説明

充填型ポリウレタンフォームドレッシング材およびその製造方法

【課題】 滲出液の発生が比較的多い深傷に適用しても容易に充填することができ、吸収性、透湿性、傷面付着性、物性などを改善してさらに効率的な創傷治癒効果を期待することが可能な構造の充填型ポリウレタンフォームドレッシング材およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 深い傷に使用する充填型ポリウレタンフォームドレッシング材およびその製造方法に関するものである。その構造が直径50〜400μmのオープンセルおよび直径10〜80μmのポアを多数含む親水性ポリウレタンフォームからなる充填型ポリウレタンフォームドレッシング材を提供する。ポリウレタンプレポリマー40〜75重量%に、発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、および界面活性剤、保湿剤、顔料を含む添加剤0.5〜15重量%を混合して攪拌した後、モールドに注入して発泡、製造する充填型ポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、深い傷に使用する充填型フォームドレッシング材に係り、さらに詳しくは、その構造が直径50〜400μmのオープンセル(open cell)および直径10〜80μmのポア(pore)を多数含む親水性フォームからなり、特に500〜2000重量%の高吸収度を有し、35℃、90%の相対湿度の下で2000〜5000g/m/24hrsの高透湿性を有し、滲出液を迅速に吸収する充填型ポリウレタンフォームドレッシング材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、体内保護、体温調節、細菌感染防止、知覚、分泌などの重要な機能を行う器官であって、各種外傷や創傷、火傷、褥瘡などの傷が発生してその機能を失うと、傷が完全に治癒するまで患者に苦痛を与えるが、広範囲な損傷を被った場合には命までもが危険に晒される。
【0003】
特に、褥瘡や開放外科創傷(open surgical wounds)など分泌物が多い傷の場合、傷部位に分泌物が溜まらないようにして感染を防止することが必要である。血液または膿疱のような傷滲出液が傷部位に蓄積されると、バクテリアの成長を促進させて感染を起こし、傷の治癒を遅延させる。また、滲出液は、傷に隣接した組織の浸軟(maceration)を生じさせて傷部位を拡大させることができる。ところが、適切な湿潤状態を維持することは傷の治癒に好ましいので、過度な滲出液の除去による傷面乾燥は好ましくない。
【0004】
特に、キャビティ(cavity)、ポケット(pocket)、褥瘡などの深い傷のように滲出液の多い傷に向いているドレッシング材は、適切な湿潤状態の維持、傷の形状による自由な変形性、優れた滲出液吸収能力などが必要である。ここで、優れた滲出液吸収能力とは、滲出液の吸収速度が速く、滲出液の吸収度が高いことを意味する。一般に、深い傷に使用されてきた充填型ガーゼドレッシング材は、傷分泌物の吸収速度は速いが、吸収度が低く、傷を乾燥状態に維持させて治療を遅延させ、ドレッシング材が傷面に付着して取り替えが容易でないうえ、新生組織の損傷および痛みを伴うという問題点がある。また、治癒初期段階では、滲出液が多量発生するため、一日に数回もドレッシング材を取り替えなければならないという欠点もある。現在、ガーゼ型ドレッシング材の問題点を改善したドレッシング材が開発されて使用されているが、吸収性および透湿度の調節能力が足りなく、自由な充填が難しく、創傷面との付着性があり、取り替えの際に残存物を残すなどの問題点を抱えている実情である。
【0005】
現在開発されて使用されているドレッシング材の種類には、アルジネート型、ヒドロコロイド型、ヒドロゲル型、ポリウレタンフォーム型などがある。
【0006】
米国特許第4,704,113号に開示されているアルジネート型は、親水性であって、10〜20倍の吸収能を示し、傷面に残存する場合に生理食塩水などで洗浄除去が可能であって、滲出液の発生が激しい深傷に用いられている。ところが、取り替えの際に粘性物質が深い傷面に残存するおそれがあり、乾燥が激しい場合には傷面に付着して再生組織の損傷を誘発するおそれがある。
【0007】
米国特許第5,503,847および第5,830,932号に開示されているヒドロコロイド型は、粘着組成物層、外界からの衝撃を緩和させ且つ滲出液を吸収するヒドロコロイド層、および細菌や異物の浸透を防ぐフィルム層から構成されている。このようなヒドロコロイド型ドレッシング材は、少量の傷分泌物を吸収することによりゲルを形成し、湿潤環境を維持し且つpHを長期間弱酸性に維持して組織の障害を予防し、細胞の成長を促進させる環境を提供する。ところが、このヒドロコロイド型ドレッシング材は、充填型として使用することができず、滲出液の吸収能が100重量%未満と足りなく、取り替えまたは除去の際に傷面にゲルが付着して残留物として残って細菌を増殖させる栄養源となるため、2次的な除去操作が必要であるという欠点と、多量の分泌物を伴う傷には不適であるという欠点がある。
【0008】
米国特許第5,501,661および5,489、262号に開示されているヒドロゲル型ドレッシング材は、透過性のない高分子フィルム層にヒドロゲルが塗布された形をしているが、高分子フィルム層はヒドロゲルが脱水または乾燥することを防ぎ、ヒドロゲル層は傷面に接して滲出液を吸収し、湿潤環境を維持して傷の治療を促進させる。ところが、このヒドロゲル型ドレッシング材は、低い透湿度により、滲出液の多い傷には使用が不可能であり、水膨潤状態が持続されると、ドレッシング材が崩壊し、正常皮膚の浸軟(maceration)を生じさせるなどの欠点がある。
【0009】
米国特許第4,664,662号に開示されている親水性ポリウレタンフォームドレッシング材は、その構造をポリウレタンフォームの切れが微細孔付き網状フィルムで包まれている形にして、滲出液がよく吸収されるようにした。ところが、これを滲出液が多量発生する傷に適用する場合、網状フィルムに存在する孔により再生組織が付着して滲出液の吸収が十分でないことと、形態が多様でないため狭くて深い傷には充填し難いことなどの問題点がある。
要するに、前記のような従来のドレッシング材は、低吸収性、低透湿性、傷面付着性、低物性、使用残留物の発生、充填が容易でないことなどの問題点があり、多量の滲出液が発生する傷への適用には向いていない。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,704,113号明細書
【特許文献2】米国特許第5,503,847号明細書
【特許文献3】米国特許第5,830,932号明細書
【特許文献4】米国特許第5,501,661号明細書
【特許文献5】米国特許第5,489、262号明細書
【特許文献6】米国特許第4,664,662号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のように従来のドレッシング材の欠点といわれる低吸収性、低透湿性、傷面付着性、低物性、使用残留物の発生、充填が容易でない点などを解決するために創案されたもので、その目的とするところは、滲出液の発生が比較的多い深傷に適用しても容易に充填することができ、吸収性、透湿性、傷面付着性、物性などを改善してさらに効率的な創傷治癒効果を期待することが可能な構造の充填型ポリウレタンフォームドレッシング材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、火傷および深い傷に使用する親水性ドレッシング材において、直径50〜400μmのオープンセルおよび直径10〜80μmのポアを含む親水性フォームからなる充填型ポリウレタンフォームドレッシング材を提供する。
また、本発明は、前記のような充填型ポリウレタンフォームドレッシング材の好ましい製造方法として、ポリウレタンプレポリマー40〜75重量%に発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、および界面活性剤、保湿剤、顔料を含む添加剤0.5〜15重量%を混合して攪拌した後、モールドに注入して発泡、製造する充填型ポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法を提供する。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、充填型フォームドレッシング材の構造が直径50〜400μmのオープンセルおよび直径10〜80μmのポアを多数含むようにすることにより、高い滲出液吸収能および高透湿度を持たせ、かつ吸収滲出液を適切にフォーム内に蓄積させて適切な湿潤状態を保たせた。
【0014】
すなわち、添付図に示すように、本発明の充填型フォームドレッシング材は、その構造が直径50〜400μmのオープンセル1を多数含む親水性フォームからなっており、オープンセル1の壁には直径10〜80μmのポア2が形成されている。オープンセル化率は50〜90%である。これにより、本発明は、高い滲出液吸収能および高透湿度を有し、吸収された滲出液をフォーム内に蓄積して適切な湿潤状態を維持させる。また、自由な変形性を持つため、傷の形状に応じて自由に充填することができる。すなわち自由な変形性を持つことにより、穴の形で深く凹んだ傷に挿入して治癒させる充填型として特に有用である。
【0015】
本発明の充填型フォームドレッシング材は、厚さ、広さおよび形状を傷に応じて様々に製造することができる。図1は本発明の充填型フォームドレッシング材の断面模式図である。
本発明の充填型フォームドレッシング材は、0.1〜0.4g/cm範囲の密度を持つように製造することが好ましい。密度が大きい場合には、機械的物性には優れるが、透湿度は減少するおそれがあり、密度が小さい場合には、透湿度は高くなるが、機械的物性は減少するおそれがある。
【0016】
本発明の充填型フォームドレッシング材は、ポリウレタン、ポリエチレン、シリコン樹脂、天然および合成ゴム、ポリグリコール酸、ポリ乳酸またはこれらの共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子、コラーゲン、ゼラチン、カラヤガム、グアーガム、ヒアルロン酸、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、フィブリン、セルロースなどの天然高分子またはこれら由来の合成高分子を単独でまたは混合して使用して製造することができる。
【0017】
フォームドレッシング材の最も好ましい素材はポリウレタンである。このポリウレタンフォームドレッシング材は、特に500〜2000重量%の高吸収度を有し、35℃、90%の相手湿度の下で2000〜5000g/m/24hrsの高透湿性を有し、滲出液を迅速に吸収することができる。前記ポリウレタンは、少なくとも1種のポリエーテルポリオールとジイソシアネートと反応液の合成により得られる。
【0018】
すなわち、本発明の充填型ポリウレタンフォームドレッシング材は、少なくとも1種のポリエーテルポリオールをジイソシアネートと反応させて得られたポリウレタンプレポリマー40〜75重量%に、発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、および界面活性剤、保湿剤、顔料などを含んだ添加剤0.5〜15重量%を添加して混合、攪拌した混合物が使用される。この際、添加剤は、傷治癒促進剤、離型剤、抗菌剤、細胞成長因子などをさらに含むことができる。このように攪拌された混合物を、離型紙の上にコートした後常温で自由発泡して製造し、あるいは好ましくは一定の形状のモールドに注入して発泡、製造する。この際、モールドの温度は20〜60℃とし、注入してから5〜60分後に脱型する。発泡成形されたドレッシング材は、用途に合わせて所望の形状および大きさに切って使用することができる。モールドにおける発泡成形は、工程が単純で様々な形状および厚さを持たせることができて好ましい。
【0019】
ポリウレタンプレポリマーは、ジイソシアネート1〜3モルに対してポリエーテルポリオール類を0.15〜0.95のモル比で合成して製造する。
前記ポリウレタンプレポリマーの製造に際して、ジイソシアネートとしては、イソフォロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2−ビス−4’−プロパンイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)−フマレート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネートなどを使用することができ、好ましくはジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートおよびその異性体、p−フェニレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートを使用した方がよい。ポリエーテルポリオール類としては、分子内に3つ以上の水酸基を有し、分子量が3000〜6000でエチレンオキシドの含量が50〜80%であるエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム重合体と、分子内に2つ以上の水酸基を有し、分子量が1000〜4000であるポリプロピレングリコールとを30:70の重量比で混合して使用することができ、好ましくは分子内に3つの水酸基を有し、分子量が3000〜6000でエチレンオキシドの含量が50〜90%であるエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体を単独で使用した方がよい。
【0020】
発泡剤は、クロロフルオロカーボン(CFC−141b)、塩化メチレン(methylene chloride)、蒸留水を使用することができ、好ましくは蒸留水を使用した方がよい。
【0021】
架橋剤は、分子内に2つ以上の水酸化を有する1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、分子量200〜2000のポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール(pentaerythritol)、ソルボース(sorbose)、ソルビトール(sorbitol)などを単独でまたは混合して使用することができ、好ましくはグリセロール、ソルビトールおよび分子量200〜2000のポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンを使用した方がよい。
【0022】
添加剤としての界面活性剤は、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック共重合体であるドイツ国のBASF社のL−62、L−64、P−84、P−85、P−105、F−68、F−87、F−88、F−108、F−127またはこれらの混合物と、シリコン系界面活性剤であるOsi社のL−508、L−5305、L−5302、L−3150を使用することができる。また、保湿剤および傷治癒促進剤としては、ヒアルロン酸、ケラタン、コラーゲン、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、グアーガム、カラヤガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コンドロイチン硫酸、3−アミノプロピルリン酸、キチン、キトサン、ゼラチン、ローカストビーンガムまたはこれらのオリゴ多糖などを単独であるいは混合して使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の充填型ポリウレタンフォームドレッシング材は、その構造が直径50〜400μmのオープンセルおよび直径10〜80μmのポアを多数含む親水性ポリウレタンフォームからなっており、構造的特徴から高透湿度、高吸収度、高吸収速度、傷面非付着などの特性を有し、滲出液の吸収後にも機械的物性の変化が小さくて傷面に残留物を残さない。また、吸収した滲出液をフォーム内に蓄えることにより、適切な湿潤状態を維持させて傷の治癒を促進する。また、モールドで発泡した後所望の形状に裁断可能なので、様々な形状および厚さのドレッシング材を簡単に製造することができ、様々な傷に適用可能な充填型ドレッシング材としての使用が特に容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を合成例、実施例および比較例によってより詳細に説明する。下記の合成例、実施例および比較例は、本発明を詳細に説明するために提供されるもので、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0025】
(合成例)
イソシアネート末端基を有するポリウレタンプレポリマーは、3Lの攪拌器付き丸底フラスコに242.8gのトルエンジイソシアネート(TDI)を投入し、60℃に昇温し後、3つの水酸基を有し且つエチレンオキシド含量が75%のエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体からなるTR−705(韓国ポリオール社製)1257.5gを少量ずつ添加しながら、理論NC0%に到達するまで7時間反応させて製造した。反応中に試料を採取してNC0%を測定した。NC0%はn−ブチルアミン標準溶液を用いて滴定法によって測定した。
【0026】
(実施例1)
親水性ポリウレタンフォームドレッシング材は、前記合成例で製造したポリウレタンプレポリマー51.4重量%に、発泡剤として蒸留水26.7重量%、保湿剤としてグアーガム6.4重量%、架橋剤としてグリセリン14.1重量%、界面活性剤としてL−64(BASF社製)1.4重量%を添加して4000rpmで5秒間攪拌した後、一定形状のモールドに注入して発泡、製造した。この際、モールドの温度は25℃とし、注入してから10分後に脱型した。水平裁断機を用いてポリウレタンフォームのスキン層を除去した後、5mmの厚さに裁断した。得られたポリウレタンフォームドレッシング材の密度は0.24g/cmであった。
得られた親水性ポリウレタンフォームドレッシング材は、下記のような方法で物性を測定した。その測定結果を次の表1に示した。
【0027】
(1)機械的物性(引張強度、伸率、モジュラス)
引張試験機(Universal Test Machine, USA, Instron)によってJIS−K−6401に基づいて測定した。
【0028】
(2)吸収度(%)および保有度(%)
親水性ポリウレタンフォームドレッシング材を3cm×3cmの大きさに取って初期重量(A)を測定し、25℃の蒸留水に24時間含浸させた後、取り出して無塵ペーパーで表面の水気を拭き取ってからその重量(B)を測定し、次の式を用いて計算した。
吸収度(%)=((B−A)/A)×100
また、吸収度の測定を済ませたサンプル(3cm×3cm)上に重量6kgの錘を20秒間のせた後、サンプルの重量(C)を測定し、次の式を用いて計算した。
保有度(%)=((C−A)/A)×100
【0029】
(3)水滴吸収速度
サンプルの表面にピペットで水を一滴落とした後、完全に吸収されるまでの時間を10回繰り返し測定し、平均値を水滴吸収速度と指定した。
【0030】
(4)透湿度
恒温恒湿器を用いてASTM E96−95(Desiccant Method)の試験方法に基づいて測定する。この際、温度は35±1℃とし、相対湿度は90±5%とし、次の式によって透湿度を計算した。
P=A/S
A=((a−a)+(a−a)+(a−a))/3
ここで、P:透湿度(g/m/24hr)
A:1時間の平均増加量(g)
S:試験片の透湿面積(m
:1時間後の測定重量
1,2,:2時間,3時間,4時間後の測定重量
【0031】
(5)セルサイズおよびポアサイズの測定
滲出液吸収能力は、フォーム自体の親水性だけでなく、フォームのセルおよびポアのサイズによって変わる。すなわち、セルおよびポアのサイズによって単位面積当たりの毛管吸込み(capillary suction per specific surface area)が異なるので、滲出液吸収能力に影響を及ぼす。セルサイズおよびポアサイズの測定を行うための方法として、水銀浸透多孔度測定法を使用することができるが、より普遍的な方法では走査電子顕微鏡(SEM)を使用する。本発明では、走査電子顕微鏡を用いて親水性ポリウレタンフォームドレッシング材のセルとポアのサイズを測定した。
【0032】
(6)垂直ウィッキング性能(vertical wicking performance)
ドレッシング材の別の滲出液吸収能力は、滲出液をどれ程速くフォーム内に移動させることができるかである。重力方向とは逆に、滲出液を移動させる性質を垂直ウィッキング性能といい、垂直ウィッキング速度および垂直ウィッキング吸収力と関係する。
【0033】
1)垂直ウィッキング速度(vertical wicking rate)
垂直ウィッキング速度は、37℃の染料入り蒸留水にサイズ2cm×20cmの試片の一側を縦方向に接触させた後、水面から5cmの高さまで蒸留水を吸い上げるのにかかる時間を5回測定して平均値で決定した。
【0034】
2)垂直ウィッキング吸収力(vertical wicking absorbent capacity)
垂直ウィッキング吸収力は、垂直ウィッキング速度の測定と併行して測定し、親水性フォームドレッシング材を2cm×20cmのサイズに取って37℃の蒸留水に一端を接触させた後、縦方向に蒸留水を吸い上げる。平衡状態に到達した後、吸収高さを5回測定して平均値で決定する。
【0035】
(実施例2)
界面活性剤の組成をF−127(BASF社製)0.4重量%、L−64 1.0重量%に変化させて発泡、製造した以外は、前記実施例1と同様の方法で行った。物性は実施例1で例示された方法によって測定した。その実験結果は下記表1に示した。
【0036】
(実施例3)
界面活性剤の組成をF−127(BASF社製)1.0重量%、L−64 0.4重量%に変化させて発泡、製造した以外は、前記実施例1と同様の方法を行った。物性は実施例1で例示された方法によって測定した。その実験結果は下記表1に示した。
【0037】
(実施例4)
界面活性剤の組成をF−127(BASF社製)1.4重量%に変化させて発泡、製造した以外は、前記実施例1と同様の方法で行った。物性は実施例1で例示された方法によって測定した。その実験結果は下記表1に示した。
【0038】
(実施例5)
実施例2よりモールドに過量の原料を投入してポリウレタンフォームドレッシング材の密度を0.27g/cmに高めた以外は、前記実施例2と同様の方法で行った。物性は実施例1に例示された方法によって測定した。その実験結果は下記表1に示した。
【0039】
(実施例6)
親水性ポリウレタンフォームドレッシング材は、前記合成例で製造したポリウレタンプレポリマー51.4重量%に、発泡剤として蒸留水26.7重量%、保湿剤としてグアーガム6.4重量%、架橋剤としてグリセリン14.1重量%、界面活性剤としてF−127(BASF社製)0.4重量%、L−64 1.0重量を添加して4000rpmで5秒間攪拌した。攪拌された混合物を離型紙の上に注ぎ、ステンレスナイフで2mmの厚さにコートした後、常温で自由発泡して製造した。この自由発泡されたフォームは、水平裁断機を用いて5mmの厚さに裁断した。得られたポリウレタンフォームドレッシング材の密度は0.12g/cmであった。
物性は、実施例1に例示された方法によって測定した。その実験結果は下記表1に示した。
【0040】
(比較例1)
国内市販中のD社の滅菌ガーゼ(商標名「滅菌ガーゼ」)を適用した。
物性は実施例1で例示された方法によって測定した。その試験結果は下記表1に示した。
【0041】
(比較例2)
国内市販中のS社のポリウレタンフォーム型のドレッシング製品(商標名「Allevyn」)を適用した。
物性は実施例1で例示された方法によって測定した。その試験結果は下記表1に示した。
【0042】
(比較例3)
国内市販中のK社のアルジネート不織布型のドレッシング製品(商標名「Curasorb」)を適用した。
【0043】
物性は実施例1で例示された方法によって測定した。その試験結果は下記表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
前記表1の実施例1、2、3、4から分かるように、発泡の際にHLB値が異なる界面活性剤の割合を変化させることにより、セルおよびポアのサイズを調節することができ、HLB値の大きい界面活性剤の割合が増加するにつれてセルおよびポアのサイズが増加する。セルサイズおよびポアサイズが大きいほど、水滴吸収速度は増加するが、重力反対方向への吸収(垂直ウィッキング吸収力)および保有度は不十分であった。反面、セルサイズおよびポアサイズが小さいほど、垂直ウィッキング吸収力および保有度は増加したが、水滴吸収速度は遅かった。
【0046】
図2は本発明で製造したポリウレタンフォームの走査電子顕微鏡写真を示す。図2を参照すると、滲出液の吸収に有用な平均セルサイズは約600μm以下であり、より正確には50〜400μmが最もよく、平均ポアサイズは約100μm以下であり、より正確には10〜80μmが最もよかった。
【0047】
また、実施例5では、発泡の際により過量の原料を投入してポリウレタンフォームドレッシング材の密度を0.27g/cmと高めた場合を、実施例2の密度が0.24g/cmと低い場合と比較した。密度が高くなった場合は、大部分の物性で変化がなかったが、透湿度はやや減少し、100%モジュラスは小幅増加した。
【0048】
実施例6では、セルおよびポアのサイズは増加し、密度は大幅低くなった。また、セルの形状は丸形ではなく、歪んだ形に変形した。これにより、垂直ウィッキング速度および吸収力が低くなる結果を示した。
【0049】

比較例1は、充填型ドレッシング材として用いられているガーゼドレッシング材であって、高過ぎる透湿度により湿潤環境を維持させることができず、本発明のドレッシング材より一層低い吸収度および保有度を示した。
【0050】
比較例2は、一般に用いられている3層構造のポリウレタンフォームドレッシング材であって、本発明の親水性ドレッシング材より一層低い吸収度、保有度および垂直ウィッキング性能を示した。
【0051】
比較例3は、深い傷に主に使用しているアルジネート型ドレッシング材であって、100%モジュラスが0.03kgf/mmと低く、水を吸収した後には水膨潤状態になって形態を維持しなかった、これに対し、本発明の親水性ドレッシング材は、水吸収前の100%モジュラスは0.09〜0.12kgf/mm、水吸収後の100%モジュラスは0.03〜0.07kgf/mmであって物性の変化幅が小さかった。また、本発明のドレッシング材は、比較例3のドレッシング材より密度が20〜30倍程度高いので、本発明の親水性ポリウレタンフォームドレッシング材は、単位体積当たり吸収可能な滲出液量が比較例3のアルギネートド型レッシング材より約20〜30倍程度多かった。
【0052】
以上、説明の目的で本発明の好適な実施形態について述べたが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の範疇および精神から逸脱することなく、各種の変更、追加および置換が可能であることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の充填型フォームドレッシング材の断面模式図である。
【図2】本発明によって製造された充填型フォームドレッシング材の走査電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0054】
1 オープンセル
2 ポア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火傷および深い傷に使用する親水性ドレッシング材において、直径50〜400μmのオープンセルおよび直径10〜80μmのポアを含む親水性フォームからなることを特徴とする、充填型ポリウレタンフォームドレッシング材。
【請求項2】
密度が0.1〜0.4g/cmであることを特徴とする、請求項1記載の充填型ポリウレタンフォームドレッシング材。
【請求項3】
火傷および深い傷に使用する親水性ドレッシング材の製造方法において、ポリウレタンプレポリマー40〜75重量%に、発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、および界面活性剤、保湿剤、顔料を含む添加剤0.5〜15重量%を混合して攪拌した後、モールドに注入して発泡、製造することを特徴とする、充填型ポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンセルとポアが形成された親水性フォームドレッシング材において、
深い傷に挿入される充填型であって、密度が0.1〜0.32gcmであり、前記オープンセルの平均直径が80〜400μmであり、前記ポアの平均直径が30〜80μmである親水性フォームからなることを特徴とする、充填型ポリウレタンフォームドレッシング材。
【請求項2】
オープンセルとポアが形成された親水性フォームドレッシング材の製造方法において、
ポリウレタンプレポリマー40〜75重量%に、発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、および界面活性剤、保湿剤、顔料を含む添加剤0.5〜15重量%を混合して攪拌した後、モールドに注入し、密度が0.1〜0.32gcm、前記オープンセルの平均直径が80〜400μm、前記ポアの平均直径が30〜80μmとなるように発泡、製造することを特徴とする、充填型ポリウレタンフォームドレッシング材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−504465(P2006−504465A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548131(P2004−548131)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002242
【国際公開番号】WO2004/039421
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(502233713)バイオポル カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】