説明

充填バルブ

【課題】弾性チューブ26を押圧して内部の通路38を閉鎖するピンチバルブの、充填終了後の液だれをなくす。
【解決手段】バルブハウジング2内に形成された充填液通路4の下方に弾性チューブ26が配置されている。弾性チューブ26は、くせが付けられており、3個所の内方突出部26aが形成されている。これら各突出部26aの外方にそれぞれ押圧部材28が配置され、上方のエアシリンダ10の作動により昇降する昇降部材14が下降すると半径方向内方へ移動して、弾性チューブ26の内部通路38が閉鎖される。押圧部材28にはリターンスプリング32が取り付けられており、昇降部材14の力が除かれると半径方向外方へ後退する。押圧部材28が進退動可能に収容された室30内にバキュームを作用させると、弾性チューブ26の前記突出部26aが外方へ移動して弾性チューブ26が拡開し円形に開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィラに設けられた充填バルブに係り、特に、チューブ等の弾性体により構成された液通路を、外側から押圧して内面を密着させることにより閉鎖する充填バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、大粒の固形物入りの液体を充填する場合には、固形物の通過を妨げないような弾性体のチューブを充填液の通路とし、充填終了時には外部から押圧してチューブ内の液通路を閉鎖するようにしたピンチバルブが用いられている。ピンチバルブは、弾性体のチューブを外側から押圧することにより内部の液通路を閉鎖する構成なので、液通路を閉鎖した後、チューブの押圧した個所よりも下方の部分に残存する液体が落下して液だれが発生するという問題があった。前記液だれの量を減らすために、弾性体のチューブの下端を押圧する構成にすると、弾性体のチューブが変形して吐出される液が整流されず、周りに飛び散る恐れがあるという問題が発生する。
【0003】
前記のようなピンチバルブからの液だれを防止するための発明が、従来から各種提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2または特許文献3参照)。特許文献1に記載された発明の構成は、ホッパー1の下部注出筒へシリコンチューブ2の上端を連結するととともに、シリコンチューブ2に沿って、上部から下部へ、第1のチューブ圧塞弁3,液押し出し用圧迫板4、第2のチューブ圧塞弁5および吸入用のスペース調整弁6を所定間隔で順次配置し、前記各弁および圧迫板に対抗し、シリコンチューブを挟むようにしてチューブ受け板7、8、9、10を夫々設置するようになっている。
【0004】
この発明では、充填終了時に、最も下方に設置されている吸入用のスペース調整弁を後退させることにより、シリコンチューブ下端のノズルに吸引力を作用させて、残滴の滴下を阻止するようにしている。
【0005】
また、特許文献2に記載された充填装置に係る発明は、以下のように構成されている。充填液を貯留する充填液タンク2に弾性チューブ4が接続され、この弾性チューブ4を介して容器6内に充填液を充填する。そして、充填終了時には、押圧ローラ10と水平エアシリンダ12から成る押圧手段8によって弾性チューブ4を外側から押圧して充填液の流下を停止させる。この押圧手段8は垂直なエアシリンダ14により昇降できるようになっており、充填停止後、押圧ローラー10で弾性チューブ4を押圧したまま、この押圧ローラ10を下降させて弾性チューブ4の下部に残っている充填液を排出する。
【0006】
さらに、特許文献3に記載された発明は以下のように構成されている。すなわち、弁装置は、細長い充填チューブ状の室1を有する。室はその上端に置かれた入口ダクト2を経て計量ポンプに結合される。室1の下端には出口4があり、出口には可撓性材料で作られた閉じることのできるノズル5が設けられている。入口ダクト2と室1との間の通路に設けられた弁3は弁体6を有する。弁体6はピストンポンプにより圧送された液体の作用で、通路を開いた位置と閉じた位置との間で移動することができる。
【0007】
弁体6はばね12によって閉位置に押圧されており、液体の圧力がばねの力にうち勝つと弁体は開位置に動く。ノズル5の下端に複数の折り目14を有するラグ16が形成されている、ラグは可撓性のため液体がノズルを通過するとき半径方向外方へ開き、液体の圧力が無いときに材料の可撓性により閉じる。この弁装置では、充填終了後の戻り運動時に、弁体が通路を閉じた後、さらに閉位置に向けて移動すると、作動室の容積が増加して、真空が作用し、開いたラグを吸い寄せて押しつけ、事後滴下を防止する。
【特許文献1】実公昭61−4817号公報(第1−2頁、図7)
【特許文献2】特開2005−14945号公報(第4−5頁、図1)
【特許文献3】特公平5−14150号公報(第2−3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1の構成は、充填終了時にノズルに吸引力を作用させるだけで、液通路を完全に閉鎖しているわけではないので、チューブの径が太い場合や充填液の粘度によっては液だれが生じる可能性がある。しかも、通常のピンチバルブの構成の他に吸引するための機構が必要であり、構造が複雑であるという欠点がある。
【0009】
また、特許文献2の構成では、押圧部材を昇降させる機構が必要である。しかも、閉鎖作業が閉じる動作と下降する動作の2アクションであり、作業時間が長くかかるという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献3の構成では、充填される液体の液圧によって開放するようになっているので、液圧の強さによっては開放しない場合があり、確実性に欠けるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明は、充填液が通過する充填液通路と、この充填液通路に設けられた弾性チューブと、この弾性チューブを押圧して内部の通路を閉鎖させる押圧部材と、この押圧部材を移動させる移動手段と、前記弾性チューブを吸引して外側へ拡開させる真空手段とを備え、充填時には、この真空手段によって弾性チューブを外側へ拡開させることにより前記内部通路を開放し、充填終了時には、前記押圧部材によって弾性チューブを押圧することにより前記内部通路を閉鎖することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載した発明は、前記弾性チューブが、内側へ突出するようにくせが付与された突出部を複数有するとともに、前記押圧部材を各突出部に対応させて配置したことを特徴とするものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載した発明は、前記押圧部材によって弾性チューブを押圧することにより、前記各突出部を密着させて前記内部通路を閉鎖することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、充填終了後にノズルの先端部側を吸引するための機構や、ピンチバルブよりも下方のチューブ内の液体を絞り出すための昇降機構等が必要なく、構造が簡単で装置がコンパクトであり、しかも、液圧等に左右されず確実に作動する信頼性の高い充填バルブにより、充填終了時の液だれを防止することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
充填液が通過する充填液通路に弾性チューブを設け、弾性チューブ内の通路を閉鎖するときには、移動手段によって押圧部材をチューブ側に移動させ、チューブを押圧して内面を密着させ、チューブ内の通路を開放して充填を行う場合には、真空手段によってチューブの外面を吸引して外側に拡開させるという構成により、ピンチバルブからの液だれを防止するとともに、他の吸引機構や昇降機構を設けることなく簡単な構造で、しかも、確実に開閉作動するという目的を達成することができる。
【実施例1】
【0016】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係る充填バルブ(全体として符号1で示す)の縦断面図、図2および図3はこの充填バルブ1の横断面図であり、異なる作動状態を示す。バルブハウジング2は、上部2aが小径で下部2bが大径のほぼ円筒状をしており、その軸心部に充填液通路4が形成されている。この充填液通路4の上端部が、図示しない配管およびバルブ等を介して充填液タンクに接続され、下部には、後に説明する液バルブ6が設けられている。バルブハウジング2の大径部2aの外面側には、このバルブハウジング2の外周面とその下部内に設けられた液バルブ6を囲むカバー8が取り付けられている。このカバー8の下端に開口部8aが形成されており、この開口部8aが、容器内に充填する充填液の吐出口になっている。
【0017】
前記バルブハウジング2の内部にエアシリンダ10が設けられている。バルブハウジング2の下部側に形成された大径部2bの内部に、円筒状のシリンダ室12が形成されており、このシリンダ室12内に昇降可能に嵌合された環状ピストン13によって、シリンダ室12内が上部圧力室12aと下部圧力室12bとに区画されている。ピストン13の下部には、3個所の昇降部材14が設けられており、上下の圧力室12a、12bへのエアの給排によって、ピストン13および昇降部材14が一体として昇降する。前記ピストン13の内面側と外面側にそれぞれシール部材16、18が嵌着されて上下の圧力室12a、12b間の気密を保持している。また、昇降部材14の内面とバルブハウジング2の壁面との間、および昇降部材14の外面とバルブハウジング2の壁面との間にそれぞれシール部材20、22が嵌着されて気密を保持している。
【0018】
前記バルブハウジング2の中心部に形成された充填液通路4の下方に、ケース24内に保持された弾性体のチューブ26が設けられている。この弾性チューブ26は、図2に示すように、予めくせが付けられて、3個所の内方への突出部26aが形成されており、自由状態では図2の内部側に示された形状をしている。これら3個所の内方突出部26aの外方にはそれぞれ押圧部材28が配置されている。これら3個の押圧部材28は、それぞれ半径方向に向けて配置された室30内に嵌合され、半径方向に進退動できるようになっている。なお、前記弾性チューブ26に形成された突出部26aの数および押圧部材28の数は3個に限るものではなく、その他の数であっても良い。
【0019】
各押圧部材28には、それぞれ両側からリターンスプリング32が結合されて(図2参照)おり、これらスプリング32によって押圧部材28は常時後退する方向(半径方向外方側)へ付勢されている。各押圧部材28の背面中央部には、後方へ向けて次第に低くなる傾斜溝28aが形成されており、この傾斜溝28a内に、前記ピストン13に設けられた昇降部材14の下端部が係合している。昇降部材14の下端面14aは、前記押圧部材28の傾斜溝28aの勾配とほぼ同一の傾斜を有しており、ピストン13および昇降部材14が下降すると、昇降部材の14下端の傾斜面14aが、押圧部材28の傾斜溝28aを押圧しつつ下降することにより、押圧部材28を前記室30の両側壁に沿って半径方向内方へ前進させる。各押圧部材28の先端面28b(半径方向内方側の面)は、両側が斜めに切り取られ、ほぼ120度の角度を有して突出した形状をしており、押圧部材28が3方から同時に前進すると、図3に示すように、先端面28bが互いに合致して弾性チューブ26の内面側を密着させる。前記弾性チューブ26は、その上下端がケース24に取り付けられており、その中間の部分を押圧部材28によって押圧して密着させる。なお、前記エアシリンダ10と昇降部材14およびスプリング32とにより、請求項1に記載した移動手段が構成されている。
【0020】
バルブハウジング2に形成された大径部2bの上部壁面の内部には、前記シリンダ室12の上部圧力室12a内にエアを供給するエア通路34が設けられている。また、バルブハウジング2の周壁の外面側に、各押圧部材28が収容されている室30内に連通するバキューム通路(真空手段)36が形成されている。図示しないエア供給源から前記エア通路34を介して上部圧力室12aに圧縮エアを供給すると、ピストン13および昇降部材14が下降し、昇降部材14の下端の傾斜面14aによって押圧部材28が半径方向内方側に押し込まれる。また、前記上部圧力室12aを大気に開放すると、押圧部材28はリターンスプリング32によって半径方向外方側へ後退される。このように押圧部材28が後退すると、3方の押圧部材28によって押しつぶされていた弾性チューブ26は、密着状態が解除されるが、前述のように自由状態では内方への突出部26aが形成されているので完全には開放されない恐れがある。そこで、図示しない真空源に接続された前記バキューム通路36から、押圧部材28が収容されている室30内にバキュームを作用させ、弾性チューブ26の突出部26aを外側へ移動させて、弾性チューブ26を拡開させ、その内部通路38を開放する。開放した弾性チューブ26の外側はケース24によって規制され、円形の内部通路38が確保される。
【0021】
前記構成の充填バルブ1の作動について説明する。充填開始前は、エア通路34を介してシリンダ室12の上部圧力室12a内に圧縮エアを供給し、ピストン13および昇降部材14を下降させ、昇降部材14によって3個所の押圧部材28を半径方向内方側へ前進させておく。3個の押圧部材28を前進させて、その先端面28bによって弾性チューブ26の3個所の突出部26aを内部側に押し込んで密着させることにより、内部通路38を閉鎖している(図3参照)。
【0022】
この充填バルブ1の下方に容器(図示せず)が供給されると、上部圧力室12aを大気に開放して、ピストン13および昇降部材14の下方への押圧力を除き、各リターンスプリング32の力によって3個の押圧部材28を半径方向外方へ後退させるとともに、各押圧部材28が収容されている室30内にバキュームを作用させて、弾性チューブ26の内方突出部26aを吸引し、外側へ拡開させることにより、弾体チューブ28を円形に開放する。充填液タンク(図示せず)からこの液バルブ6の上方まで送られていた充填液が、この弾性チューブ28内を通り、カバー8の下端に形成された吐出口8aから容器内に充填される。弾性チューブ28は、周囲をケース24によって規制されてほぼ円形状態に開放しているので、大粒の固形物が混入している液体でも、通過が妨げられることなくスムーズに充填される。
【0023】
所定量の充填が行われると、エアシリンダ10の上部圧力室12aに圧縮エアを供給し、ピストン13および昇降部材14を下降させることによって押圧部材28を前進させ、再び弾性チューブ26の突出部26aを押圧して、その内面同士を密着させ、内部通路38を完全に閉鎖する。この実施例では、液バルブ6がバルブハウジング2に形成された充填液通路4の下端に設けられており、液バルブ6を閉じた後に液だれが発生することがない。また、弾性チューブ26の上下端がケース24に取り付けられ、押圧部材28によってその間の部分を押圧して密封するようにしているので、弾性チューブ26が変形して充填される液体の流れが乱れることもない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】充填バルブの縦断面図である。(実施例1)
【図2】前記充填バルブの横断面図である。
【図3】前記充填バルブの横断面図であり、図2と異なる作動状態を示す。
【符号の説明】
【0025】
4 充填液通路
10 エアシリンダ(移動手段)
14 昇降部材(移動手段)
24 リターンスプリング(移動手段)
26 弾性チューブ
26a 突出部
28 押圧部材
36 バキューム通路(真空手段)
38 内部通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填液が通過する充填液通路と、この充填液通路に設けられた弾性チューブと、この弾性チューブを押圧して内部の通路を閉鎖させる押圧部材と、この押圧部材を移動させる移動手段と、前記弾性チューブを吸引して外側へ拡開させる真空手段とを備え、
充填時には、この真空手段によって弾性チューブを外側へ拡開させることにより前記内部通路を開放し、充填終了時には、前記押圧部材によって弾性チューブを押圧することにより前記内部通路を閉鎖することを特徴とする充填バルブ。
【請求項2】
前記弾性チューブは、内側へ突出するようにくせが付与された突出部を複数有するとともに、前記押圧部材を各突出部に対応させて配置したことを特徴とする請求項1に記載の充填バルブ
【請求項3】
前記押圧部材によって弾性チューブを押圧することにより、前記各突出部を密着させて前記内部通路を閉鎖することを特徴とする請求項2に記載の充填バルブ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−327676(P2006−327676A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157714(P2005−157714)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】