説明

充電装置

【課題】充電効率の一層の向上を図り得る充電装置を提供する。
【解決手段】二次電池10に対する充電電流Ioの充電電流値を制御可能に構成された電源部2と、電源部2を制御することによって二次電池10に対して多段定電流充電処理を実行する電源制御部5と、多段定電流充電処理を実行する際における二次電池10の残存容量と充電電流値との関係を示す多段充電パターンが予め記憶された記憶部6とを備え、電源制御部5は、多段定電流充電処理の開始に先立って容量検出処理を実行して残存容量および二次電池10の電池容量を検出すると共に、多段充電パターンおよび検出した電池容量に基づいて充電の開始時の充電電流値を決定し、充電の開始後においては多段充電パターンに基づいて充電電流値を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電電流値を大きな定電流値から小さな定電流値に多段に変化させて充電対象電池(例えば二次電池などの充電可能な電池)を充電する充電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の充電装置として、特開平11−89106号公報に開示されている充電装置(多段充電装置)が知られている。この充電装置は、多段階に定電流値を出力し得るように構成された充電電源、二次電池の充電電圧を検出する電圧検出器、二次電池に供給される充電電流を検出する電流検出器、およびコントローラを備えている。この充電装置では、コントローラが、電圧検出器および電流検出器からの検出信号を取り込むと共に、二次電池の放電状態を検出し、放電状態から充電容量を求めて、予め設定した多段階の定電流設定値で充電しつつ、電圧検出器で検出された二次電池の充電電圧が規制電圧に達したときに、充電電源に対して次に小さな定電流設定値を設定する。この充電装置によれば、短時間で二次電池を充電し、かつ二次電池のサイクル寿命を長くすることが可能となっている。
【特許文献1】特開平11−89106号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この従来の充電装置には、以下の問題点がある。すなわち、この充電装置では、二次電池の充電電圧が規制電圧に達したときに充電電流値を次に小さな定電流設定値に設定することにより、充電電流値を多段階に変化させている。しかしながら、二次電池では、その内部抵抗の抵抗値が周囲温度の影響を受けて変化し易いため、その充電電圧も周囲温度によって変動する。したがって、この充電装置には、周囲温度が変動する環境下において、次に小さな充電電流値への切り替えを、二次電池の充電時における内部抵抗の抵抗値、電極反応および副反応(ガス発生)といった内部特性を考慮した所望のタイミングで正確に行うことが困難である結果、さらなる充電効率の向上が困難であるという問題点が存在している。
【0004】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、充電効率の一層の向上を図り得る充電装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の充電装置は、充電対象電池に対する充電時の充電電流値を制御可能に構成された電源部と、当該電源部を制御することによって前記充電対象電池に対して多段定電流充電処理を実行する電源制御部と、前記多段定電流充電処理を実行する際における前記充電対象電池の残存容量と充電電流値との関係を示す多段充電パターンが予め記憶された記憶部とを備え、前記電源制御部は、前記多段定電流充電処理の開始に先立って容量検出処理を実行して前記残存容量および前記充電対象電池の電池容量を検出すると共に、前記多段充電パターンおよび当該検出した電池容量に基づいて充電の開始時の充電電流値を決定し、充電の開始後においては当該多段充電パターンに基づいて当該充電電流値を決定する。
【0006】
また、請求項2記載の充電装置は、請求項1記載の充電装置において、前記記憶部には前記多段充電パターンが複数記憶され、前記電源制御部は、前記複数の多段充電パターンのうちから選択された1つの多段充電パターンに基づいて前記充電開始時および前記充電開始後の充電電流値を決定する。
【0007】
また、請求項3記載の充電装置は、請求項1または2記載の充電装置において、前記電源制御部は、前記容量検出処理において、前記充電対象電池への一定の充電電流値での充電と前記電源部からの前記充電対象電池の切り離しとを、当該切り離しの開始から所定時間経過後における前記充電対象電池についての開放電圧の測定を実行しつつ複数回繰り返し、前記測定した複数の開放電圧のうちの少なくとも1つに基づいて当該いずれか1つの開放電圧の測定時における前記充電対象電池の前記残存容量を検出する。
【0008】
また、請求項4記載の充電装置は、請求項3記載の充電装置において、前記電源制御部は、前記容量検出処理において、前記測定した複数の開放電圧のうちの2つに基づいて当該2つの開放電圧の各測定時における前記充電対象電池の前記残存容量を検出し、当該検出した2つの残存容量の差分、前記2つの開放電圧を測定する間における前記充電対象電池に対する総充電時間、および前記容量検出処理における前記充電電流値に基づいて前記電池容量を算出する。
【0009】
また、請求項5記載の充電装置は、請求項1から4のいずれかに記載の充電装置において、前記電源部は前記充電対象電池に対する充電時の充電電圧値を制御可能に構成され、前記電源制御部は、前記多段定電流充電処理を実行した後に前記充電対象電池に対して定電圧充電を実行する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の充電装置では、電源制御部が、多段定電流充電処理の開始に先立って容量検出処理を実行して残存容量および充電対象電池の電池容量を検出すると共に、記憶部に記憶された多段定電流充電処理を実行する際における充電対象電池の残存容量と充電電流値との関係を示す多段充電パターンおよびこの検出した電池容量に基づいて多段定電流充電処理の開始時の充電電流値を決定し、充電の開始後においては多段充電パターンに従って充電電流値を決定する。したがって、この充電装置によれば、充電対象電池(特に鉛蓄電池)における充電時の内部特性(内部抵抗の抵抗値、電極反応および副反応(ガス発生))との間に周囲温度に左右されない関係が成立している残存容量に基づいて、充電対象電池の充電時における内部特性を考慮した所望のタイミングで多段定電流充電時の充電電流値を正確に切り替えることができ、その結果、充電効率の一層の向上を図ることができる。
【0011】
また、請求項2記載の充電装置によれば、記憶部に複数の多段充電パターンを記憶させ、電源制御部が、複数の多段充電パターンのうちから選択された1つの多段充電パターンに基づいて多段定電流充電処理における充電開始時および充電開始後の充電電流値を決定することにより、目的に応じた多段充電パターンでの充電を実行することができる。例えば、多段充電パターンとして、短時間に充電を完了させるために充電電流の電流値を大きめに設定した短時間多段充電パターンと、高効率充電を目的として充電電流の電流値を小さめに設定した高効率多段充電パターンとを記憶部に記憶させて選択可能とすることにより、目的に応じて、短時間での充電と高効率での充電とを選択して実行することができる結果、充電装置の使い勝手を向上させることができる。
【0012】
また、請求項3記載の充電装置によれば、容量検出処理において、電源制御部が、充電対象電池への一定の充電電流値での充電と電源部からの充電対象電池の切り離しとを、切り離しの開始から所定時間経過後における充電対象電池についての開放電圧の測定を実行しつつ複数回繰り返し、測定した複数の開放電圧のうちの少なくとも1つに基づいていずれか1つの開放電圧の測定時における充電対象電池の残存容量を検出することにより、容量検出処理の時間を無駄にすることなく充電対象電池に対する充電を行いつつ、残存容量をリアルタイムに検出することができる。また、開放電圧を測定して充電対象電池の残存容量を検出することにより、電池形状、電極構造および配線に起因して充電電圧を測定する際に発生する内部抵抗の影響をなくすことができると共に満充電近傍で急上昇する過電圧による影響も軽減することができる。
【0013】
また、請求項4記載の充電装置によれば、容量検出処理において、電源制御部が、測定した複数の開放電圧のうちの2つに基づいて、2つの開放電圧の各測定時における充電対象電池の残存容量を検出し、検出した2つの残存容量の差分、2つの開放電圧を測定する間における充電対象電池に対する総充電時間、および容量検出処理における充電電流値に基づいて電池容量を算出することにより、容量検出処理の時間を無駄にすることなく充電対象電池に対する充電を行いつつ、電池容量を検出することができる。
【0014】
また、請求項5記載の充電装置によれば、電源制御部が多段定電流充電処理を実行した後に定電圧充電処理を実行することにより、ほぼ満充電に近い状態の充電対象電池をより満充電に近い状態に移行させつつ、充電終期の電流を低下させて過充電を回避することができるため、充電対象電池の寿命低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る充電装置の最良の形態について説明する。なお、充電対象電池の一例として二次電池(具体的には鉛蓄電池)を充電する構成を挙げて説明する。
【0016】
図1に示すように、充電装置1は、電源部2、スイッチ部3、電圧測定部4、電源制御部5、記憶部6、計時部7および操作部8を備え、一例として交流電源9から交流電圧Viを入力して直流電圧Voを生成すると共に二次電池10に直流電圧Voを出力しての充電が可能に構成されている。
【0017】
電源部2は、一例としてスイッチング方式(シリーズ方式であってもよい)の電源回路(図示せず)を備えて構成されて、交流電源9から入力端子P1,P2を介して入力している交流電圧Viを直流電圧(二次電池10の充電電圧でもある)Voに変換すると共に、この直流電圧Voを出力端子P3,P4に接続されている二次電池10に出力する。また、電源部2は、電源制御部5の制御下で、充電電圧Voの電圧値を制御可能に構成されると共に、出力電流(二次電池10に対する充電電流でもある)Ioの電流値(充電電流値)を制御可能に構成されている。
【0018】
スイッチ部3は、リレーや、トランジスタなどの半導体スイッチ素子などで構成されて、電源部2と出力端子P3との間に介装されている。また、スイッチ部3は、電源制御部5の制御下で、電源部2と出力端子P3とを電気的に接続するオン状態(導通状態)、および電源部2と出力端子P3とを電気的に切り離すオフ状態(非導通状態)のいずれか一方の状態に移行する。電圧測定部4は、出力端子P3,P4間に接続されて、充電電圧Voの電圧値(二次電池10の充電電圧値)を測定して電圧データDvとして電源制御部5に出力する。
【0019】
電源制御部5は、CPU(図示せず)などを含んで構成されている。また、電源制御部5は、記憶部6に記憶されている動作プログラムに従い、充電処理を実行して二次電池10を充電する。この充電処理では、電源制御部5は、操作部8から出力される選択信号S3に基づいて二次電池10に対して多段定電流充電処理を実行する際に使用する多段充電パターンを決定する充電パターン決定処理、二次電池10の容量(残存容量(以下、「SOC」とも」いう。充電量でもある)および電池容量Bc[Ah])を検出(算出)する容量検出処理、決定した多段充電パターンに基づいて充電電流Ioの電流値を多段に変更しつつ電源部2を充電する多段定電流充電処理、および電源部2を定電圧充電で動作させる定電圧充電処理を実行する。また、電源制御部5は、制御信号S1を出力することにより、スイッチ部3に対するオンオフ制御処理も実行する。
【0020】
記憶部6は、ROMやRAMなどの半導体メモリで構成されている。また、記憶部6には、電源制御部5用の動作プログラム、SOCの算出式(下記式(1))、電池容量の算出式(下記式(2))、および定電流充電する際に使用する複数の多段充電パターン(本例では一例として、短時間多段充電パターンと高効率多段充電パターンの2つ。図3参照)が予め記憶されている。この場合、各多段充電パターンは、同図に示すように、SOC[%]に対する充電電流Ioの電流値を規定したものであり、本例では一例として、3つのSOC(SOCt1(=50%),SOCt2(=80%),SOCt3(=95%)))において区画された第1の領域(0%<SOC≦50%)、第2の領域(50%<SOC≦80%)、および第3の領域(80%<SOC≦95%)の3つの領域での充電電流Ioの各電流値が規定された3段充電パターンとして規定されている。この各多段充電パターンにおける0.3CA等は充電電流Ioの電流値を示す値であり、二次電池10の電池容量がBc[Ah]である場合には、Bc×0.3CAが実際の電流値[A]となる。
【0021】
なお、鉛蓄電池は、充電時における内部特性について以下の事実が実験によって確認されている。すなわち、SOCが0%から50%までの領域では、内部抵抗が最も低く、充電された電気量の殆どが電極(活物質)反応に使用されるため、充電電流Ioの電流値を大きくしたとしても、高効率で充電することができる。また、SOCが50%から80%までの領域では、電極反応が主であるが、それ以外の副反応(ガスの発生)も現れ始める。また、内部抵抗は、SOCが0%から50%までの領域よりも若干増加する。また、SOCが80%から95%までの領域では、SOCが50%から80%までの領域よりも副反応の割合が高まり、また内部抵抗も急激に上昇する。以上の充電時における鉛蓄電池の内部特性を考慮して、各多段充電パターンでは、充電動作全体の効率を高め得るように、第1、第2および第3の各領域での充電電流Ioの電流値が順次低下するように設定され、かつ充電効率の高い第1の領域のSOCの範囲が最も広く設定されている。また、第1の領域程ではないが、第3の領域よりも充電効率を高められる第2の領域のSOCの範囲が次に広く設定され、充電時の損失が多くなる第3の領域のSOCの範囲が最も狭く設定されている。したがって、SOCが50%に達するタイミングおよびSOCが80%に達するタイミングで充電電流Ioの電流値を切り替え、またSOCが95%に達するタイミングで多段定電流充電処理を完了させることにより、鉛蓄電池である二次電池10に対して、その内部特性を考慮した多段定電流充電処理が可能となっている。
【0022】
また、記憶部6には、スイッチ部3に対するオンオフ制御処理におけるオン時間T1(一例として15分)およびオフ時間T2(一例として5分)をそれぞれ規定する各データD1,D2と、定電圧充電処理の時間T3を規定するデータD3とが計時部7に対する計時用データDtとして予め記憶されている。また、記憶部6には、容量検出処理において、二次電池10の充電電圧Voを測定する回数(一例として数値「3」)が記憶されている。さらに、記憶部6には、容量検出処理における充電電流Ioの充電電流値I1(一例として5A)が予め記憶されている。
【0023】
SOC=A×Vop−B・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
ここで、AおよびBは、二次電池10の種類によって一義的に決定される定数である。また、Vopは二次電池10の開放電圧である。この場合、各定数A,Bおよび開放電圧Vopは、周囲温度の影響を若干は受けるものの、その変動量は、二次電池10の内部抵抗の温度による変動量と比較した場合、殆ど無視できる程度の少量である。この式(1)によれば、SOCと開放電圧Vopとの間に比例関係が存在することになるが、この両者間の比例関係については、長い時間放置された二次電池10の充電開始直後の短期間においては開放電圧Vopが比例関係から外れて低い値を示す場合が多いものの、この短期間以後の充電期間においては、二次電池10に定電流を連続して(または定電流を周期的に一定時間ずつ)供給するという条件下において、二次電池10の開放電圧Vop[V]とSOC[%]との間に図2に示す比例関係が存在することが実験的に確認されている。このため、このAおよびBについては、例えば充電装置1の使用温度(二次電池10の充電時の温度でもある)において、この充電期間での二次電池10(鉛蓄電池)についての開放電圧Vop[V]とSOC[%]との比例関係を予め測定(実験)することにより、決定することができ、また決定された値は上記したように周囲温度の影響を殆ど受けないため、一般的な二次電池10の使用温度範囲(例えば0℃〜50℃)において定数となる。また、二次電池10の開放電圧Vopとは、スイッチ部3をオフ状態に移行させたときの二次電池10の充電電圧(端子電圧)を意味する。
【0024】
電池容量Bc=I1×ΔT×100/(SOC2−SOC1)・・・・・・(2)
ここで、I1は容量検出処理における充電電流Ioの充電電流値であり、(SOC2−SOC1)は時間を空けて検出した2つの残存容量SOC2,SOC1の差分(単位は%)である。また、ΔTは、2つの残存容量SOC2,SOC1のうちの最初の残存容量SOC1を検出した時から、最後の残存容量SOC2を検出した時までの間における、充電電流Ioの二次電池10への充電時間の総和(本発明における総充電時間。単位は時間)である。
【0025】
計時部7は、電源制御部5から計時用データDtを入力したときに、この計時用データDtで指定された時間を計時すると共に、この指定された時間が経過した時点で、電源制御部5に対して計時完了信号S2を出力する。操作部8は、多段充電パターンを選択するためのスイッチ(図示せず)を備え、このスイッチに対する操作によって選択された多段充電パターンを示す選択信号S3を電源制御部5に出力する。
【0026】
次に、充電装置1の動作について、図3〜図6を参照して説明する。
【0027】
まず、各出力端子P3,P4間に二次電池10が接続された状態において、充電装置1が起動されたときには、電圧測定部4が二次電池10についての充電電圧値の測定を開始して、電圧データDvの電源制御部5への出力を開始する。また、電源制御部5が、二次電池10に対する充電動作を開始する。
【0028】
この充電動作において、電源制御部5は、まず、図5に示すように、多段充電パターン決定処理を実行する(ステップ51)。この多段充電パターン決定処理では、電源制御部5は、操作部8から出力される選択信号S3に基づいて二次電池10を多段定電流充電する際に使用する多段充電パターンを決定する。一例として、電源制御部5は、図3に示す高効率多段充電パターンを選択したものとして以下に説明するが、短時間多段充電パターンを選択した場合についても、第1、第2および第3の各領域における充電電流Ioの電流値が大きくなる以外は、高効率多段充電パターンの選択時と同様にして多段定電流充電処理が行われる。
【0029】
次いで、電源制御部5は、容量測定処理(SOC検出処理および電池容量検出処理)を実行する。この容量測定処理では、電源制御部5は、まず、SOC検出処理を実行して、二次電池10のSOCを検出する(ステップ52)。この残存容量(SOC)検出処理では、電源制御部5は、図6に示すように、まず、記憶部6に記憶されている容量測定処理における充電電流Ioの充電電流値I1を電源部2に設定すると共に、電源部2を作動させる(ステップ61)。これにより、電源部2は、スイッチ部3を介して二次電池10が接続されたときに、二次電池10に対して充電電流Ioを充電電流値I1で供給し得る状態に移行する。
【0030】
次いで、電源制御部5は、制御信号S1をスイッチ部3に出力することにより、スイッチ部3をオン状態に移行させる(ステップ62)。これにより、図4に示すように、電源部2からスイッチ部3を経由して二次電池10に一定の電流値(充電電流値I1)で充電電流Ioが供給され始めて、二次電池10の充電(定電流充電)が開始される。また、電源制御部5は、スイッチ部3をオン状態に移行させるタイミングに同期して、記憶部6に記憶されているデータD1を計時用データDtとして計時部7に設定して、計時部7によるオン時間(15分程度)の計時を開始させる(ステップ63)。次いで、電源制御部5は、計時完了信号S2の入力の有無を繰り返し検出することにより、計時部7によるオン時間の計時が完了したか否か検出する(ステップ64)。
【0031】
その後、計時部7は、オン時間の計時を完了し、計時完了信号S2を生成して電源制御部5に出力する。これにより、電源制御部5は、ステップ64において、計時部7によるオン時間の計時の完了を検出し、次いで、制御信号S1のスイッチ部3への出力を停止して、スイッチ部3をオフ状態に移行させる(ステップ65)。これにより、二次電池10が電源部2から切り離されるため、図4に示すように、二次電池10に対する充電が停止される。また、電源制御部5は、スイッチ部3をオフ状態に移行させるタイミングに同期して、記憶部6に記憶されているデータD2を計時用データDtとして計時部7に設定して、計時部7によるオフ時間(5分程度)の計時を開始させる(ステップ66)。次いで、電源制御部5は、計時完了信号S2の入力の有無を繰り返し検出することにより、計時部7によるオフ時間の計時が完了したか否か検出する(ステップ67)。
【0032】
その後、計時部7は、オフ時間の計時を完了し、計時完了信号S2を生成して電源制御部5に出力する。これにより、電源制御部5は、ステップ67において、計時部7によるオフ時間の計時の完了を検出し、次いで、二次電池10の充電電圧値を測定する(ステップ68)。具体的には、電源制御部5は、計時完了信号S2の入力時点での電圧データDv(計時完了信号S2の入力後に最初に入力した電圧データDv)に基づいて二次電池10の充電電圧値を検出して、記憶部6に記憶させる。この場合、測定された二次電池10の充電電圧値は、スイッチ部3がオフ状態、つまり二次電池10が電源部2から切り離された状態で測定されたものであるため、二次電池10の開放電圧Vopの電圧値(開放電圧値)であり、また切り離しからオフ時間(本発明における所定時間)経過後の充電電圧値(開放電圧値)となる。電源制御部5は、二次電池10についての充電電圧値の測定回数が3回に達したか否かを判別しつつ(ステップ69)、上記ステップ62〜69を繰り返して、二次電池10についての充電電圧値を3回測定し、二次電池10の開放電圧値Vop1,Vop2,Vop3として記憶部6に順次記憶させる。
【0033】
次いで、電源制御部5は、開放電圧値Vop3を測定した時点での二次電池10のSOC(残存容量)を算出する(ステップ70)。このSOCの算出において、電源制御部5は、まず、測定した3回分の開放電圧値Vop1,Vop2,Vop3が図4において一点鎖線で示す直線L(充電時間と充電電圧Voとの関係を示す直線)上に位置することを確認する。本例では、上記したように、各開放電圧値Vop1,Vop2,Vop3は約20分(=15分+5分)毎に(等時間間隔で)測定され、また二次電池10、特に鉛蓄電池では、充電開始直後の所定期間(例えば数分間)を除く充電期間において、二次電池10に定電流を連続して(または定電流を周期的に同一時間ずつ)供給するという条件下において、二次電池10の開放電圧Vop[V]が時間に比例して上昇する関係が存在することが実験的に確認されている。本例では、充電開始からまず15分間程度充電を行ってから各開放電圧値Vop1,Vop2,Vop3を測定しているため、すべての開放電圧値Vop1,Vop2,Vop3が直線L上に位置することになる。
【0034】
電源制御部5は、各開放電圧値Vop1,Vop2,Vop3が直線L上に位置することを確認した後、上記の式(1)を用いて、最後の開放電圧値Vop3を測定した時点での二次電池10のSOCsを算出して、記憶部6に記憶させる。本例では、一例として、算出したSOCsが40%であるとする。これにより、SOC検出処理が完了する。
【0035】
次に、電源制御部5は、図5に示すように、電池容量検出処理を実行する(ステップ53)。この電池容量検出処理では、電源制御部5は、まず、上記の式(1)を用いて、最初の開放電圧値Vop1を測定した時点での二次電池10のSOCを算出して、記憶部6にSOC1として記憶させる。本例では、一例として、算出したSOC1が35%であるとする。次いで、電源制御部5は、上記の式(2)を用いて、二次電池10の電池容量Bcを算出する。この場合、SOC2としては、ステップ52において算出した二次電池10のSOCs(40%)を使用する。また、ΔTは、2つの残存容量SOC2,SOC1のうちの最初の残存容量SOC1を検出した時から、最後の残存容量SOC2を検出した時までの間における、充電電流Ioの二次電池10への供給時間の総和(単位:時間)であり、本例では、2×T1(0.5時間)である。また、容量検出処理における充電電流Ioの充電電流値I1は5Aである。したがって、算出される二次電池10の電池容量Bcは50Ahとなる。電源制御部5は、算出した二次電池10の電池容量Bcを記憶部6に記憶させて電池容量検出処理を終了する。
【0036】
続いて、電源制御部5は、図5に示すように、記憶部6から読み出した多段充電パターンについての3つの領域を区画するSOCのうちの最大のSOCt3(95%)と、容量検出処理の終了した時点でのSOCs(40%)とを比較し(ステップ54)、SOCsがSOCt3以上のときには多段定電流充電処理を実行する必要のない高い充電状態であるため、電流制限された定電圧充電処理(ステップ59)に移行し、SOCsがSOCt3未満のときには多段定電流充電処理を実行する。
【0037】
この多段定電流充電処理では、電源制御部5は、まず、定電流充電の充電条件を決定する(ステップ55)。具体的には、電源制御部5は、ステップ51の多段充電パターン決定処理において決定した多段充電パターン(図3に示す高効率多段充電パターン)と、現在のSOCc(SOCs)とを比較することにより、多段充電パターンにおけるSOCcが含まれる領域の上限のSOCを目標残存容量SOCtとして決定する。本例では、SOCs(40%)は第1の領域(0%<SOC≦50%)に含まれるため、第1の領域の上限のSOCt1(50%)を目標残存容量SOCtとして決定して記憶部6に記憶させる。また、電源制御部5は、このSOCcが含まれる領域の電流値(0.15CA)を二次電池10に供給する充電電流Ioの電流値として決定して記憶部6に記憶させる。また、電源制御部5は、現在のSOCcと、多段充電パターンにおける現在のSOCcが含まれる領域の上限のSOC(目標残存容量SOCt)と、二次電池10の電池容量Bcとを用いて下記式(3)により、目標積算電流値Ihtを算出して、記憶部6に記憶させて、この多段充電パターン決定処理を終了する。
Iht=(SOCt−SOCc)×Bc/100・・・・・・(3)
【0038】
なお、電源制御部5は、ステップ55での定電流充電についての充電条件の決定に際して、現在のSOCc(SOCs)が多段充電パターンにおける第2の領域に含まれるときには、この領域の上限のSOC(SOCt2)を目標残存容量SOCtとし、この領域の電流値(0.1CA)を充電電流Ioの電流値として決定する。また、現在のSOCc(SOCs)が多段充電パターンにおける第3の領域に含まれるときには、この領域の上限のSOC(SOCt3)を目標残存容量SOCtとし、この領域の電流値(0.05CA)を充電電流Ioの電流値として決定する。
【0039】
次いで、電源制御部5は、記憶部6に記憶されている電流値での充電電流Ioの二次電池10への供給を開始すると共に、積算電流値Ihの計測を開始する(ステップ56)。この場合の積算電流値Ihは、現在のSOCcからの充電電流Ioに充電時間を乗算して求める。その後、電源制御部5は、計測している積算電流値Ihが記憶部6に記憶されている目標積算電流値Iht以上となったか否かを検出しつつ(ステップ57)、積算電流値Ihが目標積算電流値Iht以上となるまでステップ56を繰り返し実行する。一方、この二次電池10に対する定電流充電の際に、ステップ57において、積算電流値Ihが目標積算電流値Iht以上となったときには、電源制御部5は、現在の目標残存容量SOCtが現在の多段充電パターンにおける最大のSOCt3(95%)であるか否かを検出し(ステップ58)、目標残存容量SOCtがSOCt3と一致するまで、ステップ55〜ステップ58を繰り返し実行する。
【0040】
これにより、多段充電パターンにおける第1の領域での充電が終了したときには、電源制御部5は、ステップ55において、次の第2の領域での上限のSOCt2(80%)を新たな目標残存容量SOCtとし、かつ次に供給する充電電流Ioの電流値を次の第2の領域における電流値(0.1CA)とし、かつ新たな目標積算電流値Ihtを算出して、これらを記憶部6に記憶させて、多段充電パターンにおける第2の領域での充電を実行する。同様にして、多段充電パターンにおける第2の領域での充電が終了したときには、電源制御部5は、次の第3の領域での上限のSOCt3(95%)を新たな目標残存容量SOCtとし、かつ次に供給する充電電流Ioの電流値を次の第3の領域における電流値(0.05CA)とし、かつ新たな目標積算電流値Ihtを算出して、これらを記憶部6に記憶させて、多段充電パターンにおける第3の領域での充電を実行する。これにより、図4に示すように、0.15CA、0.1CA、0.05CAというように充電電流値を多段階に変化させた多段定電流充電処理が、充電装置1によって二次電池10に対して行われる。
【0041】
その後、電源制御部5は、ステップ57において積算電流値Ihが目標積算電流値Iht以上となったことを検出したときには、次のステップ58において、現在の目標残存容量SOCtが現在の多段充電パターンにおける最大のSOCt3(95%)であることを検出するため、多段充電パターンに基づく多段定電流充電処理を終了する。この多段定電流充電処理により、二次電池10は、SOCが95%の状態まで充電される。最後に、電源制御部5は、定電圧充電処理を時間T3だけ実行し(ステップ59)、この多段定電流充電処理の完了時点で、二次電池10に対する充電動作を終了する。
【0042】
このように、この充電装置1によれば、電源制御部5が、多段定電流充電処理の開始に先立って容量検出処理を実行して多段定電流充電処理の開始直前でのSOCsおよび二次電池10の電池容量Bcを検出すると共に、記憶部6に記憶された多段定電流充電処理を実行する際における二次電池10のSOCと充電電流Ioの充電電流値との関係を示す多段充電パターンおよび検出した電池容量Bcに基づいて多段定電流充電処理の開始時における充電電流値を決定し、多段定電流充電処理の開始後においては多段充電パターンに従って充電電流値を決定して変更する。したがって、この充電装置1によれば、二次電池10(特に鉛蓄電池)における充電時の内部特性(内部抵抗の抵抗値、電極反応および副反応(ガス発生))との間に周囲温度に殆ど左右されない関係が成立しているSOCに基づいて、二次電池10の充電時における内部特性を考慮した所望のタイミングで多段定電流充電処理における充電電流値を正確に切り替えることができ、その結果、充電効率を一層向上させることができる。
【0043】
また、この充電装置1によれば、記憶部6に複数の多段充電パターンを記憶させ、電源制御部5が、複数の多段充電パターンのうちから選択された1つの多段充電パターンに基づいて多段定電流充電処理における充電開始時および充電開始後の充電電流値を決定することにより、目的に応じた多段充電パターンでの充電を実行することができる。例えば、多段充電パターンとして、図3に示すように、短時間に充電を完了させるために、第1、第2および第3の各領域の充電電流Ioの電流値を大きめに設定した短時間多段充電パターンと、充電の完了までの時間よりも高効率充電を目的として、第1、第2および第3の各領域の充電電流Ioの電流値を小さめに設定した高効率多段充電パターンとを記憶部6に記憶させて、選択可能とすることにより、目的に応じて、短時間での充電と高効率での充電とを選択して実行することができる結果、充電装置1の使い勝手を向上させることができる。
【0044】
また、この充電装置1によれば、容量検出処理において、電源制御部5が、二次電池10への一定の充電電流値I1での充電と電源部2からの二次電池10の切り離しとを、切り離しの開始から所定時間(T2)経過後における二次電池10についての開放電圧Vop1,Vop2,Vop3の測定を実行しつつ複数回(一例として3回)繰り返し、測定した複数の開放電圧Vop1,Vop2,Vop3のうちの少なくとも1つに基づいていずれか1つの開放電圧Vop1,Vop2,Vop3の測定時における二次電池10のSOCを検出することにより、容量検出処理の時間を無駄にすることなく二次電池10に対する充電を行いつつ、SOCをリアルタイムに検出することができる。また、開放電圧Vop1,Vop2,Vop3を測定して二次電池10のSOCを検出することにより、電池形状、電極構造および配線に起因して充電電圧を測定する際に発生する内部抵抗の影響をなくすことができると共に満充電近傍で急上昇する過電圧による影響も軽減することができる。
【0045】
また、この充電装置1によれば、容量検出処理において、電源制御部5が、測定した複数の開放電圧Vop1,Vop2,Vop3のうちの2つに基づいて、2つの開放電圧(本例では開放電圧Vop1,Vop3)の各測定時における二次電池10のSOC(SOC1,SOC2)を検出し、検出した2つのSOCの差分(SOC2−SOC1)、2つの開放電圧を測定する間における二次電池10に対する総充電時間、および容量検出処理における充電電流値I1に基づいて電池容量Bcを算出することにより、容量検出処理の時間を無駄にすることなく二次電池10に対する充電を行いつつ、電池容量Bcを検出することができる。
【0046】
また、この充電装置1によれば、電源制御部5が定電流充電処理を実行した後に定電圧充電処理を一定時間だけ実行することにより、ほぼ満充電に近い状態の二次電池10をより満充電に近い状態に移行させつつ、充電終期の充電電流値I1を低下させて過充電を回避することができるため、二次電池10の寿命低下を防止することができる。
【0047】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されず、その構成を適宜変更することができる。例えば、鉛蓄電池の充電時の内部特性を考慮して3段階に充電電流Ioの電流値を変更する例について上記したが、他の種類の二次電池10における充電時の内部特性に合わせて、2段階、さらには4段階以上に充電電流Ioの電流値を変更する多段定電流充電処理を実行する構成を採用することもできる。また、短時間多段充電パターンと高効率多段充電パターンの2つの多段充電パターンを記憶部6に記憶させて選択する例について上記したが、目的に応じて、さらに他の多段充電パターンを1または2つ以上追加する構成を採用することもできるし、逆に、記憶部6に1つの多段充電パターンのみを記憶させる構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る充電装置1の構成図である。
【図2】開放電圧Vopと残存容量との関係を示す特性図である。
【図3】多段充電パターン(短時間多段充電パターンと高効率多段充電パターン)を示す説明図である。
【図4】充電処理における充電電流Ioおよび充電電圧Voの時間経過に伴う各変化を示す特性図である。
【図5】電源制御部5の充電動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5における残存容量(SOC)検出処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 充電装置
2 電源部
3 スイッチ部
4 電圧測定部
5 電源制御部
6 記憶部
7 計時部
10 二次電池
Io 充電電流
Vo 充電電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電対象電池に対する充電時の充電電流値を制御可能に構成された電源部と、当該電源部を制御することによって前記充電対象電池に対して多段定電流充電処理を実行する電源制御部と、前記多段定電流充電処理を実行する際における前記充電対象電池の残存容量と充電電流値との関係を示す多段充電パターンが予め記憶された記憶部とを備え、
前記電源制御部は、前記多段定電流充電処理の開始に先立って容量検出処理を実行して前記残存容量および前記充電対象電池の電池容量を検出すると共に、前記多段充電パターンおよび当該検出した電池容量に基づいて充電の開始時の充電電流値を決定し、充電の開始後においては当該多段充電パターンに基づいて当該充電電流値を決定する充電装置。
【請求項2】
前記記憶部には前記多段充電パターンが複数記憶され、
前記電源制御部は、前記複数の多段充電パターンのうちから選択された1つの多段充電パターンに基づいて前記充電開始時および前記充電開始後の充電電流値を決定する請求項1記載の充電装置。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記容量検出処理において、前記充電対象電池への一定の充電電流値での充電と前記電源部からの前記充電対象電池の切り離しとを、当該切り離しの開始から所定時間経過後における前記充電対象電池についての開放電圧の測定を実行しつつ複数回繰り返し、前記測定した複数の開放電圧のうちの少なくとも1つに基づいて当該いずれか1つの開放電圧の測定時における前記充電対象電池の前記残存容量を検出する請求項1または2記載の充電装置。
【請求項4】
前記電源制御部は、前記容量検出処理において、前記測定した複数の開放電圧のうちの2つに基づいて当該2つの開放電圧の各測定時における前記充電対象電池の前記残存容量を検出し、当該検出した2つの残存容量の差分、前記2つの開放電圧を測定する間における前記充電対象電池に対する総充電時間、および前記容量検出処理における前記充電電流値に基づいて前記電池容量を算出する請求項3記載の充電装置。
【請求項5】
前記電源部は前記充電対象電池に対する充電時の充電電圧値を制御可能に構成され、
前記電源制御部は、前記多段定電流充電処理を実行した後に前記充電対象電池に対して定電圧充電を実行する請求項1から4のいずれかに記載の充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−220121(P2008−220121A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57138(P2007−57138)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー使用合理化技術実用化開発/電池式車両用充電器のSW電源化研究開発 共同研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】