説明

充填材としてカーボンナノチューブを含有するポリマーベースのコンポジット、その製造方法及び関連する使用

本発明は分散された状態でのカーボンナノチューブの製造方法に関し、前記方法は触媒系の存在下で少なくとも一種のいわゆる対象のモノマーから実施されるステップを含み、前記触媒系が触媒作用支持体によって支持される助触媒/触媒の触媒カップルを含み、前記触媒支持体が前記カーボンナノチューブに相当することを特徴とする。本発明はまた、前記方法によって得られるコンポジット材料、及び前記方法を実施するための触媒系に関する。本発明はさらに、本発明の方法及び製品のポリマーの分野、特にナノテクノロジーの分野の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の技術分野に関し、より詳しく述べると、以下にマイクロコンポジット及びナノコンポジットと定義するコンポジット材料の技術分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、充填材として役立つカーボンナノチューブを分散された少なくとも一種のポリマーのマトリックスを含有するコンポジット材料を得る方法に関する。また、本発明は、このようにして得られた前記コンポジット及びナノテクノロジーの技術分野におけるそのコンポジットの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー材料は、20世紀の初頭に開発され、現在は、我々の日常生活に一層重要な位置を占めている。
【0004】
このような理由から、現在、用途の特定化を促進することを要求するという産業上のプレッシャーがあるので、この要求を満たす一層効果的な材料を提案する必要がある。
【0005】
ポリマー材料の場合、上記要求は、これら材料固有の弱点、特に機械強度が比較的不足していることと、可燃性であることを克服する解決策を求めている。
【0006】
したがって、ポリマーマトリックスのみと比較して特性が強化されて例えば剛性がより大きくかつ耐火性がより優れている「ポリマーマトリックスを含有するコンポジット材料」として知られている材料を製造するため、前記ポリマー材料に、「充填材」として知られている他の成分を混合することが提案されている。
【0007】
これら充填材は、フィブリル型の例えばガラス、カーボン又はケブラー繊維でもよい。これら充填材は、粉体のカーボンブラック、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、クレー又はガラスビーズでもよい。
【0008】
一例を挙げると、「重合充填法(Polymerization−Filling Technique)」すなわち「PFT」(Alexandre M.et al.,Macromol.Rapid.Comm.(2000),vol.21,No.13,pp.931−936)に従って、助触媒/触媒の組合わせの存在下、充填材上に前記オレフィン類を重合させることによって、コポリオレフィンベースのコンポジットを製造することが提案されている。試験された触媒は、メタロセンであり、より具体的に述べると、tert−ブチルアミドジメチル(テトラメチル−n5−シクロペンタジエニル)シランジメチルチタン(CGC)であり、助触媒はメチルアルミノキサン(MAO)であった。カオリンと黒鉛を含む各種の充填材が試験された。これら充填材は、組成(無機、有機又は金属)の点でかつ形態と表面特性(酸性又は塩基性)の点で性質が非常に異なっていたが、通常これら充填材はすべて、触媒がこれら充填材の表面に均一に堆積して優れた重合結果を達成するように、触媒使用量に適合した相対的に小さい比表面積を有している。
【0009】
ポリマーマトリックスと粉体充填材からなり、その粉体の大きさによって区別できるコンポジットとしては、充填材の大きさが1マイクロメーター以上であるマイクロコンポジット及び充填材の3次元の内の一つが1〜数十ナノメーターの程度であるナノコンポジットがある。
【0010】
ナノコンポジットは、ごく最近、研究開発がかなり進んでいる。というのは、ナノコンポジットは、充填材の含有量が相対的に少なくて、ポリマーマトリックスの剛性などの機械的特性が実質的に改善されかつ難燃性が高まり、非常に有利であるという注目に値する特性を有することが特徴だからである。さらに、フィブリル型の充填材とは対照的に、カーボンナノチューブは、ポリマーマトリックスを、空間の全方向について強化する(文献1及び2)。
【0011】
さらに詳しく述べると、カーボンナノチューブを粉体充填材として含有するナノコンポジットは、すでに種々の用途に提案されている(文献3−6)。カーボンナノチューブは、実は同素体型カーボンの一種であり、黒鉛のリーフレット一つ以上を回転して円筒形にし両端をシールしたものといえる。これらカーブンナノチューブはとりわけ、その引張り強さがカーボン繊維の40倍であるから機械的特性に優れ、かつそのナノチューブの構造によって、半導体又は金属導体を製造するのに使うことが提案されているほどに電気的性能にも優れていることが特徴である。
【0012】
しかし、ナノチューブをポリマーマトリックスの充填材として使って、ナノコンポジットを製造することにより、産業界の期待を満たすことは当面、事実上できないようである。具体的に述べると、結局、カーボンナノチューブの有利な特性は、ナノコンポジットにまで必ずしも転移されていない。
【0013】
これらのデータは、カーボンナノチューブが凝集して、非常に安定なパケット又は「束」になる固有の性質によって説明される。
【0014】
したがって、当業者は、カーボンナノチューブの凝集というナノコンポジットへの使用を制限する問題に直面して、現在、残念ながら、この問題を克服する有効な解決策を依然として待っている状況である。
【0015】
カーボンナノチューブを触媒系で使用することは、文書の米国特許願第A1−2003/0 119 920号とPatent Abstracts of Japan vol.2000,No.6(20.09.2000)で立証されているように、それ自体公知であることは分かっているであろう。
【0016】
これら文書の前者には、カーボンナノチューブの層で被覆された支持体と、化学反応を触媒することができる触媒組成物とを含有する触媒系が記載されている。この触媒系は、多くの化学反応に使用することができ、特に重合反応に使用される。しかし、そのカーボンナノチューブは、触媒支持体自体の一体部分を形成していると記載されていない。
【0017】
これら文書の後者には、無機の支持体上の触媒モリブデンの上にカーボンナノチューブを堆積させる方法が記載されている。したがって、この文書の触媒系は、(i)カーボンナノチューブ、(ii)触媒のモリブデン及び(iii)助触媒であってもよい無機の支持体を含有し、そのカーボンナノチューブは前記触媒によって触媒された反応の産物を形成する。
【発明の開示】
【0018】
発明の目的
本発明は、上記従来技術の欠点を持っていない解決策を提供することを目的としている。
【0019】
詳しく述べると、本発明は、ポリマーベースのコンポジット、特にナノコンポジットの充填材として使用できる、ポリマーマトリックス中で分散した形態のカーボンナノチューブを得る方法を提供することを目的としている。
【0020】
本発明は、少なくとも一種のポリマーマトリックス、及び充填材として作用するカーボンナノチューブを少なくとも含有し、そしてそのカーボンナノチューブの分散によって、前記ポリマーと前記カーボンナノチューブの産業上有利な物理特性と化学特性を有利に兼ね備えているコンポジット、特にナノコンポジットを提供することも目的としている。
【0021】
本発明の他の目的は、実施することが、従来技術に提案されている方法と比較して、相対的に簡単でかつコストの面で妥当な、ポリマーマトリックス中にカーボンナノチューブを分散させる方法を提供することである。
【0022】
発明の概要
本発明は、分散された形態のカーボンナノチューブを得る方法であって、「対象のモノマー」と呼称される少なくとも一種のモノマーを、前記カーボンナノチューブに相当する触媒作用支持体に支持された助触媒/触媒の触媒カップルを含有する触媒系の存在下で重合させるステップを含むことを特徴とする方法に関する。
【0023】
さらに具体的に述べると、本発明は、充填材として働くカーボンナノチューブが均一に分散されている少なくとも一種のポリマーマトリックスを含有するコンポジット材料を得る方法であって、前記カーボンナノチューブとモノマーで出発し、前記カーボンナノチューブを触媒作用支持体として使用して、その表面上に助触媒/触媒のカップルを均一に結合させて触媒系を形成させ、その触媒系を重合反応に対して活性化し、次にその活性触媒系を使って、カーボンナノチューブの表面において前記モノマーを重合させ、モノマーの重合が進行するにつれて、カーボンナノチューブの周囲にポリマーマトリックスが徐々に生成するように時間をかけて重合反応を進行させ、次いで生成したコンポジットを回収することを特徴とする方法に関する。
【0024】
用語「ポリマーマトリックス中のナノチューブの分散」は、二つのカーボンナノチューブの間の接触表面積が両ナノチューブの全表面積の20%未満であり、好ましくは10%未満であり、好ましくは5%未満であり、2%未満であり、好ましくは1%未満であることを意味するものとする。
【0025】
用語「均一の」は、少なくともマイクロメーターの尺度でそして好ましくはナノメーターの尺度で均一の、ポリマーマトリックス中のカーボンナノチューブの分散を意味する。
【0026】
好ましくは、本発明の方法は、下記ステップ:すなわち
カーボンナノチューブの不活性溶媒による懸濁液を調製し、
前記助触媒を添加することによって前記カーボンナノチューブを前処理して、その助触媒がカーボンナノチューブの表面に吸着されている前処理されたカーボンナノチューブの懸濁液を得て、
かくして前処理されたカーボンナノチューブの懸濁液に触媒を添加し次いでモノマーの流れを循環させることによって、その前処理されたナノチューブの懸濁液から反応混合物を調製して、その反応混合物中、前記ナノチューブの表面に前記モノマーの重合反応を起こさせ、前記対象のポリマーと前記カーボンナノチューブを含有しかつ前記カーボンナノチューブが前記対象のポリマーでコートされているコンポジット材料を形成させ、
反応混合物における重合が、約0.1%と約99.9%の間の所望の重合率に到達したとき重合反応を停止させ次いでこのように合成された前記コンポジット材料を回収する、
ステップを含んでいる。
【0027】
好ましくは、対象のモノマーはオレフィンであり、そして対象のポリマーはポリオレフィンである。
【0028】
前記ポリオレフィンは、特に疎水性のポリオレフィンである。
【0029】
好ましくは、前記対象のモノマーは、エチレン、プロピレン、これらとαオレフィン類のコモノマー、共役αジオレフィン類、スチレン、シクロアルケン類、ノルボルネン、ノルボルナジエン及びシクロペンタジエン並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
αオレフィン類の例としては、1−ヘキセン及び1−オクテンがある。
【0031】
対照のポリマーは、エチレンベースのポリオレフィン類、プロピレンベースのポリオレフィン類及びそれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。
【0032】
対象のポリマーとしてはポリエチレンが有利である。
【0033】
本発明の方法では、助触媒/触媒のカップルと実験パラメータは、助触媒によってカーボンナノチューブの表面に触媒を固定して触媒系を形成できるように、有利に選択される。
【0034】
したがって、好ましくは、触媒は、対象のモノマーの重合反応を触媒できるように選択され、その触媒は、メタロセン類、ヒンダードアミドアリールキレート化合物類、ヒンダードオキソアリールキレート化合物類、Fe(IIおよびIII)とCo(II)のビス(イミノ)ピリジン類、Ni(II)とPd(II)に基づいたブルックハート錯体(Brookhart complex)及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
一般に、これら触媒はすべて、共通して、重合反応において活性のIV族の化学元素(Ti、Zr、Hf)の可溶性錯体である。
【0036】
上記メタロセン類は、架橋されていても架橋されていなくてもよいことは分かるであろう。
【0037】
また、助触媒は、メチルアルミノキサンもしくは化学的に修飾されたメチルアルミノキサン又はそれらの混合物が有利である。
【0038】
用語「化学的に修飾されたメチルアルミノキサン」は、そのアルキル基の約1/3がイソブチルの形態で、残りのアルキル基がメチルの形態であるメチルアルミノキサンを意味するものとする。
【0039】
特に有利な方式の助触媒/触媒の触媒カップルは、メチルアルミノキサン/CpZrClカップルである。
【0040】
本発明の方法における触媒の量は、約10−6〜約10−5mol/gカーボンナノチューブが好ましい。
【0041】
反応混合物中の助触媒の量は、約10−3〜約10−2mol/gカーボンナノチューブが好ましい。
【0042】
反応混合物の温度は、25℃と140℃の間が有利である。
【0043】
本発明によれば、前記前処理は、25℃と200℃の間の温度で1分間と2時間の間の時間、実施されることが好ましい。
【0044】
前記重合は、モノマーの圧力が、約1バールと約3バールの間で有利に実施され、1.1バールと2.7バールの間で実施されることが好ましい。
【0045】
前記反応混合物を調製するには、触媒を、前処理したカーボンナノチューブの懸濁液に添加した後に、モノマーの流れを前記懸濁液中に循環させることが好ましい。
【0046】
あるいは、前記反応混合物を調製するのに、触媒を、前処理したカーボンナノチューブの懸濁液に添加するのと同時に、モノマーの流れを前記懸濁液中に循環させる。
【0047】
好ましくは、カーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、二重壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
好ましくは、カーボンナノチューブは、粗製の又は精製されたカーボンナノチューブである。
【0049】
本発明の方法において、カーボンナノチューブは、機能化(functionalized)カーボンナノチューブでもよい。
【0050】
コンポジットが約50%〜約99.9%のカーボンナノチューブと約50%〜約0.1%のポリマーを含有するような重合率になったとき、重合反応を停止させることが好ましい。
【0051】
後者の場合、本発明の方法は、好ましくは追加のステップを含み、その追加のステップは、一旦回収されたコンポジット材料をマスターバッチとして使って、付加ポリマーと呼称されるポリマーに基づいてナノコンポジットを調製するステップであり、その付加ポリマーは、前記コンポジット材料の対象のポリマーと混和性及び相溶性である。
【0052】
あるいは、ナノコンポジットに相当しかつカーボンナノチューブがナノメーターの尺度で均一に分散している前記対象ポリマーのマトリックスを含有するコンポジット材料を充分な量で得るのに充分な重合率になったとき、重合反応を停止させる。
【0053】
さらに具体的に述べると、生成したナノコンポジットが、約0.1%〜約50%のカーボンナノチューブと約99.9%〜約50%のポリマーを含有しているとき、重合反応を停止させる方が好ましい。
【0054】
また、本発明は、少なくともカーボンナノチューブ、助触媒及び触媒を含有する上記方法を実施するための触媒系に関し、その触媒は前記助触媒と触媒カップルを形成し、そのカップルの前記触媒と前記助触媒は前記カーボンナノチューブの表面に結合している。
【0055】
また、本発明は、前記触媒系を含有する、本発明の方法を実施するための組成物に関する。
【0056】
また、本発明は、上記方法によって得られるコンポジット材料に関する。
【0057】
そのコンポジット材料は、約0.1%〜99.9%のカーボンナノチューブと約99.9%〜0.1%のポリマーを含有している。
【0058】
本発明の第一の好ましい実施態様によれば、そのコンポジット材料は、ナノコンポジットに相当し、そしてカーボンナノチューブが充填材の形態でナノメーターの尺度で均一に分散されている少なくとも一種の対象ポリマーの少なくとも一種のマトリックスを含有している。
【0059】
好ましくは、このコンポジット材料は、約0.1%〜約50%のカーボンナノチューブと約99.9%〜約50%のポリマーを含有している。
【0060】
好ましくは、本発明のコンポジット材料のカーボンナノチューブは、前記ポリマーで被覆されているか又はコートされている。
【0061】
また、本発明は、少なくとも一種の付加ポリマーのマトリックスと上記のようなコンポジット材料とを含有するコンポジット材料に関する。
【0062】
本発明の別の主題は、ナノテクノロジーの技術分野の用途での、上記の方法及び/又は触媒系及び/又は組成物及び/又はコンポジット材料の使用である。
【0063】
また、本発明は、本発明の方法を使用して、重合反応を、カーボンナノチューブの比率が0.1%未満でポリマーの比率が99.9%より大きくなるのに充分長い時間、進行させることを特徴とする対象モノマーと呼称されるモノマーを重合させる方法に関する。
【0064】
また、本発明は、この方法で得られるポリマーに関する。
【0065】
定義
用語「ナノコンポジット」、「マイクロコンポジット」、「凝集/脱凝集(deaggregation)」、「分散」、「ポリマーマトリックス」及び「充填材」の本発明で使用する場合の意味は、上記パラグラフを参照すれば分かるであろう。
【0066】
前記ポリマーマトリックスが、少なくとも一種のポリマーを含有することは分かるであろう。
【0067】
用語「コンポジット材料」は、マイクロコンポジットとナノコンポジットの両者に関連している。
【0068】
本発明の用語「コンポジット材料」及び「コンポジット」が何を意味するかを明確に理解するためには、Tec & Docが1999年にパリで出版した文書:Berthelot J.M.著「Materiaux et composites(Materials and composites)」第3版のp3を参照すればよい。
【0069】
用語「触媒」は、本発明で使う場合、化学分野の当業者が使用するのと同じ意味を持っている。この用語は、反応媒体中で非常に低い濃度で使用したとき、重合反応の速度を、試薬との相互作用で増大させるが、反応が終了した時点で化学的に変化していない化合物を意味する。
【0070】
用語「助触媒」は、本発明で使う場合、化学分野の当業者が使用するのと同じ意味を持っている。この用語は、触媒と相乗作用して重合反応の速度を増大できる化合物を意味する。
【0071】
用語「毒物(poison)」は、重合反応を阻害する化合物を意味する。
【0072】
カーボンナノチューブは、そのナノチューブがそれぞれ、上記のような一つ、二つ又はいくつかのリーフレットからなるかどうかによって、「単一壁」、「二重壁」又は「多重壁」のナノチューブと呼称される。この用語は、当該技術分野の当業者にはよく知られている。
【0073】
図面の簡単な記述
図1aはポリエチレンの場合に適用した本発明の方法の原理を図式的に示す。
【0074】
図1bは本発明の方法によるナノチューブの表面におけるジルコノセン触媒の活性化を示す。
【0075】
図2は粗製多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の存在下又は不在下でのエチレンの重合反応の重合動力学曲線を比較する図である。
【0076】
図3は粗製多重壁カーボンナノチューブを含有し又は含有しない触媒系を使う本発明の方法によるエチレンの重合反応の重合動力学曲線を比較する図である。
【0077】
図4aは粗製MWNTカーボンナノチューブの試料のSEM電子顕微鏡写真を示す。
【0078】
図4bは束又は凝集体を可視化するための図4aの試料のズーム写真を示す。
【0079】
図4cは10重量%のポリエチレンを含む粗製MWNTナノチューブを含有しかつ本発明の方法によって助触媒のMAOを結合させて得た試料のSEM電子顕微鏡写真を示す。
【0080】
図4dは図4cの試料のズーム写真を示す。
【0081】
図4eは42重量%のポリエチレンを含む粗製MWNTナノチューブを含有しかつ本発明の方法によって助触媒のMAOを結合させて得た試料のSEM電子顕微鏡写真を示す。
【0082】
図4fは図4eの試料のズーム写真を示す。
【0083】
図5aは粗製MWNTカーボンナノチューブのみに相当する図4a及び4bの写真の試料の透過型電子顕微鏡法(TEM)による顕微鏡写真を示す。
【0084】
図5bは42重量%のポリエチレンを含有する粗製MWNTカーボンナノチューブに相当する図4e及び4fの写真の試料の透過型電子顕微鏡法(TEM)による顕微鏡写真を示す。
【0085】
図5cは74重量%のポリエチレンを含有し本発明の方法によって助触媒のMAOを結合させて得た粗製MWNTナノチューブに相当する試料の透過型電子顕微鏡法(TEM)による電子顕微鏡写真を示す。
【0086】
図6はHDPEマトリックスに基づいた異なる混合物の空気中のTGAサーモグラムを比較する図である。試料Dabo 40aは、HDPEマトリックスのみを含有する混合物に相当し、試料Dabo 40bは、HDPEマトリックスと粗製MWNTカーボンナノチューブ(2重量%)の単純混合物に相当し、そして試料Dabo 40cは、HDPEマトリックス及び本発明の方法によって得た粗製MWNTカーボンナノチューブ(2重量%)を含有するマスターバッチの単純混合物に相当する。
【0087】
図7は先に定義した試料Dabo 40bの燃焼後の写真である。
【0088】
図8は先に定義した試料Dabo 40cの燃焼後の写真である。
【0089】
図9aは同じ試料Dabo 40bのTEM電子顕微鏡写真である。図9bは図9a中のMWNTカーボンナノチューブの束を含む領域のズーム写真である。
【0090】
図10aは同じ試料Dabo 40cのTEM電子顕微鏡写真である。図10bは図10a中の分離されたMWNTカーボンナノチューブを示すズーム写真である。
【0091】
図11はエチレンの単純重合反応及び本発明の方法による単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)上で実施したエチレンの重合反応の重合動力学を比較した図である。
【0092】
図12−16は3種類の試料、すなわち高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと1%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の単純混合によって得たコンポジット、及び高密度ポリエチレンと本発明によって製造されたマスターバッチから得たコンポジットについて得た引張り試験の結果を比較した図である。
【0093】
さらに明確には、図12−16は以下のパラメータについて比較した図である。
図12:破断応力
図13:破断伸び
図14:ヤング率
図15:降伏点応力
図16:降伏点における伸び
【発明を実施するための最良の形態】
【0094】
本発明の新規性は、「重合−充填法(polymerization−filling technique)」(「PET」と短縮されている)(文献8)として知られている技術に従って、処理された充填材上に重合させるステップによって、ポリエチレン/カーボンナノチューブのナノコンポジットを製造する手順のアイデアにある。
【0095】
この重合ステップ中に、対象モノマーの重合反応を触媒することが知られている触媒が、充填材、すなわちこの場合は有利な懸濁液の形態の前処理されたカーボンナノチューブの表面に結合している。次に、検討中の、モノマーの重合が、この同じ充填材の表面上で直接開始される。
【0096】
このステップ中の重合反応で生じたナノチューブ表面の圧力が、本発明によって、全く予想外の方式で、カーボンナノチューブを含むナノコンポジットが生成する際に通常付随して生じる束を脱凝集させる。このようにして、ポリマーマトリックス中、充填材の形態のカーボンナノチューブの分散が、ナノコンポジット内で達成され、しかもこの分散は、ナノメーターの尺度で均一である。
【0097】
カーボンナノチューブの前処理は、モノマーが重合中、触媒と協働して触媒的に活性であることに基づいて選択された助触媒を、カーボンナノチューブの表面に結合させることからなっていることが分かるであろう。換言すれば、このことは、助触媒と触媒が共に、モノマーを重合させる触媒カップルを形成するように選択され、そしてカーボンナノチューブを、前記触媒カップルで触媒系を形成する触媒作用支持体であるとみなせることを意味する。
【0098】
本発明によって、触媒の、カーボンナノチューブの表面への結合が助触媒を通じて行われて、触媒と助触媒がナノチューブの表面に化学吸着されると解すべきである。
【0099】
エチレン及びポリエチレンマトリックスに基づいたナノコンポジットの製造に関する特定の実施例によって、本発明を具体的に詳解する。
【0100】
しかし、本発明はまた、当業者が先に明示した本願の説明に基づいて容易に同定できる他のポリマー及び他のナノコンポジットに関する。
【0101】
このことは、触媒の性質と助触媒の性質の場合も同様である。
【0102】
しかし、本発明の方法を実施するのに必要な条件は、形成される対象のポリマーが、重合媒体(反応混合物)に対して不溶性であり、その結果、まさにその重合する部位すなわちナノチューブの表面に沈着できることであることが分かるであろう。
【0103】
図1aに、ポリエチレンの場合に適用される本発明の方法の原理が要約されている。この図に示すように、懸濁液中のナノチューブの表面で、エチレンが直接重合され、その結果、ポリエチレンが合成されるにつれて、カーボンナノチューブが、ポリエチレンで徐々にコート又は被覆される。このコーティングの作用によって、カーボンナノチューブが、強制的に互いに分離されて、ナノチューブの束の脱凝集が起こる。
【0104】
カーボンナノチューブを前処理するのに一例として使用した助触媒はメチルアルミノキサン(methylaluminoxane)(MAOと略記する)である。この助触媒は、溶液の形態で使用する。
【0105】
この助触媒は、π電子を豊富に有するカーボンナノチューブの壁と、ルイス酸−塩基型の相互作用で相互に作用することができる助触媒である。
【0106】
次に、一例として使用した触媒:ビス(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリドすなわちCpZrClを添加する。これも溶液の形態である。
【0107】
図1bに示すように、CpZrClは、MAOで処理した充填材と接触すると、エチレンが重合する際に活性のカチオン種を、前記処理された充填材上に位置する負の対イオンに対して生じることが分かるであろう。
【0108】
前記活性の種がこのように結合することによって、エチレンが、充填材の表面で重合する。ポリエチレンは、使用されている溶媒に不溶性であるから、充填材(すなわちカーボンナノチューブ)の表面に直接沈降して堆積するようになる。
【0109】
使用した試薬
使用した充填材は多重壁のカーボンナノチューブ(MWNT)であった。2種類のナノチューブを使用した。すなわち、30重量%の触媒不純物(主として、約30重量%のアルミナ、0.3重量%のコバルト及び0.3重量%の鉄を含有)を含有している粗製MWNT及び痕跡の触媒不純物(0.2重量%のアルミナ、0.3重量%の鉄及び0.3重量%のコバルトを含有)を含有している精製MWNTを使った。これらのナノチューブは、the Facultes Universitaires Notre Dame de la Paix,NamurのJ.B.Nagy教授から提供された。
【0110】
使用した溶媒はn−ヘプタン(分析級、Acros社から入手)であった。溶媒は、多孔度が0.4ナノメーターである分子ふるい(これもAcros社から入手)で乾燥した。
【0111】
乾燥トルエンを使って、特定の溶液を調製した。これを行うため、Labscan社から入手したトルエン(分析級)を、水素化カルシウム上で沸騰させることによって乾燥し次いで新たに蒸留した。
【0112】
選択した助触媒は、Atofina社から入手したメチルアルミノキサン(MAO)であった。3M〜0.2MのMAOのトルエン溶液を合成に使用した。
【0113】
ここでは、ビス(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド(CpZrCl)(Aldrich社から入手)を、触媒として使用した。これを乾燥トルエンに溶解して1〜10mMの溶液を作製した。
【0114】
気体で供給されるエチレン(99.998%)(Air Liquide社から入手)を使用した。
【0115】
メタノール(工業用)(Brenntag社から入手)を使って、ポリマーすなわちコンポジットを沈澱させて回収した。
【0116】
助触媒によるカーボンナノチューブの前処理
粗製ナノチューブ(0.25g〜1g)を、磁気攪拌バーが入っていて、ガラス製三方タップ(ゴム製セプタムで栓をされている)を備えた250ml又は500mlの二口丸底フラスコ(引き続き使用する)に導入した。
【0117】
吸着された水を回収するため、液体窒素につけた減圧タップに接続された前記フラスコを調整した。すなわちブンゼンバーナーを使って減圧下、火炎で乾燥した。次いでそのナノチューブを、磁気攪拌をしながら、減圧下、100〜150℃で一夜乾燥した。そのフラスコを窒素の僅かに正の圧力下においた。
【0118】
次いで、そのフラスコにn−ヘプタン100mlを導入した。減圧下、蒸発乾固することによって、ある量のMAO(0.001〜0.01mol/g MWNT)から、そのトリメチルアルミニウムを前もって除いた。その蒸発させたトリメチルアルミニウムを、液体窒素につけた減圧トラップ内に凝縮させて分析するため貯蔵した。優れたルイス酸であるトリメチルアルミニウム(TMA)は、吸着性についてはMAOの有効な競合体であることは証明されているから(文献7)、TMAをこのように除くことが必要である。
【0119】
その固体のMAOを、再度トルエンに溶解し、次いで窒素雰囲気下、毛細管で、MWNTのヘプタンによる懸濁液中に移した。
【0120】
その系を、磁気攪拌をしながら油浴を使って、20℃〜60℃で10分間〜2時間自動的に維持した。
【0121】
そのMAOを、MWNTの存在下、減圧乾燥して濃縮し、次いでその除いた溶媒を、液体窒素中につけた丸底フラスコ中に凝縮させた(充填材処理フラクション)。
【0122】
次に、フラスコを減圧(10−1トル)にしたまま、浴温を30分間〜3時間、高温度(100〜200℃)に上げて、MAOをカーボンナノチューブに結合させた。次に、そのフラスコを、再びわずかに正の圧力の窒素の雰囲気下においた。
【0123】
次に洗浄を3回実施して、充填材に結合していないMAOを除去した。これを行うため、乾燥トルエン80mlをナノチューブに添加して60℃で5分間攪拌した。そのMAOで処理した充填材を、攪拌せずに静置した。上澄み液を、窒素気流下、調整毛細管(conditioned capillary)を使って、取り出した。そして上記の三つの溶液及び充填材処理フラクション(n−ヘプタン)をプールした。
【0124】
フラスコ中に存在する少量の残留トルエンは、減圧下、液体窒素中につけたフラスコに移して濃縮し、その後、前記充填材処理フラクションに加えた。
【0125】
この処理の後、そのフラスコには、前処理されたナノチューブが入っていた。
【0126】
助触媒で前処理されたカーボンナノチューブの存在下でのエチレンの単独重合
前処理したナノチューブに対する触媒の結合は、不活性媒体中で、僅かに正の圧力の窒素雰囲気に保持して、反応媒体中にプロトン性不純物(protic impurity)及び酸素が存在することを避けながら行ったことは分かるであろう。
【0127】
エチレンの単独重合を実施するため、MAOで処理したナノチューブが入っているフラスコにn−ヘプタン100mlを加えた。
【0128】
次に、その混合物を、窒素の雰囲気下、磁気攪拌バーが入っている予め調整した丸底反応器に移した。
【0129】
1gのナノチューブ当たり1x10−5〜1x10−6molのCpZrClを窒素雰囲気下で添加した。次に、その丸底反応器を、油浴中で、5〜60分間、25〜100℃(重合温度)に自動的に維持した。
【0130】
次いで、その媒体を、エチレンの流れで、30秒間パージした。重合は、1.1〜2.7バールのエチレンの圧力下で1時間実施した。このようにして合成されたコンポジットを、12Mの塩酸で酸性にしたメタノールから沈澱させることによって回収した。
【0131】
本発明の第一の好ましい実施態様の説明
1. 使用した試薬
使用した充填材は、多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)であった。2種のナノチューブを使用した。すなわち、30重量%の触媒不純物(主として、約30重量%のアルミナ、0.3重量%のコバルト及び0.3重量%の鉄)を含有している粗製MWNT並びに痕跡の触媒不純物(主として、約0.2重量%のアルミナ、0.3重量%の鉄及び0.3重量%のコバルト)を含有している精製MWNTを使用した。これらのナノチューブは、the Facultes Universitaires Notre Dame de la Paix,NamurのJ.B.Nagy教授から提供された。
【0132】
使用した溶媒は、n−ヘプタン(分析級、Acros社から入手)であった。その溶媒を、多孔度が0.4ナノメートルの分子ふるい(これもAcros社から入手)で乾燥した。
【0133】
乾燥トルエンを使って、特定の溶液を調製した。これを行うために、Labscan社から入手したトルエン(分析級)を、水素化カルシウム上で沸騰させることによって乾燥し次いで新たに蒸留した。
【0134】
選択した助触媒は、Atofina社から入手したメチルアルミノキサン(MAO)であった。トルエンによるMAOの1.45M溶液を合成に使った。
【0135】
ここでは、ビス(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド(CpZrCl)(Aldrich社から入手)を、触媒として使用した。これを乾燥トルエンに溶解して約5mMの溶液を作製した。
【0136】
気体で供給されるエチレン(99.998%)(Air Liquide社から入手)を使用した。
【0137】
メタノール(工業用)(Brenntag社から入手)を使って、ポリマーすなわちコンポジットを沈澱させて回収した。
【0138】
2. カーボンナノチューブの、助触媒による前処理
粗製ナノチューブ(場合によって、0.25g又は1g)を、磁気攪拌バーが入っていてガラス製三方タップ(ゴム製セプタムで栓をした)を備えた250ml又は500mlの二口フラスコ(引き続き使用する)に導入した。
【0139】
そのフラスコを、吸着した水を取り出すため、液体窒素につけた減圧トラップに接続し、ブンゼンバーナーを使って減圧下、火炎で乾燥して調整した。次に、そのナノチューブを、磁気攪拌しながら、減圧下100℃で一夜乾燥した。そのフラスコを、僅かに正の圧力の窒素雰囲気下においた。
【0140】
次いで、そのフラスコに、n−ヘプタン100mlを導入した。減圧下、蒸発乾固することによって、Alの濃度が1.45Mのある量のMAO(32ml/g MWNTすなわち46mmol/g MWNT)から、そのトリメチルアルミニウムを前もって除いた。その蒸発させたトリメチルアルミニウムを、液体窒素につけた減圧トラップ内に凝縮させて分析するため貯蔵した。優れたルイス酸であるトリメチルアルミニウム(TMA)は、吸着性についてはMAOの有効な競合体であることは証明されているから(文献7)、TMAをこのように除くことが必要である。
【0141】
その固体のMAOを、再度トルエンに溶解し、次いで窒素雰囲気下、毛細管で、MWNTのヘプタンによる懸濁液中に移した。
【0142】
その系を、磁気攪拌をしながら油浴中で、1時間、40℃に自動的に維持した。
【0143】
そのMAOを、MWNTの存在下、減圧乾燥して濃縮し、次いでその除いた溶媒を、液体窒素中につけた丸底フラスコ中に凝縮させた(充填材処理フラクション)。
【0144】
次に、上記浴温を高温(150℃)まで上げて、1.5時間、フラスコを減圧(10−1トル)にしたままで、MAOをカーボンナノチューブに結合させた。次いで、そのフラスコを再び、僅かに正の圧力の窒素の雰囲気下においた。
【0145】
次に洗浄を3回実施して、充填材に結合していないMAOを除去した。これを行うため、乾燥トルエン80mlをナノチューブに添加して60℃で5分間攪拌した。そのMAOで処理した充填材を、攪拌せずに静置した。上澄み液を、窒素気流下、調整毛細管を使って、取り出した。そして上記の三つの溶液及び充填材処理フラクション(n−ヘプタン)をプールした。
【0146】
フラスコ中に存在する少量の残留トルエンは、減圧下、液体窒素中につけたフラスコに移して濃縮し、その後、前記充填材処理フラクションに加えた。
【0147】
この処理の後、そのフラスコには、処理されたナノチューブが入っていた。
【0148】
3. 助触媒で前処理されたカーボンナノチューブの存在下でのエチレンの単独重合
前処理したカーボンナノチューブに対する触媒の結合は、不活性媒体中で、僅かに正の圧力の窒素雰囲気に保持して、反応媒体中にプロトン性不純物(protic impurity)及び酸素が存在することを避けながら行ったことは分かるであろう。
【0149】
エチレンの単独重合を実施するため、MAOで処理したナノチューブ(0.25g)が入っているフラスコにn−ヘプタン100mlを加えた。
【0150】
次に、その混合物を、磁気攪拌バーが入っている予め調整した丸底反応器に移した。
【0151】
5mM のCpZrClの溶液2.2ml(ナノチューブ0.25gに対して11.5μmol)を窒素雰囲気下で添加した(Lacuna)。次に、その丸底反応器を、油浴で、15分間、50℃(重合温度)に自動的に維持した。
【0152】
次いで、その媒体を、エチレンの流れで、30秒間パージした。重合は、2.7バールのエチレンの圧力下で1時間実施した。このようにして合成されたコンポジットを、12Mの塩酸で酸性にしたメタノールから沈澱させることによって回収した。
【0153】
4. 結果
4.1 カーボンナノチューブのみの場合の触媒活性の欠如
試験に必要なため、重合時間を60分から30分まで短くしたことは分かるであろう。
【0154】
粗製カーボンナノチューブは、エチレンが重合する際に触媒活性を示さないことが証明された。
【0155】
これを行うために、各種の試料に対応する各種条件で重合反応を実施して、得られた結果を表1に示した。
【0156】
この表1に示されているように、助触媒のMAO無しで重合を行うと(試料24bと28a参照)、ポリマーは得られないが、一方、MAOが存在すると、少量のポリエチレンが得られた(試料Dabo 24a参照)。
【0157】
MAO存在下で得た生成物は実際にポリエチレンであることが確認された(本願にそのデータは提示していない)。
【0158】
4.2 前記触媒カップルの、カーボンナノチューブに対する毒作用の欠如
表2と図2にその結果を示した試験によって、粗製の多重壁ナノチューブが、触媒カップル:MAO/CpZrClに対する毒物にならないことを証明できた。
【0159】
具体的に述べると、前処理されていない粗製の多重壁カーボンナノチューブの不在下と存在下で重合を行った場合、時間の経過と共に消費されるエチレンの量を比較すると、触媒活性は、両方の場合、同一であること(表2参照)、及びエチレン消費量の曲線は、両方の場合、事実上重なっていることが観察される(図2参照)。
【0160】
触媒活性は、Zr1モル当たり1時間に産生されるポリエチレン(PE)の量(kg)と定義するものである。
【0161】
4.3 エチレンを重合させる際の触媒作用支持体としてのカーボンナノチューブの使用
全く驚くべきことには、カーボンナノチューブが、エチレンを重合させる際のMAO/CpZrClカップルの触媒作用支持体として使用できることが、本発明によって証明されたのである。
【0162】
当業者は、カーボンナノチューブにはπ電子が豊富であるのでカーボンナノチューブは有効なルイス塩基になりそのため理論的にはオレフィンモノマー例えばエチレンと競合することができることを知っており、その結果、逆に重合反応が非活性化又は阻止されることさえ予想していたであろうから、上記結果は、なおさら驚くべきことである。
【0163】
これを証明するため、前処理された粗製多重壁カーボンナノチューブの存在下及び不在下での重合試験を実施し、これら試験の結果を、表3と図3に示した。
【0164】
図3に示したように、前処理されたナノチューブの存在下での重合に相当する試料Dabo 21の触媒活性は、前記ナノチューブの不在下での試料Dabo 23で得た触媒活性と比べて、50%増大しているのが観察される。これは、カーボンナノチューブで支持された助触媒/触媒の触媒カップルによって形成された触媒系は、エチレンを重合する際の触媒活性が前記カップルのみの場合より高いことを意味する。
【0165】
図3に示すように重合の動力学を比較すると、上記結果が確認される。
【0166】
4.4 PE/粗製MWNTコンポジットの熱的特性の決定
ポリエチレンの含有量が大きいコンポジットを、重合中の各種フラクションを採取して合成し、次いで、重合中の融点の変化及び結晶化度の変化を、これら各種のコンポジットを利用し、示差走査熱量測定法(DSC)及び熱重量分析法(TGA)で測定した。
【0167】
対応する試験結果を表4に示した。これら試験結果が示すように、合成されたポリエチレンの比率が増大するにつれて、融点が徐々に上昇し、一方、結晶化度も閾値(66%)に到達するまで上昇する。
【0168】
これらの試験結果は、ポリエチレンの比率が上昇するにつれて、コンポジットが形成されることを示している。さらに、これら化合物の熱的特性は、それら化合物が含有するポリエチレンの比率が上昇するにつれて向上する。
【0169】
4.5 粗製PE/MWNTコンポジットの形態特性の決定
図4a〜4fは、カーボンナノチューブに対するポリエチレンの含有重量が0%〜42%の範囲内である各種粗製PE/MWNTコンポジットについて得たSEM顕微鏡写真を示す。
【0170】
カーボンナノチューブのみを含有する試料には、図4aと4bに示すように、当業者にはよく知られている現象によって、これらカーボンナノチューブが、パケット(packet)、ランプ(lump)又は束の形態に凝集する固有の自発的な傾向を有することが観察される。これらの束は矢印で示した。
【0171】
この試料を比較点として利用すると、コンポジット中の合成されたポリエチレンの重量含量が増大するにつれて、これらの束は脱凝集する傾向が増大することが分かる(図4c−4f)。
【0172】
走査型電子顕微鏡写真法(SEM)によって実施した補足的な形態分析(本願には示していない)によって、ポリエチレンの含量が50〜75重量%の場合、カーボンナノチューブの「束」が破壊される上記傾向があることが確認されたことは分かるであろう。
【0173】
ナノチューブのコーティングを可視化するため、各種試料すなわちポリエチレンを0、42及び74重量%含有する試料を透過型電子顕微鏡法(TEM)で分析した。これら各種試料で得た写真を図5a〜5cに示した。
【0174】
ポリエチレンを含有しない粗製MWNTナノチューブに相当する試料の場合、分かるように、カーボンナノチューブの「束」が観察される(図5a参照)。これらの束は、約10〜約40ナノメートルの範囲内の各種直径のナノチューブを含有している。これらの束は長さが数マイクロメートルである。写真の中央に見える物体は、ナノチューブを製造するのに使用した触媒の粒子(コバルトと鉄を含む)と考えられることは分かるであろう。
【0175】
一方、42重量%のポリエチレンを含有する粗製ナノチューブに相当する試料の場合(図5b)、カーボンナノチューブのポリエチレンによる部分的なコーティングが、この試料の端縁に観察される(図5bの矢印参照)。
【0176】
ポリエチレンでコートされた(被覆された)粗製ナノチューブの比率は、比較すると、図5cに示すようにポリエチレンの含有比率が大きい試料(74重量%のポリエチレンを含有する粗製ナノチューブ)の場合、増大している。この図では、コートされたナノチューブは黒の矢印で示し、ポリエチレンが非常に豊富な領域は破線矢印で示した。このコーティングは、特に、試料の端縁に見られる。
【0177】
4.6 得られたPE/MWNTコンポジットに対する、カーボンナノチューブを精製したことの影響
粗製カーボンナノチューブについて先に述べたのと同様の触媒活性の測定を、精製カーボンナノチューブについて実施した(測定データは示していない)。
【0178】
この試験によって、支持体が精製カーボンナノチューブからなる触媒系は、支持体が粗製カーボンナノチューブからなる触媒系と全く同様に、触媒活性が有効であることを証明できた。
【0179】
多重壁ナノチューブが粗製であるコンポジットについて先に示した試験と同じ方式で、カーボンナノチューブが精製されているPE/多重壁ナノチューブ(MWNT)コンポジットについて試験を行った。
【0180】
得られた試験結果(本願には示していない)によって、精製カーボンナノチューブで得たPE/多重壁カーボンナノチューブコンポジットの熱的特性と形態の特性が、粗製カーボンナノチューブから得たPE/多重壁カーボンナノチューブコンポジットのそれに匹敵することが証明された。
【0181】
さらに、これらの試験結果によって、カーボンナノチューブは、粗製のままより精製した方が、その「束」を破壊するのに必要なポリエチレンの量が少ないことを示すことができた。これは、カーボンナノチューブは、精製されると束構造になることが少ないということで説明できる。具体的に述べると、精製することで、「束」のベースに位置していてその束を部分的に凝集させる触媒残渣を取り除くことができる。
【0182】
4.7 PE/MWNTナノチューブのコンポジットの、コンポジット製造用マスターバッチとしての使用
本発明によってMAOで処理した粗製多壁カーボンナノチューブ上でエチレンが重合していることを確認できるように、メルトブレンド(melt blend)を調製した。
【0183】
これらブレンドが比較可能であるためには、そのマトリックスは同一でなければならない。そのため、メルトフローインデックスが、荷重が2.16kgにて190℃で1.1g/10分であるHDPEマトリックス(Dow社から入手)を使った。
【0184】
前記マトリックスを、閉鎖した内部チャンバー(Brabender)内でブレンドし続いてこのようにして得た材料を型に入れ圧縮して成形することによって、このマトリックスでメルトブレンドを作製した。
【0185】
より具体的に述べると、ポリマーマトリックスと充填材(ポリエチレンでコートしたカーボンナノチューブ)をともに閉鎖チャンバーブレンダー中で溶融させて混合した。この材料は、溶融して完全に混合したならば、表面がテフロン(登録商標)被膜で覆われている適切なステンレス鋼製型に移した。次に、その全体を、熱圧し(完全に、型の形になるように)次いで水圧器で冷圧した(前記材料をセットするため)。このようにして、厚さが3mmのコンポジットプラークを得た。
【0186】
本願で使用したブレンダーは、Brabender内部ブレンダー(約70gのポリマー)であり、そしてプレスはAgila PE20熱/冷液圧ダブルプレスであった。その混合は、190℃(スクリュー回転速度:45rpm)で2分間行ってHDPEのみを溶融し混合し、次いでそれを10分間、充填材と混合した。プレスする工程は次の通りである。すなわち、低圧で190℃にて3分間、150バールで190℃にて3分間、及び最後に、加熱無しで150バールの圧力にて5分間行った。
【0187】
こうして、内部チャンバー内で混合することによって、3種の混合物を調製した。これら混合物は、HDPEマトリックスのみ(試料Dabo 40a)、MAOで前処理されていない粗製MWNTを2重量%含有するHDPEマトリックス(試料Dabo 40b)、及びマスターバッチの形態で使用される、エチレンのin situ重合によってコートされたMAOで前処理された粗製MWNTを2重量%含有するマトリックス(試料 Dabo 40c)であった。この「マスターバッチ」は、実は、本発明の方法で、MAOで処理した粗製多重壁カーボンナノチューブ上にエチレンを重合させて得たいくつもの試料を混合することによって得られ、それら試料からは重合中試料を採取した。この「マスターバッチ」中の、本発明の方法でin situに生成するポリエチレンの比率は、粗製MWNTの量に対して約70重量%である。
【0188】
4.7.1 機械的特性と粘弾性特性
これらの各混合物について、機械的特性を、引張り試験で測定し、5試料のうち最小値を除いて平均した。引張り速度は、50mm/minであった。さらに、「メルトフローインデックス」(MFI)を利用して粘弾性特性も測定した。
【0189】
得られた結果を表5に要約した。
【0190】
この表に要約したパラメータは、当業者によく知られている。この表における試料の機械的パラメータは、下記のように定義する。
− ヤング率(E)は、材料の初期歪強さの特性値である(剛性)。
− 「降伏点応力」及び「降伏点歪」は、それぞれ流れ閾値(flow threshold)の応力値と伸び率値(σ、ε)に相当する。
− 「MFI」は材料の溶融粘度の特性値である。
【0191】
表5の試験結果は、ナノチューブを加えてもHDPEマトリックスの剛性に有意には影響しないことを示している(表5の第3欄「ヤング率」参照)。
【0192】
一方、これらナノチューブを加えると、破断歪が低下する(表5の第2欄)。
【0193】
しかし、「マスターバッチ」を使うと、材料の延性を維持する特徴を示す、比較的高い破断応力と破断歪などの本質的な特性を保持することができる(試料Dabo 40bとDabo 40cの比較)。
【0194】
粘弾性特性については(表5の最終欄「MFI」)、MWNTカーボンナノチューブを加えると、MFIが大きく低下し、すなわちカーボンナノチューブを加えると、材料の溶融粘度を増大する傾向がある。
【0195】
しかし、それにひきかえ、本発明の方法によってMAOで処理したナノチューブ上にエチレンを重合させて前処理すると、MFIファクターの低下は小さくなり、すなわち溶融粘度の増大は単純な混合物の場合(Dabo 40b)より小さい。これは、本発明の方法によって、カーボンナノチューブがより良好に分散され、その結果、単純混合物と比べてMFIファクターが比較的高くなることで説明できる。MWNTがより良好に分散されてその「束」が破壊されることが、恐らく、このように溶融粘度が低下して標準化ダイを通過するマトリックスの流量が増大する原因であろう。
【0196】
結論として、本発明によって、MAOで処理したナノチューブ上にエチレンを重合させてカーボンナノチューブを前処理すると、材料の剛性と延性が良好に調和し、同時に、材料の目的とする用途に適した粘度を維持する限り、得られるコンポシットの機械的特性を改良できる。
【0197】
4.7.2. 熱的特性
示差走査熱量測定法(DSC)と熱重量分析法(TGA)で熱分析を実施して、各種の混合物を比較した。得られたデータを表6と図6に要約した。
【0198】
これらのデータは、融点が、マトリックスのみの場合よりコンポジットのほうがわずかに高いことを示している(表6の第一欄「m.p.」)。
【0199】
本発明によってMAOで前処理され次いでポリエチレンでコートされたナノチューブを含有するコンポジット(試料Dabo 40c)は、単純混合物より遥かに良好な熱安定性が達成されるという非常に興味深いデータがある。
【0200】
非常に有利なことに、粗製MWNTが存在していると(Dabo 40bとDabo 40c)、HDPEマトリックスの酸化雰囲気中(空気中)での分解温度は、HDPEマトリックスのみ(試料Dabo 40a)のそれより著しく高い(約50℃)(「空気中のTdeg.」の欄)ことも認められる。このことは、図6のサーモグラムに明確に示されている。
【0201】
換言すれば、カーボンナノチューブをHDPEマトリックスと単純に混合すると、HDPEマトリックスの安定性を改善できるが、本発明による処理を受けたカーボンナノチューブが存在すると、2重量%といった少量であっても、その熱安定性をさらに改善できることが、本発明から明らかになる。
【0202】
4.7.3 燃焼挙動
実施した試験は、試料を燃やして、燃焼中の材料の挙動、すなわち火を周囲の媒体に広げる発火液滴生成の可能性、材料の変形、強力な揮発などを観察することからなっている。
【0203】
HDPEマトリックスのみに相当する試料(Dabo 40a)は、発火すると、発火液滴を生成しながら燃焼した。試料に沿った炎の伝播は迅速で、最初の試料はすべて燃焼してしまう。
【0204】
単純に混合することによって得られる、2重量%の粗製MWNTを含有するHDPEマトリックスを含むコンポジットに相当する試料(Dabo 40b)の燃焼を比較すると、もはや、発火液滴は生成しなかった。その炎の伝播は、HDPEマトリックスのみの場合よりゆっくりしていた。燃焼の後、試料は、図7に示すように変形したが、全体としてその初期の寸法を保持していた。この観察結果は、ナノ充填材の存在で誘発される有機マトリックスの炭化によって起こり炭化クラスト(carbonized crust)(「チャー(char)」)が生成するに至る「チャーリング(charring)」現象の典型的なものである。
【0205】
本発明に従ってカーボンナノチューブを処理しても(試料Dabo 40c)、図8に明示されているように、本発明の方法に従って処理されていないカーボンナノチューブ(試料Dabo 40b)と比較して、HDPEマトリックスの燃焼挙動は、原則として、それ以上改善できない。
【0206】
それでもなお、本発明の方法で処理した粗製MWNTを2重量%含有するHDPEマトリックスを含む上記コンポジットの挙動は、マトリックスのみの挙動より優れているようである。未処理のカーボンナノチューブを含有するコンポジットの場合のように、発火流(ignited flow)が全く無く、クラスト(チャー)の生成が観察される(図8参照)。
【0207】
結論として、本発明の方法に従って処理したカーボンナノチューブをHDPEマトリックス中に組み入れると、生成したコンポジットは、発火液滴が生成することなく燃焼することができかつHDPEマトリックスのみと比べて伝播速度は遥かに遅い。しかし、HDPEと粗製MWNTナノチューブを単純に機械混合して得たコンポジットと、HDPEと本発明の方法に従って処理したMWNTとを混合して得たコンポジットとの間に、燃焼挙動の有意差はないようである。
【0208】
4.7.4 形態特性の決定
カーボンナノチューブの脱凝集の状態を可視化するため、HDPEと粗製MWNTを混合することによって得たコンポジットDabo 40b及びHDPEと本発明の方法に従って処理したMWNTとを混合して得たコンポジットDabo 40cの2種のコンポジットの形態の特性決定を透過型電子顕微鏡法(TEM)で実施した。対応する写真を、それぞれ図9a,9b及び図10a,10bに示した。
【0209】
粗製MWNTとHDPEのメルトブレンディング(コンポジットDabo 40b)は、ナノチューブの「束」を脱凝集させるのに充分有効でないことが分かる。具体的に述べると、このコンポジットの図9aと9bに、ナノチューブの「束」が見られる(矢印と拡大図参照)。
【0210】
本発明の方法に従って処理したカーボンナノチューブを含有するコンポジットDabo 40cについて透過型電子顕微鏡法(TEM)で形態分析を行った結果、ナノチューブの「束」はもはや見られなかったので、マトリックス内のカーボンナノチューブは良好に分散していることは明らかである(図10aと10b参照)。対照的に、互いに相対的に分離されているカーボンナノチューブが見られる(図10a参照)。ナノチューブの分散は、試料全体を通じて比較的均一のようである。
【0211】
結論として、透過型電子顕微鏡法(TEM)で行った観察の結果は、カーボンナノチューブをコーティングすることによって、ナノチューブが本来形成する傾向がある「束」を脱凝集させ、その結果、メルトブレンディングでこれらナノチューブをポリエチレンマトリックス中に相対的に均一に分散させる本発明の方法の利点を示している。したがって、マスターバッチをHDPEマトリックスに添加すると、その用語の厳密な意味どおりに、ナノコンポジットが生成すると純粋に考えられる。
【0212】
対照的に、未処理のカーボンナノチューブとHDPEをメルトブレンドしてもナノコンポジットは産生されず、ナノチューブの「束」がポリエチレン中に見られるマイクロコンポジットが産生される。
【0213】
本発明の第二の好ましい実施態様の説明
また、充填材として二重壁カーボンナノチューブ(DWNT)を含有するポリエチレンベースのナノコンポジットを、本発明の方法に従って製造した。その実験条件は以下の通りである。
【0214】
0.8gのDWNTを一夜、減圧下、105℃で乾燥した。TMAを含有しないMAOの溶液(アルミニウムの濃度が0.8Mの溶液46.5ml)を前記ナノチューブに添加した。MAOのカーボンナノチューブへの結合を促進するため、溶媒を除いた後、混合物を、150℃で90分間加熱した。乾燥トルエンで洗浄することによって結合していないMAOを除き、次いで滴定して結合したMAOの量を測定した(24.6mmol結合)。200mlのn−ヘプタンと18.4μmolのCpZrClを前記MAOで処理したDWNTに添加した。重合は、圧力1.1バールのエチレンを使って50℃で実施した。コンポジット(ナノコンポジット)の各種試料フラクションを、ポリエチレン合成中に採取し、次いで分析するため酸性メタノールから沈澱させた。分析を行う前に、ポリエチレン含量が増大したナノコンポジットを、減圧下、150℃で90分間乾燥した。
【0215】
次いで、密閉カプセル中でDSC分析を実施し、ナノコンポジットのポリエチレン含有量が増大するにつれて融点と結晶化度が上昇することが証明された(データは示していない)。
【0216】
そのナノコンポジットのTGAによる分析も実施してDSCで得た結果を確認し、そして実際に、ポリエチレン含有量の増大したナノコンポジットが、遅いサンプリング時間において得られた(データは示していない)。
【0217】
第三の好ましい実施態様の説明
第三の好ましい実施態様では、単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)を充填材として含有するポリエチレンベースのナノコンポジットを、本発明の方法に従って製造した。その実験条件は、MWNTタイプのナノチューブの第一実施態様に記載したのと同一であった。
【0218】
このように本発明の方法に従って製造したコンポジットについて得た試験結果と、エチレンを単純に重合させて得たポリマーについて得た試験結果を比較して表7に示した。
【0219】
表7に示されているように、ナノチューブ不在下で単純に重合した場合と比較すると、充填材としてSWNTタイプのカーボンナノチューブを使用する本発明の方法によって、重合反応の触媒活性を増大することができる。
【0220】
さらに、上記の単純重合と本発明の方法によるSWNTタイプのナノチューブの存在下での重合との重合動力学の比較試験によって、これらの動力学は、最初の20分間は同等であったが、その後、単純重合の重合速度は減衰し始めるが、一方、本発明による重合の速度は増大し続ける(図11参照)ことが証明された。
【0221】
単純重合で得た試料(Dabo B 013a)及び本発明によるSWNTナノチューブ上の重合で得た試料(コンポジットDabo B 012)の2種類の試料の熱分析も実施して、結果を表9に示した。
【0222】
単純重合で得たポリマーのみは、本発明に従って得たコンポジットより融点は低いが、その結晶化度は高いことがこの分析結果から明らかである。
【0223】
SWNTタイプのカーボンナノチューブを含有しかつ本発明の方法で得たポリエチレンベースのナノコンポジットであってポリエチレン含有量を増大したコンポジットの熱試験を実施し、その結果を表8に示したが、その試験によって、サンプリング時間を遅くして得た産物は、実際に、ポリエチレン含有量の増大したコンポジットに相当し、そして生成したポリエチレンの量が増大すると、融点が上昇しかつ結晶化度が上昇することが観察できることを証明できた。
【0224】
第四の好ましい実施態様の説明
第一の実施態様において詳細に記載されている本発明の方法に従って、コンポジット材料を製造したが、いくつか差をつけて行った。最少量1.23mmolのMAOを使用した。というのは、先の実験で、この量のMAOを含有するカーボンナノチューブ上にエチレンが常に重合していたからである。さらに、TMAを除くステップとカーボンナノチューブを150℃に加熱したのち洗浄するステップを除いた。その上、1gのMWNTを、4.9mmolのアルミニウムを含有するMAOで、40mlのn−ヘプタンを使って処理した。
【0225】
エチレンを単独重合する際は、175mlのn−ヘプタンと16.4μmolのCpZrClを使用した。
【0226】
このようにして得たコンポジットを、「マスターバッチ」として使用するため、熱重量分析法に付した。その分析結果によって、そのコンポジットの組成は下記の通りであることが明らかになった。
− 39.7重量%のポリエチレン(ヘリウム中、20℃/分の条件にてTGAで得た)
− 5.8重量%のアルミナ(空気中、20℃/分の条件にてTGAで得た)
− 54.5重量%のMWNT(上記ポリエチレン及びアルミナの量を差し引いて決定した)
【0227】
ポリエチレン(PE)が実際に合成されたことが証明された(示差走査熱量測定分析法(DSC)によって)。すなわち、測定されたPEの特徴的な融点は134.4℃であり(サイクリックDSC(10℃/分)の第二パッセージ中で測定)、そして結晶化度は、51%であった(サイクリックDSCの第二パッセージ中の融解熱から計算)。
【0228】
このようにして得たこのマスターバッチを、市販タイプの高密度マトリックス(HDPE)(Dow社から入手、MI=1.1g/10min)中に押出し/注入することによって再分散させて新しいコンポジットを得た。その実験条件は以下の通りであった。
− 操作温度:190℃
− アドミション期間:30rpmで4分間
− 再循環期間:60rpmで6分間
− 回収:60rpmで2分間
− 注入チャンバーの温度:190℃
− 注入温度(型):100℃(各プロセスで二つの引張り試験用試料が作製される)
【0229】
平行して、ポリエチレンのみを含有する試料、又は単純に直接混合して得られる、ポリエチレン及び1重量%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)を含有するコンポジットを調製した。
【0230】
さらに、MWNTベースの「マスターバッチ」を合成し、その組成を測定した結果、ポリエチレンが39.7重量%、アルミナが5.8重量%及びMWNTが54.5重量%であった。
【0231】
次に、これら3種類の試料を、引張り速度50mm/minの引張り試験に付して、結果を以下に示す。
【0232】
破断応力及び破断点伸び
図12と13によって示すように、極限特性(破断応力及び破断点伸び)は、本発明のマスターバッチを再分散させることによって得たコンポジットの方が、ポリエチレンのみ及び直接混合することによって得たコンポジットよりはるかに良好である。
【0233】
ヤング率
図14は、注入中に得た各種材料のヤング率の値が同じ範囲内の値であり、そしてこれらの値が各材料の相対測定誤差の範囲内にあることを示している。
【0234】
降伏点における応力と伸び
降伏点応力(図15)と降伏点における伸び(図16)について得た値に対して同じ観察を行った。
【0235】
結論として、得られた結果は、ポリマーマトリックスをベースとしかつ充填材として本発明の方法で得たカーボンナノチューブを含有するコンポジットを、マスターバッチとして使用すると、特にポリマーのみの場合のみならず、前記ポリマーと前記充填材の直接混合によって得たコンポジットと比較して、前記極限特性を上昇させることができることを証明している。換言すれば、本発明の方法によって、要求どおりに、カーボンナノチューブの極限特性を転移されたナノコンポジットを得ることができる。
【0236】
追加の試験によって、カーボンナノチューブの特性のコンポジットへの転移は他の物理特性にも関連することを示すことができる。
【0237】

粗製MWNTを使って開始した各種のエチレン重合試験(2.7バールのエチレン、50℃、30分間)によって得た試験結果。
【0238】

【0239】

N.B.:11.5μmolのCpZrCl;Vheptane合計:100ml 1h、50℃ 2.7バールのエチレン(0.25gのMWNT)
【0240】

N.B.:Pethylene=1.1バール;T=50℃;1gのMWNT/200mlのn−ヘプタン;46μmol Zr/g MWNT;Al/Zr=240
各試料採取時の時間間隔:1〜2分間
TGAで測定した充填材含有量を差し引いて、PEマトリックスについて計算した結晶化度
ヘリウム中TGAによって得たDSC値の第二パッセージ中に得た値
【0241】

【0242】

サーモグラムの導関数の極大値によって計算(図6参照)
【0243】

【0244】

各試料採取時の時間間隔は約1〜2分間
空気中TGAによって測定(20℃/min,900℃で測定)
ヘリウム中TGAによって測定(20℃/min)
PE、アルミナ及び水の量の情報から決定
150℃で乾燥した試料に対するサイクリックDSC(10℃/min)の第二パッセージ中に測定
150℃で乾燥した試料に対するTGAで得たPEに基づいて計算した結晶化度
【0245】

サイクリックDSC(10℃/min)の第二パッセージ中に測定
サイクリックDSCの第二パッセージ中の融解熱から計算
空気中TGAによって測定(20℃/min)
空気中TGAのresideを差し引いてヘリウム中TGA(20℃/min)で決定
【0246】


【図面の簡単な説明】
【0247】
【図1】図1aはポリエチレンの場合に適用した本発明の方法の原理を図式的に示す。図1bは本発明の方法によるナノチューブの表面におけるジルコノセン触媒の活性化を示す。
【図2】粗製多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の存在下又は不在下でのエチレンの重合反応の重合動力学曲線を比較する図である。
【図3】粗製多重壁カーボンナノチューブを含有し又は含有しない触媒系を使う本発明の方法によるエチレンの重合反応の重合動力学曲線を比較する図である。
【図4a−b】図4aは粗製MWNTカーボンナノチューブの試料のSEM電子顕微鏡写真を示す。図4bは束又は凝集体を可視化するための図4aの試料のズーム写真を示す。
【図4c−d】図4cは10重量%のポリエチレンを含む粗製MWNTナノチューブを含有しかつ本発明の方法によって助触媒のMAOを結合させて得た試料のSEM電子顕微鏡写真を示す。図4dは図4cの試料のズーム写真を示す。
【図4e−f】図4eは42重量%のポリエチレンを含む粗製MWNTナノチューブを含有しかつ本発明の方法によって助触媒のMAOを結合させて得た試料のSEM電子顕微鏡写真を示す。図4fは図4eの試料のズーム写真を示す。
【図5a−b】図5aは粗製MWNTカーボンナノチューブのみに相当する図4a及び4bの写真の試料の透過型電子顕微鏡法(TEM)による顕微鏡写真を示す。図5bは42重量%のポリエチレンを含有する粗製MWNTカーボンナノチューブに相当する図4e及び4fの写真の試料の透過型電子顕微鏡法(TEM)による顕微鏡写真を示す。
【図5c】74重量%のポリエチレンを含有し本発明の方法によって助触媒のMAOを結合させて得た粗製MWNTナノチューブに相当する試料の透過型電子顕微鏡法(TEM)による電子顕微鏡写真を示す。
【図6】HDPEマトリックスに基づいた異なる混合物の空気中のTGAサーモグラムを比較する図である。
【図7】先に定義した試料Dabo 40bの燃焼後の写真である。
【図8】先に定義した試料Dabo 40cの燃焼後の写真である。
【図9】図9aは同じ試料Dabo 40bのTEM電子顕微鏡写真である。図9bは図9a中のMWNTカーボンナノチューブの束を含む領域のズーム写真である。
【図10】図10aは同じ試料Dabo 40cのTEM電子顕微鏡写真である。図10bは図10a中の分離されたMWNTカーボンナノチューブを示すズーム写真である。
【図11】エチレンの単純重合反応及び本発明の方法による単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)上で実施したエチレンの重合反応の重合動力学を比較した図である。
【図12】3種類の試料、すなわち高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと1%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の単純混合によって得たコンポジット、及び高密度ポリエチレンと本発明によって製造されたマスターバッチから得たコンポジットについて得た引張り試験の結果を比較した図である。
【図13】3種類の試料、すなわち高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと1%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の単純混合によって得たコンポジット、及び高密度ポリエチレンと本発明によって製造されたマスターバッチから得たコンポジットについて得た引張り試験の結果を比較した図である。
【図14】3種類の試料、すなわち高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと1%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の単純混合によって得たコンポジット、及び高密度ポリエチレンと本発明によって製造されたマスターバッチから得たコンポジットについて得た引張り試験の結果を比較した図である。
【図15】3種類の試料、すなわち高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと1%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の単純混合によって得たコンポジット、及び高密度ポリエチレンと本発明によって製造されたマスターバッチから得たコンポジットについて得た引張り試験の結果を比較した図である。
【図16】3種類の試料、すなわち高密度ポリエチレンのみ、高密度ポリエチレンと1%の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の単純混合によって得たコンポジット、及び高密度ポリエチレンと本発明によって製造されたマスターバッチから得たコンポジットについて得た引張り試験の結果を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスにおいて均一に分散されたカーボンナノチューブの存在下で、対象のモノマーと称呼されるモノマーの、対象のポリマーと称呼されるポリマーへの重合によって得られた少なくとも一種のポリマーマトリックスを含有するコンポジット材料を得る方法であって、
前記カーボンナノチューブを触媒作用支持体として使用して、その表面上に助触媒/触媒のカップルを均一に結合させて触媒系を形成させ;
前記触媒系を重合反応に対して活性化し;
前記活性触媒系を使って、カーボンナノチューブの表面において前記モノマーを重合させ、前記モノマーの重合が進行するにつれて、前記カーボンナノチューブの周囲に前記ポリマーマトリックスが生成するように時間をかけて重合反応を進行させることを特徴とする方法。
【請求項2】
下記ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法:
カーボンナノチューブの不活性溶媒による懸濁液を調製し;
前記助触媒を添加することによって前記カーボンナノチューブを前処理して、その助触媒がカーボンナノチューブの表面に吸着されている前処理されたカーボンナノチューブの懸濁液を得て;
かくして前処理されたカーボンナノチューブの懸濁液に前記触媒を添加し次いでモノマーの流れを循環させることによって、その前処理されたカーボンナノチューブの懸濁液から反応混合物を調製して、前記反応混合物中、前記ナノチューブの表面に前記モノマーの重合反応を起こさせ、前記カーボンナノチューブが前記対象のポリマーでコートされている前記コンポジット材料を形成させ;
反応混合物における重合が、約0.1%と約99.9%の間の重合率に到達したとき重合反応を停止させる。
【請求項3】
前記モノマーはオレフィンであり、前記対象のポリマーはポリオレフィンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象のモノマーは、エチレン、プロピレン、これらとαオレフィン類のコモノマー、共役αジオレフィン類、スチレン、シクロアルケン類、ノルボルネン、ノルボルナジエン及びシクロペンタジエン並びにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象のポリマーはポリエチレンであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
助触媒/触媒のカップルと実験パラメータは、助触媒によってカーボンナノチューブの表面に触媒を固定して触媒系を形成できるように、選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒は、対象のモノマーの重合反応を触媒できるように選択され、前記触媒は、メタロセン類、ヒンダードアミドアリールキレート化合物類、ヒンダードオキソアリールキレート化合物類、Fe(IIおよびIII)とCo(II)のビス(イミノ)ピリジン類、Ni(II)とPd(II)に基づいたブルックハート錯体(Brookhart complex)及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
助触媒は、メチルアルミノキサンもしくは化学的に修飾されたメチルアルミノキサン又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
助触媒/触媒の触媒カップルは、メチルアルミノキサン/CpZrClカップルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
触媒の量は、約10−6〜約10−5mol/gカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
反応混合物中の助触媒の量は、約10−3〜約10−2mol/gカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
反応混合物の温度は、25℃と140℃の間であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前処理は、25℃と200℃の間の温度で1分間と2時間の間の時間、実施されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
重合は、モノマーの圧力が約1バールと約3バールの間で実施されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
重合は、モノマーの圧力が約1.1バールと約2.7バールの間で実施されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
反応混合物を調製するために、触媒を、前処理したカーボンナノチューブの懸濁液に添加した後に、モノマーの流れを前記懸濁液中に循環させることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
反応混合物を調製するために、触媒を、前処理したカーボンナノチューブの懸濁液に添加するのと同時に、モノマーの流れを前記懸濁液中に循環させることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
カーボンナノチューブは、単一壁カーボンナノチューブ、二重壁カーボンナノチューブ、多重壁カーボンナノチューブ及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
カーボンナノチューブは、粗製の及び/又は精製されたカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
カーボンナノチューブは、機能化カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
コンポジットが約50%〜約99.9%のカーボンナノチューブと約50%〜約0.1%のポリマーを含有するような重合率になったとき、重合反応を停止させることを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生成したナノコンポジットが、ポリマーマトリックスにおいてナノメーターの尺度で均一に分散している約0.1%〜約50%のカーボンナノチューブと約99.9%〜約50%のポリマーを含有しているとき、重合反応を停止させることを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
追加のステップを含み、その追加のステップは、コンポジット材料をマスターバッチとして使って、付加ポリマーとして知られるポリマーに基づいてナノコンポジットを調製するステップであり、前記付加ポリマーは、ナノコンポジット材料の対象のポリマーと混和性及び相溶性であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
カーボンナノチューブ、助触媒及び触媒を含有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法を実施するための触媒系であって、前記触媒は前記助触媒と触媒カップルを形成し、そのカップルの前記触媒と前記助触媒は前記カーボンナノチューブの表面に結合していることを特徴とする触媒系。
【請求項25】
請求項24に記載の触媒系を含有する、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法を実施するための組成物。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法によって得られるコンポジット材料。
【請求項27】
約0.1%〜99.9%のカーボンナノチューブと約99.9%〜0.1%のポリマーを含有することを特徴とする請求項26に記載のコンポジット材料。
【請求項28】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法によって得られるコンポジット材料であって、前記コンポジット材料は、少なくとも一種のポリマーの少なくとも一種のマトリックスを含有するナノコンポジットに相当し、カーボンナノチューブがナノメーターの尺度で均一に分散されていることを特徴とするコンポジット材料。
【請求項29】
約0.1%〜約50%のカーボンナノチューブと約99.9%〜約50%のポリマーを含有することを特徴とする請求項28に記載のコンポジット材料。
【請求項30】
カーボンナノチューブは、ポリマーで被覆されていることを特徴とする請求項26〜29のいずれか一項に記載のコンポジット材料。
【請求項31】
少なくとも一種の付加ポリマーのマトリックスと請求項26〜30のいずれか一項に記載のコンポジット材料とを含有するコンポジット材料。
【請求項32】
カーボンナノチューブの脱凝集のための、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項33】
請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法を使用して、重合反応を、カーボンナノチューブの含有量が0.1%未満でポリマーの含有量が99.9%より大きくなるのに充分長い時間、進行させることを特徴とするモノマーを重合させる方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法で得られるポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図4a−b】
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【図4c−d】
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【図4e−f】
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【図5a−b】
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【図5c】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−501295(P2007−501295A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522185(P2006−522185)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000113
【国際公開番号】WO2005/012170
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(506039689)エス.エー. ナノシル (1)
【Fターム(参考)】