説明

充電用の電力管理システムおよびその電力管理装置

【課題】電力契約が低圧電力契約で、現在主流の汎用の急速充電器を改造することなくそのまま複数台を配備可能な充電用の電力管理システムを提供する。
【解決手段】電力系統から低電圧受電をしている低圧系統の充電用の電力管理システムであって、太陽光発電や風力発電などの分散型電源と、前記分散型電源で発電した直流電力や前記電力系統からの受電電力を蓄電する二次電池と、前記分散型電源と前記二次電池の電力の入出力を制御する電力調整装置(PCS)と、前記電力系統と前記低圧系統との連系点における電力と電圧を監視し前記電気設備の規定範囲を逸脱しないように一台または複数台の前記電力調整装置に対して制御を行う電力管理装置(EMS)と、交流電力を入力源とし直流変換して二次電池搭載機器へ充電する急速充電器と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源を有する低圧系統の電力設備における充電用の電力管理システム(EMS:Energy Management System、エネルギーマネジメントシステム)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化でCO(二酸化炭素)の削減が世界的に叫ばれ、また化石燃料が枯渇しつつあり、原油価格、ガソリン価格が高騰している。それを反映してガソリン車(あるいはディーゼル車)に代わり、二次電池を用いた電気自動車が注目されている。また、二次電池を用いた電車や路面電車なども注目されている。また、昨今の不安定な電力供給状況では、二次電池を用いた無停電電源装置なども注目されている。
ところで、電気自動車が普及するにあたっては、電気自動車を対象とした充電設備の充実と、充電時間の短縮化が重要な課題である。
電気自動車を急速に充電するための急速充電器を備えた充電設備は、急速充電器が必要とする最大電力が電力会社との低圧電力契約の限界電力と概ね同じであるため、従来から電力会社と高圧電力契約をするのが常である。しかしながら高圧電力契約よりは、低圧電力契約の方が、電気自動車の充電設備としては、費用の観点からは望ましい。
【0003】
低圧電力契約において急速充電を行うための方法としては、特許文献1に記載の技術が提案されている。すなわち、高圧電力を低圧電力に降圧して供給する受電装置からの電力で充電するに際して、双方向インバータと、DC/DCコンバータ(Direct Current to Direct Current Converter)と二次電池と、それらを制御する制御コントローラとを備える充電装置を用いることにより、充電に必要な電力の一部を二次電池から供給することで急速充電を実現する充電方法および充電スタンドシステムが提案されている。
特許文献1に開示された技術の充電方法および充電スタンドシステムによれば、低圧電力契約の限界電力を超える電力が必要な急速充電を行う場合、充電装置内に備えてある二次電池から直流電力を放電することにより、低圧電力契約の限界電力の範囲内で、急速充電を行うことができる。
また前記の充電方法および充電スタンドシステムは、複数台の電気自動車に充電を行う場合は、受電装置と、DC/DCコンバータと二次電池を備えた充電装置を増やすことで実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−166794公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術による充電方法および充電スタンドシステムは、電気自動車に充電する電力が不足した場合に、二次電池に充電されている電力を補助するものであり、受電装置が受電する低圧系統との連系点の電力の量を制御するものではなく、低圧電力契約の限界電力や逆潮流の監視や制御を行えない。
また前記の充電方法および充電スタンドシステムは、充電スタンドに設置する太陽光発電や風力発電の自然エネルギーを用いる分散型電源で発電した電力を利用して充電することはできない。
また前記の充電方法および充電スタンドシステムは、二次電池から出力する直流電力をDC/DCコンバータから電気自動車へ充電する方式であり、交流電力を入力源とし直流変換して電気自動車へ充電する方式である現在主流の汎用の急速充電器は、適用することができない、という課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記の事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、電力契約が低圧電力契約でも適切に急速充電を行える充電用の電力管理システムなどを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の充電用の電力管理システムは、電力系統から低電圧受電をしている低圧系統の充電用の電力管理システムであって、太陽光発電や風力発電などの分散型電源と、前記分散型電源で発電した直流電力や前記電力系統からの受電電力を蓄電する二次電池と、前記分散型電源と前記二次電池の電力の入出力を制御する電力調整装置(PCS)と、前記電力系統と前記低圧系統との連系点における電力と電圧を監視し前記電気設備の規定範囲を逸脱しないように一台または複数台の前記電力調整装置に対して制御を行う電力管理装置(EMS)と、交流電力を入力源とし直流変換して二次電池搭載機器へ充電する急速充電器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によれば、電力契約が低圧電力契約でも適切に急速充電を行える充電用の電力管理システムなどを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態の電力管理システムに係る低圧系統の電力設備の概略の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態の電力管理システムに係る低圧系統の電力設備の概略の構成を示す図である。
【図3】本発明の第1、第2実施形態のEMS(電力管理装置)の概略の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1、第2実施形態における低圧系統の電力設備の急速充電器の概略の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本願の発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称す)を、図面を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を次に説明する。まず、第1実施形態の低圧系統の電力設備の概略の構成を示し、その電力設備における各装置、各機器などを説明し、その後、機能・動作について説明する。なお、二次電池搭載機器としての電気自動車を例示して説明するが、本発明は、鉄道、船舶、バックアップ用の電源など、あらゆる用途に適用できるものである。
【0012】
<低圧系統の電力設備の概略の構成>
図1は、本発明の第1実施形態の充電用の電力管理システム(EMS制御方式)に係る低圧系統の電力設備の概略の構成を示す図である。低圧系統の電力設備は、電気自動車(二次電池搭載機器)を充電する充電スタンドを想定している。なお、以下の説明は、充電用の電力管理システムの説明と、それに係る装置の説明を兼ねている。
図1において、電力会社の配備する低圧の電圧である略200V(210V)との連系点201は、配電線202を介して、計測機器210と、PCS(Power Conditioner System、パワーコンディショナー、電力調整装置)300A、300Bと、急速充電器400C、400Dと、普通充電器410と、設備負荷500にそれぞれ接続されている。
なお、以上の機器と、電力管理装置である後記するEMS100、分散型電源310A、310B、二次電池320A、320Bとを併せて低圧系統の電力設備とする。
【0013】
PCS300Aには、分散型電源310Aと、二次電池320Aが接続され、また、PCS300Bには、分散型電源310Bと、二次電池320Bが接続されている。
急速充電器400Cには、電気自動車600Cが接続され、また、急速充電器400Dには、電気自動車600Dが接続されている。
普通充電器410には電気自動車600Eが接続されている。
また、EMS(電力管理装置)100は計測機器210の電気信号を受けて、PCS300AとPCS300Bを制御するように接続されている。
【0014】
≪急速充電装置について≫
急速充電器400Cは、配電線202の略200Vの交流電力を入力源として、直流電力に変換し、電気自動車600Cに直流電力(直流電圧)を供給する。この供給された直流電力は電気自動車600Cに備えられた蓄電池(不図示)に供給される。この蓄電池(不図示)に急速充電器400Cから供給される直流電力の直流電圧は、蓄電池(不図示)の出力電圧よりは、かなり高い電圧で印加されるので、蓄電池(不図示)は急速に充電される。充電時間は概ね30分である。
なお、以上において、急速充電器400Cと電気自動車600Cとの関連で説明したが、急速充電器400Dと電気自動車600Dとの関連についても同様である。
【0015】
なお、図4は、急速充電器400(400C、400D、図1)の概略の構成の一例を示す図である(図2、図3については後記する)。
図4において、急速充電器400は、開閉器(電磁開閉器)42、コンバータ43、高周波インバータ44、昇圧トランス45、整流器46を備えて構成される。三相交流電源(配電線202(図1)にから)は、入力端子41を介して急速充電器400のなかの開閉器42を通りコンバータ43に入力する。コンバータ43は、三相交流電力(交流電圧は略AC200V)を直流電力に変換する。高周波インバータ44は、コンバータ43の出力した直流電力を入力して、高周波交流(電力、電圧)に変換する。昇圧トランス45は、高周波インバータ44の出力した高周波交流(電力、電圧)を昇圧する。なお、昇圧トランス45は、入力側(41)と出力側(47)とを直流的に絶縁する機能も果たしている。整流器46は、昇圧トランス45によって昇圧された高周波交流(電力、電圧)を整流して、直流電力を直流出力47から出力する。出力された直流電力は、充電コネクタケーブル(不図示)を介して電気自動車(600C、600D、図1)の蓄電池(不図示)に供給される。
【0016】
≪普通充電装置、設備負荷について≫
普通充電器410は、配電線202の略200Vの交流電力を入力源として、所望の交流電圧の交流電力を電気自動車600Eに供給する。電気自動車600Eは、電気自動車600Eに備えられた電力変換器(不図示)により、交流電力を直流電力に変換し、電気自動車600Eに備えられた蓄電池(不図示)に供給される。
交流電力から直流電力への変換をする電力変換器は、前記したように電気自動車600Eの限られたスペースに備えられるので、変換能力と電流容量とがあまり高いものは設置できない。したがって、入力源の交流電力の交流電圧が略200Vの場合は、充電時間は概ね8時間である。また、交流電圧が略100Vの場合は、充電時間は概ね16時間である
【0017】
設備負荷500は、低圧系統の電力設備(電気自動車を充電する充電スタンド)内で使用する照明や機器動作のために電力を消費する設備の電気に係る負荷である。配電線202の略200Vの交流電力から電力を入力してエネルギー源として用いている。また、交流電力の交流電圧として略100Vを用いる場合もある。
なお、図1において、設備負荷500は1つのブロックとして表記されているが、必ずしもひとつの設備としての負荷とは限らない。複数の設備の負荷を併せて、ひとつの集合体としての設備負荷500として表記することもある。
【0018】
≪分散型電源、二次電池について≫
分散型電源310A、310Bは、太陽光発電装置や風力発電装置であり、低圧系統の電力設備内で備えられている。分散型電源310A、310Bで発電された電力は低圧系統の電力設備内で消費される。
分散型電源310A、310Bは、太陽光(太陽光発電装置の場合)や風力(風力発電装置の場合)などの自然エネルギーにより発電するので、自然任せとなり発電量のばらつきが大きい。そのため、そのまま連系点201以下の低圧電力系統である配電線202に出力した場合、低圧電力系統の電力のばらつきの要因となってしまう。したがって、配電線202にPCS300A、300Bを介して発電電力を供給する。
また、分散型電源310A、310Bの発電量が大きく、急速充電器400C、400Dと普通充電器410と設備負荷500だけで消費できない場合は、PCS300A、300Bを介して後記する二次電池320A、320Bに充電する。
【0019】
二次電池320A、320Bは、リチュウム電池や鉛電池で構成され、連系点201からの受電電力や分散型電源310A、310Bの発電電力によって充電される。
また、状況に応じて、後記するPCS300A、300Bの制御により放電して低圧系統の電力設備内の電力消費を補う。
【0020】
低圧系統の電力設備は、電力会社と所定の電力量の低圧電力契約をしている。したがって、契約を超えた電力量を連系点201から得ることはできない。
前記したように急速充電器400C(400D)は、普通充電器410では数時間を必要とする電気自動車600C(600D)への充電を、短時間で充電することができるが大量の電力を必要とし、その電力は前記の低圧電力契約の限界電力に匹敵する。
そのため、急速充電器400Cと普通充電器410や設備負荷500や他の急速充電器400Dの同時使用は、低圧電力契約の限界電力を超えてしまうため、分散型電源310A、310Bと二次電池320A、320Bから必要な量の電力を受給する。
なお、使い方によっては、二次電池を分散型電源の範疇にいれる分類の仕方もあるが、ここでは、二次電池は分散型電源には分類されないとして説明した。
【0021】
≪EMS、PCS、計測機器について≫
低圧系統の電力設備において、電力の需要と供給を制御するEMS、PCS、計測機器について、説明する。
計測機器210は、連系点201における電力と電圧の大きさと電力量を測定する。
EMS100は、計測機器210が計測した電力と電圧を監視し、所定の範囲におさまるようにPCS300A、300Bの制御を行う。
PCS300Aは、EMS100からの制御指令に基づき分散型電源310Aと二次電池320Aの電力の入出力を制御する
PCS300Bは、EMS100からの制御指令に基づき分散型電源310Bと二次電池320Bの電力の入出力を制御する
また、PCS300A、300Bは、連系点201から受電した配電線202の交流電力を二次電池320A、320Bに供給する場合は、交流電力を直流電力に変換する。また、分散型電源310A、310Bや二次電池320A、320Bの直流電力を配電線202に戻す場合には、直流電力を交流電力に変換する。
【0022】
前記したように、分散型電源310A、310Bは、太陽光や風力などの自然エネルギーにより発電することができる太陽光発電装置や風力発電装置であるが、自然任せによるため、発電量のばらつきが大きい。したがって、そのまま連系点201につながる配電線202の低圧電力系統に出力した場合、低圧電力系統の電力のばらつきの要因となってしまう。
そのため、EMS100は、PCS300A、300Bの出力端に対する有効電力および無効電力の入出力電力を、PCS300A、300Bへ指令値として送信する。
また、PCS300A、300Bは、EMS100からの指令値に従い、有効電力および無効電力をPCS300A、300Bの出力端から出力し、低圧電力系統の電力のばらつきを抑制する。
【0023】
PCS300A(300B)は、上記のEMS100からPCS300A(300B)への指令値と、分散型電源310A(310B)の発電電力の電力状態と、二次電池320A(320B)の電力状態とを判断し、二次電池320A(320B)の充放電を自動制御する。
前記のPCS300A(300B)が行う二次電池320A(320B)の充電において、分散型電源310A(310B)の発電電力が指令値に満たない場合は、自動的に連系点201から配電線202を介して電力を受電し、二次電池320A(320B)へ充電を行う。
また、前記したように急速充電器400C(400D)は、大量の電力を必要とし、急速充電器400C(400D)と普通充電器410や設備負荷500や他の急速充電器400D(400C)の同時使用は低圧電力契約の限界電力を超えてしまうため、分散型電源310A、310Bと二次電池320A、320Bから必要な量の電力を供給する。
以上の制御をEMS100、PCS300A、300Bが連携して行う。
【0024】
≪EMS、PCSの詳細な動作について≫
次に、以上のEMS100、PCS300A、300Bの動作について、より詳しく説明する。
EMS100は、連系点201における電力の量と電圧の大きさを常時測定している計測機器210の測定値を、1秒以下の間隔で周期的に取得する。
また、EMS100は、低圧電力契約の限界電力を超えないように定めた電力上限値と、逆潮流を起こさないように定めた電力下限値との範囲内に、計測機器210から取得した電力計測値が入っているか否かを監視する。
【0025】
また、EMS100は、電力会社との契約で定められている電圧上限値と電圧下限値との範囲内に、計測機器210から取得した電圧計測値が入っているかどうかを監視する。
また、EMS100は、計測機器210から取得した電力計測値が低圧電力契約の限界電力を超えないように定めた電力上限値を超えた場合、即座に電力計測値と電力上限値との差分を計算し、PCS300A、300Bに対する有効電力の制御指令値に、前記の差分を反映させてPCS300A、300Bへ送信する。
【0026】
PCS300A、300Bは、EMS100から受信した有効電力または無効電力の制御指令値に従って有効電力または無効電力の入出力を行う。
また、その結果として計測機器210から取得した計測値が、電力または電圧の上下限値の範囲内に復帰しているかをEMS100が監視する。
また、その際、PCS300A、300Bは、分散型電源310A、310Bの発電量を優先的に利用し、余剰分がある場合には二次電池320A、320Bに充電し、不足分がある場合には二次電池320A、320Bから放電する。
【0027】
EMS100は、計測機器210から取得した電力計測値が逆潮流(低圧系統の分散型電源310A、310Bから連系点201を介して電力会社の電力系統への電力供給)を起こさないように定めた電力下限値を下回った場合、即座に電力計測値と電力下限値との差分を計算し、PCS300A、300Bに対する有効電力の制御指令値に、前記の差分を反映させてPCS300A、300Bへ送信する。
EMS100は、計測機器210から取得した電圧計測値が電力会社との契約で定められている電圧上限値と電圧下限値との範囲内から逸脱した場合、低圧系統解析を行い最適な無効電力を計算し、PCS300に対する無効電力の制御指令値に、前記の計算値を反映させてPCS300A、300Bへ送信する。
【0028】
PCS300A(300B)が2台もしくは3台以上存在する場合、EMS100は、二次電池320に蓄電された電力のうち低圧電力系統から受電して充電した電力の割合に応じて優先順位を判断し、優先順位に応じてPCS300A(300B)を含めた各々への指令値を送り、電力を配分する。
【0029】
図3は、EMS100の構成の概要の示した図である(図2については、後記する)。
図3に示すように、EMS100は、汎用PC(Personal Computer)のサーバ71とPLC(Programmable Logic Controller、プログラマブル論理制御器)72とを備えて構成される。
汎用PCのサーバ71は、連系点201や低圧電力系統の様々なポイントの監視のみならず、最適アルゴリズムを有していて、PCS300A、300Bの電力配分や、作動時期などの高度の計画の計算や処理を行っている。しかしながら、これらの最適計画の処理に占有されて、連系点201の監視に余裕がない場合がある。
【0030】
このような場合に、連系点201の潮流の監視において、逸脱が起きた際に、まず高速の処理能力のあるPLC72が低圧電力系統の様々な情報を収集して計算を行い、一時的に対処して逸脱状態を回避する。このようなPLC72との連係によって、汎用PCのサーバ71のみでは対処できないような高速処理がEMS100として可能となり、素早い対応ができる。
このようにEMS100が汎用PCのサーバ71のみならずPLC72を備えることによって、前記したような1秒以下の周期の対応が可能となる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について述べる。
図2は、本発明の第2実施形態の充電用の電力管理システムに係る低圧系統の電力設備の概略の構成を示す図である。
図2の低圧系統の電力設備の構成において、図1の低圧系統の電力設備の構成と異なるのは、分散型電源311Aがさらに備えられ、PCS300Aが制御する分散型電源が分散型電源310Aと分散型電源311Aの2台となったことである。また、急速充電器400Eがさらに備えられ、配電線202に接続された急速充電器は、急速充電器400C、400D、400Eの3台となっている。
一方、図2においては、図1においては備えられていた普通充電器410と設備負荷500がない。
【0032】
図2の第2実施形態は、PCS300Aのもとに太陽光発電装置である分散型電源310Aと分散型電源311Aの2台の分散型電源があることを示している。
また、PCS300Aは、2台の分散型電源310A、311Aと二次電池320Aの電力の入出力を制御する。つまりPCS300Aは1台のみならず2台(複数台)の分散型電源を制御する(できる)ことを示している。
なお、分散型電源310Aと分散型電源311Aがともに風力発電装置でもよい。
【0033】
また、図2の第2実施形態は、配電線202に接続された急速充電器は、急速充電器400C、400D、400Eの3台でもよいことを示している。なお、急速充電器は4台以上でもよい。
【0034】
また、図2の第2実施形態は、普通充電器410と設備負荷500がなく、充電スタンドとしての低圧系統の電力設備において、急速充電器400C、400D、400Eの存在が重要な機器であり、普通充電器410と設備負荷500は必須要素ではないことを示している。
【0035】
以上のように、分散型電源や急速充電器の台数が変わっても、EMS100は、PCS300A、300Bと連携をとって、制御できることを示している。
【0036】
なお、図2の低圧系統の電力設備の他の機器、装置は図1と同じ構成である。したがって、分散型電源311Aと急速充電器400E以外の機器、装置の説明は重複するので省略する。
【0037】
(その他の実施形態)
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではない。前記の実施形態に示す複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成することができる。すなわち前記の実施形態に示す全構成要素から幾つかの構成要素を削除したり、構成要素を複数組み合わせたりすることができる。
【0038】
図1、図2において、PCS300Aのもとには1台、もしくは2台の分散型電源(310A、311A)であるが、3台以上でもよい。また、太陽光発電装置と風力発電装置との異なるタイプの分散型電源がひとつのPCS300Aのもとに混在していてもよい。
また、PCS300Bのもとに複数台の分散型電源を備えてもよい。
また、PCSが2台(300A、300B)の場合を図示しているが、1台でもよく、また3台以上であってもよい。
【0039】
また、図1において、二次電池320A、320Bとしてリチューム電池、鉛電池の例をあげたが、他の型の二次電池であってもよい。また、二次電池320Aはリチューム電池で、二次電池320Bは鉛電池というように、異なるPCSのもとに異なる型の二次電池を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
また、連系点201の電圧を略200V(210V)として説明したが、略200Vには限定されない。略100Vでも、他の所定の電圧でもよい。
【0041】
また、図1の低圧系統の電力設備は、電気自動車を充電する充電スタンドを想定しているが、必ずしも電気自動車の専用の充電スタンドとは限らない。ガソリンスタンドに併設された充電スタンドでもよく、またコンビニやショッピングモールに設置された充電スタンドでもよい。
【0042】
また、図1において、電気自動車600C、600D、600Eを充電する例をあげたが、電気自動車とは限らない。例えば、プラグインハイブリッド車のように、駆動用の二次電池を搭載している車両であってもよい。
【0043】
また、車両に限らず比較的に大容量の二次電池を所定の時間内に急速に充電することが望ましい機器であってもよい。例えば、電気料金の相対的に安い夜間に充電し、昼間に放電させて使用する充電器、あるいは、災害時などにおける停電対策用の二次電池を備えた大容量発電機などを対象として、充電する際に使用してもよい。
前記の充電器が家庭用であれば、HEMS(Home Energy Management System)として、ビルやマンションであれば、BEMS(Bill Energy Management System)として、本発明の電力管理システム(EMS)が適用できる。
また、前記の充電器や大容量発電機が工場用であれば、FEMS(Factory Energy Management System)として、本発明の電力管理システム(EMS)が適用できる。
【0044】
(本発明、本実施形態の補足)
充電スタンドシステムにおいては、前述したように、従来は高圧電力契約をすることが多かった。しかしながら、高圧電力契約をして、高圧電力による受電をすると、高圧を低圧に変換する変圧器の設備を充電スタンドシステム(需要者)側が設置する必要がある。また、高圧を扱うために充電スタンドシステム(需要者)側が電気主任技術者(管理者)をおく必要がある。
したがって、低圧電力契約で充電スタンドシステムが運営できるならば初期投資や人件費の負担が軽減される。
また低圧電力契約での電力量の上限値は、所定の値に定められているので、低圧電力契約のまま、電力量を限りなく増大させることはできない。
【0045】
本実施形態によれば、電力会社との電力契約は低圧電力契約で済み、低圧電力契約の限界電力を超えたり逆潮流を発生させたりすることなく、自然エネルギーの分散型電源や二次電池を効率的に利用することができ、現在主流となっている汎用の急速充電器や普通充電器を改造することなくそのまま複数台を配備することができる。
【符号の説明】
【0046】
100 EMS(電力管理装置)
201 連系点
202 配電線
210 計測機器
300A、300B PCS(電力調整装置)
310A、310B、311A 分散型電源
320A、320B 二次電池
41 入力端子
42 開閉器(電磁開閉器)
43 コンバータ
44 高周波インバータ
45 昇圧トランス
46 整流器
47 直流出力
400、400C、400D、400E 急速充電器
410 普通充電器
500 設備負荷
600C、600D、600E 電気自動車(二次電池搭載機器)
71 汎用PCのサーバ
72 PLC(プログラマブル論理制御器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統から低電圧受電をしている低圧系統の充電用の電力管理システムであって、
太陽光発電や風力発電などの分散型電源と、
前記分散型電源で発電した直流電力や前記電力系統からの受電電力を蓄電する二次電池と、
前記分散型電源と前記二次電池の電力の入出力を制御する電力調整装置と、
前記電力系統と前記低圧系統との連系点における電力と電圧を監視し前記電気設備の規定範囲を逸脱しないように一台または複数台の前記電力調整装置に対して制御を行う電力管理装置と、
交流電力を入力源とし直流変換して二次電池搭載機器へ充電する急速充電器と、
を備えることを特徴とする充電用の電力管理システム。
【請求項2】
前記充電用の電力管理システムが、
さらに、
二次電池搭載機器に所定の電圧の交流電力で充電する普通充電器と、
前記低圧系統の電力設備内で使用する照明や機器動作のために電力を消費する設備負荷と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の充電用の電力管理システム。
【請求項3】
前記二次電池搭載機器が乗り物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の充電用の電力管理システム。
【請求項4】
前記電力管理装置が、前記連系点における電圧の測定値を1秒以下の間隔で周期的に取得し、前記電力の測定値が予め定められた電力上下限値の範囲内に入っているか否かを監視し、前記電力上下限値の範囲を逸脱した場合、所定の時間内に電力計測値と電力上下限値との差分を計算し、該差分を反映させた制御指令値を前記電力調整装置へ送信することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の充電用の電力管理システム。
【請求項5】
前記電力管理装置が、前記連系点における電圧の測定値を1秒以下の間隔で周期的に取得し、前記電力の測定値が予め定められた電力上下限値の範囲内に入っているか否かを監視し、前記電力上下限値の範囲を逸脱した場合、所定の時間内に低圧系統解析を行い最適な無効電力を計算し、該計算の結果を反映させた制御指令値を前記電力調整装置へ送信することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の充電用の電力管理システム。
【請求項6】
前記電力調整装置が2台以上存在し、前記電力調整装置が制御する前記二次電池に蓄電された電力のうち前記低圧系統から受電して充電した電力の割合に応じて、前記電力管理装置が前記低圧系統から受電する優先順位を判断し、当該優先順位に応じて前記電力管理装置が各々の前記電力調整装置への指令値を送り電力を分配することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の充電用の電力管理システム。
【請求項7】
前記電力管理装置がプログラマブル論理制御器を有することを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の充電用の電力管理システム。
【請求項8】
電力系統から低電圧受電をしている低圧系統の充電用の電力管理システムにおいて、
太陽光発電や風力発電などの分散型電源と、
前記分散型電源で発電した直流電力や前記電力系統からの受電電力を蓄電する二次電池と、
前記分散型電源と前記二次電池の電力の入出力を制御する電力調整装置と、
前記電力系統と前記低圧系統との連系点における電力と電圧を監視し前記電気設備の規定範囲を逸脱しないように一台または複数台の前記電力調整装置に対して制御を行う電力管理装置と、
交流電力を入力源とし直流変換して二次電池搭載機器へ充電する急速充電器と、
を備える充電用の電力管理システムの電力管理装置であって、
前記電力管理装置は、前記連系点における電力の測定値を1秒以下の間隔で周期的に取得し、前記電力の測定値が予め定められた電力上下限値の範囲内に入っているか否かを監視し、前記電力上下限値の範囲を逸脱した場合、所定の時間内に低圧系統解析を行い最適な無効電力を計算し、該計算の結果を反映させた制御指令値を前記電力調整装置へ送信することを特徴とする電力管理装置。
【請求項9】
前記電力管理装置がさらにプログラマブル論理制御器を備えたことを特徴とする請求項8に記載の電力管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−31243(P2013−31243A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163952(P2011−163952)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 蓄電複合システム化技術開発 要素技術開発 既存都市再開発型スマートコミュニティモデル構築に向けた蓄電池利用技術及びエネルギーマネジメントシステムの開発実証委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】