説明

傾斜型荷重支持板付伸縮装置

【課題】伸縮量及び遊間幅が大きい場合であっても比較的小さいサイズで施工性が良く、走行性、スリップ発生、騒音発生、止水性、耐久性等に優れた道路橋梁用伸縮装置を提供する。
【解決手段】伸縮用ゴム状弾性体1の荷重を支持する荷重支持板2をテーパー(傾斜)形状にする。大きな伸縮吸収には1ないし複数箇所の空隙7を設ける。広い床版遊間には伸縮装置中央底部に平板または円、凹、凸形状等の荷重支持板を設けて小型化する。これにより、大きな伸縮量吸収と広い床版遊間に適用可能となり、スムースな走行性、騒音発生防止、スリップ防止、高止水性、長期耐久性、施工容易性等、その機能を大幅に改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は道路橋梁、高架橋などの路面を構成する各床版の間の継目部分に構築され、継目部分に段差を生じさせることなく、継目部より、漏水、車両の走行時に振動及び騒音の発生を可及的に防止することのできる道路橋梁用伸縮装置(以下「伸縮装置」という。)に関するもので、土木建設の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋梁などの路面をなす各床版の継目部分には、外気温による床版の伸縮を吸収するために、伸縮装置が配置されているが、継目部分により形成される段差は、路面を走行する車両による騒音の発生源となるばかりでなく、走行車両が振動する原因ともなり、当該車両に乗車している運転者や同乗者に不快感を与えるのみならず、車両の運行をスムースにするための伸縮装置が種々開発され、提案されている。
【0003】
かかる伸縮装置には多くの形態があるが、その殆どの伸縮装置は荷重支持板が伸縮目地部中央部で、かつ、伸縮装置の上部に水平に設けられている。他方、伸縮目地部中央部の上部に水平に荷重支持板が設けられ、その水平荷重支持板の荷重を支持する固定用底板が傾斜(テーパー)型のものは伸縮材の荷重支持が主目的でなく、伸縮装置の定着用の後打ちコンクリートの充填時の空隙防止をするために荷重支持板を傾斜(テーパー)にしているものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の伸縮装置は荷重支持板をその上面に水平に設けるため、所定の伸縮量及び床版遊間幅に適用するためには伸縮装置の幅が飛躍的に大きくなり、当該伸縮装置の厚み、重量等も比例して大きくなるため騒音発生、スリップ発生、継ぎ目漏水、耐久性等の問題点の解決が課題とせれていた。
【0005】
従来の縦目地用伸縮装置は、荷重支持板をその上面に水平に設けるため荷重支持板が段差発生時に線接触での荷重支持となり、破損しやすく、騒音発生、交通事故等の問題点がある。
【0006】
従来の歩道用伸縮装置は、荷重支持板をその上面に水平に設けるため、歩道に適用する場合は、伸縮吸収のための表面の溝が大きく、女性、老人、幼児歩行者等の転倒事故の発生等の問題点もあった。
【0007】
また、従来の伸縮装置は、大きな伸縮量、広い床版遊間幅に適用するには、その伸縮量、床版遊間幅に比例して、厚み、重量等も比例して大きくなるため、製造、運搬、施工等に問題があり、その解決も課題とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、伸縮装置の伸縮目地中央上面の支持板はなくし伸縮装置底部に、かつ、水平形状からテーパー(傾斜)形状にすることにより、伸縮吸収量(横、縦、斜角、上、下方向)が大きくとれ、かつ伸縮目地部(床版遊間部)の広遊間に適用可能となり、伸縮装置の必要機能である騒音防止、走行性、止水性、耐久性、施工性等を大幅に改善した伸縮装置の提供をするものである。
【0009】
請求項2の発明は、伸縮装置の伸縮量を更に大きくするために、伸縮吸収用のゴム状弾性体に伸縮吸収用の空隙を1ないし複数箇所設けたことを特徴とする請求項1の伸縮装置。
【0010】
請求項3の発明は、伸縮装置の伸縮量を一層大きくすると同時に広い床版遊間にも適用が可能にするために伸縮目地中央底部に相対する傾斜型荷重支持板の遊間部に荷重支持板とは一定の間隔をおいて水平、円形、凸型、凹型等の各種類の荷重支持板を設けたことを特徴とする請求項2の伸縮装置。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る伸縮装置は、伸縮吸収材はゴム状弾性体であり、かつ、そのゴム状弾性体が車輪の荷重を受ける構造であるため、伸縮吸収がスムースに行われ、当該ゴム弾性体にかかる荷重は傾斜型荷重板で直接受けるため、騒音発生防止、走行性、止水性、耐久性等に優れ、その構造が単純であるため、施工工程が短く、特殊な冶具・道具等も必要なく、施工が容易な優れた伸縮装置である。
【0012】
特に、この発明に係る伸縮装置は、伸縮吸収材のゴム状弾性体に伸縮吸収用の空隙を1ないし複数箇所を設けることにより大きな伸縮量を吸収可能な伸縮装置の提供ができる。
【0013】
また、この発明に係る伸縮装置は、伸縮装置中央底部に荷重支持板を設けることで、大きな伸縮量の吸収が可能となると同時に、広い床版遊間にも適用が可能となる伸縮装置の提供をするものである。
【0014】
さらに、従来の縦目地用伸縮装置は、水平形状の荷重支持板が新旧床版の段差発生の際に荷重を線接触面で受けるため、破損、騒音発生、交通事故、漏水等が多発する問題点が指摘されていた。この発明に係る伸縮装置は、伸縮装置の車両走行面は伸縮吸収用ゴム弾性体で構成され、傾斜型荷重支持板は伸縮装置の底部に設けられているので、既設床版と新設床版の段差には車両走行面がテーパー形状となり、車両走行上の段差吸収に適し、長期耐久性、高止水性に優れ、施工容易な伸縮装置を提供をするものである。
【0015】
なお、従来の歩道用伸縮装置は、大きな伸縮量及び大きな床版遊間が必要な場合は、伸縮装置の荷重支持板が上面に水平に設けられていて、非常に大きな伸縮溝が必要になり、歩行者の溝部の転倒事故等が発生する問題点があった。この発明の伸縮装置は、伸縮吸収用ゴム状弾性体に伸縮吸収用の空隙を1ないし複数箇所設けること、及び伸縮装置中央底部の遊間部に荷重支持板を設けることにより、大きな伸縮量が吸収でき、その上、広い床版遊間にも対応が可能となり、大きな溝は必要なく歩行者保護に最適な伸縮装置である。
【0016】
この発明に係る伸縮装置は、比較的小さい幅、厚み、重量で、大きな伸縮量、床版遊間幅、段差吸収が可能であり、更に、小さい溝でスリップ防止が可能であり、必要機能が満たされ、製造上、運搬、施工上も従来の伸縮装置を大幅に改善した優れた伸縮装置の提供をするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の伸縮装置の実施例を、図面に基づいて、更に詳細に説明するが、この発明はその要旨を変更しない範囲において種々改良を加えることが可能なものである。
【0018】
図1はこの発明係る伸縮装置の概略断面図、図2は伸縮吸収用の空隙を設けた請求項2の概略断面図、図3は伸縮目地部中央底部に荷重支持板を設けた請求項3の概略断面図、図4は請求項3の実施例を示す説明図である。
【0019】
この発明に係る伸縮装置は図1、図2、図3で明らかなように、符号1、2、3、4、5、6、7、8 を一体成型品とする伸縮装置である。また、この伸縮装置は図4に示す通り、取付冶具により舗装高に合わせて設置し、アンカーボルト5と床版鉄筋10、11、12等に溶接等で固定した後、伸縮装置の両側に後打ちコンクリート9を打設する構造である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】請求項1の発明に係る伸縮装置の概略断面図
【図2】請求項2の発明に係る伸縮装置で、伸縮吸収用の空隙を設けた伸縮装置の概略断面図
【図3】請求項3の発明に係る伸縮装置で、伸縮目地部中央底部に荷重支持板を設けた伸縮装置の断面図
【図4】請求項3の発明に係る伸縮装置を橋梁の床版に取付けた場合の「取付断面図」
【符号の説明】
【0021】
1 ゴム状弾性体
2 傾斜荷重支持板
3 橋軸直角方向の溝
4 橋軸方向の溝
5 伸縮装置本体に溶接したアンカーボルト
6 伸縮装置本体に溶接した底部アンカーボルト
7 伸縮吸収用空隙
8 伸縮目地部中央底部に設けた荷重支持板
9 伸縮装置両側に現場で施工する後打ちコンクリート
10 床版埋め込み鉄筋
11 床版箱抜き部補強筋
12 伸縮装置固定用通し筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状弾性体及びその弾性体に載荷される輪荷重を支持する伸縮目地部に一定目地間隔を設けて相対して設置される荷重支持板が底部にテーパー(傾斜)型に設置されたことを特徴とする道路橋梁用伸縮装置。
【請求項2】
ゴム状弾性体に伸縮吸収用の空隙を1ないし複数箇所を設けたことを特徴とする請求項1の道路橋梁用伸縮装置。
【請求項3】
ゴム状弾性体の伸縮目地部の相対するテーパー型荷重支持板の目地間隔(遊間)部の中央底部に、当該テーパー(傾斜)型荷重支持板とは所定の間隔を隔てて設置された平板、円形、凸型、凹型等の各種形状の荷重支持板を設けたことを特徴とする請求項2の伸縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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