説明

充電システム及び蓄電池劣化判定方法

【課題】スペース、コスト及び人的稼動を削減しつつ、蓄電池の劣化判定を行うこと。
【解決手段】充電システム10は、組電池1と、充電器2と、温度計測部3と、劣化判定部4とを有する。組電池1は、複数の単電池5を直列に接続して構成される。充電器2は、組電池1が有する各単電池5を充電する。温度計測部3は、複数の単電池5の温度を計測する。劣化判定部4は、温度計測部3により計測された複数の単電池5の温度を監視し、複数の単電池5の平均温度を含む設定範囲を逸脱した温度の単電池5を検知した場合に、その単電池5が劣化していると判定する劣化判定処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電システム及び蓄電池劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の蓄電池から構成される組電池がある。例えば、組電池は、交流電源から出力される交流電力を直流電力に変換して負荷へ供給する電源システムなどにおいて、バックアップ用の電源として用いられる。かかる組電池は、例えば、整流器や充電器などによって充電される。
【0003】
ここで、組電池が充電される際には、組電池ごと充電電圧が印加されるので、組電池が有する個々の蓄電池に印加される電圧の大きさは不明である。各蓄電池が同一のものであれば、それぞれに印加される電圧も同一であることが期待される。しかし、製造上のばらつき及び運用上の取り扱いの差によって、組電池を構成する各蓄電池の充電電圧にばらつきが生じる場合がある。この充電電圧のばらつきが顕著になると、充電電圧が高い蓄電池は過充電となり、充電電圧が低い蓄電池は充電不足になり、いずれの場合でも蓄電池の劣化が促進される。
【0004】
劣化が生じた蓄電池は、早期に交換することが要求される。そのため、従来、蓄電池の劣化を判定する各種の方法が提案されている。例えば、測定対象電池の劣化状態を測定する方法として、負荷に電力を供給する整流器の出力にさらに擬似負荷装置を接続し、負荷と擬似装置とに放電する放電電流に基づいて、電池の残存容量を算出する方法がある。また、劣化判定装置が、ユーザから、測定対象電池の放電条件情報の入力を受け付け、測定対象電池に基づいて接続された測定対象電池の端子電圧に基づいて、残存容量を算出する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−078672号公報
【特許文献2】特開2006−300561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の充電システムでは、スペース、コスト及び人的稼動を削減しつつ、蓄電池の劣化判定を行うことができないという課題があった。例えば、擬似負荷装置を用いた方法では、擬似負荷装置の設置によるスペース及びコストが増大する。また、劣化判定装置を用いた方法では、作業者が現場において測定対象の電池ごとに劣化判定装置を接続する作業を行う必要があるため、人的稼動が大きい。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、スペース、コスト及び人的稼動を削減しつつ、蓄電池の劣化判定を行うことが可能な充電システム及び蓄電池劣化判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る充電システムは、複数の蓄電池を直列に接続して構成される組電池と、前記組電池が有する各蓄電池を充電する充電器と、前記複数の蓄電池の温度を計測する温度計測部と、前記温度計測部により計測された前記複数の蓄電池の温度を監視し、該複数の蓄電池の平均温度を含む設定範囲を逸脱した温度の蓄電池を検知した場合に、該蓄電池が劣化していると判定する劣化判定処理を行う劣化判定部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る蓄電池劣化判定方法は、複数の蓄電池を直列に接続して構成される組電池と該組電池が有する各蓄電池を充電する充電器とを有する充電システムに適用される蓄電池劣化判定方法であって、前記複数の蓄電池の温度を計測するステップと、計測された前記複数の蓄電池の温度を監視し、該複数の蓄電池の平均温度を中心とした設定範囲を逸脱した温度の蓄電池を検知した場合に、該蓄電池が劣化していると判定する劣化判定処理を行うステップとを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スペース、コスト及び人的稼動を削減しつつ、蓄電池の劣化判定を行うことが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施例に係る充電システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施例に係る劣化判定部による制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、図2に示した劣化判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る充電システム及び蓄電池劣化判定方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
まず、図1を用いて、本実施例に係る充電システムの構成例について説明する。図1は、本実施例に係る充電システムの構成例を示す図である。図1に例示するように、本実施例に係る充電システム10は、組電池1と、充電器2と、温度計測部3と、劣化判定部4とを有する。
【0014】
組電池1は、複数の単電池5を直列に接続して構成される。本実施例では、組電池1は、12個の単電池5を直列に接続して構成される。また、本実施例では、単電池5として、満充電電圧が4.1[V(ボルト)]、定格電圧が4.0[V]、定格容量が200[Ah(アンペアアワー)]のリチウムイオン蓄電池が用いられる。したがって、本実施例では、組電池1の満充電電圧は49.2[V]となり、定格電圧は48.0[V]となり、定格容量は200[Ah]となる。
【0015】
充電器2は、組電池1が有する各単電池5を充電する。この充電器2は、出力電圧が単電池5の満充電電圧と単電池5の数との積により得られる電圧設定値に設定される。本実施例では、充電器2の出力電圧は、単電池5の満充電電圧4.1[V]と単電池5の直列数12の積により得られる49.2[V]に設定される。また、充電器2の最大出力電流は20[A(アンペア)]に設定される。
【0016】
充電器2によって組電池1の充電が開始された直後は、充電当初は組電池1の電圧が低いため、充電器2の出力電圧は垂下して組電池1の電圧に一致する。その後、組電池1は一定の電流で充電され、充電が進行するにつれて組電池1の電圧が上昇する(定電流充電)。そして、組電池1の電圧が満充電電圧に達すると、充電電流は減少に転じる。その後は、一定の電圧で組電池1の充電が継続される(定電圧充電)。
【0017】
温度計測部3は、組電池1が有する複数の単電池5の温度を計測する。本実施例では、単電池5の数と同じ数だけ温度計測部3が設けられる。各温度計測部3は、組電池1が有する複数の単電池5それぞれに接続され、各単電池5の温度を計測して劣化判定部4に通知する。
【0018】
劣化判定部4は、温度計測部3により計測された複数の単電池5の温度を監視し、複数の単電池5の平均温度を含む設定範囲を逸脱した温度の蓄電池を検知した場合に、その単電池5が劣化していると判定する劣化判定処理を行う。
【0019】
具体的には、劣化判定部4は、複数の温度計測部3それぞれから各単電池5の温度を取得し、複数の単電池5の平均温度を算出する。また、劣化判定部4は、算出した平均温度を含む設定範囲を算出する。例えば、劣化判定部4は、平均温度を中心にして上下それぞれに一定の幅を有する設定範囲を設定する。本実施例では、劣化判定部4は、平均温度から±5[℃]の範囲を設定範囲として設定する。また、劣化判定部4は、組電池1が有する複数の単電池5の中で、設定範囲を逸脱する温度の単電池5があるか否かを判定する。そして、劣化判定部4は、設定範囲を逸脱する温度の単電池5があった場合に、その単電池5が劣化していると判定する。
【0020】
例えば、ある時点において、12個の単電池5の温度がそれぞれ22.0[℃]、23.2[℃]、24.1[℃]、21.8[℃]、25.4[℃]、22.6[℃]、24.1[℃]、23.3[℃]、23.1[℃]、21.7[℃]、22.0[℃]、23.1[℃]であったとする。
【0021】
この場合には、劣化判定部4は、平均温度を23.0[℃]と算出する。そして、この時点では、平均温度から最も逸脱しているのは温度が25.4[℃]の単電池5であり、この単電池5の温度の平均温度からの乖離は2.4[℃]である。つまり、この時点では、全ての単電池5の温度が平均温度±5[℃]の設定範囲内にある。したがって、この時点では、劣化判定部4は、いずれの単電池5についても、劣化していると判定しない。
【0022】
また、別の時点において、例えば、12個の単電池5の温度がそれぞれ22.0[℃]、23.2[℃]、24.1[℃]、21.8[℃]、28.4[℃]、22.6[℃]、24.1[℃]、23.3[℃]、23.1[℃]、21.7[℃]、22.0[℃]、23.1[℃]であったとする。
【0023】
この場合には、劣化判定部4は、平均温度を23.3[℃]と算出する。そして、この時点では、平均温度から最も逸脱しているのは温度が28.4[℃]の単電池5であり、この単電池5の温度の平均温度からの乖離は5.1[℃]である。つまり、この時点では、この温度が28.4[℃]の単電池5が平均温度±5[℃]の設定範囲を逸脱している。したがって、この時点では、劣化判定部4は、この温度が28.4[℃]の単電池5が劣化していると判定する。
【0024】
次に、図2を用いて、本実施例に係る劣化判定部4による制御について説明する。図2は、本実施例に係る劣化判定部4による制御の流れを示すフローチャートである。例えば、劣化判定部4は、あらかじめ決められた周期で、以下で説明する制御を実行する。
【0025】
図2に示すように、まず、劣化判定部4は、充電器2の出力電圧が電圧設定値であるか否かと、充電器2の出力電流が所定の電流閾値以下であるか否かとをそれぞれ判定する(ステップS11)。
【0026】
前述したように、電圧設定値は、単電池5の満充電電圧と単電池5の数との積により得られる電圧値である。また、所定の電流閾値は、充電器2が垂下している間の一定電流より低い電流値とする。つまり、充電器2の出力電圧が電圧設定値にある状態、又は、充電器2の出力電流が所定の電流閾値以下である状態は、充電器2の垂下が停止している状態を示している。すなわち、劣化判定部4は、ステップS11の判定を行うことで、充電器2の垂下が停止しているか否かを判定する。
【0027】
そして、劣化判定部4は、充電器2の出力電圧が電圧設定値以下であるか、又は、充電器2の出力電流が所定の電流閾値以下であった場合に(ステップS11,Yes)、単電池5の劣化を判定する劣化判定処理を行う(ステップS12)。続いて、劣化判定部4は、劣化判定処理を行った結果、劣化していると判定された単電池5があったか否かを判定する(ステップS13)。
【0028】
そして、劣化していると判定された単電池5があった場合に(ステップS13,Yes)、劣化判定部4は、充電器2による充電を停止するよう制御する(ステップS14)。例えば、劣化判定部4は、充電器2に対して、充電を停止するよう指示する制御信号を送信する。また、劣化していると判定された単電池5があった場合に(ステップS13,Yes)、劣化判定部4は、警報を発出するよう制御する(ステップS15)。例えば、劣化判定部4は、充電システム10の外部に設けられた警報装置に対して、警報の発出を指示する外部信号を送信する。
【0029】
一方、劣化していると判定された単電池5がなかった場合には(ステップS13,No)、劣化判定部4は、処理を終了する。
【0030】
次に、図3を用いて、図2に示した劣化判定処理について説明する。図3は、図2に示した劣化判定処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、まず、劣化判定部4は、複数の温度計測部3それぞれから各単電池5の温度を取得する(ステップS21)。そして、劣化判定部4は、取得した温度の平均値を算出する(ステップS22)。
【0031】
続いて、劣化判定部4は、算出した平均値から一定範囲を逸脱した単電池5があるか否かを判定する(ステップS23)。ここで、一定範囲を逸脱した単電池5がなかった場合には(ステップS23,No)、劣化判定部4は、一定範囲を逸脱した単電池5が検出されるまで、この判定を繰り返す。
【0032】
そして、劣化判定部4は、平均値から一定範囲を逸脱した単電池5があった場合には(ステップS23,Yes)、その単電池5を劣化と判定する(ステップS24)。一方、平均値から一定範囲を逸脱した単電池5がなかった場合には(ステップS23,No)、劣化判定部4は、いずれの単電池5についても、劣化していると判定しない。
【0033】
上述したように、本実施例に係る充電システム10は、組電池1と、充電器2と、温度計測部3と、劣化判定部4とを有する。組電池1は、複数の単電池5を直列に接続して構成される。充電器2は、組電池1が有する各単電池5を充電する。温度計測部3は、複数の単電池5の温度を計測する。劣化判定部4は、温度計測部3により計測された複数の単電池5の温度を監視し、複数の単電池5の平均温度を含む設定範囲を逸脱した温度の単電池5を検知した場合に、その単電池5が劣化していると判定する劣化判定処理を行う。
【0034】
このように、本実施例では、各単電池5の温度に基づいて劣化の判定が行われるので、追加で必要となる要素は温度検知部のみで済む。したがって、劣化判定用の装置によるスペース及びコストを削減することができる。また、単電池5の温度が平均値から一定範囲を逸脱した場合に、単電池5の劣化が自動的に判定されるので、人的稼動を削減することができる。このように、本実施例によれば、スペース、コスト及び人的稼動を削減しつつ、蓄電池の劣化判定を行うことが可能になる。また、バックアップ用の電源として電源システムに接続されている組電池を充電対象とした場合には、バックアップ能力を低下させずに、単電池の劣化判定を行うことができる。
【0035】
また、本実施例では、充電器2の出力電圧は、単電池5の満充電電圧と単電池5の数との積により得られる電圧設定値に設定され、劣化判定部4は、充電器2の出力電圧が所定の電圧閾値以下である場合に、劣化判定処理を行う。また、本実施例では、劣化判定部4は、充電器2の出力電流が所定の電流閾値以下である場合に、劣化判定処理を行う。したがって、本実施例によれば、充電器2の垂下が停止しているときに単電池5の劣化判定が行われるので、より正確に劣化判定を行うことができる。
【0036】
また、本実施例では、劣化判定部4は、劣化判定処理を行った結果、劣化していると判定された単電池5があった場合に、充電器2による充電を停止するよう制御する。したがって、本実施例によれば、劣化している単電池5が検出された場合に、自動的に組電池1の充電を停止することができる。
【0037】
また、本実施例では、劣化判定部4は、劣化判定処理を行った結果、劣化していると判定された単電池5があった場合に、警報を発出するよう制御する。したがって、本実施例によれば、劣化している単電池5が検出された場合に、その旨をユーザに報知することができる。これにより、例えば、ユーザに対して劣化している単電池5の交換や点検を促すことが可能になる。
【0038】
なお、本実施例では、単電池5としてリチウムイオン蓄電池が用いられる場合の例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、単電池5として他の2次電池が用いられる場合でも、本発明を同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 充電システム
1 組電池
2 充電器
3 温度計測部
4 劣化判定部
5 単電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蓄電池を直列に接続して構成される組電池と、
前記組電池が有する各蓄電池を充電する充電器と、
前記複数の蓄電池の温度を計測する温度計測部と、
前記温度計測部により計測された前記複数の蓄電池の温度を監視し、該複数の蓄電池の平均温度を含む設定範囲を逸脱した温度の蓄電池を検知した場合に、該蓄電池が劣化していると判定する劣化判定処理を行う劣化判定部と
を有することを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記充電器の出力電圧は、前記蓄電池の満充電電圧と該蓄電池の数との積により得られる電圧設定値に設定され、
前記劣化判定部は、前記充電器の出力電圧が前記電圧設定値である場合に、前記劣化判定処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記劣化判定部は、前記充電器の出力電流が所定の電流閾値以下である場合に、前記劣化判定処理を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の充電システム。
【請求項4】
前記劣化判定部は、前記劣化判定処理を行った結果、劣化していると判定された蓄電池があった場合に、前記充電器による充電を停止するよう制御することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の充電システム。
【請求項5】
前記劣化判定部は、前記劣化判定処理を行った結果、劣化していると判定された蓄電池があった場合に、警報を発出するよう制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の充電システム。
【請求項6】
複数の蓄電池を直列に接続して構成される組電池と該組電池が有する各蓄電池を充電する充電器とを有する充電システムに適用される蓄電池劣化判定方法であって、
前記複数の蓄電池の温度を計測するステップと、
計測された前記複数の蓄電池の温度を監視し、該複数の蓄電池の平均温度を中心とした設定範囲を逸脱した温度の蓄電池を検知した場合に、該蓄電池が劣化していると判定する劣化判定処理を行うステップと
を含んだことを特徴とする蓄電池劣化判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125121(P2012−125121A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276290(P2010−276290)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】