説明

像担持体制御装置、その制御方法、および制御プログラム

【課題】画像形成の際の色ずれなどを確実に低減する。
【解決手段】複数のドラムの各々に対応して備えられたドラム制御装置16Y、16M、16C、16Kはベルトの回転位置とドラムの回転位置との位置偏差に応じて第1の駆動指令値を求める。複数の像担持体の少なくとも1つに備えられたドラム制御装置はドラム速度およびベルト速度とドラム目標速度およびベルト目標速度とに応じて第2の駆動指令値を求める。そして、複数の像担持体の少なくとも1つに対応するモータを第1および第2の駆動指令値を加算した加算指令値で制御し、複数の像担持体の少なくとも1つに対応するモータを除くモータを第1の駆動指令値で制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置で用いられる感光ドラムなどの像担持体を駆動制御する像担持体制御装置、その制御方法、および制御プログラムに関し、特に、画像形成装置において、感光ドラムと中間転写ベルトなどの中間転写体との連成(連動)を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスを用いたフルカラーの画像形成装置として所謂タンデム型の画像形成装置が知られている。タンデム型の画像形成装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(BK)の各色に応じた感光ドラム(以下ドラムと略称する)を有している。そして、これらドラムが一列に配置されて、各色のドラム上に形成されたトナー像を転写材(記録紙)上に順次重ね合わせてカラー画像を形成する。
【0003】
さらに、タンデム型の画像形成装置において中間転写ベルトなどの中間転写体を用いた中間転写方式が知られている。この中間転写方式では、ドラム上に形成したトナー像を無端状の中間転写ベルト(以下ベルトと略称する)に順次一次転写して、ベルト上にカラートナー像を形成する。そして、ベルト上のカラートナー像を転写材に二次転写してカラー画像を形成する。
【0004】
ところで、中間転写方式において画質を劣化させる要因として、複数色のトナー像を重ね合わせる際にその位置がずれる色ずれがある。さらに、ハーフトーンドットの間隔が変動して、画像に濃淡が生じるバンディングなどがある。そして、これら色ずれおよびバンディングはベルトおよびドラムが常に等速度で駆動されていれば生じない。
【0005】
しかしながら、実際には、ベルトおよびドラムの製造上の誤差、そして、ベルトと転写材との接触の際に生じる接触力などの要因によって、ベルトおよびドラムに速度差が生じてしまう。
【0006】
よって、バンディングおよび色ずれのない高精細なカラー画像を形成するためには、ベルトおよびドラムを駆動するモータを高精度に制御して、両者の同期誤差を低減することが重要である。
【0007】
上記のような色ずれなどを低減するため、ベルト搬送方向の変位量(以下ベルト位置という)とドラムの回転に伴うドラム外周の変位量(以下ドラム位置という)が一致するように、ドラム位置を高精度に制御するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1においては、ベルトおよびドラムの表面にマークを形成して、マーク検出器によってマークを検出して、この検出結果を用いてベルト位置とドラム位置を演算する。そして、ベルト位置およびドラム位置の偏差を入力とするフィードバック制御器を用いて、ドラムの回転角度が高精度に制御するようにしている。
【0009】
特許文献1では、上述のドラム回転角度の制御、つまり、ドラム位置合わせ制御を行って、ベルトとドラムの間に生じる速度変動を補償して、ベルトにトナー像を精密に重ね合わせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−134264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、画像形成装置においては、ベルトとドラムとの間に両者の速度差に比例する粘性摩擦力が作用している。そして、上記の位置合わせ制御を画像形成装置に用いると、粘性摩擦力に起因してベルトおよびドラムに振動が発生して、色ずれが増加してしまう。
【0012】
例えば、ベルト位置に対してドラム位置が遅れると、位置あわせ制御を行う位置合わせ制御器では位置偏差を低減するようにドラムを加速する。このため、ベルトとドラムとのに速度差が生じることになる。その結果、粘性摩擦力が所謂外乱としてベルトおよびドラムに加えられ、ベルトとドラムが振動してしまう。
【0013】
さらに、ベルトを支持する機械装置の剛性が低い場合には、機械装置の共振周波数近傍において、位置合わせ制御器の制御入力に対して観測出力の位相に遅れが生じる。この位相遅れによって、位置合わせ制御器では、ベルトおよびドラムの振動を増幅させる方向に粘性摩擦力が作用するようにドラムを駆動してしまう。この結果、位置合わせ制御系が不安定になってしまうという課題がある。
【0014】
従って、本発明の目的は、粘性摩擦力の作用に起因する色ずれなどを確実に低減することのできる像担持体制御装置、その制御方法、および制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明による像担持体制御装置は、画像データに応じてトナー像が形成される複数の像担持体と、前記複数の像担持体の各々に対応して設けられ前記複数の像担持体をそれぞれ駆動する複数の駆動源とを備え、前記複数の像担持体に形成されたトナー像を順次、中間転写体に転写して画像形成を行う画像形成装置で用いられ、前記複数の駆動源の駆動制御を行う像担持体制御装置であって、前記中間転写体の回転速度を転写体速度として検出する第1の検出手段と、前記複数の像担持体の各々に対応して備えられ、前記像担持体の回転速度を像担持体速度として検出する複数の第2の検出手段と、前記複数の像担持体の各々に対応して備えられ、前記転写体速度に応じて得られた中間転写体の回転位置と前記像担持体速度に応じて得られた像担持体の回転位置との位置偏差に応じて第1の駆動指令値を求める第1の演算手段と、前記複数の像担持体の少なくとも1つに備えられ、前記像担持体速度および前記転写体速度と前記像担持体の目標速度および前記中間転写体の目標速度とに応じて第2の駆動指令値を求める第2の演算手段と、前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を前記第1および前記第2の駆動指令値を加算した加算指令値で制御し、前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を除く駆動源を前記第1の駆動指令値で制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、中間転写体の速度変動を増幅させないように、中間転写体の速度と異なる速度で像担持体を駆動して位置合わせ制御を行うことができる。その結果、位置合わせ制御を適用した際に生じるベルトの振動が低減されて、色ずれが少ない高精細な画像を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態による像担持体制御装置の一例が用いられる画像形成装置を模式的に示す図である。
【図2】図1に示すベルトを駆動するベルト駆動装置をドラムとともに示す図である。
【図3】ベルト駆動モータの入力トルクからイエロードラムの位置までの周波数応答特性を示す図であり、(a)はゲイン特性を示す図、(b)は位相特性を示す図である。
【図4】ドラム駆動モータの入力トルクからベルト位置までの周波数応答特性を示す図であり、(a)はゲイン特性を示す図であり、(b)は位相特性を示す図である。
【図5】図2に示すイエロードラム制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】は図5に示すブロック線図を等価変換した後の状態を示すブロック図である。
【図7】図6に示す位置合わせ制御器の周波数応答特性およびベルト制振制御器の周波数応答特性を示す図であり、(a)はゲイン特性を示す図、(b)は位相特性を示す図である。
【図8】ベルト速度変動のシミュレーション応答とベルト位置およびマゼンタドラム位置の誤差とを示す図であり、(a)はベルト速度変動のシミュレーション応答を示す図、(b)はベルト位置とマゼンタドラム位置との誤差を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態によるドラム制御装置で用いられるH∞制御器の設計の際に用いる一般化プラントを示す図である。
【図10】図9に示すH∞制御器の設計に用いる重み関数のゲイン特性を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態におけるベルト位置合わせ制御器およびベルト制振制御器の周波数特性を示す図であり、(a)はゲイン特性を示す図、(b)は位相特性を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態において制御系にトルク外乱を印加した際のシミュレーション応答を示す図であり、(a)はベルト駆動ローラにトルク外乱として白色雑音を印加した際のベルト速度誤差のシミュレーション応答を示す図、(b)はベルトとイエロードラムの位置誤差の応答を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態によるイエロードラム制御器を示すブロック図である。
【図14】本発明の第3の実施形態によるドラム制御装置で用いられるH∞制御器の設計の際に用いる一般化プラントを示す図である。
【図15】図14に示すH∞制御器の設計に用いる重み関数のゲイン特性を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施形態におけるベルト位置合わせ制御器およびベルト制振制御器の周波数特性を示す図であり、(a)はゲイン特性を示す図、(b)は位相特性を示す図である。
【図17】本発明の第3の実施形態において制御系にトルク外乱を印加した際のシミュレーション応答を示す図であり、(a)はベルト駆動ローラにトルク外乱として白色雑音を印加した際のベルト速度誤差のシミュレーション応答を示す図、(b)はベルトとイエロードラムの位置誤差の応答を示す図である。
【図18】本発明の第1〜第3の実施形態による位置合わせ制御と第4の実施形態による位置合わせ制御の差異を説明するための図であり、(a)は第1〜第3の実施形態による位置合わせ制御を示す図、(b)は第4の実施形態による位置合わせ制御を示す図である。
【図19】本発明の第4の実施形態によるドラム制御装置が用いられた画像形成装置の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態による像担持体制御装置が用いられた画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による像担持体制御装置の一例が用いられる画像形成装置を模式的に示す図である。以下の説明では、像担持体として感光ドラム(以下単にドラムと呼ぶ)を用いるので、像担持体制御装置をドラム制御装置と呼ぶ。また、中間転写体として中間転写ベルト(以下単にベルトと呼ぶ)が用いられ、ベルトの振動を低減するためのドラムの制御をベルト制振制御と呼び、ベルト制振制御を行う制御器をベルト制振制御器と呼ぶ。
【0020】
さらに、以下の説明では、イエロー(Y)ドラム(像担持体)の駆動制御には位置合わせ制御およびベルト制振制御の双方を用い、マゼンタ(M)、シアン(C)、およびブラック(BK)ドラムの駆動制御には位置合わせ制御のみを用いる。但し、ベルト制振制御が行われるドラムをイエロードラムに限定されず、マゼンタ、シアン、又はブラックドラムについてベルト制振制御を行うようにしてもよい。加えて、ベルト制振制御が行われるドラムは1つに限らず、複数のドラムについてベルト制振制御を行うようにしてもよい。
【0021】
図1を参照して、図示の画像形成装置は、所謂タンデム型画像形成装置であり、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのトナー像を形成する画像形成部と、これらトナー像を重ね合わせてカラートナー像として記録紙に転写するベルトユニットとを備えている。
【0022】
画像形成装置は、イエロー画像形成部30Y、マゼンタ画像形成部30M、シアン画像形成部30C、およびブラック画像形成部30Kを有している。これら画像形成部30Y、30M、30C、および30Kの構成および動作は同一であるので、ここでは、イエロー画像形成部30Yに注目して説明を行い、他の画像形成部30M、30C、および30Kについては説明を省略する。
【0023】
イエロー画像形成部30Yは、像担持体であるドラム1(像担持体)を有している。そして、ドラム1の周囲には、帯電ローラ2、LED露光装置3、現像装置4、およびドラムクリーニングブレード(図示せず)が配置されている。また、ドラム1にはドラムの回転角度を検出するためのロータリエンコーダ5Yが接続されている。
【0024】
画像の形成が開始されると、ドラム1に接触する帯電ローラ2によってドラム1の表面が所定の電圧で均一に帯電される。続いて、LED露光装置3は上位装置(図示せず)から画像情報(画像データ)を受け、発光を行うLED素子を決定する。LED露光装置3はロータリエンコーダ5Yからの出力パルスをカウンタ(図示せず)でカウントして、カウント数が規定値に達するとLED素子を発光させるとともにカウンタをリセットする。これによって、ドラム1の速度(回転速度:像担持体速度)が変動した際においてもドラム1上に一定の間隔で静電潜像を形成することが可能となる。
【0025】
現像装置4はドラム1に現像バイアス電圧を印加し、ドラム1上に形成した静電潜像にイエロートナーを付着させてイエロートナー像を形成する。同様にして、画像形成部30M、30C、および30Kにおいて、ドラム上にそれぞれマゼンタトナー像、シアントナー像、およびブラックトナー像が形成される。
【0026】
ベルトユニットは、無端状のベルト6(中間転写体)と、ベルト6を支持する回転可能なベルト駆動ローラ8、従動ローラ9、二次転写ローラ10、およびベルトクリーニングブレード(図示せず)を備える。従動ローラ9はテンションばね(図示せず)によって加圧され、これによって、ベルト6に一定の張力を与えて、ベルト6のたわみを防止する。
【0027】
画像形成の際には、一次転写ローラ7によってベルト6に一次転写バイアス電圧が印加され、ドラム1上のイエロートナー像がベルト6に転写される。ドラム1上に残留する残留トナーはドラムクリーニングブレードで除去される。
【0028】
ベルト6はベルト駆動ローラ8によってマゼンタ画像形成部に搬送されて、同様にしてマゼンタトナー像がベルト6に転写され、これによって、イエロートナー像とマゼンタトナー像を重ね合わせる。以下順次シアントナー像およびブラックトナー像を重ね合わせて、ベルト6上にフルカラートナー像を形成する。
【0029】
ベルト6の回転駆動によってフルカラートナー像は二次転写位置に送られる。そして、二次転写ローラ10によって二次転写バイアス電圧が印加されて、ベルト6上のフルカラートナー像が記録紙Pに転写される。フルカラートナー像が転写された記録紙Pは定着器12に送られる。定着器12において加熱および加圧等の画像定着処理が行われた後、記録紙Pはトレイに排出される。
【0030】
なお、記録紙Pは給紙カセット(図示せず)からピックアップローラ11によって二次転写位置に搬送される。二次転写終了後にベルト6上に残留するトナーは、ベルト6に当接するベルトクリーニングブレードによって除去される。
【0031】
前述のように、画像形成動の際に、各色のドラムからベルト6にトナー像を転写する位置に誤差があると、記録紙Pに形成されるカラー画像において色ずれが生じる。このため、図示の画像形成装置において、位置合わせ制御を行ってドラムの位置を高精度に制御するととともに、ベルトおよびドラムの連動によって生じるベルトの振動を後述するベルト制振制御器を用いて低減する。
【0032】
続いて、ベルトおよびドラムの連成を考慮する制御モデルについて説明する。
【0033】
図2は、図1に示すベルトを駆動するベルト駆動装置をドラムとともに示す図である。
【0034】
図2において、ベルト駆動装置は、前述のベルト駆動ローラ8、ロータリエンコーダ5Bおよび5R、ベルト駆動モータ(駆動源)14、およびベルト制御装置15を有している。画像形成の際には、CPUなどの上位装置(図示せず)からモータの角速度目標値ωrrefが減算器15a入力される。さらに、減算器15aには、ロータリエンコーダ5Rから駆動モータ15の角速度ωr(転写体速度)が与えられる。そして、減算器15aで角速度目標値ωrrefと角速度ωrとの減算が行われて、速度偏差がベルト制御装置15に与えられる。
【0035】
ベルト制御装置15は、この速度誤差に基づいてベルト駆動モータ14で発生させるトルク指令値Trを出力する。そして、ベルト制御装置15は電流制御装置(図示せず)を用いてベルト駆動モータ14の出力トルクがトルク指令値Trと一致するように、駆動モータ14に印加する電流を制御する。
【0036】
なお、前述のように駆動モータ14の角速度ωrは、駆動モータ14の駆動軸に接続されたロータリエンコーダ5Rによって検出される。また、ベルト駆動モータ14で発生したトルクはギヤ(図示せず)を介して駆動ローラ8に伝達され、これによって、ベルト6が駆動される。
【0037】
図2に示すドラム駆動装置16Yは、イエロードラム1に対応しており、このドラム駆動装置16Yは、前述のように、ベルト制振制御器および位置合わせ制御器を備えている。一方、図示はしないが、マゼンタ、シアン、およびブラックのドラム制御装置は位置合わせ制御器のみを備えている。よって、図示の例では、ドラム制御装置16Yの構成は他のドラム制御装置と異なっているものの、各ドラム制御装置に対する入力はドラム位置およびベルト位置であり、出力信号はドラム駆動モータ(駆動源)に対する指令トルクである。つまり、ドラム制御装置に対する入力とその出力を用いたドラム駆動は全てのドラム制御装置において等しい。
【0038】
そこで、ここでは、イエロードラムのドラム制御装置16Yに関して、入力に係る演算とその出力を用いたドラム駆動について説明し、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムのドラム制御装置について詳細な説明を省略する。また、ベルト制振制御器および位置合わせ制御器については後述する。
【0039】
ドラム制御装置16Yは、ベルトの位置(回転位置)ybとドラムの位置(回転位置)yyを入力信号として、これら入力信号に基づいてトルク指令値Tyを出力する。そして、ドラム制御装置16Yは電流制御装置(図示せず)を用いてドラム駆動モータ13の出力トルクがトルク指令値Tyと一致するように、ドラム駆動モータ13に印加する電流を制御する。
【0040】
ベルトの位置ybは、ロータリエンコーダ5Bで検出された駆動ローラ8の回転角度θbに駆動ローラの半径rbを乗じて、式(1)で求められる。
【0041】
【数1】

【0042】
イエロードラム位置yyは、ロータリエンコーダ5Yで検出されたドラムの回転角度θyにドラムの半径rdを乗じて、次(2)で求められる。
【0043】
【数2】

【0044】
次に、ドラムとベルトとの接触を考慮した制御モデルについて説明する。なお、ここでは、制御モデルの導出は次の(1)〜(6)を前提として行われる。
【0045】
(1)ベルトと、ベルトを支持するベルト駆動ローラ、従動ローラ、および二次転写ローラとの間のすべりは考慮しない。さらにベルトの伸縮を考慮せず、ベルト、ベルト駆動ローラ、従動ローラ、およびステアリングローラは剛体とする。
【0046】
(2)ドラムとドラム駆動モータとの間のばね剛性および減衰を考慮せず、剛体とする。
【0047】
(3)ロータリエンコーダの慣性は考慮しないものとする。
【0048】
(4)ベルトとドラムとの間に発生する摩擦力として、両者の速度の差に比例する粘性摩擦力のみを考慮し、静止摩擦力およびクーロン摩擦力等の非線形摩擦力は考慮しないものとする。
【0049】
(5)マゼンタ、シアン、およびブラックドラムの回転角加速度、角速度、および角度は等しいものとする。
【0050】
(6)ドラム駆動モータおよびベルト駆動モータの電流制御装置の応答速度は十分高く、モータは指令トルクと等しいトルクを発生するものとする。
【0051】
まず、上記の前提(1)および(3)から、ベルト駆動ローラの回転角度をθb、ベルト駆動モータの回転角度をθr、ベルト駆動ローラの慣性負荷をJb、ベルト駆動ローラの半径をrb、ベルト駆動モータとベルト駆動ローラとを接続するギヤのギヤ比をrg、そして、ギヤの剛性をKg、減衰をCgとしてベルト駆動ローラの運動方程式を導出すると、式(3)となる。
【0052】
【数3】

【0053】
式(3)において、Fby、Fbm、Fbc、およびFbkはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムとベルトとの間に働く摩擦力を表す。
【0054】
上記の前提(4)から、上記のFby、Fbm、Fbc、およびFbkを、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムの回転角度θy、θm、θc、およびθkと、ドラムの半径rdと、ベルトとドラムの間に作用する粘性摩擦力の摩擦係数Cdbとを用いてそれぞれ式(4)〜式(7)で表す。
【0055】
【数4】

【0056】
次に、上記の前提(3)および(6)から、ベルト駆動モータの角度をθr、ベルト駆動モータの慣性負荷をJr、ベルト駆動モータの出力トルクをTrとして、ベルト駆動モータの運動方程式を導出すると、式(8)で表される。
【0057】
【数5】

【0058】
さらに、上記の前提(3)、(4)、および(6)から、感光ドラムの慣性負荷をJd、感光ドラムの半径をrd、イエロードラム駆動モータの出力トルクをTyとすると、式(9)に示すイエロードラムの運動方程式が導出される。
【0059】
【数6】

【0060】
同様にして、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムの駆動モータの出力トルクをそれぞれTm、Tc、およびTkとして、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムの運動方程式を導出すると、式(10)〜式(12)で表される。
【0061】
【数7】

【0062】
ここで、上記の前提(5)から、式(13)が成り立つ。
【0063】
【数8】

【0064】
従って、式(3)は式(4)〜(7)と式(13)から、マゼンタドラムの回転角度θmを用いて、式(14)で表すことができる。
【0065】
【数9】

【0066】
そして、上記の式(8)、(9)、(10)、および(14)から、ベルトとドラム駆動系の状態方程式を導出すると、式(15)〜式(19)となる。
【0067】
【数10】

【0068】
ここで、上記のM、K、およびCは、それぞれ式(20)〜式(22)で表される。
【0069】
【数11】

【0070】
さらに、観測量yは式(23)および(24)の出力方程式で表される。
【0071】
【数12】

【0072】
図3は、ベルト駆動モータの入力トルクTrからイエロードラムの位置yyまでの周波数応答特性を示す図である。そして、図3(a)はゲイン特性を示す図であり、図3(b)は位相特性を示す図である。
【0073】
図3に示すように、ベルト駆動モータに対するトルク指令によって、ドラムの位置が変動してしまうことがわかる。特に、ギヤの共振周波数である40Hzにおいて、ベルト駆動モータに入力トルクを印加するとドラム位置が大きく変動することがわかる。
【0074】
図4は、ドラム駆動モータの入力トルクTyからベルト位置ybまでの周波数応答特性を示す図である。そして、図4(a)はゲイン特性を示す図であり、図4(b)は位相特性を示す図である。
【0075】
図4に示すように、ドラム駆動モータに入力トルクが印加されると、ギヤの共振周波数40Hz近傍でベルト位置が大きく変動していることがわかる。このように、ベルトとドラムとの間に作用する粘性摩擦力によって、ドラムの運動とベルトの運動が連成(連動)して、この連成はベルト駆動系の共振周波数近傍で顕著に表れることがわかる。
【0076】
そして、ドラム制御装置によるトルク補償量によってドラムに速度変動が生じると、連成の影響によってベルトにも速度変動が生じる。つまり、連成の影響によって、ベルト制御装置とドラム制御装置とは相互に影響を及ぼしあっている。さらに、このベルト速度変動によって、他色のドラム速度とベルト速度との間に速度誤差が生じるため、他色のドラムに粘性摩擦力が外乱として印加されることになる。
【0077】
このように、各色のドラム制御装置も相互に影響を及ぼしあっているため、イエロードラム制御装置16Yの設計においては、ベルトとドラムの連成、ベルト制御装置15、そして、マゼンタ、シアン、およびブラックドラム制御装置16M、16C、および16Kの全てを考慮する必要がある。
【0078】
そこで,ベルトとドラムとの連成を考慮した制御モデル(以下連成モデルと呼ぶ)にベルト制御装置15とマゼンタ、シアン、およびブラックドラム制御装置16M、16C、および16K、を付加した状態方程式を拡大系状態方程式として導出する。拡大系状態方程式は、式(25)〜式(31)で表すことができる。
【0079】
【数13】

【0080】
なお、式(28)、(30)、および(31)のKdm、Kpm、Kimは、それぞれマゼンタドラム位置合わせ制御器の微分、比例、および積分ゲインである。微分ゲインKdm、比例ゲインKpm、および積分ゲインKimの詳細については後述する。
【0081】
ここで、位置yyの誤差Δbyとベルト速度vbを用いて観測量yを式(32)および式(33)で表す。
【0082】
【数14】

【0083】
次に、ベルト制御装置15と、イエローを除くドラム制御装置16M、16C、および16Kを設計する。ここでは、ベルトとドラムが独立に駆動されるとする。そして、前述したベルトとドラムとの連成、ベルト制御装置15、およびドラム制御装置16M、16C、および16Kを考慮する拡大系を用いてイエロードラム制御装置16Yを設計する。
【0084】
まず、ベルト制御装置15とマゼンタドラム制御装置16Mの構成と設計手法について説明する。なお、シアンおよびブラックドラム制御装置16Cおよび16Kの構成と設計手法についてはマゼンタドラム制御装置16Mと同様であるので説明を省略する。
【0085】
マゼンタドラム制御装置16Mは、ベルト位置ybからマゼンタドラム位置ymを減算したドラム位置誤差を入力として、マゼンタドラム駆動モータのトルク指令値Tmを出力するPID制御器である。ここで、マゼンタドラム制御装置16Mの伝達関数Kmを、比例ゲインKpm、積分ゲインKim、および微分ゲインKdmを用いて、式(34)で表す。
【0086】
【数15】

【0087】
なお、式(34)において、sはラプラス演算子であり、以下の説明においても同様である。
【0088】
ベルト制御装置15は、ベルト駆動モータの目標角速度ωrrefから角速度ωrを減算した角速度誤差を入力として、ベルト駆動ローラのトルク指令値Trを出力するPI制御器である。ここで、ベルト制御装置15の伝達関数Kbを、比例ゲインKdbおよび積分ゲインKpbを用いて、式(35)で表す。
【0089】
【数16】

【0090】
なお、ベルト制振制御器において、ドラム制御装置16M、16C、および16Kの各々はPID制御器に限定されず、ベルト制御装置15はPI制御器に限定されない。
【0091】
ベルト制御装置15とドラム制御装置16M、16C、および16Kの設計においては、まず、式(15)〜(24)に示す制御モデルにおいて、式(36)で示す摩擦係数Cdbを用いて、ベルトとドラムとが独立に駆動されるモデル(以下非連成モデルと呼ぶ)を導出する。
【0092】
【数17】

【0093】
続いて、非連成モデルを用いて、ベルト駆動モータに対するトルク指令値Trからベルト駆動モータの角速度ωrまでの伝達関数Prrを導出する。そして、伝達関数Prrにベルト制御装置15の伝達関数Kbを乗算した開ループ伝達関数を用いて、閉ループ系が安定になるように、式(35)の比例ゲインKdbおよび積分ゲインKpbを設計する。
【0094】
同様に、非連成モデルを用いて、マゼンタドラム駆動モータに対するトルク指令値Tmからマゼンタドラム位置ymとベルト位置ybの位置誤差までの伝達関数PmΔbmを導出する。そして、伝達関数PmΔbmと位置合わせ制御器の伝達関数Kmとを乗算した開ループ伝達関数を用いて、閉ループ系が安定になるように式(34)の比例ゲインKpm、積分ゲインKim、および微分ゲインKdmを設計する。
【0095】
続いて、図2に示すイエロードラム制御装置16Yの構成について説明する。図5は、図2に示すイエロードラム制御装置16Yの構成を示すブロック図である。
【0096】
図5を参照すると、イエロードラム制御装置16Yは、位置合わせ制御器161、ベルト制振制御器162、および加算器171を備えている。ベルト制振制御器162は、制御器1621および1622、加算器172、および微分器(微分手段)181および182を備えている。
【0097】
図示のイエロードラム制御装置16Yにおいて、減算器161aはベルト位置ybからイエロードラム位置yyを減算して位置誤差(位置偏差)を求めて、これを位置合わせ制御器161に与える。位置合わせ制御器161は位置誤差に応じたトルク補償量Ty1(第1の駆動指令値)を出力する。また、微分器181および182には、それぞれイエロードラム位置yyおよびベルト位置ybが与えられる。微分器181および182はそれぞれイエロードラム位置yyおよびベルト位置ybを微分してドラム速度vyおよびベルト速度vbを出力する。
【0098】
減算器181aはドラム速度目標値Vdrefからドラム速度vyを減算して、ドラム速度誤差(像担持体速度偏差)を得る。減算器182aはベルト速度目標値vbrefからベルト速度vbを減算して、ベルト速度誤差(転写体速度偏差)を得る。制御器1621はドラム速度誤差を入力として、フィルタリングを行って後述する制御出力を出力する。制御器1622はベルト速度誤差を入力して、後述する制御出力を出力する。
【0099】
加算器172は、制御器1621および1622の制御出力を加算してトルク補償量Ty2(第2の駆動指令値)を出力する。そして、加算器171はトルク補償量Ty1およびTy2を加算して得られたトルク制御信号をイエロードラム駆動モータに対してトルク指令値Ty(加算指令値)として出力する。
【0100】
このトルク指令値Tyは、制御器161、1621、および1622の伝達関数をそれぞれKy11、Ky21、およびKy22とすると、式(37)で表すことができる。
【0101】
【数18】

【0102】
ここで、図示の例では、ベルト速度目標値と等しくなるようにドラム速度目標値を設計して、ベルトとドラムとの間に生じる連成の影響を低減する。
【0103】
まず、式(38)を用いて、式(37)からVdrefを消去する。これによって、式(39)を得る。
【0104】
【数19】

【0105】
ここで、式(39)において伝達関数Ky12およびKy23をそれぞれ式(40)および(41)で定義する。
【0106】
【数20】

【0107】
式(39)を用いて、図5に示すブロック図を等価変換する。図6は図5に示すブロック線図を等価変換した後の状態を示すブロック図である。
【0108】
図6において、制御器163は位置合わせ制御器であり、ベルト位置ybからイエロードラム位置yyを減算して得られた位置誤差を入力として、ドラム駆動モータに対するトルク補償量を出力する。また、制御器164はベルト制振制御器であり、ベルト速度目標値vbrefからベルト速度vbを減算して得られた速度誤差を入力として、ドラム駆動モータに対するトルク補償量を出力する。
【0109】
ここで、ベルトに外乱が印加されることによってベルト速度が目標速度に対して増加してしまう場合には、ベルト制振制御器164はドラムを減速させるようにトルク補償量を出力する。これによってドラムの速度が減少すると、ベルトとドラムとの間に粘性摩擦力が生じる。この粘性摩擦力はベルトの速度変動を低減させるダンピング力として作用するので、ベルト制振制御器164を用いれば、ドラム駆動モータに対するトルク補償によってベルトの振動を低減することが可能となる。
【0110】
なお、図示の例では、位置合わせ制御器163およびベルト制振制御器164として、それぞれ式(42)および式(43)に示すPID制御器およびP制御器を用いる。
【0111】
【数21】

【0112】
式(42)において、Kpy1、Kiy1、およびKdy1はそれぞれ比例ゲイン、積分ゲイン、および微分ゲインを表す。また、式(43)において、Kpy2は比例ゲインを表す。
【0113】
次に、導出した拡大系を用いてドラム駆動モータに対するトルク指令値Tyから位置誤差Δbyまでの伝達関数を導出する。そして、この伝達関数と位置合わせ制御器163の伝達関数Ky12とを乗算した開ループ伝達関数を用いて、閉ループ系が安定するように、式(42)の比例ゲインKpy1、微分ゲインKdy1、および積分ゲインKiy1を設計する。
【0114】
続いて、位置合わせ制御器163を含む制御系のループを閉じて、トルク指令値Tyからベルト速度vbまでの伝達関数を導出する。そして、この伝達関数とベルト制振制御器164の伝達関数Ky23とを乗算した開ループ伝達関数を用いて、閉ループ系が安定するように、式(43)の比例ゲインKpy2を設計する。
【0115】
図7は、図6に示す位置合わせ制御器163の周波数応答特性およびベルト制振制御器164の周波数応答特性を示す図である。そして、図7(a)はゲイン特性を示す図であり、図7(b)は位相特性を示す図である。
【0116】
図7(a)および図7(b)において、破線(点線)は位置合わせ制御器163の周波数応答特性を示し、実線はベルト制振制御器164の周波数応答特性を示す。図示のように、位置合わせ制御器163の周波数応答特性は周波数の変化に応じて変化するものの、ベルト制振制御器164の周波数応答特性は周波数に拘わらず、一定である。
【0117】
ここで、前述のドラム制御装置を用いると、ベルト制御装置に位置合わせ制御器のみを用いる場合に比べてベルトの振動を低減できることをシミュレーションする。なお、このシミュレーションでは、従来のドラム制御装置は位置合わせ制御のみを行う。また、位置合わせ制御器のゲインは各色のドラム制御装置ですべて等しいものとする。
【0118】
図8はベルト速度変動のシミュレーション応答とベルト位置およびマゼンタドラム位置の誤差とを示す図である。そして、図8(a)はベルト速度変動のシミュレーション応答を示す図であり、図8(b)はベルト位置とマゼンタドラム位置との誤差を示す図である。なお、ここでは、ベルト駆動ローラに対するトルク外乱として白色雑音を印加した。また、図8(a)および図8(b)において、点線は従来の制御系を示し、実線は上述の第1の実施形態による制御系を示す。
【0119】
図示のように、従来の制御系においては、時間の経過とともにベルト速度変動および位置誤差が大きく増加しており、不安定な系となることがわかる。このような不安定な系となる原因は、ベルトとドラムとの間に働く粘性摩擦力によって励起されたベルト駆動装置の共振が位置合わせ制御の際にドラムの運動によって増幅されることによる。
【0120】
一方、第1の実施形態による制御系においては、ベルト速度誤差および位置誤差の変動範囲は十分小さく、位置合わせ制御を行っているにも拘わらず安定な制御系となっていることがわかる。
【0121】
このように、ベルト制振制御器を用いてベルトの振動を低減すれば、低剛性の駆動装置に対しても位置合わせ制御を適応することが可能となる。
【0122】
[第2の実施形態]
続いて、本発明の第2の実施形態によるドラム制御装置について説明する。
【0123】
第1の実施形態で説明したように、イエロードラム制御装置16Yは位置合わせ制御器163およびベルト制振制御器164を備える2入力1出力の制御器である。ここでは、位置合わせ性能およびベルト制振性能には相互に影響を及ぼし合うトレードオフの関係が存在する。このため、ベルト制振制御器164のパラメータを適切に調整しないと位置合わせ性能が低下することになる。
【0124】
第1の実施形態においては、位置合わせ制御器163およびベルト制振制御器164を順次設計するため、位置合わせ性能およびベルト制振性能を同時に考慮して制御器を設計することが容易ではない。つまり、位置合わせ性能およびベルト制振性能の設計仕様をともに満たす制御器を設計するためには、制御器のパラメータを試行錯誤的に調整する必要がある。
【0125】
加えて、第1の実施形態では、実機と連成モデルとのモデル誤差を考慮して制御器の設計を行っておらず、このため、実機において連成モデルに含まれない共振モードが存在すると、制御系が不安定になる恐れがある。そこで、第2の実施形態では、制御性能とロバスト安定性を同時に考慮して制御器を設計することが可能な所謂H∞制御理論(H−infinity Control Theory)に基づいてイエロードラム制御装置16Yの設計を行うことにする。
【0126】
なお、第2の実施形態においては、位置合わせ制御器163およびベルト制振制御器164を除いて、第1の実施形態とその構成は同一であるので、ここでは、位置合わせ制御器およびベルト制振制御器の設計ついてのみ説明する。
【0127】
まず、ここでは、H∞制御器の設計に用いるノミナルモデルPnのシステム方程式を導出する。実際の画像形成装置では、記録紙の二次転写面への突入、そして、一次転写面におけるトナーの濃度の大きな変動によって、ベルトに対してトルク外乱が加わる。そして、これらの外乱によってベルトが振動して、色ずれが発生する。
【0128】
そこで、H∞制御器を設計する際には、ベルト駆動ローラに対する入力トルクを外乱入力として評価する。ベルト駆動ローラに対する入力トルクを考慮したノミナルモデルPnの状態方程式は、上記の式(26)に示す状態変数xaと式(28)に示す行列Aaとを用いると、式(44)〜式(46)で表される。
【0129】
【数22】

【0130】
また、ノミナルモデルPnの出力方程式として、上記の式(32)および式(33)が用いられる。
【0131】
図9は、本発明の第2の実施形態によるドラム制御装置で用いられるH∞制御器の設計の際に用いる一般化プラントを示す図である。
【0132】
図9を参照して、図示の一般化プラントはノミナルモデルPnと重み関数Ws1、Ws2、およびWtとを有している。また、ここでは、一般化プラントの外乱入力w1およびw2を、それぞれベルト駆動ローラに対するトルク外乱およびイエロードラム駆動モータに対するトルク外乱とする。さらに、評価出力z1、z2、およびz3を、それぞれベルトとイエロードラムの位置誤差Δby、ベルト速度vb、およびイエロードラム駆動モータに対する制御入力として、重み関数Ws1、Ws2、およびWtを設計する。
【0133】
外乱入力w1およびw2から評価出力z1への伝達関数はベルトおよびドラムへのトルク外乱に対する位置誤差Δbyの感度関数S11(s)およびS12(s)を表す。そこで、外乱が印加された際にドラム位置がベルト位置に偏差(位置偏差)なく追従するように、重み関数Ws1に積分特性を含ませる。
【0134】
また、外乱入力w1およびw2から評価出力z2への伝達関数はトルク外乱に対するベルト速度vbの感度関数S21(s)およびS22(s)を表す。この伝達関数はベルト駆動系の共振周波数近傍で大きなゲインを有するため、重み関数Ws2を定数とすることで外乱に対する感度を低下させることができる。さらに、外乱入力w1およびw2から評価出力z3への伝達関数は相補感度関数T1(s)およびT2(s)を表す。そこで、ノミナルモデルに含まれない振動モードを励起しないように、高周波数域でハイゲインとなるように重み関数Wtを設計する。
【0135】
図10は、図9に示すH∞制御器の設計に用いる重み関数Ws1、Ws2、およびWtのゲイン特性を示す図(ゲイン線図)である。
【0136】
図10において、重み関数Ws1Ws2、およびWtのゲイン線図はそれぞれ点線、破線、および実線で示されている。図示の例では、H∞制御問題を、式(47)を満たす制御器を求める混合感度問題として定式化して、外乱抑圧性能とロバスト安定性を両立する制御器を導出する。
【0137】
【数23】

【0138】
なお、式(47)においてγは正数を表す。式(47)に応じて得られたH∞制御器は11次となる。このH∞制御器を伝達関数形式に変換して、高周波数域の極と零点とを取り除いて制御器の低次元化を行う。
【0139】
図11は、本発明の第2の実施形態におけるベルト位置合わせ制御器およびベルト制振制御器の周波数特性を示す図である。そして、図11(a)はゲイン特性を示す図であり、図11(b)は位相特性を示す図である。
【0140】
図11において、低次元化を行った5次のH∞制御器のうち、位置誤差Δbyを入力とする位置合わせ制御器の周波数特性を点線で示し、ベルト速度vbを入力とするベルト制振制御器の周波数特性を実線で示す。
【0141】
ここで、H∞制御理論を用いて位置合わせ制御器を伴うベルト制振制御器を設計することによって制御性能が向上する点についてシミュレーションを用いて説明する。
【0142】
図12は、本発明の第2の実施形態において制御系にトルク外乱を印加した際のシミュレーション応答を示す図である。そして、図12(a)はベルト駆動ローラにトルク外乱として白色雑音を印加した際のベルト速度誤差のシミュレーション応答を示す図であり、図12(b)はベルトとイエロードラムの位置誤差の応答を示す図である。
【0143】
図12において、実線はH∞制御器による応答を示し、破線は第1の実施形態で説明した制御器においてパラメータ調整を行った際の応答を示す。図12(a)に示すように、H∞制御理論を用いて設計を行った制御系(制御器)では、第1の実施形態で説明した制御系(制御器)に比べてよりベルトの振動を低減していることがわかる。また、図12(b)に示すように、ベルトとイエロードラムの位置誤差を低減できることがわかる。このように,H∞制御理論を用いて制御器の設計を行えば、第1の実施形態で説明したようにして制御器の設計を行う場合に比べて色ずれを低減することができる。
【0144】
[第3の実施形態]
上述の第1および第2の実施形態においては、位置合わせ制御を行うととともに、ベルト速度を速度目標値に追従させるベルト制振制御を行うことによって制御系を安定化している。一方、第3の実施形態においては、位置合わせ制御を行うととともに、ドラム速度を速度目標値に追従させる制御器を用いて位置合わせ制御系を安定化する。なお、ここでは、ドラム速度を速度目標値に追従させる制御をドラム制振制御と呼び、この制御を行う制御器をドラム制振制御器と呼ぶ。また、第3の実施形態による画像形成装置はイエロードラム制御装置16Yの構成を除いて、第1の実施形態で説明した画像形成装置と同様であるので、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムの制御装置に関する説明は省略する。
【0145】
まず、ドラム制御装置16Yがドラム制振制御器を備えるために、図5に示すブロック図を等価変換する。前述のように、第1の実施形態においては、イエロードラムへの入力トルクTyを表す式(37)からベルト速度目標値vbrefを消去した式(39)を用いて等価変換を行う。一方、第3の実施形態では式(37)からドラム速度目標値vdrefを消去して式(48)を導出し、式(49)を用いて等価変換を行う。
【0146】
【数24】

【0147】
図13は、本発明の第3の実施形態によるイエロードラム制御器を示すブロック図である。
【0148】
式(48)を用いて図5に示すイエロードラム制御器を等価変換すると、図13に示すイエロードラム制御器が得られる。図13において、制御器165は位置合わせ制御器であり、減算器165aはベルト位置ybからイエロードラム位置yyを減算した位置誤差を出力する。位置合わせ制御器165は位置誤差を入力として、ドラム駆動モータへのトルク補償量を出力する。
【0149】
制御器166はドラム制振制御器であり、減算器166aはドラム速度目標値vdrefからイエロードラム速度vyを減算した速度誤差を出力する。ドラム制振制御器166は速度誤差を入力として、ドラム駆動モータへのトルク補償量を出力する。
【0150】
ここで、ドラム制振制御器166を用いることによってベルトの振動を低減することができる。つまり、ベルトに外乱が印加されてベルト速度が増加すると、位置合わせ制御器165はドラムを加速するようにトルク補償量を出力する。これによって、ドラム速度が増加するが、ドラム制振制御器166はドラムを減速するようにトルク補償量を出力する。その結果、位置合わせ制御器165のみを用いた場合に比べて、ベルトとドラムの速度差が大きくなって、両者の間にはより大きな粘性摩擦力が作用する。
【0151】
この粘性摩擦力はベルトの速度変動を低減させるダンピング力として作用するため、ドラム制振制御器166を用いるとよりベルトの振動を低減することが可能となる。
【0152】
続いて、ベルト制御装置15とドラム制御装置16の設計手法について説明する。
【0153】
第1および第2の実施形態と同様に、イエロードラム制御装置16Yにおいて、位置合わせ性能とドラム制振性能とには相互に影響を及ぼしあうトレードオフが存在する。このため、ドラム制振制御器166のパラメータを適切に調整しないと、位置合わせ性能が低下してしまう。そこで、第3の実施形態においては、H∞制御理論に基づいてイエロードラム制御装置16Yの設計を行う。
【0154】
なお、ベルト制御装置15とマゼンタ、シアン、およびブラックドラム制御装置16M、16C、および16Kの設計手法は第1の実施形態で説明した手法と同様であるので、説明を省略する。
【0155】
まず、ノミナルモデルPnのシステム方程式を導出する。ノミナルモデルの状態方程式については、第2の実施形態で説明した式(44)を用いる。一方、出力方程式については式(50)および式(51)が用いられる。
【0156】
【数25】

【0157】
第3の実施形態における出力方程式では、ベルト速度vbではなくイエロードラム速度vyを用いている点が第2の実施形態と異なる。
【0158】
図14は、本発明の第3の実施形態によるドラム制御装置で用いられるH∞制御器の設計の際に用いる一般化プラントを示す図である。
【0159】
図14において、評価出力z2としてイエロードラム速度vyを用いる。ここで、外乱入力w1およびw2から評価出力z2への伝達関数はトルク外乱に対するドラム速度vyの感度関数S21(s)およびS22(s)を示す。感度関数S2(s)はベルト駆動系の共振周波数近傍で大きなゲインを有するので、第2の実施形態と同様に重み関数Ws2を定数とすれば外乱に対する感度を低下させることができる。なお、重み関数Ws1およびWtの設計手法は第2の実施形態と同様である。
【0160】
図15は、図14に示すH∞制御器の設計に用いる重み関数Ws1、Ws2、およびWtのゲイン特性を示す図(ゲイン線図)である。
【0161】
図15において、重み関数Ws1Ws2、およびWtのゲイン線図はそれぞれ点線、破線、および実線で示されている。第2の実施形態で説明したように、ここでは、H∞制御問題を、式(47)を満たす制御器を求める混合感度問題として定式化して、外乱抑圧性能とロバスト安定性を両立する制御器を導出する。
【0162】
式(47)によって得られたH∞制御器は11次となる。このH∞制御器を伝達関数形式に変換して高周波数域の極と零点を取り除くことによって制御器の低次元化を行う。
【0163】
図16は、本発明の第3の実施形態におけるベルト位置合わせ制御器およびベルト制振制御器の周波数特性を示す図である。そして、図16(a)はゲイン特性を示す図であり、図16(b)は位相特性を示す図である。
【0164】
図16では、低次元化を行った5次のH∞制御器において、位置誤差Δbyを入力とする位置合わせ制御器の周波数特性を点線で示し、イエロードラム速度vyを入力とするドラム制振制御器の周波数特性を実線で示す。
【0165】
図17は、本発明の第3の実施形態において制御系にトルク外乱を印加した際のシミュレーション応答を示す図である。そして、図17(a)はベルト駆動ローラにトルク外乱として白色雑音を印加した際のベルト速度誤差のシミュレーション応答を示す図であり、図17(b)はベルトとイエロードラムの位置誤差の応答を示す図である。
【0166】
図17(a)および(b)に示すように、第3の実施形態では、ベルト速度および位置誤差の変動範囲が十分小さく、位置合わせ制御を行っているにも関わらず安定な制御系となっていることがわかる。
【0167】
このように、ベルト制振制御器ではなくドラム制振制御器を用いた場合においても、ベルトの振動が低減し、低剛性の装置に対して位置合わせ制御を適応することが可能となる。
【0168】
[第4の実施形態]
前述の第1〜第3の実施形態では、ドラム上のトナー像を転写する目標位置としてベルト位置を用いた。このため、搬送方向上流側のドラムにおいて目標転写位置と実際の転写位置との間に位置誤差が生じると、判双方向下流側のドラムによって当該位置誤差を低減することができない。
【0169】
図18は、本発明の第1〜第3の実施形態による位置合わせ制御と第4の実施形態による位置合わせ制御の差異を説明するための図である。そして、図18(a)は第1〜第3の実施形態による位置合わせ制御を示す図であり、図18(b)は第4の実施形態による位置合わせ制御を示す図である。
【0170】
図18(a)において、いま、イエロートナー像が目標転写位置に対してずれた位置に転写されたとする。この際、位置合わせ制御器はマゼンタドラム(第1の像担持体)の位置を目標転写位置と一致するように制御するので、イエロートナー像とマゼンタトナー像との間に大きな色ずれが発生してしまうことになる。
【0171】
このような色ずれを防止するため、第4の実施形態では、画像の位置と同期したマーク(以下基準マークという)を用いる。そして、搬送方向の最上流側に位置するイエロードラムに画像を形成する際に、イエロートナー像および基準マークをベルトに転写する。位置合わせ制御の際には、ベルト位置ではなく、基準マーク位置を用いてマゼンタ、シアン、およびブラックドラムの位置合わせ制御を行う。なお、ここでは、基準マークのベルト搬送方向の移動量を基準マーク位置と定義する。
【0172】
このように、基準マークを位置合わせ制御の指標として用いることによって、イエロードラムで生じた転写位置のずれを、搬送方向の下流側に位置するドラムを用いて低減することが可能となる。
【0173】
例えば、図18(b)に示すように、イエロートナー像が目標転写位置に対してずれて転写されても、位置合わせ制御においてマゼンタドラムの位置が基準マーク位置と一致するように制御されるため、イエローとマゼンタの色ずれを低減することが可能となる。
【0174】
第4の実施形態においては、基準マークを形成するドラム(イエロードラム)と異なるドラム(マゼンタドラム)を用いてベルト制振制御を行うことが望ましい。ベルトを制振するためには、ベルトの振動に対して位相が逆になるようにドラムを駆動させればよいが、この運動によってベルト速度とドラム速度に誤差が生じる。
【0175】
このため、イエロードラムを用いてベルト制振制御を行うと、ベルト制振制御を行わない場合に比べて、基準マークをドラムからベルトに転写する際にマークの間隔が大きく変動して、搬送方向下流側に位置するドラムの速度変動が増加する。その結果、ベルトとドラムの連成によってベルトとドラムが振動して色ずれが増加してしまう。
【0176】
このことを考慮して、第4の実施形態では、マゼンタドラムを用いてベルト制振制御を行って、イエロー、シアン、およびブラックドラムについては位置合わせ制御のみを行う。
【0177】
なお、第4の実施形態においては、ベルト制振制御器を備えるドラムをマゼンタドラムに限定するものではなく、シアン又はブラックドラムを用いてベルトを制振するようにしてもよい。また、ベルトを制振するドラムの本数を1つに限定する必要はなく、イエロードラムを除く複数のドラムを用いてベルト制振制御を行うようにしてもよい。
【0178】
第4の実施形態が第1〜第3の実施形態と異なる点は、前述のように、マゼンタ、シアン、およびブラックドラムの制御に基準マークを用いることである。そこで、次にマークの形成動作とドラム制御装置の構成について説明する。
【0179】
図19は、本発明の第4の実施形態によるドラム制御装置が用いられた画像形成装置の一例を模式的に示す図である。
【0180】
まず、図19を参照して、基準マーク(基準位置指標)の形成動作について説明する。いま、LED露光装置3(図1)によってイエロードラム1に静電潜像が形成されると、静電潜像の形成と同期して、書き込み装置191(第1の指標記録手段)は画像形成領域に隣接した磁気記録領域に基準マークを磁気記録する。イエロードラム1の回転に伴って基準マークが一次転写面に移動すると、磁気読み取り装置201が基準マークを読み取ると同時に、書き込み装置192(第2の指標記録手段)がベルトの磁気記録領域に基準マークを磁気記録する。そして、ベルトの搬送に伴って基準マークがマゼンタドラムの一次転写面に移動すると、読み取り装置202(指標読み取り手段)によって基準マークが読み取られる。そして、この読み取り結果に応じてベルトの位置が修正されることになる。
【0181】
次に、各色のドラム制御装置の構成と設計手法について説明する。イエロードラム制御装置16Yは、ロータリエンコーダ(第2の検出手段:センサ)5Bを用いて検出したベルト位置とロータリエンコーダ(第1の検出手段:センサ)5Yを用いて検出したイエロードラム位置とに基づいて位置合わせ制御を行う。つまり、第4の実施形態におけるイエロードラム制御装置16Yは第1〜第3の実施形態で説明したマゼンタドラム制御装置16Mと同様である。そこで、ここでは、第1〜第3の実施形態で説明したマゼンタドラム制御装置の設計手法に応じてイエロードラム制御装置の設計を行う。
【0182】
マゼンタドラム制御装置16Mは、ロータリエンコーダ5Mを用いて検出したマゼンタドラム位置と磁気読み取り装置202を用いて検出した基準マーク位置とに基づいて位置合わせ制御とベルト制振制御を行う。よって、第4の実施形態によるマゼンタドラム制御装置16Mは、ベルト位置ではなく基準マーク位置を入力信号とする点を除いて、第1〜第3の実施形態で説明したイエロードラム制御装置と同様である。そこで、ここでは、第1〜第3の実施形態で説明したイエロードラム制御装置の設計手法に応じてマゼンタドラム制御装置の設計を行う。
【0183】
シアンおよびブラックドラム制御装置は、それぞれドラムに接続したロータリエンコーダを用いて検出したシアンドラム位置およびブラックドラム位置と磁気読み取り装置202を用いて検出した基準マーク位置とに基づいて位置合わせ制御を行う。よって、第4の実施形態によるシアンおよびブラックドラム制御装置は、ベルト位置ではなく基準マーク位置を入力信号とする点を除いて第1〜第3の実施形態で説明したドラム制御装置と同様である。そのため、第1〜第3の実施形態で説明したシアンおよびブラックドラム制御装置の設計手法を用いてドラム制御装置の設計を行うことになる。
【0184】
上述の説明から明らかなように、図5において、位置合わせ制御器161が第1の演算手段(第1の演算部)として機能し、減算器181aおよび182a、制振制御器1621および1622、および加算器172が第2の演算手段(第2の演算部)として機能する。そして、加算器171は制御手段(制御部)として機能する。また、減算器181aおよび182aはそれぞれ第1の偏差算出手段および第2の偏差算出手段として機能する。制振制御器1621および1622と加算器172とはフィルタ手段として機能する。
【0185】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0186】
例えば、上記の実施の形態の機能を制御方法として、この制御方法を、画像形成装置に実行させるようにすればよい。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを制御プログラムとして、この制御プログラムを画像形成装置が備えるコンピュータに実行させるようにしてもよい。なお、制御プログラムは、例えば、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録される。
【0187】
この際、制御方法および制御プログラムは、少なくとも第1の検出ステップ、第2の検出ステップ、第1の演算ステップ、第2の演算ステップ、および制御ステップを有することになる。
【0188】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記録媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0189】
13 ドラム駆動モータ
14 ベルト駆動モータ
15 ベルト制御装置
16 ドラム制御装置
163、165 位置合わせ制御器
164 ベルト制振制御器
166 ドラム制振制御器
181、182 微分器
191,192 磁気書き込み装置
201、202 磁気読み込み装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに応じてトナー像が形成される複数の像担持体と、前記複数の像担持体の各々に対応して設けられ前記複数の像担持体をそれぞれ駆動する複数の駆動源とを備え、前記複数の像担持体に形成されたトナー像を順次、中間転写体に転写して画像形成を行う画像形成装置で用いられ、前記複数の駆動源の駆動制御を行う像担持体制御装置であって、
前記中間転写体の回転速度を転写体速度として検出する第1の検出手段と、
前記複数の像担持体の各々に対応して備えられ、前記像担持体の回転速度を像担持体速度として検出する複数の第2の検出手段と、
前記複数の像担持体の各々に対応して備えられ、前記転写体速度に応じて得られた中間転写体の回転位置と前記像担持体速度に応じて得られた像担持体の回転位置との位置偏差に応じて第1の駆動指令値を求める第1の演算手段と、
前記複数の像担持体の少なくとも1つに備えられ、前記像担持体速度および前記転写体速度と前記像担持体の目標速度および前記中間転写体の目標速度とに応じて第2の駆動指令値を求める第2の演算手段と、
前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を前記第1および前記第2の駆動指令値を加算した加算指令値で制御し、前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を除く駆動源を前記第1の駆動指令値で制御する制御手段とを有することを特徴とする像担持体制御装置。
【請求項2】
前記第2の演算手段は、前記像担持体速度と前記像担持体の目標速度との速度偏差を像担持体速度偏差として求める第1の偏差算出手段と、
前記転写体速度と前記中間転写体の目標速度との速度偏差を転写体速度偏差として求める第2の偏差算出手段と、
前記像担持体速度偏差および前記転写体速度偏差をそれぞれフィルタリングした後、加算して前記第2の駆動指令値を得るフィルタ手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の像担持体制御装置。
【請求項3】
前記第2の演算手段は、前記中間転写体の回転位置および前記像担持体の回転位置を微分して前記転写体速度および前記像担持体速度を得る微分手段を有することを特徴とする請求項2に記載の像担持体制御装置。
【請求項4】
前記中間転写体の搬送方向の最上流側に位置する像担持体を第1の像担持体として、
前記第1の像担持体に対応して設けられ、前記第1の像担持体に基準位置指標を記録する第1の指標記録手段と、
前記第1の像担持体に対応して設けられ、前記第1の像担持体に形成された基準位置指標を前記中間転写体に記録する第2の指標記録手段と、
前記第1の像担持体を除く像担持体に対応して設けられ、前記中間転写体に記録された前記基準位置指標を読み取る指標読み取り手段とを有し、
前記指標読み取り手段による前記基準位置指標の読み取り結果に応じて前記中間転写体の回転位置が修正され、
前記第2の演算手段は前記第1の像担持体を除く像担持体の少なくとも1つに対応して備えられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の像担持体制御装置。
【請求項5】
画像データに応じてトナー像が形成される複数の像担持体と、前記複数の像担持体の各々に対応して設けられ前記複数の像担持体をそれぞれ駆動する複数の駆動源とを備え、前記複数の像担持体に形成されたトナー像を順次、中間転写体に転写して画像形成を行う画像形成装置で前記複数の駆動源の駆動制御を行うための制御方法であって、
センサによって前記中間転写体の回転速度を転写体速度として検出する第1の検出ステップと、
前記複数の像担持体の各々に対応して備えられたセンサで前記像担持体の回転速度を像担持体速度として検出する複数の第2の検出ステップと、
前記複数の像担持体の各々に対応して備えられた第1の演算部で前記転写体速度に応じて得られた中間転写体の回転位置と前記像担持体速度に応じて得られた像担持体の回転位置との位置偏差に応じて第1の駆動指令値を求める第1の演算ステップと、
前記複数の像担持体の少なくとも1つに備えられた第2の演算部で前記像担持体速度および前記転写体速度と前記像担持体の目標速度および前記中間転写体の目標速度とに応じて第2の駆動指令値を求める第2の演算ステップと、
制御部で前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を前記第1および前記第2の駆動指令値を加算した加算指令値で制御し、前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を除く駆動源を前記第1の駆動指令値で制御する制御ステップとを有することを特徴とする制御方法。
【請求項6】
画像データに応じてトナー像が形成される複数の像担持体と、前記複数の像担持体の各々に対応して設けられ前記複数の像担持体をそれぞれ駆動する複数の駆動源とを備え、前記複数の像担持体に形成されたトナー像を順次、中間転写体に転写して画像形成を行う画像形成装置で用いられ、前記複数の駆動源の駆動制御を行うための制御プログラムであって、
前記画像形成装置が備えるコンピュータに、
センサによって前記中間転写体の回転速度を転写体速度として検出する第1の検出ステップと、
前記複数の像担持体の各々に対応して備えられたセンサで前記像担持体の回転速度を像担持体速度として検出する複数の第2の検出ステップと、
前記複数の像担持体の各々に対応して、前記転写体速度に応じて得られた中間転写体の回転位置と前記像担持体速度に応じて得られた像担持体の回転位置との位置偏差に応じて第1の駆動指令値を求める第1の演算ステップと、
前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応して、前記像担持体速度および前記転写体速度と前記像担持体の目標速度および前記中間転写体の目標速度とに応じて第2の駆動指令値を求める第2の演算ステップと、
前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を前記第1および前記第2の駆動指令値を加算した加算指令値で制御し、前記複数の像担持体の少なくとも1つに対応する前記駆動源を除く駆動源を前記第1の駆動指令値で制御する制御ステップとを実行させることを特徴とする制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−234097(P2012−234097A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103710(P2011−103710)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】