説明

充填バルブ装置

【課題】構成が簡単でシールパッキンに大きな押し力がかからぬような容器シール構造を有する充填バルブ装置を提供する。
【解決手段】グリッパ41と、容器口シール43とを備えた充填バルブとからなり、空のPETボトル8を保持したグリッパ41が充填バルブに対して相対的に上下移動することにより、容器ネックリング8aに充填バルブの容器口シール43を当接させてガスシールし炭酸ガス入り飲料の充填を行う充填バルブ装置において、容器口シール43の断面形状を内側に向かうリップ形状として内側内周において充填バルブの縦軸方向に柔軟性を持たせ、飲料充填時に容器口シール43の内側がネックリング部8aに当接し充填時に加えられるガス圧により、PETボトル8と容器口シール43にシール力が加わるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸飲料等の液貯留槽内で炭酸ガス背圧が加えられている飲料液をPETボトル、ボトル缶等の容器に充填する充填装置に関し、特に、簡単な構成でガスシール、液シールができる充填バルブの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の充填バルブで炭酸飲料を充填するとき、充填中に飲料に溶けている炭酸ガスが発泡して抜け出さないように、容器内にもガス圧をかけて充填するようにしているが、容器を密閉するためにシール用パッキンを容器の口に押し付けてシールするのが一般的である。
【0003】
特許文献1に示す従来例の炭酸飲料の充填装置は、容器口が直接充填ノズルに接触しないように、充填バルブと一体の外筒型のチャンバーの下端に備えたパッキンをプラスチック容器のネックリングの上面に押し付けてシールする衛生重視の方式である。
【0004】
また、特許文献2に示す従来例は、充填バルブの外筒の内円筒側に設けたリング状溝に内方向に膨れるリング状パッキンを嵌め込み、容器を取り込んだとき、エア圧をかけ、内側向きに膨らませて容器の胴部を締め付けてシールする構成である。
【0005】
また、特許文献3に示す従来例は、充填バルブと一体の外筒型のチャンバーの下端に備えたパッキンを容器の上胴部の円錐面に押し付けてシールする方式である。
【特許文献1】特許第2856057号公報(図1)
【特許文献2】特開平3−98803号公報(第1図)
【特許文献3】特開平3−98894号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の容器口のシール方式は、炭酸飲料の最大圧力においても容器内をシールできるだけの大きい押し付け力が必要となり、従って、柔軟な材料ではシールパッキンの寿命が短くなるという問題点がある。特許文献1のプラスチック容器のネックリングシール方式は、シールパッキンが大きくなり、炭酸飲料の最大圧力においてもシールできるだけの圧力が必要となり、従ってシール力が大きいので、シールパッキンの寿命が短くなる等の問題点がある。
【0007】
また、特許文献2に示す充填バルブ装置の容器胴部においてリング状エアチューブを内側に膨らませてガスシールする方式は、胴部が円形断面でない容器や凹凸がある側面を有する容器には適用が困難であり、構造が複雑でコストが高くなる欠点がある。
また、特許文献3に示す充填バルブと一体の外筒の下端のシールパッキンを容器の上胴部の円錐面に押し付けてシールする方式は、シールパッキンが大きくなり、炭酸飲料の最大圧力においてもシールできるだけの圧力が必要でシール力が大きいので、シールパッキンの寿命が短くなる問題点がある。
本発明は、構成が簡単でシールパッキンに大きな押し力がかからぬような容器シール構造を有する充填バルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点に対し、本発明は以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段の充填バルブ装置は、容器保持手段と、容器シール用リング状シールパッキンを備えた充填バルブとからなり、空の容器を保持した容器保持手段が充填バルブに対して相対的に上下移動することにより容器口部、又は、容器ネックリング部に充填バルブのシールパッキンを当接させてガスシールし炭酸ガス入り飲料の充填を行う充填バルブ装置において、シールパッキンの断面形状を内側に向かうリップ形状として内側内周において充填バルブの縦軸方向に柔軟性を持たせ、飲料充填時に前記シールパッキンの内側が容器口部、又は、ネックリング部に当接し充填時に加えられるガス圧により容器とシールパッキンにシール力が加わるようにしたことを特徴とする。
【0009】
(2)第2の手段の充填バルブ装置は、容器保持手段と、容器シール用リング状シールパッキンを備えた充填バルブとからなり、空の容器を保持した容器保持手段が充填バルブに対して相対的に上下移動することにより容器胴の円錐部を充填バルブのシールパッキンに当接させてガスシールし炭酸ガス入り飲料の充填を行う充填バルブ装置において、シールパッキンの断面形状を内側に向かうリップ形状として内側内周において充填バルブの縦軸方向に柔軟性を持たせ、飲料充填時に前記シールパッキンの内側が容器胴の円錐部に当接し充填時に加えられるガス圧によりシールパッキンにシール力が加わるようにしたことを特徴とする。
【0010】
(3)第3の手段の充填バルブ装置は、上記(1)及び(2)の充填バルブ装置において、容器シール用リング状シールパッキンの外側枠は内側が開いたコの字型断面として柔軟性を持たせ、充填バルブのシールパッキン嵌めこみ溝に容易に嵌めこむことができると同時に、ガス圧の作用で充填バルブと前記リング状シールパッキンとのシール力を保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び請求項2に係わる発明は、上記の第1及び第2の手段の充填バルブ装置であって、シールパッキンが容器の口部、又は、ネックリング部、又は、容器胴円錐部に当接するときの変形量も力も少なく、ガス飲料が有する背圧(ガス圧)が印加されるので飲料ガス圧に比例した充分なシール力が得られるので、耐久寿命が長く、構造が簡単であるのでコストも安い。
【0012】
請求項3に係わる発明は、上記のシールパッキンに柔軟性を持たせ、シールパッキンを取り付けるために充填バルブを分割しなくても、シール嵌めこみ溝に容易に嵌めこむことができると同時に、ガス圧の作用で充填バルブと前記リング状パッキンとのシール力を保持することができるので、シールパッキンのみならず、充填バルブの嵌め込み溝の構造も簡単となり、コストを安くできる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施の形態においては、炭酸ガス入り飲料(以降、炭酸飲料と称する。)をネックリング付PETボトル、又はネックリングが無いボトル缶を使用した例について説明を進めることとする。
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の容器口シールが使用される充填バルブ装置の概略と第1の実施の形態の容器口シールについて、図に基づいて説明する。図1は実施の形態に係わる充填バルブ装置の概略を示す側面断面図で複数本立てのロータリー充填機の充填バルブの1つのセクションを表している。図2は第1の実施の形態に係わる容器口シールと容器口周辺を示す側面断面図、図3は容器口シール作用を示す側面断面図である。
【0015】
図において、充填バルブ11のバルブ本体17には、炭酸飲料を供給する飲料通路12が連結され、バルブ本体17内のガス通路17bに炭酸ガスを供給するガス通路37a,37bと、ガスリターン通路37cが連結されている。また、バルブ本体17の下側の円筒部にはナット19により容器口シール43が取り付けられている。また、飲料通路12には炭酸飲料の充填量を計量する流量計26と液量を精密に計量するため、流量を2段階に調整できる流量切換弁27とが設けられている。
【0016】
バルブ本体17の上部にエアシリンダ22が取り付けられ、そのエアシリンダ22の駆動ロッドに液バルブ18が直結されている。切換弁24での作動エアの切換えによりエアシリンダ22が上下方向に駆動することにより、液バルブ18が移動し、飲料液通路17aを開閉する。シールパッキン15は液バルブ18のシール用パッキンである。
【0017】
バルブ本体17のガス通路17bに結合されたガス通路37a,37bと、ガスリターン通路37cの他方は切換バルブ本体31に結合される (ロータリー充填機の場合は、この切換バルブ本体31は3重のリング状のガス通路を有するリング形状となっている)。バルブ本体17には電磁弁34a,34b,34cが取り付けられている。
【0018】
PETボトル8が充填バルブ11の所定位置に置かれ、炭酸飲料の充填を開始する前に、電磁弁34aを開いてバルブ本体17のガス通路17bを経てPETボトル8へ低圧の炭酸ガスを送り、電磁弁34cを開いてガスリターン通路37cを通にし、PETボトル8内のエアを低圧の炭酸ガスと置き換えるようにする。飲料充填の直前に、電磁弁34aを閉じ、電磁弁34cを閉じてガスリターン通路37cを閉じ、電磁弁34bを開いてPETボトル8内に炭酸飲料の背圧と同圧の炭酸ガスを満たし、液バルブ18を開いて炭酸ガスに置き換えて飲料をボトル8に設定量充填し、充填が終わったらエアシリンダ22を作動させて液バルブ18を閉じ、電磁弁34bを閉じ、電磁弁34cを開いてガスリターン通路37cを通にしてボトル8内のガスをスニフトして圧を下げ、PETボトル8を下降させ、充填バルブ11から開放する。
【0019】
充填バルブ11毎に備えられた容器昇降手段35は、PETボトル8をネックリング8aの下面で保持するグリッパ41と、グリッパ41を昇降させる容器昇降カム36とからなり、グリッパ41が空のPETボトル8を保持し、容器昇降手段35がグリッパ41を充填バルブ11に対して相対的に上下移動することによりPETボトル8のネックリング8aの上面に充填バルブ11の下部の容器口シール43を当接させてガスシールする。
【0020】
図2に示すように、容器口シール43の断面形状は内側に向かうリップ形状であり、内側内周において充填バルブ11の縦軸方向に柔軟性を持たせているので、炭酸飲料充填時には図3に示すように、容器口シール43の内側がネックリング8aに当接して湾曲し、充填時に加えられるガス圧がそのまま容器口シール43のシール力となっている。従ってPETボトル8のネックリング8aには充填バルブ11からシールのための押し力を加える必要なく、グリッパ41にも容器昇降手段35にも充填処理時のPETボトル8を支える力以外の力は要らない。
【0021】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、PETボトル8と充填バルブ11とをシールする場所がPETボトル8の口部であることであり、この点以外の構成は第1の実施の形態と同じであるので、第1の実施の形態と異なる部分を説明し、同じ構成は省くことにする。図4及び図5によって構成と作用を説明する。図4は容器口シールと容器口周辺を示す側面断面図、図5は図4における容器口シール作用を示す側面断面図である。
【0022】
図4はPETボトル8が充填バルブ11の真下の設定位置にあることを示す。図5はPETボトル8が上昇して炭酸飲料充填位置にあることを示す。グリッパ41が空のPETボトル8を保持し、容器昇降手段35がグリッパ41を充填バルブ11に対して相対的に上下移動することにより、充填バルブ11の下部の容器口シール44がPETボトル8の口部の上面8bに当接してガスシールする。21は容器口シール44の取付け用のナットである。
【0023】
図4に示すように、容器口シール44の断面形状は内側に向かうリップ形状であり、内側内周において充填バルブ11の縦軸方向に柔軟性を持たせているので、炭酸飲料充填時には図5に示すように、容器口シール44の内側がPETボトル8の口部の上面8bに当接して湾曲し、充填時に加えられるガス圧がそのままPETボトル8に対する容器口シール44のシール力となっている。従ってPETボトル8の口部の上面8bには充填バルブ11からシールのための押し力を加える必要なく、グリッパ41にも容器昇降手段35にも充填処理時のPETボトル8を支える力以外の力は要らない。
【0024】
(第3の実施の形態)
この実施の形態は、取り扱う容器がネックリングのないボトル缶28等に適用できるものである。ボトル缶28と充填バルブ11とをシールする場所がボトル缶28の容器胴の円錐部であること、ネックリングが無いので、充填バルブ11の下でボトル缶28を保持やハンドリングには、図示しないスターホイールや固定の容器ガイド等を必要とし、また、容器リフト38はボトル缶28の底を押し上げる方式となる。このこと以外の充填バルブ11周りの構成は第1の実施の形態(図1)と同じであり、異なった構成以外の部分の説明は省略する。図6は容器シールと容器口周辺及び容器シール作用を示す側面断面図である。
【0025】
図6に示すように、容器シール45は内側に向かうリップ形状として内側内周において軸方向に柔軟性を持たせ、飲料充填時に容器シール45の内側がボトル缶28の円錐部28aに当接し、充填時に加えられるガス圧により容器シール45にシール力が加わるようにしたものである。従って、ボトル缶28には充填バルブ11からシールのための押し力を加える必要なく、容器リフト38にも充填処理時のボトル缶28を支える力以外の力は要らない。58は容器シール45の取付け用ナットである。
【0026】
(第4の実施の形態)
本実施の形態の容器シール46は、上記第1〜第3の実施の形態に使用されている容器口シール43,44及び容器シール45に置き換えて使用できるものである。図7は容器口シールの形状を示す側面断面図、図8は図7における容器口シール作用を示す側面断面図である。図7に示すように、リング状の容器シール46の外側枠は内側が開いたコの字型断面として柔軟性を持たせ、容器シール46を取り付けるために上記第1〜第3の実施の形態におけるバルブ本体17を分割しなくても、バルブ本体51(バルブ本体17と容器シール取付け用のナット19,21又は58を一体としたもの)の容器シール46の嵌めこみ溝51aに容易に嵌めこむことができると同時に、ガス圧の作用でバルブ本体51と容器シール46とのシール力、さらにガス圧が容器シール46のコの字型断面を押すので容器シール46とバルブ本体51間もシール力を保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる充填バルブ装置の概略を示す側面断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる容器口シールと容器口周辺を示す側面断面図である。
【図3】図2における容器口シール作用を示す側面断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係わる容器口シールと容器口周辺を示す側面断面図である。
【図5】図4における容器口シール作用を示す側面断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係わる容器シールと容器口周辺及び容器シール作用を示す側面断面図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態に係わる容器口シールの形状を示す側面断面図である。
【図8】図7における容器口シール作用を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0028】
8…PETボトル、
8a…ネックリング、
8b…上面、
11…充填バルブ、
17,51…バルブ本体、
18…液バルブ、
28…ボトル缶、
28a…円錐部、
41…グリッパ、
43,44…容器口シール、
45,46…容器シール、
51a…嵌め込み溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器保持手段と、容器シール用リング状シールパッキンを備えた充填バルブとからなり、空の容器を保持した容器保持手段が充填バルブに対して相対的に上下移動することにより容器口部、又は、容器ネックリング部に充填バルブのシールパッキンを当接させてガスシールし炭酸ガス入り飲料の充填を行う充填バルブ装置において、シールパッキンの断面形状を内側に向かうリップ形状として内側内周において充填バルブの縦軸方向に柔軟性を持たせ、飲料充填時に前記シールパッキンの内側が容器口部、又は、ネックリング部に当接し充填時に加えられるガス圧により容器とシールパッキンにシール力が加わるようにしたことを特徴とする充填バルブ装置。
【請求項2】
容器保持手段と、容器シール用リング状シールパッキンを備えた充填バルブとからなり、空の容器を保持した容器保持手段が充填バルブに対して相対的に上下移動することにより容器胴の円錐部を充填バルブのシールパッキンに当接させてガスシールし炭酸ガス入り飲料の充填を行う充填バルブ装置において、シールパッキンの断面形状を内側に向かうリップ形状として内側内周において充填バルブの縦軸方向に柔軟性を持たせ、飲料充填時に前記パッキンの内側が容器胴の円錐部に当接し充填時に加えられるガス圧によりシールパッキンにシール力が加わるようにしたことを特徴とする充填バルブ装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2に記載する充填バルブ装置において、容器シール用リング状シールパッキンの外側枠は内側が開いたコの字型断面として柔軟性を持たせ、充填バルブのシールパッキン嵌めこみ溝に容易に嵌めこむことができると同時に、ガス圧の作用で充填バルブと前記リング状シールパッキンとのシール力を保持することを特徴とする充填バルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−42832(P2010−42832A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207771(P2008−207771)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(391026058)ザ・コカ−コーラ・カンパニー (238)
【氏名又は名称原語表記】THE COCA−COLA COMPANY
【Fターム(参考)】