説明

像を面上に投影するための装置および上記像を動かすための装置

本発明は、面上に像を投影するための装置であって、光線を生成するための光源と、上記光線の進路に配置されたマスクと、上記マスクの上記像の焦点を面上に合わせるために、上記マスクの後に配置され、上記面に平行ではないレンズとを備え、上記マスクのエッジに沿ったほぼ全ての位置の各々における上記レンズに対する距離v、および、上記マスクの上記像の上記エッジにおける上記レンズに対する対応する位置の距離bは、式1/v+1/b=1/fに略対応し、fが上記レンズの焦点の長さであることを特徴とする装置に関する。また、本発明は、面上の像を移動するための装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像を面上に投影するための装置であって、
光線を生成するための光源と、
上記光線の進路に配置されたマスクと、
上記マスクの像の焦点を面上に合わせるために、上記マスクの後に配置されたレンズとを備え、上記面は上記レンズに平行ではない装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、パルスレーザー堆積(PLD)の分野においては、面上への像の投影を制御することが重要である。PLDによれば、レーザー光線が、アブレーション可能材料の面上に角度をもって投影される。投影された像は、レーザー光線のエネルギーが集中するスポットである。このエネルギーは、上記面の材料を蒸発させてプラズマプルームとし、このプラズマプルームを、基板の面をコーティングするために用いることができる。
【0003】
PLDでは、マスクの像であるスポットは、レーザーエネルギーが均等に分配されるように均一であることが重要である。これは、スポットを投影する面の固形材料と組織が一致するプラズマプルームを有するために必要である。もし、スポットが均一でなければ、面材料の一部の成分がプラズマ相になり、一部の成分がメルトドロップおよびフォームドロップのみになり、そして、一部の成分が固体のままであるということが起こり得る。
【0004】
PLDでは、光線は、一般に、面上に角度をもって投影されるので、スポットは、常にいくらか不均一である。この不均一性は、光線と面との間の角度が小さくなる程、より目立つようになる。「角度をもった、あるいは、傾いた(under an angle)」という文言により、光線が、面に垂直でも平行でもないことが分かる。
【0005】
PLDの分野では、ますます広い基板面をコーティングする傾向がある。光線が投影される面の近くに基板を配置する必要があるので、光線を面上に案内できるスペースが減少し、それに応じて、光線と面との間の角度が減少して、結果として、一層のエネルギー分配の不均一をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
上述の不都合を減少させる、あるいは、防ぐことが本発明の目的である。
【0007】
この目的は、前文(プレアンブル)の構成を備える装置であって、上記マスクのエッジに沿ったほぼ全ての位置の各々における上記レンズへの距離v、および、上記マスクの上記像のエッジにおける対応する位置の上記レンズへの距離bが、式1/v+1/b=1/f(fは上記レンズの焦点の長さ)に略対応していることを特徴とする装置により達成される。
【0008】
マスクのエッジに沿った各々のポイントが上述の式に適合するように、マスクをレンズに対して整置させることによって、シャープな像が面上に投影される。本発明がPLDで用いられるとき、シャープなスポットが投影され、その結果、このスポットにおける均一なエネルギー分配が達成される。
【0009】
本発明による装置の好ましい実施形態において、上記面は、フラットであり、かつ、上記レンズに対して角度をもって配置され、上記マスクは、光線が通過する開口を有するフラットプレートであり、上記フラットプレートは、上記レンズに対して角度をもって配置されている。
【0010】
この実施形態は、本発明のためのシンプルな解決手段を提供する。面がフラットであり、かつ、マスクがフラットプレートなので、マスクのエッジに沿ったあるポイントが上記式に適合して、面にシャープな像を投影することを確実にするのに十分である。
【0011】
本発明による装置の別の実施形態において、上記面は、湾曲していて、上記マスクは、上記式1/v+1/b=1/fに適合するように湾曲している。
【0012】
本発明によれば、湾曲した面上にシャープなスポットを投影することもできる。このためには、マスクのエッジに沿った各々のポイント、および、像の対応するポイントが、式1/v+1/b=1/fに適合するように、マスクもまた形作られている必要がある。
【0013】
本発明によるさらに別の実施形態において、上記マスクは、複数のマスク部分から構成されている。このマスク部分は、小さいマスクであり、組み合わせて、本発明による装置に適している大きいマスクを提供する。この小さいマスクによれば、特定の湾曲した投影面に対して必要な湾曲したマスクを提供することがより簡単にできる。各々のマスク部分は、開口を有するフラット要素であるのが好ましい。このようなマスク部分は、簡単に製造することができる。
【0014】
小さいマスク部分は、個別のステップを有する主なマスクを提供するが、偏向ずれは小さいため、先行技術と比較してまだ多数の利点が達成される。
【0015】
この小さいマスク部分を用いれば、マスク部分を手動でも制御によっても調節可能にすることで、マスクを投影面の形状によって決まるように適合させることさえも可能になる。この後者の実現性において、像を投影して、光線に対して面を動かしている間に、または、光線の角度を変更している間に、マスクを適合させることができるであろう。
【0016】
本発明による装置の他の好ましい実施形態において、上記面は、アブレーション可能材料の面であり、上記光線は、上記アブレーション可能材料のプラズマプルームを生成するためのレーザービームである。
【0017】
これらの特徴は、パルスレーザー堆積の装置にとって代表的なものである。好ましくは、基板が上記アブレーション可能材料の面と平行に配置されていて、上記基板の面は、上記アブレーション可能材料でコーティングされる。
【0018】
パルスレーザー堆積法によれば、アブレーション可能材料の面に沿って投影されたスポットを動かすこともまた一般的である。スポットを動かすことによって、生成されたプラズマプルームもまた動かされ、基板の面上にプラズマプルームが広がる原因となる。スポットのこの動きは、一般的に、角度が調整可能なミラーにより光線を反射することによって達成される。ミラーの角度を変更するとき、スポットをアブレーション可能材料の面に沿って動かすことができる。
【0019】
一方、角度が調整可能なミラーと共にスポットを動かすことは、マスクの像のエッジにおける位置とレンズとの間の距離bを変化させる。これは、面上のマスクの像を不鮮明にしてしまう。マスクの位置と方向を変化させることによって、これを修正できる。
【0020】
また一方、本発明によれば、焦点に影響を与えることのないスポットの動きを異なった方法で達成することができ、このスポットの動きは、スポットに焦点を当てることに関する上述の発明から切り離して用いることもできる。そのため、本発明によるスポットの動きを先行技術の装置と共に用いることもできる。
【0021】
スポットの焦点に影響を与えることのないスポットの動きは、次の装置により達成される。角度をもった、つまり傾いた光線を面上に案内し、上記面に沿って上記傾いた光線を動かすための装置であって、上記装置は、上記面および上記光線の進入進路と平行な第1方向に移動可能な第1キャリッジと、上記傾いた光線を案内するために上記第1キャリッジに配置された第1ミラーと、上記光線を上記面に集めるために上記第1キャリッジ上かつ上記第1ミラーの後方に配置されたレンズとを備える。
【0022】
PLDの分野において、マスクとレンズの距離vは、像とレンズの距離bよりもかなり大きい。そのため、マスクの像とレンズとの間の距離bが一定であるならば、距離vの小さな変化は、像の焦点に著しい影響を与えない。本発明によれば、ミラーとレンズを共に、そして、光線の進入経路と同じ方向に動かすことによって、距離bが一定に保たれる。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明の装置は、上記光線をさらに案内するために、上記第1ミラーと上記レンズとの間に配置された第2ミラーを備える。
【0024】
距離bと距離vが、同じオーダーであるとき、マスクを第1キャリッジと共に動かすのが好ましく、第1キャリッジを動かし、それに応じて、面に沿ってスポットを動かすとき、距離bと距離vが一定に保たれて、常にスポットに焦点を当て続ける。
【0025】
さらに他の好ましい本発明の実施形態は、上記第1キャリッジが第1方向に移動可能であり、上記第1方向に垂直、かつ、上記面に平行な第2方向に移動可能である第2キャリッジと、到着した光線を上記第2方向に偏向させるための固定ミラーと、上記固定ミラーからの上記光線を上記第1方向に偏向させるために、上記第2キャリッジ上に配置された第3ミラーとを備える。
【0026】
この実施形態では、面上の2つの軸に沿ってスポットを動かすことができる。これは、面の形状が、先行技術と差がない円形にもはや限定されることはないという有利な点を有する。他の有利な点は、レーザーのパルス振動数が、面上のスポットの位置にもはや依存しないということである。先行技術において、円形面が回転し、スポットが面の中心に近づくとき、レーザーの振動数は、平行な基板の面全部を一様にコーティングするために低く維持する必要がある。本発明では、面に沿って所望のどんな速度でもスポットを動かすことができ、レーザーの最大パルス振動数の使用を可能にさせ、高い堆積速度をもたらす。
【0027】
さらに他の有利な点は、面上の特定の座標にスポットを動かすことができるので、堆積を局所的に実行できることである。シャドウマスクを用いることで、局所的に堆積したコーティングを、基板上に正確に画定することができる。
【0028】
さらに、スポットの動きと共に、ターゲットを移動させることもできる。これは、より小さいターゲットを必要とするが、それでも相対的に大きい基板の面上にコーティングを堆積させることができる。
【0029】
本発明はさらに、面に像を投影するための本発明による装置と、角度をもった、つまり傾いた光線を面上に案内し、この面に沿って上記傾いた光線を動かすための本発明による装置との組み合わせを提供する。
【0030】
本発明では、レンズの軸が、光線の軸と略一致するのが好ましいが、レンズの軸と光線の軸との間に角度を持つこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明のこれらや他の有利な点は、添付の図面と併せて説明される。
【図1】図1は、像を面に投影するための装置を示す略図である。
【図2】図2は、傾いた光線を面上に案内し、この面に沿って上記傾いた光線を動かすための装置を示す略図である。
【図3】図3は、光線を案内するための装置の第2実施形態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に、本発明による装置の一実施形態の略図が示されている。特に、装置1は、パルスレーザー堆積(PLD)に適している。
【0033】
この装置1は、軸3を有するレーザー光線2を生成する。このレーザー光線2は、マスク4に投影される。このマスク4は、この実施形態において、開口5を有するプレートである。
【0034】
マスク4の開口5を通過するレーザー光線の一部6は、レンズ7に入射し、このレンズ7が、光線を集中させて、面9上にスポット8を投影する。スポット8により面9上に加えられたエネルギーは、面9の蒸発した材料のプルーム(図示せず)を生成することができる。そして、このプルームは、基板10上に堆積する。
【0035】
面9上に集束スポット8を有するために、マスク開口5のエッジに沿ったほば全ての位置の各々からレンズ7までの距離v,vと、スポット8、すなわち、マスク4の像のエッジにおいて対応する位置からレンズ7までの距離b,bとが、式1/v+1/b=1/fおよび1/v+1/b=1/f(fはレンズ7の焦点長さ)にそれぞれ対応していることが必要である。
【0036】
図2において、面22上に角度をもった光線21を案内し、面22に沿って上記傾いた光線21を動かすための装置20が示されている。
【0037】
この装置は、面28上を移動可能であるキャリッジ23を有している。このキャリッジ23上に、第1ミラー24と、第2ミラー25と、レンズ26とが配置されている。
【0038】
光線21の進入経路27は、面28に平行であり、この光線21は、面28に沿って、キャリッジ23の位置に依存しない一定の角度でミラー24上に入射する。
【0039】
そのとき、光線21は、ミラー24によって第2ミラー25上に反射され、第2ミラー25は、レンズ26に向かって光線を反射する。そして、このレンズは、光線21を集束させて、集束されたスポット30を面22上に投影する。
【0040】
キャリッジ23が面28に沿って移動するとき、投影されたスポット30は、それに応じて面22上を移動する。面22が面28に平行なので、レンズ26とスポット30との間の距離bは、キャリッジ23ひいてはスポット30が移動するとき、変化しない。
【0041】
そのため、本発明による装置20によれば、面22に沿ってスポット30を移動させることができ、さらに、スポット30の焦点を維持することができる。
【0042】
図3に、光線を案内するための装置の第2実施形態の略図が示されている。
【0043】
この装置40は、第2方向42に移動可能な第2キャリッジ41を備える。この第2キャリッジ41上に、第1キャリッジ23(図2にも示すように)が配置される。この第1キャリッジ23は、第1方向43に移動可能である。第1方向43と第2方向42とは、直角を成す。
【0044】
第2キャリッジ41上に第3ミラー47が配置され、第2キャリッジ41に隣接して固定ミラー45が配置される。
【0045】
光線27は、固定ミラー45を介して装置40に進入する。この進入経路27は、第1方向43に平行である。固定ミラー45が光線を反射し、反射された光線46は、第2方向42に平行である。その後、反射された光線46は第3ミラー47に達し、この第3ミラー47は、第1方向43に平行な方向に光線を反射する。その結果、この反射された光48は、図2と共に説明されているように、装置20に進入する。
【0046】
この装置40によれば、面上のどんな位置でも光線21を案内することができる一方、この面上のスポットの焦点を維持することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を面上に投影するための装置であって、
光線を生成する光源と、
上記光線の進路に配置されたマスクと、
上記マスクの像の焦点を面上に合わせるために、上記マスクの後に配置されたレンズとを備え、上記面は上記レンズに平行ではない装置において、
上記マスクのエッジに沿ったほぼ全ての位置の各々における上記レンズへの距離v、および、上記マスクの上記像のエッジにおける対応する位置の上記レンズへの距離bが、式1/v+1/b=1/f(fは上記レンズの焦点の長さ)に略対応していることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
上記面は、フラットであり、かつ、上記レンズに対して角度をもって配置され、上記マスクは、光線が通過する開口を有するフラットプレートであり、上記フラットプレートは、上記レンズに対して角度をもって配置されていることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
上記面は、湾曲していて、上記マスクは、上記式1/v+1/b=1/fに適合するように湾曲していることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の装置において、
上記マスクは、複数のマスク部分から構成されていることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
各々のマスク部分は、開口を有するフラット要素であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の装置において、
上記面は、アブレーション可能材料の面であり、上記光線は、上記アブレーション可能材料のプラズマプルームを生成するためのレーザービームであることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、
基板が上記アブレーション可能材料の面と平行に配置されていて、上記基板の面は、上記アブレーション可能材料でコーティングされることを特徴とする装置。
【請求項8】
角度をもった、つまり傾いた光線を面上に案内し、上記面に沿って上記傾いた光線を動かすための装置であって、
上記装置は、
上記面および上記光線の進入進路と平行な第1方向に移動可能な第1キャリッジと、
上記傾いた光線を案内するために上記第1キャリッジに配置された第1ミラーと、
上記光線を上記面に集めるために上記第1キャリッジ上かつ上記第1ミラーの後方に配置されたレンズと
を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において、
上記光線をさらに案内するために、上記第1ミラーと上記レンズとの間に配置された第2ミラーを備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載の装置において、
上記第1キャリッジが第1方向に移動可能であり、上記第1方向に垂直、かつ、上記面に平行な第2方向に移動可能である第2キャリッジと、
到着した光線を上記第2方向に偏向させるための固定ミラーと、
上記固定ミラーからの上記光線を上記第1方向に偏向させるために、上記第2キャリッジ上に配置された第3ミラーと
を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1つに記載の装置と、請求項8から10のいずれか1つに記載の装置とを組み合わせた装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2012−514688(P2012−514688A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544022(P2011−544022)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067760
【国際公開番号】WO2010/079092
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(511052015)ソルマテス・ベスローテン・フェンノートシャップ (4)
【氏名又は名称原語表記】Solmates B.V.
【Fターム(参考)】