説明

像分離装置

【課題】投影像の影響を受けた背景画面から投影像を除去して背景の像の画像データを取得したり、投影像のデータのみを再現することができる像分離装置を提供する。
【解決手段】投影手段12は、画像の情報を複数の原色成分に分解して各原色成分を順次高速で周期的に背景画面に投影する。撮像手段16は、前記投影の影響を受けた前記背景画面を含む像を各原色対応のセンサにより前記投影に同期して撮像する。演算処理手段17は、前記投影手段12と撮像手段16において、予め定まる各原色に対する前記複数のセンサ間の相関関係関数を用いたアルゴリズムに基づいて、前記各原色対応の画像出力から当該原色成分とこの影響を受けた当該原色成分以外の1以上の原色の出力を演算処理することにより、前記投影の影響を受けていない背景画面のみの画像データまたは背景画面を含まない画像の情報データを得るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影画像の影響を受けた背景画面において、投影画像が無い状態と同等の背景画面の画像データを分離したり、投影画像のデータを合成画像から分離することができる像分離装置に関する。さらに、本発明は、重なり部分のない原色の投影や、重なりがなく正確に原色に対応する出力のみを取り出すセンサを用いることができない通常の環境においても、像分離を可能にする像分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景と非背景(物体)とを分離するものとしてクロマキーシステムがあり、これは、背景に特定の色を使ったり背景の色を変化させて非背景(物体)を分離するものである。
特許文献1記載の発明(クロマキーシステム)は、背景の色を変化させて変化する色を背景と識別し、背景と非背景を分離することを開示している。
特許文献2記載の発明(物体画像切り出し方法、装置、システム及びそのプログラムを記録した媒体)は、2つの異なる背景色における物体の画像から切り出した物体領域(クロマキー物体領域切り出し)の論理和をとることで、物体画像の切り出しを行うことができることを開示している。
特許文献3記載の発明(像分離装置)は、プロジェクタ等により投影されている投影像を除去して投影像の無い場合の実像を得ることができることを開示しているが、投影像を完全に除去することができない。
【特許文献1】特許第3241327号公報
【特許文献2】特開2000−152278号公報
【特許文献3】特開2005−182413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プロジェクタ等でRGB各色に色分解されて順次高速に投影された画像をプロジェクタの各色に同期する高速度カメラで撮像しても、プロジェクタやカメラのイメージセンサの色フィルタの分光特性が幅広く、RGBの各原色成分の分光特性がお互いに重なり合う部分が存在するためカメラのセンサには、R投影時にはR成分以外のGB成分も撮像される。同様に、G投影時にはG成分以外のRB成分も撮像され、B投影時にはB成分以外のRG成分も撮像される。
このように、本来投影されている原色以外の原色成分がカメラに撮像されるため、単純な色の差分や合成のような方法では空間に投影された投影像を完全に除去することができない。
【0004】
本発明者らは、本来投影されている原色以外の原色成分が存在することを前提とした色合成のアルゴリズムを開発し、この方法により空間に投影された投影像を除去することができる。更に、撮像画像から背景画像(撮像側から見た投影画像の無い背景像)を除去することで背景に投影された状態の画像のみを得ること(背景画像と投影画像を分離すること)ができるようにすることに着目した。
本発明の目的は、投影像の影響を受けた背景画面から投影像を完全に除去して、背景の像の画像データを取得したり、投影像のデータのみを再現することができる像分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明による請求項1記載の像分離装置は、
画像の情報を複数の原色成分に分解して各原色成分を順次高速で周期的に背景画面に投影する投影手段と、
前記投影の影響を受けた前記背景画面を含む像を各原色対応のセンサにより前記投影に同期して撮像する撮像手段と、
前記投影手段と撮像手段において、予め定まる各原色に対する前記複数のセンサ間の相関関係関数を用いたアルゴリズムに基づいて、
前記各原色対応の画像出力から当該原色成分とこの影響を受けた当該原色成分以外の1以上の原色成分の出力を演算処理することにより、前記投影の影響を受けていない背景画面のみの画像データまたは背景画面を含まない画像の情報データを得る演算処理手段から構成されている。
【0006】
本発明による請求項2記載の像分離装置は、請求項1記載の像分離装置において、
前記投影手段により投影される画像の情報は動画を含み、前記撮像手段は、前記投影された画像の前景から撮像するように構成されている。
本発明による請求項3記載の像分離装置は、
請求項1または2記載の像分離装置において、前記アルゴリズムは、各原色対応の撮像画像に対して、当該原色成分以外の一つまたは二つの原色成分をそれぞれ用いて、空間に投影された画像を推定するものである。
【0007】
本発明による請求項4記載の像分離装置は、請求項1、2または3記載の像分離装置において、前記アルゴリズムは、前記分離されるべき画像データを規定する前記相関関係関数が2次以上の積となり、かつ、影響が極めて小さい場合はその項の演算を省略した近似式を用いるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による像分離装置は、講演等においてプロジェクタ等により前景(非背景)側から講演者にも投影されるような場面や背景側からスクリーン等に投影されるような場面でも投影像の無い人物像を得ることができる。よって、投影像を除去した像により講演者のトラッキングが容易に行え、投影像を除去した講演者のみの像の記録も可能である。
また、プロジェクタで投影した画面に対してジェスチャ等でインタラクティブに操作するような場面でジェスチャを解析する際に投影像の影響(プロジェクタ等で投影されている投影像やその中の動画等の影響)を受けなくできる。
更に、物体に計測用画像を投影し、撮像画像から物体画像を除去することで物体に投影された計測用画像のみを得ることができるので、物体の表面色や背景等の影響を受けずに物体の形状を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面等を参照して本発明による像分離装置の実施形態をさらに詳しく説明する。
(第1の実施形態)
図1に本発明による像分離装置の第1の実施形態の概略構成を示し、図2に演算処理手段の概略構成を示す。図1において、投影手段であるプロジェクタ12に投影したい画像である入力画像11を入力する。プロジェクタとしては、例えば、単板デジタルミラー方式のDLPプロジェクタが利用できる。プロジェクタ12は、前景より空間に対して、複数の原色成分に分解して各原色成分を順次高速で周期的に投影する。以下、プロジェクタ12がRGBの各原色成分に分解して空間の前景より投影するものとして説明する。
【0010】
投影手段であるプロジェクタ12の各原色成分の色(RGB各色)の投影に同期してプロジェクタ12から同期信号が出力される。プロジェクタ12の同期信号を基に演算処理手段17で生成される撮像制御信号に応じて撮像手段であるカメラ16で撮像する。カメラ16は、プロジェクタ12が投影する前景側から空間に向かって撮像するように設置される。このとき、カメラ16から見た空間の像15は、プロジェクタ12からの投影がない前景より見た空間像13の上にプロジェクタ12より投影された投影画像14が重なって混合された混合画像15となる。空間の像は、プロジェクタ12より投影された画像14の下になるため前景から見た背景画像13となる。カメラ16で撮像した画像は、プロジェクタ12からの各原色成分の色の投影の同期信号とともに演算処理手段17に入力される。
【0011】
演算処理手段17においては、図2に示すように、同期制御部26で入力された同期信号を基に図1のカメラ16用の撮像制御信号、図2の入力処理I/F部21用の画像入力制御信号及び演算処理部24用の演算処理制御信号を生成する。入力処理I/F部21では、撮像制御信号によりカメラ16で撮像され、順次入力された各原色対応の画像データを同期制御部26で生成された画像入力制御信号に応じて一旦画像メモリ用バス22を介して画像メモリ23に保管する。同図の演算処理部24では、同期制御部26で生成された演算処理制御信号に応じて画像メモリ用バス22を介して画像メモリ23より、当該原色成分とこの影響を受けた当該原色成分以外の1以上の原色成分を読み出し、このデータを用いて、空間に投影された投影像のみの当該原色成分とこの影響を受けた原色成分とを、本発明であるアルゴリズムを用いて演算処理部24で求め、画像メモリ23に保管する。
この結果を各原色に対応した撮像画像から減算し、投影画像の影響を受けていないと同等の背景画像を各原色ごとに演算処理部24で求め、画像メモリ23に保管する。更に、この結果を各原色に対応した撮像画像から減算し、空間に投影された投影像の各原色成分を演算処理部24で求め、画像メモリ23に保管する。この結果を各原色成分ごとに1周期分加算し、空間に投影された投影像(撮像画像から背景画像を除去した画像)を演算処理部24で求め、画像メモリ23に保管する。
【0012】
各原色ごとに撮像された入力画像を画像メモリ23より読み出し、1周期分加算し、目で見ていると同等の画像(通常の可視画像。ここでは通常画像ということにする。)を求め、画像メモリ23に保管することもできる。演算の結果求められた通常画像、空間に投影された投影画像、投影画像の影響を受けていない背景画像(前景画像)は、操作子25等の画像選択情報により選択されるかそれぞれ個別に、画像メモリ23より読み出され同期制御部26で生成された演算処理制御信号に同期して演算処理部24より出力され、図1の出力手段18に入力される。
【0013】
出力手段18は、入力された画像を利用する表示装置であり、入力された画像をディスプレイ等に表示する。出力手段として、入力された画像を記録する画像記録装置、入力された画像を用いて人物の追跡をするトラッキング装置、入力された画像から人物のジェスチャを解析するジェスチャ解析装置、入力された画像から物体の計測をする計測装置等を挙げることができる。
【0014】
図1の演算処理手段17における図2の演算処理部24のアルゴリズムを以下で説明する。
まず、基本的な符号を定義する。
・原空間の像(投影機器から投影されていない景色)をカメラで撮像して得られる画像(背景画像)のRGB値を [Rs, Gs, Bs] とする。
・合成像(投影機器から投影された映像を含む景色)をカメラで撮像して得られる画像から空間の像(投影機器から投影された映像を含む景色)を取り除く処理をすると、投影機器から投影された画像だけが残る。この画像のRGB値を[Rp, Gp, Bp]とする。
・合成像(投影機器から投影された映像を含む景色)をカメラで撮像して得られる画像のRGB値を[(Rs+Rp), (Gs+Gp), (Bs+Bp)] とする。
【0015】
[アルゴリズムの目的]
投影機器から映像が投影されている状況を撮像して、[(Rs+Rp), (Gs+Gp), (Bs+Bp)] を得ても、この画像からだけでは[Rs, Gs, Bs]と [Rp, Gp, Bp] をそれぞれ推定することはできない。プロジェクタ等でRGB各色に色分解されて順次高速に投影された画像をプロジェクタの各色に同期する高速度カメラで撮像しても、プロジェクタやカメラのイメージセンサの色フィルタの特性が幅広いためカメラのセンサには、R投影時にはR成分以外のGB成分も撮像される。同様に、G投影時にはG成分以外のRB成分も撮像され、B投影時にはB成分以外のRG成分も撮像されるため、単純な色の差分や合成のような方法では [Rs, Gs, Bs] と [Rp, Gp, Bp] をそれぞれ推定することはできない。
本発明では、各原色対応の画像出力から当該原色成分と当該原色成分以外の1以上の原色成分とを用いて空間への投影時における未投影時と同等の空間像及び空間に投影された像をそれぞれ推定する根拠となるアルゴリズムが必要である。
【0016】
[手法の定義]
R投影時のGB成分情報を用い、同様に、G投影時のRB成分情報を用い、B投影時のRG成分情報を用いて [Rs, Gs, Bs] と [Rp, Gp, Bp] をそれぞれ推定可能にする。
手法1.各原色対応の撮像画像に対して、当該原色成分以外の一つの原色成分をそれぞれ用いて、空間に投影された(背景を除去した)画像を推定する方法を手法1とする。
手法2.各原色対応の撮像画像に対して、当該原色成分以外の二つの原色成分をそれぞれ用いて、空間に投影された(背景を除去した)画像を推定する方法を手法2とする。
手法3.前記手法1における演算式に対して近似式を用いる方法を手法3とする。
手法4.前記手法2における演算式に対して近似式を用いる方法を手法4とする。

[撮像手段のセンサ出力の定義]
Rr: 投影機器の出力した赤色の成分にカメラの赤色を感知するセンサの値をRrとする.
Gr: 投影機器の出力した赤色の成分にカメラの緑色を感知するセンサの値をGrとする.
Br: 投影機器の出力した赤色の成分にカメラの青色を感知するセンサの値をBrとする.
Rg: 投影機器の出力した緑色の成分にカメラの赤色を感知するセンサの値をRgとする.
Gg: 投影機器の出力した緑色の成分にカメラの緑色を感知するセンサの値をGgとする.
Bg: 投影機器の出力した緑色の成分にカメラの青色を感知するセンサの値をBgとする.
Rb: 投影機器の出力した青色の成分にカメラの赤色を感知するセンサの値をRbとする.
Gb: 投影機器の出力した青色の成分にカメラの緑色を感知するセンサの値をGbとする.
Bb: 投影機器の出力した青色の成分にカメラの青色を感知するセンサの値をBbとする.
【0017】
投影機器から投影される映像は、赤色の成分のみの画像・緑色の成分のみの画像・青色の成分のみの画像の3種類である。この3種類の画像を繰り返し高速で投影させることで人間の目にカラー画像を見せる。
投影機器から投影された映像を含む景色をカメラで撮像し背景画像を取り除くと、
赤色の成分のみの画像投影時は [Rr, Gr, Br] であり、
緑色の成分のみの画像投影時は [Rg, Gg, Bg] であり、
青色の成分のみの画像投影時は [Rb, Gb, Bb] である。
投影された画像を含む撮像画像(合成像の画像)、[Rp, Gp, Bp]は以下の式で表すことができる。
[Rp, Gp, Bp] = [(Rr+Rg+Rb), (Gr+Gg+Gb), (Br+Bg+Bb)] ・・・式1
さらに、投影機器から投影された映像を含む景色をカメラで撮像すると、
1枚目の赤色の成分のみの画像投影時は
[R1,G1,B1] = [(Rs+Rr), (Gs+Gr), (Bs+Br)] ・・・・・・式2
2枚目の緑色の成分のみの画像投影時は
[R2,G2,B2] = [(Rs+Rg), (Gs+Gg), (Bs+Bg)] ・・・・・・式3
3枚目の青色の成分のみの画像投影時は
[R3,G3,B3] = [(Rs+Rb), (Gs+Gb), (Bs+Bb)] ・・・・・・式4
とそれぞれ表すことができる。
【0018】
(手法1による像分離)当該原色成分と当該原色成分以外の内一つの原色成分とを用いる。
RGB3色の画像データ3枚からそれぞれ1色分の画像を抽出し3色の画像を合成する手法による。この手法は、R投影時のGB成分のどちらかからRpを、同様に、G投影時のBR成分のどちらかからGpを、B投影時のRG成分のどちらかからBpを推定する方法である。
ここで、各色が投影されている各色の画素について、以下の相関関係が成立する。このx, y, z は、プロジェクタとイメージセンサの色フィルタ特性に起因するものであり、投影手段と撮像手段の組が決まれば固有に決まるものであり、予め定められたものとすることができる。本発明においては、このx, y, z を相関関係関数と呼ぶ。
Br = x × Rr ・・・・・・式5
Rg = y × Gg ・・・・・・式6
Gb = z × Bb ・・・・・・式7
上式のBr, Rg, Gbを Gr, Bg, Rb に置き換えても、以下のアルゴリズムは成り立つ。
【0019】
(手順1)予め定められたx, y, z を算定して、使用のために準備する。
(手順2)投影機器の投影色順と同期して3枚の映像を撮像する。
投影機器からR,G,Bの投影と同期して、投影画像を含む景色(合成像)をカメラで3枚撮像し格別の画像データを得る。
これらの画像は、[R1, G1, B1],[R2 , G2, B2] ,[R3, G3, B3] であり、式2〜4ですでに示した。
(手順3)3枚の撮像画像を用いる演算より [Rs, Gs, Bs] を推定する。
RGB各色に対して、3枚の画像のうちの当該投影色を含む2枚からなる組の一方より、以下の関係を求めることができる。
R1- R2 = Rr - Rg = u ・・・・・・式8
G2- G3 = Gg - Gb = v ・・・・・・式9
B3- B1 = Bb - Br = w ・・・・・・式10
式5〜10より、3元1次方程式の解より、以下の関係が得られる。
Rr = (u + yv + yzw) / (1 - xyz) ・・・・・・式11
Br = x(u + yv + yzw) / (1 - xyz) ・・・・・・式12
Rg = y(v + zw + xzu) / (1 - xyz) ・・・・・・式13
Gg = (v + zw + xzu) / (1 - xyz) ・・・・・・式14
Gb = z(w + xu + xyv) / (1 - xyz) ・・・・・・式15
Bb = (w + xu + xyv) / (1 - xyz) ・・・・・・式16
上記の式11〜16の関係式を計算することで、Rr, Br, Rg, Gg, Gb, Bbを得て、さらに式2〜4を用いて、
Rs = R2 - Rg = R1 - Rr
Gs = G3 - Gb = G2 - Gg
Bs = B1 - Br = B3 - Bb
から [Rs, Gs, Bs] (背景画像のみ)を得ることができる。
【0020】
(手順4)空間に投影された画像を推定する。
手順3で得られた[Rs, Gs, Bs]と式2〜4とを用いて、撮像映像と以下の演算を施すことにより、空間に投影された画像を推定することができる。
[R1, G1, B1] - [Rs, Gs, Bs] = [Rr, Gr, Br]
[R2, G2, B2] - [Rs, Gs, Bs] = [Rg, Gg, Bg]
[R3, G3, B3] - [Rs, Gs, Bs] = [Rb, Gb, Bb]
上式で得られた Rr, Gg, Bb を使って1枚の画像を合成することで、空間に投影された推定画像のみ[Rr, Gg, Bb]を得る。
また、式1を用いて Rp, Gp, Bp を得ることで撮像画像から背景画像を除去した画像
[Rp, Gp, Bp]を得る。
この手法における演算要素は、加算器、乗算器、減算器及び除算器で構成できる。
【0021】
(手法2による像分離)当該原色成分と当該原色成分以外の内二つの原色成分とを用いる。
RGB3色の画像データ3枚からそれぞれ2色分の画像を抽出し3色の画像を合成する手法による。この手法は、R投影時のGB成分の両方からRpを、同様に、G投影時のBR成分の両方からGpを、B投影時のRG成分の両方からBpを推定する方法である。
ここで、各色が投影されている各色の画素について、以下の相関関係が成立する。前述と同様、x1, x2, y1, y2, z1, z2は、プロジェクタとイメージセンサの色フィルタ特性に起因する組み合わせ固有のものであり、本発明においては相関関係関数と呼ぶ。
Gr = x1 × Rr ・・・・・・式17
Br = x2 × Rr ・・・・・・式18
Rg = y1 × Gg ・・・・・・式19
Bg = y2 × Gg ・・・・・・式20
Rb = z1 × Bb ・・・・・・式21
Gb = z2 × Bb ・・・・・・式22
【0022】
(手順1)フィルタの特性より、x1, x2, y1, y2, z1, z2の値をあらかじめ求めて準備してあるものを用いる。
(手順2)投影機器の投影色順と同期して3枚の映像を撮像する。
投影機器からR,G,Bの投影と同期して、投影画像を含む景色をカメラで3枚撮像し得られた画像を得る。これらの画像は、[R1, G1, B1],[R2, G2, B2],[R3, G3, B3]であり、式2〜4ですでに示してある。
(手順3)3枚の撮像画像を用いる演算より、[Rs, Gs, Bs]を推定する。
RGB各色に対して、3枚の画像のうちの当該投影色を含む2枚からなる二組より、以下の関係を求めることができる。
R1 - R2 = Rr - Rg = u1 ・・・・・・式23
R1 - R3 = Rr - Rb = u2 ・・・・・・式24
G2 - G1 = Gg - Gr = v1 ・・・・・・式25
G2 - G3 = Gg - Gb = v2 ・・・・・・式26
B3 - B1 = Bb - Br = w1 ・・・・・・式27
B3 - B2 = Bb - Bg = w2 ・・・・・・式28
式17〜22より、6元1次方程式の解より、以下の関係が得られる。
Rr = (y1v1 + u1) / (1 - x1y1) = (z1w1 + u2) / (1 - x2z1)・・・式29
Gr = x1(y1v1 + u1) / (1 - x1y1) = x1(z1w1 + u2) / (1 - x2z1)・・・式30
Br = x2(y1v1 + u1) / (1 - x1y1) = x2(z1w1 + u2) / (1 - x2z1)・・・式31
Rg = y1(x1u1 + v1) / (1 - x1y1) = y1(z2w2 + v2) / (1 - y2z2)・・・式32
Gg = (x1u1 + v1) / (1 - x1y1) = (z2w2 + v2) / (1 - y2z2)・・・式33
Bg = y2(x1u1 + v1) / (1 - x1y1) = y2(z2w2 + v2) / (1 - y2z2)・・・式34
Rb = z1(x2u2 + w1) / (1 - x2z1) = z1(y2v2 + w2) / (1 - y2z2)・・・式35
Gb = z2(x2u2 + w1) / (1 - x2z1) = z2(y2v2 + w2) / (1 - y2z2)・・・式36
Bb = (x2u2 + w1) / (1 - x2z1) = (y2v2 + w2) / (1 - y2z2)・・・式37
上記の式29〜37の関係式を計算することで、Rr, Gr, Br, Rg, Gg, Bg, Rb, Gb, Bbを得て、さらに式2〜4を用いて、
[R1, G1, B1] - [Rr, Gr, Br] = [Rs, Gs, Bs]
[R2, G2, B2] - [Rg, Gg, Bg] = [Rs, Gs, Bs]
[R3, G3, B3] - [Rb, Gb, Bb] = [Rs, Gs, Bs]
から [Rs, Gs, Bs] (背景画像のみ)を得ることができる。
【0023】
(手順4)空間に投影された画像を推定する。
手順3で得られた[Rs, Gs, Bs]と式2〜4とを用いて、撮像映像と以下の演算を施すことにより、空間に投影された画像を推定することができる。
[R1, G1, B1] - [Rs, Gs, Bs] = [Rr, Gr, Br]
[R2, G2, B2] - [Rs, Gs, Bs] = [Rg, Gg, Bg]
[R3, G3, B3] - [Rs, Gs, Bs] = [Rb, Gb, Bb]
上式で得られた Rr, Gg, Bb を使って1枚の画像を合成することで、空間に投影された推定画像のみ[Rr, Gg, Bb]を得る。
また、式1を用いて Rp, Gp, Bp を得ることで撮像画像から背景画像を除去した画像
[Rp, Gp, Bp]を得る。
この手法における演算要素は、加算器、乗算器、減算器及び除算器で構成できる。
【0024】
(手法3による像分離)前記手法1の演算式に対して近似式を用いて像分離を行う。
前記手法1の手順3の式11〜16に対して近似式を用いて簡略に求める方法である。
近似式の求め方は、u ,v ,w ,x ,y ,z の各値とこれらを組み合わせた積項の値に応じて、無視できる積項を省略したりテーラー展開等の方法を用いて近似式を求めることができる。
例えば、x ,y ,z <<1の場合、xy,xz,yz,xyz の積項は無視できるので式11〜16はそれぞれ以下の式のようになる。
Rr ≒ u + yv ・・・・・・式38
Br ≒ xu ・・・・・・式39
Rg ≒ yv ・・・・・・式40
Gg ≒ v + zw ・・・・・・式41
Gb ≒ zw ・・・・・・式42
Bb ≒ w + xu ・・・・・・式43
したがって、この手法においては、前記手法1の手順3の式11〜16が、上記の式38〜43に入れ替わる。上記の式38〜43の近似式を用いることにより、この手法における演算要素が加算器、乗算器及び減算器のみで構成できるようになる。また、計算式における項数と加減乗除の数が減るため、計算式に相当する回路規模も前記手法1よりも縮小できる。
【0025】
(手法4による像分離)前記手法2の演算式に対して近似式を用いて像分離を行う。
前記手法2の手順3の式29〜37に対して近似式を用いて簡略に求める方法である。
近似式の求め方は、u1,u2,v1,v2,w1,w2,x1,x2,y1,y2,z1,z2の各値とこれらを組み合わせた積項の値に応じて、無視できる積項を省略したりテーラー展開等の方法を用いて近似式を求めることができる。
例えば、x1,x2,y1,y2,z1,z2<<1の場合、これらを組み合わせた2次以上の積項は無視できるので式29〜37はそれぞれ以下の式のようになる。
Rr ≒ y1v1 + u1 ≒ z1w1 + u2 ・・・・・・式44
Gr ≒ x1u1 ≒ x1u2 ・・・・・・式45
Br ≒ x2u1 ≒ x2u2 ・・・・・・式46
Rg ≒ y1v1 ≒ y1v2 ・・・・・・式47
Gg ≒ x1u1 + v1 ≒ z2w2 + v2 ・・・・・・式48
Bg ≒ y2v1 ≒ y2v2 ・・・・・・式49
Rb ≒ z1w1 ≒ z1w2 ・・・・・・式50
Gb ≒ z2w1 ≒ z2w2 ・・・・・・式51
Bb ≒ x2u2 + w1 ≒ y2v2 + w2 ・・・・・・式52
したがって、この手法においては、前記手法2の手順3の式29〜37が、上記の式44〜52に入れ替わる。上記の式44〜52の近似式を用いることにより、この手法における演算要素が加算器、乗算器及び減算器のみで構成できるようになる。また、計算式における項数と加減乗除の数が減るため、計算式に相当する回路規模も前記手法2よりも縮小できる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、空間の背景側から画像を投影し、前景側から撮像する第2の実施形態を図3を参照して説明する。
同図において、投影手段であるプロジェクタ32に投影したい画像である入力画像31を入力する。プロジェクタとしては、前述のように例えば、単板デジタルミラー方式のDLPプロジェクタが利用できる。プロジェクタ32は、背景側よりスクリーン39に対して、複数の原色成分に分解して各原色成分を順次高速で周期的に投影する。前述同様に、プロジェクタ32がRGBの各原色成分に分解してスクリーンの背景側より投影するものとして説明する。
【0027】
投影手段であるプロジェクタ32の各原色成分の色(RGB各色)の投影に同期してプロジェクタ32から同期信号が出力される。プロジェクタ32の同期信号を基に演算処理手段37で生成される撮像制御信号に応じて撮像手段であるカメラ36で撮像する。カメラ36は、プロジェクタ32がスクリーン39に投影する背景側とは逆のスクリーンの前景側からスクリーン39に向かって撮像するように設置される。このとき、カメラ36から見た空間の像35は、プロジェクタ32からの投影がない前景より見た空間像33の下にプロジェクタ32より投影された投影画像34が重なって混合された混合画像35となる。空間の像は、プロジェクタ32より投影された画像34の上になるため前景から見た背景画像33となる。カメラ36で撮像した画像は、プロジェクタ32からの各原色成分の色の投影の同期信号とともに演算処理手段37に入力される。
【0028】
演算処理手段37は、既に示した図2における機能・動作と同じであり、演算処理手段37の出力は、前述と同様に出力手段38に入力される。また、演算処理手段37における演算のアルゴリズムは、前述と同じである。
出力手段38は、入力された画像を利用する表示装置であり、入力された画像をディスプレイ等に表示する。出力手段としては、前述同様の装置等を挙げることができる。
【0029】
(本発明の像分離装置の利用例)
・プロジェクタ等により前景(非背景)側から講演者にも投影されるような場面や背景側からスクリーン等に投影されるような場面において、本装置の投影画像を除去した背景(前景)画像を使用し、投影像の影響を受けていない講演者のトラッキングを行うことができ、追跡した投影像の影響を受けていない講演者像の録画をすることができる。
・プロジェクタで投影した画面に対してジェスチャ等でインタラクティブに操作するような場面において、本装置の投影画像を除去した背景(前景)画像を使用し、投影像の影響(特に投影画像内の動画等の影響)を受けていない手等の操作状況のジェスチャを解析することができる。
・物体に計測用画像を投影し、物体の形状を測定(投影された計測用画像のみを得て計測)するような場面において、本装置の入力画像として格子点や格子線等のような計測用画像を用いることで、物体に投影された計測用画像のみを得ることができるので、物体の表面色や背景等の影響を受けない画像の解析により物体の形状を測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、広く画像処理の分野で利用できる。すなわち、映画、その他の映像関連の著作物の作成の分野、会議や興行の分野における映像の表示に関連する像分離の要請に利用できる。投影機や撮像装置の製造の分野で前記像分離装置の製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による像分離装置の第1の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】前記像分離装置の演算処理手段の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明による像分離装置の第2の実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
11,31 入力画像
12,32 プロジェクタ
13,33 背景画像
14,34 投影画像
15,35 混合画像
16,36 カメラ
17,37 演算処理手段
18,38 出力手段
21 入力処理I/F部
22 画像メモリ用バス
23 画像メモリ
24 演算処理部
25 操作子
26 同期制御部
39 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像の情報を複数の原色成分に分解して各原色成分を順次高速で周期的に背景画面に投影する投影手段と、
前記投影の影響を受けた前記背景画面を含む像を各原色対応のセンサにより前記投影に同期して撮像する撮像手段と、
前記投影手段と撮像手段において、予め定まる各原色に対する前記複数のセンサ間の相関関係関数を用いたアルゴリズムに基づいて、
前記各原色対応の画像出力から当該原色成分とこの影響を受けた当該原色成分以外の1以上の原色成分の出力を演算処理することにより、前記投影の影響を受けていない背景画面のみの画像データまたは背景画面を含まない画像の情報データを得る演算処理手段から構成した像分離装置。
【請求項2】
前記投影手段により投影される画像の情報は動画を含み、前記撮像手段は、前記投影された画像の前景から撮像するように構成した請求項1記載の像分離装置。
【請求項3】
前記アルゴリズムは、各原色対応の撮像画像に対して、当該原色成分以外の一つまたは二つの原色成分をそれぞれ用いて、空間に投影された画像を推定するものである請求項1または2記載の像分離装置。
【請求項4】
前記アルゴリズムは、前記分離されるべき画像データを規定する前記相関関係関数が2次以上の積となり、かつ、影響が極めて小さい場合はその項の演算を省略した近似式を用いた請求項1、2または3記載の像分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−243707(P2007−243707A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64542(P2006−64542)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】