像加熱装置および像加熱装置を備えた画像形成装置
【課題】弾性層1bをもつ誘導加熱方式の像加熱部材1において、像加熱部材の熱伝導率低下によるウォームアップ時間の延長、および非通紙部昇温の対策を目的とする。
【解決手段】像加熱部材1に当接する加熱可能な加圧部材2あるいは外部加熱部材3cに非磁性低抵抗材料を使用し、加圧部材あるいは外部加熱部材に外部遮蔽の効果を持たせる。
【解決手段】像加熱部材1に当接する加熱可能な加圧部材2あるいは外部加熱部材3cに非磁性低抵抗材料を使用し、加圧部材あるいは外部加熱部材に外部遮蔽の効果を持たせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材上の像を加熱する電磁誘導加熱方式の像加熱装置、および当該像加熱装置を備える複写機・プリンタ・ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【0002】
記録材上の像を加熱する像加熱装置としては、記録材上に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を再加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
電子写真方式・静電記録方式等の画像形成装置は、シート状の記録材(記録紙・転写材など)上に形成されたトナー画像を記録材上に定着する或いは加熱する像加熱装置を備える。この像加熱装置は、加熱ローラ(定着ローラ)もしくはエンドレスの加熱ベルトである像加熱部材と、像加熱部材と相互圧接して、記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、を有する。
【0004】
像加熱部材(以下、加熱ローラと記す)は、発熱体によって内部または外部より、直接もしくは間接的に加熱されて、表面温度が所定の定着温度に維持される。発熱体は、例えばハロゲンヒータや抵抗発熱体等が挙げられる。未定着のトナー画像が形成された記録材は、ニップ部で加熱されると共に加圧されて、未定着のトナー画像が記録材面に固着画像として定着される。
【0005】
近年は、画像形成装置の省エネルギー化と、ウォームアップ時間の短縮といったユーザーの操作性向上の両立を図ることが重視されている。このことから加熱ローラが直接発熱して発熱効率の高い誘導加熱方式を用いた像加熱装置(以下、誘導像加熱装置と記す)が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この誘導像加熱装置は、励磁コイルが発生する磁束の作用によって、金属導体からなる中空の加熱ローラに誘導電流(渦電流)を発生させ、加熱ローラ自体の表皮抵抗によって加熱ローラそのものがジュール発熱する。そのため、この誘導像加熱装置によれば、ウォームアップ時間の短縮が可能となる。
【0007】
また、このような誘導像加熱装置においては、印加する高周波電流の周波数、加熱ローラの透磁率および固有抵抗値とから決定される表皮抵抗に比例した電力が発熱する。したがって、印加する高周波電流の周波数を制御することによって、加熱ローラの発熱量を常に最適化することができ、装置の省エネルギー化を達成することが可能となる。
【0008】
一方で、このような誘導像加熱装置にあっては、磁束により発熱する表皮深さがコイルに通電される周波数、加熱ローラの固有抵抗値によって決められる。そのため、加熱ローラの厚みが表皮深さよりも厚い場合には、発熱量は変わらないため、加熱ローラの厚さが大きくなるほど、かえって発熱効率が低下してしまい、ウォームアップ時間短縮の効果を得ることが困難となる。
【0009】
逆に加熱ローラの厚さが表皮深さよりも薄いと、磁束が加熱ローラを突き抜けてしまい、発熱量が少なくなるだけでなく、加熱ローラ周辺の金属部材を加熱してしまう。したがって、加熱ローラの厚さはおおよそ50〜2000μm程度が望ましい。
【0010】
このような誘導像加熱装置においても、従来の像加熱装置と同様に小サイズの記録材を連続通紙すると、記録材が通過しない非通紙部領域の昇温(非通紙部昇温)が発生する。この非通紙部昇温対策として、特許文献2に開示されるように、加熱ローラに、キュリー温度が所定の定着温度に調整された整磁合金を用いた誘導像加熱装置が提案されている。
【0011】
一般に磁性材料は、加熱されて材料固有のキュリー温度を越えると自発磁化が消失する。そのため、磁性材料内に通過する磁束密度が減少し、それに伴って磁性材料中に誘導される渦電流が減少することで、磁性材料の発熱量が減少する。したがって、加熱ローラの材料として、所定温度に調整されたキュリー温度を持つ整磁合金を用いることで、加熱ローラは所定温度以上に加熱されることが無い。そのため、上述の非通紙部昇温を改善することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−33787号公報
【特許文献2】特開2000−39797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、さらに高画質な定着画像あるいは加熱画像を実現するため、加熱ローラの表層に弾性層を持たせたとき、表面の熱伝導率低下に伴い、ウォームアップ時間が長くなってしまう。また、弾性層の蓄熱により、上述の非通紙部昇温が大きくなり、搬送性の低下や寿命が短いといった問題がおこる。
【0014】
そこで本発明では、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の代表的な構成は、高周波電流が印加されるコイルが内側に配設されていて当該コイルから生じる磁束により発熱する整磁合金層と当該整磁合金層よりも外側に弾性層を有し像を担持した記録材に接して記録材を加熱する回転可能な中空の像加熱部材を有する像加熱装置であって、前記像加熱部材の外面に当接しており加熱源により加熱されて像加熱部材を外側から加熱する外部加熱部材を有し、当該外部加熱部材は前記整磁合金層の整磁合金よりも抵抗率が小さい非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有しており前記コイルにより加熱される前記像加熱部材が回転方向に関して最大発熱量を持つ位置の少なくとも1つに対応する位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成模型図である。
【図2】像加熱装置である定着装置の要部の拡大横断面模型図である。
【図3】要部の正面模型図である。
【図4】コイル・アセンブリ(磁束発生手段)の外観斜視図である。
【図5】電磁誘導加熱原理を説明する図である。
【図6】抵抗値の温度依存性を説明する図である。
【図7】透磁率の温度依存性を説明する図である。
【図8】表皮深さと芯金肉厚および発熱量を説明する図である。
【図9】キュリー材を用いた誘導加熱装置の力率の温度依存性を説明する図である。
【図10】加熱部材の位置と発熱量の関係を説明する図である。
【図11】実施例2における定着装置の要部の拡大横断面模型図である。
【図12】実施例3における定着装置の要部の拡大横断面模型図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に従う電磁誘導加熱方式の像加熱装置を定着装置(画像定着手段)として備えた画像形成装置の一例の概略構成模型図である。
【0020】
本例の画像形成装置は電子写真プロセスを用いたレーザー走査露光方式のデジタル画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能機等)である。
【0021】
41は像担持体としての回転ドラム型の感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、矢印の時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。42は一次帯電器であり、本実施例においては、感光ドラム41をマイナス極性の所定の暗電位Vdに一様に帯電する。
【0022】
43は像露光手段であるレーザービームスキャナであり、画像読取装置、コンピュータ等のホスト装置(不図示)から入力されるデジタル画像信号に対応して変調されたレーザービームLを出力して感光ドラム41の一様帯電処理面を走査露光する。この走査露光により、感光ドラム41の露光部分は電位絶対値が小さくなって明電位Vlとなり、感光ドラム41面に画像信号に対応した静電潜像が形成される。静電潜像は現像器44により現像されて、感光ドラム面の露光明電位Vl部にマイナスに帯電したトナーが付着することでトナー画像として顕像化される。
【0023】
一方、不図示の給紙トレイ上から給紙された紙等のシート状の記録材Pは、転写バイアスが印加された転写部材としての転写ローラ45と感光ドラム41とが圧接している転写部へ適切なタイミングをもって搬送される。そして、記録材Pの面に感光ドラム41上に形成されているトナー画像tが順次転写される。
【0024】
トナー画像tが転写形成された記録材Pは、感光ドラム41から分離され、後述する定着装置Fに導入されて、熱と圧によって、トナー画像tが記録材上に定着され、その後機外に排出される。
【0025】
記録材Pを分離した後の感光ドラム41の表面は、クリーニング装置46で感光ドラム表面に残った転写残トナーがクリーニングされ、その後、繰り返して作像に供される。記録材搬送方向aに関して定着装置Fよりも上流側の装置機構部が記録材に未定着画像を形成する画像形成手段である。
【0026】
(2)定着装置F
図2は像加熱装置である定着装置Fの要部の拡大横断面模型図である。図3は要部の正面模型図である。ここで、定着装置Fについて、正面とは記録材導入口側から見た面である。装置構成部材について、長手方向とは、像加熱部材(加熱ローラ)1の回転軸線方向、若しくは定着ニップ部Nを含む平面において記録材Pの搬送方向aに対して直交する方向に並行な方向としている。また、中央部及び端部は、その長手方向の中央部及び端部である。
【0027】
定着装置Fは、電磁誘導加熱方式で発熱する加熱ローラ型の像加熱装置である。磁束により発熱する導電層を有する像加熱部材としての加熱ローラ1(定着ローラ)を有する。また、加熱ローラ1と相互圧接して記録材を挟持搬送するニップ部Nを形成する加圧部材としての加圧ローラ2を有する。また、加熱ローラ1の外面に当接して加熱する外部加熱ユニット3を有している。
【0028】
加熱ローラ1は、外径が40mm、厚さは1.2mm、長さ350mmの中空ローラである。加熱ローラ1は、本実施例ではキュリー温度Tcが220℃になるように鉄、ニッケル、クロム、マンガン等の材料が配合され、固有抵抗が約5Ω・mである整磁合金よりなる導電層(整磁合金層)である芯金1aを有する。
【0029】
本実施例ではキュリー温度Tcは、画像形成時(記録材を加熱する動作時)に記録材上の画像を加熱するときの制御温度である像加熱温度Tf(以下、定着温度Tf:本実施例では200℃とする)より高い温度に設定した。また、キュリー温度Tcは、像加熱装置の耐熱温度(本実施例では230℃とする)未満の温度に設定した。即ち、加熱ローラ1の制御温度(温調温度)は加熱ローラ1のキュリー温度Tcよりも低い温度に設定している。ここで、像加熱装置の耐熱温度とは、像加熱装置の一部の部品の熱損が著しくなる温度である。
【0030】
また、芯金1aの外周面には、カラー画像等の高画質な定着画像を得るために、シリコーンゴムなどの厚さ250μmの耐熱弾性層1bが設けられている。さらにその外周面に、トナーに対する離型性を高めるためにPFAやPTFE等のフッ素樹脂より成る、厚さ20μmの表層1cが設けられている。
【0031】
この加熱ローラ1はその両端部側がそれぞれ定着装置Fの枠体の一部である手前側と奥側の側板(定着ユニットフレーム)21・22間に軸受23を介して回転可能に支持されて配設されている。加熱ローラ1の中空内部(内側)には、芯金1aに誘導電流(渦電流)を誘起させてジュール発熱させるための高周波磁界を生じさせるためのコイル(励磁コイル)を有する磁場発生手段(磁束発生手段)としてのコイル・アセンブリ4が挿入されて配置されている。
【0032】
図4はコイル・アセンブリ4の外観斜視図である。コイル・アセンブリ4は加熱ローラ1の回転軸線方向に長く、ボビン5、磁性材からなる磁性コア(磁性芯材)6、コイル(励磁コイル)7を有する。磁性コア6はボビン5に保持されており、コイル7はボビン5の周囲に電線を巻回して形成されている。コイル7はボビン5に加熱ローラ1の回転軸線方向に延伸して巻かれている。磁性コア6はコイル7の近辺には配置されて加熱ローラ1(導電層1a)の磁束を導く。ボビン5・磁性コア6・コイル7が一体化されてステー8に固定支持されている。
【0033】
コイル・アセンブリ4は加熱ローラ1の内面と励磁コイル7間に一定のギャップを保持させた状態にしてステー8の両端部8a・8aでそれぞれ定着装置の手前側と奥側の保持部材24・25に非回転に固定支持されている。ボビン5・磁性コア6・コイル7は加熱ローラ1の外部には露呈しないように加熱ローラ1の内空部に収納されている。
【0034】
磁性コア6はフェライト、パーマロイ等の、高透磁率で残留磁束密度の低い材料であって、コイル7によって発生した磁束を加熱ローラ1に導くものである。本実施例における磁性コア6は横断面T字型であり、T字の横棒部分と縦棒部分とを構成する2枚の板条磁性コア6(1)と6(2)とが組み合わされている。
【0035】
コイル7は、加熱ローラ1の長手方向に平行に延び、磁性コア6(1)を周回するようにボビン5の形状に合わせて横長舟型に複数回巻回して両端を折り曲げられて巻かれるリッツ線を束ねたものである。また、加熱ローラ1の内周に沿うように湾曲して配置されている。即ち、コイル7は加熱ローラ1の回転軸方向に延伸して巻かれ、加熱ローラ1の回転軸線方向に直交する方向の磁束を発生することで加熱ローラ1を加熱する。
【0036】
7a・7bは上記励磁コイル7の2本のリード線(コイル供給線)であり、ステー8の奥側から加熱ローラ1の外部に引き出して、コイル7に高周波電流を供給する高周波インバーター(高周波回路)101に接続してある。高周波インバーター101はスイッチング素子を有し、このスイッチング素子のON/OFFにより、所定の周波数の電流をコイル7に流すことができる。本実施例に用いた高周波インバーター101は所定の電圧(100V)で出力し、電力制御は可変の電流値および電流のON/OFF時間によって決定される。
【0037】
加圧ローラ2は、外径38mm、長さは350mmであって、外径28mm、肉厚3mmの芯金2aを有する。また、芯金2aの周面に形成される厚さ5mmの耐熱弾性層2b、および耐熱弾性層2bの周面に形成されるPFA、PTFEなどのフッ素樹脂より成る厚さ100μmの表層2cを有する。加圧ローラ2は加熱ローラ1の下側に並行に配列されて、芯金2aの両端部側がそれぞれ定着装置の枠体の手前側と奥側の側板21・22間に軸受26を介して回転自在に保持されている。
【0038】
そして、上記の加熱ローラ1と加圧ローラ2は互いに不図示の加圧機構(加圧手段)によって所定の加圧力で圧接されている。これにより、該両ローラ1・2間に記録材Pを挟持搬送してトナー像を加熱定着する、記録材搬送方向aに関して幅約6mmのニップ部(定着ニップ部)Nが形成されている。
【0039】
外部加熱ユニット3は、所定の間隔をあけてそれぞれ加熱ローラ1に対して並行に配列された第1と第2の2本の支持ローラ3aと3bを有する。また、この2本の支持ローラ3a・3b間に懸回張設された可撓性・耐熱性を有する、外部加熱部材としての無端ベルト(外部加熱ベルト)3cを有する。支持ローラ3aと3bは、外径20mm、長さ360mm、厚さ2mmのアルミでできた中空ローラであり、各ローラの内空内部にはそれぞれ加熱源としてのハロゲンヒータ3d・3eが設けられている。
【0040】
ベルト3cは加熱ローラ1の芯金1aに用いたキュリー材、即ち整磁合金層の整磁合金よりも抵抗率が小さい非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有する。この金属は、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、SUS(オーステナイト系)及びこれらの金属を用いた合金の群から選択される少なくとも1つである。本実施例においては、ベルト3cは厚さ250μm、長さ355mmの銅から成る。
【0041】
第1と第2の支持ローラ3a・3bはユニット筐体3fの前側と奥側の側板間に回転可能に軸受されて保持されている。そして、外部加熱ユニット3は加熱ローラ1に対して不図示の加圧機構によって所定の押圧力で当接されている。この加圧当接状態において、第1と第2の支持ローラ3a・3bがベルト3cを介して加熱ローラ1の外面に圧接している。また、第1と第2の支持ローラ3a・3b間のベルト部分が加熱ローラ1の外面に腹当てに圧接している。これにより、加熱ローラ1とベルト3cとの間に加熱ローラ1の回転方向に関して幅広の外部加熱ニップ部が形成される。
【0042】
ベルト3cは加熱ローラ1が回転駆動されることで従動して回転する。第1と第2の支持ローラ3a・3bもベルト3cが回転することで従動して回転する。加熱ローラ1が回転駆動され、ベルト3cが従動回転している状態において、第1と第2の支持ローラ3a・3bはそれぞれハロゲンヒータ3d・3eへの通電により所定の温度に加熱される。この第1と第2の支持ローラ3a・3bによりベルト3cが加熱されて、加熱ローラ1の外面が外部加熱ニップ部においてベルト3cの熱で外部加熱される。
【0043】
11は加熱ローラ1の温度検知部材としてのサーミスタである。サーミスタ11は定着ローラ1の長手方向の中央部分に設けられている。また、サーミスタ11は、加熱ローラ1を隔ててコイル7に向かい合うように、定着ローラ1の表面に対して弾性部材11aにより押圧して弾性的に圧接されて配置されている。このサーミスタ11の加熱ローラ温度の検知信号は制御回路(CPU)100に入力される。
【0044】
12は定着前ガイド板であり、作像機構部側から定着装置Fに搬送された記録材Pをニップ部Nの入口部に案内する。13は分離爪であり、ニップ部Nに導入されてニップ部Nを出た記録材Pが加熱ローラ1に巻きつくことを抑え、加熱ローラ1から記録材Pを分離するためのものである。14は定着後ガイド板であり、ニップ部Nの出口部を出た記録材Pを排紙案内する。前記ボビン5、ステー8、分離爪13は耐熱および電気絶縁性エンジニアリング・プラスチックから形成されている。
【0045】
Gは加熱ローラ1を駆動するためのドライブギアであり、加熱ローラ1の奥側の端部側に固着されている。このドライブギアGに駆動源Mから伝達系を介して駆動力が伝達されることで、加熱ローラ1が図2において矢印Aの時計方向に本実施例では500mm/secの周速度にて回転する。加圧ローラ2はニップ部Nでの加熱ローラ1との摩擦力で加熱ローラ1の回転に従動して矢印の反時計方向Bに回転する。
【0046】
15は加熱ローラクリーナである。クリーニングウエブ15aをロール巻きに保持したウエブ繰り出し軸部15bと、ウエブ巻取り軸部15cと、該両軸部15b・15c間のウエブ部分を加熱ローラ1の外面に押し付ける押し付けローラ15dを有する。押し付けローラ15dで加熱ローラ1に押し付けたウエブ部分で加熱ローラ1面にオフセットしたトナーが拭われて加熱ローラ面が清掃される。加熱ローラ1に押し付けられるウエブ部分は繰り出し軸部15b側から巻取り軸部15c側にウエブ15aが少しずつ送られることで徐々に更新される。
【0047】
本実施例では、通紙は中央基準で行われる。Sはその中央基準(仮想線)である。すなわち、装置に通紙使用可能な大小いかなる幅サイズの記録材も、記録材の中央部が加熱ローラ軸方向の中央部を通過することになる。本実施例の画像形成装置においては、通紙できる記録材の最大幅サイズ(以下、大サイズ紙と記す)は例えば13インチ(330mm)である。また通紙できる記録材の最小幅サイズ(以下、小サイズ紙と記す)は例えばB5縦(138mm)である。P1はその大サイズ紙の通紙領域幅、P2は小サイズ紙の通紙領域幅である。
【0048】
サーミスタ11は、小サイズ紙の通紙領域幅P2の略中央部に対応する加熱ローラ中央部分に接触して設けられている。即ち、通紙領域は、装置に通紙可能なすべてのサイズの記録材が通過する領域であって、サーミスタ11は、加熱ローラ1の通紙領域の温度を検知する。本実施例では、接触式のサーミスタであるが、非接触のサーミスタでも問題ない。
【0049】
次に、定着装置Fの動作について説明する。画像形成装置の制御回路部100は、装置のメイン電源スイッチのONにより画像形成装置を起動させて所定の立ち上げモードをスタートさせる。
【0050】
定着装置Fは駆動源Mの起動により加熱ローラ1の回転が開始される。この加熱ローラ1の回転に従動して加圧ローラ2及びベルト3cも回転する。また制御回路部100は高周波インバーター101を起動させてコイル7に高周波電流を流す。本実施例では、高周波電流の周波数f2は20kHzである。このコイル7への高周波電流の印加により生じた磁束により加熱ローラ1の芯金1aが電磁誘導加熱される。
【0051】
また、ハロゲンヒータ3d・3eへの通電も開始する。このハロゲンヒータ3d・3eへの通電により支持ローラ3aと3bが加熱されることでベルト3cが加熱され、外部加熱ニップ部において加熱ローラ1の外面がベルト3cの熱により外部加熱される。
【0052】
上記の電磁誘導加熱と外部加熱とにより加熱ローラ1が所定のスタンバイ完了温度、本実施例では定着温度である200℃まで迅速に昇温する。この加熱ローラ1の温度は、サーミスタ11で検知され、その検知温度情報が制御回路部100に入力する。
【0053】
加熱ローラ1の温度が200℃に到達したら、画像形成信号の入力を待機するスタンバイ状態(待機モード)となる。本実施例では、スタンバイ状態時は、加熱ローラ1は停止している。また、本実施例ではスタンバイ温度は200℃である。スタンバイ中(待機モード中)においては、通電制御手段である制御回路部100は、加熱ローラ1の大サイズ紙通紙領域幅P1の略全域定着温度200℃に維持するよう上記の電磁誘導加熱と外部加熱を制御する。即ち、コイル7に対する高周波電流を制御する。また、ハロゲンヒータ3d・3eに対する通電を制御する。
【0054】
そして、この待機モード時に画像形成信号が入力されると、加熱ローラ1は作像機構部において記録材上にトナー像が形成される。また、所定の制御タイミングで加熱ローラ1の再駆動がなされる。そして、未定着トナー像tを担持した記録材Pがニップ部Nで挟持搬送されることで、所定の定着温度に維持された加熱ローラ1の熱と圧により、未定着トナー像tが記録材Pの面に加熱定着される。
【0055】
像加熱工程中(定着動作中)においては、通電制御手段である制御回路部100は、加熱ローラ1の大サイズ紙通紙領域幅P1の略全域が定着温度200℃に維持するよう、高周波電流を制御する。また、ハロゲンヒータ3d・3eへの通電も制御する。本実施例では定着温度は200℃である。本実施例では、高周波電流の周波数f2は20kHzとし、待機モード中と同じ周波数である。
【0056】
なお、像加熱工程中はサーミスタ11の出力と定着温度との差分に応じて、コイル7に印加される電力の変更が行われている。また、ハロゲンヒータ3d・3eへの通電もオン/オフ制御される。
【0057】
ここで、図5を用いて、加熱ローラ1の導電層である芯金1aの電磁誘導発熱原理を説明する。コイル7には、高周波インバーター101から交流電流が印加され、これによってコイル7の周囲には矢印Hで示した磁束が生成消滅を繰り返す。磁束Hは、磁性コア6と芯金1aによって形成された磁路に沿って導かれる。コイル7が生成した磁束の変化に対して、芯金1a内では、磁束の変化を妨げる方向に磁束を発生するように渦電流が発生する。この渦電流を矢印Cで示す。
【0058】
この渦電流Cは、表皮効果により芯金1aのコイル7側の面に集中して流れ、芯金1aの表皮抵抗Rs(Ω)に比例した電力で発熱を生じる。
【0059】
ここで、コイル7に印加する交流電流の周波数f(Hz)、芯金1aの導体の透磁率μ(H/m)、芯金1aの固有抵抗ρ(Ω・m)から得られる表皮深さδ(m)および表皮抵抗Rs(Ω)は、式1および式2で示される。
【0060】
【数1】
【0061】
【数2】
【0062】
また、芯金1aに発生する電力Wは、芯金1aに誘導される渦電流をIf(A)として、式3で示される。
【0063】
【数3】
【0064】
以上より、芯金1aの発熱量を増加させるためには、渦電流Ifを大きくする、または表皮抵抗Rsを大きくすればよい。
【0065】
渦電流Ifを大きくするためには、コイル7によって生成される磁束を強くする、あるいは磁束の変化を大きくすればいい。例えば、コイル7の巻き数を増やしたり、磁性コア6として、より高透磁率で残留磁束密度の低いものを用いたりすると良い。また、磁性コア6と芯金1aとのギャップdを少なくすることで、芯金1a中に導かれる磁束が増加するため、渦電流Ifを大きくすることも出来る。
【0066】
一方、表皮抵抗Rsを大きくするためには、コイル7に印加する交流電流の周波数fを高くするか、より透磁率μの高く、固有抵抗の高い材料の芯金1aとする。
【0067】
次にキュリー温度Tcについて説明する。一般に強磁性体は、材料固有のキュリー温度Tcまで加熱されると、自発磁化を失い透磁率μが減少する。したがって、加熱ローラ1の導電部材である芯金1aの温度がキュリー温度Tcを越えてしまうと、表皮抵抗Rsが減少する。その結果、芯金1aの発熱量Wが減少する。
【0068】
一般に抵抗値は式2で表されるとおり、周波数が一定の場合は透磁率μと抵抗率ρで決まり、一般に抵抗率は温度上昇に伴って緩やかに増加する。
【0069】
ここで、加熱ローラ1の抵抗値(表皮抵抗)Rsは磁束発生手段4を加熱ローラ1に装着したときのコイル7に電流を流したときのコイル7からみた加熱ローラ1のみかけの負荷抵抗に相当する。
【0070】
このみかけの抵抗値の測定方法、及び抵抗値の温度依存性は以下のように測定する。アジレント社製のLCRメータ(型番HP4194A)を用いて、周波数20kHzの交流を印加した際の加熱ローラ1の抵抗値を測定した。このとき、加熱ローラ1、磁束発生手段である励磁コイル、コアは像加熱装置に装着された状態で測定するものとする。このとき加熱ローラ1の温度を変えていき、温度と加熱ローラ1の抵抗値を同時にプロットしていくことで加熱ローラ1の抵抗値の温度特性曲線を得ることができる。
【0071】
また、加熱ローラ1の温度を変えるには、恒温室に加熱ローラ1及び磁束発生手段を装置に装着させた位置関係に保った状態で、加熱ローラの温度を変化させる。そして、ローラ温度を恒温室の温度に飽和させてから上記の測定法で抵抗値を測定する。このように測定すると、抵抗値の温度依存性は図6のような曲線になる。
【0072】
以上より、芯金1aに、所定の温度、具体的には、被加熱材加熱温度としての定着温度よりも高く、非通紙部昇温の許容昇温温度内の所定の温度にキュリー温度を調整した整磁合金を用いることによって、芯金1aはキュリー温度付近では発熱量が急激に低下する。そのため、小サイズの記録シートをとおしても、非通紙部昇温の発生を防止もしくは低減することができる。
【0073】
また、透磁率の測定方法は以下のように行う。岩通計測株式会社製のB−Hアナライザー(型番:SY−8232)を用いて測定した。測定試料に装置の所定の一次コイルと二次コイルを巻きつけて周波数20kHzで測定する。測定試料はコイルが巻きつけられる形状であれば構わない(透磁率の異なる温度同士の比率は殆ど変わらない)。
【0074】
試料にコイルを設定したら、恒温室に試料を入れて温度を飽和させ、その温度における透磁率をプロットする。恒温室の温度を変えてやることで透磁率の温度依存性曲線が得られる。恒温室の温度を上昇させていき、ある温度で透磁率が変化しなくなる。この透磁率が変化しなくなった温度をキュリー温度とみなす。このように測定すると透磁率の温度依存性は図7のような曲線になる。
【0075】
また、図8は芯金1aの断面において渦電流が誘導される領域を示す模式図である。(a)は芯金1aの厚さd(mm)が表皮深さをδ(mm)と比較して広い場合である。(b)は芯金1aの温度がキュリー温度Tc以上になった場合である。
【0076】
この場合において、キュリー温度Tc以上における表皮深さをδc(mm)とすると、芯金1aの厚さd(mm)が表皮深さをδc(mm)と比較して狭い場合は、芯金1aの断面のおよそすべてに渦電流が流れる。そのため、発熱量が減少する。
【0077】
この状態では、加熱ローラ1の温度上昇はほぼ停止し、加熱ローラ1の表面温度は芯金1aに用いた整磁合金のキュリー温度とほぼ等しくなる。即ち、加熱ローラ1の発熱量と加熱ローラ1の放熱量のバランスにより、加熱ローラ1の温度は、飽和温度に自己調整される。そのため、コイル7に印加する高周波電流が、所定の周波数fにあっては、加熱ローラ1の表面温度はキュリー温度以上にすることが困難である。
【0078】
すなわち、図3において、加熱ローラ1の、小サイズ紙が通過するP2の領域の温度は定着温度Tfに維持される。しかし、小サイズ紙が通過しないP2以外の領域の温度は、飽和温度に自己調整されることで、非通紙部昇温を低減させることが出来る。また、図9に示すように、温調温度がキュリー温度に近づいてくると、力率の低下に伴いIH電源効率が低下するため発熱効率が低下してしまう。
【0079】
そのため、弾性層を持たせた加熱ローラ1を用いると、ウォームアップ時間が大幅に伸びる、キュリー温度付近での温調ができない、小サイズの記録シートを通紙したときにおこる非通紙部昇温が厳しくなるといった問題が起こる。
【0080】
そこで、本実施例では、加熱ローラ1に対する外部加熱ユニット3を配設し、該ユニット3の外部加熱部材としての外部加熱ベルト3cを加熱ローラ1の外面に対して当接させて直接加熱ローラ表層に熱を加える。これにより、ウォームアップ時間を短縮させている。また、その外部加熱部材としての外部加熱ベルト3cに銅(非磁性低抵抗金属)を用いる。そして、このベルト3cの加熱ローラ1に対する当接位置を、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ位置を少なくとも1つ以上を網羅するように配置するように設けている。
【0081】
本実施例においては、加熱ローラ1は加熱ローラ回転方向Aにおいて図10の(a)のような発熱分布を持つ。加熱ローラ1の周方向の角度θに関しては、(b)のように、磁性コア6(2)の対向位置を0°の位置とする。そして、この角度θ=0°の位置から加熱ローラ回転方向Aの上流側に180°の角度範囲を0〜+180°とし、角度θ=0°の位置から加熱ローラ回転方向Aの下流側に180°の角度範囲を0〜−180°としている。本実施例の定着装置においては加熱ローラ1の最大発熱量を持つ位置(発熱ビーク部)は、ほぼ+55°と−55°の2箇所の角度位置であった。
【0082】
発熱分布の測定方法としては、株式会社日本総研ソリューションズ製の電磁界解析ソフトウェアであるJMAG−Studioを用いて、2次元の磁界解析を行い、加熱ローラ1の周方向におけるジュール損失密度分布(発熱分布)を求めた。
【0083】
なお、発熱分布の測定方法は上記に限ったものではなく、その他の電磁界解析ソフトウェアを使用しても良い。また、加熱ローラ1の回転を停止し、加圧ローラ2を外した状態で、比較的短時間の加熱ローラの加熱を行ったときの、加熱ローラの周方向の温度分布を測定し、加熱前後の温度上昇ΔTの分布を求めることで、発熱分布の代用としても良い。
【0084】
また、温度分布の測定方法は、加熱ローラ1の回転を所定時間(本実施例では5分)停止した状態で、本実施例1におけるスタンバイ温度Tsである200℃に維持されたときの加熱ローラ1の表面温度を測定した。本実施例では、スタンバイ状態時は、加熱ローラは停止している。
【0085】
本実施例においては、外部加熱ベルト3cを、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ上記2つの位置を網羅するように当接させて配設している。その結果、定着装置Fに対して小サイズ紙Pが連続的に通紙されて加熱ローラ1の非通紙部の温度がキュリー温度付近まで上昇したとき、加熱ローラ1の非通紙部において芯金1aの透磁率減少により加熱ローラ1の外側に磁束が漏れる。その漏れた磁束がベルト3cを電磁誘導し、ベルト3cはコイル7が放つ磁束と逆向きの磁束を発生させ、このためコイル7が放つ磁束をキャンセルすることができる。
【0086】
これについていま少し説明する。ベルト3cの抵抗値は誘導加熱される部材である加熱ローラ1の芯金1aの抵抗値よりも小さければよい。加熱ローラ1の芯金1aの温度がキュリー温度付近の場合は、透磁率の減少により磁束Hは芯金1aを突き抜けて、外部加熱部材であるベルト3cを通過する。この場合、芯金1aとベルト3cの両方が誘導加熱により発熱する。
【0087】
ここでベルト3cは、加熱ローラ1の芯金1aに用いたキュリー材よりも抵抗率を小さく設定すると、渦電流はベルト3cに多く誘導される。このことから、芯金1aに誘導される渦電流は、外部加熱部材であるベルト3cが配置されていない状態に比べて減少し、発熱もそれにともなって減少する。一方で、外部加熱部材の抵抗率が小さいと、外部加熱部材に渦電流が多く誘導されても外部加熱自身の発熱量としてはより小さくなる。
【0088】
実際、上記ベルト3cに従来用いられているニッケルベルトを用いると、上記の漏れた磁束によりベルト自体が発熱してしまい、加熱ローラ1の端部温度は240℃まで上昇した。また、上記ベルトがPI(ポリイミド)ベルトでは、漏れ磁束による誘導加熱はしないが、加熱ローラ1の端部温度は230℃まで上昇している。
【0089】
それに対し、上記ベルト3cに、芯金1aに用いたキュリー材よりも抵抗率を小さい非磁性低抵抗金属である銅を用いると、低抵抗なために漏れ磁束による誘導加熱が抑えられる。なおかつ、コイル7の磁束キャンセル効果があり、加熱ローラ1の端部温度は225℃と非通紙部昇温を抑えることができる。
【0090】
このように、小サイズ紙を連続的に通紙したとき、加熱ローラ1がキュリー温度付近まで非通紙部昇温すると、外部加熱部材としてのベルト3cが外部遮蔽部材の役割を果たし、非通紙部昇温を防止あるいは低減することができる。
【0091】
本実施例において、外部加熱ユニット4の外部加熱部材としての回転可能な無端ベルト3cを、加熱源で加熱され、非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有する回転可能なローラにすることもできる。
【0092】
かくして、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【0093】
[実施例2]
図11は本実施例における像加熱装置である定着装置Fの要部の拡大横断面模型図である。本実施例の定着装置Fは上述した実施例1の定着装置Fにおいて、外部加熱ユニット3を無しにし、加圧部材としての加圧ローラ2を外部加熱部材に兼用させた構成の装置である。実施例1の定着装置Fと共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。
【0094】
本実施例2において、加圧ローラ2は外径38mm、長さは350mmであって、肉厚3mmの銅(非磁性低抵抗金属)から成る芯金2aを有する。また、芯金2aの周面に形成される厚さ1mmの耐熱弾性層2b、および耐熱弾性層2bの周面に形成されるPFA、PTFEなどのフッ素樹脂より成る厚さ100μmの表層2cを有する。また、芯金2aの内部には加圧ローラ2に熱を与える加熱源2dが配置されている。
【0095】
加圧ローラ2は加熱ローラ1と相互圧接して記録材Pを挟持搬送するニップ部Nを形成する加圧部材として機能する。本実施例においては、該両ローラ1・2間に記録材Pを挟持搬送してトナー像を加熱定着する幅約4mmの定着ニップ部Nが形成されている。また、本実施例において加圧ローラ2は加熱ローラ1の外面に当接しており加熱源2dにより加熱されて加熱ローラ1を外側から加熱する外部加熱部材としても機能する。
【0096】
本実施例においては、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ前記2つの位置のうちの一つがニップ部Nに位置するように、加熱ローラ1の内側に配設されるコイル・アセンブリ4の加圧ローラ周方向に関する姿勢角度が設定されている。
【0097】
以上の構成を備える本実施例では、前記の実施例1の装置と同様に、小サイズ紙を連続通紙した際、非通紙部昇温が起こり、漏れ磁束が発生する。しかし、上記のように加圧ローラ2の芯金2aを非磁性低抵抗金属で構成すると共に、加圧ローラ2を加熱ローラ回転方向Aに対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ位置に配置するように設けることで、外部遮蔽の効果が得られる。
【0098】
実際、芯金2aに鉄を用いると、小サイズ紙連続通紙時の加熱ローラ1の端部温度は最大235℃まで上昇する。それに対し、非磁性低抵抗金属である銅の芯金2aでは加熱ローラ1の端部の温度上昇は230℃までに抑えられ、非通紙部昇温を低減することができる。この構成は、先の実施例1の形態(外部加熱ユニット3を有する形態)を組み合わせることによって、更なる効果が期待できることは明白である。
【0099】
かくして、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【0100】
[実施例3]
図12は本実施例における像加熱装置である定着装置Fの要部の拡大横断面模型図である。本実施例の定着装置Fも上述した実施例1の定着装置Fにおいて、外部加熱ユニット3を無しにし、加圧部材としての加圧ベルト2を外部加熱部材に兼用させた構成の装置である。実施例1の定着装置Fと共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。
【0101】
加圧ベルト2は、所定の間隔をあけてそれぞれ加熱ローラ1に対して並行に配列された第1と第2の2本の支持ローラ2eと2f間に懸回張設されている。支持ローラ2eと2fは、外径20mm、長さ360mm、厚さ2mmのアルミでできた中空ローラであり、各ローラの内空内部にはそれぞれ加熱源としてのハロゲンヒータ2g・2hが設けられている。加圧ベルト2は可撓性・耐熱性を有する無端ベルトであり、非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有する。本実施例においてはこの加圧ベルト2は、厚さ250μm、長さ355mmの銅から成る。
【0102】
支持ローラ2e・2fは加熱ローラ1に対して不図示の加圧機構によって所定の押圧力で当接されている。この加圧当接状態において、支持ローラ2e・2fが加圧ベルト2を介して加熱ローラ1の外面に圧接している。また、支持ローラ2e・2f間のベルト部分が加熱ローラ1の外面に腹当てに圧接している。本実施例においては、加圧ベルト2の上行側のベルト部分を加圧パッド2iにより加熱ローラ1に加圧している。これにより、加熱ローラ1と加圧ベルト2との間に加熱ローラ1の回転方向に関して幅広のニップ部Nが形成される。
【0103】
本実施例においては、加熱ローラ1・加圧ベルト2間に記録材Pを挟持搬送してトナー像を加熱定着する幅約20mmのニップ部Nが形成されている。加圧ベルト2は加熱ローラ1が回転駆動されることで従動して回転する。支持ローラ2e・2fも加圧ベルト2が回転することで従動して回転する。加熱ローラ1が回転駆動され、加圧ベルト2が従動回転している状態において、支持ローラ2e・2fはハロゲンヒータ2g・2hへの通電により所定の温度に加熱される。この支持ローラ2e・2fにより加圧ベルト2が加熱されて、加熱ローラ1の外面がニップ部Nにおいて加圧ベルト2の熱で外部加熱される。
【0104】
かくして、本実施例において加圧ベルト2は加熱ローラ1と相互圧接して記録材Pを挟持搬送するニップ部Nを形成する加圧部材として機能する。また、本実施例において加圧ベルト2は加熱ローラ1の外面に当接しており加熱源2g・2hにより加熱されて加熱ローラ1を外側から加熱する外部加熱部材としても機能する。
【0105】
また、本実施例においては、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ前記2つの位置が共にニップ部Nに位置するように、加熱ローラ1の内側に配設されるコイル・アセンブリ4の加圧ローラ周方向に関する姿勢角度が設定されている。
【0106】
これにより、前記実施例1および実施例2と同様の効果が期待できることは明白である。また、本実施例3と上記の実施例1を組み合わせることによって、更なる効果が期待できることは明白である。
【0107】
かくして、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【0108】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術思想内であらゆる変形が可能である。
【0109】
[その他の事項]
磁束発生手段4のコイル7は少なくとも1つある。複数のコイル7を具備させてもよい。磁性コア6はコイルの近辺に配置されていて像加熱部材1の整磁合金層1aに磁束を導くものである。
【0110】
2)像加熱部材1はローラ体に限られない。回転可能なエンドレスベルト体にすることもできる。
【0111】
3)加圧部材は回転可能なローラ体やエンドレスベルト体に限られない。表面(像加熱部材1や記録材Pとの当接面)の摩擦係数が小さい非回転部材(加圧パッドなど)の形態にすることもできる。
【0112】
4)装置に対する記録材Pの通紙(搬送)は中央基準に限られない。記録材の幅方向の一方側の側部を基準として通紙(搬送)する片側基準の装置構成とすることもできる。
【0113】
5)本発明の像加熱装置は、実施例のような、記録材に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置としての使用に限られない。記録材に一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像又は半定着画像)を加熱加圧して光沢度を向上させるなどの画像の表面性状を調整する加熱処理装置としても有効である。
【0114】
6)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0115】
F・・像加熱装置、1・・像加熱部材、1a・・整磁合金層、7・・コイル、3c・・外部加熱部材、3d・3e・・加熱源、P・・記録材、t・・像、A・・像加熱部材1の回転方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材上の像を加熱する電磁誘導加熱方式の像加熱装置、および当該像加熱装置を備える複写機・プリンタ・ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【0002】
記録材上の像を加熱する像加熱装置としては、記録材上に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を再加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
電子写真方式・静電記録方式等の画像形成装置は、シート状の記録材(記録紙・転写材など)上に形成されたトナー画像を記録材上に定着する或いは加熱する像加熱装置を備える。この像加熱装置は、加熱ローラ(定着ローラ)もしくはエンドレスの加熱ベルトである像加熱部材と、像加熱部材と相互圧接して、記録材を挟持搬送するニップ部を形成する加圧部材と、を有する。
【0004】
像加熱部材(以下、加熱ローラと記す)は、発熱体によって内部または外部より、直接もしくは間接的に加熱されて、表面温度が所定の定着温度に維持される。発熱体は、例えばハロゲンヒータや抵抗発熱体等が挙げられる。未定着のトナー画像が形成された記録材は、ニップ部で加熱されると共に加圧されて、未定着のトナー画像が記録材面に固着画像として定着される。
【0005】
近年は、画像形成装置の省エネルギー化と、ウォームアップ時間の短縮といったユーザーの操作性向上の両立を図ることが重視されている。このことから加熱ローラが直接発熱して発熱効率の高い誘導加熱方式を用いた像加熱装置(以下、誘導像加熱装置と記す)が提案されている(特許文献1)。
【0006】
この誘導像加熱装置は、励磁コイルが発生する磁束の作用によって、金属導体からなる中空の加熱ローラに誘導電流(渦電流)を発生させ、加熱ローラ自体の表皮抵抗によって加熱ローラそのものがジュール発熱する。そのため、この誘導像加熱装置によれば、ウォームアップ時間の短縮が可能となる。
【0007】
また、このような誘導像加熱装置においては、印加する高周波電流の周波数、加熱ローラの透磁率および固有抵抗値とから決定される表皮抵抗に比例した電力が発熱する。したがって、印加する高周波電流の周波数を制御することによって、加熱ローラの発熱量を常に最適化することができ、装置の省エネルギー化を達成することが可能となる。
【0008】
一方で、このような誘導像加熱装置にあっては、磁束により発熱する表皮深さがコイルに通電される周波数、加熱ローラの固有抵抗値によって決められる。そのため、加熱ローラの厚みが表皮深さよりも厚い場合には、発熱量は変わらないため、加熱ローラの厚さが大きくなるほど、かえって発熱効率が低下してしまい、ウォームアップ時間短縮の効果を得ることが困難となる。
【0009】
逆に加熱ローラの厚さが表皮深さよりも薄いと、磁束が加熱ローラを突き抜けてしまい、発熱量が少なくなるだけでなく、加熱ローラ周辺の金属部材を加熱してしまう。したがって、加熱ローラの厚さはおおよそ50〜2000μm程度が望ましい。
【0010】
このような誘導像加熱装置においても、従来の像加熱装置と同様に小サイズの記録材を連続通紙すると、記録材が通過しない非通紙部領域の昇温(非通紙部昇温)が発生する。この非通紙部昇温対策として、特許文献2に開示されるように、加熱ローラに、キュリー温度が所定の定着温度に調整された整磁合金を用いた誘導像加熱装置が提案されている。
【0011】
一般に磁性材料は、加熱されて材料固有のキュリー温度を越えると自発磁化が消失する。そのため、磁性材料内に通過する磁束密度が減少し、それに伴って磁性材料中に誘導される渦電流が減少することで、磁性材料の発熱量が減少する。したがって、加熱ローラの材料として、所定温度に調整されたキュリー温度を持つ整磁合金を用いることで、加熱ローラは所定温度以上に加熱されることが無い。そのため、上述の非通紙部昇温を改善することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭59−33787号公報
【特許文献2】特開2000−39797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、さらに高画質な定着画像あるいは加熱画像を実現するため、加熱ローラの表層に弾性層を持たせたとき、表面の熱伝導率低下に伴い、ウォームアップ時間が長くなってしまう。また、弾性層の蓄熱により、上述の非通紙部昇温が大きくなり、搬送性の低下や寿命が短いといった問題がおこる。
【0014】
そこで本発明では、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係る像加熱装置の代表的な構成は、高周波電流が印加されるコイルが内側に配設されていて当該コイルから生じる磁束により発熱する整磁合金層と当該整磁合金層よりも外側に弾性層を有し像を担持した記録材に接して記録材を加熱する回転可能な中空の像加熱部材を有する像加熱装置であって、前記像加熱部材の外面に当接しており加熱源により加熱されて像加熱部材を外側から加熱する外部加熱部材を有し、当該外部加熱部材は前記整磁合金層の整磁合金よりも抵抗率が小さい非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有しており前記コイルにより加熱される前記像加熱部材が回転方向に関して最大発熱量を持つ位置の少なくとも1つに対応する位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成模型図である。
【図2】像加熱装置である定着装置の要部の拡大横断面模型図である。
【図3】要部の正面模型図である。
【図4】コイル・アセンブリ(磁束発生手段)の外観斜視図である。
【図5】電磁誘導加熱原理を説明する図である。
【図6】抵抗値の温度依存性を説明する図である。
【図7】透磁率の温度依存性を説明する図である。
【図8】表皮深さと芯金肉厚および発熱量を説明する図である。
【図9】キュリー材を用いた誘導加熱装置の力率の温度依存性を説明する図である。
【図10】加熱部材の位置と発熱量の関係を説明する図である。
【図11】実施例2における定着装置の要部の拡大横断面模型図である。
【図12】実施例3における定着装置の要部の拡大横断面模型図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本発明に従う電磁誘導加熱方式の像加熱装置を定着装置(画像定着手段)として備えた画像形成装置の一例の概略構成模型図である。
【0020】
本例の画像形成装置は電子写真プロセスを用いたレーザー走査露光方式のデジタル画像形成装置(複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機能機等)である。
【0021】
41は像担持体としての回転ドラム型の感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、矢印の時計方向に所定の周速度をもって回転駆動される。42は一次帯電器であり、本実施例においては、感光ドラム41をマイナス極性の所定の暗電位Vdに一様に帯電する。
【0022】
43は像露光手段であるレーザービームスキャナであり、画像読取装置、コンピュータ等のホスト装置(不図示)から入力されるデジタル画像信号に対応して変調されたレーザービームLを出力して感光ドラム41の一様帯電処理面を走査露光する。この走査露光により、感光ドラム41の露光部分は電位絶対値が小さくなって明電位Vlとなり、感光ドラム41面に画像信号に対応した静電潜像が形成される。静電潜像は現像器44により現像されて、感光ドラム面の露光明電位Vl部にマイナスに帯電したトナーが付着することでトナー画像として顕像化される。
【0023】
一方、不図示の給紙トレイ上から給紙された紙等のシート状の記録材Pは、転写バイアスが印加された転写部材としての転写ローラ45と感光ドラム41とが圧接している転写部へ適切なタイミングをもって搬送される。そして、記録材Pの面に感光ドラム41上に形成されているトナー画像tが順次転写される。
【0024】
トナー画像tが転写形成された記録材Pは、感光ドラム41から分離され、後述する定着装置Fに導入されて、熱と圧によって、トナー画像tが記録材上に定着され、その後機外に排出される。
【0025】
記録材Pを分離した後の感光ドラム41の表面は、クリーニング装置46で感光ドラム表面に残った転写残トナーがクリーニングされ、その後、繰り返して作像に供される。記録材搬送方向aに関して定着装置Fよりも上流側の装置機構部が記録材に未定着画像を形成する画像形成手段である。
【0026】
(2)定着装置F
図2は像加熱装置である定着装置Fの要部の拡大横断面模型図である。図3は要部の正面模型図である。ここで、定着装置Fについて、正面とは記録材導入口側から見た面である。装置構成部材について、長手方向とは、像加熱部材(加熱ローラ)1の回転軸線方向、若しくは定着ニップ部Nを含む平面において記録材Pの搬送方向aに対して直交する方向に並行な方向としている。また、中央部及び端部は、その長手方向の中央部及び端部である。
【0027】
定着装置Fは、電磁誘導加熱方式で発熱する加熱ローラ型の像加熱装置である。磁束により発熱する導電層を有する像加熱部材としての加熱ローラ1(定着ローラ)を有する。また、加熱ローラ1と相互圧接して記録材を挟持搬送するニップ部Nを形成する加圧部材としての加圧ローラ2を有する。また、加熱ローラ1の外面に当接して加熱する外部加熱ユニット3を有している。
【0028】
加熱ローラ1は、外径が40mm、厚さは1.2mm、長さ350mmの中空ローラである。加熱ローラ1は、本実施例ではキュリー温度Tcが220℃になるように鉄、ニッケル、クロム、マンガン等の材料が配合され、固有抵抗が約5Ω・mである整磁合金よりなる導電層(整磁合金層)である芯金1aを有する。
【0029】
本実施例ではキュリー温度Tcは、画像形成時(記録材を加熱する動作時)に記録材上の画像を加熱するときの制御温度である像加熱温度Tf(以下、定着温度Tf:本実施例では200℃とする)より高い温度に設定した。また、キュリー温度Tcは、像加熱装置の耐熱温度(本実施例では230℃とする)未満の温度に設定した。即ち、加熱ローラ1の制御温度(温調温度)は加熱ローラ1のキュリー温度Tcよりも低い温度に設定している。ここで、像加熱装置の耐熱温度とは、像加熱装置の一部の部品の熱損が著しくなる温度である。
【0030】
また、芯金1aの外周面には、カラー画像等の高画質な定着画像を得るために、シリコーンゴムなどの厚さ250μmの耐熱弾性層1bが設けられている。さらにその外周面に、トナーに対する離型性を高めるためにPFAやPTFE等のフッ素樹脂より成る、厚さ20μmの表層1cが設けられている。
【0031】
この加熱ローラ1はその両端部側がそれぞれ定着装置Fの枠体の一部である手前側と奥側の側板(定着ユニットフレーム)21・22間に軸受23を介して回転可能に支持されて配設されている。加熱ローラ1の中空内部(内側)には、芯金1aに誘導電流(渦電流)を誘起させてジュール発熱させるための高周波磁界を生じさせるためのコイル(励磁コイル)を有する磁場発生手段(磁束発生手段)としてのコイル・アセンブリ4が挿入されて配置されている。
【0032】
図4はコイル・アセンブリ4の外観斜視図である。コイル・アセンブリ4は加熱ローラ1の回転軸線方向に長く、ボビン5、磁性材からなる磁性コア(磁性芯材)6、コイル(励磁コイル)7を有する。磁性コア6はボビン5に保持されており、コイル7はボビン5の周囲に電線を巻回して形成されている。コイル7はボビン5に加熱ローラ1の回転軸線方向に延伸して巻かれている。磁性コア6はコイル7の近辺には配置されて加熱ローラ1(導電層1a)の磁束を導く。ボビン5・磁性コア6・コイル7が一体化されてステー8に固定支持されている。
【0033】
コイル・アセンブリ4は加熱ローラ1の内面と励磁コイル7間に一定のギャップを保持させた状態にしてステー8の両端部8a・8aでそれぞれ定着装置の手前側と奥側の保持部材24・25に非回転に固定支持されている。ボビン5・磁性コア6・コイル7は加熱ローラ1の外部には露呈しないように加熱ローラ1の内空部に収納されている。
【0034】
磁性コア6はフェライト、パーマロイ等の、高透磁率で残留磁束密度の低い材料であって、コイル7によって発生した磁束を加熱ローラ1に導くものである。本実施例における磁性コア6は横断面T字型であり、T字の横棒部分と縦棒部分とを構成する2枚の板条磁性コア6(1)と6(2)とが組み合わされている。
【0035】
コイル7は、加熱ローラ1の長手方向に平行に延び、磁性コア6(1)を周回するようにボビン5の形状に合わせて横長舟型に複数回巻回して両端を折り曲げられて巻かれるリッツ線を束ねたものである。また、加熱ローラ1の内周に沿うように湾曲して配置されている。即ち、コイル7は加熱ローラ1の回転軸方向に延伸して巻かれ、加熱ローラ1の回転軸線方向に直交する方向の磁束を発生することで加熱ローラ1を加熱する。
【0036】
7a・7bは上記励磁コイル7の2本のリード線(コイル供給線)であり、ステー8の奥側から加熱ローラ1の外部に引き出して、コイル7に高周波電流を供給する高周波インバーター(高周波回路)101に接続してある。高周波インバーター101はスイッチング素子を有し、このスイッチング素子のON/OFFにより、所定の周波数の電流をコイル7に流すことができる。本実施例に用いた高周波インバーター101は所定の電圧(100V)で出力し、電力制御は可変の電流値および電流のON/OFF時間によって決定される。
【0037】
加圧ローラ2は、外径38mm、長さは350mmであって、外径28mm、肉厚3mmの芯金2aを有する。また、芯金2aの周面に形成される厚さ5mmの耐熱弾性層2b、および耐熱弾性層2bの周面に形成されるPFA、PTFEなどのフッ素樹脂より成る厚さ100μmの表層2cを有する。加圧ローラ2は加熱ローラ1の下側に並行に配列されて、芯金2aの両端部側がそれぞれ定着装置の枠体の手前側と奥側の側板21・22間に軸受26を介して回転自在に保持されている。
【0038】
そして、上記の加熱ローラ1と加圧ローラ2は互いに不図示の加圧機構(加圧手段)によって所定の加圧力で圧接されている。これにより、該両ローラ1・2間に記録材Pを挟持搬送してトナー像を加熱定着する、記録材搬送方向aに関して幅約6mmのニップ部(定着ニップ部)Nが形成されている。
【0039】
外部加熱ユニット3は、所定の間隔をあけてそれぞれ加熱ローラ1に対して並行に配列された第1と第2の2本の支持ローラ3aと3bを有する。また、この2本の支持ローラ3a・3b間に懸回張設された可撓性・耐熱性を有する、外部加熱部材としての無端ベルト(外部加熱ベルト)3cを有する。支持ローラ3aと3bは、外径20mm、長さ360mm、厚さ2mmのアルミでできた中空ローラであり、各ローラの内空内部にはそれぞれ加熱源としてのハロゲンヒータ3d・3eが設けられている。
【0040】
ベルト3cは加熱ローラ1の芯金1aに用いたキュリー材、即ち整磁合金層の整磁合金よりも抵抗率が小さい非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有する。この金属は、例えば、銅、銀、金、アルミニウム、SUS(オーステナイト系)及びこれらの金属を用いた合金の群から選択される少なくとも1つである。本実施例においては、ベルト3cは厚さ250μm、長さ355mmの銅から成る。
【0041】
第1と第2の支持ローラ3a・3bはユニット筐体3fの前側と奥側の側板間に回転可能に軸受されて保持されている。そして、外部加熱ユニット3は加熱ローラ1に対して不図示の加圧機構によって所定の押圧力で当接されている。この加圧当接状態において、第1と第2の支持ローラ3a・3bがベルト3cを介して加熱ローラ1の外面に圧接している。また、第1と第2の支持ローラ3a・3b間のベルト部分が加熱ローラ1の外面に腹当てに圧接している。これにより、加熱ローラ1とベルト3cとの間に加熱ローラ1の回転方向に関して幅広の外部加熱ニップ部が形成される。
【0042】
ベルト3cは加熱ローラ1が回転駆動されることで従動して回転する。第1と第2の支持ローラ3a・3bもベルト3cが回転することで従動して回転する。加熱ローラ1が回転駆動され、ベルト3cが従動回転している状態において、第1と第2の支持ローラ3a・3bはそれぞれハロゲンヒータ3d・3eへの通電により所定の温度に加熱される。この第1と第2の支持ローラ3a・3bによりベルト3cが加熱されて、加熱ローラ1の外面が外部加熱ニップ部においてベルト3cの熱で外部加熱される。
【0043】
11は加熱ローラ1の温度検知部材としてのサーミスタである。サーミスタ11は定着ローラ1の長手方向の中央部分に設けられている。また、サーミスタ11は、加熱ローラ1を隔ててコイル7に向かい合うように、定着ローラ1の表面に対して弾性部材11aにより押圧して弾性的に圧接されて配置されている。このサーミスタ11の加熱ローラ温度の検知信号は制御回路(CPU)100に入力される。
【0044】
12は定着前ガイド板であり、作像機構部側から定着装置Fに搬送された記録材Pをニップ部Nの入口部に案内する。13は分離爪であり、ニップ部Nに導入されてニップ部Nを出た記録材Pが加熱ローラ1に巻きつくことを抑え、加熱ローラ1から記録材Pを分離するためのものである。14は定着後ガイド板であり、ニップ部Nの出口部を出た記録材Pを排紙案内する。前記ボビン5、ステー8、分離爪13は耐熱および電気絶縁性エンジニアリング・プラスチックから形成されている。
【0045】
Gは加熱ローラ1を駆動するためのドライブギアであり、加熱ローラ1の奥側の端部側に固着されている。このドライブギアGに駆動源Mから伝達系を介して駆動力が伝達されることで、加熱ローラ1が図2において矢印Aの時計方向に本実施例では500mm/secの周速度にて回転する。加圧ローラ2はニップ部Nでの加熱ローラ1との摩擦力で加熱ローラ1の回転に従動して矢印の反時計方向Bに回転する。
【0046】
15は加熱ローラクリーナである。クリーニングウエブ15aをロール巻きに保持したウエブ繰り出し軸部15bと、ウエブ巻取り軸部15cと、該両軸部15b・15c間のウエブ部分を加熱ローラ1の外面に押し付ける押し付けローラ15dを有する。押し付けローラ15dで加熱ローラ1に押し付けたウエブ部分で加熱ローラ1面にオフセットしたトナーが拭われて加熱ローラ面が清掃される。加熱ローラ1に押し付けられるウエブ部分は繰り出し軸部15b側から巻取り軸部15c側にウエブ15aが少しずつ送られることで徐々に更新される。
【0047】
本実施例では、通紙は中央基準で行われる。Sはその中央基準(仮想線)である。すなわち、装置に通紙使用可能な大小いかなる幅サイズの記録材も、記録材の中央部が加熱ローラ軸方向の中央部を通過することになる。本実施例の画像形成装置においては、通紙できる記録材の最大幅サイズ(以下、大サイズ紙と記す)は例えば13インチ(330mm)である。また通紙できる記録材の最小幅サイズ(以下、小サイズ紙と記す)は例えばB5縦(138mm)である。P1はその大サイズ紙の通紙領域幅、P2は小サイズ紙の通紙領域幅である。
【0048】
サーミスタ11は、小サイズ紙の通紙領域幅P2の略中央部に対応する加熱ローラ中央部分に接触して設けられている。即ち、通紙領域は、装置に通紙可能なすべてのサイズの記録材が通過する領域であって、サーミスタ11は、加熱ローラ1の通紙領域の温度を検知する。本実施例では、接触式のサーミスタであるが、非接触のサーミスタでも問題ない。
【0049】
次に、定着装置Fの動作について説明する。画像形成装置の制御回路部100は、装置のメイン電源スイッチのONにより画像形成装置を起動させて所定の立ち上げモードをスタートさせる。
【0050】
定着装置Fは駆動源Mの起動により加熱ローラ1の回転が開始される。この加熱ローラ1の回転に従動して加圧ローラ2及びベルト3cも回転する。また制御回路部100は高周波インバーター101を起動させてコイル7に高周波電流を流す。本実施例では、高周波電流の周波数f2は20kHzである。このコイル7への高周波電流の印加により生じた磁束により加熱ローラ1の芯金1aが電磁誘導加熱される。
【0051】
また、ハロゲンヒータ3d・3eへの通電も開始する。このハロゲンヒータ3d・3eへの通電により支持ローラ3aと3bが加熱されることでベルト3cが加熱され、外部加熱ニップ部において加熱ローラ1の外面がベルト3cの熱により外部加熱される。
【0052】
上記の電磁誘導加熱と外部加熱とにより加熱ローラ1が所定のスタンバイ完了温度、本実施例では定着温度である200℃まで迅速に昇温する。この加熱ローラ1の温度は、サーミスタ11で検知され、その検知温度情報が制御回路部100に入力する。
【0053】
加熱ローラ1の温度が200℃に到達したら、画像形成信号の入力を待機するスタンバイ状態(待機モード)となる。本実施例では、スタンバイ状態時は、加熱ローラ1は停止している。また、本実施例ではスタンバイ温度は200℃である。スタンバイ中(待機モード中)においては、通電制御手段である制御回路部100は、加熱ローラ1の大サイズ紙通紙領域幅P1の略全域定着温度200℃に維持するよう上記の電磁誘導加熱と外部加熱を制御する。即ち、コイル7に対する高周波電流を制御する。また、ハロゲンヒータ3d・3eに対する通電を制御する。
【0054】
そして、この待機モード時に画像形成信号が入力されると、加熱ローラ1は作像機構部において記録材上にトナー像が形成される。また、所定の制御タイミングで加熱ローラ1の再駆動がなされる。そして、未定着トナー像tを担持した記録材Pがニップ部Nで挟持搬送されることで、所定の定着温度に維持された加熱ローラ1の熱と圧により、未定着トナー像tが記録材Pの面に加熱定着される。
【0055】
像加熱工程中(定着動作中)においては、通電制御手段である制御回路部100は、加熱ローラ1の大サイズ紙通紙領域幅P1の略全域が定着温度200℃に維持するよう、高周波電流を制御する。また、ハロゲンヒータ3d・3eへの通電も制御する。本実施例では定着温度は200℃である。本実施例では、高周波電流の周波数f2は20kHzとし、待機モード中と同じ周波数である。
【0056】
なお、像加熱工程中はサーミスタ11の出力と定着温度との差分に応じて、コイル7に印加される電力の変更が行われている。また、ハロゲンヒータ3d・3eへの通電もオン/オフ制御される。
【0057】
ここで、図5を用いて、加熱ローラ1の導電層である芯金1aの電磁誘導発熱原理を説明する。コイル7には、高周波インバーター101から交流電流が印加され、これによってコイル7の周囲には矢印Hで示した磁束が生成消滅を繰り返す。磁束Hは、磁性コア6と芯金1aによって形成された磁路に沿って導かれる。コイル7が生成した磁束の変化に対して、芯金1a内では、磁束の変化を妨げる方向に磁束を発生するように渦電流が発生する。この渦電流を矢印Cで示す。
【0058】
この渦電流Cは、表皮効果により芯金1aのコイル7側の面に集中して流れ、芯金1aの表皮抵抗Rs(Ω)に比例した電力で発熱を生じる。
【0059】
ここで、コイル7に印加する交流電流の周波数f(Hz)、芯金1aの導体の透磁率μ(H/m)、芯金1aの固有抵抗ρ(Ω・m)から得られる表皮深さδ(m)および表皮抵抗Rs(Ω)は、式1および式2で示される。
【0060】
【数1】
【0061】
【数2】
【0062】
また、芯金1aに発生する電力Wは、芯金1aに誘導される渦電流をIf(A)として、式3で示される。
【0063】
【数3】
【0064】
以上より、芯金1aの発熱量を増加させるためには、渦電流Ifを大きくする、または表皮抵抗Rsを大きくすればよい。
【0065】
渦電流Ifを大きくするためには、コイル7によって生成される磁束を強くする、あるいは磁束の変化を大きくすればいい。例えば、コイル7の巻き数を増やしたり、磁性コア6として、より高透磁率で残留磁束密度の低いものを用いたりすると良い。また、磁性コア6と芯金1aとのギャップdを少なくすることで、芯金1a中に導かれる磁束が増加するため、渦電流Ifを大きくすることも出来る。
【0066】
一方、表皮抵抗Rsを大きくするためには、コイル7に印加する交流電流の周波数fを高くするか、より透磁率μの高く、固有抵抗の高い材料の芯金1aとする。
【0067】
次にキュリー温度Tcについて説明する。一般に強磁性体は、材料固有のキュリー温度Tcまで加熱されると、自発磁化を失い透磁率μが減少する。したがって、加熱ローラ1の導電部材である芯金1aの温度がキュリー温度Tcを越えてしまうと、表皮抵抗Rsが減少する。その結果、芯金1aの発熱量Wが減少する。
【0068】
一般に抵抗値は式2で表されるとおり、周波数が一定の場合は透磁率μと抵抗率ρで決まり、一般に抵抗率は温度上昇に伴って緩やかに増加する。
【0069】
ここで、加熱ローラ1の抵抗値(表皮抵抗)Rsは磁束発生手段4を加熱ローラ1に装着したときのコイル7に電流を流したときのコイル7からみた加熱ローラ1のみかけの負荷抵抗に相当する。
【0070】
このみかけの抵抗値の測定方法、及び抵抗値の温度依存性は以下のように測定する。アジレント社製のLCRメータ(型番HP4194A)を用いて、周波数20kHzの交流を印加した際の加熱ローラ1の抵抗値を測定した。このとき、加熱ローラ1、磁束発生手段である励磁コイル、コアは像加熱装置に装着された状態で測定するものとする。このとき加熱ローラ1の温度を変えていき、温度と加熱ローラ1の抵抗値を同時にプロットしていくことで加熱ローラ1の抵抗値の温度特性曲線を得ることができる。
【0071】
また、加熱ローラ1の温度を変えるには、恒温室に加熱ローラ1及び磁束発生手段を装置に装着させた位置関係に保った状態で、加熱ローラの温度を変化させる。そして、ローラ温度を恒温室の温度に飽和させてから上記の測定法で抵抗値を測定する。このように測定すると、抵抗値の温度依存性は図6のような曲線になる。
【0072】
以上より、芯金1aに、所定の温度、具体的には、被加熱材加熱温度としての定着温度よりも高く、非通紙部昇温の許容昇温温度内の所定の温度にキュリー温度を調整した整磁合金を用いることによって、芯金1aはキュリー温度付近では発熱量が急激に低下する。そのため、小サイズの記録シートをとおしても、非通紙部昇温の発生を防止もしくは低減することができる。
【0073】
また、透磁率の測定方法は以下のように行う。岩通計測株式会社製のB−Hアナライザー(型番:SY−8232)を用いて測定した。測定試料に装置の所定の一次コイルと二次コイルを巻きつけて周波数20kHzで測定する。測定試料はコイルが巻きつけられる形状であれば構わない(透磁率の異なる温度同士の比率は殆ど変わらない)。
【0074】
試料にコイルを設定したら、恒温室に試料を入れて温度を飽和させ、その温度における透磁率をプロットする。恒温室の温度を変えてやることで透磁率の温度依存性曲線が得られる。恒温室の温度を上昇させていき、ある温度で透磁率が変化しなくなる。この透磁率が変化しなくなった温度をキュリー温度とみなす。このように測定すると透磁率の温度依存性は図7のような曲線になる。
【0075】
また、図8は芯金1aの断面において渦電流が誘導される領域を示す模式図である。(a)は芯金1aの厚さd(mm)が表皮深さをδ(mm)と比較して広い場合である。(b)は芯金1aの温度がキュリー温度Tc以上になった場合である。
【0076】
この場合において、キュリー温度Tc以上における表皮深さをδc(mm)とすると、芯金1aの厚さd(mm)が表皮深さをδc(mm)と比較して狭い場合は、芯金1aの断面のおよそすべてに渦電流が流れる。そのため、発熱量が減少する。
【0077】
この状態では、加熱ローラ1の温度上昇はほぼ停止し、加熱ローラ1の表面温度は芯金1aに用いた整磁合金のキュリー温度とほぼ等しくなる。即ち、加熱ローラ1の発熱量と加熱ローラ1の放熱量のバランスにより、加熱ローラ1の温度は、飽和温度に自己調整される。そのため、コイル7に印加する高周波電流が、所定の周波数fにあっては、加熱ローラ1の表面温度はキュリー温度以上にすることが困難である。
【0078】
すなわち、図3において、加熱ローラ1の、小サイズ紙が通過するP2の領域の温度は定着温度Tfに維持される。しかし、小サイズ紙が通過しないP2以外の領域の温度は、飽和温度に自己調整されることで、非通紙部昇温を低減させることが出来る。また、図9に示すように、温調温度がキュリー温度に近づいてくると、力率の低下に伴いIH電源効率が低下するため発熱効率が低下してしまう。
【0079】
そのため、弾性層を持たせた加熱ローラ1を用いると、ウォームアップ時間が大幅に伸びる、キュリー温度付近での温調ができない、小サイズの記録シートを通紙したときにおこる非通紙部昇温が厳しくなるといった問題が起こる。
【0080】
そこで、本実施例では、加熱ローラ1に対する外部加熱ユニット3を配設し、該ユニット3の外部加熱部材としての外部加熱ベルト3cを加熱ローラ1の外面に対して当接させて直接加熱ローラ表層に熱を加える。これにより、ウォームアップ時間を短縮させている。また、その外部加熱部材としての外部加熱ベルト3cに銅(非磁性低抵抗金属)を用いる。そして、このベルト3cの加熱ローラ1に対する当接位置を、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ位置を少なくとも1つ以上を網羅するように配置するように設けている。
【0081】
本実施例においては、加熱ローラ1は加熱ローラ回転方向Aにおいて図10の(a)のような発熱分布を持つ。加熱ローラ1の周方向の角度θに関しては、(b)のように、磁性コア6(2)の対向位置を0°の位置とする。そして、この角度θ=0°の位置から加熱ローラ回転方向Aの上流側に180°の角度範囲を0〜+180°とし、角度θ=0°の位置から加熱ローラ回転方向Aの下流側に180°の角度範囲を0〜−180°としている。本実施例の定着装置においては加熱ローラ1の最大発熱量を持つ位置(発熱ビーク部)は、ほぼ+55°と−55°の2箇所の角度位置であった。
【0082】
発熱分布の測定方法としては、株式会社日本総研ソリューションズ製の電磁界解析ソフトウェアであるJMAG−Studioを用いて、2次元の磁界解析を行い、加熱ローラ1の周方向におけるジュール損失密度分布(発熱分布)を求めた。
【0083】
なお、発熱分布の測定方法は上記に限ったものではなく、その他の電磁界解析ソフトウェアを使用しても良い。また、加熱ローラ1の回転を停止し、加圧ローラ2を外した状態で、比較的短時間の加熱ローラの加熱を行ったときの、加熱ローラの周方向の温度分布を測定し、加熱前後の温度上昇ΔTの分布を求めることで、発熱分布の代用としても良い。
【0084】
また、温度分布の測定方法は、加熱ローラ1の回転を所定時間(本実施例では5分)停止した状態で、本実施例1におけるスタンバイ温度Tsである200℃に維持されたときの加熱ローラ1の表面温度を測定した。本実施例では、スタンバイ状態時は、加熱ローラは停止している。
【0085】
本実施例においては、外部加熱ベルト3cを、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ上記2つの位置を網羅するように当接させて配設している。その結果、定着装置Fに対して小サイズ紙Pが連続的に通紙されて加熱ローラ1の非通紙部の温度がキュリー温度付近まで上昇したとき、加熱ローラ1の非通紙部において芯金1aの透磁率減少により加熱ローラ1の外側に磁束が漏れる。その漏れた磁束がベルト3cを電磁誘導し、ベルト3cはコイル7が放つ磁束と逆向きの磁束を発生させ、このためコイル7が放つ磁束をキャンセルすることができる。
【0086】
これについていま少し説明する。ベルト3cの抵抗値は誘導加熱される部材である加熱ローラ1の芯金1aの抵抗値よりも小さければよい。加熱ローラ1の芯金1aの温度がキュリー温度付近の場合は、透磁率の減少により磁束Hは芯金1aを突き抜けて、外部加熱部材であるベルト3cを通過する。この場合、芯金1aとベルト3cの両方が誘導加熱により発熱する。
【0087】
ここでベルト3cは、加熱ローラ1の芯金1aに用いたキュリー材よりも抵抗率を小さく設定すると、渦電流はベルト3cに多く誘導される。このことから、芯金1aに誘導される渦電流は、外部加熱部材であるベルト3cが配置されていない状態に比べて減少し、発熱もそれにともなって減少する。一方で、外部加熱部材の抵抗率が小さいと、外部加熱部材に渦電流が多く誘導されても外部加熱自身の発熱量としてはより小さくなる。
【0088】
実際、上記ベルト3cに従来用いられているニッケルベルトを用いると、上記の漏れた磁束によりベルト自体が発熱してしまい、加熱ローラ1の端部温度は240℃まで上昇した。また、上記ベルトがPI(ポリイミド)ベルトでは、漏れ磁束による誘導加熱はしないが、加熱ローラ1の端部温度は230℃まで上昇している。
【0089】
それに対し、上記ベルト3cに、芯金1aに用いたキュリー材よりも抵抗率を小さい非磁性低抵抗金属である銅を用いると、低抵抗なために漏れ磁束による誘導加熱が抑えられる。なおかつ、コイル7の磁束キャンセル効果があり、加熱ローラ1の端部温度は225℃と非通紙部昇温を抑えることができる。
【0090】
このように、小サイズ紙を連続的に通紙したとき、加熱ローラ1がキュリー温度付近まで非通紙部昇温すると、外部加熱部材としてのベルト3cが外部遮蔽部材の役割を果たし、非通紙部昇温を防止あるいは低減することができる。
【0091】
本実施例において、外部加熱ユニット4の外部加熱部材としての回転可能な無端ベルト3cを、加熱源で加熱され、非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有する回転可能なローラにすることもできる。
【0092】
かくして、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【0093】
[実施例2]
図11は本実施例における像加熱装置である定着装置Fの要部の拡大横断面模型図である。本実施例の定着装置Fは上述した実施例1の定着装置Fにおいて、外部加熱ユニット3を無しにし、加圧部材としての加圧ローラ2を外部加熱部材に兼用させた構成の装置である。実施例1の定着装置Fと共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。
【0094】
本実施例2において、加圧ローラ2は外径38mm、長さは350mmであって、肉厚3mmの銅(非磁性低抵抗金属)から成る芯金2aを有する。また、芯金2aの周面に形成される厚さ1mmの耐熱弾性層2b、および耐熱弾性層2bの周面に形成されるPFA、PTFEなどのフッ素樹脂より成る厚さ100μmの表層2cを有する。また、芯金2aの内部には加圧ローラ2に熱を与える加熱源2dが配置されている。
【0095】
加圧ローラ2は加熱ローラ1と相互圧接して記録材Pを挟持搬送するニップ部Nを形成する加圧部材として機能する。本実施例においては、該両ローラ1・2間に記録材Pを挟持搬送してトナー像を加熱定着する幅約4mmの定着ニップ部Nが形成されている。また、本実施例において加圧ローラ2は加熱ローラ1の外面に当接しており加熱源2dにより加熱されて加熱ローラ1を外側から加熱する外部加熱部材としても機能する。
【0096】
本実施例においては、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ前記2つの位置のうちの一つがニップ部Nに位置するように、加熱ローラ1の内側に配設されるコイル・アセンブリ4の加圧ローラ周方向に関する姿勢角度が設定されている。
【0097】
以上の構成を備える本実施例では、前記の実施例1の装置と同様に、小サイズ紙を連続通紙した際、非通紙部昇温が起こり、漏れ磁束が発生する。しかし、上記のように加圧ローラ2の芯金2aを非磁性低抵抗金属で構成すると共に、加圧ローラ2を加熱ローラ回転方向Aに対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ位置に配置するように設けることで、外部遮蔽の効果が得られる。
【0098】
実際、芯金2aに鉄を用いると、小サイズ紙連続通紙時の加熱ローラ1の端部温度は最大235℃まで上昇する。それに対し、非磁性低抵抗金属である銅の芯金2aでは加熱ローラ1の端部の温度上昇は230℃までに抑えられ、非通紙部昇温を低減することができる。この構成は、先の実施例1の形態(外部加熱ユニット3を有する形態)を組み合わせることによって、更なる効果が期待できることは明白である。
【0099】
かくして、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【0100】
[実施例3]
図12は本実施例における像加熱装置である定着装置Fの要部の拡大横断面模型図である。本実施例の定着装置Fも上述した実施例1の定着装置Fにおいて、外部加熱ユニット3を無しにし、加圧部材としての加圧ベルト2を外部加熱部材に兼用させた構成の装置である。実施例1の定着装置Fと共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。
【0101】
加圧ベルト2は、所定の間隔をあけてそれぞれ加熱ローラ1に対して並行に配列された第1と第2の2本の支持ローラ2eと2f間に懸回張設されている。支持ローラ2eと2fは、外径20mm、長さ360mm、厚さ2mmのアルミでできた中空ローラであり、各ローラの内空内部にはそれぞれ加熱源としてのハロゲンヒータ2g・2hが設けられている。加圧ベルト2は可撓性・耐熱性を有する無端ベルトであり、非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有する。本実施例においてはこの加圧ベルト2は、厚さ250μm、長さ355mmの銅から成る。
【0102】
支持ローラ2e・2fは加熱ローラ1に対して不図示の加圧機構によって所定の押圧力で当接されている。この加圧当接状態において、支持ローラ2e・2fが加圧ベルト2を介して加熱ローラ1の外面に圧接している。また、支持ローラ2e・2f間のベルト部分が加熱ローラ1の外面に腹当てに圧接している。本実施例においては、加圧ベルト2の上行側のベルト部分を加圧パッド2iにより加熱ローラ1に加圧している。これにより、加熱ローラ1と加圧ベルト2との間に加熱ローラ1の回転方向に関して幅広のニップ部Nが形成される。
【0103】
本実施例においては、加熱ローラ1・加圧ベルト2間に記録材Pを挟持搬送してトナー像を加熱定着する幅約20mmのニップ部Nが形成されている。加圧ベルト2は加熱ローラ1が回転駆動されることで従動して回転する。支持ローラ2e・2fも加圧ベルト2が回転することで従動して回転する。加熱ローラ1が回転駆動され、加圧ベルト2が従動回転している状態において、支持ローラ2e・2fはハロゲンヒータ2g・2hへの通電により所定の温度に加熱される。この支持ローラ2e・2fにより加圧ベルト2が加熱されて、加熱ローラ1の外面がニップ部Nにおいて加圧ベルト2の熱で外部加熱される。
【0104】
かくして、本実施例において加圧ベルト2は加熱ローラ1と相互圧接して記録材Pを挟持搬送するニップ部Nを形成する加圧部材として機能する。また、本実施例において加圧ベルト2は加熱ローラ1の外面に当接しており加熱源2g・2hにより加熱されて加熱ローラ1を外側から加熱する外部加熱部材としても機能する。
【0105】
また、本実施例においては、加熱ローラ1の回転方向に対して加熱ローラ1が最大発熱量を持つ前記2つの位置が共にニップ部Nに位置するように、加熱ローラ1の内側に配設されるコイル・アセンブリ4の加圧ローラ周方向に関する姿勢角度が設定されている。
【0106】
これにより、前記実施例1および実施例2と同様の効果が期待できることは明白である。また、本実施例3と上記の実施例1を組み合わせることによって、更なる効果が期待できることは明白である。
【0107】
かくして、誘導加熱方式の像加熱装置において、表層に弾性層を持たせた像加熱部材においても、ウォームアップ時間を短くし、なおかつ非通紙部昇温を防止することができる。
【0108】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術思想内であらゆる変形が可能である。
【0109】
[その他の事項]
磁束発生手段4のコイル7は少なくとも1つある。複数のコイル7を具備させてもよい。磁性コア6はコイルの近辺に配置されていて像加熱部材1の整磁合金層1aに磁束を導くものである。
【0110】
2)像加熱部材1はローラ体に限られない。回転可能なエンドレスベルト体にすることもできる。
【0111】
3)加圧部材は回転可能なローラ体やエンドレスベルト体に限られない。表面(像加熱部材1や記録材Pとの当接面)の摩擦係数が小さい非回転部材(加圧パッドなど)の形態にすることもできる。
【0112】
4)装置に対する記録材Pの通紙(搬送)は中央基準に限られない。記録材の幅方向の一方側の側部を基準として通紙(搬送)する片側基準の装置構成とすることもできる。
【0113】
5)本発明の像加熱装置は、実施例のような、記録材に形成された未定着画像を固着画像として加熱定着する定着装置としての使用に限られない。記録材に一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像又は半定着画像)を加熱加圧して光沢度を向上させるなどの画像の表面性状を調整する加熱処理装置としても有効である。
【0114】
6)画像形成装置の画像形成部は電子写真方式に限られない。静電記録方式や磁気記録方式の画像形成部であってもよい。また、転写方式に限られず、記録材に対して直接方式で未定着画像を形成する構成のものであってもよい。
【符号の説明】
【0115】
F・・像加熱装置、1・・像加熱部材、1a・・整磁合金層、7・・コイル、3c・・外部加熱部材、3d・3e・・加熱源、P・・記録材、t・・像、A・・像加熱部材1の回転方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電流が印加されるコイルが内側に配設されていて当該コイルから生じる磁束により発熱する整磁合金層と当該整磁合金層よりも外側に弾性層を有し像を担持した記録材に接して記録材を加熱する回転可能な中空の像加熱部材を有する像加熱装置であって、
前記像加熱部材の外面に当接しており加熱源により加熱されて像加熱部材を外側から加熱する外部加熱部材を有し、当該外部加熱部材は前記整磁合金層の整磁合金よりも抵抗率が小さい非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有しており前記コイルにより加熱される前記像加熱部材が回転方向に関して最大発熱量を持つ位置の少なくとも1つに対応する位置に配置されていることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記外部加熱部材は回転可能な無端ベルト或いはローラであることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記像加熱部材と相互圧接して記録材を挟持搬送する加圧部材を有し、当該加圧部材が前記外部加熱部材を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記加圧部材が回転可能なローラ或いは無端ベルトであることを特徴とする請求項3に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記非磁性低抵抗金属は、銅、銀、金、アルミニウム、SUS(オーステナイト系)及びこれらの金属を用いた合金の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記コイルは前記像加熱部材の回転軸線方向に延伸して巻かれていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記コイルは少なくとも1つあり、当該コイルの近辺に配置されていて前記像加熱部材に磁束を導く磁性コアを有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
記録材に未定着画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段からの前記記録材を加熱して前記未定着画像を定着する画像定着手段と、を有する画像形成装置であって、前記画像定着手段が請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
高周波電流が印加されるコイルが内側に配設されていて当該コイルから生じる磁束により発熱する整磁合金層と当該整磁合金層よりも外側に弾性層を有し像を担持した記録材に接して記録材を加熱する回転可能な中空の像加熱部材を有する像加熱装置であって、
前記像加熱部材の外面に当接しており加熱源により加熱されて像加熱部材を外側から加熱する外部加熱部材を有し、当該外部加熱部材は前記整磁合金層の整磁合金よりも抵抗率が小さい非磁性低抵抗金属で構成されている或いは非磁性低抵抗金属層を有しており前記コイルにより加熱される前記像加熱部材が回転方向に関して最大発熱量を持つ位置の少なくとも1つに対応する位置に配置されていることを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記外部加熱部材は回転可能な無端ベルト或いはローラであることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記像加熱部材と相互圧接して記録材を挟持搬送する加圧部材を有し、当該加圧部材が前記外部加熱部材を兼ねていることを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記加圧部材が回転可能なローラ或いは無端ベルトであることを特徴とする請求項3に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記非磁性低抵抗金属は、銅、銀、金、アルミニウム、SUS(オーステナイト系)及びこれらの金属を用いた合金の群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記コイルは前記像加熱部材の回転軸線方向に延伸して巻かれていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記コイルは少なくとも1つあり、当該コイルの近辺に配置されていて前記像加熱部材に磁束を導く磁性コアを有することを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
記録材に未定着画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段からの前記記録材を加熱して前記未定着画像を定着する画像定着手段と、を有する画像形成装置であって、前記画像定着手段が請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の像加熱装置であることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−92663(P2013−92663A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234896(P2011−234896)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]