とタンクの両方は、摺動案内部材に回動可能に取り付けられている。蓋(6)は、更に、バットに対して摺動するよう案内されるシャフト(24)に回動可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤブランク用の硬化プレスに関する。
【背景技術】
【0002】
生のタイヤブランクをプレス内で硬化させてこれを付形すると共にこれを加硫することが慣例である。プレスは、トラフ及びスライダによってトラフに連結されたカバーを有し、スライダは、カバーを垂直に摺動させることができる。スライダは、トラフに回動可能に取り付けられている。プレスを開くため、カバーを垂直に摺動させてこのカバーがトラフから遠ざかるようにし、次にスライダを傾けてカバーをどかしてトラフに接近させることができるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この構成では、トラフとカバーとの間の自由高さは、カバーの垂直変位によって制限される。モールド及びタイヤを装填するためにトラフへの接近を可能にするのに必要な空間をできるだけ空けるためには、スライダを著しく大きな角度にわたって傾けなければならない。これには、相当大きなエネルギーが必要であると共にカバーが傾くプレスの側では相当広い空間が必要になる。
【0004】
本発明の一目的は、機械のエネルギーの必要性又は空間に関する要件のいずれをも増大させないでトラフへの接近を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、タイヤブランク用の硬化プレスにおいて、プレスは、
‐トラフと、
‐摺動案内部材によってトラフに連結されたカバーと、を有し、カバー及びトラフは各々、摺動案内部材に回動可能に取り付けられ、
カバーは、更に、トラフに対して摺動可能に案内される心棒に回動可能に取り付けられていることを特徴とするプレスを提供する。
【0006】
かくして、カバーを上方に摺動させた後且つ摺動案内部材が傾いている間、摺動可能に案内される心棒は、カバーをトラフに対して更に傾け、それによりトラフの上方の空間を空ける。トラフの上方のカバーの摺動移動長さを変えることなくトラフとカバーとの間の自由高さがかなり増大する。これと並行して、この案内部材の傾斜角度を増大させないで又はそれどころかこの角度を減少させた状態でこの高い高さが得られる。この構成により、摺動案内部材を操作するアクチュエータの移動距離を減少させると共にこれらアクチュエータが発生させる力を減少させることも可能である。最後に、本発明は、カバーが傾く側での機械の空間に関する要件を厳しくしないだけでなく、これを甘くすることができる。
【0007】
有利には、心棒は、カバーを摺動案内部材に連結した心棒よりも位置の低いところで延びる。かくして、追加のアクスルにより、カバーは、これが摺動案内部材の操作によって傾けられるのと同一方向に傾けられ、それによりトラフの上方の開口部への接近がなおさら容易になる。
【0008】
本発明のプレスは、次の特徴のうちの少なくとも任意の1つを更に有することができる。
‐プレスは、心棒を案内するレールを有する。
‐プレスは、心棒を直線的に案内する要素及び/又は心棒を垂直に案内する要素を有する。
‐プレスは、カバーにしっかりと固定されると共に心棒を支持した連結ロッドを有する。
‐プレスは、摺動案内部材をトラフに対して回動させることができる少なくとも1つのアクチュエータを有する。
‐心棒は、アクチュエータとプレスの同一の側で延びている。
‐摺動案内部材は各々、スリーブ内に摺動可能に設けられたロッドを有する。
【0009】
本発明は又、タイヤブランク用の硬化プレスを開く方法において、
‐プレスのカバーをプレスのトラフに対して上方に摺動させるステップと、
‐カバーをトラフに連結している部材を傾けるステップと、
‐カバーを連結部材に対して傾けるステップと、を有することを特徴とする方法を提供する。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して非限定的な例として与えられる一実施形態の以下の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】硬化後のプレスの開放運動の一段階中における本発明のプレスを示す図である。
【図2】硬化後におけるプレスの開放運動の別の段階中における本発明のプレスを示す図である。
【図3】硬化後におけるプレスの開放運動の別の段階中における本発明のプレスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、X、Y及びZ直交基準系が用いられており、この場合、X方向及びY方向は、水平且つ互いに垂直であり、Y方向は、図の平面に垂直であり、X方向及びY方向に垂直なZ方向は、垂直方向を表している。
【0013】
図1〜図3は、本発明のプレス2を示している。これは、軽/軽重量、重車両又は土木工学型車両用車輪のための生タイヤブランクの加硫のための硬化プレスである。
【0014】
プレス2は、硬化モールドを受け入れるようになったトラフ4を有し、硬化モールドそれ自体は、ブランク及び/又はタイヤを受け入れる。かくして、このトラフは、頂部に対して開口した中空入れ物を形成する。プレスは、特に熱伝達流体を循環させることにより硬化を行う手段を含み、これについては詳細には説明しない。
【0015】
プレスは、トラフの上側開口部を閉鎖するよう設計されたカバー6を有する。プレスは、プレスを閉鎖位置にロックする手段を更に有する。
【0016】
プレスは、カバー6を摺動運動によりトラフ4に対して案内するのに役立つ2つの部材8を有する。これら部材は、トラフの各側に1つずつ位置している。トラフ及びカバーの前で図に見える一方の部材によって、トラフ及びカバーの他方の側に位置した他方の部材が見えないようになっている。各案内部材8は、この場合、案内スリーブ12内に摺動可能に設けられたロッド10を有し、この案内スリーブは、ロッドと同軸である。
【0017】
プレスは、トラフ4にしっかりと固定されると共にその後ろのところで延びるクレビス又はUリンク14を有する。
【0018】
各部材8に関し、プレスは、スリーブ12にその上端部のところでしっかりと連結されたアーム16を有する。アーム16は、Y方向に平行な心棒18回りに回動することができるようクレビス14に直接取り付けられることによってトラフ4に回動可能に取り付けられている。
【0019】
ロッド10は、Y方向に平行な回転軸線20回りに回動することができるようカバー6に直接取り付けられている。この軸線は、カバーの垂直中間平面を通る。
【0020】
カバーは、その後側にしっかりと締結された連結ロッド22を支持している。連結ロッド22は、全体として直線状の形状を有する。連結ロッドは、その他端部のところに、Y方向に平行な回転軸線を定めるシャフト24を有している。プレス2は、シャフトをトラフ4に対して摺動可能に案内する手段を有する。これら手段は、この実施例では、クレビス14内に形成され、それ故トラフ4にしっかりと固定されたレール又は垂直直線状スライダ26により形成されている。
【0021】
プレス2は、アーム16を操作する手段を有し、これら手段はこの場合、シリンダ形アクチュエータ28から成るアクチュエータによって形成され、その遠位端部は、アーム16の中央部分に直接回動可能に取り付けられている。その回転軸線30は、心棒18の上方且つ心棒20の下方のところで延びている。
【0022】
上述の回転軸線/心棒のすべては、Y方向に平行である。
【0023】
次に、プレスの作動及び本発明の方法について説明する。
【0024】
図1では、プレスは、これが硬化プロセス中に取る形態にある。カバー6は、トラフ4を閉鎖している。ロッド10、スリーブ12及び連結ロッド22は、アーム16と同様、垂直である。ロッド10は、これがスリーブ12内に最も引っ込められた位置にある。
【0025】
図2を参照すると、プレスを開くため、まず最初に、カバー6をトラフ4に対して上方に摺動させる手段(図示せず)を用いて摺動案内部材8を作動させる。したがって、この段階での運動は、並進運動である。
【0026】
カバー6がその摺動移動の上限にいったん達すると、シリンダ形アクチュエータ28を作動させてアーム16を後方に、即ち、図2では左側に向かって押す。この作用により、アーム16及び各部材8により形成された組立体が矢印32で示されているように心棒18回りに、即ち、図において反時計回りの方向に回転する。この回転自体の結果として、カバー6及び連結ロッド22により形成された組立体は、心棒24回りに回動し、それと同時に、結果的にこの心棒は、スライダ26内で下方に摺動する。カバーのこの追加の回転は、この心棒とこのスライダの協働により引き起こされる。カバーは、心棒20回りに摺動案内部材8に対して回転することが推定される。さらに、シリンダ形アクチュエータにより引き起こされるトラフ4に対するカバーの運動は、もはや、単純な回転運動には変えられない。事実、カバーの運動は、この時点では、回転運動及び並進運動で構成されている。
【0027】
かくして、カバーの下側とトラフの上側のなす角度A2は、先行技術の場合よりも大きい。同様に、H1がカバーの下側の最も上側の箇所とトラフの上側との間の高さを示すために用いられている場合、先行技術の場合よりも高い高さが得られる。かくして、トラフに対する良好な接近が達成され、それにより、硬化モールド及びケーシングをプレス内に容易に装填することができる。それと同時に、初期垂直方向に対する部材10の傾斜角度A1を先行技術において必要な傾斜角度に対して減少させることができる。また、シリンダ形アクチュエータ28の移動距離及び生じるスラスト又は推力を減少させることが可能である。同じことは、例えば開いたカバーの上側の最も後方の箇所とトラフの主垂直対称軸線を隔てる距離L1で判断して機械のその後側、即ち、図において左側における空間上の要件にも当てはまる。
【0028】
したがって、本発明により、後方傾斜段階中、カバー6を摺動部材8に連結している心棒20回りにカバー6を回動させることができ、それにより傾斜角度A1又は傾斜移動距離をいずれも増大させないで、カバーとトラフとの間の相対角度A2を増大させることができる。
【0029】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく本発明の多くの改造例を想到できる。種々の軸線/心棒の位置を設計変更することができる。摺動案内手段の構成を設計変更することができ、レール、リンク装置等を採用したシステムが提供される。カバーの傾斜運動中における心棒24の移動は、非垂直且つ/或いは非直線状であって良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤブランク用の硬化プレス(2)において、前記プレスは、
‐トラフ(4)と、
‐摺動案内部材によって前記トラフに連結されたカバー(6)と、を有し、前記カバー及び前記トラフは各々、前記摺動案内部材に回動可能に取り付けられ、
前記カバーは、更に、前記トラフに対して摺動可能に案内される心棒(24)に回動可能に取り付けられている、プレス。
【請求項2】
前記心棒(24)は、前記カバー(6)を前記摺動案内部材(8)に連結した心棒(24)よりも位置の低いところで延びている、請求項1記載のプレス。
【請求項3】
前記心棒(24)を案内するレール(26)を有する、請求項1又は2記載のプレス。
【請求項4】
前記心棒(24)を直線的に案内する要素(26)を有する、請求項1〜3のうちいずれか一に記載のプレス。
【請求項5】
前記心棒(24)を垂直に案内する要素(26)を有する、請求項1〜4のうちいずれか一に記載のプレス。
【請求項6】
前記カバー(6)にしっかりと固定されると共に前記心棒(24)を支持した連結ロッド(22)を有する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載のプレス。
【請求項7】
前記摺動案内部材(8)を前記トラフ(4)に対して回動させることができる少なくとも1つのアクチュエータ(28)を有する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載のプレス。
【請求項8】
前記心棒(24)は、前記アクチュエータ(28)と前記プレスの同一の側で延びている、請求項7記載のプレス。
【請求項9】
前記摺動案内部材(8)は各々、スリーブ(12)内に摺動可能に設けられたロッド(10)を有する、請求項1〜8のうちいずれか一に記載のプレス。
【請求項10】
タイヤブランク用の硬化プレス(2)を開く方法において、
‐前記プレスのカバー(6)を前記プレスのトラフ(4)に対して上方に摺動させるステップと、
‐前記カバーを前記トラフに連結している部材(8)を傾けるステップと、
‐前記カバー(6)を前記連結部材に対して傾けるステップと、を有する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−512123(P2013−512123A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540481(P2012−540481)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052511
【国際公開番号】WO2011/064499
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】