優れたシャペロン活性およびフォールディング活性を有するキメラ融合タンパク質
本発明は、野生型シャペロンと比べて優れたシャペロン活性およびフォールディング活性を有するキメラ融合タンパク質のクローニング、発現および使用を開示する。本発明は、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列およびFK506結合タンパク質 (FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子にコードされるキメラ融合タンパク質に関する。特に、本発明は、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列およびヒトFKBP型ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードするヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子にコードされるキメラ融合タンパク質、これらのキメラ融合タンパク質の作製方法、ならびに他のタンパク質の作製およびワクチンまたは医薬品の作製におけるフォールディングヘルパーとしてのその使用ならびにイムノアッセイを行なうためのフォールディングヘルパーとしての使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然対応物と比べて優れたシャペロン活性およびフォールディング活性を有するキメラ融合タンパク質のクローニング、発現および使用に関する。本発明は、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列およびFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするヌクレオチド配列を含む組み換えDNA分子によってコードされるキメラ融合タンパク質に関する。特に、本発明は、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列およびヒトFKBP型ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードするヌクレオチド配列を含む組み換えDNA分子によってコードされるキメラ融合タンパク質、これらのキメラ融合タンパク質を生成する方法、ならびに他のタンパク質の生成におけるおよび実験動物の免疫化のためのおよびワクチンまたは医薬の生成方法におけるフォールディングヘルパーとしての使用、組み換えタンパク質技術における融合モジュールとしてのおよび免疫アッセイを行うためのフォールディングヘルパーとしての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
現在、分子シャペロンは、広範囲の生物技術適用において重要な役割を果たす(Mogk et al. 2002 Chembiochem 3, 807-)。シャペロンおよび酵素特性を有する、多くのフォールディングヘルパーがある。これらの理由で、これらはタンパク質フォールディングの様々な実用適用に有用である。
【0003】
古典的な「フォールディングヘルパー」として公知のシャペロンは、他のタンパク質のフォールディングおよび構造完全性の維持を補助するポリペプチドである。これらは、インビボおよびインビトロの両方でポリペプチドのフォールディングを促進する能力を有する。一般的に、フォールディングヘルパーは、フォールディング触媒およびシャペロンに細分される。フォールディング触媒は、触媒機能によってタンパク質フォールディングの律速段階を加速する。触媒の例は、以下にさらに記載される。シャペロンは、変性ポリペプチド、部分的変性ポリペプチドまたは疎水性表面のポリペプチドに結合することが公知であり、タンパク質を再生または溶液中に保つように補助する。従って、フォールディング触媒とは異なり、シャペロンは単なる結合機能を及ぼす(Buchner, J., Faseb J 10 (1996)10-19)。
【0004】
シャペロンは、タンパク質成熟、フォールディング、トランスロケーションおよび分解に関与するユビキタスなストレス誘導性タンパク質である(Gething, M. J.およびSambrook, J., Nature 355 (1992)33-45)。正常な増殖条件でも存在するが、これらはストレス条件下で多量に誘導される。これは、これらの生理学的機能がストレス条件を処理するという概念をさらに支持する。
【0005】
現在まで、数種類の異なるファミリーのシャペロンが公知である。 これらすべてのシャペロンは、フォールディングされていないタンパク質または部分的にフォールディングされていないタンパク質に結合する能力を特徴とし、タンパク質の正しいフォールディングまたは変性または凝集タンパク質の除去へとつながる生理学的機能を有する。
【0006】
シャペロンの十分に特徴付けられた例は、相対分子量によって特定されるいわゆる熱ショックタンパク質ファミリーのメンバー; 例えば、Buchner, J., Faseb J 10 (1996)10-19ならびにBeissinger, M. および Buchner, J., Biol. Chem. 379 (1998)245-59に記載されるhsplOO、hsp90、hsp70、およびhsp60、ならびにいわゆるshsp(低分子熱-ショックタンパク質)である。
【0007】
シャペロンと異なり、フォールディング触媒は、規定された律速段階を加速することでフォールディングを補助し、それにより凝集傾向のフォールディング中間体の濃度を低減する。触媒の1つの種類である、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(あるいはチオール-ジスルフィド-オキシド-レダクターゼとして特定される)は、分泌タンパク質中のジスルフィド結合の形成または再配置を触媒する。グラム陰性菌におけるペリプラズムの分泌タンパク質の酸化性フォールディングは、DsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDと特定されるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼのカスケードによって調節される(Bardwell, J. C., Mol Microbiol 14(1994)199-205 および Missiakas, D., et al., Embo J 14 (1995)3415-24)。
【0008】
ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI)と呼ばれる別の重要な種類のフォールディング触媒は、CypA、PpiD(Dartigalongue, C. および Raina, S., Embo J 17 (1998)3968-80, FkpA (Danese, P. N., et al., Genes Dev 9(1995)387-98)、トリガー因子(Crooke, E. および Wickner, W., Proc Natl Acad Sci U S A 84 (1987)5216-20 および Stoller, G., et al., Embo J 14 (1995)4939-48)、ならびにSlyD(Hottenrott, S., et al., J Biol Chem 272 (1997)15697-701)等の異なるメンバーを含む。
【0009】
配列類似性およびタンパク質トポロジーのために、プロリルイソメラーゼは、シクロフィリン、FK506結合タンパク質(FKBP)およびパルブリンの3つの異なるファミリーに分けられる。シクロフィリンは、免疫抑制剤シクロスポリンAに結合し、かつこれによって阻害される。パルブリンは、プロリルイソメラーゼのファミリーであり、シクロスポリンAによってもFK506によっても阻害されない。FKBPは、FK506およびラパマイシンに結合し、かつこれらによって阻害される(略語FKBPは「FK506結合タンパク質」を表す; FK506は免疫抑制薬物として使用されるマクロライドである)。高解像度で決定されるFKBPの最初のX線構造はヒトFKBP12のものであった。これは、短いα-へリックスの周りを右手巻きで覆われる5回のアンチパラレルβ-シート鎖である。5回のβ-シート鎖フレームワークは残基2〜8、21〜30、35〜38と46〜49、71〜76および97〜106を含む(van Duyne et al., Science (1991)252, 839-842)。後の研究によって、FKBP、ならびにシクロフィリンおよびパルブリンは、広範囲の原核生物および真核生物に見出される高度に保存される酵素のファミリーを形成することが示された (概説についてJohn E. Kay, Biochem. J. (1996)314, 361-385を参照)。例えば、10種のプロリルイソメラーゼが、これまで大腸菌で同定されている(2種のパルブリン、3種のシクロフィリンおよび5種のFKBP)。
【0010】
通常、FKBPは、結合基準によって定義される、すなわち、これらはナノモル範囲の高親和性でFK506を認識および結合する。しかし、FK506によるプロリルイソメラーゼ阻害をもはや受けないFKBP様ドメインがある。これらのFKBP様ドメインは、FKBP12と有意な配列類似性を共有するが、FK506結合を媒介するいくつかのアミノ酸残基が変異され、親和性がマイクロモル範囲にシフトする。例えば、SlyDおよびトリガー因子(大腸菌細胞質に由来する2種の細胞質PPIase)は、FKBP様タンパク質として考えられ得る。両方のプロリルイソメラーゼはFKBP12と有意な配列ホモロジーを共有するドメインを有するが、FK506への結合親和性はかなり低く、マイクロモル範囲である(Scholz et al., Biochemistry (2006)45, 20-33)。しかし、配列相同性およびタンパク質トポロジーの用語において、SlyDおよびトリガー因子の両方は、疑いもなくFKBPファミリーのメンバーである(Wuelfing et al., J. Biol. Chem (1994)269(4)2895-2901; Callebaut & Mornon, FEBS Lett. (1995)374(2)211-215)。
【0011】
FKBPドメインおよびFKBP様ドメインは、複雑なトポロジーを有するより大きな分子の部分を形成し得る。哺乳動物細胞において、FKBP12、FKBP12AおよびFKBP13は、塩基性FKBPドメインだけを含むが、FKBP25およびFKBP52はより大きな分子の部分として1つ以上のFKBPドメインを有する(概説について John E. Kay, Biochem. J. (1996)314, 361-385を参照)。
【0012】
モジュール式に構築されたFKBPはまた、原核生物細胞に見出される:例えば、前記トリガー因子は、異なる機能を有する十分に分離された3つのドメインから構成される。N-ドメインは、大腸菌リボソームの50Sサブユニットへの結合を媒介する(Hesterkamp et al., J Biol Chem. (1997)Aug 29;272(35):21865-71)。M(中央-)ドメインは、プロリルイソメラーゼ活性部位を有し(Stoller et al., FEBS Lett. 1996 Apr 15;384(2):117-22)、C-ドメインは、拡張ポリペプチド基質の結合を媒介するポリペプチド結合部位を包含する(Merz et al., J Biol Chem. 2006 Oct 20; 281 (42)31963-31971)。モジュール式に構築されたペプチジル-プロリルイソメラーゼの別の例は、ペリプラズムのFkpAであり、N-末端シャペロンおよび二量化ドメインおよびC-末端FKBP-ドメインから構成される(Saul et al., J. Mol. Biol(2004)335, 595-608)。
【0013】
いくつかのフォールディングヘルパーは、触媒活性ドメインおよびシャペロン(またはポリペプチド結合)ドメインの両方を含む。例えば、プロリル-イソメラーゼトリガー因子(Scholz et al. 1997, Embo J. 16, 54-58; Zarnt et al. 1997, JMB 271, 827-837)、FkpA (Saul et al. 2004, JMB 335, 595-608)およびSlyDはこれらのフォールディングヘルパーに属する。最近、FkpAおよびSlyDは、組み換えタンパク質生成のための融合モジュールとして顕著に適切であることが示され得た。両方のシャペロンは相手タンパク質の発現速度を増大し、正しいリフォールディングを支持し、レトロウイルス表面タンパク質のような凝集傾向があるタンパク質の溶解性を増大する(Scholz et al. 2005, JMB 345,1229-1241 および WO 03/000877)。
【0014】
FkpA、SlyDおよびSlpAは、FK506結合タンパク質(FKBP)のファミリーに属する細菌シャペロンである。上記のように、FK506は、免疫抑制薬物として使用されるマクロライドである。FK506のための細胞レセプターはなお、世界規模の研究グループの焦点である。1990年代の初めに、ヒトFKBPの3次元構造、すなわち、FKBP12が解明され得た (van Duyne et al. 1991, Science 252, 839-842)。FkpA、SlyDおよびSlpAとは対照的に、ヒトFKPB12はいかなるシャペロン活性をも有さず、弱いプロリルイソメラーゼ活性を有するだけである。
【0015】
多くの診断適用において、組み換え生成タンパク質が、例えば抗原として使用される。これらの抗原は、試料中またはアッセイ混合物中に存在する特定の結合パートナーによって認識される必要がある、抗原部分または標的ポリペプチドを構成する部分を含む融合タンパク質として生成され得る。特定抗原のクローニング、発現、フォールディング、溶解または精製を容易にするために、組み換え生成された融合タンパク質の他の部分は、抗原部分に融合されるポリペプチド部分である。組み換え生成融合タンパク質の合成は先行技術で十分に記載されている。標的ポリペプチドの発現、フォールディング、精製および溶解のための補助分子として機能する融合タンパク質のシャペロン部分としてのシャペロンを使用することは全く一般的である。例えば、米国特許第6,207,420号は、ヘテロタンパク質の発現用融合タンパク質系を開示する、即ち、標的ポリペプチド部分および融合ペプチド部分のアミノ酸配列は異なる生物に由来する。WO 03/000878は、レトロウイルス表面糖タンパク質の発現のためのツールとしてFKBPシャペロンの使用を開示する。
【0016】
融合タンパク質の発現、精製、フォールディングおよび可溶化のための一般方法、特にフォールディングヘルパーが使用される方法は、確実に働くようであるが、解決されるべきいくつかの課題がなお存在する。例えば、非ヒトアミノ酸配列を含む融合タンパク質がヒト診断試験で結合パートナーとして使用されるときはいつでも、これらの非ヒトタンパク質を使用することによる干渉の問題がなおある。ヒト血液試料で豊富に生じる抗体は、アッセイ試薬中に存在する細菌タンパク質と反応することが全くしばしばある。かかる干渉は、高いバッググラウンドノイズとなり得、間違った試験結果をも生じ得る。別の一般的課題は、それぞれの相手タンパク質に対する融合パートナーの親和性を適合または最適化する点にある。標的部分のための任意の融合モジュールの親和性が十分にバランス化されなければならない。親和性があまりにも高い場合、融合タンパク質は完全に溶解性であるが、融合モジュールと相手タンパク質との間の複合体は、閉じたコンフォメーションのままであり、従って免疫学的アッセイで不活性である。親和性があまりにも低い場合、相手タンパク質は免疫アッセイでアクセス可能であり、活性であるが、凝集に対して十分に保護されない。
【0017】
従って、本発明の目的は、広範囲の生物技術、および特に単離されたヒト試料中に存在する分子および物質と干渉を生じないかほとんど生じない診断適用および医薬適用で、使用され得るシャペロン様タンパク質を生成するために適切な発現系を提供することであった。先行技術は効率的なフォールディングヘルパー、すなわち、主にヒトアミノ酸配列からなる高い触媒活性およびシャペロン活性を発揮するヘルパーを開示していない。
【0018】
ヒトおよび細菌シャペロンのいくつかのタンパク質配列アライメントが存在するが (Wuelfing et al 1994, JBC 269, 2895-2901; Hottenrott et al. 1997, JBC 272, 15697-15701; Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160)、二重機能、即ち触媒およびシャペロン様機能を有する効率的なヒト化フォールディングヘルパーがいかに生成され得るかを示していない。
【0019】
(発明の要約)
驚くべきことに、我々は、FK506結合タンパク質(FKBP)またはFKBP様ドメイン(FK506結合タンパク質様ドメイン)に由来する配列に非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを融合することによって、優れたフォールディングヘルパー活性を有する分子が生成され得ることを示すことができた。
【0020】
特に、FKBP型のヒトペプチジル−プロリル−シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)に由来する配列に非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを融合することによって、 我々は、野生型フォールディングヘルパーのフォールディングヘルパー活性よりも優れたフォールディングヘルパー活性を有するヒト化PPIaseシャペロン分子を生成し得る。これらが診断試験または医薬適用で使用される場合に干渉を生じないかまたはわずかに干渉を生じ、かつシャペロン特性がそれぞれのタンパク質のために仕立てられ得るので、これらのキメラヒト化フォールディングヘルパーは、広範囲の生物技術適用のためのネイティブ様フォールドタンパク質試薬を生成するための極端に見込みのあるツールを提示する。
【0021】
かかるキメラ融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子を設計する好ましい方法、ならびに発現ベクターの部分、かかる発現ベクターを含む宿主細胞、およびキメラ融合タンパク質の生成におけるこれらの使用も開示される。
【0022】
特に触媒効率に関して、驚くべき、有利な特性を示す組み換え生成キメラ融合タンパク質自体も本発明の一部である。
【0023】
さらなる態様において、標的タンパク質のためのフォールディングヘルパーとして、標的タンパク質の生成プロセスにおけるフォールディングヘルパーとして、免疫アッセイ混合物への添加物として、ワクチンの生成のプロセスにおける、実験動物の免疫化のための、および医薬を生成するプロセスにおける組み換え生成融合タンパク質の使用が開示される。
【0024】
さらに、組み換え生成キメラ融合タンパク質および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物が開示される。
【0025】
(簡単な配列表の説明)
添付の配列表は以下の配列番号を含む:
【0026】
配列番号1は、Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160による、SwissProt データベースのID P0A9K9によってアクセス可能である大腸菌SlyDアミノ酸配列を表す。
【0027】
配列番号2は、SwissProtデータベースのID P62942によってアクセス可能であるヒトFKBP12アミノ酸配列を示す(Suzuki et al. 上掲)。
【0028】
配列番号3は、位置22に変異を保有する配列番号2に示されるヒトFKBP12アミノ酸配列を示す。よりよい可溶性を達成するために、システイン22はアラニンに変化されている(C22A)。さらにC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグが付加されている。
【0029】
配列番号4は、本発明による好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF1のアミノ酸配列を示す。SlyD挿入に下線を引く。
【0030】
配列番号5は本発明による好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF1のアミノ酸配列を示す。SlyD挿入に下線を引く。該配列は配列番号4に対応するが、システイン22は、アラニンで置換されている。
【0031】
配列番号6は、(当該技術水準と比較して)2つのSlyD*ユニットに融合された標的ポリペプチドとしてHIV-1 gp41ポリペプチドを有する融合タンパク質SlyD*-SlyD*-gp41のアミノ酸配列を示す。担体-担体-標的型の融合タンパク質の概略図を図8に示す;実施例1も参照。
【0032】
配列番号7は、本発明によるhFKBP12-IF1に融合された標的ポリペプチドとしてHIV-1 gp41ポリペプチドを有するキメラ融合タンパク質hFKBP12-IF1-hFKBP12-IF1-gp41のアミノ酸配列を示す(テンダム融合タンパク質)。本タンパク質の概略図を図8に示す;実施例1も参照。
【0033】
配列番号8は、配列番号1に対応するが残基番号D165(アスパラギン酸)以降がC末端切断される、SlyD*(SlyD 1〜165)のアミノ酸配列を示す。さらに、配列番号8はC末端にヘキサ−ヒスチジンタグを保有する。
【0034】
配列番号9はIFループのない配列番号8に示されるSlyD* (1〜165)のアミノ酸配列を示す。このバリアントはまた、SlyD* ΔIF-ループと呼ばれる。リフォールディングおよび精製のために、これはC末端にヘキサ−ヒスチジンタグを保有する。
【0035】
配列番号10は、精製を容易にするC末端ヘキサ−ヒスチジンを有するタンパク質FKBP12-IF1をコードする合成遺伝子のアミノ酸配列を示す。N-末端メチオニンは細菌N-メチオニルアミノペプチダーゼによる翻訳後に切断され、成熟ポリペプチドは実際にグリシン1で開始する。システイン22がアラニンで置換される場合、FKBP12-IF1の得られたアミノ酸配列は配列番号5に対応する。
【0036】
配列番号11は、FKBP12-IF1(C22A)-gp41融合構築物を示す(実施例1も参照)。
【0037】
配列番号12は、Suzuki et al.2003, JMB 328, 1149-1160による、SwissProtデータベースのID POAEMOによってもアクセス可能な大腸菌SlpAアミノ酸配列を示す。未処理タンパク質に存在するN-末端Met残基(配列番号12には示されない)は翻訳後に除去される。今のところ、SlpAの情報は非常に不十分である。ペプチド基質に対するかなり低い活性を有するプロリルイソメラーゼとしての予備的な特徴付けとは別に、現実にこれまでSlpAについて公知なものはない。
【0038】
配列番号13は本発明によるさらに好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF4のアミノ酸配列を示す。SlpA挿入に下線を引く。さらにC-末端ヘキサ−ヒスチジンタグが付加されている。
【0039】
配列番号14はSwissProtデータベースのID O93778によってもアクセス可能なThermococcus FKBP18アミノ酸配列を示す。
【0040】
配列番号15は、本発明によるさらに好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF5のアミノ酸配列を示す。Thermococcus FKBP18挿入に下線を引く。さらにC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグが付加されている。
【0041】
配列番号16はSwissProtデータベースのID P0A850によってもアクセス可能な大腸菌トリガー因子のアミノ酸配列を示す。
【0042】
配列番号17は、配列番号16による大腸菌トリガー因子のFKBPドメインを示す。アミノ酸メチオニン140〜グルタミン酸251は、トリガー因子のFKBPドメインに属する。
【0043】
配列番号18は、本発明の更なる態様のアミノ酸配列を示す。本キメラフォールディングヘルパータンパク質(トリガー因子-IF/SlyD)において、SlyDに由来するIFドメインは大腸菌トリガー因子のFKBPドメインに挿入される。SlyD挿入に下線を引く。
【0044】
配列番号19は、大腸菌由来の未処理前駆体FkpAのアミノ酸配列を示す。新たに翻訳されたFkpAは、ペリプラズムへの輸送のためのN-末端シグナル配列(Met 1〜Ala25)を保有する。内部の膜を通過した後に、シグナルペプチダーゼが特異的にシグナル配列を除去し、この配列はプロセスされた機能的タンパク質で消失する。FkpAは、N-末端シャペロンおよび二量体化ドメインおよびC-末端イソメラーゼドメイン(Gly147〜K249)を含む。RNaseT1試験において、FkpAは、約250,000 M -1s -1の触媒効率を示す。FkpA配列はまた、SwissProt ID:P45523によってもアクセス可能である。
【0045】
配列番号20は、配列番号19に示されるFkpAのFKBPドメインのアミノ酸配列(G147-K249)を示す。C-末端配列LEはクローニング戦略の理由を含む。C-末端ヘキサ-ヒスチジンタグは、精製を容易にするために付加されている。このFKBPドメインは、RNaseT1フォールディング試験で弱い活性を有すると思われ、活性はSIyD* ΔIFループとヒトFKBP12との間の範囲である(表1参照)。
【0046】
配列番号21は本発明によるさらなる態様のアミノ酸配列を示す。キメラフォールディングヘルパータンパク質FkpA-IF/SlyDにおいて、SlyDに由来するIFドメインは、FkpAのFKBPドメインに挿入される(配列番号20に示される)。C-末端ヘキサヒスチジンタグが精製を容易にするために付加されている。このキメラフォールディングヘルパータンパク質はRNaseT1フォールディング試験における高い活性を示すことが予想される。
【0047】
(詳細な説明)
本発明は、
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b)その上流にFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列および
c)その下流にFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むキメラ融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子に関する。一方でa)のヌクレオチド配列ならびに他方でb)およびc)のヌクレオチド配列は、同じ生物に由来し得るが、これらは異なる親FKBP分子をコードしなければならない。より正確に、a)は1つのFKBP分子のシャペロンドメイン(例えば、SlyDまたはSlpA)をコードし、b)およびc)は別の分子のFKBPドメインまたはFKBP様ドメイン(例えば、ヒトFKBP12)をコードする。FK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするヌクレオチド配列、すなわち、b)部分およびc)部分は同じ生物に由来し得るが、これらはまた、異なる生物に由来し得る。好ましくはb)およびc)で与えられる配列は、同じ生物に由来する。より好ましくは、これらは、例えばヒトFKBP12のような同じ親FKBP分子に由来する。
【0048】
特に、本発明は、
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b)その上流にFKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列および
c)その下流にFKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
を含むキメラ融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子に関する。
【0049】
用語「組み換えDNA分子」は、遺伝子工学技術または化学合成によるポリヌクレオチドの単離セグメントの人工操作で達成された分離された2つのセグメントの配列の組み合わせで作製されるDNA分子のことをいう。これを行う際、所望の機能のポリヌクレオチドセグメントと共に結合して所望の組み合わせの機能を生じ得る。
【0050】
用語「キメラ融合タンパク質」は、ポリペプチド結合ドメインおよびFKBP(またはFKBP様)ドメインが異なる親分子に由来することを意味する。我々はFKBPまたはFKBP様ドメインがフォールディング骨格であるとみなし、その上にシャペロンドメインがグラフト(graft)され得、優れたフォールディングヘルパー活性を有するスーパーシャペロンを生じる。本発明において、非ヒトポリペプチドがヒトポリペプチド配列に融合される。キメラタンパク質は、「モザイクタンパク質」とも呼ばれ得る。本発明の目的の1つは、得られたタンパク質が診断適用でより耐性になるようにフォールディングヘルパータンパク質をヒト化することであるので、非ヒトアミノ酸配列の割合は好ましくは、完全なキメラ融合タンパク質の長さと比べて50パーセント部分を越えない。
【0051】
好ましくは、a)、b)およびc)によるヌクレオチド配列は、さらなるリンカー配列で分離されるだけでなく、互いに直接隣接している。
【0052】
「上流」方向は、ヌクレオチドがポリヌクレオチドの5’方向、すなわち初めのヌクレオチドに位置することを意味する。アミノ酸配列の用語において、用語「上流」はアミノ酸がN-末端方向、すなわちポリペプチドの開始に位置することを意味する。
【0053】
「下流」方向は、ヌクレオチドがポリヌクレオチドの3’方向、すなわち最後のヌクレオチドに位置することを意味する。アミノ酸の用語において、用語「下流」はアミノ酸がC-末端方向、すなわち、ポリペプチドの終わりに位置することを意味する。
【0054】
天然状態においてまたは当該分野で公知の方法によって操作される場合に、ポリヌクレオチドがポリペプチドまたはその断片を生じるように転写および/または翻訳され得る場合、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを「コードする」または「コード化する」ことをいう。
【0055】
シャペロンの「ポリペプチド結合セグメント」はタンパク質の3次元フォールディングプロセス中にポリペプチド鎖を結合および保持するシャペロンのポリペプチド結合セグメントとしてみなされる。「ポリペプチド結合セグメント」の大腸菌シャペロンSlyD、すなわち、そのシャペロン特性は、本出願でいわゆるIFドメイン(フラップ内挿入ドメイン(insert in flap domain)、アミノ酸〜76〜12)に位置している。自律的なフォールディング単位としてのタンパク質ドメインは水溶液中の天然様安定フォールドをとることができる。用語「ポリペプチド結合セグメント」、「IF-ループ」、IF-ドメインまたはシャペロンドメインが同義語として使用され得る。
【0056】
好ましい非ヒトシャペロンは、大腸菌SlyDおよびSlpA、ならびにSuzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160に列挙されるMethanococcus thermolithotrophicus由来のFKBP17、Methanococcus jannaschii由来のFKBP18、Thermococcus sp. KSl由来のFKBP 18、Pyrococcus horikoshii由来のFKBP29、Methanococcus jannaschii由来のFKBP26およびAeropyrum pernix由来のFKBP30等の古細菌のFKBPシャペロンである。
【0057】
好ましい態様において、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列は非ヒトFK506結合タンパク質(FKBP)をコードする配列を含む。より好ましくは大腸菌、Methanococcus thermolithotropicus、Methanococcus jannaschii、Thermococcus sp KSl、Pyrococcus horikoshiiまたはAeropyrum pernixのFKBP配列であり、大腸菌SlyDおよびSlpA配列が最も好ましい。
【0058】
特に好ましい態様において、大腸菌SlyD配列は、配列番号1のアミノ酸番号56〜75に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号1のアミノ酸番号122〜136に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。最も好ましくは、アミノ酸番号70で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号1のアミノ酸番号129で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列である。
【0059】
さらに好ましい態様において、大腸菌SlpA配列は、配列番号12のアミノ酸番号56〜75に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号12のアミノ酸番号122〜136に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。最も好ましくは、配列番号12のアミノ酸番号72で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号12のアミノ酸番号132で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列である。
【0060】
非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列に隣接する上流および下流配列に関して、これらの上流および下流配列はFK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメインとも呼ばれる)に由来する。
【0061】
本発明によれば、FK506結合タンパク質(FKBP)はナノモル範囲の高い親和性で免疫抑制剤FK506を認識および結合することができるタンパク質である。FKBP様ドメイン(「FK506結合タンパク質様ドメイン」)またはFKBP様タンパク質は、FK506によるプロリルイソメラーゼ阻害の影響をもはや受けないか、またはかろうじて受けるタンパク質またはタンパク質の部分である。これらのFKBP様ドメインはFKBP12のようなFK506結合タンパク質と、有意な配列および構造類似性を共有するが、FK506結合を媒介するいくつかのアミノ酸残基が変異され、親和性がマイクロモル範囲にシフトされる。例えば、SlyDおよびトリガー因子、大腸菌細胞質に由来する2つのPPIaseが、FKBP様タンパク質としてみなされる(Callebaut & Mornon, FEBS Lett. (1995)374(2)211-215; Wulfing et al., J. Biol. Chem. (1994)269(4), 2895-2901))。
【0062】
大腸菌SlyDまたはSlpAのような非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列に隣接する上流および下流配列に関して、FKBP型のヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼをコードする上流および/または下流ヌクレオチド配列はFK506結合タンパク質(FKBP)またはFKBP様ドメインをコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましく、ヒトFKBP12をコードする配列が特に好ましい。
【0063】
さらに、好ましい態様において、FKBP12をコードする上流ヌクレオチド配列は配列番号3のアミノ酸番号1〜20に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号3のアミノ酸番号70〜89に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0064】
FKBP12をコードする下流ヌクレオチド配列は、配列番号3のアミノ酸番号90〜97に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号3のアミノ酸番号103〜107に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列を含む態様も好ましい。
【0065】
最も好ましくは、配列番号4によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み換えDNA分子である。配列番号4は、N-末端が配列番号3(FKBP12)のアミノ酸位置グリシン/G1〜グリシン/G83で開始し、配列番号1(SlyD)のアミノ酸位置グルタミン/Q70〜アスパラギン/N129が続き、配列番号3(FKBP12)のロイシン/L97〜グルタミン酸/E107で終了するアミノ酸配列を示す。配列番号4に示されるアミノ酸配列に対応するポリペプチドはFKBP12-IF1とも呼ばれる。
【0066】
本発明のさらに好ましい態様において、組み換えDNA分子は、配列番号13によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。配列番号13は、N-末端が配列番号3(FKBP12)のアミノ酸位置グリシン/G1〜グリシン/G83で開始し、配列番号12(SlpA)のアミノ酸位置バリン/V72〜トレオニン/T132が続き、配列番号3(FKBP12)のロイシン/L97〜グルタミン酸/E107で終了するアミノ酸配列を示す。配列番号13に示されるアミノ酸配列に対応するポリぺプチドは、KBP12-IF4とも呼ばれる。
【0067】
本発明のさらに好ましい態様において、組み換えDNA分子は配列番号15によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0068】
配列番号15は、N-末端が配列番号3(FKBP12)のアミノ酸位置グリシン/G1〜グリシン/G83で開始し、配列番号14(Thermococcus FKBP18)のアミノ酸位置メチオニン/M84〜トレオニン/T140が続き、配列番号3(FKBP12)のロイシン/L97〜グルタミン酸/E107で終了するというアミノ酸を示す。配列番号15に示されるアミノ酸配列に対応するポリペプチドはまたFKBP12-IF5と呼ばれる。
【0069】
βシートのような2次元構造エレメントはヘテロ配列エレメントによって阻害されず、インタクトのままであるような方法で、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする配列の上流および下流を挿入するようにDNA配列を選択することが有利である。一般的に公知の配列アライメントは例えば、Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160のような適切な上流および下流配列を選択することを補助する。
【0070】
本発明によれば、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列および上流および下流ヌクレオチド配列、すなわち、FK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするもの、好ましくはFKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードするものの選択および配置は、得られたキメラ融合タンパク質の全体構造秩序が天然シャペロンの構造に相当するような方法で行われる。すなわち、全体構造は好ましくは技術分野の状態を示すα-へリックスおよびβ-シートのような二次構造エレメントの配置を維持する(例えば、Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160)。
【0071】
本発明は特に、かかる組み換えDNA分子の発現によって生成されるキメラ融合タンパク質に関する。
【0072】
上記で同定される組み換えDNA分子の発現によって、我々は、細菌PPIaseシャペロンSlyD、FkpA、トリガー因子およびSlpAに対する対応物、ならびに細菌PPIaseシャペロンSlyD、トリガー因子およびSlpAに対するヒト化対応物を提供する。これらのヒト化ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼシャペロンは、生物技術適用の役立つツールおよび診断試験の添加物として働き得る。本出願の実施例に見られ得るように、本発明者らは、野生型フォールディングヘルパーよりもより高い触媒効率を有するヒト化シャペロンを得ることができ、そのアミノ酸配列は本発明によるヒト化シャペロンに含まれる。タンパク質のフォールディングおよびリフォールディング能力を示すRNaseT1リフォールディング試験系の観察に基づいて、本発明者らは、単離ヒトFKBP12が約14,000 M -1s-1のわずかな触媒効率を有するだけであることを示すことができた。単離非修飾大腸菌SlyDの触媒効率は680, 000 M -1s-1に達する。IFループドメインを欠くSlyDの欠失バリアントは、RNaseT1フォールディングアッセイで約500 M-1s-1の無視可能な触媒効率を示す。驚くべきことに、キメラ分子FKBP12-IF1(配列番号4に示されるアミノ酸配列)の触媒効率は、実質的にこの値を超える。FKBP12-IF1は、約2,500,000 M-1s-1の顕著な触媒効率を示し(実施例部分の表1も参照)、今日まで公知で最も効率のよいプロリルイソメラーゼの値を超える。この値は1.2 x 106 M -1s-1となる、トリガー因子の触媒効率も超える(Stoller et al. ( 1995)EMBO J. 14, 4939-4984; Zarnt et al. (1997)J. Mol. Biol. 271, 827-837; Scholz et al.(1997)EMBO J. 16, 54-58)。
【0073】
ヒトFK506結合タンパク質のプロリルイソメラーゼ中心の活性部位を、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合ドメイン、すなわち、いわゆるIFループと合わせることで、本発明者らは優れたシャペロンおよび酵素特性を有するフォールディングヘルパーを作製した。本発明者らは、単離された野生型タンパク質よりも高い触媒効率を有するフォールディングヘルパーを提供することができた。従って、本発明によるフォールディングヘルパーは、その優れた触媒効率を参照してスーパーシャペロンとも呼ばれ得る。
【0074】
従って、本発明の一部は、
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、b)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN-末端に融合されるFK506 結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列、およびc)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC-末端に融合されるFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列を含む組み換え生成融合タンパク質である。
【0075】
従って、好ましい態様の1つは、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、b)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN-末端に融合されるヒトFKBP型ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列、c)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC-末端に融合されるヒトFKBP型ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列を含む組み換え生成された融合物である。好ましい態様は、ポリペプチド結合セグメントの大腸菌SlyDシャペロン配列およびSlyD配列にN末端およびC-末端で融合されるヒトFKBP12ポリペプチド配列を含むキメラ融合タンパク質である。本発明の好ましい態様の1つは、配列番号4によるアミノ酸配列を含むキメラ融合タンパク質である。
【0076】
ポリペプチド結合セグメントの大腸菌SlpAシャペロン配列およびSlpA配列にN-末端およびC-末端で融合されるヒトFKBP12ポリペプチド配列を含むキメラ融合タンパク質も好ましい。ポリペプチド結合セグメントの大腸菌SlpAシャペロン配列を含むキメラ融合タンパク質についての更なる詳細は、実施例部分および表1に与えられる。
【0077】
本発明の好ましい態様の1つは、配列番号13によるアミノ酸配列を含むキメラ融合タンパク質である。このタンパク質はFKPB12-IF4と呼ばれる。
【0078】
ポリペプチド結合セグメントのThermococcus FKBP18シャペロン配列およびThermococcus FKBP18配列にN-末端およびC-末端で融合されるヒトFKBP12ポリペプチド配列を含む融合タンパク質もまた好ましい。Thermococcus FKBP18は、プロリルイソメラーゼ活性化部位の近傍のフラップ領域のIFドメインを支持する熱安定性SlyDホモログである。Thermococcus FKBP18のアミノ酸配列は、配列番号14に示される。Thermococcus FKBP18の完全IFループドメインがhFKBP12のフォールディング骨格にグラフトされる、得られたキメラ融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号15に示される。このキメラ融合タンパク質についての更なる詳細は実施例部分および表1に与えられる。
【0079】
本発明の別の態様において、SlyDに由来するIFドメインが、大腸菌トリガー因子のFKBPドメインに挿入される。配列番号18は、このキメラフォールディングヘルパータンパク質のアミノ酸配列を示す(トリガー因子-IF/SlyD)。SlyDに由来するIFドメインは、大腸菌トリガー因子のFKBPドメインに挿入される。SlyD挿入に下線を引く。
【0080】
さらなる態様において、SlyDに由来するIFドメインは、FkpAのFKBPドメインに挿入される(配列番号20に示される)。得られたキメラフォールディングヘルパータンパク質はFkpA-IF/SlyDと呼ばれる。このキメラフォールディングヘルパータンパク質はRNaseT1フォールディング試験で高い活性を示すことが予想される。配列番号21は、本発明によるキメラフォールディングヘルパータンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0081】
本発明者らの実験から、本発明者らは、SlyD、SlpAおよびTcFKBP18のシャペロン機能が、いわゆるIF(フラップ内挿入)ドメインに制限されると推測した。本発明者らは、種々のFKBP-シャペロンのIFドメインは、構造的に関連し、機能的に同等であると結論付けた。したがって、異なるFKBP-シャペロン由来のIFドメインは、互いに互換可能であるべきである。本発明者らは、SlyD内のIFドメインは、SlyDの真のフォールディングヘルパー特性を損なうことなく、例えば、SlpAまたはTcFKBP18の推定IFドメインで置き換えられ得ると仮定する。シャペロンドメインのこの相互交換は、相互様式で可能であるべきである、すなわち、推定IFドメインは、SlpAまたはTcFKBP18のFKBP様ドメイン上にグラフトされ、機能的シャペロンモジュールをもたらし得る。シャペロンドメインの相互交換は、それぞれ標的タンパク質に適合された基質親和性を有するテーラーメード(tailor-made)のフォールディングヘルパーへの道を開き得る。
【0082】
FKBP-X融合タンパク質において、FKBPは担体モジュールとして機能し、Xは、ゲストまたは標的タンパク質を意味するが、担体モジュールおよびゲストタンパク質は、閉鎖形態と開放形態との間の動的平衡状態で存在する。閉鎖形態では、疎水性領域は遮蔽され、したがって、融合タンパク質は可溶性のままであり、凝集しない。開放形態では、抗原性部位が露出しており、これにより、例えば、イムノアッセイにおいてゲストタンパク質が機能的であることが可能になる。したがって、親和性は、融合タンパク質において充分均衡していなければならず、異なるFKBP-シャペロン由来のIFドメインと相互交換することにより、標的モジュールの要件に適合され得る。
【0083】
任意に、すべてのキメラ融合タンパク質は、標的ポリペプチド配列にさらに融合され得る。本発明による標的ポリペプチドは、大量に必要とされる任意のポリペプチドであり得、したがって、他の非組換え供給源から単離または精製することが困難である。
【0084】
好ましくは本発明の方法によって作製される標的タンパク質の例としては、酵素、サイトカイン、成長因子、ホルモン、ワクチン、抗体などの哺乳動物の遺伝子産物が挙げられる。より詳しくは、本発明の好ましい過剰発現遺伝子産物としては、エリスロポエチン、インスリン、ソマトトロピン、成長ホルモン放出因子、血小板由来成長因子、上皮成長因子、トランスホーミング成長因子α、トランスホーミング成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、インスリン様成長因子 I、インスリン様成長因子II、第VIII凝固因子、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、γ-インターフェロン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、顆粒球コロニー刺激因子、多系統コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、T細胞成長因子、リンホトキシンなどの遺伝子産物が挙げられる。好ましい過剰発現遺伝子産物は、ヒトの遺伝子産物である。
【0085】
さらに、本発明の方法は、ワクチンとして使用され得る任意の過剰発現遺伝子産物の分泌を増強するために容易に適合され得る。ワクチンとして使用され得る過剰発現遺伝子産物としては、哺乳動物の病原体の任意の構造的、膜会合、膜結合または分泌遺伝子産物が挙げられる。哺乳動物の病原体としては、哺乳動物に感染または攻撃し得るウイルス、細菌、単細胞または多細胞寄生虫が挙げられる。例えば、ウイルスワクチンとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ワクシニア、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、デング熱ウイルス、日本脳炎B型、水痘‐帯状疱疹、サイトメガロウイルス、A型肝炎、ロタウイルスなどのウイルスに対するワクチン、ならびに麻疹、黄熱病、おたふくかぜ、狂犬病、ヘルペス、インフルエンザ、パラインフルエンザなどのウイルス疾患に対するワクチンが挙げられ得る。細菌ワクチンとしては、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Bordetella pertussis、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Clostridium tetani、Corynebacterium diphtheriae、Mycobacterium leprae、R. rickettsii、Shigella、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Coccidioides immitis、Borrelia burgdorferiなどの細菌に対するワクチンが挙げられ得る。好ましくは、標的タンパク質は、HIV-1由来のgp41およびp17、HIV-2由来のgp36およびp16、HTLV-I/II由来のgp21などのレトロウイルスタンパク質からなる群、風疹ウイルス由来のE1およびE2などのウイルスエンベロープタンパク質からなる群、またはβ-AP42(アルツハイマーペプチド)もしくはプリオンタンパク質などのアミロイド生成タンパク質からなる群の一員である。
【0086】
本発明による標的ポリペプチドはまた、単一の組換えポリペプチドとして発現されるように構築されたいくつかの異なるタンパク質由来の配列、例えば、診断上関連するエピトープを含み得る。
【0087】
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびc)その下流に、FK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むキメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子もまた、本発明の対象である。
【0088】
好ましくは、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、c)その下流に、FKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むキメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子もまた、本発明の対象である。
【0089】
キメラスーパーシャペロンをコードする配列が工程a)、b)およびc)に従ってインタクトなままであり、その触媒機能およびシャペロン機能を維持する
ような様式で、標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が挿入されることは重要である。これは、標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、キメラ融合タンパク質をコードする配列の上流または下流にインフレームで挿入されることを意味する。これはまた、上流および下流に挿入され得、また、1つ以上のコピーが挿入され得る。
【0090】
本発明によるキメラ融合タンパク質および標的ポリペプチドをコードする組換えDNAはまた、完全なタンパク質の発現後にリンカーポリペプチドをもたらすリンカー配列を含み得る。当業者には認識されるように、かかるリンカーポリペプチドは、意図される適用に、特に、長さ、柔軟性、電荷および可溶性に関して最も適切となるように設計される。
【0091】
1つまたはいくつかのアミノ酸置換または欠失を有するキメラ融合タンパク質のバリアントもまた、本発明による組換えDNAまたはキメラ融合タンパク質を得るために使用され得る。当業者は、実施例のセクションに記載の手順を用いることにより、かかるバリアントが本発明の方法に適切かどうかを容易に断定し得る。
【0092】
適当な宿主細胞中での複製によって、大量のポリヌクレオチドが作製され得る。タンパク質またはその断片をコードする天然または合成DNA断片は、原核生物または真核生物細胞内に導入および複製し得る組換えポリヌクレオチド構築物、典型的にDNA構築物内に組み込まれる。
【0093】
ポリヌクレオチドはまた、限定されないが、Beaucage、S. L.およびCaruthers、M. H.、Tetrahedron Letters 22 (1981)1859-1862に記載されたホスホルアミダイト法、およびMatteucci、M. D.およびCaruthers、M. H.、J. Am. Chem. Soc. 103 (1981)3185-3191によるトリエステル法を含む、化学合成によって作製され得る。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖を互いにアニーリングすること、または適切なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用いて相補鎖を付加することのいずれかにより、単鎖生成物の化学合成から得られ得る。
【0094】
ポリヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド配列と機能的関係で配置される場合、作動可能に連結される。例えば、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、作動可能に連結されるは、連結された配列が連続的であり、必要な場合は、ともに連続的でリーディングフレーム内にある2つのタンパク質コード領域に連結されていることを意味する。しかしながら、エンハンサーなどのある種の遺伝子エレメントは、離れていても、すなわち、連続的でない場合であっても作動可能に連結され得ることは周知である。
【0095】
宿主への導入のために調製されたDNA構築物は、典型的に、所望のキメラ融合ペプチドおよび任意にさらなる標的ポリペプチドをコードする意図されるDNA断片を含む、宿主によって認識される複製系を含み、好ましくはまた、ポリペプチドコードセグメントに作動可能に連結された転写および翻訳開始調節配列を含む。発現系(発現ベクター)としては、例えば、複製起点または自律複製配列(ARS)および発現制御配列、プロモーター、エンハンサーおよびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要なプロセッシング情報部位、転写ターミネーター配列、およびmRNA安定化配列が挙げられ得る。
【0096】
適切なプロモーターおよび他の必要なベクター配列は、宿主内で機能的となるように選択される。細胞株および発現ベクターの機能し得る組合せの例としては、限定されないが、Sambrook, J.、et al.、「Molecular クローニング: A Laboratory Manual」(1989)、編J. Sambrook、E. F. FritschおよびT. Maniatis、Cold Spring Harbour Laboratory Press、Cold Spring Harbour、またはAusubel, F.、et al.、「Current プロトコル in molecular biology」(1987および定期的改訂版)、編F. Ausubel、R. BrentおよびK. R.E.、Wiley & Sons Verlag、New York;ならびにMetzger、D.、et al.、Nature 334 (1988)31-6に記載のものが挙げられる。細菌、酵母、哺乳動物、昆虫、植物または他の細胞における発現のための多くの有用なベクターが当該技術分野で公知であり、限定されないが、Stratagene、New England Biolabs、Promega Biotechおよび他を含む販売元から得られ得る。また、構築物は、多数のコピーの遺伝子が得られ得るように、増幅可能な遺伝子(例えば、DHFE)に連結され得る。
【0097】
発現およびクローニングベクターは、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする遺伝子である選択可能なマーカーを含むことが適当であるが、かかるマーカー遺伝子は、宿主細胞内に同時に導入される別のポリヌクレオチド配列上に保有されていてもよい。マーカー遺伝子を発現する宿主細胞のみが、選択的条件下で生存および/または成長し得る。典型的な選択遺伝子としては、限定されないが、(a)抗生物質または他の毒性物質、例えば、アンピシリン、テトラサイクリンなどへの耐性を付与する; (b)栄養素要求不全を補う; または(c)複合培地から入手可能でない必須の栄養物を供給するタンパク質をコードするものが挙げられる。適正な選択可能なマーカーの選択は宿主細胞に依存し、異なる宿主に対する適切なマーカーは当該技術分野で公知である。
【0098】
本発明によれば、本発明による作動可能に連結された組換えDNA分子、すなわち、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびc)その下流に、FK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、ならびに任意にd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子を含む発現ベクターは、非常に有利であることが示された。
【0099】
本発明による作動可能に連結された組換えDNA分子、すなわち、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FKBP型のヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、c)その下流に、FKBP型のヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、ならびに任意にd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子を含む発現ベクターもまた、本発明の一部である。
【0100】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、当該技術分野で公知の任意の方法によって宿主細胞内に導入され得る。これらの方法は、細胞宿主の型に応じて異なり、限定されないが、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、他の物質を使用するトランスフェクション、ならびにウイルスによる感染が挙げられる。大量の本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、適合性の宿主細胞中でベクターまたは他の発現媒体内の本発明のポリヌクレオチドを発現させることにより調製され得る。最も一般的に使用される原核生物宿主は、大腸菌株であるが、Bacillus subtilisなどの他の原核生物もまた使用され得る。大腸菌における発現は、本発明の好ましい実施形態を表す。
【0101】
本発明によるベクターの構築では従来のライゲーション技術が使用される。単離されたプラスミドまたはDNA断片は、必要とされるプラスミドを作製するのに所望される形態に切断され、調整され、再度ライゲートされる。所望により、構築されたプラスミド内の正しい配列を確認するための分析が公知の様式で行なわれる。発現ベクターの構築、インビトロ転写物の調製、宿主細胞内へのDNAの導入、ならびに発現および機能を評価するための分析の実施のための適当な方法は当業者に公知である。遺伝子の存在、増幅および/または発現は、本明細書に示された配列に基づき得る適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAもしくはRNA分析)、またはインサイチュハイブリダイゼーションによって、試料中で直接測定され得る。当業者には、所望によりどのようにこれらの方法が変形され得るかが容易に認識されよう。
【0102】
本発明による組換えDNAを含む発現ベクターは、無細胞翻訳系内で融合タンパク質を発現するために使用され得るか、または宿主細胞を形質転換するために使用され得る。好ましい態様において、本発明は、本発明による発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【0103】
さらに好ましい態様において、本発明は、キメラ融合タンパク質の作製方法に関する。前記方法は、本発明による発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養する工程、それぞれ宿主細胞内での該キメラ融合タンパク質の発現工程、および前記キメラ融合タンパク質の精製工程を含む(comprising)。
【0104】
本発明によるキメラ融合タンパク質は、高い可溶性を示す。細胞質内で過剰発現される場合、これは、主に、可溶性の画分に蓄積される。程度は低いが、これはまた、封入体中でも発現される。一般的に、細胞は、例えば、カオトロピック物質中などの適切なバッファー条件下で溶解される。キメラ融合タンパク質がヘキサ-ヒスチジン部分でタグ化される場合、未フォールディングタンパク質は、ニッケル含有カラム(Ni-NTA)に結合され得、ここで、これらはまた、適切なバッファー条件下でリフォールディングされる。実施例のセクションにより詳細に示したかかる精製およびリフォールディングプロトコルは当業者に周知である。その卓越したフォールディングヘルパー特性により、本発明によるキメラ融合タンパク質は、その適正な3次元構造、すなわち、その天然様コンホメーションを採用し得、それ以外の場合は採用し得ない任意の標的タンパク質のためのフォールディングヘルパーとして適用され得る。本発明によれば、キメラ融合タンパク質はまた、標的タンパク質の産生プロセスにおけるフォールディングヘルパーとして使用され得る。例えば、過剰産生性宿主細胞の一次可溶化後、過剰発現された標的タンパク質は、通常、カオトロピック物質により、または界面活性剤の存在もしくは他のバッファー条件により、まだその天然構造を採用せず、これは、標的タンパク質の天然コンホメーション状態を損なっている。キメラ融合タンパク質は、次いで、標的タンパク質の精製および可溶化プロセス中に添加され得、リフォールディングおよび復元プロセスを補助し得る。
【0105】
カップリングされた転写/翻訳系における適用に関して、過剰発現キメラフォールディングヘルパーを含有する細胞溶解物は、バイアルに添加され得、そこで、インビトロ翻訳が翻訳されたタンパク質の適正なコンホメーションフォールディングが促進されるように行なわれ得る。
【0106】
本発明によるキメラ融合タンパク質は、イムノアッセイおよびその結果を乱すことなく、その結合パートナーへの抗原および抗体の免疫学的結合プロセスを補助するためのイムノアッセイにおいて適用され得る。本発明によるキメラ融合タンパク質がヒト化されていること、すなわち、非ヒトタンパク質配列に対するヒト試料中に天然に存在する抗体による干渉の確率が最小限となるように主にヒトアミノ酸配列を含むことは、有利である。好ましくは、ヒト配列に由来するアミノ酸の割合は、キメラ融合タンパク質の完全アミノ酸配列と比べて少なくとも60%である。
【0107】
イムノアッセイは当業者に周知である。かかるアッセイを行なうための方法ならびに実用的な適用および手順は、関連する教科書に要約されている。関連する教科書の例は、Tijssen、P.、Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates、「Practice and theory of enzyme immunoassay」(1990)221-278、編R. H. Burdonおよびv. P. H. Knippenberg、Elsevier、Amsterdam)ならびに免疫学的検出方法を扱ったTijssen、「Methods in Enzymology」(1980)、編S. P. Colowick、N. O. CaplanおよびS. P.、Academic Press)種々の巻、特に第70、73、74、84、92および121巻である。
【0108】
本発明のさらなる態様において、キメラ融合タンパク質は、それぞれ、標的タンパク質の産生プロセス、ワクチンの作製または医薬の作製方法における融合パートナーとして使用され得る。
【0109】
新規キメラ融合タンパク質の治療的適用が意図される場合、好ましくは、本発明による組換え作製キメラ融合タンパク質および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物が製剤化される。
【0110】
以下の実施例、参考文献、配列表および図面は、本発明の理解を補助するために提供し、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示される。本発明の精神を逸脱することなく、示した手順において変形がなされ得ることを理解されたい。
【実施例】
【0111】
材料および試薬
塩化グアニジニウム(GdmCl、A-grade)は、NIGU (Waldkraiburg, Germany)から購入した。Complete(登録商標)無EDTAプロテアーゼインヒビター錠剤、イミダゾールおよびEDTAは、Roche Diagnostics GmbH (Mannheim、Germany)製であり、Merck (Darmstadt、Germany)のすべての他の化学薬品は分析等級であった。(S54G、P55N)-RNase T1は、Mticke、M.およびSchmid、F. X. (1994)J. Mol. Biol. 239、713-725に記載のようにして精製し、還元し、カルボキシメチル化した。限外濾過膜(YMlO、YM30)をAmicon (Danvers、MA、USA)から、マイクロ透析膜(VS/0.025μm)および限外濾過ユニット(biomax ultrafree濾過装置)はMillipore (Bedford、MA、USA)から購入した。粗製溶解物の濾過のための硝酸セルロースおよび酢酸セルロース膜(1.2μm/0.45μm/0.2μm)はSartorius (Goettingen、Germany)製であった。
【0112】
実施例1
大腸菌SlyDおよびヒトFKBP12 配列を含むキメラ融合タンパク質hFKBP12-IF1の作製
発現カセットのクローニング
hFKBP12およびSlyDの配列をSwissProtデータベースから検索した。hFKBP12およびその挿入バリアントをコードする合成遺伝子をMedigenomix (Martinsried、Germany)から購入し、pET24発現ベクター(Novagen、Madison、Wisconsin、USA)内にクローニングした。コドン使用頻度を大腸菌宿主細胞内での発現のために最適化した。SlyDの遺伝子を大腸菌株BL21(DE3)からPCRによって増幅し、制限消化し、pET24a発現ベクター内にライゲートした。融合タンパク質の発現カセットをJ. Mol. Biol. 345、1229-1241のScholz et al. (2005)によって記載された大腸菌SlyD*融合モジュールに記載のようにして設計した。
【0113】
タンパク質FKBP12-IF1をコードする合成遺伝子 (ヘキサ-ヒスチジンタグとともに配列番号10にも示す)
をMedigenomix(Martinsried、Germany)から購入し、pET24a 発現ベクター(Novagen、Madison、WI)内にクローニングした。コドン使用頻度を大腸菌宿主細胞における発現のために最適化した。QuikChange(Stratagene、La Jolla、CA)を用いて無システインバリアント(C22A)を作製した。翻訳後、細菌のN-メチオニル-アミノペプチダーゼによってN末端メチオニンが切断除去されると、成熟ポリペプチドは、実際にはグリシン1で始まる。
【0114】
FKBP12-IF1(C22A)-gp41融合構築物(配列番号11にも示す)を得るため、
【0115】
NdeI/BamHI隣接FKBP12-IF1-(GGGS)2GGおよびBamHI/XhoI隣接(GGGS)2GG-gp41(残基536〜681)をコードするDNA断片をPCRによって増幅し、NdeIおよびXhoIを用いてpET24a内に挿入した。FKBP12-IF1(C22A)をコードする合成遺伝子またはHIV-1単離物の精製RNAをPCR-(RT-PCR)-鋳型として用いた。点変異L555E、L566E、I573TおよびI580EをQuikChangeを用いてgp41カセット内に導入した。
【0116】
タンデムFKBP12-IF1(C22A)-FKBP12-IF1(C22A)-gp41融合構築物(配列番号7)
を、FKBP12-IF1(C22A)-gp41をBamHIで切断し、FKBP12-IF1(C22A)をコードする合成遺伝子からPCR-増幅したBamHI/BamHI隣接(GGGS)2GGG-F12IF1-(GGGS)2GGをコードするDNA断片を挿入することにより作製した。
QuikChange (Stratagene、La Jolla、USA)および標準的なPCR技術を用いて点変異、欠失および挿入バリアントまたは制限部位を作製した。すべての組換えhFKBP12バリアントは、Ni-NTA-補助精製およびリフォールディングを容易にするためのC末端ヘキサヒスチジンタグを含有した。
【0117】
hFKBP12バリアントの発現、精製およびリフォールディング
hFKBP12、SlyDおよびSlpAバリアントならびにタンパク質はすべて、実質的に同一のプロトコルを用いることにより精製した。特定のpET24a 発現プラスミドを有する大腸菌BL21(DE3)細胞をLB培地+カナマイシン(30μg/ml)中、37℃で1.5のOD60Oまで培養し、1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトシドを添加することにより細胞質での過剰発現を誘導した。誘導の3時間後、細胞を遠心分離(20分間 5000 gで)によって回収し、凍結乾燥させ、-20℃で保存した。細胞溶解のため、凍結乾燥させたペレットを冷却50mMリン酸ナトリウムpH8.0、7.0M GdmCl、5mMイミダゾール中に再懸濁し、懸濁液を氷上で2時間攪拌し、完全に細胞溶解した。遠心分離および濾過(硝酸セルロース膜、0.45μm/0.2μm)後、溶解物を、5.0mM TCEPを含む溶解バッファーで平衡化したNi-NTAカラム上に適用した。続く洗浄工程を、それぞれの標的タンパク質のために調整し、50mMリン酸ナトリウムpH8.0、7.0M GdmCl、5.0mM TCEP中5〜15mMイミダゾールの範囲とした。少なくとも10〜15容量の洗浄バッファーを適用した。次いで、GdmCl溶液を50mMリン酸ナトリウムpH7.8、100mM NaCl、10mM イミダゾール、5.0mM TCEPと置き換え、マトリックス結合タンパク質のコンホメーションリフォールディングを誘導した。同時精製するプロテアーゼの再活性化を回避するため、リフォールディングバッファー中に、プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete(登録商標)無EDTA、Roche)を含んだ。合計15〜20カラム容量のリフォールディングバッファーを一晩の反応に適用した。次いで、TCEPおよびComplete(登録商標)無EDTAインヒビターカクテルの両方を、3〜5カラム容量の50mMリン酸ナトリウムpH7.8、100mM NaCl、10mM イミダゾールでの洗浄によって除去した。天然タンパク質を、同じバッファー中の250mMイミダゾールによって溶出した。タンパク質含有画分をTricine-SDS-PAGEによって純度について評価し、プールした。最後に、タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex HiLoad、Amersham Pharmacia)に供し、タンパク質含有画分をプールし、Amicon 細胞(YM10)内で濃縮した。
【0118】
精製およびリフォールディングを合わせたプロトコルの後、1gの大腸菌湿潤細胞から20mgより多くの標的タンパク質が得られ得た。本発明者らは、システイン22をアラニンに変更することにより種々のhFKBP12バリアントの全体的な可溶性をさらに増加させた。この単一のシステインの置換により、hFKBP12が二重結合性ジスルフィド付加物を形成する傾向が排除された。これは、タンパク質のフォールディングにもそのプロリルイソメラーゼ活性にも影響しなかった。システイン22をアラニンに置換することはまた、キメラタンパク質FKBP12-IF1の場合に有利であることがわかった。SDS-PAGE によって示されたhFKBP12-IF1(C22A)の精製を図1に示す。
【0119】
実施例2
分光測定
タンパク質濃度の測定は、Uvikon XL二重ビーム分光測光器を用いて行なった。Pace (1995)、Protein Sci. 4、2411-2423に記載の手順を用いることによりモル吸光率(ε280)を測定する。
【0120】
近UV CDスペクトルをサーモスタット付きセルホルダーを有するJasco-720分光偏光計で記録し、平均残基楕円率に変換した。バッファーは、50mMリン酸ナトリウムpH7.5、100mM NaCl、1mM EDTAであった。パス長は0.5cmまたは1.0cmであり、タンパク質濃度は20〜500μMであった。バンド幅は1nmであり、スキャン速度は、0.5nmの解像度で20nm/分であった。応答は2秒であった。信号雑音比を改善するため、スペクトルを9回測定し、平均した。
【0121】
近UV CDによる天然様フォールディングの評価
精製およびリフォールディングを合わせたプロトコルの後、本発明によるキメラ融合タンパク質がフォールディングされたコンホメーションを採用するかどうかを調べるため、本発明者らは、近UV領域におけるCDスペクトルを測定した。近UV-CDは、タンパク質中の芳香族残基の非対称環境に関して報告し、したがって、規則正しい3次構造に関する感受性試験である。hFKBP12フラップセグメントへのSlyD IFループなどのドメインのグラフティングは、hFKBP12骨格タンパク質の全体構造をひどく損ない得る。天然ヒトFKBP12は、近UV領域に典型的なCD特性を有する(図2)。したがって、IF-ループ-挿入による構造的ねじれまたは破壊は、近UV CDスペクトルで可視的であるべきである。図2は、それぞれ、hFKBP12およびhFKBP12-IF1のスペクトルの重複を示す。驚いたことに、hFKBP12のフラップ領域内のIFドメインが挿入しても、骨格タンパク質の全体構造は本質的にインタクトなままである。ループの挿入に伴って変換された楕円率が実質的に有意に減少しても、スペクトルの特性は類似する。球形の未フォールディングにより、任意の近UV CDシグナルが排除され得るため、この結果は、キメラ構築物hFKBP12-IF1の天然様フォールディングは、本質的に保持されたこと強く示す。
【0122】
同様に、本発明者らは、SlyD*(SlyD 1〜165)およびその欠失バリアントSlyD*ΔIF-ループ(アミノ酸残基70〜129を欠くSlyD*)の近UV CDスペクトルを記録した。結果を図3に示す。近UV CDスペクトルによって判断されるように、大きな「フラップ内挿入」(IF)ドメインが除去された場合、SlyD*の全体構造はインタクトなままである。平均残基変換楕円率は、IFループを除去すると、わずかに増加すらする。したがって、そのIFドメインを欠くSlyDは、なお天然様フォールディングタンパク質であるという有力な証拠である。
【0123】
実施例3
フォールディング実験
フォールディング研究では、還元されカルボキシメチル化されたRNase T1 (RCM-T1)を使用した。RCM-T1は、該タンパク質を0.1M Tris-HCl pH8.0中、15℃で少なくとも1時間インキュベートすることにより未フォールディングにした。同じバッファー中2.0M NaClおよび所望の濃度のSlyD、FKBP12バリアントおよびRCM-T1の最終条件までの未フォールディングタンパク質の40倍希釈によって、15℃でのリフォールディングを開始した。フォールディング反応の後、268nm(1.5nmバンド幅)での励起後、320nm(10nmバンド幅)におけるタンパク質蛍光(すなわち、トリプトファン蛍光)が増大した。2.0M NaClでは、RCM-T1の低速のフォールディングは、単一指数関数的(monoexponential)プロセスであり、その速度定数は、プログラムGraFit 3.0(Erithacus Software、Staines、UK)を用いて決定した。
【0124】
キメラ融合タンパク質のフォールディング活性
本発明者らは、プロリン制限タンパク質フォールディング反応の触媒作用における本発明によるキメラ融合タンパク質の効率を調べた。還元されカルボキシメチル化されたRNase T1(RCM-T1)を、モデル基質として使用した。そのリフォールディング反応は、トリプトファン蛍光の強力な増大で達成され、Schmid、F. X. (1991)Curr. Opin. Struct. Biol. 1、36-41、Mayr et al. (1996)Biochemistry 35、5550-5561ならびにMucke、M.およびSchmid、F. X. (1994)Biochemistry 33、14608-14619に記載のようにしてNaCl濃度を増加させることにより誘導され得る。
【0125】
大腸菌由来のSlyD*(1〜165)は、RCM-T1のリフォールディングを非常によく触媒する。2nMもの低いSlyD*の存在下で、RCM-T1のリフォールディングは既に2倍加速される(図4A)。フォールディングの見かけ上の一次速度定数kappは、SlyD*濃度とともに線形で増大する(図4B)。このプロットの傾きから、0.68 x 106M-1s-1の特異性定数kcat/KMが測定された。これは、異常に高い値であり、これは、これまでに知られている最も効率的なフォールディングヘルパーであるトリガー因子の触媒効率にほぼ達する(Stoller et al (1995)EMBO J. 14、4939-4948、Scholz et al.(1997)EMBO J. 16、54-58およびScholz et al. (1998)J. Mol. Biol. 277、723-732を参照のこと)。
【0126】
対照的に、IFドメインを欠くSlyD変異型は、RCM-T1リフォールディングの非常に不充分な触媒である。SlyDΔIFは、SlyDのFKBP-ドメインを表す。その特異性定数は、0.0005 x 106M-1s-1あたりの範囲であり、したがって、SlyD*の0.07%にしかならない(図5A/B)。これは、未フォールディングタンパク質基質の結合に対する「フラップ内挿入」ドメインの重要な役割を強く示す。近UV CDスペクトルは、欠失バリアントの天然様の全体的なフォールディングを示すため(図3)、フラップ内挿入ドメインは、おそらく、ポリペプチド結合ドメイン、すなわち、SlyDのシャペロンドメインを示す。
【0127】
推定IFドメインの欠失により、SlyD*のフォールディング活性が実質的に排除される。IFドメインを欠くSlyD変異型は、SlyDのFKBPまたはFKBP様ドメインを表す。対照的に、フラップ領域内のまさにこのIFエレメントの挿入によって、hFKBP12のフォールディング活性がどのように影響されるのだろうか?公表されたデータ(Scholz et al. (1997)EMBO J. 16、54-58)と一致して、hFKBP12によるRCM-T1リフォールディングの触媒作用は、むしろ中程度である(図6A)。リフォールディングの見かけ上の一次速度定数の分析により、0.014 x 106M-1S-1の特異性定数がもたらされた(図6B)。対照的に、本発明によるIF-ループ挿入バリアントFKBP12-IF1は、RCM-T1リフォールディングを極めてよく触媒する(図7A)。RCM-T1のフォールディング速度を倍増させるのに1nM未満のFKBP12-IF1で充分である。特異性定数は、2.5 x 106M-1S-1より大きい(図7Bおよび表1)。この卓越した値は、前記トリガー因子の触媒効率を超えることすらあり、1.2 x 106M-1S-1になる(Stoller et al. (1995)EMBO J. 14、4939-4984; Zarnt et al. (1997)J. Mol. Biol. 271、827-837; Scholz et al.(1997)EMBO J. 16、54-58)。したがって、本発明によるキメラ融合タンパク質を構築することにより、本発明者らは、中程度の非ヒトプロリルイソメラーゼおよび不充分なヒトシャペロンを、格別に良好なプロリルイソメラーゼ特性およびシャペロン特性を有する卓越したフォールディングヘルパーに変換した。
【0128】
本発明によれば、非ヒトシャペロンのポリペプチド結合ドメインおよびヒトPPIase ドメインを組み合わせる原理は、他の実施例に拡張され得る。FKBP12-IF1の構築パターンと同様にして、本発明者らは、SlpAの推定IFループドメイン
をhFKBP12のフォールディング骨格上にグラフトした。SlpA (頭文字は、SlyD様プロテインA(SlyD-like protein A)を表す)は、SlyDの近縁である。SlpAの関する情報はあまりないが、SlyDとのその相同性により、大腸菌細胞質内でのPPIaseシャペロンとしての役割を果たすと推測される。本発明者らは、大腸菌からヘキサ-ヒスチジンタグ化SlpAバリアントを精製し、特徴付けした。しかしながら、この推定PPIaseは、RCM-T1リフォールディングアッセイにおいて非常に不充分な活性を示した(表1)。hFKBP12およびSlpA由来の要素を含む該キメラをhFKBP12-IF4と命名した。これは、hFKBP12由来のモジュールG1-G83、SlpA由来のV72-T132、およびhFKBP12由来のL97-E107を含む(配列情報については、配列番号13を参照のこと)。ヘキサ-ヒスチジンタグ化タンパク質の発現、均質に精製することおよびリフォールディングは、本質的に、FKBP12-IF1に記載のようにして行なった。近UV CDによる評価によって、設計されたタンパク質のコンパクトなフォールディングを明白に示すスペクトルがもたらされた(スペクトルは示さず)。
【0129】
RCM-T1リフォールディングアッセイにおいて評価した場合、hFKBP12-IF4は、驚くほど高いフォールディング活性を示した(図10A)。その特異性定数(kcat/KM)は800,000M-1s-1であり(表1参照)、非常に強力なフォールディングヘルパーであるSlyDの触媒効率と実質的に等しい(Scholz et al.、Biochemistry 2006、45、20-33)。この場合も、推定ポリペプチド結合ドメイン(SlpA由来)と、不活発なプロリルイソメラーゼ(hFKBP12)との組合せにより、高い酵素活性およびシャペロン活性の両方を有する卓越したフォールディングヘルパーがもたらされる。本発明者らは、hFKBP12と、多様なSlyDホモログ由来のIFループドメインとの組合せによって、格別なフォールディング活性を有するヒト化フォールディングヘルパーが得られ得ると結論付ける。
【0130】
非ヒトシャペロンのポリペプチド結合ドメインと、ヒトPPIase ドメインを組み合わせる原理のさらなる例は、hFKBP12-IF5と呼ばれるキメラ融合タンパク質である。FKBP12-IF1およびFKBP12-IF4の構築パターンに従って、本発明者らは、Thermococcus FKBP18の推定IFループドメインをhFKBP12のフォールディング骨格上にグラフトした。Thermococcus FKBP18は、プロリルイソメラーゼ活性部位付近のフラップ領域内に推定IFドメインを有するSlyDの熱安定性ホモログである。
【0131】
得られたキメラをhFKBP12-IF5と命名した。これは、hFKBP12由来のモジュール G1-G83、Thermococcus FKBP18由来のM84-T140、およびhFKBP12由来のL97-E107を含む(配列情報については、Thermococcus FKBP18は配列番号14を、およびhFKBP12-IF5は配列番号15参照のこと)。ヘキサ-ヒスチジンタグ化タンパク質の発現、均質に精製することおよびリフォールディングは、本質的に、FKBP12-IFlに記載のとおりにして行なった。
【0132】
RCM-T1リフォールディングアッセイにおいて評価した場合、hFKBP12-IF5は、驚くほど高いフォールディング活性を示した(図11)。その特異性定数 (kcat/KM)は660,000M-1s-1であり、細菌の文献データによると非常に強力なフォールディングヘルパーであるSlyDの触媒効率と実質的に等しい(Scholz et al.、Biochemistry 2006、45、20-33)。この場合も、推定ポリペプチド結合ドメイン(熱安定性TcFKBP18由来)と、不活発なプロリルイソメラーゼ(hFKBP12)との組合せにより、高い酵素活性およびシャペロン活性の両方を有する卓越したフォールディングヘルパーがもたらされる。本発明者らの研究は、hFKBP12と、多様なSlyDホモログ由来のIFループドメインとの組合せによって、格別なフォールディング活性を有するヒト化フォールディングヘルパーが得られ得ることを明白に示す。
【0133】
まさに同じ原理が、多くの原核生物および真核生物プロリルイソメラーゼに生じるFKBP様ドメインにもあてはまる。例えば、FkpAおよびトリガー因子は、FKBP様ドメインを含む2つの大腸菌タンパク質である。以前に、これらのFKBP様ドメインは、分子の残りの部分から分離された場合、非常に穏やかなフォールディング活性を示すことが示された(Scholz et al.、EMBO J. (1997)16 (1)54-58; Saul et al.、J. Mol. Biol (2004)335、595-608)。これは、シャペロン活性を全く欠く穏やかなプロリルイソメラーゼであるヒトFKBP12と完全に一致する。任意のSlyD IFドメイン(ポリペプチド結合セグメントとも呼ばれる)を、フォールディング骨格としてのFKBP様ドメイン上にグラフティングすることにより、優れたフォールディングヘルパーが得られ得る。これらのキメラもまた、組換えタンパク質バイオテクノロジーにおけるフォールディングヘルパーとして、例えば融合タンパク質、リフォールディングバッファーの添加剤などとして使用され得る。
【0134】
ドメイングラフティングの原理もまた、SlyDそのものに当てはまる。IFドメインを欠くSlyD 欠失バリアント(SlyDΔIF)は、真のFKBPドメインを表し、これは、他のFKBPシャペロン由来のIFドメインと合わせられ、卓越した触媒効率を有するフォールディングヘルパーが得られ得る。本発明は、したがって、得られるキメラフォールディングヘルパーを構成する天然に存在する野生型分子の触媒効率を超える触媒効率を有するフォールディングヘルパーを作製するための、SlyD、特にIFドメインを欠くSlyD バリアントの使用もまた包含する。
【0135】
表1は、RCM-T1 アッセイにおいて測定されたすべてのタンパク質について得られた結果の要約である。
【0136】
実施例4
FKBP12-IF1/HIVgp41融合タンパク質の免疫学的反応性
この実施例は、本発明によるキメラ融合タンパク質FKBP12-IF1への標的タンパク質としてのHIV タンパク質、すなわち、エンベロープ タンパク質gp41の付加を示す。タンデムFKBP12-IF1-gp41 融合モジュールをSlyDおよびhFKBP12 タンパク質バリアントについて記載のようにして精製し、リフォールディングさせた。これを用いて、HIV-1陽性血清中に大量に生じる抗gp41抗体を検出した。二重抗原サンドイッチ形式を用い、自動Elecsys(登録商標)2010分析装置(Roche Diagnostics GmbH、Germany)において、免疫学的反応性を刺激した。
【0137】
Elecsys(登録商標)イムノアッセイにおけるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。ビオチン-コンジュゲート(すなわち、捕捉抗原)を、ストレプトアビジンコート磁気ビーズの表面上に固定化するが、シグナル伝達抗原は、発光部分として複合体化ルテニウムカチオンを有する。抗gp41抗体の存在下、色原体ルテニウム複合体を固相に結合し、白金電極で励起後、620nmで発光させる。シグナル出力は自由裁量光単位である。
【0138】
そのElecsys(登録商標)抗原としての使用のため、研究中の可溶性の gp41 融合タンパク質を濃縮し、Scholz et al. (2005)J. Mol. Biol. 345、1229-1241に記載のようにして、N-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化ビオチンルテニウム部分で修飾した。イムノアッセイ測定におけるgp41バリアントの濃度は約500ng/mlであった。少なくとも5つの陰性血清を対照として使用した。偽陽性結果をさらに最小限にするため、抗干渉物質として、重合した未標識大腸菌SlyD*を試料に添加した。
【0139】
本発明によるキメラ融合FKBP12-IF1は、凝集傾向タンパク質の融合パートナーとして充分適することがわかった。野生型hFKBP12をgp41外部ドメイン断片に融合した場合、得られる融合タンパク質は、マトリックスカップリングリフォールディングおよびイミダゾール溶出後、定量的に凝集した。明らかに、hFKBP12は、gp41外部ドメイン断片などの極めて疎水性の標的に対して可溶性を付与することができない。対照的に、本発明者らは、FKBP12-IF1およびHIV-1 gp41外部ドメイン断片536〜681を含む本発明によるキメラ融合タンパク質は(概略図8)、完璧に可溶性であり、UV分光分析によって判断すると、凝集する傾向がないことを見い出した(図9)。自動Elecsys(登録商標)解析装置において評価した場合、該タンパク質は、HIV-1血清学における診断適用に充分適することがわかった(データ示さず)。これは、本発明によるキメラ融合タンパク質の傑出した特性をさらに強調する。
【0140】
参考文献リスト
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1はSDS-PAGEで示されるFKBP12-IF1(SlyD挿入を含む)の精製である。レーン1、Invitrogen製の未染色タンパク質標準マーク12;レーン3、過剰産生性大腸菌 BL21/DE 3株のカオトロピック粗溶解物; レーン5、IMACフロースルー;レーン7〜11、イミダゾール溶出画分。FKBP12-IF1は、実施例部分に記載される単純なワンステッププロトコルにおいて高収率で精製およびリフォールディングされ得る。
【図2】図2は本発明による野生型hFKBP12(灰色線)およびhFKBP12-IF1(黒線)のUV近傍CDスペクトルである。バッファは 50 mM リン酸ナトリウムpH 7.5, 100 mM NaCl, 1 mM EDTAであり、タンパク質濃度は100μMであった。250〜310nmのCDシグナルは芳香族アミノ酸残基の非対称的環境について報告する。hFKBP12の平均残基重量楕円率がSlyD IFループの挿入の際に減少する。それにもかかわらず、減少した楕円率はなお、コンパクトでネイティブ様コンフォメーションのFKBP12-IF1キメラを指す(黒線)。
【図3】図3はフラップドメインの挿入ありなしでのSlyD(1〜165, SlyD*)のUV近傍CDスペクトルである。バッファは50 mM リン酸ナトリウム pH 7.5, 100 mM NaCl, 1 mMEDTAであり、タンパク質濃度は200μM SlyD*および250μM SlyD* (ΔIFループ)であった。SlyD*の4つのチロシン残基は278nmでの40 deg cm2dmol-1 の平均残基重量楕円率を生じる(灰色線)。フラップドメインの挿入が除去される場合、UV近傍CDシグナルの形状は本質的に保持されるが、強度は増大する(黒線)。これは、SlyD*の構造完全性はIFループドメインの欠損後に主に保持されることを強調する。すなわち、IFループのドメイン特徴を強調する。
【図4】図4は15℃の大腸菌SlyD*(1〜165)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、3、5、8、10、15および20 nMの大腸菌SlyD*の存在で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がSlyD*濃度に依存する。SlyD* の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がSIyD* 濃度の関数として示される。0.68 x 106M-ls-l の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KM で得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図5】図5は15℃のSlyD 欠損バリアントSlyD (ΔIFループ)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、1.0、2.0および5.0 μM SlyD (ΔIFループ)の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がSlyD (ΔIFループ)濃度に依存する。SlyD(ΔIFループ)の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がSlyD(ΔIFループ)濃度の関数として示される。約500 M-1s -1の値は、(B)の直線の傾きから得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図6】図6は15℃のヒトプロリルイソメラーゼFKBP12の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が、0、0.5、0.8、1.0、1.5および2.0 μM hFKBP12の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディングの速度がhFKBP12濃度に依存する。hFKBPl2の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBP12濃度の関数として示される。0.014 x 106 M-1s -1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KMで得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図7】図7は15℃の本発明によるキメラタンパク質hFKBP12-IF1の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、3、5、8、10および20 nM hFKBP12-IF1の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がhFKBP12-IF1濃度に依存する。hFKBP12-IF1の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBP12-IF1濃度の関数として示される。2.5 x 106 M-1s -1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KMで得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図8】図8は融合タンパク質SlyD*-SlyD*-gp41およびhFKBP12-IF1-hFKBP12- IF1-gp41の概略図である。融合モジュールおよびg41の両方はボックスで強調される。シャペロンモジュールSlyD*およびhFKBP12-IF1が、グリシンおよびセリン残基が豊富でフレキシブルな23アミノ酸リンカーによってそれぞれの標的分子と結合される。ヘキサヒスチジンタグがスペサーセグメントを介して標的分子のC末端に融合され、接近性を改善し、精製およびリフォールディングの両方を容易にする。リンカーは、5つの反復GGGSエレメント(G:グリシン、S: セリン)から構成され、スペーサーは、SlyDの構造化されていないC末端尾部に天然で生じる4つのHDリピート(H: ヒスチジン、D:アスパラギン酸)を含む。
【図9】図9は本発明によるキメラ融合タンパク質hFKBP12-IF1-gp41のUVスペクトルである。マトリックス結合リフォールディングおよびイミダゾール溶出の後、タンパク質は水性バッファに溶解する。ランベルト−ベール範囲の線形性で吸光度を保つために、タンパク質ストック溶液が室温の50 mM リン酸ナトリウムpH 7.5, 100 mM NaCl, 1.5 mM EDTA中の5μMに20倍希釈された。タンパク質凝集物または高分子会合物は光浮遊粒子であり、310〜350nmの波長領域の傾きはベースラインとなる。スペクトルの形状は任意の凝集体の非存在を証明し、hFKBP12-IF1-gp41の溶解性を強調する。
【図10】図10は15℃の本発明によるキメラタンパク質hFKBP12-IF4 (SlpA挿入を有する)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、3、6、10、15および20 nM hFKBP12-IF4の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がhFKBP12-IF4濃度に依存する。hFKBP12-IF4の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBPl2-IF4濃度の関数として示される。850000 M -1s-1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KM で得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図11】図11は15℃の本発明によるキメラタンパク質hFKBP12-IF5 (Thermococcus FKBP18挿入を有する)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、10、25、30、35および40 nM hFKBP12-IF5の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がhFKBP12-IF5濃度に依存する。hFKBP12-IF5の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBP12-IF5濃度の関数として示される。660000M -1s-1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KMで得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-Tlのリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然対応物と比べて優れたシャペロン活性およびフォールディング活性を有するキメラ融合タンパク質のクローニング、発現および使用に関する。本発明は、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列およびFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするヌクレオチド配列を含む組み換えDNA分子によってコードされるキメラ融合タンパク質に関する。特に、本発明は、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列およびヒトFKBP型ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードするヌクレオチド配列を含む組み換えDNA分子によってコードされるキメラ融合タンパク質、これらのキメラ融合タンパク質を生成する方法、ならびに他のタンパク質の生成におけるおよび実験動物の免疫化のためのおよびワクチンまたは医薬の生成方法におけるフォールディングヘルパーとしての使用、組み換えタンパク質技術における融合モジュールとしてのおよび免疫アッセイを行うためのフォールディングヘルパーとしての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
現在、分子シャペロンは、広範囲の生物技術適用において重要な役割を果たす(Mogk et al. 2002 Chembiochem 3, 807-)。シャペロンおよび酵素特性を有する、多くのフォールディングヘルパーがある。これらの理由で、これらはタンパク質フォールディングの様々な実用適用に有用である。
【0003】
古典的な「フォールディングヘルパー」として公知のシャペロンは、他のタンパク質のフォールディングおよび構造完全性の維持を補助するポリペプチドである。これらは、インビボおよびインビトロの両方でポリペプチドのフォールディングを促進する能力を有する。一般的に、フォールディングヘルパーは、フォールディング触媒およびシャペロンに細分される。フォールディング触媒は、触媒機能によってタンパク質フォールディングの律速段階を加速する。触媒の例は、以下にさらに記載される。シャペロンは、変性ポリペプチド、部分的変性ポリペプチドまたは疎水性表面のポリペプチドに結合することが公知であり、タンパク質を再生または溶液中に保つように補助する。従って、フォールディング触媒とは異なり、シャペロンは単なる結合機能を及ぼす(Buchner, J., Faseb J 10 (1996)10-19)。
【0004】
シャペロンは、タンパク質成熟、フォールディング、トランスロケーションおよび分解に関与するユビキタスなストレス誘導性タンパク質である(Gething, M. J.およびSambrook, J., Nature 355 (1992)33-45)。正常な増殖条件でも存在するが、これらはストレス条件下で多量に誘導される。これは、これらの生理学的機能がストレス条件を処理するという概念をさらに支持する。
【0005】
現在まで、数種類の異なるファミリーのシャペロンが公知である。 これらすべてのシャペロンは、フォールディングされていないタンパク質または部分的にフォールディングされていないタンパク質に結合する能力を特徴とし、タンパク質の正しいフォールディングまたは変性または凝集タンパク質の除去へとつながる生理学的機能を有する。
【0006】
シャペロンの十分に特徴付けられた例は、相対分子量によって特定されるいわゆる熱ショックタンパク質ファミリーのメンバー; 例えば、Buchner, J., Faseb J 10 (1996)10-19ならびにBeissinger, M. および Buchner, J., Biol. Chem. 379 (1998)245-59に記載されるhsplOO、hsp90、hsp70、およびhsp60、ならびにいわゆるshsp(低分子熱-ショックタンパク質)である。
【0007】
シャペロンと異なり、フォールディング触媒は、規定された律速段階を加速することでフォールディングを補助し、それにより凝集傾向のフォールディング中間体の濃度を低減する。触媒の1つの種類である、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(あるいはチオール-ジスルフィド-オキシド-レダクターゼとして特定される)は、分泌タンパク質中のジスルフィド結合の形成または再配置を触媒する。グラム陰性菌におけるペリプラズムの分泌タンパク質の酸化性フォールディングは、DsbA、DsbB、DsbC、およびDsbDと特定されるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼのカスケードによって調節される(Bardwell, J. C., Mol Microbiol 14(1994)199-205 および Missiakas, D., et al., Embo J 14 (1995)3415-24)。
【0008】
ペプチジルプロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPI)と呼ばれる別の重要な種類のフォールディング触媒は、CypA、PpiD(Dartigalongue, C. および Raina, S., Embo J 17 (1998)3968-80, FkpA (Danese, P. N., et al., Genes Dev 9(1995)387-98)、トリガー因子(Crooke, E. および Wickner, W., Proc Natl Acad Sci U S A 84 (1987)5216-20 および Stoller, G., et al., Embo J 14 (1995)4939-48)、ならびにSlyD(Hottenrott, S., et al., J Biol Chem 272 (1997)15697-701)等の異なるメンバーを含む。
【0009】
配列類似性およびタンパク質トポロジーのために、プロリルイソメラーゼは、シクロフィリン、FK506結合タンパク質(FKBP)およびパルブリンの3つの異なるファミリーに分けられる。シクロフィリンは、免疫抑制剤シクロスポリンAに結合し、かつこれによって阻害される。パルブリンは、プロリルイソメラーゼのファミリーであり、シクロスポリンAによってもFK506によっても阻害されない。FKBPは、FK506およびラパマイシンに結合し、かつこれらによって阻害される(略語FKBPは「FK506結合タンパク質」を表す; FK506は免疫抑制薬物として使用されるマクロライドである)。高解像度で決定されるFKBPの最初のX線構造はヒトFKBP12のものであった。これは、短いα-へリックスの周りを右手巻きで覆われる5回のアンチパラレルβ-シート鎖である。5回のβ-シート鎖フレームワークは残基2〜8、21〜30、35〜38と46〜49、71〜76および97〜106を含む(van Duyne et al., Science (1991)252, 839-842)。後の研究によって、FKBP、ならびにシクロフィリンおよびパルブリンは、広範囲の原核生物および真核生物に見出される高度に保存される酵素のファミリーを形成することが示された (概説についてJohn E. Kay, Biochem. J. (1996)314, 361-385を参照)。例えば、10種のプロリルイソメラーゼが、これまで大腸菌で同定されている(2種のパルブリン、3種のシクロフィリンおよび5種のFKBP)。
【0010】
通常、FKBPは、結合基準によって定義される、すなわち、これらはナノモル範囲の高親和性でFK506を認識および結合する。しかし、FK506によるプロリルイソメラーゼ阻害をもはや受けないFKBP様ドメインがある。これらのFKBP様ドメインは、FKBP12と有意な配列類似性を共有するが、FK506結合を媒介するいくつかのアミノ酸残基が変異され、親和性がマイクロモル範囲にシフトする。例えば、SlyDおよびトリガー因子(大腸菌細胞質に由来する2種の細胞質PPIase)は、FKBP様タンパク質として考えられ得る。両方のプロリルイソメラーゼはFKBP12と有意な配列ホモロジーを共有するドメインを有するが、FK506への結合親和性はかなり低く、マイクロモル範囲である(Scholz et al., Biochemistry (2006)45, 20-33)。しかし、配列相同性およびタンパク質トポロジーの用語において、SlyDおよびトリガー因子の両方は、疑いもなくFKBPファミリーのメンバーである(Wuelfing et al., J. Biol. Chem (1994)269(4)2895-2901; Callebaut & Mornon, FEBS Lett. (1995)374(2)211-215)。
【0011】
FKBPドメインおよびFKBP様ドメインは、複雑なトポロジーを有するより大きな分子の部分を形成し得る。哺乳動物細胞において、FKBP12、FKBP12AおよびFKBP13は、塩基性FKBPドメインだけを含むが、FKBP25およびFKBP52はより大きな分子の部分として1つ以上のFKBPドメインを有する(概説について John E. Kay, Biochem. J. (1996)314, 361-385を参照)。
【0012】
モジュール式に構築されたFKBPはまた、原核生物細胞に見出される:例えば、前記トリガー因子は、異なる機能を有する十分に分離された3つのドメインから構成される。N-ドメインは、大腸菌リボソームの50Sサブユニットへの結合を媒介する(Hesterkamp et al., J Biol Chem. (1997)Aug 29;272(35):21865-71)。M(中央-)ドメインは、プロリルイソメラーゼ活性部位を有し(Stoller et al., FEBS Lett. 1996 Apr 15;384(2):117-22)、C-ドメインは、拡張ポリペプチド基質の結合を媒介するポリペプチド結合部位を包含する(Merz et al., J Biol Chem. 2006 Oct 20; 281 (42)31963-31971)。モジュール式に構築されたペプチジル-プロリルイソメラーゼの別の例は、ペリプラズムのFkpAであり、N-末端シャペロンおよび二量化ドメインおよびC-末端FKBP-ドメインから構成される(Saul et al., J. Mol. Biol(2004)335, 595-608)。
【0013】
いくつかのフォールディングヘルパーは、触媒活性ドメインおよびシャペロン(またはポリペプチド結合)ドメインの両方を含む。例えば、プロリル-イソメラーゼトリガー因子(Scholz et al. 1997, Embo J. 16, 54-58; Zarnt et al. 1997, JMB 271, 827-837)、FkpA (Saul et al. 2004, JMB 335, 595-608)およびSlyDはこれらのフォールディングヘルパーに属する。最近、FkpAおよびSlyDは、組み換えタンパク質生成のための融合モジュールとして顕著に適切であることが示され得た。両方のシャペロンは相手タンパク質の発現速度を増大し、正しいリフォールディングを支持し、レトロウイルス表面タンパク質のような凝集傾向があるタンパク質の溶解性を増大する(Scholz et al. 2005, JMB 345,1229-1241 および WO 03/000877)。
【0014】
FkpA、SlyDおよびSlpAは、FK506結合タンパク質(FKBP)のファミリーに属する細菌シャペロンである。上記のように、FK506は、免疫抑制薬物として使用されるマクロライドである。FK506のための細胞レセプターはなお、世界規模の研究グループの焦点である。1990年代の初めに、ヒトFKBPの3次元構造、すなわち、FKBP12が解明され得た (van Duyne et al. 1991, Science 252, 839-842)。FkpA、SlyDおよびSlpAとは対照的に、ヒトFKPB12はいかなるシャペロン活性をも有さず、弱いプロリルイソメラーゼ活性を有するだけである。
【0015】
多くの診断適用において、組み換え生成タンパク質が、例えば抗原として使用される。これらの抗原は、試料中またはアッセイ混合物中に存在する特定の結合パートナーによって認識される必要がある、抗原部分または標的ポリペプチドを構成する部分を含む融合タンパク質として生成され得る。特定抗原のクローニング、発現、フォールディング、溶解または精製を容易にするために、組み換え生成された融合タンパク質の他の部分は、抗原部分に融合されるポリペプチド部分である。組み換え生成融合タンパク質の合成は先行技術で十分に記載されている。標的ポリペプチドの発現、フォールディング、精製および溶解のための補助分子として機能する融合タンパク質のシャペロン部分としてのシャペロンを使用することは全く一般的である。例えば、米国特許第6,207,420号は、ヘテロタンパク質の発現用融合タンパク質系を開示する、即ち、標的ポリペプチド部分および融合ペプチド部分のアミノ酸配列は異なる生物に由来する。WO 03/000878は、レトロウイルス表面糖タンパク質の発現のためのツールとしてFKBPシャペロンの使用を開示する。
【0016】
融合タンパク質の発現、精製、フォールディングおよび可溶化のための一般方法、特にフォールディングヘルパーが使用される方法は、確実に働くようであるが、解決されるべきいくつかの課題がなお存在する。例えば、非ヒトアミノ酸配列を含む融合タンパク質がヒト診断試験で結合パートナーとして使用されるときはいつでも、これらの非ヒトタンパク質を使用することによる干渉の問題がなおある。ヒト血液試料で豊富に生じる抗体は、アッセイ試薬中に存在する細菌タンパク質と反応することが全くしばしばある。かかる干渉は、高いバッググラウンドノイズとなり得、間違った試験結果をも生じ得る。別の一般的課題は、それぞれの相手タンパク質に対する融合パートナーの親和性を適合または最適化する点にある。標的部分のための任意の融合モジュールの親和性が十分にバランス化されなければならない。親和性があまりにも高い場合、融合タンパク質は完全に溶解性であるが、融合モジュールと相手タンパク質との間の複合体は、閉じたコンフォメーションのままであり、従って免疫学的アッセイで不活性である。親和性があまりにも低い場合、相手タンパク質は免疫アッセイでアクセス可能であり、活性であるが、凝集に対して十分に保護されない。
【0017】
従って、本発明の目的は、広範囲の生物技術、および特に単離されたヒト試料中に存在する分子および物質と干渉を生じないかほとんど生じない診断適用および医薬適用で、使用され得るシャペロン様タンパク質を生成するために適切な発現系を提供することであった。先行技術は効率的なフォールディングヘルパー、すなわち、主にヒトアミノ酸配列からなる高い触媒活性およびシャペロン活性を発揮するヘルパーを開示していない。
【0018】
ヒトおよび細菌シャペロンのいくつかのタンパク質配列アライメントが存在するが (Wuelfing et al 1994, JBC 269, 2895-2901; Hottenrott et al. 1997, JBC 272, 15697-15701; Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160)、二重機能、即ち触媒およびシャペロン様機能を有する効率的なヒト化フォールディングヘルパーがいかに生成され得るかを示していない。
【0019】
(発明の要約)
驚くべきことに、我々は、FK506結合タンパク質(FKBP)またはFKBP様ドメイン(FK506結合タンパク質様ドメイン)に由来する配列に非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを融合することによって、優れたフォールディングヘルパー活性を有する分子が生成され得ることを示すことができた。
【0020】
特に、FKBP型のヒトペプチジル−プロリル−シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)に由来する配列に非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを融合することによって、 我々は、野生型フォールディングヘルパーのフォールディングヘルパー活性よりも優れたフォールディングヘルパー活性を有するヒト化PPIaseシャペロン分子を生成し得る。これらが診断試験または医薬適用で使用される場合に干渉を生じないかまたはわずかに干渉を生じ、かつシャペロン特性がそれぞれのタンパク質のために仕立てられ得るので、これらのキメラヒト化フォールディングヘルパーは、広範囲の生物技術適用のためのネイティブ様フォールドタンパク質試薬を生成するための極端に見込みのあるツールを提示する。
【0021】
かかるキメラ融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子を設計する好ましい方法、ならびに発現ベクターの部分、かかる発現ベクターを含む宿主細胞、およびキメラ融合タンパク質の生成におけるこれらの使用も開示される。
【0022】
特に触媒効率に関して、驚くべき、有利な特性を示す組み換え生成キメラ融合タンパク質自体も本発明の一部である。
【0023】
さらなる態様において、標的タンパク質のためのフォールディングヘルパーとして、標的タンパク質の生成プロセスにおけるフォールディングヘルパーとして、免疫アッセイ混合物への添加物として、ワクチンの生成のプロセスにおける、実験動物の免疫化のための、および医薬を生成するプロセスにおける組み換え生成融合タンパク質の使用が開示される。
【0024】
さらに、組み換え生成キメラ融合タンパク質および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物が開示される。
【0025】
(簡単な配列表の説明)
添付の配列表は以下の配列番号を含む:
【0026】
配列番号1は、Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160による、SwissProt データベースのID P0A9K9によってアクセス可能である大腸菌SlyDアミノ酸配列を表す。
【0027】
配列番号2は、SwissProtデータベースのID P62942によってアクセス可能であるヒトFKBP12アミノ酸配列を示す(Suzuki et al. 上掲)。
【0028】
配列番号3は、位置22に変異を保有する配列番号2に示されるヒトFKBP12アミノ酸配列を示す。よりよい可溶性を達成するために、システイン22はアラニンに変化されている(C22A)。さらにC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグが付加されている。
【0029】
配列番号4は、本発明による好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF1のアミノ酸配列を示す。SlyD挿入に下線を引く。
【0030】
配列番号5は本発明による好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF1のアミノ酸配列を示す。SlyD挿入に下線を引く。該配列は配列番号4に対応するが、システイン22は、アラニンで置換されている。
【0031】
配列番号6は、(当該技術水準と比較して)2つのSlyD*ユニットに融合された標的ポリペプチドとしてHIV-1 gp41ポリペプチドを有する融合タンパク質SlyD*-SlyD*-gp41のアミノ酸配列を示す。担体-担体-標的型の融合タンパク質の概略図を図8に示す;実施例1も参照。
【0032】
配列番号7は、本発明によるhFKBP12-IF1に融合された標的ポリペプチドとしてHIV-1 gp41ポリペプチドを有するキメラ融合タンパク質hFKBP12-IF1-hFKBP12-IF1-gp41のアミノ酸配列を示す(テンダム融合タンパク質)。本タンパク質の概略図を図8に示す;実施例1も参照。
【0033】
配列番号8は、配列番号1に対応するが残基番号D165(アスパラギン酸)以降がC末端切断される、SlyD*(SlyD 1〜165)のアミノ酸配列を示す。さらに、配列番号8はC末端にヘキサ−ヒスチジンタグを保有する。
【0034】
配列番号9はIFループのない配列番号8に示されるSlyD* (1〜165)のアミノ酸配列を示す。このバリアントはまた、SlyD* ΔIF-ループと呼ばれる。リフォールディングおよび精製のために、これはC末端にヘキサ−ヒスチジンタグを保有する。
【0035】
配列番号10は、精製を容易にするC末端ヘキサ−ヒスチジンを有するタンパク質FKBP12-IF1をコードする合成遺伝子のアミノ酸配列を示す。N-末端メチオニンは細菌N-メチオニルアミノペプチダーゼによる翻訳後に切断され、成熟ポリペプチドは実際にグリシン1で開始する。システイン22がアラニンで置換される場合、FKBP12-IF1の得られたアミノ酸配列は配列番号5に対応する。
【0036】
配列番号11は、FKBP12-IF1(C22A)-gp41融合構築物を示す(実施例1も参照)。
【0037】
配列番号12は、Suzuki et al.2003, JMB 328, 1149-1160による、SwissProtデータベースのID POAEMOによってもアクセス可能な大腸菌SlpAアミノ酸配列を示す。未処理タンパク質に存在するN-末端Met残基(配列番号12には示されない)は翻訳後に除去される。今のところ、SlpAの情報は非常に不十分である。ペプチド基質に対するかなり低い活性を有するプロリルイソメラーゼとしての予備的な特徴付けとは別に、現実にこれまでSlpAについて公知なものはない。
【0038】
配列番号13は本発明によるさらに好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF4のアミノ酸配列を示す。SlpA挿入に下線を引く。さらにC-末端ヘキサ−ヒスチジンタグが付加されている。
【0039】
配列番号14はSwissProtデータベースのID O93778によってもアクセス可能なThermococcus FKBP18アミノ酸配列を示す。
【0040】
配列番号15は、本発明によるさらに好ましいキメラフォールディングヘルパータンパク質FKBP12-IF5のアミノ酸配列を示す。Thermococcus FKBP18挿入に下線を引く。さらにC-末端ヘキサ-ヒスチジンタグが付加されている。
【0041】
配列番号16はSwissProtデータベースのID P0A850によってもアクセス可能な大腸菌トリガー因子のアミノ酸配列を示す。
【0042】
配列番号17は、配列番号16による大腸菌トリガー因子のFKBPドメインを示す。アミノ酸メチオニン140〜グルタミン酸251は、トリガー因子のFKBPドメインに属する。
【0043】
配列番号18は、本発明の更なる態様のアミノ酸配列を示す。本キメラフォールディングヘルパータンパク質(トリガー因子-IF/SlyD)において、SlyDに由来するIFドメインは大腸菌トリガー因子のFKBPドメインに挿入される。SlyD挿入に下線を引く。
【0044】
配列番号19は、大腸菌由来の未処理前駆体FkpAのアミノ酸配列を示す。新たに翻訳されたFkpAは、ペリプラズムへの輸送のためのN-末端シグナル配列(Met 1〜Ala25)を保有する。内部の膜を通過した後に、シグナルペプチダーゼが特異的にシグナル配列を除去し、この配列はプロセスされた機能的タンパク質で消失する。FkpAは、N-末端シャペロンおよび二量体化ドメインおよびC-末端イソメラーゼドメイン(Gly147〜K249)を含む。RNaseT1試験において、FkpAは、約250,000 M -1s -1の触媒効率を示す。FkpA配列はまた、SwissProt ID:P45523によってもアクセス可能である。
【0045】
配列番号20は、配列番号19に示されるFkpAのFKBPドメインのアミノ酸配列(G147-K249)を示す。C-末端配列LEはクローニング戦略の理由を含む。C-末端ヘキサ-ヒスチジンタグは、精製を容易にするために付加されている。このFKBPドメインは、RNaseT1フォールディング試験で弱い活性を有すると思われ、活性はSIyD* ΔIFループとヒトFKBP12との間の範囲である(表1参照)。
【0046】
配列番号21は本発明によるさらなる態様のアミノ酸配列を示す。キメラフォールディングヘルパータンパク質FkpA-IF/SlyDにおいて、SlyDに由来するIFドメインは、FkpAのFKBPドメインに挿入される(配列番号20に示される)。C-末端ヘキサヒスチジンタグが精製を容易にするために付加されている。このキメラフォールディングヘルパータンパク質はRNaseT1フォールディング試験における高い活性を示すことが予想される。
【0047】
(詳細な説明)
本発明は、
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b)その上流にFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列および
c)その下流にFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むキメラ融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子に関する。一方でa)のヌクレオチド配列ならびに他方でb)およびc)のヌクレオチド配列は、同じ生物に由来し得るが、これらは異なる親FKBP分子をコードしなければならない。より正確に、a)は1つのFKBP分子のシャペロンドメイン(例えば、SlyDまたはSlpA)をコードし、b)およびc)は別の分子のFKBPドメインまたはFKBP様ドメイン(例えば、ヒトFKBP12)をコードする。FK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするヌクレオチド配列、すなわち、b)部分およびc)部分は同じ生物に由来し得るが、これらはまた、異なる生物に由来し得る。好ましくはb)およびc)で与えられる配列は、同じ生物に由来する。より好ましくは、これらは、例えばヒトFKBP12のような同じ親FKBP分子に由来する。
【0048】
特に、本発明は、
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b)その上流にFKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列および
c)その下流にFKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
を含むキメラ融合タンパク質をコードする組み換えDNA分子に関する。
【0049】
用語「組み換えDNA分子」は、遺伝子工学技術または化学合成によるポリヌクレオチドの単離セグメントの人工操作で達成された分離された2つのセグメントの配列の組み合わせで作製されるDNA分子のことをいう。これを行う際、所望の機能のポリヌクレオチドセグメントと共に結合して所望の組み合わせの機能を生じ得る。
【0050】
用語「キメラ融合タンパク質」は、ポリペプチド結合ドメインおよびFKBP(またはFKBP様)ドメインが異なる親分子に由来することを意味する。我々はFKBPまたはFKBP様ドメインがフォールディング骨格であるとみなし、その上にシャペロンドメインがグラフト(graft)され得、優れたフォールディングヘルパー活性を有するスーパーシャペロンを生じる。本発明において、非ヒトポリペプチドがヒトポリペプチド配列に融合される。キメラタンパク質は、「モザイクタンパク質」とも呼ばれ得る。本発明の目的の1つは、得られたタンパク質が診断適用でより耐性になるようにフォールディングヘルパータンパク質をヒト化することであるので、非ヒトアミノ酸配列の割合は好ましくは、完全なキメラ融合タンパク質の長さと比べて50パーセント部分を越えない。
【0051】
好ましくは、a)、b)およびc)によるヌクレオチド配列は、さらなるリンカー配列で分離されるだけでなく、互いに直接隣接している。
【0052】
「上流」方向は、ヌクレオチドがポリヌクレオチドの5’方向、すなわち初めのヌクレオチドに位置することを意味する。アミノ酸配列の用語において、用語「上流」はアミノ酸がN-末端方向、すなわちポリペプチドの開始に位置することを意味する。
【0053】
「下流」方向は、ヌクレオチドがポリヌクレオチドの3’方向、すなわち最後のヌクレオチドに位置することを意味する。アミノ酸の用語において、用語「下流」はアミノ酸がC-末端方向、すなわち、ポリペプチドの終わりに位置することを意味する。
【0054】
天然状態においてまたは当該分野で公知の方法によって操作される場合に、ポリヌクレオチドがポリペプチドまたはその断片を生じるように転写および/または翻訳され得る場合、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを「コードする」または「コード化する」ことをいう。
【0055】
シャペロンの「ポリペプチド結合セグメント」はタンパク質の3次元フォールディングプロセス中にポリペプチド鎖を結合および保持するシャペロンのポリペプチド結合セグメントとしてみなされる。「ポリペプチド結合セグメント」の大腸菌シャペロンSlyD、すなわち、そのシャペロン特性は、本出願でいわゆるIFドメイン(フラップ内挿入ドメイン(insert in flap domain)、アミノ酸〜76〜12)に位置している。自律的なフォールディング単位としてのタンパク質ドメインは水溶液中の天然様安定フォールドをとることができる。用語「ポリペプチド結合セグメント」、「IF-ループ」、IF-ドメインまたはシャペロンドメインが同義語として使用され得る。
【0056】
好ましい非ヒトシャペロンは、大腸菌SlyDおよびSlpA、ならびにSuzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160に列挙されるMethanococcus thermolithotrophicus由来のFKBP17、Methanococcus jannaschii由来のFKBP18、Thermococcus sp. KSl由来のFKBP 18、Pyrococcus horikoshii由来のFKBP29、Methanococcus jannaschii由来のFKBP26およびAeropyrum pernix由来のFKBP30等の古細菌のFKBPシャペロンである。
【0057】
好ましい態様において、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列は非ヒトFK506結合タンパク質(FKBP)をコードする配列を含む。より好ましくは大腸菌、Methanococcus thermolithotropicus、Methanococcus jannaschii、Thermococcus sp KSl、Pyrococcus horikoshiiまたはAeropyrum pernixのFKBP配列であり、大腸菌SlyDおよびSlpA配列が最も好ましい。
【0058】
特に好ましい態様において、大腸菌SlyD配列は、配列番号1のアミノ酸番号56〜75に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号1のアミノ酸番号122〜136に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。最も好ましくは、アミノ酸番号70で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号1のアミノ酸番号129で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列である。
【0059】
さらに好ましい態様において、大腸菌SlpA配列は、配列番号12のアミノ酸番号56〜75に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号12のアミノ酸番号122〜136に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。最も好ましくは、配列番号12のアミノ酸番号72で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号12のアミノ酸番号132で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列である。
【0060】
非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列に隣接する上流および下流配列に関して、これらの上流および下流配列はFK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメインとも呼ばれる)に由来する。
【0061】
本発明によれば、FK506結合タンパク質(FKBP)はナノモル範囲の高い親和性で免疫抑制剤FK506を認識および結合することができるタンパク質である。FKBP様ドメイン(「FK506結合タンパク質様ドメイン」)またはFKBP様タンパク質は、FK506によるプロリルイソメラーゼ阻害の影響をもはや受けないか、またはかろうじて受けるタンパク質またはタンパク質の部分である。これらのFKBP様ドメインはFKBP12のようなFK506結合タンパク質と、有意な配列および構造類似性を共有するが、FK506結合を媒介するいくつかのアミノ酸残基が変異され、親和性がマイクロモル範囲にシフトされる。例えば、SlyDおよびトリガー因子、大腸菌細胞質に由来する2つのPPIaseが、FKBP様タンパク質としてみなされる(Callebaut & Mornon, FEBS Lett. (1995)374(2)211-215; Wulfing et al., J. Biol. Chem. (1994)269(4), 2895-2901))。
【0062】
大腸菌SlyDまたはSlpAのような非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列に隣接する上流および下流配列に関して、FKBP型のヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼをコードする上流および/または下流ヌクレオチド配列はFK506結合タンパク質(FKBP)またはFKBP様ドメインをコードするヌクレオチド配列を含むことが好ましく、ヒトFKBP12をコードする配列が特に好ましい。
【0063】
さらに、好ましい態様において、FKBP12をコードする上流ヌクレオチド配列は配列番号3のアミノ酸番号1〜20に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号3のアミノ酸番号70〜89に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0064】
FKBP12をコードする下流ヌクレオチド配列は、配列番号3のアミノ酸番号90〜97に位置する任意のアミノ酸で開始するN-末端ポリペプチドおよび配列番号3のアミノ酸番号103〜107に位置する任意のアミノ酸で終了するC-末端ポリペプチドをコードする配列を含む態様も好ましい。
【0065】
最も好ましくは、配列番号4によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組み換えDNA分子である。配列番号4は、N-末端が配列番号3(FKBP12)のアミノ酸位置グリシン/G1〜グリシン/G83で開始し、配列番号1(SlyD)のアミノ酸位置グルタミン/Q70〜アスパラギン/N129が続き、配列番号3(FKBP12)のロイシン/L97〜グルタミン酸/E107で終了するアミノ酸配列を示す。配列番号4に示されるアミノ酸配列に対応するポリペプチドはFKBP12-IF1とも呼ばれる。
【0066】
本発明のさらに好ましい態様において、組み換えDNA分子は、配列番号13によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。配列番号13は、N-末端が配列番号3(FKBP12)のアミノ酸位置グリシン/G1〜グリシン/G83で開始し、配列番号12(SlpA)のアミノ酸位置バリン/V72〜トレオニン/T132が続き、配列番号3(FKBP12)のロイシン/L97〜グルタミン酸/E107で終了するアミノ酸配列を示す。配列番号13に示されるアミノ酸配列に対応するポリぺプチドは、KBP12-IF4とも呼ばれる。
【0067】
本発明のさらに好ましい態様において、組み換えDNA分子は配列番号15によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0068】
配列番号15は、N-末端が配列番号3(FKBP12)のアミノ酸位置グリシン/G1〜グリシン/G83で開始し、配列番号14(Thermococcus FKBP18)のアミノ酸位置メチオニン/M84〜トレオニン/T140が続き、配列番号3(FKBP12)のロイシン/L97〜グルタミン酸/E107で終了するというアミノ酸を示す。配列番号15に示されるアミノ酸配列に対応するポリペプチドはまたFKBP12-IF5と呼ばれる。
【0069】
βシートのような2次元構造エレメントはヘテロ配列エレメントによって阻害されず、インタクトのままであるような方法で、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする配列の上流および下流を挿入するようにDNA配列を選択することが有利である。一般的に公知の配列アライメントは例えば、Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160のような適切な上流および下流配列を選択することを補助する。
【0070】
本発明によれば、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードするヌクレオチド配列および上流および下流ヌクレオチド配列、すなわち、FK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードするもの、好ましくはFKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードするものの選択および配置は、得られたキメラ融合タンパク質の全体構造秩序が天然シャペロンの構造に相当するような方法で行われる。すなわち、全体構造は好ましくは技術分野の状態を示すα-へリックスおよびβ-シートのような二次構造エレメントの配置を維持する(例えば、Suzuki et al. 2003, JMB 328, 1149-1160)。
【0071】
本発明は特に、かかる組み換えDNA分子の発現によって生成されるキメラ融合タンパク質に関する。
【0072】
上記で同定される組み換えDNA分子の発現によって、我々は、細菌PPIaseシャペロンSlyD、FkpA、トリガー因子およびSlpAに対する対応物、ならびに細菌PPIaseシャペロンSlyD、トリガー因子およびSlpAに対するヒト化対応物を提供する。これらのヒト化ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼシャペロンは、生物技術適用の役立つツールおよび診断試験の添加物として働き得る。本出願の実施例に見られ得るように、本発明者らは、野生型フォールディングヘルパーよりもより高い触媒効率を有するヒト化シャペロンを得ることができ、そのアミノ酸配列は本発明によるヒト化シャペロンに含まれる。タンパク質のフォールディングおよびリフォールディング能力を示すRNaseT1リフォールディング試験系の観察に基づいて、本発明者らは、単離ヒトFKBP12が約14,000 M -1s-1のわずかな触媒効率を有するだけであることを示すことができた。単離非修飾大腸菌SlyDの触媒効率は680, 000 M -1s-1に達する。IFループドメインを欠くSlyDの欠失バリアントは、RNaseT1フォールディングアッセイで約500 M-1s-1の無視可能な触媒効率を示す。驚くべきことに、キメラ分子FKBP12-IF1(配列番号4に示されるアミノ酸配列)の触媒効率は、実質的にこの値を超える。FKBP12-IF1は、約2,500,000 M-1s-1の顕著な触媒効率を示し(実施例部分の表1も参照)、今日まで公知で最も効率のよいプロリルイソメラーゼの値を超える。この値は1.2 x 106 M -1s-1となる、トリガー因子の触媒効率も超える(Stoller et al. ( 1995)EMBO J. 14, 4939-4984; Zarnt et al. (1997)J. Mol. Biol. 271, 827-837; Scholz et al.(1997)EMBO J. 16, 54-58)。
【0073】
ヒトFK506結合タンパク質のプロリルイソメラーゼ中心の活性部位を、非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合ドメイン、すなわち、いわゆるIFループと合わせることで、本発明者らは優れたシャペロンおよび酵素特性を有するフォールディングヘルパーを作製した。本発明者らは、単離された野生型タンパク質よりも高い触媒効率を有するフォールディングヘルパーを提供することができた。従って、本発明によるフォールディングヘルパーは、その優れた触媒効率を参照してスーパーシャペロンとも呼ばれ得る。
【0074】
従って、本発明の一部は、
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、b)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN-末端に融合されるFK506 結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列、およびc)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC-末端に融合されるFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列を含む組み換え生成融合タンパク質である。
【0075】
従って、好ましい態様の1つは、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、b)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN-末端に融合されるヒトFKBP型ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列、c)非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC-末端に融合されるヒトFKBP型ペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列を含む組み換え生成された融合物である。好ましい態様は、ポリペプチド結合セグメントの大腸菌SlyDシャペロン配列およびSlyD配列にN末端およびC-末端で融合されるヒトFKBP12ポリペプチド配列を含むキメラ融合タンパク質である。本発明の好ましい態様の1つは、配列番号4によるアミノ酸配列を含むキメラ融合タンパク質である。
【0076】
ポリペプチド結合セグメントの大腸菌SlpAシャペロン配列およびSlpA配列にN-末端およびC-末端で融合されるヒトFKBP12ポリペプチド配列を含むキメラ融合タンパク質も好ましい。ポリペプチド結合セグメントの大腸菌SlpAシャペロン配列を含むキメラ融合タンパク質についての更なる詳細は、実施例部分および表1に与えられる。
【0077】
本発明の好ましい態様の1つは、配列番号13によるアミノ酸配列を含むキメラ融合タンパク質である。このタンパク質はFKPB12-IF4と呼ばれる。
【0078】
ポリペプチド結合セグメントのThermococcus FKBP18シャペロン配列およびThermococcus FKBP18配列にN-末端およびC-末端で融合されるヒトFKBP12ポリペプチド配列を含む融合タンパク質もまた好ましい。Thermococcus FKBP18は、プロリルイソメラーゼ活性化部位の近傍のフラップ領域のIFドメインを支持する熱安定性SlyDホモログである。Thermococcus FKBP18のアミノ酸配列は、配列番号14に示される。Thermococcus FKBP18の完全IFループドメインがhFKBP12のフォールディング骨格にグラフトされる、得られたキメラ融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号15に示される。このキメラ融合タンパク質についての更なる詳細は実施例部分および表1に与えられる。
【0079】
本発明の別の態様において、SlyDに由来するIFドメインが、大腸菌トリガー因子のFKBPドメインに挿入される。配列番号18は、このキメラフォールディングヘルパータンパク質のアミノ酸配列を示す(トリガー因子-IF/SlyD)。SlyDに由来するIFドメインは、大腸菌トリガー因子のFKBPドメインに挿入される。SlyD挿入に下線を引く。
【0080】
さらなる態様において、SlyDに由来するIFドメインは、FkpAのFKBPドメインに挿入される(配列番号20に示される)。得られたキメラフォールディングヘルパータンパク質はFkpA-IF/SlyDと呼ばれる。このキメラフォールディングヘルパータンパク質はRNaseT1フォールディング試験で高い活性を示すことが予想される。配列番号21は、本発明によるキメラフォールディングヘルパータンパク質のアミノ酸配列を示す。
【0081】
本発明者らの実験から、本発明者らは、SlyD、SlpAおよびTcFKBP18のシャペロン機能が、いわゆるIF(フラップ内挿入)ドメインに制限されると推測した。本発明者らは、種々のFKBP-シャペロンのIFドメインは、構造的に関連し、機能的に同等であると結論付けた。したがって、異なるFKBP-シャペロン由来のIFドメインは、互いに互換可能であるべきである。本発明者らは、SlyD内のIFドメインは、SlyDの真のフォールディングヘルパー特性を損なうことなく、例えば、SlpAまたはTcFKBP18の推定IFドメインで置き換えられ得ると仮定する。シャペロンドメインのこの相互交換は、相互様式で可能であるべきである、すなわち、推定IFドメインは、SlpAまたはTcFKBP18のFKBP様ドメイン上にグラフトされ、機能的シャペロンモジュールをもたらし得る。シャペロンドメインの相互交換は、それぞれ標的タンパク質に適合された基質親和性を有するテーラーメード(tailor-made)のフォールディングヘルパーへの道を開き得る。
【0082】
FKBP-X融合タンパク質において、FKBPは担体モジュールとして機能し、Xは、ゲストまたは標的タンパク質を意味するが、担体モジュールおよびゲストタンパク質は、閉鎖形態と開放形態との間の動的平衡状態で存在する。閉鎖形態では、疎水性領域は遮蔽され、したがって、融合タンパク質は可溶性のままであり、凝集しない。開放形態では、抗原性部位が露出しており、これにより、例えば、イムノアッセイにおいてゲストタンパク質が機能的であることが可能になる。したがって、親和性は、融合タンパク質において充分均衡していなければならず、異なるFKBP-シャペロン由来のIFドメインと相互交換することにより、標的モジュールの要件に適合され得る。
【0083】
任意に、すべてのキメラ融合タンパク質は、標的ポリペプチド配列にさらに融合され得る。本発明による標的ポリペプチドは、大量に必要とされる任意のポリペプチドであり得、したがって、他の非組換え供給源から単離または精製することが困難である。
【0084】
好ましくは本発明の方法によって作製される標的タンパク質の例としては、酵素、サイトカイン、成長因子、ホルモン、ワクチン、抗体などの哺乳動物の遺伝子産物が挙げられる。より詳しくは、本発明の好ましい過剰発現遺伝子産物としては、エリスロポエチン、インスリン、ソマトトロピン、成長ホルモン放出因子、血小板由来成長因子、上皮成長因子、トランスホーミング成長因子α、トランスホーミング成長因子、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、神経成長因子、インスリン様成長因子 I、インスリン様成長因子II、第VIII凝固因子、スーパーオキシドジスムターゼ、インターフェロン、γ-インターフェロン、インターロイキン-1、インターロイキン-2、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、顆粒球コロニー刺激因子、多系統コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージ刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、T細胞成長因子、リンホトキシンなどの遺伝子産物が挙げられる。好ましい過剰発現遺伝子産物は、ヒトの遺伝子産物である。
【0085】
さらに、本発明の方法は、ワクチンとして使用され得る任意の過剰発現遺伝子産物の分泌を増強するために容易に適合され得る。ワクチンとして使用され得る過剰発現遺伝子産物としては、哺乳動物の病原体の任意の構造的、膜会合、膜結合または分泌遺伝子産物が挙げられる。哺乳動物の病原体としては、哺乳動物に感染または攻撃し得るウイルス、細菌、単細胞または多細胞寄生虫が挙げられる。例えば、ウイルスワクチンとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ワクシニア、ポリオウイルス、アデノウイルス、インフルエンザ、A型肝炎、B型肝炎、デング熱ウイルス、日本脳炎B型、水痘‐帯状疱疹、サイトメガロウイルス、A型肝炎、ロタウイルスなどのウイルスに対するワクチン、ならびに麻疹、黄熱病、おたふくかぜ、狂犬病、ヘルペス、インフルエンザ、パラインフルエンザなどのウイルス疾患に対するワクチンが挙げられ得る。細菌ワクチンとしては、Vibrio cholerae、Salmonella typhi、Bordetella pertussis、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、Clostridium tetani、Corynebacterium diphtheriae、Mycobacterium leprae、R. rickettsii、Shigella、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Coccidioides immitis、Borrelia burgdorferiなどの細菌に対するワクチンが挙げられ得る。好ましくは、標的タンパク質は、HIV-1由来のgp41およびp17、HIV-2由来のgp36およびp16、HTLV-I/II由来のgp21などのレトロウイルスタンパク質からなる群、風疹ウイルス由来のE1およびE2などのウイルスエンベロープタンパク質からなる群、またはβ-AP42(アルツハイマーペプチド)もしくはプリオンタンパク質などのアミロイド生成タンパク質からなる群の一員である。
【0086】
本発明による標的ポリペプチドはまた、単一の組換えポリペプチドとして発現されるように構築されたいくつかの異なるタンパク質由来の配列、例えば、診断上関連するエピトープを含み得る。
【0087】
a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびc)その下流に、FK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むキメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子もまた、本発明の対象である。
【0088】
好ましくは、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、c)その下流に、FKBP型ヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むキメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子もまた、本発明の対象である。
【0089】
キメラスーパーシャペロンをコードする配列が工程a)、b)およびc)に従ってインタクトなままであり、その触媒機能およびシャペロン機能を維持する
ような様式で、標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が挿入されることは重要である。これは、標的ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が、キメラ融合タンパク質をコードする配列の上流または下流にインフレームで挿入されることを意味する。これはまた、上流および下流に挿入され得、また、1つ以上のコピーが挿入され得る。
【0090】
本発明によるキメラ融合タンパク質および標的ポリペプチドをコードする組換えDNAはまた、完全なタンパク質の発現後にリンカーポリペプチドをもたらすリンカー配列を含み得る。当業者には認識されるように、かかるリンカーポリペプチドは、意図される適用に、特に、長さ、柔軟性、電荷および可溶性に関して最も適切となるように設計される。
【0091】
1つまたはいくつかのアミノ酸置換または欠失を有するキメラ融合タンパク質のバリアントもまた、本発明による組換えDNAまたはキメラ融合タンパク質を得るために使用され得る。当業者は、実施例のセクションに記載の手順を用いることにより、かかるバリアントが本発明の方法に適切かどうかを容易に断定し得る。
【0092】
適当な宿主細胞中での複製によって、大量のポリヌクレオチドが作製され得る。タンパク質またはその断片をコードする天然または合成DNA断片は、原核生物または真核生物細胞内に導入および複製し得る組換えポリヌクレオチド構築物、典型的にDNA構築物内に組み込まれる。
【0093】
ポリヌクレオチドはまた、限定されないが、Beaucage、S. L.およびCaruthers、M. H.、Tetrahedron Letters 22 (1981)1859-1862に記載されたホスホルアミダイト法、およびMatteucci、M. D.およびCaruthers、M. H.、J. Am. Chem. Soc. 103 (1981)3185-3191によるトリエステル法を含む、化学合成によって作製され得る。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適切な条件下で鎖を互いにアニーリングすること、または適切なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用いて相補鎖を付加することのいずれかにより、単鎖生成物の化学合成から得られ得る。
【0094】
ポリヌクレオチド配列は、別のポリヌクレオチド配列と機能的関係で配置される場合、作動可能に連結される。例えば、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、作動可能に連結されるは、連結された配列が連続的であり、必要な場合は、ともに連続的でリーディングフレーム内にある2つのタンパク質コード領域に連結されていることを意味する。しかしながら、エンハンサーなどのある種の遺伝子エレメントは、離れていても、すなわち、連続的でない場合であっても作動可能に連結され得ることは周知である。
【0095】
宿主への導入のために調製されたDNA構築物は、典型的に、所望のキメラ融合ペプチドおよび任意にさらなる標的ポリペプチドをコードする意図されるDNA断片を含む、宿主によって認識される複製系を含み、好ましくはまた、ポリペプチドコードセグメントに作動可能に連結された転写および翻訳開始調節配列を含む。発現系(発現ベクター)としては、例えば、複製起点または自律複製配列(ARS)および発現制御配列、プロモーター、エンハンサーおよびリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要なプロセッシング情報部位、転写ターミネーター配列、およびmRNA安定化配列が挙げられ得る。
【0096】
適切なプロモーターおよび他の必要なベクター配列は、宿主内で機能的となるように選択される。細胞株および発現ベクターの機能し得る組合せの例としては、限定されないが、Sambrook, J.、et al.、「Molecular クローニング: A Laboratory Manual」(1989)、編J. Sambrook、E. F. FritschおよびT. Maniatis、Cold Spring Harbour Laboratory Press、Cold Spring Harbour、またはAusubel, F.、et al.、「Current プロトコル in molecular biology」(1987および定期的改訂版)、編F. Ausubel、R. BrentおよびK. R.E.、Wiley & Sons Verlag、New York;ならびにMetzger、D.、et al.、Nature 334 (1988)31-6に記載のものが挙げられる。細菌、酵母、哺乳動物、昆虫、植物または他の細胞における発現のための多くの有用なベクターが当該技術分野で公知であり、限定されないが、Stratagene、New England Biolabs、Promega Biotechおよび他を含む販売元から得られ得る。また、構築物は、多数のコピーの遺伝子が得られ得るように、増幅可能な遺伝子(例えば、DHFE)に連結され得る。
【0097】
発現およびクローニングベクターは、ベクターで形質転換された宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする遺伝子である選択可能なマーカーを含むことが適当であるが、かかるマーカー遺伝子は、宿主細胞内に同時に導入される別のポリヌクレオチド配列上に保有されていてもよい。マーカー遺伝子を発現する宿主細胞のみが、選択的条件下で生存および/または成長し得る。典型的な選択遺伝子としては、限定されないが、(a)抗生物質または他の毒性物質、例えば、アンピシリン、テトラサイクリンなどへの耐性を付与する; (b)栄養素要求不全を補う; または(c)複合培地から入手可能でない必須の栄養物を供給するタンパク質をコードするものが挙げられる。適正な選択可能なマーカーの選択は宿主細胞に依存し、異なる宿主に対する適切なマーカーは当該技術分野で公知である。
【0098】
本発明によれば、本発明による作動可能に連結された組換えDNA分子、すなわち、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、およびc)その下流に、FK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、ならびに任意にd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子を含む発現ベクターは、非常に有利であることが示された。
【0099】
本発明による作動可能に連結された組換えDNA分子、すなわち、a)非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、b)その上流に、FKBP型のヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、c)その下流に、FKBP型のヒトペプチジル-プロリル-シス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、ならびに任意にd)標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子を含む発現ベクターもまた、本発明の一部である。
【0100】
目的のポリヌクレオチドを含有するベクターは、当該技術分野で公知の任意の方法によって宿主細胞内に導入され得る。これらの方法は、細胞宿主の型に応じて異なり、限定されないが、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、他の物質を使用するトランスフェクション、ならびにウイルスによる感染が挙げられる。大量の本発明のポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、適合性の宿主細胞中でベクターまたは他の発現媒体内の本発明のポリヌクレオチドを発現させることにより調製され得る。最も一般的に使用される原核生物宿主は、大腸菌株であるが、Bacillus subtilisなどの他の原核生物もまた使用され得る。大腸菌における発現は、本発明の好ましい実施形態を表す。
【0101】
本発明によるベクターの構築では従来のライゲーション技術が使用される。単離されたプラスミドまたはDNA断片は、必要とされるプラスミドを作製するのに所望される形態に切断され、調整され、再度ライゲートされる。所望により、構築されたプラスミド内の正しい配列を確認するための分析が公知の様式で行なわれる。発現ベクターの構築、インビトロ転写物の調製、宿主細胞内へのDNAの導入、ならびに発現および機能を評価するための分析の実施のための適当な方法は当業者に公知である。遺伝子の存在、増幅および/または発現は、本明細書に示された配列に基づき得る適切に標識されたプローブを用い、例えば、従来のサザンブロッティング、mRNAの転写を定量するためのノザンブロッティング、ドットブロッティング(DNAもしくはRNA分析)、またはインサイチュハイブリダイゼーションによって、試料中で直接測定され得る。当業者には、所望によりどのようにこれらの方法が変形され得るかが容易に認識されよう。
【0102】
本発明による組換えDNAを含む発現ベクターは、無細胞翻訳系内で融合タンパク質を発現するために使用され得るか、または宿主細胞を形質転換するために使用され得る。好ましい態様において、本発明は、本発明による発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【0103】
さらに好ましい態様において、本発明は、キメラ融合タンパク質の作製方法に関する。前記方法は、本発明による発現ベクターで形質転換された宿主細胞を培養する工程、それぞれ宿主細胞内での該キメラ融合タンパク質の発現工程、および前記キメラ融合タンパク質の精製工程を含む(comprising)。
【0104】
本発明によるキメラ融合タンパク質は、高い可溶性を示す。細胞質内で過剰発現される場合、これは、主に、可溶性の画分に蓄積される。程度は低いが、これはまた、封入体中でも発現される。一般的に、細胞は、例えば、カオトロピック物質中などの適切なバッファー条件下で溶解される。キメラ融合タンパク質がヘキサ-ヒスチジン部分でタグ化される場合、未フォールディングタンパク質は、ニッケル含有カラム(Ni-NTA)に結合され得、ここで、これらはまた、適切なバッファー条件下でリフォールディングされる。実施例のセクションにより詳細に示したかかる精製およびリフォールディングプロトコルは当業者に周知である。その卓越したフォールディングヘルパー特性により、本発明によるキメラ融合タンパク質は、その適正な3次元構造、すなわち、その天然様コンホメーションを採用し得、それ以外の場合は採用し得ない任意の標的タンパク質のためのフォールディングヘルパーとして適用され得る。本発明によれば、キメラ融合タンパク質はまた、標的タンパク質の産生プロセスにおけるフォールディングヘルパーとして使用され得る。例えば、過剰産生性宿主細胞の一次可溶化後、過剰発現された標的タンパク質は、通常、カオトロピック物質により、または界面活性剤の存在もしくは他のバッファー条件により、まだその天然構造を採用せず、これは、標的タンパク質の天然コンホメーション状態を損なっている。キメラ融合タンパク質は、次いで、標的タンパク質の精製および可溶化プロセス中に添加され得、リフォールディングおよび復元プロセスを補助し得る。
【0105】
カップリングされた転写/翻訳系における適用に関して、過剰発現キメラフォールディングヘルパーを含有する細胞溶解物は、バイアルに添加され得、そこで、インビトロ翻訳が翻訳されたタンパク質の適正なコンホメーションフォールディングが促進されるように行なわれ得る。
【0106】
本発明によるキメラ融合タンパク質は、イムノアッセイおよびその結果を乱すことなく、その結合パートナーへの抗原および抗体の免疫学的結合プロセスを補助するためのイムノアッセイにおいて適用され得る。本発明によるキメラ融合タンパク質がヒト化されていること、すなわち、非ヒトタンパク質配列に対するヒト試料中に天然に存在する抗体による干渉の確率が最小限となるように主にヒトアミノ酸配列を含むことは、有利である。好ましくは、ヒト配列に由来するアミノ酸の割合は、キメラ融合タンパク質の完全アミノ酸配列と比べて少なくとも60%である。
【0107】
イムノアッセイは当業者に周知である。かかるアッセイを行なうための方法ならびに実用的な適用および手順は、関連する教科書に要約されている。関連する教科書の例は、Tijssen、P.、Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates、「Practice and theory of enzyme immunoassay」(1990)221-278、編R. H. Burdonおよびv. P. H. Knippenberg、Elsevier、Amsterdam)ならびに免疫学的検出方法を扱ったTijssen、「Methods in Enzymology」(1980)、編S. P. Colowick、N. O. CaplanおよびS. P.、Academic Press)種々の巻、特に第70、73、74、84、92および121巻である。
【0108】
本発明のさらなる態様において、キメラ融合タンパク質は、それぞれ、標的タンパク質の産生プロセス、ワクチンの作製または医薬の作製方法における融合パートナーとして使用され得る。
【0109】
新規キメラ融合タンパク質の治療的適用が意図される場合、好ましくは、本発明による組換え作製キメラ融合タンパク質および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物が製剤化される。
【0110】
以下の実施例、参考文献、配列表および図面は、本発明の理解を補助するために提供し、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示される。本発明の精神を逸脱することなく、示した手順において変形がなされ得ることを理解されたい。
【実施例】
【0111】
材料および試薬
塩化グアニジニウム(GdmCl、A-grade)は、NIGU (Waldkraiburg, Germany)から購入した。Complete(登録商標)無EDTAプロテアーゼインヒビター錠剤、イミダゾールおよびEDTAは、Roche Diagnostics GmbH (Mannheim、Germany)製であり、Merck (Darmstadt、Germany)のすべての他の化学薬品は分析等級であった。(S54G、P55N)-RNase T1は、Mticke、M.およびSchmid、F. X. (1994)J. Mol. Biol. 239、713-725に記載のようにして精製し、還元し、カルボキシメチル化した。限外濾過膜(YMlO、YM30)をAmicon (Danvers、MA、USA)から、マイクロ透析膜(VS/0.025μm)および限外濾過ユニット(biomax ultrafree濾過装置)はMillipore (Bedford、MA、USA)から購入した。粗製溶解物の濾過のための硝酸セルロースおよび酢酸セルロース膜(1.2μm/0.45μm/0.2μm)はSartorius (Goettingen、Germany)製であった。
【0112】
実施例1
大腸菌SlyDおよびヒトFKBP12 配列を含むキメラ融合タンパク質hFKBP12-IF1の作製
発現カセットのクローニング
hFKBP12およびSlyDの配列をSwissProtデータベースから検索した。hFKBP12およびその挿入バリアントをコードする合成遺伝子をMedigenomix (Martinsried、Germany)から購入し、pET24発現ベクター(Novagen、Madison、Wisconsin、USA)内にクローニングした。コドン使用頻度を大腸菌宿主細胞内での発現のために最適化した。SlyDの遺伝子を大腸菌株BL21(DE3)からPCRによって増幅し、制限消化し、pET24a発現ベクター内にライゲートした。融合タンパク質の発現カセットをJ. Mol. Biol. 345、1229-1241のScholz et al. (2005)によって記載された大腸菌SlyD*融合モジュールに記載のようにして設計した。
【0113】
タンパク質FKBP12-IF1をコードする合成遺伝子 (ヘキサ-ヒスチジンタグとともに配列番号10にも示す)
をMedigenomix(Martinsried、Germany)から購入し、pET24a 発現ベクター(Novagen、Madison、WI)内にクローニングした。コドン使用頻度を大腸菌宿主細胞における発現のために最適化した。QuikChange(Stratagene、La Jolla、CA)を用いて無システインバリアント(C22A)を作製した。翻訳後、細菌のN-メチオニル-アミノペプチダーゼによってN末端メチオニンが切断除去されると、成熟ポリペプチドは、実際にはグリシン1で始まる。
【0114】
FKBP12-IF1(C22A)-gp41融合構築物(配列番号11にも示す)を得るため、
【0115】
NdeI/BamHI隣接FKBP12-IF1-(GGGS)2GGおよびBamHI/XhoI隣接(GGGS)2GG-gp41(残基536〜681)をコードするDNA断片をPCRによって増幅し、NdeIおよびXhoIを用いてpET24a内に挿入した。FKBP12-IF1(C22A)をコードする合成遺伝子またはHIV-1単離物の精製RNAをPCR-(RT-PCR)-鋳型として用いた。点変異L555E、L566E、I573TおよびI580EをQuikChangeを用いてgp41カセット内に導入した。
【0116】
タンデムFKBP12-IF1(C22A)-FKBP12-IF1(C22A)-gp41融合構築物(配列番号7)
を、FKBP12-IF1(C22A)-gp41をBamHIで切断し、FKBP12-IF1(C22A)をコードする合成遺伝子からPCR-増幅したBamHI/BamHI隣接(GGGS)2GGG-F12IF1-(GGGS)2GGをコードするDNA断片を挿入することにより作製した。
QuikChange (Stratagene、La Jolla、USA)および標準的なPCR技術を用いて点変異、欠失および挿入バリアントまたは制限部位を作製した。すべての組換えhFKBP12バリアントは、Ni-NTA-補助精製およびリフォールディングを容易にするためのC末端ヘキサヒスチジンタグを含有した。
【0117】
hFKBP12バリアントの発現、精製およびリフォールディング
hFKBP12、SlyDおよびSlpAバリアントならびにタンパク質はすべて、実質的に同一のプロトコルを用いることにより精製した。特定のpET24a 発現プラスミドを有する大腸菌BL21(DE3)細胞をLB培地+カナマイシン(30μg/ml)中、37℃で1.5のOD60Oまで培養し、1mMイソプロピル-β-D-チオガラクトシドを添加することにより細胞質での過剰発現を誘導した。誘導の3時間後、細胞を遠心分離(20分間 5000 gで)によって回収し、凍結乾燥させ、-20℃で保存した。細胞溶解のため、凍結乾燥させたペレットを冷却50mMリン酸ナトリウムpH8.0、7.0M GdmCl、5mMイミダゾール中に再懸濁し、懸濁液を氷上で2時間攪拌し、完全に細胞溶解した。遠心分離および濾過(硝酸セルロース膜、0.45μm/0.2μm)後、溶解物を、5.0mM TCEPを含む溶解バッファーで平衡化したNi-NTAカラム上に適用した。続く洗浄工程を、それぞれの標的タンパク質のために調整し、50mMリン酸ナトリウムpH8.0、7.0M GdmCl、5.0mM TCEP中5〜15mMイミダゾールの範囲とした。少なくとも10〜15容量の洗浄バッファーを適用した。次いで、GdmCl溶液を50mMリン酸ナトリウムpH7.8、100mM NaCl、10mM イミダゾール、5.0mM TCEPと置き換え、マトリックス結合タンパク質のコンホメーションリフォールディングを誘導した。同時精製するプロテアーゼの再活性化を回避するため、リフォールディングバッファー中に、プロテアーゼインヒビターカクテル(Complete(登録商標)無EDTA、Roche)を含んだ。合計15〜20カラム容量のリフォールディングバッファーを一晩の反応に適用した。次いで、TCEPおよびComplete(登録商標)無EDTAインヒビターカクテルの両方を、3〜5カラム容量の50mMリン酸ナトリウムpH7.8、100mM NaCl、10mM イミダゾールでの洗浄によって除去した。天然タンパク質を、同じバッファー中の250mMイミダゾールによって溶出した。タンパク質含有画分をTricine-SDS-PAGEによって純度について評価し、プールした。最後に、タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex HiLoad、Amersham Pharmacia)に供し、タンパク質含有画分をプールし、Amicon 細胞(YM10)内で濃縮した。
【0118】
精製およびリフォールディングを合わせたプロトコルの後、1gの大腸菌湿潤細胞から20mgより多くの標的タンパク質が得られ得た。本発明者らは、システイン22をアラニンに変更することにより種々のhFKBP12バリアントの全体的な可溶性をさらに増加させた。この単一のシステインの置換により、hFKBP12が二重結合性ジスルフィド付加物を形成する傾向が排除された。これは、タンパク質のフォールディングにもそのプロリルイソメラーゼ活性にも影響しなかった。システイン22をアラニンに置換することはまた、キメラタンパク質FKBP12-IF1の場合に有利であることがわかった。SDS-PAGE によって示されたhFKBP12-IF1(C22A)の精製を図1に示す。
【0119】
実施例2
分光測定
タンパク質濃度の測定は、Uvikon XL二重ビーム分光測光器を用いて行なった。Pace (1995)、Protein Sci. 4、2411-2423に記載の手順を用いることによりモル吸光率(ε280)を測定する。
【0120】
近UV CDスペクトルをサーモスタット付きセルホルダーを有するJasco-720分光偏光計で記録し、平均残基楕円率に変換した。バッファーは、50mMリン酸ナトリウムpH7.5、100mM NaCl、1mM EDTAであった。パス長は0.5cmまたは1.0cmであり、タンパク質濃度は20〜500μMであった。バンド幅は1nmであり、スキャン速度は、0.5nmの解像度で20nm/分であった。応答は2秒であった。信号雑音比を改善するため、スペクトルを9回測定し、平均した。
【0121】
近UV CDによる天然様フォールディングの評価
精製およびリフォールディングを合わせたプロトコルの後、本発明によるキメラ融合タンパク質がフォールディングされたコンホメーションを採用するかどうかを調べるため、本発明者らは、近UV領域におけるCDスペクトルを測定した。近UV-CDは、タンパク質中の芳香族残基の非対称環境に関して報告し、したがって、規則正しい3次構造に関する感受性試験である。hFKBP12フラップセグメントへのSlyD IFループなどのドメインのグラフティングは、hFKBP12骨格タンパク質の全体構造をひどく損ない得る。天然ヒトFKBP12は、近UV領域に典型的なCD特性を有する(図2)。したがって、IF-ループ-挿入による構造的ねじれまたは破壊は、近UV CDスペクトルで可視的であるべきである。図2は、それぞれ、hFKBP12およびhFKBP12-IF1のスペクトルの重複を示す。驚いたことに、hFKBP12のフラップ領域内のIFドメインが挿入しても、骨格タンパク質の全体構造は本質的にインタクトなままである。ループの挿入に伴って変換された楕円率が実質的に有意に減少しても、スペクトルの特性は類似する。球形の未フォールディングにより、任意の近UV CDシグナルが排除され得るため、この結果は、キメラ構築物hFKBP12-IF1の天然様フォールディングは、本質的に保持されたこと強く示す。
【0122】
同様に、本発明者らは、SlyD*(SlyD 1〜165)およびその欠失バリアントSlyD*ΔIF-ループ(アミノ酸残基70〜129を欠くSlyD*)の近UV CDスペクトルを記録した。結果を図3に示す。近UV CDスペクトルによって判断されるように、大きな「フラップ内挿入」(IF)ドメインが除去された場合、SlyD*の全体構造はインタクトなままである。平均残基変換楕円率は、IFループを除去すると、わずかに増加すらする。したがって、そのIFドメインを欠くSlyDは、なお天然様フォールディングタンパク質であるという有力な証拠である。
【0123】
実施例3
フォールディング実験
フォールディング研究では、還元されカルボキシメチル化されたRNase T1 (RCM-T1)を使用した。RCM-T1は、該タンパク質を0.1M Tris-HCl pH8.0中、15℃で少なくとも1時間インキュベートすることにより未フォールディングにした。同じバッファー中2.0M NaClおよび所望の濃度のSlyD、FKBP12バリアントおよびRCM-T1の最終条件までの未フォールディングタンパク質の40倍希釈によって、15℃でのリフォールディングを開始した。フォールディング反応の後、268nm(1.5nmバンド幅)での励起後、320nm(10nmバンド幅)におけるタンパク質蛍光(すなわち、トリプトファン蛍光)が増大した。2.0M NaClでは、RCM-T1の低速のフォールディングは、単一指数関数的(monoexponential)プロセスであり、その速度定数は、プログラムGraFit 3.0(Erithacus Software、Staines、UK)を用いて決定した。
【0124】
キメラ融合タンパク質のフォールディング活性
本発明者らは、プロリン制限タンパク質フォールディング反応の触媒作用における本発明によるキメラ融合タンパク質の効率を調べた。還元されカルボキシメチル化されたRNase T1(RCM-T1)を、モデル基質として使用した。そのリフォールディング反応は、トリプトファン蛍光の強力な増大で達成され、Schmid、F. X. (1991)Curr. Opin. Struct. Biol. 1、36-41、Mayr et al. (1996)Biochemistry 35、5550-5561ならびにMucke、M.およびSchmid、F. X. (1994)Biochemistry 33、14608-14619に記載のようにしてNaCl濃度を増加させることにより誘導され得る。
【0125】
大腸菌由来のSlyD*(1〜165)は、RCM-T1のリフォールディングを非常によく触媒する。2nMもの低いSlyD*の存在下で、RCM-T1のリフォールディングは既に2倍加速される(図4A)。フォールディングの見かけ上の一次速度定数kappは、SlyD*濃度とともに線形で増大する(図4B)。このプロットの傾きから、0.68 x 106M-1s-1の特異性定数kcat/KMが測定された。これは、異常に高い値であり、これは、これまでに知られている最も効率的なフォールディングヘルパーであるトリガー因子の触媒効率にほぼ達する(Stoller et al (1995)EMBO J. 14、4939-4948、Scholz et al.(1997)EMBO J. 16、54-58およびScholz et al. (1998)J. Mol. Biol. 277、723-732を参照のこと)。
【0126】
対照的に、IFドメインを欠くSlyD変異型は、RCM-T1リフォールディングの非常に不充分な触媒である。SlyDΔIFは、SlyDのFKBP-ドメインを表す。その特異性定数は、0.0005 x 106M-1s-1あたりの範囲であり、したがって、SlyD*の0.07%にしかならない(図5A/B)。これは、未フォールディングタンパク質基質の結合に対する「フラップ内挿入」ドメインの重要な役割を強く示す。近UV CDスペクトルは、欠失バリアントの天然様の全体的なフォールディングを示すため(図3)、フラップ内挿入ドメインは、おそらく、ポリペプチド結合ドメイン、すなわち、SlyDのシャペロンドメインを示す。
【0127】
推定IFドメインの欠失により、SlyD*のフォールディング活性が実質的に排除される。IFドメインを欠くSlyD変異型は、SlyDのFKBPまたはFKBP様ドメインを表す。対照的に、フラップ領域内のまさにこのIFエレメントの挿入によって、hFKBP12のフォールディング活性がどのように影響されるのだろうか?公表されたデータ(Scholz et al. (1997)EMBO J. 16、54-58)と一致して、hFKBP12によるRCM-T1リフォールディングの触媒作用は、むしろ中程度である(図6A)。リフォールディングの見かけ上の一次速度定数の分析により、0.014 x 106M-1S-1の特異性定数がもたらされた(図6B)。対照的に、本発明によるIF-ループ挿入バリアントFKBP12-IF1は、RCM-T1リフォールディングを極めてよく触媒する(図7A)。RCM-T1のフォールディング速度を倍増させるのに1nM未満のFKBP12-IF1で充分である。特異性定数は、2.5 x 106M-1S-1より大きい(図7Bおよび表1)。この卓越した値は、前記トリガー因子の触媒効率を超えることすらあり、1.2 x 106M-1S-1になる(Stoller et al. (1995)EMBO J. 14、4939-4984; Zarnt et al. (1997)J. Mol. Biol. 271、827-837; Scholz et al.(1997)EMBO J. 16、54-58)。したがって、本発明によるキメラ融合タンパク質を構築することにより、本発明者らは、中程度の非ヒトプロリルイソメラーゼおよび不充分なヒトシャペロンを、格別に良好なプロリルイソメラーゼ特性およびシャペロン特性を有する卓越したフォールディングヘルパーに変換した。
【0128】
本発明によれば、非ヒトシャペロンのポリペプチド結合ドメインおよびヒトPPIase ドメインを組み合わせる原理は、他の実施例に拡張され得る。FKBP12-IF1の構築パターンと同様にして、本発明者らは、SlpAの推定IFループドメイン
をhFKBP12のフォールディング骨格上にグラフトした。SlpA (頭文字は、SlyD様プロテインA(SlyD-like protein A)を表す)は、SlyDの近縁である。SlpAの関する情報はあまりないが、SlyDとのその相同性により、大腸菌細胞質内でのPPIaseシャペロンとしての役割を果たすと推測される。本発明者らは、大腸菌からヘキサ-ヒスチジンタグ化SlpAバリアントを精製し、特徴付けした。しかしながら、この推定PPIaseは、RCM-T1リフォールディングアッセイにおいて非常に不充分な活性を示した(表1)。hFKBP12およびSlpA由来の要素を含む該キメラをhFKBP12-IF4と命名した。これは、hFKBP12由来のモジュールG1-G83、SlpA由来のV72-T132、およびhFKBP12由来のL97-E107を含む(配列情報については、配列番号13を参照のこと)。ヘキサ-ヒスチジンタグ化タンパク質の発現、均質に精製することおよびリフォールディングは、本質的に、FKBP12-IF1に記載のようにして行なった。近UV CDによる評価によって、設計されたタンパク質のコンパクトなフォールディングを明白に示すスペクトルがもたらされた(スペクトルは示さず)。
【0129】
RCM-T1リフォールディングアッセイにおいて評価した場合、hFKBP12-IF4は、驚くほど高いフォールディング活性を示した(図10A)。その特異性定数(kcat/KM)は800,000M-1s-1であり(表1参照)、非常に強力なフォールディングヘルパーであるSlyDの触媒効率と実質的に等しい(Scholz et al.、Biochemistry 2006、45、20-33)。この場合も、推定ポリペプチド結合ドメイン(SlpA由来)と、不活発なプロリルイソメラーゼ(hFKBP12)との組合せにより、高い酵素活性およびシャペロン活性の両方を有する卓越したフォールディングヘルパーがもたらされる。本発明者らは、hFKBP12と、多様なSlyDホモログ由来のIFループドメインとの組合せによって、格別なフォールディング活性を有するヒト化フォールディングヘルパーが得られ得ると結論付ける。
【0130】
非ヒトシャペロンのポリペプチド結合ドメインと、ヒトPPIase ドメインを組み合わせる原理のさらなる例は、hFKBP12-IF5と呼ばれるキメラ融合タンパク質である。FKBP12-IF1およびFKBP12-IF4の構築パターンに従って、本発明者らは、Thermococcus FKBP18の推定IFループドメインをhFKBP12のフォールディング骨格上にグラフトした。Thermococcus FKBP18は、プロリルイソメラーゼ活性部位付近のフラップ領域内に推定IFドメインを有するSlyDの熱安定性ホモログである。
【0131】
得られたキメラをhFKBP12-IF5と命名した。これは、hFKBP12由来のモジュール G1-G83、Thermococcus FKBP18由来のM84-T140、およびhFKBP12由来のL97-E107を含む(配列情報については、Thermococcus FKBP18は配列番号14を、およびhFKBP12-IF5は配列番号15参照のこと)。ヘキサ-ヒスチジンタグ化タンパク質の発現、均質に精製することおよびリフォールディングは、本質的に、FKBP12-IFlに記載のとおりにして行なった。
【0132】
RCM-T1リフォールディングアッセイにおいて評価した場合、hFKBP12-IF5は、驚くほど高いフォールディング活性を示した(図11)。その特異性定数 (kcat/KM)は660,000M-1s-1であり、細菌の文献データによると非常に強力なフォールディングヘルパーであるSlyDの触媒効率と実質的に等しい(Scholz et al.、Biochemistry 2006、45、20-33)。この場合も、推定ポリペプチド結合ドメイン(熱安定性TcFKBP18由来)と、不活発なプロリルイソメラーゼ(hFKBP12)との組合せにより、高い酵素活性およびシャペロン活性の両方を有する卓越したフォールディングヘルパーがもたらされる。本発明者らの研究は、hFKBP12と、多様なSlyDホモログ由来のIFループドメインとの組合せによって、格別なフォールディング活性を有するヒト化フォールディングヘルパーが得られ得ることを明白に示す。
【0133】
まさに同じ原理が、多くの原核生物および真核生物プロリルイソメラーゼに生じるFKBP様ドメインにもあてはまる。例えば、FkpAおよびトリガー因子は、FKBP様ドメインを含む2つの大腸菌タンパク質である。以前に、これらのFKBP様ドメインは、分子の残りの部分から分離された場合、非常に穏やかなフォールディング活性を示すことが示された(Scholz et al.、EMBO J. (1997)16 (1)54-58; Saul et al.、J. Mol. Biol (2004)335、595-608)。これは、シャペロン活性を全く欠く穏やかなプロリルイソメラーゼであるヒトFKBP12と完全に一致する。任意のSlyD IFドメイン(ポリペプチド結合セグメントとも呼ばれる)を、フォールディング骨格としてのFKBP様ドメイン上にグラフティングすることにより、優れたフォールディングヘルパーが得られ得る。これらのキメラもまた、組換えタンパク質バイオテクノロジーにおけるフォールディングヘルパーとして、例えば融合タンパク質、リフォールディングバッファーの添加剤などとして使用され得る。
【0134】
ドメイングラフティングの原理もまた、SlyDそのものに当てはまる。IFドメインを欠くSlyD 欠失バリアント(SlyDΔIF)は、真のFKBPドメインを表し、これは、他のFKBPシャペロン由来のIFドメインと合わせられ、卓越した触媒効率を有するフォールディングヘルパーが得られ得る。本発明は、したがって、得られるキメラフォールディングヘルパーを構成する天然に存在する野生型分子の触媒効率を超える触媒効率を有するフォールディングヘルパーを作製するための、SlyD、特にIFドメインを欠くSlyD バリアントの使用もまた包含する。
【0135】
表1は、RCM-T1 アッセイにおいて測定されたすべてのタンパク質について得られた結果の要約である。
【0136】
実施例4
FKBP12-IF1/HIVgp41融合タンパク質の免疫学的反応性
この実施例は、本発明によるキメラ融合タンパク質FKBP12-IF1への標的タンパク質としてのHIV タンパク質、すなわち、エンベロープ タンパク質gp41の付加を示す。タンデムFKBP12-IF1-gp41 融合モジュールをSlyDおよびhFKBP12 タンパク質バリアントについて記載のようにして精製し、リフォールディングさせた。これを用いて、HIV-1陽性血清中に大量に生じる抗gp41抗体を検出した。二重抗原サンドイッチ形式を用い、自動Elecsys(登録商標)2010分析装置(Roche Diagnostics GmbH、Germany)において、免疫学的反応性を刺激した。
【0137】
Elecsys(登録商標)イムノアッセイにおけるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。ビオチン-コンジュゲート(すなわち、捕捉抗原)を、ストレプトアビジンコート磁気ビーズの表面上に固定化するが、シグナル伝達抗原は、発光部分として複合体化ルテニウムカチオンを有する。抗gp41抗体の存在下、色原体ルテニウム複合体を固相に結合し、白金電極で励起後、620nmで発光させる。シグナル出力は自由裁量光単位である。
【0138】
そのElecsys(登録商標)抗原としての使用のため、研究中の可溶性の gp41 融合タンパク質を濃縮し、Scholz et al. (2005)J. Mol. Biol. 345、1229-1241に記載のようにして、N-ヒドロキシ-スクシンイミド活性化ビオチンルテニウム部分で修飾した。イムノアッセイ測定におけるgp41バリアントの濃度は約500ng/mlであった。少なくとも5つの陰性血清を対照として使用した。偽陽性結果をさらに最小限にするため、抗干渉物質として、重合した未標識大腸菌SlyD*を試料に添加した。
【0139】
本発明によるキメラ融合FKBP12-IF1は、凝集傾向タンパク質の融合パートナーとして充分適することがわかった。野生型hFKBP12をgp41外部ドメイン断片に融合した場合、得られる融合タンパク質は、マトリックスカップリングリフォールディングおよびイミダゾール溶出後、定量的に凝集した。明らかに、hFKBP12は、gp41外部ドメイン断片などの極めて疎水性の標的に対して可溶性を付与することができない。対照的に、本発明者らは、FKBP12-IF1およびHIV-1 gp41外部ドメイン断片536〜681を含む本発明によるキメラ融合タンパク質は(概略図8)、完璧に可溶性であり、UV分光分析によって判断すると、凝集する傾向がないことを見い出した(図9)。自動Elecsys(登録商標)解析装置において評価した場合、該タンパク質は、HIV-1血清学における診断適用に充分適することがわかった(データ示さず)。これは、本発明によるキメラ融合タンパク質の傑出した特性をさらに強調する。
【0140】
参考文献リスト
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1はSDS-PAGEで示されるFKBP12-IF1(SlyD挿入を含む)の精製である。レーン1、Invitrogen製の未染色タンパク質標準マーク12;レーン3、過剰産生性大腸菌 BL21/DE 3株のカオトロピック粗溶解物; レーン5、IMACフロースルー;レーン7〜11、イミダゾール溶出画分。FKBP12-IF1は、実施例部分に記載される単純なワンステッププロトコルにおいて高収率で精製およびリフォールディングされ得る。
【図2】図2は本発明による野生型hFKBP12(灰色線)およびhFKBP12-IF1(黒線)のUV近傍CDスペクトルである。バッファは 50 mM リン酸ナトリウムpH 7.5, 100 mM NaCl, 1 mM EDTAであり、タンパク質濃度は100μMであった。250〜310nmのCDシグナルは芳香族アミノ酸残基の非対称的環境について報告する。hFKBP12の平均残基重量楕円率がSlyD IFループの挿入の際に減少する。それにもかかわらず、減少した楕円率はなお、コンパクトでネイティブ様コンフォメーションのFKBP12-IF1キメラを指す(黒線)。
【図3】図3はフラップドメインの挿入ありなしでのSlyD(1〜165, SlyD*)のUV近傍CDスペクトルである。バッファは50 mM リン酸ナトリウム pH 7.5, 100 mM NaCl, 1 mMEDTAであり、タンパク質濃度は200μM SlyD*および250μM SlyD* (ΔIFループ)であった。SlyD*の4つのチロシン残基は278nmでの40 deg cm2dmol-1 の平均残基重量楕円率を生じる(灰色線)。フラップドメインの挿入が除去される場合、UV近傍CDシグナルの形状は本質的に保持されるが、強度は増大する(黒線)。これは、SlyD*の構造完全性はIFループドメインの欠損後に主に保持されることを強調する。すなわち、IFループのドメイン特徴を強調する。
【図4】図4は15℃の大腸菌SlyD*(1〜165)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、3、5、8、10、15および20 nMの大腸菌SlyD*の存在で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がSlyD*濃度に依存する。SlyD* の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がSIyD* 濃度の関数として示される。0.68 x 106M-ls-l の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KM で得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図5】図5は15℃のSlyD 欠損バリアントSlyD (ΔIFループ)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、1.0、2.0および5.0 μM SlyD (ΔIFループ)の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がSlyD (ΔIFループ)濃度に依存する。SlyD(ΔIFループ)の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がSlyD(ΔIFループ)濃度の関数として示される。約500 M-1s -1の値は、(B)の直線の傾きから得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図6】図6は15℃のヒトプロリルイソメラーゼFKBP12の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が、0、0.5、0.8、1.0、1.5および2.0 μM hFKBP12の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディングの速度がhFKBP12濃度に依存する。hFKBPl2の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBP12濃度の関数として示される。0.014 x 106 M-1s -1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KMで得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図7】図7は15℃の本発明によるキメラタンパク質hFKBP12-IF1の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、3、5、8、10および20 nM hFKBP12-IF1の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がhFKBP12-IF1濃度に依存する。hFKBP12-IF1の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBP12-IF1濃度の関数として示される。2.5 x 106 M-1s -1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KMで得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図8】図8は融合タンパク質SlyD*-SlyD*-gp41およびhFKBP12-IF1-hFKBP12- IF1-gp41の概略図である。融合モジュールおよびg41の両方はボックスで強調される。シャペロンモジュールSlyD*およびhFKBP12-IF1が、グリシンおよびセリン残基が豊富でフレキシブルな23アミノ酸リンカーによってそれぞれの標的分子と結合される。ヘキサヒスチジンタグがスペサーセグメントを介して標的分子のC末端に融合され、接近性を改善し、精製およびリフォールディングの両方を容易にする。リンカーは、5つの反復GGGSエレメント(G:グリシン、S: セリン)から構成され、スペーサーは、SlyDの構造化されていないC末端尾部に天然で生じる4つのHDリピート(H: ヒスチジン、D:アスパラギン酸)を含む。
【図9】図9は本発明によるキメラ融合タンパク質hFKBP12-IF1-gp41のUVスペクトルである。マトリックス結合リフォールディングおよびイミダゾール溶出の後、タンパク質は水性バッファに溶解する。ランベルト−ベール範囲の線形性で吸光度を保つために、タンパク質ストック溶液が室温の50 mM リン酸ナトリウムpH 7.5, 100 mM NaCl, 1.5 mM EDTA中の5μMに20倍希釈された。タンパク質凝集物または高分子会合物は光浮遊粒子であり、310〜350nmの波長領域の傾きはベースラインとなる。スペクトルの形状は任意の凝集体の非存在を証明し、hFKBP12-IF1-gp41の溶解性を強調する。
【図10】図10は15℃の本発明によるキメラタンパク質hFKBP12-IF4 (SlpA挿入を有する)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、3、6、10、15および20 nM hFKBP12-IF4の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がhFKBP12-IF4濃度に依存する。hFKBP12-IF4の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBPl2-IF4濃度の関数として示される。850000 M -1s-1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KM で得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-T1のリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【図11】図11は15℃の本発明によるキメラタンパク質hFKBP12-IF5 (Thermococcus FKBP18挿入を有する)の増大する濃度の存在下でのRCM-T1のリフォールディング動力学である。(A)320nmの蛍光変化が後に続く100 nM RCM-T1のリフォールディング動力学が0、10、25、30、35および40 nM hFKBP12-IF5の存在下で示される。(B)緩やかなフォールディング速度がhFKBP12-IF5濃度に依存する。hFKBP12-IF5の存在するkappおよび非存在のkoにおける観察された速度定数の比率がhFKBP12-IF5濃度の関数として示される。660000M -1s-1の値は、(B)の直線の傾きからのkcat/KMで得られる。0.1 M Tris-HCl, pH 8.0におけるRCM-Tlのリフォールディングが同じバッファ中の2.0 M NaClの希釈によって開始された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b) その上流に、FK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および
c) その下流に、FK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
を含む、キメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子。
【請求項2】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b) その上流に、ヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および
c) その下流に、ヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIase) をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
を含む、請求項1記載のキメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子。
【請求項3】
d) 標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
をさらに含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項4】
前記非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が、FKBP型の大腸菌PPIaseシャペロンをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項5】
前記非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が、大腸菌SlyDまたはSlpAシャペロンをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項6】
大腸菌SlyDヌクレオチド配列が、N末端が配列番号1のアミノ酸番号56〜75の間に位置する任意のアミノ酸で始まり、C末端が配列番号1のアミノ酸番号122〜136に位置する任意のアミノ酸で終わるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項5記載の組換えDNA分子。
【請求項7】
大腸菌SlyDヌクレオチド配列が、N末端が配列番号1のアミノ酸番号70で始まり、C末端がアミノ酸番号129で終わるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項6記載の組換えDNA分子。
【請求項8】
ヒトペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼをコードする上流および/または下流ヌクレオチド配列が、FK506結合タンパク質(FKBP)をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項9】
ヒトFK506結合タンパク質をコードする上流および/または下流ヌクレオチド配列が、FKBP12をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項8記載の組換えDNA分子。
【請求項10】
FKBP12をコードする上流ヌクレオチド配列が、N末端が配列番号2または3のアミノ酸番号1〜20の間に位置する任意のアミノ酸で始まり、C末端が配列番号2または3のアミノ酸番号70〜89の間に位置する任意のアミノ酸で終わるポリペプチドをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項9記載の組換えDNA分子。
【請求項11】
FKBP12をコードする下流ヌクレオチド配列が、N末端が配列番号2または配列番号3のアミノ酸番号90〜97の間に位置する任意のアミノ酸で始まり、C末端が配列番号2または配列番号3のアミノ酸番号103〜107の間に位置する任意のアミノ酸で終わるポリペプチドをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項9記載の組換えDNA分子。
【請求項12】
配列番号4または配列番号5に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、前記請求項いずれかに記載の組換えDNA分子。
【請求項13】
請求項1〜12いずれかに記載の作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項15】
a) 請求項14記載の宿主細胞を培養する工程
b) 前記キメラ融合タンパク質の発現工程、および
c) 前記キメラ融合タンパク質の精製工程
を含む、キメラ融合タンパク質の作製方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法によって作製された組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項17】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、
b) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN末端に融合されたFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列、および
c) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC末端に融合されたFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列を含む、組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項18】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、
b) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN末端に融合されたヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列、および
c) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC末端に融合されたヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列
を含む、請求項17記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項19】
d) 少なくとも1つの標的ポリペプチド
をさらに含むことを特徴とする、請求項17または18記載の組換え作製融合タンパク質。
【請求項20】
非ヒトシャペロンタンパク質配列が大腸菌SlyDシャペロンポリペプチド配列であること、および非ヒトシャペロン配列のN末端およびC末端に融合されたヒトペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列がFKBP12ポリペプチド配列であることを特徴とする、請求項18または19記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項21】
非ヒトシャペロンタンパク質配列が大腸菌SlpAシャペロンポリペプチド配列であること、および非ヒトシャペロン配列のN末端およびC末端に融合されたヒトペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列がFKBP12ポリペプチド配列であることを特徴とする、請求項18または19記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項22】
配列番号4または配列番号5に記載のポリペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項18または19記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項23】
標的タンパク質のフォールディングヘルパーとしての請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項24】
標的タンパク質の産生プロセスにおけるフォールディングヘルパーとしての請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項25】
標的タンパク質の産生プロセスにおける融合パートナーとしての請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項26】
イムノアッセイにおける請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項27】
ワクチンの作製における請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項28】
医薬品の作製方法における請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項29】
請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物。
【請求項1】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b) その上流に、FK506結合タンパク質またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および
c) その下流に、FK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
を含む、キメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子。
【請求項2】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
b) その上流に、ヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIase)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および
c) その下流に、ヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ(PPIase) をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
を含む、請求項1記載のキメラ融合タンパク質をコードする組換えDNA分子。
【請求項3】
d) 標的ポリペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列
をさらに含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項4】
前記非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が、FKBP型の大腸菌PPIaseシャペロンをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項5】
前記非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列が、大腸菌SlyDまたはSlpAシャペロンをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項6】
大腸菌SlyDヌクレオチド配列が、N末端が配列番号1のアミノ酸番号56〜75の間に位置する任意のアミノ酸で始まり、C末端が配列番号1のアミノ酸番号122〜136に位置する任意のアミノ酸で終わるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項5記載の組換えDNA分子。
【請求項7】
大腸菌SlyDヌクレオチド配列が、N末端が配列番号1のアミノ酸番号70で始まり、C末端がアミノ酸番号129で終わるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項6記載の組換えDNA分子。
【請求項8】
ヒトペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼをコードする上流および/または下流ヌクレオチド配列が、FK506結合タンパク質(FKBP)をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項2記載の組換えDNA分子。
【請求項9】
ヒトFK506結合タンパク質をコードする上流および/または下流ヌクレオチド配列が、FKBP12をコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、請求項8記載の組換えDNA分子。
【請求項10】
FKBP12をコードする上流ヌクレオチド配列が、N末端が配列番号2または3のアミノ酸番号1〜20の間に位置する任意のアミノ酸で始まり、C末端が配列番号2または3のアミノ酸番号70〜89の間に位置する任意のアミノ酸で終わるポリペプチドをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項9記載の組換えDNA分子。
【請求項11】
FKBP12をコードする下流ヌクレオチド配列が、N末端が配列番号2または配列番号3のアミノ酸番号90〜97の間に位置する任意のアミノ酸で始まり、C末端が配列番号2または配列番号3のアミノ酸番号103〜107の間に位置する任意のアミノ酸で終わるポリペプチドをコードする配列を含むことを特徴とする、請求項9記載の組換えDNA分子。
【請求項12】
配列番号4または配列番号5に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むことを特徴とする、前記請求項いずれかに記載の組換えDNA分子。
【請求項13】
請求項1〜12いずれかに記載の作動可能に連結された組換えDNA分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項15】
a) 請求項14記載の宿主細胞を培養する工程
b) 前記キメラ融合タンパク質の発現工程、および
c) 前記キメラ融合タンパク質の精製工程
を含む、キメラ融合タンパク質の作製方法。
【請求項16】
請求項15記載の方法によって作製された組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項17】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、
b) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN末端に融合されたFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列、および
c) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC末端に融合されたFK506結合タンパク質(FKBP)またはFK506結合タンパク質様ドメイン(FKBP様ドメイン)のポリペプチド配列を含む、組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項18】
a) 非ヒトシャペロンタンパク質のポリペプチド結合セグメントを含むポリペプチド配列、
b) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のN末端に融合されたヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列、および
c) 非ヒトシャペロンポリペプチド配列のC末端に融合されたヒトFKBP型ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列
を含む、請求項17記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項19】
d) 少なくとも1つの標的ポリペプチド
をさらに含むことを特徴とする、請求項17または18記載の組換え作製融合タンパク質。
【請求項20】
非ヒトシャペロンタンパク質配列が大腸菌SlyDシャペロンポリペプチド配列であること、および非ヒトシャペロン配列のN末端およびC末端に融合されたヒトペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列がFKBP12ポリペプチド配列であることを特徴とする、請求項18または19記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項21】
非ヒトシャペロンタンパク質配列が大腸菌SlpAシャペロンポリペプチド配列であること、および非ヒトシャペロン配列のN末端およびC末端に融合されたヒトペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼのポリペプチド配列がFKBP12ポリペプチド配列であることを特徴とする、請求項18または19記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項22】
配列番号4または配列番号5に記載のポリペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項18または19記載の組換え作製キメラ融合タンパク質。
【請求項23】
標的タンパク質のフォールディングヘルパーとしての請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項24】
標的タンパク質の産生プロセスにおけるフォールディングヘルパーとしての請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項25】
標的タンパク質の産生プロセスにおける融合パートナーとしての請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項26】
イムノアッセイにおける請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項27】
ワクチンの作製における請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項28】
医薬品の作製方法における請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質の使用。
【請求項29】
請求項16〜22いずれか記載の組換え作製キメラ融合タンパク質、および薬学的に許容され得る賦形剤を含む組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−521938(P2009−521938A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548951(P2008−548951)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012599
【国際公開番号】WO2007/077008
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012599
【国際公開番号】WO2007/077008
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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